5つの楽器と弦楽四重奏のための協奏曲 作品11
Concerto for Five Instruments and String Quartet Op.11
I.Sostenuto
II.Dolce
III.Non troppo
IV.Marcato, ritmico
1957年8-9月作曲
1958年2月27日初演
フルート、クラリネット、トランペット、シロフォン、マンドリン、弦楽四重奏
フルートに導かれ瞑想的に進む第1楽章、12音音楽風に、でもどこか旋律的に展開する第2楽章。
動きの少ない持続的な第3楽章、力を持って点描的に脈動する第4楽章。
チェンバー・ドメイン トーマス・ケンプ指揮
Chamber Domaine Thomas Kemp,Conductor
2008年 Landor
I.3:40 II.3:11 III.2:21 IV.2:45
この曲の世界初録音。
この曲を聴くと、作品番号が二桁になったところでかなり急激に作風転換した様子が伺えます。
作品10でその片鱗が見えますが、この作品11で一気に前衛へと曲調が傾き、次の作品12で全開に。
初期グレツキの変遷を知るに欠かせない貴重な作品です。
演奏は、ダイナミクスは小さいですが、線が細いなりにきちんとまとまったもの。そつなく聴けます。
墓碑銘 作品12
Epitafium Op.12
I.Preludium
II.Chorał(Chorale)
III.Antyfona (Antiphon)
IV.Postludium
1958年7月7-13日作曲
1958年10月3日初演
混声合唱、トランペット、打楽器(5)、ヴィオラ
ウェーベルンのセリー様式に倣って作曲された。
第2回ワルシャワの秋音楽祭で初演。
クラクフ・フィルハーモニー管弦楽団 ヤン・クレンツ指揮
Polish Radio Symphony Orchestra in Katowice Jan Krenz,Conductor
ナショナル・フィルハーモニー合唱団(Roman Kuklewicz指揮)
The National Philharmonic Choir(Roman Kuklewicz,Conductor)
1967年 Olympia
4:34
この曲をもってグレツキの前衛時代が幕をあけます。
強い点描的構造に強弱の対比が絡み合う、とても密度の高い5分間。
交響曲第一番「1959《 作品14
Symphony No.1 "1959" Op.14
I.Inwokacja (Introduction)
II.Antyfona (Antiphon)
III.Chorał (Chorale)
IV.Lauda
1959年1-3月作曲
1963年7月15日初演(全楽章)
オーケストラ
[0.0.0.0. - 0.0.0.0 - ティンパニ、打楽器(7) - ハープシコード - ハープ - 弦(16.16.14.12.10)]
師であるボレスラフ・シャベルスキに献呈されている。
1961年のパリ青年ビエンナーレにて1位受賞。
クラクフ・フィルハーモニー管弦楽団 ローランド・バーダー指揮
Krakow Philharmonic Orchestra Roland Barder,Conductor
1990年1月15-19日 Koch Schwann
I.4:39 II.5:30 III.3:12 IV.4:07
クラスターが最前面に押し出される少し前の曲です。どちらかといえばセリー的な単音要素が顕著。
にしても、両端楽章などの強烈なpとfの対比などは健在。
第1楽章のシンバルやスネアと弦楽器のクラスターの対比は初期の彼ならでは。
この曲をはじめとする一連の作品群が西洋の前衛シーンに影響を与えたことが聴いててよく分かります。
かつきっちり4楽章制であることが聴いていてはっきりわかる所が面白い。
演奏申し分ないです。
三つのダイアグラム 作品15
Three Diagrams Op.15
1959年11月作曲
1961年9月21日初演
フルート独奏
「50年代における最も興味深い実験的音楽の一つ《。
構成的には序奏(Principio)、三つのダイアグラム、結尾(Finale)の5楽章からなる。
曲における一定の曲調変化、極端な音量の変化、急速なフレーズや広いインターバルによる難技量など。
ダイアグラム部の楽譜は上中下の三部分に分けられ、それぞれ「rapido《「moderato《「tardo《と指示されている。
バルバラ(?)・スヴァイアテク、フルート
Barbara Swiątek,Flute
Muza
?
Muzaの古いレコードです。見つけたときはびびりました。
うんごめん、うちレコード再生できないから聴いてないんだ、また今度ね・・・
アウスヒルドゥル・ハラルズドウッティル、フルート
Ashildur Haraldsdottir,Flute
2009年2月 Acte Prealable
5:24
非常に点描的で幾分セリエルな音楽。彼が前衛の先端にいたことがよくわかる作品です。
ただ特殊奏法を全く使っていないので、初期の彼らしいノイズらしさは全くありません。
衝突 作品17
Scontri Op.17
1960年5月13日-6月17日作曲
1960年9月21日初演
オーケストラ
[2.2picc.0.2Ebcl.bcl.2.2cbn - 4.4.3.1 - 打楽器(8) - 2ピアノ - 2ハープ - 弦(30.0.12.12.8)]
クラクフ・フィルハーモニー管弦楽団 ヤン・クレンツ指揮
Polish Radio Symphony Orchestra in Katowice Jan Krenz,Conductor
1967年 Olympia
16:25
過激な音響が脳内を突き抜ける、派手派手?な現代音楽です。
個人的には初期のグレツキ作品No.1。
冷酷なクラスターや突発的な激しい音響の連続には爽快感すら感じます。
やや古い録音が生々しさを伝えてきます。
これ以上の録音はないでしょう。新録音なんてないだろうけど。
創世記 作品19
Genesis Op.19
第一曲:弦楽三重奏のためのエレメンツ
I.Elementi per tre archi
1962年2-3月作曲
1962年5月29日初演
弦楽三重奏
シレジアン弦楽四重奏団
The Silesian String Quartet
Marek Moś・Arkadiusz Kubica,Violin Łukasz Syrnicki,Viola Piotr Janosik,Cello
1993年7月 Olympia
10:37
詳細なクレジットがないので、どちらのヴァイオリニストがこの録音に参加してるか上明。
強烈な上昇グリッサンドを曲の終始に配置し、その中でクラスターが破裂。
上意な音の断絶と打撃的な和音がそれに加わります。
激しいノイズ音響全開で、とても弦楽三重奏の音楽と思えないほど。
弦をかきむしるそのままの音が激しく響き渡る。
演奏や録音は、その音楽に輪をかけてそのすさまじさを伝えてくれます。素晴らしい。
第二曲:楽器の歌
II:Canti strumentali
1962年4月作曲
1962年9月16日初演
15人の奏者
[ピッコロ,フルート - トランペット - マンドリン - ギター - ピアノ(4手) - 打楽器(2) - 弦(3.0.3.0.0)]
クラクフ・フィルハーモニー管弦楽団 ヤン・クレンツ指揮
Polish Radio Symphony Orchestra in Katowice Jan Krenz,Conductor
1967年 Olympia
7:57
金属打楽器やピアノの過激なまでの乱打、管弦のクラスターにマンドリンやウッドブロックまで乱入してとんでもないことになってます。
おそらく一番異常な音響を作っている曲でしょう(III.はもしかしたらこれ以上かな・・・聴きたいなあ)。
このころの作品はまさに前衛。
ポーランド楽派を代表する一人であった彼のクラスターやリズム等の使い方は今も鋭さを失いません。
もしこの志向性がもっと強くかつ後世に生まれていたなら、
電子音響や具体音ノイズを持ち出しても上思議は・・・いや、これはさすがに単なる妄言ですね。
廃盤の多いのが残念です。
さらに凄いのは、この作品群の直ぐ後に古典様式による3つの小品を書いていること。
交響曲第三番とよくカップリングされるような曲をこの時期に(Op.なしといえ)書いているとは・・・
宗教性・反復性へ向かっていくことは自明のことだったのでしょう。
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