Aritmia
Miklos Sugar; Fanfare
Zoltan Pongracz; Madrigal
Ivan Patachich; Ballad
Laszlo Dubrovay; Suite for Piano and Synthetiser
Bela Farago; ...sub galli cantum...
Janos Decsenyi; Song
Istvan Szigeti; Twins in the Mirror
Xenia Stollar; Magic Round
1995 Hungaroton HCD 31624
H'EAR(The Electroacoustic Music Studio of the Hungarian Radio)で制作された
エレクトロ・アコースティック作品集。大体の曲は90年代に入ってから作られたもの。
ミクローシュ・シュガール(1952-)の「ファンファーレ」トランペットが小気味よい旋律を重ねあい、
全6部からなる反響の絡み合いを楽しむ様な作品。こういうのは明快で良い。
コダーイの元で学んだゾルターン・ポングラーツ(1912-2007)の「マドリガル」は詩と音楽の関連を意識した曲。
朗読音声が加工されていき、そこに加工された合唱の和声と具体音みたいな絡みが入る。
和声がなかなか綺麗な感じで、思ったより面白い。
イヴァン・パタチッチ(1922-93)の「バラード」、
ハンガリーのバラードやそのテキスト朗読をマテリアルに電子音との加工を進めていく。
ラースロー・ドゥブロヴァイ(1943-)「ピアノとシンセサイザーのための組曲」は
G音と12音列を元にした呪術的な「牧歌」、そこから歪んで発展する「機械的な踊り」や
「怒りの日」「トッカータ」と次第に音楽は盛り上がり、音加工もひずみが激しくなっていく。
Hungarotonでよく名前を見るべーラ・ファラゴー(1961-)の「…雄鶏が鳴くとき…」は
トランペットとテープのための3楽章作品。ピアノのアタックに電子音の小刻みなわななき。
トランペットの十二音旋律、幾分ミニマルなシンセの絡み。特に第3楽章のペンタトニックな和声もあって
不思議な印象の音楽ですが、どこか惹かれてしまう面白い音楽でした。
ヤーノシュ・デチェーニ(1927-)「歌」はP.B.Shelleyのテキストをぽつぽつと話す虚ろなサウンドスケープ。
イシュトヴァーン・シゲティ(1952-)の「鏡の中の双子」は幼い双子姉妹が発するしぐさの音や歌を
マテリアルにして組み上げられた、どこかリズミカルで作曲者のユーモアが現れた気楽な作品。
ゼーニア・シュトラール(1970-)の「マジック・ラウンド」はクラリネットの旋律に
テープ録音が掛け合いながら加工音が入ってくる真っ当なエレクトロアコースティック。
シュガールとファラゴー、シゲティ作品が好みだった。
OHM+:The Early Gurus of Electronic Music 1948-80
(アーティスト多すぎるので省略)
University of Melbourne Electronic Music
Gary Wright; Impulse
Chris Wyatt; Conversations 1
Paul Turner; Panels V
Greg Riddel; Dedicated to a Perceptive Experience
Ken Gunter; Mirrors
Peter Tahourdin; Three Mobiles
New Computer Music
Paul Lansky; Idle Chatter
Curtis Roads; nscor
James Dashow; Sequence Symbols
Michel Waisvisz; The Hands
Clarence Barlow; Relationships for Melody
Stephen Kaske; Transition Nr.2
オリジナルは"Electronic Music Produced In Aarhus"と題されて74年にリリースされたLP。
オリジナルのA面はスヴェン・クリスティアンセン(1954-)が担当。
どちらも74年制作。「Urvarte」、衝撃音のようなセピアな音響が鳴り響く。
虚ろな音を幾重にもちりばめて、古典的ながらもじつにシリアスでかっこいい空間を作ってくる。
「Noir」の方はじりじりした電子音がうごめき、地味ながらもじわじわと迫ってくる。
地味だけれどなかなか良い電子音楽を作ってくれる。「Urvarte」の方が好みかな。
オリジナルで言うB面、Fuzzyは好きな作曲家にノアゴーやらライリーやらシュトックハウゼンやらあげてますね。
「Blau」、ばねがたわむような音をぽつぽつと配置し、
それが激しく重なる中から電子音による(ちょっとクラウトロックみたいな)ビートのある音楽が出てくる。
フルートのふわふわ漂う楽想や、ぼこぼこした音からシンセミニマルな倒錯音響が出てきたり、
こちらのほうは同じ電子音楽ルーツでも実にオルタナ的。正統派のA面とは全く別次元です。
CCMIX
Iannis Xenakis; Mycenae Alpha, Polytope de Cluny
Brigitte Robindore; The Atlar of Loss and of Transformation
Jean-Claude Risset; Saxatile
Nicola Cisternino; Xoomij
Julio Estrada; eua-on, eua-on-ome
Daniel Terrugi; Gestes de l'ecrit
Takehiko Shimazu; Illusions in Desolate Fields
Curtis Roads; Purity, Sonal Atoms
Gerard Pape; Le Fleuve du Desir III
2001 mode 98/99
クセナキスが作り出した、絵画的素材を元に音を生成するシステム、UPIC
を使って作られた曲たちをまとめて収録した、modeの有名な二枚組。
まずは本家、クセナキスの「ミケーネ・アルファ」から。クラスターのささくれた枯野のような電子音が重々しくうなりを上げる。
初めてUPICのみを使われて作曲された、UPICの代名詞とも言えるまさに傑作。
濃密な雲海にぶち当たっていくかのような激しい力の音たちはまさにクセナキス。
Brigitte Robindoreはトン・デ・レーウやJulio Estradaに学んだ女性作曲家。
「The Atlar of Loss and of Transformation」はUPIC作品。細かいじりじりしたノイズ音がゆっくりと積っていく。
「As Strangers and Pilgrims on the Earth」は二人の打楽器奏者が共演。
金属・膜質打楽器の執拗なロールにさりげなく電子音の金属的な欠片が降り注ぐ。
IRCAM電子音楽の代表格リセの「Saxatile」はクセナキス70歳の誕生日を記念して。
「メタスタシス」のスコアを元にUPICパートを作るなど本格的です。お陰でなかなか奇怪な電子音とサックスの同期が聴ける。
Nicola Cisterninoの曲、低い振動から音が沸き上がり、バスのうめきが同調する。
アボリジニを題材に用いた、ディジュリドゥみたいな濁った低い響きの音楽。
Robindoreの師匠フリオ・エストラーダの曲はなかなか過激。「ミケーネ・アルファ」みたいな音をばんばんとテンポよく垂れ流す。
良いノイズっぷり。「eua-on-ome」はそのオケ版。とんでもないカオス音響。
構造はともかく、音の派手さ、ひいては「過激な運動」が存分に楽しめる。
太字で「この2作品は最大音量で聴くこと」と書いてあるのが納得できるぐちゃぐちゃさ。
さてDisc2、クセナキスの「クリュニーのポリトープ」はEdition RZでおなじみ。
実験音響ノイズの先駆け的な名曲。RZよりクリアというか、粒が聞き分けやすい気がする。
アルゼンチン出身Ina-GRMメンバーのTerrugiもUPICで作曲してます。
彼の曲、構成はよく練られてるんだけれど、自分の趣味には何故か合わないんだよなあ・・・
島津武仁の作品は、芭蕉の句を元にした、三弦とUPICのための作品。
邦楽的な響きの中にノイズ(こうして聴くと激しいところはちょっとジャパノイズ的)が挟まれる。
Curtis Roadsの曲はどちらも大きな曲から楽章の抜粋。空ろな音がふわりふわりと流れていく。
最後はパペの曲。弦楽四重奏と電子音がこちょこちょ絡み合う、まさに欲望が湧き出てくるような楽想。
うーん、他の感想を見てもそうだったが、たしかにクセナキスの前じゃ誰も分が悪い。
(その出来が云々でなく)他に面白そうだと思えたのはエストラーダしかいなかったし・・・
Carrefour - Musique Electro-Acoustique
Otto Joachim; 5.9
Paul Pedersen; For Margaret, Motherhood and Mendelssohn
Micheline Coulombe Saint-Marcoux; Zones
Peter Huse; Space Play
Michel Longtin; La mort du Pierrot
Hugh LeCaine; Mobile
David Paul; Eruption
2005 creel pone #14
カナダ国営放送局絡みのレーベルから出ていたマニアックなLPのブート再発。
カナダのマイナー作曲家の作品が7曲コンピレーションされてます。
「5.9」は4チャンネルの中で時代を感じさせる電子音がきゅるきゅると跳ね回る。
タイトルの由来は曲の長さから。30分を4チャンネルに均等に割り当て、残りをキーボードのセットアップ時間に。
Paul Pedersenの曲はメンデルスゾーンの楽曲(結婚行進曲の電子音楽再生)を元にしながら
それを激しく破壊して、そこにパルスなどを加えて行く。なかなかいかれた音響に仕上がっています。
ミシュラン・コロンビー・サン=マルクー(1938-85)はモントリオール出身、
Groupe international de musique electroacoustique de Paris(GIMEP)の創設メンバー。
「Zones」は不協和音に支えられた電子音の「帯」からさまざまに音要素が飛び出し
素晴らしい緊張感とともにどろどろと突き進んで行く。
容赦ない音の圧迫と攻撃が特に印象的で、このCDの中でも一際目立った出来です。
バンクーバー在住Peter Huseの曲は空間と全ての音の音楽へのかかわり合いを念頭において書かれた作品。
間の多い構造でノイジーな音が点描的に駆け回る。
Michel Longtin作品は、彼がスペリオル湖に旅したとき出会ったパントマイマーに印象を受けたもの。
持続音が水音のように姿を変えて行く、おそらく一番地味でドローン的な作品。
Hugh LeCaine(1914-77)はあのコンピ「OHM」にも入っているのでこの中では一番知名度があるでしょう。
ころころと音たちが楽しく転げ回る、短いゲーム音楽みたいな小品。
最後のDavid Paulは劇的な音の密度を念頭に作曲された、多様なグリッサンドからなる作品。
相変わらずのレコードノイズぶりだけれど、なかなか面白い作品が多くて良かった。これだからCreel Poneはやめられない。
Century XXI USA 1 - Electronics
Carl Stone; Kamiya Bar(Excerpts)
Ben Neill; 678 Streams
Mikel Rouse; Autorequiem
Kyle Gann; Ghost Town
Nicolas Collins; Devil's Music(remixed version)
Christian Clozier and Jacques Lejeune
Perspectives Musicales
2007 creel pone #73
大本はLes Industries Musicales Et Electriques Pathe Marconiという長名のレーベルから
1970年に出ていたLP。このたびめでたくcreel poneの毒牙?にかかることとなりました。
Christian Clozier(1945-)はGRMで働き、Alain Savouretとの共同作業も行ったことのある人物。
ブルージュ電子音楽スタジオの創設メンバーでもあります。
「Lettre a une Demoiselle」(1969)はバロック風の音楽と電子的なサイン波ノイズ、
曖昧な具体音や朗読などがからむミュージック・コンクレート作品。
「Dichotomie」(1970)はパイプを叩くような音と口笛がざわめく4分ほどの作品。
一方Jacques Lejeune(ジャック・ルジューヌ、1940-)はピエール・シェフェールや
フランソワ・バイルらに学んだINA-GRMメインの作曲家。おそらく彼の方が知名度は高いでしょう。
「Petite Suite(小組曲)」(1970)はチューン・アップや人の呻き、アンビエントな音楽などに
ポップ・ミュージックが絡む、派手ないかれた展開の短い5曲構成。
なんというかシェフェールやその同僚のピエール・アンリをちょっと思わせる作風です。
「D'Une Multitude En Fete」(1969)は18分の大作ですが、展開の過激さはちっとも薄れず
かつ展開を積み上げて行くような高内容。素材の幅広さも変わらず。
ドラムの嵐のようなソロと電子ドローン、エコーだらけの朗読や拍手・ブーイングなどが激しく絡みます。
フランス最初期の電子音楽の様相がわかる素晴らしい一枚。
展開が派手な分ルジューヌが有名なのはわかりますが、クロツィエールも引けをとらない作り込みです。
ちなみに、これのモアレ効果のジャケットにピンときたらあなたはSonic Youth好き。
彼らのプライベートレーベルのジャケットの元ネタでもあります。
いつも通り限定100。
Electroacoustic Music from Latin America
Eduardo Reck Miranda; Electroacoustic Samba X
Elsa Justel; Fy Mor
Nicolas Suarez Eyzaguirre; Chica Aruma
Alfredo del Monaco; Syntagma(A)
Antonio Russek; Ohtzalan
Sergio Claros & Oscar Garcia; Es Zas
Alejandro Jose; Todo Es Uno
Richardo Dal Farra; Ashram
The Inside of the Outside / or The Outside of the Inside
Who are they? Where do they come from? Why are they here?
2005 creel pone #18
George Englerという作曲家が自身のレーベルから1965年にリリースしたLPのブート。
ただしトラック1「Konjugationen」のみはHeinz Karl Gruber(ハインツ・カール・グルーバー、1943-)の作曲。
この方は真面目な現代音楽作曲家。ウィーン出身、クロスボーダーな活動を行いながら現在も精力的に作曲活動しています。
茫洋とした音響が続いたと思ったら、いきなりカットアップコラージュによる奇妙なノリノリ音楽に。
トラック2以降のEngler、なんとも言えない奇妙な短いコンクレート風音源が1,2分単位で現れます。
撥弦音の細かく跳ねるささくれながらむリズミカルな曲、憂鬱な室内楽的音楽、
どろどろしたコンクレート風音楽、ピアノ内部奏法の嵐などなど、作風は一定しません。
うーん、悪くないんだけれど、これならグルーバーの方がいいなあ・・・
というか、もっと各曲を掘り下げて欲しかった。トラック12とかもっと長いほうが絶対面白いってば。
知名度などを考えても、このアルバムはグルーバーの曲のほうが掘り出し物かもしれない。
Musica Electroacustica Dianda - Moretto - Serra
Hilda Dianda; A-7, Dos Estudios En Oposicion
Nelly Moretto; Composicion 9b
Luis Maria Serra; Invocation
Emma Curti,cello
2007 creel pone #68
アルゼンチンの作曲家による電子音楽作品をまとめたマニアックすぎる一枚。
オリジナルは1970年に出た、国内向けのLP。
全員女性かと思いきや、最後のLuis Maria Serraだけは男性でした。
Hilda Dianda(1925-)はブエノスアイレスで学んだ後ヨーロッパへ渡り、ヘルマン・シェルヘンらに師事した作曲家。
電子音楽以外にもいろいろと作品を残しているようです。
「A-7」はチェロとテープのための作品。チェロの硬派な鋭い演奏に、電子音響が合いの手を添える。
間がありながらも渋く激しく演奏されるチェロ独奏に、電子変調されたチェロの亡霊がまとわりつく。
「Dos Estudios En Oposicion」は純粋な電子音楽作品。
60年代の音が激しくカットアップされて、残像だらけの空間を作っていく。後半の砂嵐にまみれた切迫も悪くない。
Nelly Moretto(1925-78)はアルゼンチンのロサリオ出身、主に自国で活動した作曲家です。
彼女はこの「コンポジション」のシリーズ(どれもエレクトロ・アコースティック系列)が代表格のようですね。
この「Composicion 9b」も、9aが楽器や踊りなどを使用した舞台音楽であったものを電子音楽のみに改作したもののよう。
女性の語りを皮切りに、異常なまでに加工された声が激しく湧き上がり、ヒスノイズのようになるまで響き渡る。
ぺらぺらと素早く音が聞こえてくる感覚は70年の電子音楽としてはなかなか奇異ですごい。
ルイス・マリア・ セルラ(1942-)は英語で詳しいサイトがないのでよくわかりませんが、
GRMに参画した上にヒナステラへの師事経験もあるようです。
「Invocation」、弦をはじく音が次第に込み入っていく、ちょっと地味だけれども間をうまく使った緊張感ある作品。
金属摩擦音が飛び交ったりと、音響的には一番ハードな実験色。
なかなか無視できない作品ばかりで悪くなかった。個人的には最後のジャンクノイズかな。
ReR CMCD -Six Classic Concrete,Electroacoustic and Electronic Works:1970-1990
John Oswald; Parade
Georg Katzer; Aide Memorie
Lutz Glandien; Es Lebe
Steve Moore; A Quiet Gathering
Jaroslav Krcek; Sonaty Slavickove
Richard Trythall; Ommagio a Jerry Lee Lewis