音響系、インプロ A-L

ドローンやノイズ以外の実験音響系はここに。ただし基準は聴いた感じなので、同じ作家でもドローンの方とレビューが分かれてることも。
Fluxus系は悩んだ末こちらに入ってたり。
ちょっと中にはテクノっぽいやつも入っているけれど、まあもともとカテゴリなんてたいした意味ないし・・・大目に見てください、ええ。
だいたい一番最初のアルファベット順。




Absolute Value of Noise and Lori Weidenhammer
The Laughing Dress

2008 Absolute Value of Noise Production  なし

カナダのBrian Charlesによるソロユニットとやはりカナダ・バンクーバーの女性パフォーマーによる合同作品の一つ。
このCDは人魚伝説(でもMelusineて調べるとちょっと人魚のイメージとは違うような…)
を元に制作されたインスタレーション系の作品です。人魚の恰好をベースにして
マイクロスピーカーとモーターを随所に盛り付けた、なかなかシュールな外見の衣装をつけてパフォーマンス。
そこに波の音や電子音ドローンなどを入れて、トラックごとに様々なサウンドスケープを作り上げたもの。
演者自身による朗読が物語を話すので内容は追いやすい。
ただ、それもあって余計にB級というか、アングラなイメージが強い音楽。
まあ、ジャケットの明らかに色物なインパクトから比較するとまだ真面目な内容だったから良しとしますか。
やり方はともかく、音だけで聴くとなかなか悪くない内容でした。



Alan Courtis
Los Alamos

2004 Celebrate Psi Phenomenon なし

アルゼンチンの変態バンドとして有名なRaynoldsのギタリストによるアルバム。
重々しいギタードローンに乗せて、ハモンドオルガンに似せた音がサイケな長い音を響かせる。
だんだん上の方は崩壊していったりするので、終始耳につくのは低音のごーごー言ってる動きだけ。
こいつがひたすらわめいてトラック1は終了します。こいつはなかなかヘヴィーで楽しい。
トラック2は何だか原型がわからなくなった音が激しくそこかしこにエコーする。
トラック3はプリミティヴなドラミングがダイレクトに民族的な何かを思い起こさせる。
その残響の効いたビートにギターが絡みついてくる。これはテンション上がりますね。
両端の長尺2曲はすごい楽しかった。



Alejandra & Aeron
Billowy Mass

2007 Kning Disk  KD024

スウェーデンをメインに活動するアレハンドラ&アーロン。
過去に行われたインスタの音源をもとに作られた2作品を収録。
前半の「Campanas」はスペイン、タイ、台湾での音源。
淡いドローンにスペイン老婆の朗読。鈴の音がカットループされ、
音声や日常音が、鈴の音を中核として物語を紡いでいく。
その音楽の構成手法は、ミュージック・コンクレートのそれを彷彿とさせます。
ただ、サウンドの切り込み方は実験音響のアーティストらしいものを感じるあたり、
音楽にとっつきやすい直接的な物語性を表現することに成功しています。
終始暖かい輪郭で繰り広げられ、時にはアンビエント・ドローンも顔をのぞかせる。
後半「Billowy mass」は台湾の台風シーズンにおける録音から。
スイッチングのように切り替わる風景、激しい隙間風、電子音ときしみ。
落ち着いて聴ける、柔らかいフィールドレコーディング風音楽です。
限定800部。



Alessandro Bosetti & Annette Krebs
°Bosetti °Krebs °

Alessandro Bosetti,Sopransaxophon  Annette Krebs,Gitarre
2003 Grob  GROB 540

ソプラノサックスとギターのデュオですが、伝統的な発音方法は一切ありません。
息を吹き込む音、弦を微かに擦る音、そういった、非常に微弱な音のみから出来ている曲。
かさこそといった音が、編集された音と制限された世界を作る。
ロペスみたいな、微弱音のみの音響作品と何ら感覚の違いはありません。音の違い。
微弱音を大きな音量で響かせる手法が特徴と言えば特徴か。
4曲目でようやくサックスらしい音が出てきて、逆にびっくりします。
ジャンル別にするなら、一応フリーインプロ系の音楽なのかなあ。



Alessandro Bosetti
Il Fiore Della Bocca

2006 Rossbin Records  RS025

イタリアのアーティストによる、ドイツでのラジオドラマのために制作された作品。
知的障害を持つ人物へのインタビューをマテリアルに作成されており、隠れた名作との声もある一枚。
冒頭のインタビューは彼らの話をそのまま収録。
そこから一気に、彼らの声をサンプルとした、奇妙で空恐ろしくも緊張感に満ちた深い世界へ連れて行かれる。
彼らの会話を激しく加工したものを合いの手に添えながら、流れはあくまでも彼らの話をベースに進む。
時折、彼らの咀嚼音などの非発声音を用いるあたりからも、
彼らの生々しい生き様を見せられているようではっとする。
何とも考えさせられる、音素材の繊細な加工が光る、確かに高く評価したいアルバムです。



Alexandre St-Onge
Une machoire et deux trous

1999 Namskeio Records  Mamsk.02

スイスの実験音響作家によるアルバム。
コンタクトマイクを口に突っ込んで寝たりした音源をマテリアルに製作されてます。
ちりちりしたノイズに時折入る大きなノイズ。呼吸音と思しき小さく虚ろな風音。
ころころと小さく渦巻く電子音に、接触不良のようなノイズの積み重なり。
沈黙の中でぷつぷつとノイズが時折現れるトラックもありますが、基本は細やかなノイズが延々続いていく内容。
うーん、この手の実験音響はそこまで好きでもないからなあ。
ここまで展開が薄いと、どうも自分の評価は下がる。まあ後半のドローン風味は悪くないが。



Alio Die
Suspended Feathers
Descending Past, Ruins Garden Drones, Time in Absence,
Suspended Feathers, Wings of the Firefall

2005 Silentes  cd 200505/HSL031

アリオ・ダイの1996年に1000部限定でリリースされた作品の再発。中には日本語コメントもあり。
「過去の降下」、暗いほのかなドローンがゆれながら、かすかに響く木質な具体音と溶け合う。
そこからパイプ系の民族音楽のようなものが太鼓と共にこだましてくる。
中音域メインの、深く瞑想に入るようなドローン音楽。
「廃墟の庭のうなり」、雨の日のようなくぐもった響きに、竹質や水質の具体音やギターが絡む。
その中を、メランコリックなフルートのメロディーが聴こえる。メロディアスでとても聴きやすい。
「不在における時間」はドローンメインの、広漠な中で風がこだますようなうねりを聞かせる音楽。
後半では、抑えられた音量の中で切なげに音が歌います。
タイトル曲、「浮遊した羽」、オルガンドローンにホイッスルの音が吹きぬける、短い曲。
「火の粉の翼」は、弦楽器やパイプを用いた、ドローンかつ非常にメロディックな曲。
憂いを持った旋律が繰り返されながら、ドローンに飲み込まれる。
やがて、そこから今度は輝かしい音がディジュリドゥなどの音と響き渡る。
ハスの写真も相まって、非常に美しいドローン作品に仕上がっています。



Amir Baghiri
Rooms

2001 ARYA  Y13

ドイツ出身のアーティストによる3枚組みCD。
Disc1「Inner Rooms」、ディジュリドゥのドローンがどろどろと流れ、クラベス(的な何か)が簡単なリズムを叩く。
ディジュリドゥを音源としたドローンにシンセ的なエスニックリズムが絡む。
ブル・ローラーの重い音に、声や高音楽器(鈴など)の音が鳴る。
民族的なマテリアルが非常に多く、作られる音楽も中近東的なトライバル感覚。
8トラック目の激しい音声カットアップなどは印象的。10トラック目、込み入った和音の幻想的な光景も素晴らしい。
Disc2「Real Rooms」、ゴングの長い長い残響がこだまする。
先ほどと同じ傾向ではあるけれど、こちらの方がよりアブストラクト。
ぼやけたドローンがふわふわと暗く響き渡る、長尺のトラック4,5は聴き物。
Disc3「Spaces in Between」、さらにトライバルな感覚は薄れ、ほぼ完全にアンビエント・ドローン。
水音が響く、淡く靄が広がるような素晴らしい幻想世界。薄暗さの中に美しさが光ります。この三枚目が一番気に入った。
ちょっとダークな雰囲気も併せ持つ、アンビエント・サウンドスケープ作品。



アンドリュー・チョーク、鈴木大介
影は気ままに
Andrew Chalk & Daisuke Suzuki
The Shadows Go Their Own Way

2009 Siren  015

チョークと鈴木、2氏のコラボによる09年新作。
フィールド・レコーディング、ピアノ、ベース、オルガン、金属などの音が、淡く作品を形作っていく。
ドローンともアンビエントとも違う、独特の空間。
心象風景の音楽化と呼ぶに相応しい、変わらずの素晴らしい音響世界。
今回は幾分とりとめのない、淡い記憶を手繰るかのような短いトラックで構成されています。
ノスタルジックな温かみが、聴いていて心に浸み込んでくる。
Denis Blackhamのマスタリング、Suzuki NaokoやVikki Jackmanのゲスト参加などを見ても凄い。
限定150部の日本語盤。



Andrew Chalk and Daisuke Suzuki
In Faxfleet Clouds Uplifted Autumn Gave Passage To Kind Nature

2010 Faraway Press  17

チョークと鈴木大介の2009年作品、待望していたCDリリース。もちろん日本語版、
「ファックスフリートでは湧き上がる雲が秋を運び優しき自然への道標となる」を買う。
トラック1「天の女王」、どこかプリミティヴなものを思い起こさせるリズムの淡い輪郭が、
ぼやけたベースラインのビートを伴いながら美しいドローンの中で踊る。
晩夏のあの朧気なかげろうの中から覗く、ちょっと非現実的な趣を見せる風景のよう。
今までのチョークらとは結構印象が違うトラックですが、非常に幻想的で美しいのは変わらない。
このノスタルジックでどこかなつかしい夏の記憶を思い出させてくれるような音楽は
今までの彼の音楽の中でも一番、理想郷の世界を描き出しています。
トラック2「美しき追憶」、ヴィッキー・ジャックマンじゃないのね。
フィールド音と暖かいドローンのうねりが不可分に混じり合いながら、
現実のはずなのにそうでないかのような、まさしく思い出の光景を見るような曲。
日本語の聴こえるフィールド録音ということは鈴木大介の音源でしょうか。
トラック3「水時計」、電子音的な音がゆっくりと垂れ、その奥でピアノがくぐもった響きを奏でる。
これまで聴いた彼(ら)の作品の中で、一番「甘い」という表現が似合う感じ。
同時期リリースのロバート・ヘイと同様な、彼らしい抽象で美しいジャケット。
封入されているミニポスターの風景も、そのぼやけ具合が実に音楽と合っている。
30分もない収録ですが、満足度は非常に高い、と同時にもっと長く聴いていたかった。
限定300枚。



Andrew Chalk
The Cable House

2010 Faraway Press  FP 15

アンドリュー・チョークの「ザ・ケーブル・ハウス」。
やっぱり彼の音響世界は相変わらず、期待を超えて素晴らしかった。
ゆっくりとまどろむような音が、ピアノのつぶやきの後に長く長く尾を引いていく。
少ない音を使って、淡く儚い、それでいて極上に美しい音響空間を作り上げる。
悲しげな音なのか、優しげな音なのか、どちらともとれる音が少しづつ折り重なる。
最後の長尺トラック「内淵」の美しさなんて、まるでフェルドマンの美学を彼の世界に持ち込んだよう。
アンビエントともドローンとも実験音響とも、そんなジャンルの言葉では語れない至高の音楽がここで味わえます。
ほんとうに大切なものを柔らかく抱きしめたような、微かな切なさがたまりません。
近年の丸くなった彼の、それでもこれまでの経過の成果がよくわかる、
精細に響きを調整し切り詰めた結果の音楽。
そこらのアンビエント系音響を聴いて決して満足してはいけません、それくらいおすすめ。
でも限定300部。ハンドメイドジャケが相変わらず良いセンス。



Andrew Chalk
Ghost of Nakhodka

2010 Siren Records  17

アンドリュー・チョーク「ナホトカの幻」。
先行して限定55部のカセットリリースがありましたが、新曲を挟んでCDリリースとなりました。
クールなようでいて暖かく、凛とした音の亡霊がふわりと立ち尽くしている。
カセットのような独特の擦れた音響のなかで、甘くとろけていく音達。
長尺の表題曲がたまりません。ここまできたらもうアンビエントの世界です。
2曲目以降は2、3分ほどの短いトラックからなっていますが、これまた素晴らしい。
バンジョー?のどこかセンチメンタルなつぶやき、ピアノか何かの柔らかく捉えられない響き、
ライヒ風なパルスの絡む儚い場面がさっと淡く通りすぎていく。
いままでに比べるとかなり具体音がそのままに近い状態で使われているのが評価の分かれ目か。
個人的には、これはこれで素晴らしいけれど、彼らしくはない気がしてしまう。



Andrew Chalk
Blue Eyes of the March

2006 Faraway Press  05

チョークの作品の中でも人気の高い「三月の青い瞳」。
靄のような中で、淡く美しく、空間が仄かに響きだす。
暗い背景から微かに光が揺らぎ出すようなその様は、
まさに雪解けのようなじわじわとした温かみをもたらしてくれる。
ピアノを主なマテリアルとした、トラック2のまた異なる響きも圧巻。
切なくセピアのように鳴らされる音が、時間の止まるかのごとく心に染み渡る。
実験音響やノイズといったカテゴリなどというもので呼ぶことが馬鹿馬鹿しい、とにかく美しい音楽。
なんとも形容つけがたい、素晴らしいとしか言えない音。
同封の厚紙に印刷された、写真なのか絵画なのかわからない美しい風景も、
その曖昧さが幻想的な音楽に実に合っている。
涼しさを欲しい夏に、あるいは仄かな温もりの欲しい冬に。



Andrew Liles
All Closed Doors

2003 Infraction  INFX006

非現実的だけれどもどこかソリッドなドローンのうねりにノイジーなディストーション音のディレイが虚ろに響き渡る。
ラヴェルのハバネラがどんどんと朧気に輪郭をなくし、浮世離れしていく。
電子音スパイラルの中から突如民族音楽のような断片ループが始まる。
茫洋とした音と極端な子どもの音声加工からいきなり軽快な音楽が。
なんというかやりたい放題編集してますね。でもそこがたまらないし、楽しいです。
変に力がないってない感じがして、気軽に聞けます。雰囲気はちとダークですが。
Infractionから出てるからドローン系統でじわじわやってくれたのかなーとか思った俺が大間違いでした。
どうしようもないアンダーグラウンドの匂い漂うつぎはぎですが、
優れた実験音響の手腕がこのアルバムを立派な輪郭にしているから始末が負えない。



Arnold Dreyblatt and The Orchestra of Excited Strings
Nodal Excitation

Dexter's Ciger  dex15

ラ・モンテ・ヤング、アルヴィン・ルシエ、ポーリン・オリヴェロス、グレン・ブランカなど
錚々たるメンツに師事したNYのミニマリスト系実験音楽家アーノルド・ドレイブラット。
プリペアドされたヴィオルの小気味良いビートに同様のアップライトピアノが入っていく。
パイプオルガンやハーディーガーディーのドローンがその下地となる。
どうやら音律などを厳密に設定しているようですね(解説流し読みレベル)。
短いトラックばかりなのが残念ですが、その恍惚さはミニマリズムやエレン・フルマンに通じるものがあります。
もうちょっとひとつづきに長ければお気に入りになれるんだけれどなあ・・・
でも、そうでなくとも注目しておきたいアーティスト。



Arnold Dreyblatt and The Orchestra of Excited Strings
The Adding Machine

Bang on a Can
2001 Cantaloupe Music  CA21006

アーノルド・ドレイブラット作品をバン・オン・ア・カンが演奏。
いきなりドラムセットのマーチリズム。そこにいつものような弦やオルガンの
リズムが入ってきてミニマルな行進曲が始まります。
「加算器」のタイトルのごとく、リズムが着実に積みあがっていくような
落ち着いた冷静なテンポでどの曲も進むあたりが彼の作品としてはちょっと変わった作風。
純正律の不思議な響きも加わって、独特のテンションが楽しいです。
多分、ドレイブラットのアルバムでは一番聴きやすいのでは。チープとも言えるけれど。



Masayo Asahara
Saint Catherine Torment

Discus  19CD

高周波のサイン波が時折身悶えし、電子音が微かに響いてくる。
そこにいきなりピアノの音塊が落とされ、じわじわとうねりを伴いながら反復される。
レーベルの宣伝文句にはシュトックハウゼンやウストヴォルスカヤが引き合いに出されていますが、
その両極端な音響は確かにウストヴォルスカヤっぽく聴こえなくもない。
ただ、そのミニマル(というかドローン的)な微妙な変化を主体とした展開は
多分に近年の実験音響的な発想だと思います。静寂音響の色合いが強い。
その空間を存分に使った鋭い響きは面白いんだけれど、そこまで手放しに賞賛するほどでもない。
ただ、60分かけてねちねちと展開する手法は、この音響を説得力あるものにしている。
これが短い5分ぐらいの曲だったら、あんまり価値はないだろうなあ。



Asher
Miniatures

2009 Sourdine  sd-003.2

ピアノ独奏のクラシカルな音源が、テープヒス・ノイズの中でループしていく。
クラシック特有の気品さ、暗さがノイズと相まって、独特の幽玄さをもたらしてくれる。
マテリアルはピアノ独奏以外に弦楽のものもあるけれど、どれも基本的にはアダージョ的。つまり穏やか。
たまにジャジーなつぶやきもありますが。ところでこれは既存の楽曲なのか、それともオリジナルなのか。
最近クラシックのピアノ曲は全然聴いてないけれど、ところどころショパンと思しきものが。
どの曲も3-5分というあっけない短さ、でもそれが音楽の儚さを浮き立たせています。
使用音源的な意味でも、CD1のトラック6、8、13とCD2の13とか良い感じ。
二枚組み、限定500部。



Astreya
Astreya

Vyacheslav Artyomov/Sofia Gubaidulina/Victor Suslin/Miles Anderson,Perf.
Solyd Records  SLR 0027

アストレヤという即興演奏グループは1975年に作られたものですが、
そのメンバーがアルチョーモフ、グバイドゥリーナ、ススリンと実に錚々たる重鎮現代音楽作曲家ばかり。
Miles Andersonだけ知らないのですが、どうやらカリフォルニアの電子音楽家らしい。
まだ彼らのキャリアとしては比較的初期にあたるものですが、
彼らが前衛に対してどのように考えていったのかを知ることができる。
このCDに収められた録音は70-80年代に録音された音源を93年にリマスターしたもの。
ロシア、コーカサス、中東アジアを中心とした各種民族楽器とトロンボーンなどを使っていますが、
内容はそれぞれの特殊奏法なんかがばりばりに使われていて、フリーな度合いはかなり強い。
トラック2は電子加工もはいっていて一番曖昧で寂寞としている。この編集がAndersonの仕事っぽい。
トラック3はDeath Valleyの名の通り、ちょっと具体的なものが連想できるサウンドスケープで聴きやすい。
かなり電子音楽入っていて、もはや即興は単なるマテリアル程度にしかなっていないのですが、悪くない。
稀にグバイドゥリーナが吠えてたりするので、色物としても楽しめるかも。



Bardoseneticcube
Live 19082000

2003 Aquarellist  aquarel 0103

ロシアのノイズ・インダストリアルバンドによるライヴ音源。
インダストリアル・テクノらしいビート(でもちょっと軽め)に乗せて、くぐもった鋼鉄のような響きがこだまする。
イラク戦争情勢を伝える日本のニュース(この声はお馴染み、NHKのあの人のものですね)や中国語。
ダウナーでノイズにまみれた、気怠いベースラインに支えられた音楽の上で歌われる日本の童謡ループ。
ノイズの雲からはやがてメランコリックな音楽が出てきたり民族チックなドラミングやアンビエントなど、
いろいろな音楽が見え隠れして30分間が過ぎていく。
トラック2も先程のラストを元にした音楽で始まり、だいたい同じような展開で45分。
だらだらと聴いている分にはとても楽しいですが、展開が巧いとかそういうものとはちょっと違うかなあ。
限定140枚。段ボール製の三つ折りジャケット。



Beautumn
White Coffee

2005 Infraction  INFX011

ロシアのAlexander Ananyevによるプロジェクト、個人的には外れなしのInfractionから。
ドローン、アンビエント、実験音響が上手く組み合わさった、非常に味わい深い作品。
かさこそと響く具体音、低くうねるドローンたち、儚くあっさり過ぎていく短い音楽。
明るいのか暗いのか、テクノだったりドローンだったり、世界がどんどんとゆらぎながら新しい世界を指し示す。
音響的には、Alio DieやAndrew Chalkのような深みはないけれど、組み立て方が巧妙です。
雰囲気の独特な、ちょっと評価が割れそうなアルバム。自分にはよし。
曲ごとに1P使った、美しい冊子つき。



Bernhard Gunter
Brown, Blue, Brown on Blue (For Mark Rothko)

1999 trente oiseaux  TOC 001

レーベルオーナーでもある彼のお気に入りである画家のマーク・ロスコに捧げられている作品。
静寂の中からゆっくりとぼやけたドローンが響いてくる。あくまでもひっそり。
決して空間の大部分に誇示はせず、けれどはっきりと自分を持った音のかすかなうねり。
ロスコの絵画を見るときのような、あの独特の感覚が味わえます。
時には暗く翳りを持って、あるときは淡く儚く綺麗に。素晴らしい静寂音響・アンビエント作品。
ジャケットもtrente oiseauxにしては珍しくアートワークでセンス良いんだけれど、
ロスコの絵じゃないのは残念。まあ使うのは難しかったか。



Bernhard Gunter
Univers Temporal Espoir

trente oiseaux  TOC 991

前半は2部に分かれた「un lieu pareil a un point efface」。
じりじりと微かな高音ノイズが響き、ごそごそとした曖昧な音が耳をくすぐる。
薄いドローンがゆっくりと過ぎ去り、第2部はさらにひっそりと微かな物音とドローン。
後半、かすかな打音が湧き上がる中に突如金属的なかすれが現れるあたりは鋭くてはっとする。
「the ant moves/the black and yellow carcass/a little closer  '99」は
底から響くようながさごそで開始。たぶんマテリアルがタイトルそのまま。
ただ、それだとしてもこの荒漠とした音響は渋くて良い。中間部は初期電子音楽みたいな虚ろな音が淡く響く。
そこからのかすかな積み重ねによる畳み掛けはこの音楽なりの頂点。
1曲目を髣髴とさせる物音の対比で、30分近いトラックは終わり。
「vertige  hasard」はパルス風の鈍い音響がこだましてくる。
そこに時折、接触不良のようなノイズがくぐもって入ってきて、じわじわと高揚感を上げてくる。
後半は小さな破裂音の変化が色合いを少しづつ変える。



Big City Orchestra
Greatest Hits and Test Tones

1993 Pogus  P2015-2

サンフランシスコで長年珍奇なフリーミュージック演奏をしている団体の93年アルバム。
最初はいきなり気が抜けるようなロック風音楽。
トラック2はいきなり圧倒的な物理的なノイズドローンだし振れ幅激しい。まあそれも当然、
「Greatest Hits」部分は過去のBCO=Big City Orchestraがリリースした
ポップソングのタイトルから抜粋して演奏したもの。
「Test Tones」部分はタイトルの通りピアノの上のボトルにマイク突っ込んだり
要は音響実験をやった結果のドローンサウンドなんかがそのまま収録されている。
こっちではJohn Duncanがアレンジしたトラックとかあったり。
ちなみにその後には、延々とBCOのサウンドエフェクトのライブラリ音源が続く。
具体音、ノイズ、声、音楽、ニュースにアニメなど節操なし。
まあでも、ある意味これがアルバムを貫いている軸と言えるかな。



Big City Orchestra
Stay Left

Banned Production  bp147(Cassette)

80年代からサンフランシスコなどを拠点に活動する大人数の即興団体。
大本はロサンゼルスのアーティスト・レジデンツだったようです。
奇妙なもこもこした音響のループがぽこぽこ湧き上がる。
そこに金属音響が入り、音声の激しいループコラージュが激しく乱入する。
ギターソロによる不可思議な印象のエフェクトを伴う揺らめくソロ。
やたら間の抜けたセッションや民族音楽風、チップチューンみたいな音楽、などなどトラックごとに狂ったように音楽の表情が違う。
ただ、共通してコラージュ的な要素が色濃く流れていました。あと、他がどんなものかは知らないのですが、
少なくともこれに関してはループやカットアップが多くて楽しかった。
時折Vista以降の警告音とかが「ぺんっ♪」と入ってて、アルバムの中で一番笑った。



Biosphere
Wireless  Live at Arnolfini, Bristol

2009 Touch  Tone 38

BiosphereはノルウェーのGeir Jenssenによるソロユニット。2007年のライヴ音源です。
冒頭、管に息を吹き込む様々な音が現れ、そこから淡いドローンに包まれながらアイリッシュカントリーな音楽が聴こえる。
そのドローンは実は管弦楽のループ音源。靄の中で浮かぶ、電子的でも弦楽器的でもある質感の音。
それ以降のトラックも上質なアンビエント・エレクトロニカが続きます。
同じような作り方ではあるけれど、サウンド自体はけっこうバリエーションに富んでいるので飽きがこない。
ドローン要素も強いので、ドローン好きな人でも人によっては聴けると思う。



Bjerga / Iversen
(Go With The Flow) Like A Twig On The Shoulders On A Mighty Stream

2008

Bjerga / Iversenはフリーフォークなサイケ音楽からアンビエント系までいろいろと手がける実験音響のビッグネーム。
その彼らが2008年に出した、それまでの活動からピックアップしたベスト盤。
例えば1曲目はギターメインのサイケドローン、3曲目はのたうつ電子音と声、ギターノイズに絡みつく電子音のフレーズ。
6曲目はがさごそ系電子音楽といった具合で、印象的には地味だけれど変化は激しいです。
編集されて短くなっているトラックが多いけれど、それでも初めて聴く自分には楽しめた。



BJ Nilsen
Hazard 06_12_03 Generator Festival, Konzerthaus Wien

2004 Touch TO:CDR5

BJ Nilsenはスウェーデンのアーティスト、Hazard名義でも活動しています。
Christian Fenneszが毎月ウィーンで開催しているライヴシリーズ「Generator」における録音。
くぐもった低音からフィールド音がちりちりと鼓膜を刺激する。
サウンドアートとダークドローンを足して割ったような音源。
前半、音の響き方がフィールド音とドローンでぜんぜん違うのがあんまり好きじゃないなあ。
ただまあライヴ音源なので音響はうるさく言わない方がいいのかも。
少なくとも、その個々を取ると面白いとは思える。



Bottoms of Black Lakes
Fairytale Armageddon

2010 Why So Serious  なし
2009年デビューのHans DensことInnercityによるプライベートレーベルから。
よく詳細の分からない新人アーティストによる30分ほどの作品。
どろどろに溶けきった音響の中で、声が・ノイズが・元がもはや推測出来ないレベルの音が喚き立てる。
やや痛んだ音のなかでサイケな趣のミニマルなシンセが飛び跳ねる。
くぐもった音響は一貫していますが、内容はトラックによってけっこう傾向が違う。
サイケミニマルの影響が強いとは思いますが、典型的なアンダーグラウンドの作家だと感じました。
2曲目の微かにミニマルなループが響くトラックが好きなんだけれど1分もないよ・・・
おそらく5,60部くらいの生産。CDR。



Brian Grainger
Anthelion(White)

2008 Milieu Music  MML021A

雨の日のフィールドレコーディングに、非常に間のあいた爪弾き音が加わる。
雨の情景がそのまま展開されるような、研ぎ澄まされた感覚になります。
フィールド音のほうが様々な音を収録していて、すでに音素材は十分。
そこにアクセントとして低いギター音を置いているところに面白さを感じます。
まるで日本食みたいな、素材をあまり加工せずにその味を活かした作りこみをしていますね。
環境音楽と電子音楽のはざまのような作品。
ちなみにこれはAnthelion(Night)とセットになってる作品。そっちは買えなかった。
限定30部の紙ジャケCD。グレインジャーって多作のくせしてホント限定過ぎる。
まあMirrorみたく値段吹っかけてこないから良いけれど。てかもしこんな手抜き手作りCDRで吹っかけてきたらキレるか。



Brion Gysin
The Pool K III

1998 Alga Marghen  plana-G 7NMN.024

イギリス出身、フランスなどで活躍したアーティスト、ブライオン・ガイシンの音楽作品。
バロウズにカットアップを教示したり様々な活躍を見せましたが、
アンリ・ショパンのような音声詩的な側面の強い音楽作品なども多く残しています。
このアルバムではスイミング・プールで録音した音源をそのまま収録。
長い長いエコーの中で、ぽこ、ぽこ、と音が遠く響いてくる。
水の滴りなどのわずかな発音が、褪せた、閉じられた空間の中に薄く充満していきます。
50年代後半から60年代前半という年代のために録音がけっこう悪く、
かなりくぐもった響きになってしまっているのですが、それがこの音楽の
ひそやかな世界観にうまくマッチして、音響の奇異さに拍車をかけています。
後半は何やら乾いた物音がはぜたり、オルゴールのような響きも入ったりと音源はさまざま。
ひそやかな、けれど楽しむことができる実験音響。



Brume & Toy Bizarre
(Untitled)

1999 Staalplaat  STCD 038

ノイズ系アーティストBrumeとサウンドアートのToy BizarreによるコラボCD。
前半の「Zee」と後半の「KDI DCTB 57」では微妙に名義が違います。
「Brume & Toy Bizarre」と、「Toy Bizarre & Brume」。要は同じだろうがこんちくしょう。
鶏や犬などの鳴き声、金属音、電子ノイズ、音楽(オルガン的楽器での「中央アジアの平原にて」が聞こえた)などが激しく絡み合う。
Brumeの方は現時点で曲を聴いたことがないので想像できませんが、
たしかにいつものトイ・ビザーレにノイズをまぶした感じのテンション。
2曲目とか良い感じ。緩急激しく、音が爆発しては静まり返る。
一方「KDI DCTB 57」の方はノイズ・ドローン主体の重々しい内容。
沈黙や弱音の部分が目立つ、空ろな音楽です。



bvdub & Ian Hawgood
The Truth Hurt

2011 Nomadic Kids Republic  NKR001

Ian Hawgood自身の新興レーベルから、Brock Van Weyのソロプロジェクトとの合作。
ギターなどの淡い響きに、次第に儚げでメランコリックな歌が細かくサンプリングされループする。
そのループが持つ不思議なビート感がエレクトロニカにおける
グリッチのような効果をもたらして、背景の幻想的な持続音に躍動感をもたらしてくれる。
声も次第に幾重にも折り重なっていく、非常に倒錯感の強いトラック1だけでも素晴らしい。
トラック2はよりアンビエントドローン食が強くなり、混然一体となってゆったりと押し寄せる感覚が更に強い。
トラック3はギターのフォーク風な響きがループされ、次第にドローンが現れてくる。
中盤以降はドローンが声も加え、ギターループのセンチメンタルな所を受け継いで淡い盛り上がりを作る。
個人的にはここがこのアルバムの一番。そのままゆっくりとフェードアウトしていく。
最後のトラック4はその余韻の中から、今までで一番丸い輪郭のドローンが浮かんでくる。
そこから次第にストリングス風の切なげな4和音が現れ、歌のエコーがそこに旋律の残滓を載せる。
徐々にドローンは押し寄せる波のように変化をつけ、音に溺れ始めた聴き手をさらに揺さぶり飲み込んでいく。

歌声が割とメイン材料になっている、実に良いドローン系アンビエント作品。



The Caretaker
Persistent Repetition of Phrases

2008 Install  INST002

かすれたホワイトノイズの中で、メランコリックで美しい音楽がゆったりとループしていきます。
音楽そのものは優美な感じで、暗さを感じるようなものではないです。むしろ明るい感じ。
けれど、それがホワイトノイズというフィルターをかけることによって、どこか切なさをもって聴こえてくる。
まるで昔の色あせた写真を見て、かすれかけた思い出を手繰り寄せているようなイメージ。
いつもとは違う味わいの切なさが味わえて良かったです。



Charlemagne Palestine
The Apocalypse Will Blossom

2007 Yesmissolga  01

何やら抽象的で生活音ノイズなオープニングを過ぎて、ピアノのオクターブによるごりごりしたトレモロが始まる。
やがて倍音が加わりだし、それと共に音がもわもわした残響に溶けていく。
けれど、音が持つ力に耐え切れずに響きはゆがみ、ささくれたノイズ残響となって空間に鳴り響く。
幾重にも音が折り重なり、やがて最終的にはぎらぎらと輝くドローンへと纏まっていく。
パレシュタインの魅力がよくわかり、ぎらついた倒錯に酔うことができる良い作品です。
Christoph Heemannによる録音&オーバーダビング加工も素晴らしい。
ちなみに、ライヴレコーディングのためなのかこういう構成かは知らないけれど、
最後の音の余韻の部分にはかすかにポップな曲が流れてる。



Charlemagne Palestine
Jamaica Heinekens in Brooklyn

1999 Barooni  BAR 021

電子オルガンの心地よいうねりが、静かにゆっくりと流れる。
そこに、フィールド音の喧噪がかすかに流れてきて、持続音のもたらす倒錯に拍車をかける。
様々な土地の情景の残滓が電子音の波に乗って流れ着いてくる。
時折現れるポップミュージックのビートが、不思議なまで素晴らしいアクセントに。
ジャマイカのものと思しき強烈なトライバルビートなロックのアクが強い強い。
その音楽と、フィールド音、ドローンが絶妙のタイミングで重なり合いながら一体化していく。
次第にしわじわ盛り上がり、その緩やかな山が終わりを迎えるか、というところでCDは唐突に終わる。
実に強烈な音楽、だけれどパレシュタインの世界が存分に発揮されていて面白い。



Charlemagne Palestine and Tony Conrad
An Aural Symbiotic Mystery

2006 Sub rosa  SR204

2005年にブリュッセルで行われた、大御所同士のライヴ録音。
爽やかさを感じる電子音のドローンに、パレシュタインのピアノパルスと
コンラッドのささくれたヴァイオリンが静かに参加してくる。
ゆっくりと抑揚をつけながらじわじわと迫ってくるところは全くもっていつものパレシュタインと同じですね。
そこに入るコンラッドも徐々にノイジーさを増して鮮やかさを加えていく。
ピアノは時折オルガンへ入れ替わり、パレシュタイン自身の声も含めながら
いつも以上に倒錯的なドローンミニマル作品を創り上げていく。
最後の、これまでの和声を包括するピアノのアルペジオによる締めくくりはとくに美しい。



Christina Kubisch
Dreaming of a major third -The Clocktower Project at MASS MoCA

1997 Edition RZ  ed.RZ 10006 Parallele 6

サウンドアートの大御所クリスティナ・クービッシュが、マサチューセッツ現代美術館の時計台にある鐘を元にした作品。
光センサーを時計台の窓中に配置し、そこに当たる日光次第でコンピュータの処理過程が変わり、
あらかじめ録音された鐘の音の再生方法が変わる、といったインスタレーションだった様子。
鐘の音が、空ろに、美しく響き渡る。時には逆再生のように、柔らかいアタックを持ちながらふわりふわり消えていく。
最初は短音でぽつぽつと。次第に残響が伸びてきて来る場面はまさに恍惚です。
結果として非常に素晴らしいアンビエント音楽が出来ていることが凄い。
雰囲気は明るいものではないですが、大きな鐘の深く広い響きに埋もれることができる45分間です。



クリストフ・シャルル
デポジション横浜
Christophe Charles
Deposition Yokohama

1994  CH94

虫の音や電子音がひそやかに飛び交い、それぞれ自己を提示していきます。
変調された音も多く、スマートな音楽で、電子音楽的な感覚で楽しめる。
様々な、横浜で収録された音たちが現れていくミュージック・コンクレートみたいなアンビエント的サウンドスケープ。
音たちはあまり関係がないように見えるけれど、しかしそれらが互いに近づこうとするときにそれを阻むものも存在しない。
この作品は、横浜美術館アートギャラリーで行われた同名のインスタレーションの音源。
会場の観客の動きをセンサーで認識し、それを元にしてコンピュータが音の三次元配置を決定、スピーカーから流される、というもの。
製作者たちの管理から音が離れていくところから「デポジション」と名づけられていますね。
その偶然性を実際に体験してみたらまた違う印象をこのパフォーマンスに感じたでしょうね。
とはいえ、これはこれで十分に楽しめる作品です。

「来館者は、この「CD・マルティプル」を持ち運び、他の空間でも鑑賞することによって、美術館の外に飛び出して行く。
・・・それを世界各地で再生することによって、横浜に捧げる地球規模のコンサートが行われる。」
(クリストフ・シャルル)



COH
Mask of Birth

2002 Mego  055

ロシア出身Ivan Pavlovの、99年にRaster Nortonから出た1stのボーナス追加再発。
実験音響の中でクリック系のビートがシリアスに展開する。
エレクトロニカなテクノに実験的なノイズサウンドが同居する。
70-80年代クラブミュージックに影響を受けた、ちょっとダークだけれどカッコいい音楽。
音響シーンとテクノのいいとこ取りな感じがする上に
渋くてノリの良いビートが味わえる、個人的には気に入ったアルバム。
トラック2、3とか特に良いね。



Co La
Soft Power Memento

2012 Hands In The Dark  HITD 011

Matt Papichによる、アヴァンともIDMとも何ともつかない不可思議な一枚。
ジャズやラウンジ、60年代女性グループ、ヒップホップ、クラシック。
様々な音楽がカットアップされ、ループしていく。
まさにアヴァンポップといった状態で、なんともゆるい空気が流れています。
ラウンジ系統のいかにもエスニックな空気が流れているのが特徴。
単なるアングラ音楽になっていないのは、音響をうまく操作してビートのような
一貫して感じられる音楽の展開を、なめらかに作っているからでしょう。
兎に角聴いていて楽しいので、ループ系が好きなら間違いなくはまる。
トラック4のノスタルジックな光景とかやばいですね。
限定100部。同時にカセットリリースもしてます。



Comet Bodies
Close To A World Below

2010 Cylindrical Habitat Modules  Fifteenth Module(Cassette)

Adam MillerとJulian Gulyasからなるユニット。
短い下降音型のループにアトモス状のノイズ。非現実的というかスペーシーというか。
細かく音が揺れながらじりじりと変化し、じわじわと扇情的になっていきます。
なんというか、サイケ的なミニマル実験音響。
一方、B面は虚ろで茫洋としたノイズドローンがひたすら横たわる。
無機質にうねる持続から次第にスペーシーな音がゆらゆらと湧き上がります。
長い音楽の中で、少しづつじわじわと展開するそのサイケな感覚が、
いかにもアングラな、おどろおどろしい音楽で面白かった。
タイトルも何もクレジットがない緑ベースのジャケット。46分テープ。



Computer
What Was Computer?

2010 scumbag relations  no.155(Cassette)

ぶっちゃけタイトルがタイトルだけに、検索してもまともに情報がヒットしません。
なので正体不明のアーティストですが、内容はなかなかえげつない。
壊れる寸前のような電子音が不定形にぎちぎちとカットアップされながらもうごめく。
全くの不規則に、グリッチノイズのような音ががんがんと無造作に放られていく。
コンピューターでランダムに音生成しているような作り方です。
その過激な音の動きはさながら、チュードアの電子音楽作品やクセナキスの「S.709」みたい。
というか、動き方がほとんどS.709そのもの。
両面合わせて10分程度の短いテープ作品ですが、強烈な印象でした。
アングラファンもそうだけれど、電子音楽マニアに是非聴いてみてほしい内容。
限定100部。



Cray
Comment

2000 Fallt  F.0014.0003

アイルランドのFalltレーベルが、パルス/グリッチ/マイクロサウンド系のアーティスト達の手による
3インチCD作品を発表するInvalidObject Seriesの一つ。
オーストラリアのRoss Healyの、Cray名義としては初のリリース作品。
それぞれで全く内容が異なる平均1分の短いトラックが15連なってできています。
激しくコンプレッサされたトラック、ノイズががさがさうごめく曲、激しいノイズドローン調などなど。
その派手さと、さっと流れていく儚さが気に入りました。
このシリーズは全て限定250枚。CDは3インチだけれどジャケットは通常サイズ。
ちなみにトラックタイトルはおそらく、キーボードの文字配列を適当に抜き出したもの。
いや、WMPの間違った楽曲情報読み込みを修正してたら気づいたんですよ。



Current 93
Aleph at Hallucinatory Mountain

2009 Coptic Cat  NIFE004CD

David Tibetことカレント93、自身のレーベルから3年ぶりにリリースされたアルバム。
Andrew Liles,Rickie Lee Jones,Baby Deeなどなどなど、実に幅広い面々が16人もよってたかって集まって作り上げた一枚。
チベタンベルの一打に始まり、ハモンドオルガンにギターノイズ、壊れたロックに実験音響、
心地良いギターとドローンの混合に独特のヴォイス、プリミティヴなリズム、などなど・・・
音楽の方も実に節操ない、というかジャンル不明な音楽の凝縮物体。
それでいてそのミックスぶりが滑らかに行われているからとんでもない。
アンダーグラウンドなロックの残滓を伴った、実験音響の皮に包まれた異形の音楽です。
でもかっこいいとも思える辺りがさすがはCurrent93。
トラック4のメランコリックなベースラインが主導する音楽とかは聴きやすいし綺麗でいい。



Damned Dogs
Damned Dogs

2011 Kuma Tapes  01(Cassette)

Life Likeレーベルの関連レーベルとして発足したKuma Tapesの第1弾リリース。
サイケポップ系ユニットSwimsuitのメンバーAmber FellowsとFred Thomasによるプロジェクトです。
色あせた淡い響きの中から、口笛のような旋律がふわふわと浮かび上がる。
オルゴール風の電子音がディレイの中で鳴り響き、ころころとした空間を作る。
揺らぐようなシンセ音が、ちょっとチープだけれど心地よいアンビエントをかろうじて作り上げる。
けれど、その音楽はテープ独特のヒス音響で、くぐもった世界の中でフィルター越しに見ているよう。
トラックによって淡く美しい感じだったり、ちょっと妖艶でアヤシイ感じだったり。
不思議な幻想世界を味わえる、テープ独特のアンビエント音楽でした。
限定30部ですが、なんかエディションが2つあるらしい。30分テープ。
あとKumaってレーベル名だけれど、ジャケはもちろんレーベルマークも犬にしか見えないんですけどこれ。



Darren Tate
Strange Artifact

2004 Fungal  Fungal 12

テイトはまあまあCDを持っていてまあまあ好きな部類。
中途半端に好きな部類なので、このCDは中古じゃなかったら買わなかったかもしれません。
ところが買って聴いてみたら、おそらく彼の作品の中では一番のお気にいりになりました。
じりじりした薄いホワイトノイズを背景に、アコーディオンが終始インプロみたいなことをしている。
ドローン主体ではないことを除けばオリヴェロスと間違えても無理ないですね。
くぐもった音響背景の中にこっそりとギターを初めとする微かな音が紛れているのがミソ。
後半になるとアコーディオンはなりを潜め、背景のノイズがゆったり空虚に展開していきます。
低い音の全く無い、ふわふわ漂う感覚の40分1トラック。
現在3rd Editionまでありますが、自分が持ってるのは100枚限定の1st Edition。
でも、70枚限定の第3版の方がジャケットに手が込んでて良いなあ・・・Andrew Chalkみたいな感じが。



Darren Tate
Edition

2007 Fungal  Fungal 25

ふわふわとした電子音にギターが暗く呟く。
柔らかな、けれどどこか不安げな音がぽつぽつと滴ってくる。
スペーシーな音の降下に混じって、じりじりした持続が保たれる。
そこにごとごとと何時ものごとく物音が入ってきたり。
いつもよりシンセの音が直接的に使われていて、もろに瞑想的。
でも、シンセとギターがメインな分気軽に聴きやすくはあった、と思う。
真っ白な紙ジャケ、一箇所だけ花形にパンチアウトされているのがシンプルだけれど洒落てる。
限定らしいけれど、何枚なのかよくわからない。



Darren Tate
Organ of Sight

Fungal  Fungal027

びよびよオルガンのような音がダダ漏れしていく1曲目。
2曲目は時計の音?が響く静かなフィールド音に、ふわふわしたディレイのかかった電子音が絡んでくる。
時にはチェンバロみたいな電子音やギターも参加したりして、ゆっくり音が変わっていく。テイトらしい作風。
空ろな電子音が大きな展開も無く響く3曲目は、そこにだんだん、低い上昇音や原型をとどめないエコー状の音が色づけしてくる。
いつも通りのダレン・テイトでした。
100枚限定の1stでなく、50枚限定のセカンド・エディションを入手。こちらはジャケが一枚一枚異なる鳥の写真。
自分のやつの鳥は何なんだろう・・・スズメ目だと思うけれど、全然詳しくないのでそれ以上は見当つきません。
セキレイ科?ウグイス科?とりあえず頭が帽子みたいに黒いのが特徴的。



Darren Tate
Ghost Guitars

Fungal  023

テイトの他に鈴木大介のフィールドレコーディングとKathleen Vanceのアコーディオンが参加。
不定形な電子音がつぶやき、そこからアブストラクトなビートが響いてくる。
ギターのつぶやきは非常に奇形なもので、淡々としたビートがそれをさらに奇異なものにさせる。
ピアノの夢のような音楽などが遠くで響きますが、ギターの音がいきなり大きくなったり心臓に悪い。
ささくれたギターの乱れ弾きやぎらついたドローン、アコーディオンとのふわふわした即興。
最後の、虫のさえずりが響く中、ギタードローンが不気味に成長していく様はベテランの腕を見せてくれる。
ジャケットの絵も、内容とはちょっと食い違う気もしますが、いい出来。



Darren Tate, Daisuke Suzuki, Kathleen Vance
Trees Kissing Trees

2005 Fungal  018

1曲目、水音、猫の声等のささやかなフィールド音に、シンセオルガンの心地よいドローンが響く。
非常にドリーミーな瞑想空間。彼らなりのアンビエント・ドローンで、聴きやすくて出来も良い。
2曲目、ころころしたシンセ風電子音がぽろぽろこぼれ、アコーディオンの即興的な音がふわふわ浮かぶ。
そこに低い電子ドローンがでんと構える、アンビエントとダークドローンを足して割ったような音楽。
3曲目、虫の音が聴こえてくるフィールド音の中から、かすかにギターや声がディレイを伴って聞こえてくる。
ずいぶんアンビエントよりで、気楽に聴けてよかった。
ところでこのアルバムの被献呈者Massimo Ricci、よく分からないのだけれど編曲家で宜しいのかどうか。



David Jackman
Up From Zero

2003 Robot Records  RR-31

ラジオ音源の断片のような音楽がループし、電子的なノイズが尾をひきずる。
壊れたストリングを弾く虚ろな音がビートを作り、そこからまた別のビートに置き換わる。
自動車のブレーキと衝突音、ジャンク音の折り重ね。
ギターと電子音が大きくゆらぎながら、交互にたゆたう。
彼のノイズ音指向ぶりは聴いていて楽しいです。そのじわじわ来る構成が秀逸。
特に表題曲のジャンクノイズ・ドローンっぷりは、その鬼気迫る感じが良い。
そして、相変わらずの音響編集の手腕。軽く聴くとそこらのノイズアーティストと大差ないけれど、
そのソリッドでも茫洋でもない、絶妙な隙間を縫うどちらとも言える響きがうますぎる。



David Newlyn
Brittle

2011 Time Released Sound  TRS 07

イギリスの電子音響系アーティストによる特殊装丁な3インチCD。
ピアノや弦楽がノスタルジックに美しい音を奏で、そこにフィールド音響などが淡く加わる。
そして、そのすべての音が、ややくすんだ響きにくるまれて佇んでいる。
その音響は、コンセプトとして存在している「古いSPレコードで聴いている」ものそのまま。
そのイメージを、現代のクリアな音響の中で見事に再現しています。
わざわざ台座に実在していたレーベルの5.5インチSPをつけてくるあたり、こだわりがあって良い。
ほかの装丁もなかなか凝ったつくりで、20分収録で3000円超の値段も内容を含めると妥当に思えてしまう。
アンビエントにも似た深い穏やかさを持って、短いトラックが6つ、古い記憶のように過ぎ去っていく夢見心地の一枚。
実にすばらしいです。限定78部、ナンバリング付き。



David Rosenboom
Invisible Gold

2000 Pogus  P21022-2

脳波を使って音楽を作り続ける異色の作家、デヴィッド・ローゼンブーム(1947-)。
Em Recordsから「Brainwave Music」がリリースされるまでは、これがほぼ唯一の入手容易な音源でした。
「Portable Gold and Philosopher's Stones」は「Brainwave Music」の方に収録されてますから、
今となっては残念ながらそこまでこちらを聴く重要性はなくなってしまいましたね。
単音のドローンに始まり、そこから徐々にゆるやかに音が分化して和音やトリル音型が見えてくる。
瞑想状態の脳波を音に変換してしまった、異常なまでのサイケデリックなドローン作品。
前述の通りであるとはいえ、やっぱり聴いていると凄さしか感じられない。
「On being Invisible」のほうはEmリリースの方には収録されていないので初めて聞く。
Part1、ぴょろぴょろと電子音のばねが転げ、不規則に空間の中を飛び跳ねまわる。
次々と現れるパルス的な拍動を伴った動きは絶えず倒錯的に変化していく。これはやばい。
Part2はちょっと落ち着いて、拍動感がなくなる。でもひょろひょろ言う電子音は健在。
逆に、ゆらゆらと落ち着きなく動き回る様はPart1よりも常軌を逸している気がします。
やはりローゼンブームは面白い。「On being Invisible」のためだけでも買う価値は十分ある。



David Shea
The Tower of Mirrors

sub rosa  vista 2 / sr94

近年の実験音楽シーンではメジャーな知名度を誇っている人物のSub rosaリリースCD。
フィールドコラージュだったのが、跳ねるようなテクノのリズムが出たり、
打楽器と熱帯鳥の鳴き声の絡みだったのがラテンジャズになったり。
同じような音楽が出てこない。ノリノリな音楽がコラージュの隙間に出てくるから
よくわからないチープ感覚を聴き手に強く印象付ける。
彼の音楽の中でも、ぐちゃぐちゃコラージュの趣がかなり強い作品では。
なんというか、全体的なアウトラインは真面目でシリアスな感じなんだけれど、
そこから感じるイメージは(マテリアルのせいもあって)かなり珍奇でチープ。
彼の曲は聴かないから詳しくないけれど、果たしてこれは彼の作風の主流なんだろうか。
ちょっと微妙と言うかなんと言うか・・・でも、いいかもと思う瞬間もあるからやめられない。



David Stackenas
The Guitar

2000 Hapna  H.3

プリペアドされた金属的なギターのアルペジオが散らばる中に、生ギターの途切れがちな歌のようなものが聞こえる。
アコースティックギター一本でこれでもかと即興演奏が繰り広げられます。
でも、そこからとてもソロとは思えない豊かな音が生まれてきていて凄い。
聴こえてくる音はよくあるインプロの内向的なものではなく、外に広がろうとする力を持った破裂音。
細かなテクスチュアからとらえどころの無い一貫性がつかめて、聴いていて飽きが来ない。
騒々しくないのだけれど、かといって綺麗な曲でもないです。けれどどこか惹かれるような演奏なのは何故なんでしょうね、ホント。
インプロが好きじゃない方にもなかなかのお勧めです。



Dead Traveller
Dead Traveller plays The Ghost

kukuruku Recordings

ギリシャのアーティストが主宰する謎レーベルから出た、
ギリシャの街Amphissaで行われる謝肉祭をフィールドレコーディングしたもの。
金属ジャンクなドラムを乱打する音、ホイッスル音のわめき、
バンドのなんとなくとも適当とも言える微妙なノリノリさの音楽。
この地に伝わる亡霊の話を元に繰り広げられる、狂乱の場。
なんとも破茶滅茶なサウンドです。たしかにこれはすんごく面白い。
民族音楽の持つ強烈なビート感覚に激しいノイズ、トラック5に至っては
現地住民の(スピーカー使用を含む)発狂したかのような叫び声まで入り、とんでもない異常世界。
時折聴こえてくる独特の民族音楽の旋律も価値あり。
内封の解説に、伝えられている亡霊についての伝承が載ってます。
限定150部、ナンバリング付き。もろにCDR。



Dial
Kaukapakapa

2002 Eden Gully  03

短波ラジオとターンテーブルを使ってパフォーマンスする
DJ BitrateとDJ Defragによるニュージーランドのユニット。
2001年に録音した3つのテイクを収録しています。
電車の走る音、声、スクラッチ音?、微妙なゆらぎ、時報パルス。
ホワイトノイズの帯が延々と伸びる中から垣間見える、淡い不思議な光景。
淡々とした進行で一時間が終わるので、ある意味非常にストイック。というか地味。
でも、なんとなく聴いていると、なんか面白い気がしてしまうあたり侮れない。
まあ実際ノイズのゆらぎを聴いているだけでも悪くはない。
ものすごく抽象的という言葉が似合うアルバムでした。



Dick Higgins
The Thousand Symphony

Alga Marghen / plana-H  31NMN.077

ディック・ヒギンズの有名作「千の交響曲」をPhilip Cornerがリアライゼーションしてしまった音源、ライヴ。
この作品の何がフルクサス的と言って、その楽譜の作成にマシンガンを使う辺り。
パートを書き込んだ五線紙にマシンガンを乱射して、その弾痕を音に変換します。
この楽譜断片は自由に繰り返しが可能ですが、前の断片に戻ってしまってはいけません。
それと指揮者の大まかなループ/強弱指示を守ってさえいれば、だいたいどんな進行も思うがまま。

最初はかさかさとほぼ無音の状態で曖昧な音が響きますが、次第に音が増えてきて
まるで気だるげなフリーセッションのようにふわふわと音が転がっていく。
意外とフリーミュージックとしてまともに聴ける音楽が成立している分も面白い。
徐々に高揚していって、混沌とした部分ではマシンガンの録音も乱入するなど、
なかなか構成的でシアター的要素の影響がある。
というか、トラック3の合奏を聴いているとあんなハチャメチャな譜面から起こしたと考えられない斉奏だし
「交響曲第343番「サルサ交響曲」」なんか、サルサというかフリー要素のあるジャズに完全に聴こえる。
まあ弾痕の形状などから音型を連想するだけのようなものですし、解釈によってはいろいろやりようがあるでしょう。
こういう自由度が高くてある意味いいかげんなのもフルクサスらしい。
いろいろと面白い作品でした。スコアの写真もまあまあ載ってるし満足。
ちなみに、演奏者の大編成アンサンブルにはMalcom GoldsteinのVn.やPeter ZummoのTbn.なんかが参加。



Dino & Nic
At the Arc of Nic & Dino

2010 Catholic Tapes  なし(Cassette)

イタリアのエレクトロニクス系デュオによる2nd。
グリッチノイズにも似た電子音の粒が規則的に、リズミカルに動く。
次第に規則的なパルスとディレイの効いたメロディのようなものが現れる。
B面はかなりスペーシーな側面が出て、不定型なイメージが強い。
特にA面の小気味よい音楽は聴いていて楽しいし、秀逸な出来。
あとは地方料理の接写というグロ画像一歩手前なジャケさえどうにかしてくれればよかったんですが・・・
15分テープなので、聴いていてさっと過ぎ去ってしまう感じ。限定100本。



5/31

Drift Yellow Swans
Drift Yellow Swans

2006 Acuarela Discos  nois054

アメリカ・ポートランドで活躍した、Gabriel Mindel SalomanとPete Swanson
による今はなき大御所ノイズユニット、Yellow Swans。
結構、微妙に違う変名を使ってリリースとかしているものの一つです。
茫洋としたノイズが周期的に入れ替わり、そこにギターノイズがべしゃべしゃと入ってくる。
でも派手なのは最初のみ。その後はホワイトノイズ系のきしみにぼそぼそと音がつぶやく
瞑想的で内向的なノイズの進行に。けれど、散漫な印象は少ない当たり、さすが。
むしろ、トラック3の5分過ぎなんて美しさすら覚えます。
40分足らずでしたが、その内向的な世界観が楽しめました。



Eckart Rahn
Pachinko in Your Head, non linear music

blue rahn studio  19004-2

ニューエイジレーベルCelestial HarmoniesのオーナーでもあるEckart Rahnが、
新宿のパチンコ店「パーラー・アラジン」で行ったフィールド録音。
正直言って、聴く前から内容が丸わかり過ぎる内容。
ひたすらにパチンコ台の音楽と玉のジャラジャラ音が流れていく。
これだけで60分は正直きつい。ただ「音の洪水」という言葉がこれほどしっくりくるものもそうない気が。
どうやら実際にRahn自身がパチンコを打ちながら録音したようで、解説にその時の写真が載ってます。馬鹿だこいつ。
1998年の録音なので、今の台に比べるとかなり鳴る音のバリエーションが
乏しく聴こえますが、それもまた時代の流れ。まあこのモノトーンな方がよりトリップ出来るかな。
Wolf Vostellに捧げられている、ダダやフルクサスに傾向したアルバム。
でも、内容はそんなにフルクサスな感じじゃないと思うんだよね、これだけだと。
余談。これを聴いてて(もうそろそろかな?)と再生時間見たらまだ40分だったときの絶望感といったら・・・



Ekkehard Ehlers
Ekkehard Ehlers plays

2002 Staubgold  30

ドイツの実験音響系作家による、彼が敬愛する音楽家や映画監督らへのトリビュートを行った一枚。
カーデューへの2曲は美しいドローン風のアンビエントエレクトロニカ。
2曲目はサンプル音源も使用して、よりトリップしそうな素晴らしい音響を響かせる。
Hubert Fichteはグリッチ系の実験音響が淡く響き、後半はそこにギターの音色が華を添える。
John Cassavetesへの2曲は鮮やかなアンビエントドローン。
特に、後半の弦楽ループを組み込んだ曲は鳥肌が立ちそうなくらいに切なくて綺麗。
アルバート・アイラーでは、チェロの演奏を軸に、とりとめない感じのカットアップ入った実験音響。
ロバート・ジョンソンは趣を変えてクリックハウスに。まあ27歳にして急死し、
ダンスパーティーでの不倫がきっかけ等と噂されるあたりから来たのでしょう。
全体を通して非常に爽やか、とても楽しめました。
特に、Cassavetes後半は今もよく手が伸びるほどのハマリ具合ですね。
ジャケ裏はそれぞれトリビュート元の人物に関連ある地の衛星写真だったり、けっこう練られてます。



Eric Cordier
Houlque

1996 la grande fabrique  LGF 003

フランスのサウンドアート系の作家による作品を収録。
虫の羽音のようなノイズが絡まる長尺のリミックス作品を初めとして、
荒漠とした電子音ドローンが流れ、ミュージック・コンクレートの流れを汲む音の振る舞いが展開される。
ハープシコードの音がはげしく分解されて亡霊のように泣き叫ぶトラック7、
重苦しいドローンが多重に延々と押し寄せてくるトラック8、オルガンソロによる長いトラック10など面白い。
ぼろい建物の多様な箇所にスピーカーが取り付けられている写真がブックレットにありますが、
これが演奏風景なんでしょうか。全フランス語で文章も殆どないためよくわからない。
ただ内容は全然侮れない出来栄え。ドローン系の実験音響、あるいは現代音楽。



Etant Donnes
Wonderland 1

2001 Editions Wonderland  W001

スペインの2人組ユニット、エタン・ドネによる110Pの本とセットでリリースされたCD。
自身の詩やインタビューのほか、アンリ・ショパンを初めとした面々による寄稿が盛りだくさん。
CDは30分弱の収録。
トラック1、硬派なノイズ系ドローンに吐息のようなかすれた朗読が重なり、
そこに次第に電子音がきりきりと入ってきて、倒錯した退廃美の世界を作り上げます。
朗読の方も次第に慟哭のような調子になり、音そのものも加工されていく。
やがて音楽はインダストリアル・ビートのようなパルス的要素の中から
溶けた声の絶叫があちこちからこだまする、実に真っ黒なものに。
トラック2はそのビートがこだまする中次第に虚ろな音の風が響き、朗読がゆっくり入ってくる。
盛り上がりが最高雄蝶になったところでふとビートは途切れ、茫洋とした音たちのうねりが残される。
トラック3はふとまた別の生物的なビートから。そこに電子的なパルスや高音のサイレンが響き、
激しく風景のスイッチが入れ替わりながら、朗読の残滓が響いてくる。
はっきり言ってこの内容は、本来のエタン・ドネとは作風が違うようですが、
それにしてもこの倒錯的でじわじわと盛り上がる内容はとても素晴らしかった。



Francisco Lopez
La Selva sound environments from a neotropical rain forest

1998 V2_Archief  V228

副題の通り、コスタリカの雨季の熱帯雨林でのフィールド音を使った環境音楽のようなもの。
虫、鳥、カエル、そのほかありとあらゆる生き物の鳴き声でいっぱいです。
それらの歌が、雨などの水音や、彼らの発する羽音・物音等の上で繰り広げられる。
凄いのは、音源を全く加工しない状態で普段の音楽と似たような音空間を出しているロペスの技量。
もとの声をそのままにしつつ、電子音楽のように慎重につなぎ合わせ音楽にしていく。
耳を済ませれば、音が見事なまでに選び抜かれ、ストーリー性を持って進んでいるのがわかるでしょう。
ここがいわゆるフィールドレコーディングものと大きく異なる点ですね。
風景を容易に想像でき、退屈せずに聴けました。
ロペスの編集手腕が堪能できると言う点でもおすすめ。
なんせ普段は音が小さすぎて何やってるかうまく聞き取れない時もあるからなあ・・・



Fred Giannelli
Telepathic Romance

1996 Sahko Recordings  011

アシッド系ユニットPsychic TVのギタリストを務め、
インダストリアルからテクノ、実験音響までカバーするボストン出身のアーティスト作品。
低く震える微かな低音。そこからいきなり涼しげな弦楽のエコーが響く。
深く湧いてくるような暗いドローンと、その上で断続的に繰り返される
アンビエントな音楽の響きの対比が秀逸で面白い。
次第にドローンは浮上して、淡い電子音系のドローン風アンビエントに変化する。
ゆっくりとループしながら、物音や電子音など様々な要素が浮かんでいく。
とても素晴らしい傑作音響作品です。
初回出荷の、クラフト紙包装があるバージョンをゲット。



Forma
Forma

2011 Centre  02 (Cassette)

Mark Dwinell、Sophie LamとGeorge Bennettによる、NYはブルックリンで活動する新興ユニット。
その最初のリリースになります。38分テープ。
シンセとドラムマシンによる、直球なサイケプログレ。
小気味よいリズムに乗って、シンセのミニマルな音と持続音がふわふわ漂う。
画に書いたような見事なまでのスペーシーな音楽は、逆に気楽に聴けて楽しいです。
ただ、これが2011年の音楽ということにちょっと倒錯的な違和感を感じないわけでもない。
もちろん、今こういう作品でもいいのだし、だからこそこの
微妙なステレオ感でこのジャンルの音楽を聴けているわけだけれども。
基本的に一定のビートを前面にしてミニマル進行なので、趣味には合った。



Fovea Hex
Here is where we used to sing

2011 Janet Records  RDS004A

アイルランド出身の女性シンガーClodagh Simondsによるプロジェクトの2011年新作。
彼女の薄暗くも美しい歌声が響き渡り、アンビエントともメロウなロックともつかぬ
ふわふわしたメランコリックな音楽が流れていく。
美しく幻想的な響きは、一般の方に勧めても問題なさそうな洒落たものばかり。
のんびりと気楽に聴くことができるのがいいですね。
そして、このユニットと言えばゲストの異常なまでの豪華さ。
今回も中核人物のMichael Beggはもちろん、Colin Potter、Brian Enoらが参加。
というか、コリン・ポッターがいる時点で音楽の響きは保障されたようなもんです。
さらに今回は限定400部で「Three Beams」と題したリミックスCDがついてきます。
まずはMichael Begg。淡く伸びるドローンに少しずつ音が絡み、
ゆっくりと盛り上がって消えていく。落ち着いたアンビエントドローンです。
2曲目はコリン・ポッター。薄暗い響きから徐々にはっきりした音が美しく湧き上がる。
それが淡く消えると共にClodagh Simondsのコラールが美しく響く。流石の手腕、実にたまりません。
後半のさまざまなマテリアルが加工されながらゆらゆらと立ち上る響き、メランコリックでかっこいい。
最後の3曲目はなんとWilliam Basinski。倒錯的で虚ろな、けれど美しいおなじみのループ音楽。
変化に乏しい、けれどその中に深く沈み込むことができる、実に彼らしいリミックスでした。
個人的には、ぶっちゃけボーナスCDさえあればいいや。ひどい話だけど。



Gamelan Son of Lion
The Complete Gamelan In the New World

locast music  41/42

フルクサスで有名なフィリップ・コーナーらが参加して構成されている10名ほどのグループ、Gamelan Son of Lion。
彼らがFolkwaysから出していた2つのアルバムをまとめてリイシュー。
静かにガムラン音階が繰り返されては次第に穏やかに展開していく、ミニマルで瞑想的な音楽。
金属ジャンク音をわざと響かせる即興的な楽想からリズムを生み出し早めていく。
トラック3、メランコリックな美しさのゆったりしたミニマルはちょっぴりフェルドマン風。
トラック5は結構古典的ミニマルに近い内容の断片を使ってていいなあと思ってたらいきなりループ内容を声で再現しだす。
これはこれで楽しいけれど、別のトラックでやってるのを聴きたい気も。
CD2、印象は大して変わらない。もっとひそやかに即興的なトラック2、じわじわと盛り上がるトラック3、4。
ミニマルな現代風ガムランの演奏として楽しめました。テンション高い場面は少ないけど。



Ghedalia Tazartes
Les Danseurs de la Pluie

Alga Marghen  ALGA063

ギターノイズに変調した珍妙な歌とも叫びともとれるものが乱入する1曲目。
赤ん坊の叫び声ループにダウナーな電子音が絡み付いてくる2曲目。
エレキギターと男性の民族的な歌がフリーセッションするところにちょっとドラムとかが入る3曲目。
ぐちゃぐちゃした音やどこか毅然とした持続音の中に奇妙なビートが浮かんでくる4曲目。
粗野で暴力的ではあるけれど、どこかクールな一面がのぞけるところが奇妙であって、かつ面白いです。



Ghedalia Tazartes
Check Point Charlie

AYAA  cdt 1189

冒頭のぎこちないオルガンソロからぎくしゃくしたビートの音楽へ。
ゆるい電子音楽と民族音楽が微妙にかみ合い損なった奇妙なリズムの数々が続きます。
お次は演説にチェンバロみたいなぎこちないメロディーが絡んでくる。とにかく一つの音楽が長続きはしない。
おまけに繋ぎがなんにも考えられておらず単にぶつ切り+つなぎ合わせ。
2曲目以降も大して変わりません。声を中心に笑いや対話、歌などが代わる代わる地味に電子音と絡み合います。
そして何も前フリ無しに全く違う傾向の音楽がやっぱりダウナーに乱入してくる。
頭のねじを全て取ってしまったような、チープなストレンジ・ミュージックの数々。
ここまで思考を放棄したような音楽を15分単位で作れるのが逆に凄い。



Gianluca Becuzzi and Fabio Orsi
Wild Flowers under the Sofa

2007 Last Visible Dog  LVD 120

アンビエント系の人気作家Fabio Orsiが電子音響作家のGianluca Becuzziと組んだ、いくつかあるアルバムの一。
ギターの切なく短い歌が徐々につなげられて、ぼやけた情景の中から具体音のドローンに包み込まれていく。
その中から新しいメロディーループが浮かび上がり、緩やかに情景が移り変わっていく。
心地よいドローンがふわりと浮かび上がり、ひそやかな雨音やピアノと共演する。
ノスタルジックな気分に浸れる、フィールド音響よりの実に美しいアルバムです。



Glenn Branca
Symphony No.9(L'eve Future)

Polish Radio National Symphony Orchestra, Katowice
Christian von Borries,Cond.

1995 Point Music  446-505-2

ブランカは彼自作のギターオーケストラを使った変態じみた音響の交響曲シリーズで有名ですが、
この9番は普通の合唱とオーケストラの編成。しかも、今までのような過激な音響は全く無く、クラシカルな世界が広がります。
茫洋とした音があんまり派手な展開も無く垂れ流される。悪くはないけれど、50分近くも聴く気は正直起きないかな。
オーケストラを使ってそれ以前みたく爆発してくれれば面白かったと思うんだけれどなあ。
とりあえず2度聴く気は起きなかったです。まあ完全に聞き流せる綺麗さだから手軽にかけれるけれど。
その分カップリングの「Freeform」は12分と短い上リズミカルなのでまあまあ楽しく聴けました。
使っている和音自体は面白いのに、構成力の無さで台無しにしている好例なのでは。



Glim
Music for Fieldrecordings

2004 Headz  ex-po 3/HEADZ 27

冒頭、オルゴールの音からゆっくりドローンが包み込むところを聴くだけで(買ってよかった)と思いました。
前編、フィールド音と電子音、加工された生楽器の音などが溶け合い、暖かく一体になる感覚がたまらなく気持ち良い。
切なげで、だけれど簡単に直情的な世界を表さず控えめに押し殺す、その一線をぎりぎり踏みとどまっているところが
構成としても非常によく考えられたものであることを教えてくれます。
こういうのは中途半端な雰囲気になりがちなものも多いですが、これではそういった心配を感じさせない。
8曲目「Somewhere」以外は3−5分の短い曲ばかり。大きな展開はせずにそっと過ぎ去ってしまいます。
8曲目も雰囲気は変わらず。今までと同じように、ゆっくりと曲調が変わっていく。
後半は音楽が落ち着いたドローンに変貌し、夢見るようなまどろみの世界が15分味わえます。
グリムの1stアルバムですが、これほど均整感のある美しさを感じたのは始めてでした。



Grouper
Cover the Windows and the Walls

2009 Root Strata  52

アメリカ、ポートランド在住の女性アーティストLiz Harrisによるソロ・プロジェクトの3rd。
ギターやドローンがふわりと舞う中で、エコーやコーラスにまみれた女声が幻想的に歌う。
ディレイ効果が幾重にも折り重なり、非常に美しい曖昧な音楽を作り出す。
そのゆったりしたシューゲイザーみたいな音楽が激しいぼかしによって滲んでいくさまは圧巻。
トラック3はインストのみなので完全にぼやけたドローン音楽です。
聴きやすい実験音響音楽という意味では随一。
40分もないですが、実に気楽に聞ける幻想的な世界でした。



Hanno Leichtmann
Minimal Studies

2013 Mikroton Recordings  mikroton cd 24

Andrew Peklerなんかと活動したりしている人物の、黙作な中の一つ。
彼の作品のテーマらしい、古典ミニマルとダンスミュージックの関係を追及した一枚。
電子オルガンやヴァイオリン、トランペットといった楽器のサンプルを
非常に細かくループさせ、そこに少しずつ加工を加えていく。
淡々としながらものっぺりとした盛り上がりを楽しませてくれるところが凄くいい。
ミニマリズムの持つ高揚感とエレクトロニカのような音加工が融合した、ミニマル好きにはたまらない響き。
どれも4分ほどの長さしかないので、長く浸ることができないのは寂しいところですが、
Studyだし、これくらいの淡さの方がこんな感じのテクノ意識を持った音楽には良いんでしょう。
後半、曲によってはどっちかっつーとミニマルサイケに近い気もしますが。
限定500部。



羽野昌二
48

2003 Improvised Music from Japan  IMJ-505

同系統のビート音を細かく紡いで、ゆっくり独特の世界が積みあがっていきます。
頂点に達したときだけ金属音と膜の音が重なる。基本的にはトムのみのインプロですね。
あんまりインプロは聴かないんですが、こういうどちらかというとハイテンションになれるものは聴いていて楽しい。
でも決してノリでやっているわけではなくて、楽器がどうとかいう考えを吹き飛ばすに足るよく練られた演奏。
ドラムスだけからこういう音楽が出るのを聴くのは面白いです。

うーん、やっぱりまだまだ自分はインプロの造詣が0に近い。
もっといろいろ聴いて考えを持たないと、こういう曲の紹介がきちんとできないや。



Marihiko Hara
Flora

2013  Drone Sweet Drone Records/night cruising  dsd011/NCD-02

京都を中心に活動する原摩利彦の3rdアルバム。
それまでのアルバムはリズムが主体になっているとのことですが、
このCDではピアノが音の中核になっています。
簡素なピアノの旋律がくぐもった音響の中で奏でられ、そこに時折淡く電子音響が入り込む。
どれも短い、さっと消えゆくような儚さを持った音楽です。
個人的には、フィールド音や虫の音が混じるトラック4のピアノとか好み。
トラック6のみ8分ほどあるドローン風の音楽で、これまた中間部における違うアクセントを持っていて良い。
40分もない収録ですが、シンプルで聴きやすい一枚でした。



Heavy Winged
The Thinner The Air

2009 Blackest Rainbow  なし(Cassette)

ポートランドで活動し、Ashtray NavigationsやTaiga Remainsなどと
スプリットCDを出したこともある3人組ユニットのカセット作品。
ミニマルなギターロックのループが、少しぼやけた光景の中で繰り返される。
徐々に反復音型を変形し、加工された音声も使ってメランコリックな風景を作り出す。
最後は音声の激しいカットアップ編集に消えていく、なかなか面白い音楽。
B面も音型は違えどミニマルな音楽にロック特有のメランコリックさを持って進むのは同じ。
ミニマルの影響が強い、テープらしいかすれた世界のエクスペリメンタル・ロックです。
限定200部。



Helena Gough
with What Remains

2007 Entr'acte  E38

バーミンガムのサウンド・アーティスト、Helena Goughのデビューアルバム。
微細な生活音をマテリアルにして、非常に静謐な印象を持つ実験作品を作っている。
ころころガラスの音が聴こえたり、機械的なドローンが響いたり、さまざまな展開。
繊細な動きのそれらは、けれど不思議な聴きやすさがあるのが不思議。
音楽の起伏が豊かだからか、女性アーティストなりの優しさの現われなのか。
硬派な電子音楽作品を思わせる、なかなかの内容でした。
ここのレーベルのリリースはだいたい袋に入った特殊パッケージ。
初版は限定300部、再発は100部ですが、白い袋は初版みたい。



Henrik Johansson
Ellipticiteter

meme  meme010CD

この人はSmyglyssnaという名義でエレクトロニカ系音楽を普段リリースしているそうで。
絞られたノイズが途切れ途切れに音をあげる。アナログがかった響きのトラックがあれば深い加工を施された音も。
ミニマルなリズムと様々な傾向のノイズ音が控えめに展開する短い曲たちです。曲によってドローンの絡みあり。
静寂系、なわけないけれど、静かなノイズにドローンを組み合わせることでどこかメランコリーな所も見せるところが面白い。
後半はサンプリング音源も。真っ白なジャケットで潔いです。



Hermann Nitsch
Musik der 66. Aktion

1998 plana-N(Alga marghen)  2AKT.014

オーストリアの代表的なアクショニスト、ヘルマン・ニッチェのパフォーマンス、「アクツィオーン #66」の様子を録音したもの。
2枚組み2時間半というボリューム、これはやばい。
シンセサイザーやオルガンの、脆弱で不気味なドローンから金管のうめきが。楽器群が咆哮し、狂気の叫びをあげる。
笛の怒号が感覚を煽り、おどろおどろしい、血の滴るドローンが支配する。
アンプ・ノイズが響き渡り、力の誇示のように入るドラムの単音。
突如、ファンキーなフォークバンドの演奏が聞こえ、それが音のハンマーで思い切りぶち壊されていく。
オルガンと管の蠢きが、やがて聴き手とパフォーマー双方の感覚を麻痺させていく。
どろどろとした血の世界が、プリミティヴな破壊衝動を伴って繰り広げられる。
想像通りのとんでもない世界。普通の人には絶対紹介できません。
24Pのブックレット付き。実際のアクション風景がモノクロ写真で見れます。※無修正
パフォーマーを磔にし、その上で動物の体を切り開き、内臓を取り出す様子。グロい。
もう聴いていて、思考がどんどん単調化してくる。それが分かりながら委ねそうになるのが怖い。
2枚目あたりから、イっちゃった人が叫んだりしててさらに危険。
こういうのを聴いていると、つくづく(ああ、自分も行くところまで行っちゃったんだなあ)と思う。
いやまあ自分は聴いてて楽しんだけどね。



Hermann Nitsch
Eighth Symphony -for Choir, Orchestra, and Noise Orchestra

Ensemble 20 Jahrhundert  Peter Burwik,Cond.
Hugo Distler Chor  Alois Glassner,Cond.
Blasorchester der Wiener E-Werke  Franz Gruber,Cond.
Wolfgang Mitterer,Syn.
2010 Tochnit Aleph  093

うへえ、ヘルマン・ニッチュ(1938-)に交響曲があるなんて知らんかった、それも8番かい。
ということは、パフォーマンス意外にも意外とまとも(??)な音楽作品も結構手がけているようですね。
まあ編成にノイズ・オーケストラなんてのが入っている時点で中身の想像はつきますが。
2001年にCortical Foundationから限定185部でLPリリースされたものの650部限定再発です。
冒頭、微かな持続音にトロンボーンやオルガンが入ってきたと思ったら、もういきなり大爆発。
バスドラの強烈なリズムの上でひとしきり喚いたら、ホイッスルの叫びに不協和なドローンがうねる。
不協和の咆哮は全管弦楽にオルガン、打楽器、金属ジャンク音などを出すノイズ・オーケストラまで混じります。
おおう、響きの構成要素が幾分クラシカルなものになっただけで、中身はいつもと全く変わらん。
突如クラシカルな音楽断片が現れて、それがノイズ&ホイッスルにレイプされるのもいつも通り。
これらの楽想がげちょげちょに入り乱れるトラック1(第1楽章?)の後半は圧巻。
そこにオルガンと合唱が入ってきちゃうから完全にイカれた世界に・・・
第2楽章は弦楽器の不協和なドローンが次第に膨らんで、ノイズ楽器や鍵盤打楽器の異世界的な楽想へ。
悦楽的な響きも多く見せながら、どこか幻想的に持続音の音楽は流れていきます。
ただ、鐘が鳴りながら合唱がドローンを歌う部分なんかを聴いていると、あくまでもこの世界は
プリミティヴでおどろおどろしいものが根底にあるんだなということを否が応にも思わされる。
頂点ではノイズ打楽器による退廃的なビートも入り、音楽はさらにつぎはぎで混沌としたものへ。
第3楽章、ヴァイオリンの優雅なワルツがねじの飛んだ田舎楽隊に変わりはて、その果てが大爆発。
マーチやポルカの残骸がノイズ音響の洪水の中でのたうち回り、何と言うかもう節操ない発狂状態がひたすら続く。
時折挟まれる、教会歌のような美しい(けれど逆に不気味)合唱が思いっきり砕かれて終わります。
第4楽章、オルガンと管弦楽のクラスターが飛び交い、それまでの楽想が全部ぶり返してくる。
正直第3楽章を聴いてて、これ以上のいかれ具合はあるのかと思ってましたが、これは怖い。
カオスと暴力と快楽が同時に押し寄せてくる、ものすごくノイジーな音楽。
やはり、ニッチュは狂っていた。最初から音楽のみのために書かれた作品を聴くと、特に強くそう思う。
さりげなく、ヴォルフガング・ミッテラーがシンセで参加。



Hermann Nitsch
Symphony No.9 "Egyptian Symphony"
Sinfonie IX 'Die Agyptische'

European Philharmonic Orchestra  Peter Jan Marthe,Cond.
2009 Gramola  98880/81

第8番と同じようなタイムラインなのを見ると、ニッチェの交響曲は大体同じような構成なんかしら。これも2時間。
オルガンドローンが静かに入ったと思ったら、いきなりどかん。
ぎらぎらとした全管弦楽のドローンがどろどろと流れ出します。
しばらく力のままに爆発したのち、低音の密な持続音に。徐々に金管の咆哮が加わり錯乱していく。
重い一打で、音響は今度は高音からばらまかれる。クラスターが炸裂し、ホイッスルと声が錯乱的な光景を作り出す。
オルガンドローンに収束し、ピッコロや木管の牧歌風な跳ねる旋律が出てきたら第2楽章。…スケルツォです。
陽気な音楽ではあるのですが、徐々に冒涜的な異常さを帯び、粗野で不協和な音楽に成長していく。
音楽は混迷とカオスを極め、その頂点でえげつないクラスターに変貌する。
そして再び狂気に満ちたスケルツォを邁進し、悪魔的なドラミングの上から、救済のような鐘の音が響き渡る。
最後にはそれらすべてが雑然と絡み合って、再び頂点まで達します。
第3楽章は再びオルガンで開始。今度は瞑想的な楽章だけあって、ゴングや弦が静かにうねる。
ゆっくりと不安感を煽るように盛り上がり、巨大なクラスターの壁を建てていく。
それがゆっくりと収まる途中、いきなり神々しい合唱と協和音が入るのがびっくり。
長く長く続く、この平和な一瞬が消えゆくと、ついに音楽は第4楽章へ。
神々しさを踏みにじるかのように、クラスターが鳴らされる。
第1楽章をベースにしながら今までの要素を盛り込み、さらには彼お得意の場違いなマーチも引っ張り出して
混沌化に拍車をかけますが、突如C音に収束します。ここからがコーダ。
じわじわと盛り上がっては美しい和音ドローンを響かせ、鐘が鳴り、ゆっくりと大団円に向かっていく。
最後には打楽器まで加わって、狂おしいまでの恍惚・歓喜に向かいます。
うむ、やはりいかれていたか…ただ終始ハードドローンな作品だったので、そういう意味でも彼らしい曲。
演奏、すごい迫力。頑張ったな…



Hiroyuki
HIROYUKI plays KALIMBA at the junction path from the east to the west in SHINJUKU

2008 VLZ Product  VLZ00007

様々な街頭で行っているカリンバ演奏が、録音の良くない雑踏とぐちゃぐちゃに繋ぎ合わされる。
新宿駅の通路を行きかう人の声、電車の音、それらに混じってカリンバの演奏が響いてくる。
路上演奏ならではの不思議な感覚、一体化しているのか浮いているのか、そんなところが妙に心地いいです。
雑踏の喧騒が演奏の興奮と共鳴して、妙な高揚へ誘ってくれる。
カリンバの演奏自体かなりのスーパープレイ。次から次へと音が紡ぎだされていく様子は凄い。
とても楽しかったです。



Hobo Cubes
Timeless/Mindless

2011 Debacle Records  DBL090

カナダ・モントリオールのFrancesco De GalloによるソロユニットのCDR。
アンビエント風にも取れるちょっとトロピカルな雰囲気のシンセメロディ。
次第にサウンドスケープが変化して、靄の中から新しい動きがゆっくりと出てくる。
トラック1は程よく抽象的なアンビエントですが、トラック2になるとサイケ風味が増す。
これはそっち系なのか、と思っていると例えばトラック5はエスニックではなく中華な感じの歌いまわしだし
要は民族的な旋法をある程度意識しつつも、それ以上は完全にフリーダムに作っているみたい。
トラック6なんかはその印象が薄いので、素直にサイケドローン風の純粋アンビエントとして楽しめる。
想像とは違う感じだったけど、なかなか悪くはなかった。



Hypnagogic Pipe Smokers
Bus Stop Telepathy

2010 scumbag relations  no.162(Cassette)

詳細不明なアーティストの作品ですが、内容は見事なまでのサウンド・ポエトリー。
男性の奇妙な朗読がいくつも微妙にずれて絡み合い、異常な朗読世界を形成します。
素材はいたってシンプルで、音響加工もほとんど行っていないのですが、
グリッサンド、歌、などを効果的に使って、実にいかれた、見事な音楽を作っています。
B面はしわがれ声を使った、ノイジーな朗読音楽。
先ほどのモノフォニックな音響の楽しさとは対極の、人声のみによる幅広い音響。
単純ゆえに、すごく面白かった。個人的にはA面のうねうねした響きが気に入ってます。
限定100部、ナンバリング付き。



i:WOUND
Punish The Guilty

2003 The Locus Of Assemblage  assemblage 011

i:WOUNDはドイツのSascha Karminskyによるプロジェクト。
2001から02年にかけて、インドのヴァラナシ・およびムンバイで録音した
音源を元に作成されたフィールドレコーディング作品。
子供の無邪気な唄、車のクラクション、民族音楽、電子パルスが絡み合う。
使っている断片は同じものを使っていることが多いので、ループ感・倒錯感がアップ。
副題に「featuring the brass band of the security police of greater mumbai」とあるように、
地元警察のブラスバンドによる上手いんだか下手なんだか微妙なへなへな演奏が入ります。
これ、私の環境じゃパソコンでもまともに再生されないんだけれど、どういうことだこれ。
限定200枚。



Ian Middleton
Aural Spaces Versions

2010 なし

一応チョーク関連の作家と思しき人物のCDR。
2009年にSwill Radioより発表した「Aural Spaces」の改訂版。レーベルなしで、おそらく自主制作。
ギター系の音による心地よいドローンがゆるやかにうねり伸びる。
マテリアルはこのサウンドが基本。これが、主張しながらも落ち着いて響きを提示する。
少しずつエフェクトを加えていって、地味でありながら面白い音の変遷を見せてくれる。
アンドリュー・チョークのFaraway Pressを模したハードボードジャケ+すべて異なるアートワークという
関連性はないけれど実に凄い装丁。これで1500円しないというのはびっくりすぎる。
ただ、装丁につられて同じ繊細な音響の系統を想像するとあれっとなるかもしれない。
良い内容ではありますが、あれとは違う指向ですね。



Ian Nagoski
Efforless Battle

Recorded  Recorded 010

非常に重々しい振動音が極小からスタート。これが徐々に変化して電子音のうめきに変化していく。
非常にじわじわとその音の振る舞いが幅を広げていくところが
なかなかじわじわと楽しめる、電子音ドローン。
やがて音楽は込み入った和音のメランコリックな美しさがあるドローンに。
が、最後は混沌とした電子音の渦の中に溶けていく。
トラック2も展開は同じ。ただ先程よりもハードな色合い。



Innercity
Adopted Panic in Hard House

amnesia agency

2009年から活動しているDraak Jagersによるソロプロジェクトのアルバム。
トラック1の退廃音響のなかで繰り返されるいかれたループを聞いたときは
(こりゃまたやべえのを掴んだなあ)と思いましたが、
トラック2のきらめくような(明るいとも位とも言えないいかれ具合の)シンセループが
重いベースリズムと同居する音楽を聞いてさらにアングラ率UP。
トラック4に至っては激烈なジャンク音響の中でがしゃんがしゃんとコラージュループ。
おおお、これは見事なまでに・・・でも心地良い。
楽しかったんだけれど、あの時これ買うくらいならEliane Radigueの方買っとくんだった。
だってこれ買ったせいで涙飲んで買わなかったんだもん。
トラック4,5あたりのぐちゃぐちゃ感覚が聴き物。
たぶん限定50-60くらい。超CDR。



Intonarumori Orchestra
Atsuhiro Ito; Russolo Phone
Sachiko.M; Intonarumori
Tetuzi Akiyama; Future circuit
toshimaru Nakamura; Disk
Otomo Yoshihide; Anode #4
Taku Sugimoto; All about something2

大友良英、杉本拓、Sachiko.M、中村としまる、秋山徹次、伊東篤広; Intonarumori
2003 OFF SITE  004

イントナルモーリってなんでしょう。これはイタリア未来派の芸術家、ルイージ・ルッソロ(Luigi Russolo)
が発明した騒音を出す楽器のこと。直方体の本体に独特なフォルムの漏斗型拡声器がついた外見。
こんなものを1910年代に作って騒音芸術を提唱しているから未来派はすごい。
オリジナルは第二次大戦でなくなってしまいましたが、これを秋山邦晴主導のもと再現し、演奏したアルバムがこれ。
さまざまな音を出す、名前も違う全6台のイントナルモーリ・オーケストラ。
伊東篤広の曲は金属的な喧騒がぽろぽろ続き、ある意味聴いていて爽快。
Sachiko.Mは一人で6台のイントナルモーリを操作してるだけあって、間の多くも幅の広い静かな曲。
秋山徹次の作品は非常に現代音楽的。緩急ついた、物語性のある曲です。
中村としまるの曲は、杉本拓によるソロ作品。まさに雑音。
静寂の中で、1台のみ(ロンバトーレという種類のもの)を使って、発音と無音の狭間をひたすら通り行く。
ヴァンデルヴァイザー楽派なみの音世界。確かに杉本に合う曲だ。
大友良英の曲は、おかげで相当激しく聞こえます。実際やっぱり激しい。
ラストの杉本拓、やっぱり静寂系の音響作品に仕上がっています。どこまでが音なんだろう。



Isolde
All Things To Fall Like Marching Men

2008 Penny Poppet  003

Andrew ChalkとRobin Barnesによるユニット、イゾルデ。
2005年にカセット(限定30部)で出ていた音源の、300部限定再発です。ナンバリング付き。
1曲目「Inferred Melody(暗示的旋律)」、鳥か何かの空ろな泣き声に、物悲しさを覚えるギターの音が響いてくる。
「For Crusoe」はさらにギターのインプロ的な爪弾きが前面に。
「Walkabout」では、ギターに加え、背後の電子音などの音響が耳に残るようになってくる。
「七歳になる弟クリスの誕生会で、アンジェラは主人公として振舞う」とか、やたら長い題なのに一番短い曲。
一番ギターの音が背後に溶け込んでいる。鈍い鐘の音などが加工され、共に歌いつぶやく。
アルバムを通して、ギターのどこかメランコリックな音響的広がりが非常にチョークらしい、良いアルバムでした。
ただ、いつもの彼やIsoldeとは結構違う印象なのは確か。
ジャケットも変わらず手が凝っていて嬉しい。このアートワークは額縁で飾っておきたいレベル。
良く考えなくても、自分の買ったのは海外版でした。国内盤なら日本語がちゃんとあるはずだもんね。



James Blackshaw & Lubomyr Melnyk
The Watchers

2013 Important  IMPREC375

ロンドンの12弦ギタリストと「KMH」等でおなじみウクライナのピアニストの共演盤。
トラック1、メジャーの分散和音が折り重なる、カントリー風な音楽。
ゆったりと流れるコードや旋律が即興演奏で重なって続いていく楽想はすごく綺麗。
最後の淡くリズムが瓦解していく場面は個人的に屈指の素晴らしさ。
まさにMelnykが提唱するContinuous Musicそのものだと思える。
トラック2は幾分コードも変則的にしてメランコリックに。後半きらめくような旋律断片も現れる。
トラック3は雰囲気をころころと変える、景色の移ろいを楽しむかのような音楽。
最後のトラック4、特に最後のいかにもな畳み掛けはずるいけどやっぱり良い。
Melnykのソロ盤は絶妙な響きがちょっと…な人も安心して聴ける心地よさ。



James Plotkin & Mark Spybey
A Peripheral Blur

1998 kranky  krank032

ふわふわと素っ気なく柔らかい音が浮かびながら、逆再生のような音が徐々に盛り上げる。
虚ろなドローンが淡く吹きすさび、そこから音の断片が飛んでくる。
krankyからのリリースらしい、とても穏やかでどこか靄の掛かった、ぼやけた輪郭の世界。
落ち着いて聴ける良いアンビエントです。
センチメンタルとかメランコリックな感じではなく、単純に美しい響きを持っている感じ。特にトラック1。
こんなに綺麗な曲を作っているのにプロトキン本人の経歴はヘヴィメタのギタリストで始まり、
ドゥーム・バンドとして有名なKhanateのメンバーだったりKK Nullとコラボしたりと相当にすっ飛んでいる。
相方Spybeyのほうは実験音響が強い人らしいので、こちらの影響も結構あるんだろうか。



Jean-Luc Guionnet
Gezurrezko joera

2011 AUDIOLAB-ARTELEKU  ERTZ 5

1966年リヨン出身、サックス奏者であり
自然をベースとした音響制作を行う人物の、教会オルガンを使用した作品。
微かな物音、無音の背後で響く外の音。
やがて、微かなノイズと電子変調されたオルガンの音らしきものが微かに響き、
ぶつぶつと不連続に音が空間に放たれる。
ちょっと音が大きくなってもまたすぐに引っ込み、暗い無音の影に隠れてしまう。
やがて、じりじりと低くうなるノイズが持続音として現れ、空間を下から圧迫しだす。
それが不安定に響きをゆらし、さらに音楽の緊張感を高めてくれる。
劇的ではありませんが、その独特のテンションは面白かった。



Jesse Paul Miller & Will Kitchen
Gunung 1 (Ambient)

2007 なし

Jesse Paul Millerはフィールド系サウンドアートの他、絵画や彫刻系の作品も手がけているらしい人物。
ぽつぽつと聴こえる電子パルス、海の音、撥弦楽器の擦れ、物音。
タイで録音したフィールドレコーディング素材に、ふわふわと電子音がかすかに絡んでくる。
電子音メインなのかフィールド音メインなのかよくわからない混ざり具合。
けれど、その混合レベルが、聴こえてくる音を一つに纏めて聴かせてくれます。
どこが良い、と細にわたって言えるほどではないけれど、なんかだらだら聴いてて悪い感じはしない。
そんな、不思議な魅力を放つフィールド系アンビエント作品でした。
限定20部ナンバリング付き。この人グレインジャー以上に限定好きだなあ、20部とかなんだよ。



Jesse Paul Miller & Will Kitchen
Star Nebula

なし

普段はフィールドレコーディングを駆使し、様々な内容のフィールド系作品を作っているJesse Paul Miller、
今回Will Kitchenなる人物と組んだこのアルバムはちょっと異色。
全くフィールド音を使わずに30分ちょっと全5曲のアルバムを作っています。
エレクトロニカな気もするビート、捉え所のない電子音の煌めき、簡素なギターのフレーズ。
どのパートもふわふわと、とりとめなく辺りを浮かび回る。
なにかポストロックかエレクトロニカか、そんな音楽をイメージしながらも全然うまく組み立てられない感じ。
その不定形な感覚は、たしかにタイトル通りかもしれません。不思議だけれどどこか落ち着く音楽。
星図を黒い厚紙にプリントしたなかなかカッコいいジャケ。二つ折りだけれど。
いつものごとく限定30枚というとんでもない少数配給。ナンバリングつき。



Jesu
Infinity

2009 Avalanche Recordings  arec017

カナダはトロント出身、Napalm DeathやGodfleshなどのメンバーであるJustin K Broadrickのプロジェクト。
ノイズのビートに、メランコリックなメロディーがミニマルに繰り返される。
そこから場面が変わるとバスドラムだけ激しいビートに乗せてボーカルがゆったりと歌う。
シューゲイザー系のギターにノイズとロックを足した感じ。そんな音楽が50分ずっと続く。
こりゃまた随分ミニマルで長いロックだ。悪くないし好みだけれど、聴くのに疲れる。
にしてもやっぱり、ナパーム・デスみたいなロックバンドの人たちはこういうアングラ系の音楽も詳しいんだね。
限定1000部。



John Wall
Alterstill

1995 UtterPsalm  CD2

ジョン・ウォールはロンドンの、現代音楽などを主なサンプリング源として用いるコラージュ・アーティスト。
弦楽合奏のクラスターと管弦楽の激しい爆発音、それにバリトンなどの短い歌唱やベースが絡む。
弦の特殊奏法ノイズが響く中に、突如ロックがフィル・インする。
ピアノの重い音に電子音とレゲエな声のループ、ライヒみたいなミニマルの弦にメレディス・モンクと思しき声やメタルロックの断片。
異常なまでの作りこみであることが、聴いて明らかに分かる。
何しろ、とんでもない量かつ幅広いサンプルを使用しているにもかかわらず、全体としては
明らかに現代音楽の管弦楽作品であるかのような印象を受ける。
音同士の絡み方も実に繊細で、これを「実験音響」の一言で済ましては申し訳なく感じるほど。
素材を完全に自分のものにしている点も素晴らしい。一応それなりに現代音楽は聴いているけれど、
聴いた瞬間「あれだ!」と分かるものは意外と少ない(自分の学がないだけだと本当に申し訳ないが)。
例えばトラック3のライヒ風にせよ、サンプリングでそう聴かせていて実際にライヒのサンプリングを行っているわけではない
(もしそのまま使っているとしたらVolansの曲かな?)。
きちんと完全に消化して、みごとに全く別の作品に練り上げるその手腕に脱帽。
まさに現代のミュージック・コンクレートという言葉が相応しいでしょう。
サンプリング技術によって新しく作り変えられた、黎明期具体音楽の世界が見える気がします。
電子音楽、現代音楽、実験音響を聴く方に是非お薦めしたい内容。



Jon Rose
Violin Music for Restaurants

ReR  BJRCD

アヴァンギャルド・ヴァイオリニストであり、その設定捏造で有名なジョン・ローズの
レストランにおける怪しげなライヴ音楽、という体裁のアルバム。
トラック1。導入こそ軽快な普通のジャズで始まりますが、どんどんヴァイオリンがいかれてくる。
ノイジーになったと思ったらエレキな過激編集を施されたノイズがぎりぎりごろごろと暴れだす。
ベースラインはずっと小気味よくジャズテイストを保っているのにこのいかれた空間はなんでしょう。
その後のトラックは調理用語のコラージュとノイズの混合やフォークロアな音楽、
ループからの何やらシリアスな調子、ばらばらなゆるいムード音楽と音声カットアップ、
とにかくもう何でもアリのはちゃめちゃな一枚。
やりたい放題している感覚が心地よい、楽しい1時間。



Joseph Celli
Video Ears Music Eyes

1995 OO Discs  OO 22

アメリカのマルチサックス奏者ジョセフ・チェリの監修。演奏してはいません。
マルチチャンネルのビデオを使用した、なかなか個性的な作品群です。
大判解説だったので面倒だからと読んでないんですが、たぶんいくつものビデオを通して演奏風景が再生され、
その光景からまた演奏者がライヴで即興を重ねていくというコンセプトだと思われます。
トラック1はコムンゴ(Komungo)という朝鮮の琴に似た民族楽器によるもの。
ぼろんぼろんという音が次第に幾重にも重なり、音の響きが豊かになっていく。
最終的にパルスのようになるまで高揚し、その頂点でふと終わる。
トラック2は鍵盤打楽器のためのもの。が、旋律らしきものはなし。
ひたすらグリッサンド。グリッサンドの重ね合わせですべて進行します。
シロフォン、マリンバ、ビブラフォン、そしてオーケストラベルの音が細かく幾重にも反響して、
さざなみのように絶えず押し寄せてくる。この音響は爽快です。
トラック3はペルーのフォーク音楽集団による、民族楽器の祭典。
カホンのリズム、ケーナの低い響き、民族楽器の独特に濁った音がどんどんと盛り上がる。
個人的には、企画には一番合っている演奏だと思った。
トラック4、Ulrich Kriegerによるサックス。なぜ自身じゃなく彼が?まあ大御所だし大歓迎だけど。
人力ドローンのような冒頭から次第に動きが分離してくる。
トラック5、Malcom Goldsteinによるヴァイオリン。演奏者豪華だな・・・
かきむしるような音がパルスになって響く。激しく入り乱れる音たち。
音楽的にはこの最後の曲がなかなかすごかったなあ。



Joshua Abrams
After

2004 luckey kitchen  lk023

フリージャズのベーシストでもある人物の2002年作品。
虚ろな反響、鐘の音、淡く響く弦楽器やピアノのループ。
薄く響く雨の日のようなフィールドレコーディングにかぶさるベースの即興。
オルゴールの音が寂しく鳴り響き、花火の音、かすかな電子音が聴こえる。
彼らしい、即興演奏を基調としながらも淡い実験音響色をはっきりと見せ、
寂寞さと美しさをそっと聴き手にもたらしてくれる。
長尺のトラック2つだけで、世界がずっと一貫して流れている点で、
全体通して聴くにはBusride Interviewより気に入った。
フィールドレコーディングと即興演奏、エレクトロニカの狭間を行く実に個性的な音楽。



Kam Hassah & Ottaven
Montagna

2011 Second Sleep  SS014

イタリアの当ノイズレーベル主宰Matteo Castroによるプロジェクトと、
やはりイタリアのインダストリアル系アーティストによる共演盤。
重苦しい、荒廃したノイズドローン。その起伏に覆いかぶさるように、ギターノイズが騒ぎ、吠え立てる。
ノイズの風がはためく中、変調をされすぎた溶解ボイスが響き渡る。
そこからOttaven由来のインダストリアルビートが響きだす。
ビートは絶えず崩壊の危機に晒されながら、危うげにその身を見せていく。
じりじりと照り付けられるような、ささくれた音の帯が
ゆっくりと這い進むさまが、まさにかっこいいの一言。
渋いインダストリアルノイズです。分厚い厚紙を無造作に折ったジャケ。



Kiln
One

Contemporary Art Production  CAP 1
実験音響の重鎮コリン・ポッターがフリージャズの奏者とユニットを組むというちょっと異色な組み合わせ。
トランペットがころころと転がり、チェロがごーごーと音をどんどんと出していく。
完全にフリージャズの世界に、コリン・ポッターのエレクトロニクス編集が介入してくる。
そのさらっと入ってきては簡素なフリーの世界を刺激的な実験音響に変えていく辺り流石。
最初は無編集で始まりますが、しばらくすると何の音だか推察に苦しむような音ばっかりに。
後半、ほぼ完全にダークな電子音楽の世界です。
音楽はもちろんインプロですが、リズミカルな部分もあったりして普通に楽しい。
こういうことをしてくるから実験音楽は面白いですね。



Kiln
Kiln with Chris Sacker

Contemporary Art Production  CAP 2

コリン・ポッターとフリージャズの融合、今回はボイスつき。
ひょろひょろと流れるトランペット。リズムとも旋律ともつかぬ動きを奏でるチェロ。
そして、数字やテキストを滔々と話すSackerの声。
前作では、まだ奏者の動きは完全にフリージャズのそれだったために
そこから作られる音もそちらの雰囲気が随分強かったんですが、
ここでは双方ともに慣れてきたのか、かなり実験音響に近い世界が作れています。
生演奏と電子編集の境界が曖昧になったことで、その内容はさらに高内容に錬成されている。
倒錯した、混沌の中の音楽が聴けるいいアルバムです。



Kiyoshi Mizutani
Bird Songs

ground fault  GF010

水谷聖の、(たぶん、一応)フィールドレコーディング系の作品。
フィールドレコーディングされた鳥の声と、電子変調か、はたまた鳴き声に似せた電子音が交じり合う。
そこに、ともすると場違いにも感じる金属音などのノイズが絡んできます。
曲ごとに、眼前の光景は変わっていきます。晴れた森の中、雨模様の中、ウォーターフロント、郊外の都会・・・
フィールド音楽と電子音楽、はたまた即興演奏のどれとも違う不思議な音楽でした。
クワイエットノイズ、なんて表現もあるけれど、自分としてはこの音楽にノイズとはつけたくない気がする。
各トラックのタイトルがローマ字なので、どの鳥の鳴き声か分かりやすくてよかった。



Kiyoshi Mizutani
Transcend Sideways

1997 Artware  ARTWARE 19

水谷聖の97年ドイツのレーベルからの作品「横超」。だけれどやけに古代日本/中国風な体裁。
トラック1、激しくかき回されていくノイズに時折具体音の破裂が絡む。
ひたすら続いていくノイズの雲はひたすら無機質に、けれど曖昧さも保ったまま揺れて佇む。
何というハーシュノイズ風味。そういえば彼、初期のMerzbowにも参加してたんでしたっけ。
トラック2は様々な音声加工が中核。もはや判別不能なまでに加工された声たちが、
無慈悲なノイズの波に洗われて、なす術もなく空中にただ漂っている。
トラック3はトラック1と同じ方面ですが、さらに能面のような表情が漂う。
そこにおぼろげに入り込むフィールドレコーディング。ここらへんは近作にも通ずる感じが。
トラック4では電子音のノイズとマラカスが不定形に対話する。



Kneale Kneale Kneale
Majestic Header

2006 Celebrate Psi Phenomenon  なし

NZ実験音響の大家Campbell Kneale、変名による自身レーベルからのイシュー。
ちょっとチープな感じもするリズムマシンのドラムに乗せて、いつもの彼らしいギタードローンが伸びていく。
ギターだけ聴いていると実にいつも通りなんですが、
そこにからむビートがその、凄くへたれ。何と言うか、テクノポップみたいなノリ。
時折リズム内容が変化しながらそれでもひたすらへたれていく。
特に取り立ててそれ以外の大きな展開はないんですが、なんかすげえ楽しい。
気楽に聴くときにもってこいな実験音響アルバム、て書くとなんか変な気がするなあ。
でも本当だからしょうがない。もしかしたらこのアルバムは
実験音楽好きよりもテクノ好きに聴かせたほうが評価が高いのかねえ。



Kommissar Hjuler
...unter Matrosen

Der Schone Hjuler-Memorial-Fond  SHMF-Shanty

自身のレーベル?から膨大な限定リリースを行うフルクサス系と思しきアーティストによるCDR。
水洗トイレ、街頭の適当な歌、水道か何か水中のくぐもった反響。
前半の大部分は水をかき回す音が響いてるだけ。中間は
作者の大げさな歌が延々続く。自分で笑うんじゃねえ。裏声で叫ぶ「I am Seiren」、うるせえ。
何と言うか、フィールドレコーディングを無節操に繋ぎあわせたかんじ。
さしたる意味がわからない展開なあたり、フルクサスかなあと思ってしまう。
限定36部。でも・・・こんなものを沢山の人間が欲しがるとも思えないからこの数が妥当に思えてくる。



Laibach
Krst pod Trigiavom-Baptism

Sub rosa  SUB CD 001-9

Laibachはスロベニアの政治思想集団。単なるインダストリアル系音響のアーティスト、というよりは
思想表現の手段として芸術を用いている、ような感覚のようです。
このCDは、彼らが80年代後半に作った劇のサウンドトラック。
オーケストラの断片がループされ、合唱が乱入する。ロック調に変調され、ひたすらループしていく。
激しく鋭い、どこかプリミティヴなループは、聴いているものを陶酔状態にさせてくれます。
クラシックと土俗世界、過激音響がとろけあったようなやばさ。楽しかったです。
グラモフォンのパクリなジャケットですが、中身は写真などの情報含めかなりしっかりしてる。英語じゃないのが残念だけれど。



Lethe
Sleep Digest

2000 Pale-Disc  PD-05

桑山清晴のユニットの初期のCD。まだ菊池行記氏が参加していた頃のもの。
オルガンのようなくぐもった響きに金属音がぽつりぽつり鳴らされる。
電子音と生音ノイズが不規則に絡み合い、ドローンでもリズミカルでも無い歪んだ世界を作り出します。
けれどそれにも規則性があるなと意識できるようになる頃には、もう次の楽想に入れ替わる。
とてもよく作りこまれた音の配置が絶妙のタイミングで聴き手の意識を覚ましてくれますね。
録音はぼやけていてハウリングもあり、あまり良くない。けれどそこが、逆に音楽の空ろさを引き立てています。



Library Tapes
a summer beneath the trees

2008 Make Mine Music  mmm053

かすんでぼやけた日常のノイズをバックに、ノスタルジックなピアノや弦が入ります。音数少ないピアノがメイン。
アコーディオン、バンジョー、チェレスタといった音がさり気無く混ざってくるあたりがアコースティックな感覚を強調します。
聴いていて切ない気分にさせてくれる、なかなか良い感じのアンビエント・エレクトロニカ。
ただ、素朴な感じは良いんだけれどなにかもう一歩ほしいなあ、それとも単に自分に合わないだけか。
そういえば、MMMの曲はどれも良い内容なんだけれどあと一歩が足りない印象ばかりだ。
とはいえ、買うに足る十分な内容はあります。特に最後9曲目は10分かけて聴かせてくれる。
MMMにしては珍しい(と思った)デジパック仕様。



Library Tapes
Feelings for Something Lost

2006 resonant  RESCD020

スウェーデンのDavid Wenngrenによるプロジェクト、2ndの再発。
冒頭は電車の駆動音。ビアノのメランコリックな旋律、茫洋としたノイズの背景。
3分足らずの短く淡い情景が、拙い記憶の断片のように過ぎ去っていく。
アンニュイな映画のワンシーンのような、そんな音楽。
実験音響とアンビエントの隙間を行くような、幻想的な不思議空間を味わえる一枚です。
インナーのぼやけた白黒写真がなかなか合っていて、ハードの作り込みもいい具合。
個人的にはトラック5、9がいい感じ。13曲収録ですが、30分もありません。
なんかウォークマンで録音したみたいな、(個人的に聞き覚えのある)機械音が混じってるんだよなあ・・・



The Lightbox Orchestra
First Contact!

2002 Locust Music  LOCAST No.9

フリー系奏者がかなりたくさん集まって結成しているユニットの初アルバム。
さりげなくケヴィン・ドラムやオルークが参加してます。
ライトボックス操作によって各奏者の演奏指示などを出されることが、そのまんまユニット名につながっています。
ラップトップやシンセによる音がごちゃごちゃと次第に積み上がっていったり
Guillermo Gregorio達の変態的なインプロ合戦だったりと、中身は想像通りいかれたフリーセッション。
ジャズ系の人がいるせいか、結果としては純粋なインプロ合戦よりはフリージャズのそれに近いイメージ。
やっぱりオーケストラと名のつくこの手のものはすっ飛んだ内容が多いね。
Vibracathedral Orchestraしかり。



Limpe Fuchs
Vogel Musik

Robot Records  37

ドイツのエクスペリメンタル・バンドでも活躍する女流アーティストのソロwithゲスト2人。
さまざまな民族系打楽器を用いて繰り広げられる、プリミティヴさの混じった音楽。
残響の長い広い空間の中で孤独に繰り広げられる、不可思議な演奏。
クラリネットやサックス、声による、息の長い即興がふわりと呼応する。
1、7トラック目はその残響がDeep Listening Band風でとてもよかった。
他はころころとした即興風のトラックが多い。ただ、感覚が一貫してもやもやしているところは
フリージャズ経由というよりは実験音響よりの印象を強く受けました。
コードに頼った演奏ではなく、メロディに頼った演奏。
Christoph Heemannによる、鳥を模した彼独特のジャケットも素晴らしい。



Llorenc Barber
Signa



スペイン出身の異端アーティスト(1948-)のアルバム。
ジョン・ケージへの傾倒に始まり、ファン・ヒダルゴのZAJにも参画したのち、
鐘を用いた巨大インスタレーション作品へと作風を到達させることになります。
基本的に彼の作品は、一つの町や都市をまるまる巻き込む壮大なもの。
教会などの鐘を無数に用意し、それらのために楽譜を用意して、それを町のあちこちから同時に鳴らす。
この音源では、スペイン北部の都市サンタンデール(Santander)で2000年7月31日に行われた
フェスティバルで実際に演奏された作品のライヴ音源。
大砲が鳴り響き、教会らしき場所の鐘の音が徐々に響いてくる。
そこかしこで鐘ががらんがらんと鳴り響き、声やホイッスルなどが時折風に乗って聴こえてくる。
後半になるにしたがって、じわじわと音の厚みが増していくのがやばい。
50分を超える、超壮大なパフォーマンスの記録。



Luc Kerleo
Un Clocher

1998 kaon  fe98

サウンドアート系の作品に強いレーベルから出た、よくわからないアーティストの3インチCD。
いや、検索すれば本人のサイト出るんだけれどフランス語でぜんぜん理解できなくて・・・
最初はピアノの音を主なマテリアルとした、ミニマル風なぼやけたループ世界。
かすれたホワイトノイズやささやかな電子音が褪せた色合いを添えています。
それが徐々に変化して、やがてはホワイトノイズに激しく侵食された電子音へループ内容を変えていきます。
さらに鐘のような音がループに加わり、不思議なノスタルジーを味わえる抽象空間のまま唐突に終わる。
なかなか素晴らしい内容でした。マイナーで残念。
というか、自分はこういうループ系の曲と相性が良いみたい。



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