音響系、インプロ M-
ドローンやノイズ以外の実験音響系はここに。ただし基準は聴いた感じなので、同じ作家でもドローンの方とレビューが分かれてることも。
Fluxus系は悩んだ末こちらに入ってたり。
ちょっと中にはテクノっぽいやつも入っているけれど、まあもともとカテゴリなんてたいした意味ないし・・・大目に見てください、ええ。
だいたいアルファベット順。コンピものは最後にまとめて。
Yoshio Machida
Infinite Flowers
2004 amorfon002
スチールパン奏者であり、音楽を秋山邦晴らに師事したことのある町田良夫の3rdソロアルバム。
スチールパンがぽつぽつと音をかなで、そこにドローンがふわりと入ってくる。
ロボットコーラスとゆるいテクノポップな音楽にスチールパンが簡素に歌う。
スチールパンとエレクトロニクスがカット編集されながら淡くゆらめく。
さまざまな音楽の中で繰り広げられる、スチールパンの魅力が存分に味わえるCDです。
後作の「Naada」では電子編集を排してソロの即興で勝負していましたが、
こちらのような加工や追加を大量に施したものもまた楽しい。
全体的にはエレクトロニカな印象が強いかな。
ちなみに、このアモルフォンというレーベルは町田自身が主宰です。
Maurizio Bianchi
Dead Colours
2008 Silentes Minimal Editions sme0717
2005年に120部限定でリリースされていた作品の再発。
正直、「Colori」とどこがどう違うんだかさっぱりです。ちょっとフィルタリングしただけじゃないの、これ。
聴けば聴くほど、違いが分からなくなってくる。なんかもう聴いてて気持ちいいから別にいいや。
ビアンキの、入信後の極楽浄土的な救済の絵図。ちょっとチープな流麗アンビエントです。
Maurizio Bianchi
Frammenti
2002 EEs'T(Alga Marghen) 14MB014
1曲目、「Fragment LW 268」は古典的クラシックの音楽の断片が細切れにカットアップ・ループされて無秩序に繋がれていく。
その隙間に無機質なホワイトノイズが入る。展開はこれで全て。他には完全に何もなし。
ずっと聴いていると危険なまでにスッ飛んだ世界に飛べますね。
ノイズの方が逆に現実世界に呼び戻してくれるくらいの、澄ました顔して実はかなりいかれた音楽。
気がつくといつの間にか2曲目「Fragment MV 585」に入ってる。中身どこが違うか分かりません。
まあ最初に比べたらノイズの主張がちょっと多いかも、って位でしょうか。これでひたすら75分。正直聴いていて思考が止まります。
3曲目「Psalmos 151」だけ、「Colori」や「Dates」みたいな穏やかなアンビエント空間。
それまでずっと強烈な洗脳音楽を聴いていただけにこの瞬間は救われますね。エピローグみたいな5分。
こんなヤバイ音楽はそうそう無いでしょう。ビアンキの中でも筋金入りの危険度を誇る曲。
限定200枚?300枚?500枚?情報が交錯してよく分からない。とりあえずDiscogsによると500枚とのこと。
Maurizio Bianchi
Zyklusters
2007 lona Records locd38
ビアンキ2007年の作品、限定100部ナンバリング入り。
ぼんやりとした荒漠な光景が、もやもやした電子音で示される。
ぼやけた中で物音ノイズのパルスが希薄にこだまする。
最後のトラックだけは接触不良系のノイズが大きいですが、それでも不気味な抑圧が曲を支配している。
初期のノイズとはまた違った、静寂さが目立つ音楽。
感覚としては近年の創作の流れに順当に沿っていると思います。
Maurizio Bianchi
The Self-Portrait of M.B.
2008 silentes sme 0715
「An Absurd三部作」として、「Dead Colours」「Menstruum Regeles」と共にリリースされたもの。
茫洋とした音のループミニマルが、ほわほわと響く。
時に暖かく、時に切なく、時に不穏げに、終始アブストラクトなドローン展開。
近作のビアンキとしての特徴を備えつつ、かなり聴きやすいサウンドで攻めてくれる。
アルバムのタイトル通り、近年の彼の作風を集めたような代表格的存在だと思います。
トラック3が、聴いていて心地よいアンビエント的音楽でお気に入り。
Maurizio Bianchi
Niddah Emmhna
2006 silentes minimal editions sme 0504
今回のマウリツィオ・ビアンキは、聖書のレビ記15章の第19から33行を基にした最近の作品らしい宗教ネタ。
1曲目「Niddah」は初期の彼を思わせる爛れた感じの音と、アンビエントな音が絡み合い、絶妙なアブストラクト空間を作り出す。
とはいっても、音自体は非常に聴きやすい。緩やかに表情が変わり、アンビエント感覚で聴けます。
アコースティック、エレクトロ、様々な音源が溶け合い、神聖な血による救済が描かれる。
2曲目「Emmhna」は輪郭の失われた金属ドローン。鋭く表情を変えながら、茫洋で、どこか荘厳なトリップ空間。
こちらはけっこう初期寄り。さすがに爛れた感じは薄いですが、硬い音が空間に響き渡ります。
まあ宗教家でない私には音世界の実感がどうも沸かない部分もありますが、音楽自体は素晴らしいですね。
今までの極端な作風の、そのボーダーに位置づけられるような音楽の作品。
Maurizio Bianchi
Menstruum Regeles
2008 silentes sme 0716
今までの彼の音源と思しきマテリアルが、無編集でカットアップされ、短い間をもって繋がれて行く。
これで音源がまったく同じなら「M.I. Nheem Alysm」みたいな異常空間になるのですが、
今回はかなり幅広い時期の音源を使っています。ただし、メインは「Colori」みたいな近作から。
そのため、まるで過去の様々な記憶が断片状にばらまかれてしまったような感じ。
近作のアンビエントな音楽が繰り返される中、唐突に現れるノイズ音がはっとさせる。
好きだけれど最近あんまり出なかった感じのアルバムなので嬉しかった。
Maurizio Bianchi
The Valley of Deep Shadow
2008 Menstrual Recordings LH08
じりじりと睨めつけるような冷たい電子音ドローンが鳴り響いていく。アブストラクトな音響がわんわんとこだまする。
旧約聖書の第23詩編を題材とした、霊的と言うか異質な感覚を味あわせてくれる一枚。
まあ相変わらずの作風でしたが、ノイズドローン風味なM.B.作品の中では
特に虚ろで冷たい雰囲気だったのが良かった。
いつもはもっと内気にもやもや鬱屈した感じが強いんですが、
今回はいつの間にか背後に忍び寄ってきそうな積極性を感じます。特にトラック6以降がやばいね。
トラック8の美麗アンビエントが溶けていく様は不思議な美しさです。
ハードプラスチックケース仕様、限定515枚ナンバリング入り。
M.B.
Regel
2007 Finalmusik FM08
マウリツィオ・ビアンキ1982年の音源を98年にリマスターしたものの再販。
旧盤は真っ赤なジャケが印象的でしたが、これは近作っぽい写真の白いジャケ。
じりしりしたアブストラクトなノイズに、ぽわぽわした電子音が入ってくる。
背景はビアンキらしいクールな爛れ具合ですが、そこに絡むスペーシーな電子音がびっくりするようなアクセント。
これはどうも彼らしくないなと思っていたら、案の定爛れた音の渦中に飲み込まれていきました。
2トラック目はスペーシー電子音がメイン。こちらは随分ダウナーなテンションです。
電子音によるだらけたメロディーが延々と続くさまは1トラック目よりよっぽどドラッギー。ちょっとシュニッツラーっぽい。
ボーナストラックに、Broken Flagからリリースされたコンピ’Neuengamme’に参加したときの曲「Acido Prussico」を収録。
こっちは思いっきり初期の彼らしい、どろどろしたノイズ空間。
とろけて形を失った音たちの向こうに、微かにメロディーのような音が聴き取れます。
M.B.
Nervo/Hydra
2010 Kubitsuri Tapes S;E;X59-034CD
1981年にカセットイシュー、その直後に何回かカセットなどでリイシューされていた音源の
長い間を経た再販。なお、以前は「NH/HN」という間違えたタイトルでの発行だったようです。
衝撃音のようなアクセントと、痙攣するようなノイズの叫びが滔々と繰り返される。
次第にそれらは錯乱の度合いを増していき、うねり騒ぎ立てながら歪みを大きくしていく。
後半のHydraはそこからさらに崩壊していって、もはや元が判別不能な歪みの最奥に迷い込んでいってしまいます。
音の歪んだヒステリーを存分に楽しめる、典型的な初期M.B.の音。
限定500部。
M.B. + E.D.A.
Regolelectroniche
Baskaru karu:8
おなじみマウリツィオ・ビアンキとフランスの
アンビエント系アーティストEmanuela de AngelisによるコラボCD。
どこかメランコリックな弦楽や鐘のループ。
輪郭のぼやけたホワイトノイズの中で回る淡い音源が少しづつ移ろいゆく。
音楽の輪郭としてはほぼ完全にE.D.A.のもの。
その夢見るような幻想的光景はInfractionとかからリリースしてても違和感ありません。
そこにM.B.のループ処理が加わることで絶妙なスパイス処理ができている。
このちょっと色あせた音の崩れ加減がいかにも彼らしい手腕。
でもビアンキのノイジーなインダストリアル指向が苦手な方にも超おすすめ。
とりあえず長尺のトラック2は特に素晴らしい、ループドローン・アンビエントのアルバム。
トラック4なんかはビアンキの色が逆にちょっと濃いかな。
ジャケットの花の美しさがまた格別。実はジャケット買いでもありました。
Mem
It was a very good year
2003 Alluvial Recordings A16
ポーランドのアーティストKamil Antosiewiczによるソロユニットのアルバム。
Ervin Drakeが作曲した、フランク・シナトラの歌で一躍有名になった同名曲を唯一のマテリアルとして用いています。
幻想的な、オルガンか何かを思わせるドローンがふわふわと現れ、ゆっくりと風景が入れ替わる。
この非常に遅々とした時間感覚が、心地良い響きへの陶酔に拍車をかける。
中間部は幾度かぶつぶつノイズ音のカットアップが始まり何事かと思うけれど、
そこからまた煙のようにループが立ち上るさまは非常にかっこいい。
中盤以降のループは、あえて二つの同一ループをずらして倒錯的に迫ってきます。
後半かなりアブストラクトになった中から「It was a very good year」の言葉が浮かび上がるさまは実に秀逸。
ループによる細かなゆれも含め、実に温かみがあって落ち着ける作品です。
Michael Renkel
errorkoerper III
2006 Absinth Records absinth 009
ベルリンのギタリストによる、ギター、FX プロセッサー、ラップトップを用いた作品。
瞑想的な、モアレの中にとけきったギターが響いてくる。
そこから始まり、徐々に音が変化し、質の違う音が少しずつかわるがわる提示されていく。
終始非常に静かで、音の動きが掌の中で細やかに組み合わさっているよう。
インプロともつかぬ、バラエティある音楽が68分かけて展開する。
音への傾聴が促される、なかなか個性的な一枚でした。
中途半端な大きさ(7インチくらい?)の紙ジャケハンドメイド。
限定500部ナンバリング入り。番号1桁のやつを入手してびびった。
Mieko Shiomi
Fluxus Suite -A Musical Dictionary of 80 People Around Fluxus
2002 ? Records
関西在住の、日本の代表的なフルクサスアーティストである塩見允枝子がフルクサス活動40周年を記念して制作したCD。
フルクサスに関わりのある80人の人名から音名になりうるアルファベットを取り出して
(順番は関係なし。そのためマチューナス/George Maciunasからはc,cis,es,e,eis,ges,g,gis,a,ais,cesと
実に11音が取り出せる。逆にオノ・ヨーコのトラックは・・・)
主にあまり音名がとれなかった人物たちのために、各人物ごとに異なった音色を設定する。さらに、
1)その人物の作品をリアライズする(ようは似せると言うこと)
2)その人物が作品に用いた技法を模倣する
3)その人物のキーワードとなる単語を設定し、それを描写する
のいずれか・あるいは複数を組み合わせて平均50秒ほどの曲を仕上げる、という作曲方法。
大半をコンピュータで再生したその音楽は、ドローン、バロック、実験音響、効果音のような
さまざまな様相をぱらぱらころころと目まぐるしく見せてくれる。
ただもちろん、フルクサスの中核メンバーである彼女らしく、出てくる音はアナーキーで自由なものばかり。
活動の性質上まともにCDリリースされることが少ない塩見の作品を聴ける貴重なCDであるだけでなく
単純に聞き流しても十分楽しめるものです。ただこれ公式サイトで全部聴けるのよね。
限定500部。
Michael Pisaro and Greg Stuart
Ricefall(2)
2010 gravity wave gw001
NYの著名サウンドアーティスト、マイケル・ピサロの立ち上げたレーベル第1弾。
グレッグ・スチュアートの方はこのシリーズくらいしか名前が出ていないようですが、
ピサロと共に長年活動を行っているパーカッショニストのようです。
タイトル、なぜ(2)なのかというと2004年に16分の第1番が作られているから。
ここに収録されているのは、その規模を4倍にした改訂版のようなものです。
一分ほど無音で、なんだと思っているといきなり音楽が開始。
ガラスの破片が降り注ぐように、米粒のはじける音が豪雨のように激しく降り注ぐ。
時に淡く、時にふと勢いを増すその感覚はまさに雨音。
16分間隔できっちり無音で区切られ、その都度音楽ははっきり変わっていきます。
2回目はさらに金属質になり、個々の音が判別できないようなモアレ状態に。
3・4回目は逆にぱらぱらと間の多い感じ。
Milan Knizak
Broken Music
2005 Kissing Spell KSCD815
フルクサス系アーティスト、ミラン・ニザックの代表作を入手。
レコードを破壊し、傷つけ、繋ぎあわせ、穴をあけ、塗りたくる。
そうして出来たレコードを再生することによって得られる、異常なまでのループ作品群。
クラシカル、ジャジーな音楽断片などが一定のビートノイズをきっかけに交互に入れ替わる。
もはや原曲の判別ができないまでに短い断片がひたすら一定の間隔で鳴らされる。
クリスチャン・マークレイの20年前にこんなことをしている辺りさすが。
元祖ループ作品の一つと言ってもいいでしょう。
なお、レコードの再生速度を変えずに音楽の変質を行うことを目的に始まったこの試み、
後年テープやスコアでのそれに姿を変えることになります。
その頃の音源も是非聴いてみたいなあ。
Monopoly Child Star Searchers
Gitchii Manitu
2008 Pacific City Sound Visions
カリフォルニア出身Spencer Clarkによるソロプロジェクト。
くぐもった音響の中で笛が乱れ飛び、民族的なドラム・ビートが延々と流れていく。
そのドラッギーでミニマルなサウンドは妖しさ満載。まともに聴いてると意識がすっ飛びます。
限りなく「怪しい」という単語が似合う音楽。ただもうちょっと音がましな方が聴きやすかったんだけれど・・・
この録音状態が重要な要素であることは認めるんだけれど。
再発版CDR、オリジナルはカセットで80部限定。
Musicguitar
White
amagumo a&disc 5
ギタリスト青山政史によるソロユニットのCDR、自身が主宰のレーベルから。
実に素朴で心地よい、ちょっとミニマルなループ構成の小品集。
ポップな感じのメロディーなので、アンダーグラウンドな音楽が苦手な人にもお薦め。
何のエフェクトもないシンプルなエレキギターの音楽が、写真家の斉藤夏美による淡いジャケットに良く似合う。
ちょっとした空き時間に、のんびりしたい時に、いかがでしょう。
ちなみに、Musicguitar名義のものはどれもだいたい同じ構成なので、いつも同じ期待の元で聴けます。
The Musique Concrete Ensemble
Disonancias y Repeticiones Ambiguas
2002 Eco Discos ECO0301
南米はプエルトリコの実験音楽系レーベルから、この団体のデビューリリース。
その名もずばりミュージック・コンクレート・アンサンブルですが、そのまま連想をしてはいけません。
なんというか、音楽自体はむしろクラウトロックやIDMあたりを彷彿とさせる内容。
初期ブライアン・イーノなどが風評の引き合いに出されていますが、それも納得出来る。
ギターが気怠げに爪弾き、シンセ風ドローンがふわふわと浮かび、グリッチーなリズムやドラムが控えめに入る。
正直、シェフェールやアンリといった王道ミュージック・コンクレートのようなものは全くない。
むしろ、実験音響の面影があるだけで音楽はアンビエント・イージーリスニング風味ですらある。
凄いタイトル詐欺な感じがしてしまうけれど、まあこれはこれで良かったからいいか。
最後のトラックには隠しあり(15:30〜)、こちらがまだ一番アブストラクト。
Mutations Sonic City
Hans Ullich Obrist,Curator
Airplane AP1014
ソニック・シティにおけるインスタレーションを行った、様々な作家によるサウンド・アート作品のコンピ。
最初の3曲、どの作家も都市騒音を中心とした具体音による音楽構築をしています。
ですので、そこまで大きな聴覚上の差はありません。もちろん、構成にはアーティストごとの個性があるけれど。
「とおりゃんせ」が荒いブレイクビーツに変化してしまう4トラック目、ぶつぶつした電子音からハーシュノイズの5トラック目。
6曲目のメルズバウは何時もどおり、ただちょっとおとなしいか。オノヨーコは題の通り心臓のようなビートのみ。
その次はシンガポールのフィールドレコーディング、刀根らは激しい電子音の引きつり。
次もその流れを引き継いで、きんきんしたノイズドローン。
ハズウェルの曲は、落ち着いたフィールド音をメルズバウ以上のハーシュノイズがぶちのめす。
ラストはフィールド音のカットアップで。
Necrophorus
Imprints
2007 Wrotycz Records WRT 006
スウェーデンのPeter Anderssonによるソロユニット。
ポーランドのレーベルからちょっと半端に大きな紙スリーヴで登場。
重苦しく引きずられる低音に電子音の咀嚼が響き渡る。
音は不規則に湧き上がりゆらいで、次第に倒錯的なループが音を巻き込んでいく。
広漠とした光景がゆっくりと絶えず移り変わる、ループとディレイが効果的なアルバム。
ダークアンビエントとしても音響作品としても楽しめ、
適度に聴きやすくもそこそこにいかれた雰囲気が味わえます。
最後のトラック3だけ、温かみをほのかに感じるエンディング風な仕上がり。
ただこれだけ、そもそもライヴでの録音です。
個人的にはトラック2の擦弦音と電子音がドラッギーに盛り上がるあたりが気に入ってる。
Nerae
atomon
Nerae House NHRS1001
国内の4人組ユニットによる1stアルバム。CDR。
ふわりふわりと漂うシンセ風サウンドに金属ジャンク音がこだまする。
淡く重なり合う音の中で、微かに響いてくる異音が良いアクセントになる。
チョークやMirrorの影響を直接受けているユニットだけあって、音の振る舞いが実にそれっぽい。
ギターの泡がゆっくりと浮かび上がってくるトラック2とか。
その中にギター系の柔らかなドローンが核の一つとして加わっている感じ。
トラック3を聴いていると、マイルドな輪郭の音響の中で不定型な音が動いていて、
そういうあたりは彼等独自の音響を探しているのがよくわかる。
個人的にはトラック1と4が気に入った。
nerve net noise
160/240
meme meme004CD
ノイズによる単音リズムがひたすら何の変化も無く続いていきます。本当に何も変わらない。何も。全く。
これで1曲30分。変化があるのは最後の3秒くらい。そこに却って潔さと同時に無駄に深遠さをさぐってしまいたくなります。
2曲目はノイズの持続音にパルスがちくちくとリズム刻み。やっぱり全く展開が無いけれど、ちゃんと聴くとパルスが微妙にゆらいでいる。
だんだんドローンもぶちぶちになっていって細かなパルスに変貌していく。これで30分の全曲が終わる。
memeのCDってどれも真っ白で情報が無いから適当に検索してたらこのCDをこてんぱんに言ってるサイト発見。
まあ確かに表現的な深みは無いよなあ。でもこういうのは逆に考えずにぼーっと聴けるので重宝します。
とりあえず一緒に買ったHenrik Johanssonよりは聴いてる。
Nimh
Travel Diary
silentes minimal editions sme 0929
M.B.との共演も多く残すイタリアのGiuseppe Verticchioによるアルバム。
2001-2年の録音をリマスターや再構成して収録・再発したもの。
新録のトラック1、シンセのように聴こえる、鄙びた笛の音の小品。
トラック2、金属音が重く引きずられるような音に、しわがれた民族歌謡が混沌と折り重なる。
そこにドラミングのように打音が入ってきて、シャーマニズムのような世界を作っていく。
続くトラックも、じわじわと音を重ねながら音の錯乱と興奮を高めていき、
フィールド音のみで東南アジアの風景の中から切り離された神秘的な世界を作り出す。
ただ、それは必ずしも妖しげなだけでなく、非常に美しいとも思えるもの。
トラック8とかいいです。秀逸で派手なフィールド音響系作品。
Nobuo Yamada
Organic Noiz Location / 2
2003 abh-04
さまざまな材料の音や環境音を素材にして作り上げられた、山田ノブオのコンクレート作品。
電気質のドローンからひそやかな発声、ささくれた駅の喧騒から水場の音。花火大会の音なんかも。
どちらかというとコンクレートではなく普通の音響作品か。
さまざまなサウンドスケープが徐々に入れ替わっていく様は秀逸だけれど、自分の趣味にはそうは合わなかった。
ただ、最後のジャジーなトランペットが響いてくるサウンドスケープは洒落てて面白い。
Nobuo Yamada
Empty Can Street Orchestra
2008 abh abh-13
栃木県、大谷石地下採掘場跡で行われた演奏。
沢山の缶がこすれあい、独特の金属音をからからと響かせる。
そこにふわふわとしたドローンがそっと入り、柔らかく包み込む。
ごつごつとしたジャンク音のはずなのに、どこか心地よい音響空間。
ささくれた缶の音が、こんなにノスタルジックに聴こえるなんてびっくりです。
ただ、このドローンはたまたま現場にイーノの音楽が流されていただけのようですね。
彼の「Music for Airport」が流れていた結果、こんな素晴らしいミスマッチな音のコラボレーションが出来たことは凄い。
トラック2は川辺ダムのトンネルでの演奏風景を収録。
缶の音にまじって、車が側溝の金属板を踏みつけるカシャンという音や、
トラックが傍を通り抜ける重い音、空気の激しい流れが響いてくる。
今度はハードなドローン風味。同じ音でも、場所によって全く異なる印象になるのは面白いです。
詳しい様子は、山田ノブオ本人のブログに詳しく書いてあるのでそちらも是非。
演奏に実際に使われた缶を同封した、特殊パッケージ。
Nocturnal Emissions
Sunspot Activity
1997 Soleilmoon Recordings SOL 52 CD
インダストリアル系サウンドで知られるノクターナル・エミッション。
これは「黒点活動」の名の通り、太陽のX線写真をイメージして作られた静か目な曲。
日本の「ようこう」が捉えた写真を元として、ふわふわと浮かぶアブストラクトでスペーシーな音楽が広がります。
ころころと音が転がり、気まぐれに音が放射され、ぽっぽっと吹き去る。
実験音響の音楽は重々しい奇怪さがよくありがちですが、これはふわふわ軽すぎて異質な世界。
美しく、かつ脈絡のない不可思議空間。聴きやすい実験音響アルバムでした。
Nocturnal Emissions
Timeslip
2006 Earthly Delights CD008
Nocturnal EmissionsことNigel Ayers自身が運営するレーベルからのCDR、限定100枚。
編集されてぶつぶつになったギターから、ちょっとメランコリックなアコースティックギターの爪弾き。
ドローン状になったギター系のもやもやに、男の歌声がループされる。
ちょっとトライバルでリズミカルなギターのミニマル。後半は民族調が多め。
あまり長くない様々な趣向の11曲が集まった、前世紀の未発表・・・というか没音源集。
タイトル通りの倒錯的になれるアルバム。なかなか楽しかった。
The North Sea / The Rome Chell
The North Sea / The Rome Chell
2005 Ruralfaune 001
The North SeaとThe Rome Chellのスプリットアルバム。
The North Sea、1曲目はささくれた騒々しいアコーディオンみたいな音の即興演奏みたいなもので耳障り。
が、2曲目は雨音の中から現れるアコギのフォークなソロ。とても癒されます。
3曲目はエフェクターで随分ぼかしたアコギソロ。さっきよりも更に心地よい。
The Rome Chellは15分1曲だけ。今までと似たような、素朴なアコギのソロが続く。
いきなりそれが切れ、口笛や静かな環境音になる瞬間も。
結構いろいろノイズが入っているけれど、これは野外の音をそのまま重ねた、という事みたい。
小鳥の声や教会の鐘が響いてきたりと、野外演奏をしているような感覚。
小枝を横に貫通させ紐で結んだ、特殊仕様のジャケット。でも俺が入手したときもう折れてた。
Noveller
Glacial Glow
Weird Forest Records SAFF-002
ブルックリンを拠点に活動するギタリストSarah Lipstateによるソロアルバム。
リース・チャタムやグレン・ブランカとも繋がりのある彼女によるギターソロが中心。
ふわふわとした爪弾きのループが淡く反響し、温もりのある空間の中で深くしみこんでいく。
低いベース?のドローン風音響が落ち着いた空間を作り出し、ギターがその上をゆるやかに旋回する。
周期的な電子音の反復に、ふわふわとエレキギターの音とノイズが絡み合う。
ドローンの上で、即興的なパッセージが揺れる。
きらきらと残響が幾重にもこだまして、音の破片がきらびやかに空間を舞い踊る。
トラックごとでけっこう趣向が異なるので、平たくアンビエント風とは言えませんが、
聴いていて美しく感じられるのは間違いない。
Nurse With Wound
Rat Tapes One
United Dairies UD 0169CD
実験音楽の超大御所、ナース・ウィズ・ウーンドによる1983-2006年の未発表音源集。
声が奇妙に変調され、歌いながらドローンと競演する。
なにか具体音のようなものが、細かく切り刻まれ、ループし、サラウンドする。
オルゴールが壊れたように鳴らされ、ノイズが絡む。
空ろな空間で、反響の中に正体不明な音が溶け出していく。
極端に早く再生された会話。
さまざまな音響を持った、長さも趣きもまちまちな曲たち。
音響、ノイズ、テクノ、サイケ・ロック、などなど。12曲目なんかドラムンベースってます。
長きに渡る音源たちの詰め合わせなので、相当いろんな傾向のトラックが詰まってます。
その分、彼らの作る音の動向がつかめるだけでなく、新鮮な感覚で最初から最後まで聴き通せました。
Nurse With Wound
Funeral Music for Perez Prado
2001 United Dairies UD098CD
「Yagga Blues」と「Soresucker」という、以前同レーベルから出た廃盤EPをあわせて再発したもの。
まずはYagga Blues、プリミティヴで民族的な音楽、神秘的でリズミックな太鼓とボーカル。
ノリノリだけれどいつものNurse With Woundらしいダークさがにじみ出ていて素晴らしい。
2曲目はインスト版。オリジナルとはバージョン違いらしいですが、
この切れ目なしのつなぎ目とかが変わってるんだろうか。ミックスにColin Potter参加。
タイトル曲はフルバージョンを収録。EPでは10分ほどだったのが、3倍以上の長さ。
笛のような空ろな響きがふわりふわり漂いながら密度を増し、恍惚を誘う。
続いてはSoresucker、こちらも曲長を見るに元とは違うバージョンか、フルのどちらか。
点描的な電子音楽風の冒頭から、次第にギターに導かれて歌が現れる。
1曲目と傾向は似ていますが、実体は激しく壊されて点々とばらけている。
最後の「Journey through cheese」はインダストリアルなビートがノイジーかつミニマルに進む。
これでもっと直球ノイズならエスプレンドー・ジオメトリコ。
ビート要素が強く、意外となかなかハイテンションに楽しめました。
Nurse with Wound & Jim O'rourke
Tape Monkey Mooch Angry Eelectric Finger 1
2004 Beta-lactam Ring mt085b
暗いドローンのような低音に、ギターのようなかすかなうめきや、様々な物音がぶつぶつ。
ドローン自体も絶えず構成が変化し、蠢いている印象を受ける。
ふわふわと浮かぶ音の、気持ちよい瞬間もあったりする、静謐な1曲目。
2曲目は打って変わり、ノイジーに開始。Xhol Caravanのサックスとフルートがフリーに絡みながら、
太鼓のような音が盛り上げ、マリンバがメランコリックに、非楽器音が無秩序に乱入する。
後半は合唱のマテリアルも入りながら、静かに、グロテスクに、でもどこかクールに音楽が流れる。
流石はこのコラボ、高い密度の内容です。
Olivia Block
Mobius Fuse
2001 Sedimental sedcd031
アメリカの女性音響作家によるアルバム。
ぶつぶつしたノイズが淡く過ぎ去り、波や虫など、さまざまな光景が微かに顔をのぞかせていく。
花火の炸裂音と思しきノイズやうごめくドローンなど。
おそらく全ての音が生音をマテリアルにしていると思いますが、そうとは思えないような電子音響ぶり。
幅広い音源が同じ空間に均質化されて並べられたような、そんな独特の電子変換。
しかもそれがずっとひそやかに、ちりちりと地味に進んで行く。
なかなかいいノイズっぷりで楽しかった。素直に音そのものを聞くことが出来る。
そこからはフェルドマンや静寂音響に通ずる音が感じられました。
ただ、素晴らしい出来かと言われると、そこまでではない気も。
まだまだ発展できる可能性を持っていると思う。2トラック30分強。
Omit
Interceptor
2008 Helen Scarsdale Agency HMS 012
ニュージーランドの実験電子音楽家OmitことClinton Williamsの2CD作品。
テープ・ループ、モジュラー・エレクトロニクス、ペダル・エフェクトといったものを用いて
実にドラッギーでミニマルなアブストラクト・ビートを作っている。
ドローンの中にモールス信号のようなパルスでビートが延々続いていく。
なんというか、アルヴィン・ルシエの初期傑作「Vespers」にドローンを混ぜた感じ。
その偏執的な音楽のノリが2時間続く辺り、ニュージーランドの
実験音響はすっ飛んでるなあと思う。Birchville Cat Motel然り。
取り立てて大好きというわけではないけれど、ドラッギーな魅力と安定した音響作りは素晴らしい。
限定600部。
Ora
Final
2002 ICR 32
Andrew Chalk,Darren Tate, Colin Potter,Daisuke Suzuki・・・
錚々たるメンバーがいた実験音響ユニットの、最後のアルバム。以前の限定CDRなどからの再発。
淡いドローンにぶつっという定期的なノイズ、かすれるような金属音。
ふわりと流れるドローンに電子音のアクセント、微かなノイズ、シタールの音。
低い音の湧き上がりに水音の漣、電子音のようなものがひょろひょろとうねっては自由に身をくゆらせる。
淡いドローンが伸び、サイレンのような電子音が鳴り響き、ノイズが微かに反響する。
まさに幽玄という表現がふさわしい、非現実を垣間見せてくれる音楽。
実に豊かな種類の音が、同じ響きという共通点で共有するものを見つけ合う。
音の響きというものを考え、それ自体の美しさを体験するに絶好の名盤です。
トラック3の、ジャズサックス即興に虚ろな音のうねりや具体音ノイズが絡む音楽すら、
彼らの手にかかると現実味をなくして輪郭がぼやけてしまう。
トラック2,8がお気に入り。限定500部。
Oren Ambarchi
Suspension
2001 Touch T33.18
Oren AmbarchiがTouchから。
ギターによって作られた、不思議な深海的世界。ちょっと温かみのある、けれどちょっとこもった響き。
Touchから出たのが凄く納得できる、ドローン音響音楽。後半ちょっとアンビエント風。
時折、柔らかで心地よい響きが聞こえて、その瞬間のメランコリックさがとても良い。
ループを軸としたミニマルドローン作品で音の作りこみも含め非常に素晴らしいのですが、実はちょっとびっくり。
なにせ自分にとって、初めて聴いた「Clockwork」の印象が強すぎて・・・
Oren Ambarch and Robbie Avenaim
Clockwork
2004 ROOM40 EDRM 404
打楽器の、細かで思い切り発散されるわけではないけれど激しい動きを見せる生演奏。
それに伴いエレクトロニクスもじわじわと波を寄せてきて、やがてガムランの楽器が混ざりリズミカルになっていく。
まさに時計のような一定のビートがたまらない。最後はゴングの一打で静かに終了、カッコイイねえ。
ライヴ演奏のインプロヴィゼーションとしてはかなり気に入りました。でも1トラック18分。
普通のCDサイズで、3インチCD部分の外側は時計を模した模様が印刷されてます。こういう所もセンスが良い。
Organum
Kammer
1997 Aeroplane AR25
何か落とされたような物音ノイズの音響に始まり、緊張感漂う金属系ノイズドローンがふわふわと伸びる。
そこから、かさこそと別の音が現れて次第に幅をきかせていく。
足音や重苦しい風音のようなものが頂点では加わり、やがて全てが淡く消えていく。
具体音ノイズと電子ドローンの緊迫した共演が聴けます。
オルガヌムらしいジャンクノイズぶりが存分に味わえるのに、
近年の作風に繋がる美しささえどこか感じることが出来る素晴らしい音楽。
これがたったの17分しか収録されてないのか・・・
限定990部。
Otomo Yoshihide
Cathode
1999 Tzadik TZ 7051
大友良英の生楽器演奏によるインプロ作品、Tzadikから。
60年代の現代音楽へのオマージュを込めた、非アンサンブル的なものです。
「モジュレーション2」ギターの爪弾きに笙が入り、サイン波の高周波がぱらぱらとふりかかる。
ギターのおかげで、ずいぶんとまあ聴きやすい。他の音は不協和でゆらぐような持続音なんですが。
「カソード」、個々の奏者が図形楽譜に基づき即興演奏を繰り広げ、それを後から様々に変調・つなぎあわせていく。
1と2で印象はかなり異なりますが、どちらも武満の影響を受けていると語っています。
2番の方なんかははっきり献呈しているだけあって、その言葉も分かりやすい。
最後の「モジュレーション1」は笙とサイン波のためのルシエ風音響実験音楽。
わずかなピッチ変化が音楽のすべてを支配する、ゆらぎを聴く作品です。
P16.D4
Acrid Acme (of) P16.D4
1989 Selektion SCD 002
RLWとして有名なラルフ・ウェホスキーらが結成した、80年代ドイツのユニット、P16.D4。
未だにコアなファンも結構いるみたいですね。彼らの音源を集めた様相の89年アルバム。
第1部は81年の音源を87年に再作曲したもの。
80年代ロックが細切れに切り刻まれ、変調の中でうごめく。
ループ基調の激しいテープコラージュが、ダウナーなロックの亡霊を作り上げる。
第2部は87年のCaptured Music Festivalのために作られた音源の再構成。
ソリッドな協和音ドローンにカットされたノイズがふりかかる。
搾り出すようなノイズとハーシュ電子音の攻撃的な対話。
第3部はスタジオ編集を駆使したミュージック・コンクレート的即興ライヴ。
かなり微細なカット音源がまるでパルスのように展開し、ふるまう。
最後に、メルツバウとの共演音源。
ハーシュノイズの残像、オルガンの煽るような不協和音、具体音の乱舞。
二者の特徴がからみ合う、実に緊張感溢れるバリエーションに富んだ高内容。
個人的には、最後の共演がやばすぎると思う。
オルガン音源は個人的にはウィレム・ブロイカー某アルバムを彷彿とさせるものでした。
Philip Jeck
7
2004 Touch TO:57
リヴァプール在住、80年代からレコードプレイヤーなどを使って活動を続けるアーティストの7番目のアルバム。
美しい、きらめくようなループがテープのようなエコーの中で響く。
輪郭を失った音楽の断片がゆらゆらと幻想的に佇む。ぎらぎらしたノイズがじりじりと照りつける。
陽気な音楽の断片が幻影のように、どこか虚ろに駆け巡る。
トラックによるマテリアルの違いでかなり雰囲気に差はありますが、
ループを基調としたどこかメランコリックな作風は一貫しています。
トラックによっては上質なアンビエントドローン風味。
Pierre Bastien
Musiques Paralloidres
2000 Lowlands LOW 012
フランスのピエール・バスティアンによるアルバム。
この人、メカニウムという自作の自動楽器演奏と自分のトランペットによる共演で音楽を作ります。
このアルバムではさらにプリペアドしたレコードプレイヤーを使用。
ブルースやラテンのレコードをループ再生させ、そこにジャジーなトランペットを上塗りしていく。
伴奏には、恐らくメカニウムによる撥弦音に近いものが(ムビラ+ベースみたいな音)。
なんというか、フランス風のアンニュイな空気の中でジャズの素地を持った方が
コラージュ系音楽みたいなのを作るとこういうふうになるんだなあ、といった感想。
一応はループコラージュ音楽作品と言えるでしょうが、何ともジャンル不明な一品。
ドローンや古典的ミニマルとも違う、不思議なトリップ感も合わせ持つ傑作。
気楽に音楽を聴きたい、けれどある程度渋い気品のようなものも欲しいな、というときに自分なら聴けるかも。
あーでもムビラみたいな締まりのない音もあるからなあ。いや、それがまた面白いんですが。
Pimmon
Secret Sleeping Birds
2001 Sirr sirr 2005
オーストラリアのPaul Goughによるプロジェクトのアルバム。
空間の振動を感じさせるような響きの、質の違うドローンがいくつか積み重なる。
そこから聴こえる、人の声のような、いびきのような、何ともつかない落ち着いた音。
漠然としたノイズの響きから、暖かいループが聴こえてくる。
電気質な音による、不可思議なパルスの応酬。
sirrのリリースらしい、冷涼でミニマル、ミクロな世界観の音楽でしたが、
その(落書き風に書かれた鳥が眠る)簡素なジャケットと共に気に入った一枚。
トラック11とかがすごく良い。そしてトラック2の温かさが素晴らしすぎる。
Polysick
Flow FM
100%Silk SILK026(Cassette)
100% Silkの限定DJカセット・シリーズ2つめ。
しょっぱなからいろんなダンスサウンドがぐちゃぐちゃにカットアップコラージュされて
ばんばん飛び出してくる。その後もダウンテンポがメインではありながら
不思議なコラージュ風のダンスミュージックがだらだらと流れていく。
2000年代のモダン音楽を途上国風のぎらついた粗さで組み合わせたような、
何というか奇妙な熱帯感覚を味わえる、独特の味わいです。
こういう作品はたぶんだらだらと聴くと一番楽しい。というか楽しかった。
20分テープなのが短くて残念に思える。
Radiant Husk
Micromegas
2012 Recital Two R002
Matt Ericksonによるソロプロジェクトの、Sean McCann主宰レーベルからのリリース。
テナーサックスの音をマテリアルにして、独特の柔らか味と冷たさを持った音が伸びる。
その厚みは次第に増していき、心地よい和音となって耳をくすぐってくれる。
そのまま続くトラック2以降では突如ディストーションのかかった響きになり、
テナーサックスの音を加工する実験音響的な作品に。
流れとしては秀逸なんですが、個人的な趣味にはあんまり合わなかった。
でも最後のトラックが収束していくドローンサウンドとか1曲目は良い。
限定200枚、ナンバリング入り。
Radu Malfatti / Mattin
Whitenoise
2004 W.M.O./r 07
バスクで活動する、ラップトップ・フィードバックが得意らしいマッティン。
静謐な音響でお馴染みのマルファッティと組んだ一枚です。
微かに、かすれたノイズ音がそっと空間を響かせ、ふと消える。
長い間をあけた後、またふと別のかすんた音が滔々と流れていく。
ぽんと具体音が響き、あっと思う次には無音の中に隠れている。
トラック2はMattinが尊敬するというWhitehouseみたいなノリも少し感じられる、
それでも静かなホワイトノイズがそっと流れ続ける。後半はけっこう音量大きい展開もあり。
静寂音響的な作品ですが、そこまで極端に切り詰めてはいないので、
普通にノイズドローンな感覚で聴けたりします。そういう意味でもなかなか良かった。
Raionbashi
Chloral Works I & II
2008 Entr'acte E21
Tochnit Aleph主催者RaionbashiことDaniel Kutzke-Lowenbruckの2005年LP、3インチCD-R再発。
妻Doreenの声をサンプルに展開していることからのタイトル名。
ヨーデルがいきなり入ったと思ったら伸ばしをひたすらループ。さらに重ねて倍増していきます。
おかげで次第にモアレ効果による倒錯度合いが強まっていく。
そこにコンクレート風の音響がぽつぽつと絡みだしてさらに恍惚的に。
トラック2はそのオリジナルと共に吐息などのマテリアルが様々に絡みつき、さらに扇情的な音響になってます。
ヨーデルが際限なく伸ばされ、その上でごりごりと音の潰しあいが展開される。
こいつはやばい。恐ろしくもありかっこいい。短いのが残念すぎる。
密封ビニールジャケ、限定250枚。
Rake
Ginseng Nights
Vhf #69
VHFのオーナーでありベーシストのBill Kellumが結成したユニット。
Vibracathedral Orchestraの親戚ユニットらしいが・・・
何と言うか、内容を一言で表すとするなら「サイケロック板ヴィブラカテドラル」。
轟音サイケロックやカントリーロックに近いノリが無節操に切り替わってだらだら流れていく。
その合間に長々とインプロというかフリーロックがどろどろと続くあたりアンダーグラウンド。
何故かボーカルだけ録音がやたら遠い。
欠点としては、音数少なく内向的に進む場面も多いのでそこまでノリ良くは聴けないことも。
ボーナスCDとして20分ほどの1トラック収録のCDとセットで封入されてます。
こっちのほうが作風を凝縮している感じがするし、聴いてて楽しい。
Rambutan / Chapels
(Split)
2009 Stunned Records no.54(Cassette)
NYで活動するRambutanことEric HardimanとChapelsことAdam Richardsのスプリット・カセット。
以前にもやはり無題でカセットリリースしてますが、今回のものは
スリット越しに風景を見るようなジャケットを持った59分カセットのほう。
Rambutan、ギターの揺れるリヴァーヴがゆらゆらと揺れ、淡くギターの声が響いてくる。
透き通るようなドローンから土俗的なものを感じさせる太いギターの反響。
最初の曲とかはなかなかいい具合でしたが、随分実験的な、というかアングラノイズの色が強い。
Chapelsは、ホワイトノイズに似た音響から、ちぎれた音のかすがこぼれ落ちてくる。
こっちはもっと実験音響。ノイズがごろごろと空間をこだまする作品。
ただ最後のトラックはセピア色な音が激しく歪む、なかなか個人的に面白い曲だった。
限定111部。
Red Seil
Cross I - VIII
2010 RED SAIL MUSIC RSM - S019
千葉県在住の山口哲による自主制作CDR。
漠然とした流れるギターサウンドに、左右交互にエコーが入れ替わりながら響いてくる。
幻想的な美しさを保ちながら、実験的で漸次的な変化をゆるやかに見せる曲。
1曲平均3分の短い中で次々に表情を変えて繰り広げられては淡く消えていく、
音素材がささくれているはずなのに、儚さを多分に感じられるドローン的音響作品。
手軽に聞けるし綺麗だし、とても楽しめました。特に最後のトラック8。
ジャケットの刺繍アートも含めて、綺麗にまとまっています。
冷泉
夜抄記
Reizen
Nocturnal Abstracts
2011 Neurec NEUREC-REIZEN-11
Neraeのメンバー冷泉淳氏による1stアルバム。
淡いドローンがそっと落ち着いて伸び、そこに電子音的な加工をされた音が絡みつく。
ふわふわと現実感薄く、輪郭がなくともためらいのない音が延々と響くさまは
強く内向的でありながらも、その中の自己世界をはっきりと主張する。
まるで淡々と進んでいくような感じでありながら、時折あらわれる薄い変化はびっくりするくらい儚くて美しい。
最後、ハモンドオルガン風の息の長い動きが現れるところは思わず息をのみたくなる。
長尺のトラック1はこの中でも特に素晴らしい出来。
トラック2のふわっと音が浮かぶような呼応やトラック3のエコー音響の中でもがく音、
トラック4のゆらぐコード、どれをとっても夢の中の世界を切り取ったような非現実さ。
どの音楽も、深く自分の中を見つめて掘り下げていくような、冷徹なまでに理性的な響きに
淡くしびれるような美しさの感情を起こさせる音をつけてくる。
流石はNeraeで鍛えてるだけある、素晴らしい見事な一枚でした。
Reizen
(Untitled)
2011 なし
冷泉氏の2nd。シンプルな美しさの特殊装丁がその内容を語っています。
淡いフィールド音のようなノイズの中で、ふわりふわりと柔らかい音が規則的に浮かび上がる。
次第に背景のノイズは厚みを増して、最前面へと静かに移動し、非常にゆっくりと空間を彩る。
その能面のようでありながらわずかな輪郭で変化を気づかせてくれるような不思議と感情を持った、
濁っていながらも精練さを持ったノイズの持続音。
その提示が落ち着いた瞬間に、繰り返される音の波が変化する瞬間が最高に心地よい。
気づかないくらいゆっくりと微かに揺れる、霧の密度のような音楽。
そこに割って入る、荒天のようなくぐもった雷風ノイズと、呟くようなギター。
それらがコーダとなって、今までの世界にドアを開け、霧をゆっくりと無くしていく。
この長尺のトラック1は、1stとは逆の動的なアプローチで彼の世界を描こうとしている気がします。
トラック2は金属ジャンク音の褪せた輪郭で開始。
軋むような錆びた音だけれど、その中に覚めるような銀色の鋭い光が見え隠れする。
トラック3、深くも寂れた残響の中でギターが不明瞭に声を出す。
一番変化がわかりやすいトラック。けれど、結果生み出される光景は一番絵画的で静的な気も。
まとまりを持って音に起伏と流れが見れるあたりがそう自分に感じられた原因かもしれない。
こういう、やや散文的なばらけ具合の美しさは自分好みです。
Repeat
Temporary Contemporary
1999 For 4 Ears CD 1032
ノー・インプット・ミキシング・ボード(小型オーディオ・ミキサーに無理な結線を施したもの、との事)奏者の中村としまると
Jason Kahnのドラム・メタルによるユニット、Repeatの2nd。
じわじわと電子的なノイズドローンが浮かび上がり、それに同調するように金属打楽器が入ってくる。
電子音の無機質にうねるパルスと、打楽器がリズミカルに協調する。
インプロ演奏のようですが、その系統の音楽としては聴きやすいものだと思います。
ドローン的な流れに、僅かだけれどわかりやすい音楽の緩急がついている。
Rhys Chatham
Die Donnergotter(The Thundergods)
Table of the Elements TOE-CD-801
グレン・ブランカも参加したギタートリオなどを経てリース・チャタムが組んだロックバンド(?)
による有名な音源集。未発表ボーナスを加えての再発です。
ギターのぎらぎらしたトレモロにベースの執拗な通奏音、ドラムのフリーリーな乱舞。
ロックなリズムを叩いてくれる辺りになると、もう見事に音楽への洗脳が立派に完了してしまいます。
こういうバンド音楽ならではのミニマルさを巧く盛りこんで、ロックとミニマル音響の狭間をすり抜ける。
トラック2は直管楽器とドラムのロック風マーチな楽想ですが、見事なまでに正当派なミニマル。
トラック3はノイズなサイケロック。ドラム以外はやりたい放題。
トラック4,5はそれぞれ1,2に似た感じといえばわかりやすいか。
NYにおけるミニマルの影響を受けた代表的なバンドと言って問題ない彼ら、
当然関係者にもすでに自分におなじみな人間がぽろぽろ。
「Die Donnergotter」のギターにクレジットされているBen Neillはあのミュータントランペットの彼。
次の曲でトランペットも披露してます。
ドラムの半分は同レーベルからの同系統なソロ作品で注目したJonathan Kaneだし、
写真を見ればさりげなくサーストン・ムーアがギター弾いてたりします。
しかしまあコンラッドとジョン・ケイルに会ってしまったとはいえそれ以前はクラシックとしての
経歴を積んでいたというから凄い。でも逆に言えば、
この人の音楽をアルバムで捉えるのでなく曲ごとで考えていくべき点に納得が行く。
いやあ楽しかった。
Richard Lerman
Music of Richard Lerman
Travelon Gamelon, and other works
2006 em records EM1063DCD
アメリカのサウンドアーティスト、リチャード・ラーマン(1944-)の作品集。
「トラヴェロン・ガムラン(旅するガムラン)」は自転車にアンプリファイを施して
ホイールの回転などを増幅させると言う彼の代表作。
プロムナード・バージョンの野外における生々しいパフォーマンスの記録。
コンサート・バージョンの、複数の自転車による込み入ったリズムとノイズの応酬。
単純にリズミカルな金属音に陶酔することができる上に、パフォーマンスとしても単純でぶっ飛んでいる。
まさにインダストリアルな即興演奏と言えるでしょう。
プロムナード・バージョンは全てカット編集されているのが残念と言えば残念。まあ長いしね。
ちなみに、タイトルは音楽に先行して発想されたもので、金属製楽器の合奏という共通点からこのアイデアに。
でも、トラック4の部分とかはガムランに聴こえなくもない・・・かな。
Disc2はそれ以外の彼の作品集。
「For Two of Them」はホワイトノイズやレコードを用いながらカットアップなどを行ったもやもやした音楽。
「Sections for Screen, Performers and Audience」は、演奏者は画面に浮かんだ楽譜(かなり暗示的なもの)
を見ながら即興を行い、それが電子変調を伴いながら同じ画面を見ている聴衆に届く。
幻想的というか、倒錯的なカオスの世界。
「End of the Line: some recent dealings with death」は交通事故でなくなった友人のためのもの。
20秒のテープ・ディレイを活用した、非常に美しく儚げのある音楽。電子ドローン+女声と、室内楽の部分がある。
「Accretion Disk, Event Horizon, Singularity」は男女4人の歌唱がテープディレイに送り込まれ、
だんだんと一点に収束していくもの。写真を見ると、
演奏者の前に(録音装置の一環としての)自転車のホイールがあってちょっとシュール。
「2 1/2 Minutes for a BASF Loop」は戸外に置かれたマイクから特製のテープループに音が移される。かもめがうるさい。
「Soundspot」、ふわふわした、ドップラー効果を使用した短い作品。
「Music for Plinky and Straw」、ストローから息を出していろいろパフォーマンスを行う。
音としては、鐘のような響きと、電子音のようなぴこぴこが印象的。
やはり、インパクトとしてはトラヴェロン・ガムランが圧倒的過ぎる。
もちろん他の作品も面白いものばかりだけれど、これはとりあえず聴いておきたい。楽しいし。
Richard Youngs
Advent
1997 Table of Elements 41
リチャード・ヤングの作品がTable of Elementsから。中身はちょっと以外でした。
自分としては、彼はフォークにギターをいじってるだけなイメージが強かったので。
このアルバムは、結構電子的実験音響をいじくって作っています。
1曲目、ピアノのマイナーコードに乗せて、ヤング自身のちょっとハスキーな声で歌が入る。
簡素で無骨なピアノ伴奏と、ミニマルなメロディー。
彼の電子音楽作品とは大きく印象が異なるけれど、作り方をみるとそこまでの違いはない感じ。
2曲目は歌の代わりにオーボエが入ってきますが、わざとなのか素も混じってるか、かなりの調子っぱずれ。
ささくれたノイズ要素を、淡々と流れ行くピアノにぶち込みます。
3曲目はエレキギター乱入、いつもの彼らしいノイズ空間とピアノの共演が見れます。
にしても録音が悪い。1988年オリジナルとはとても思えない。
ただ何しろヤングのことだから、わざとがさがさした悪劣録音にした可能性もありえるか。
Rippie+Raposo/The Beautiful Schizophonic/Grabowski
Product 06
2005 Cronica Cronica 023
cronicaのスプリットCDシリーズ第6弾。
Grabowskiの作品はフィールド音を素材としたがさがさした音と、サイン波みたいなはっきりした音が一定の音価で交じり合う。
どの音も、基本的には<>か<の形の音量変化で収束して、単独では発展がありません。じわじわと構成が変化するアンビエント調。
The Beautiful Schizophonicはどれも短い曲ばかりです。
残響のなかに埋もれた音たちがかすれながら伸びていくドローン調の作品がメイン。
こういうのをゴシック・ドローンって言うんでしょうか。両端の2曲だけ声を使った、毛色の違う曲。
ただ最初の方はノイジーな加工ですが、最後はクラシカルな女声デュオをほぼそのまま使ってます。
James Eck RippieとPaulo Raposoの共作は途切れ途切れの音楽をきっかけに様々なマテリアルのドローンが絡んでくる。
ぼんやりした音、かさかさ動き回る音、音楽マテリアル、いかにもな電子音、
それらがミニマルに忍び重なり合って不思議な世界を作りだします。
だんだん盛り上がっては崩壊していくプロセスがカッコイイ。後半、弦楽のループが妙なノスタルジーさを出していてメロディアス。
ジャケットやインナーの茫洋とした線画が良く雰囲気に合っている曲たちでした。
あとデータトラックとしてThe Beautiful Schizophonicの曲が映像つきで収録されています。
荒地に建つ簡素な中世風建築物を訪ねる道すがらととの傍を撮った映像にモノクロ→反転の色変調かけただけ。
荒地に吹く風のような、展開の無い音に合っているとは思いましたが、
最後に出る裸の女性が扮した天使は流石に理解できず。何だこれ。
RLW
Acht
1992 Selektion SCD 008
CDの第1部「4 Kompositionen」はピアノの内部奏法の録音をマテリアルにしています。
重々しい音がごろごろと転がる音や、ひっかかれて悲鳴を上げる音などなど。
どの曲も静かな中で控えめに配置されています。また、2曲目以降はずいぶん加工済み。
無音の中でカチッと鳴るようなトラック、やけにメロディアスなもの、トラックによって表情はかなり変わります。
インプロにも似た世界が支配する荒涼さ。
第2部「Pop Tools」は、先ほどと打って変わりハードロックの音源を極端にコラージュしたもので幕を開ける。
でも本編は何時もどおり、ピアノや声、電子音を少しづつ組みあわせた電子音楽。
ただ時折ロックのマテリアルが乱入してくる辺り油断できません。
最後のワルツ改変もいかれてます。これ、原曲はシュトラウスだったかな?
Robert Haigh
Notes and Crossings
2009 Siren 16
イギリスのインダストリアルシーンでその活動を始め、アンビエント作品も残しながら
90年代〜2004年まではあの人気ドラムンベースユニットOmni Trioとして活躍した異色な経歴を持つロバート・ヘイ。
近年はこのチョークのレーベルでぽつぽつとアンビエント方面の活動をリリースし始めています。
この「音と交差」はそのなかの最初の作品。もっとも、チョークらとの活動自体は80年代から行ってますが。
シンセのような柔らかい音が淡く降り注ぎ、ピアノの甘い響きが入ってくる。
時にサティのように、あるいはドビュッシーを初めとする印象派に近い旋律、
ポストモダンの淡い調性感で作られる経過句、それらを想起するような断片が短く流れていく。
そこに、淡く音響編集が加わることによって、非常に深い独特の世界が広がる。
アンビエントの聴きやすさをそのまま保ちながらも、その淡く切りつめられた音楽展開と
浮遊感を醸し出す絶妙な響きが、このアルバムを素晴らしい作品に仕上げている。
そういう意味では音響マニアとしても一般リスナーとしても発見があるでしょう。
1曲平均2分半ほどの、様々な短い音楽がふわりと流れていく、ジャケットの装丁ともども素晴らしすぎる一枚。
日本語帯の限定200枚。個人的にはトラック10とか好き。
Rowenta / Khan
Sofavision
2006 Dom Elchklang DOM 023CD
H.N.A.S.のメンバーらによるアルバム。
声や電子音、ピアノやベースなどが絡み合い、ぐちゃぐちゃのエクスペリメンタルからエレクトロニカ、
ミュージックコンクレート風や美しいアンビエント系音楽まで、様々な音楽の間を自由自在に動き回る。
とにかく聴いていて展開が予測不可能、ランダム世界の中に放り込まれた感覚です。
それでも、音響の佇まいを見ると、ああやっぱりH.N.A.S.にいた人間が参加してるんだな、と実感する。
どこかクールな音の響きが一貫していて、構成とは無関係に音を楽しめます。
Ruf-Neck Piano
PREpaired repair
1997 Shi-ra-nui SRN 002 CD?
不知火レーベルから出た、ピアノブレイクスを行うユニットRuf-Neck Pianoのアルバム。
実はこのCD、知られている「Ruf-Neck Piano's Repaird Piano」とは違うものらしい。
ちっぽけなインナーの情報を見るとForthcomingの欄に「remix album "repaied piano"」の表記があります。
カタログ番号3のCDがForthcomingだったりすることや曲数を考慮しても、おそらくは
公式カタログでRuf-Neck Pianoの「Piano Break」とされているものなのでしょうが・・・
ジャケ写真も全然違うし、こりゃ一体どういうことなんだろう。
くぐもった音響の中でピアノが転がり、サロンジャズがつぶやき、ブレイクビーツが通り過ぎる。
アブストラクト音響でピアノメインなアルバムを無理やり作ろうとしたような、そんなちぐはぐさ。
派手さは全くなく、沈思黙考する中で進む不思議な音楽。
でも、どこか聴いていて落ち着くところがあって良い。
Ryoji Ikeda
1000 Fragments
1995 CCI Recordings CCD23001
ダムタイプでもおなじみ池田亮司の記念すべき第1作アルバム。
「Channel X」における、サイン波の細かなアクションや細かいパルスと声のサンプリング。
様々なラジオ音源などが激しいカットアップを伴いながら、それでも鋭くすっきりした流れを作っていく。
近年の思い切りノイズが前面に出てくる前のクールなサウンドアートが聴けます。
「5 Zones」では逆に全力で実験音響ドローンを展開。
その中からモールス信号が浮かび上がり、深くビートが水底に響く。
静的な長い曲ではありますが、その音遣いは「Channel X」と同じ。
「Luxus」は淡く輝くようなサウンドで始まり、まるでアンビエントのような心休まるドローンが続く。
でも音響はまったくだらけることなく素晴らしい響き。
Sacher Pelz
Mutation for a Continuity
2001 Marquis Records(Alga marghen) MART 001~004
ノイズ系音響界隈では大御所のMaurizio Bianchi。これは彼がまだそう名乗る前の音源集。
初期の彼の作品は爛れたノイズ音響がとても特徴的ですが、これはその中でも相当やばい部類。
何しろ、4CDの全てがくぐもった響きの中でぐねぐねリズムがのたうつキ○ガイぶり。
聴いてて脳がどろどろ溶かされていくような、精神異常の世界が延々と続いていく。
まさに「病的」の一言で表される彼の初期作品風評がぴったりです。
BOXセットで、CD以外に紙のインサートが4,5枚と目線入ったご本人の写真入ってます。
インサートの写真や絵はどれもこれも意味不明(笑)
てか箱外面のイニシャルデザインは明らかにM.B.のそれと考え方が同じで爆笑ものでした。
彼がエホバ入信した前後のものは宗教的な聴きやすいアンビエント風音楽もあったりしましたが・・・
とにかく彼は作風がいろいろありすぎる。うーん、どれが良いかなあ。
480部限定。
Saito Koji
reykjavik
magic book MOKUME008
斉藤浩二による、アイスランドはレイキャビクを旅行したときの感覚を基にしたアルバム。
故郷を思い出し、記憶を昔へと辿っていく、まさにセンチメンタルな一枚。
ふわり、ふわりと儚く過ぎ去った美しい過去を偲ぶ1曲目「remember」。
逆再生を使った、過去への遡行を示唆する、短い2曲目「reverse」。
ギターのアルペジオが長いエコーを伴ってぼやける、素朴な3曲目「remain」。
冷気の中のオーロラを見ているような、時間の流れが緩やかに感じられる幻想時間です。
響きの深みはもうちょっと欲しいですが、それを引いても心地よくて素晴らしい。
Sagor & Swing
Orgelfarger
2001 Hapna H.5
電子オルガンと控えめなドラムの、落ち着いた不思議な、けれど暖かいムード音楽。
この素朴な曲調はスウェーデンの民族音楽をルーツに持っています。田舎の穏やかな風景が思いっきり見える。
ただ思いっきり異国情緒ではなく、どこか「田舎」の共通認識的なもので私たち日本人にもしっくりはまりますね。
聴いていてほのぼのした気持ちになれる一枚。11曲40分弱。ミミズクのジャケットが愛らしい。
やっぱりHapnaははずれが無い。アーティストのベクトルはてんでばらばらだけど。
Sandoz Lab Technicians
Everythings Fifteen
2004 Celebrate Psi Phenomenon 1007
Dead C, Sun Ra, Pharoah Sandersといったバンドの影響が濃い、90年代から活動するNZの即興バンド。
同じ演奏が二度と不可能な即興にこだわっているそうです。
2000年8月、クライストチャーチのギャラリーでのライヴ。
掛け声で始まる、木管楽器の奇妙奇天烈な叫び声。どろりと伸びる気のない持続音。
突如ドラムセットが乱入し、興奮しだす各楽器たち。
終始、エキセントリックというか異常なテンションで突っ走ります。
それが、録音のせいも結構あるけれど、くぐもった残響の中で暴れのたうつ。
なかなかいかれてて楽しかったです。ただ、やっぱりもうちょっとまともな録音でほしかった。
Schurer
Vexations
2004 domizil domizil21
ピアノがメランコリックで憂鬱なメロディーを静かに奏でる。
やがてピアノは変調され、くぐもった、ささくれを持った響きになったり、つぎはぎになっていく。
ピアノの音は様々にその振る舞いを変えて届いてきます。グロテスクになったり、アンビエント系ドローンになったり。
ころころ雰囲気がかわりおもしろかったですが、音色の変化自体はあくまで一定の範囲内に収まっている感じ。
セピア色の風景の中で変化しているようで、統一感がありました。
アンビエントと音響系の狭間みたいなアルバム。
Scott Horscroft
8 Guitars
Quicksilber 2
シドニー在住の若手アーティストによる生演奏作品。
8人のギタリストにそれぞれリズムパターンを厳密に刻ませ、それをコンピューター処理で慎重に重ねていく。
ギターの心地良いパルスに微かに音が浮かんでは消え、
淡々としながらも非常にトリッピーな音楽が延々と流れていく。
まるでライリーかヤングを聴いているようなあのトランス感覚がいとも容易く再現できる。
変化は結構乏しいですが、このミニマルな高揚はそれだけで素晴らしい。
ミニマル系実験音響の中では久しぶりの大当たり。
なお、演奏しているギタリストにはBrendan WallsとかOren Ambarchiなんかが普通にいます。
Sean McCann
Prelusion
2011 Recital RO
彼の名義リリース作品を聴いて、以来注目している作家の2011年CDR作品。
トラック1、はるかな遠くから柔らかな音がこだまして、暖かく滴る。
ゆっくりとサウンドスケープは巡り、淡くほのかに光を放つ。
トラック2、まどろむように遠くを見つめる音が伸びるアンビエントドローン。
ゆるやかに空間の色が変わりながら全体の淡い輪郭を保つ手法は
あの名義カセット作品のトラック1を思い起こさせる。
トラック3ではその幽玄とした響きが具体音と一体になり、褪せたセピアの温かみが充満する。
トラック4、さらにマテリアルはひび割れ、軋みながらもその光景は
廃墟を眺めるような寂寞さと美しさを広げてくれる。
一連の流れを意識しながら非常に淡く繰り広げられる、実にすばらしいアンビエント・サウンドスケープ。
限定75部。ただ、ナンバリングついてるんですが、どう見ても「172」。
Siemers
Traumwaffe
2003 Break the Line BTL 023
Ralf Siemersによるプロジェクトの、BTLシリーズからの一。
コンピュータによる製作とのことですが、中身は広漠としたノイズ砂漠。
虚ろなドローンの風がひたすら薄く伸びていく。
次第にマテリアルがぎらぎらしてくるあたりはなかなか楽しいです。
トラック11以降の音が湧き出てくるような処理も良いし、地味だけれど飽きない。
ただ、中盤のmetalmachineシリーズはさすがに失速した気が。
後半のDWシリーズはまた、音が混沌とゆらめく音響が面白かった。
地味だけれど。
Simon Wickham-Smith
Two4Dancin
2004 Celebrate Psi Phenomenon 1006
サイモン・ウィックハム=スミスのアルバム、Birchville Cat MotelことCampbell Knealeの主宰するレーベルから。
この人はけっこういろんな傾向の曲を作っていますが、これにはびっくりした。
いきなりファンクなビートで幕開け。楽しいけれど彼にしてはおかしいぞと思ってたら、
ループの中から次第にパルス系ノイズが出てきて次第に内容が変化して行く。
15分ごろから内容が大きく変化。それまでトライバルな声だったのがストリングス系の輝かしい音に。
30分を過ぎると、次第に象の鳴き声みたいなのが混じり、40分からお得意の音声コラージュも。
次第にループ音源の種類が増えていき、混沌と重なりながらだらだらと。
でもビートは絶対に変わらない。異常なまでの安定感でひたすら続いていく。
ある意味瞑想的な、そういう意味では彼らしい一枚。1曲75分ノンストップです。
Simon Wickham-Smith and Richard Youngs
LAmmERGEIER
vhf vhf#58
スミスとヤング両氏はやたら仲が良い。キングスカレッジの頃からの親交があるようです。
主に様々な民族楽器の生楽器の音を基にした、ミニマルな作品たち。
曲によってリズミカルだったりドローン調だったりします。ただどの曲もミニマルなリズムがベースになっているのは共通。
曲が進むにつれ、だんだんサイモンの加工が顕著に。高い反響音が主張してくる。
まあアブストラクトかつささくれたソリッドな音は彼ららしい感じですよね。
リズミカルな最初2曲はVibracathedral Orchestraを想起させます。
無音の部分が比較的長く、曲間がちょっと開いてます。長い曲がなく、気楽に聴けました。
Sola Translatio (Alio Die + Opium)
Mother Sunrise
2001 Hypnos hyp2130
イタリア出身同士のAlio Die (Stefano Musso)とOpium (Matteo Zini)のコラボアルバム。
水が流れ、虫がなく中に神秘的で神聖さのあるドローンが漂う。
電子音がゆらめき、シタールが爪弾かれる、エキゾチックでアンビエントな世界。
やはりAlio Dieが加わるアルバムは、深い音響と軽い聴きやすさが並立していて独特です。
今回はちょっとエキゾチック成分が直接的で強いところが特徴。
Sonic Temple Assassins
III
2007 Ruralfaune rur025
Ashtray Navigationsなんかと共同作品をリリースしたりしてる人の3インチCDR。
ちょっとチープなシンセの音に、クラウトロックなドラムが入ってくる1,3曲目。
スペーシーな電子音がぐるぐる跳ね回る2曲目。
ああ、たしかにAshtray Navigationsと共演した人ぽいなあ。
ゆるい感じのノリと、実験音響な背後の電子音のちぐはぐな合致が、だらだらとしながら聴けた。
限定50部。インク散らし系のペインティング紙ジャケ。
Stefano Pilia
The Suncrows Fall and Tree
2006 Sedimental sedcd045
イタリア・ボローニャで活動している若手のアーティストによる作品。
地元ボローニャやミラノでのフィールドレコーディングを素材にしています。
南欧のさまざまな風景が淡く、暖かい電子音ドローンの上で過ぎ去っていく。
次第に押し寄せてくるノイズドローンが途切れ、場面がいきなり転換するところなんかかっこいい。
場面がなだらかに絶えず流れていき、マテリアルも様々なものを使用・加工しているので聴いていて全く飽きない。
第2部は波の音でざっと大きく始まり、空ろな電子音が中核となって進んでいく。
第1部の爽やかな印象とは違い、こちらは内向的で沈思的。重いピアノの音。
フィールドレコーディングの趣が強い第1部と純粋ドローン風の第2部の対比がまたいい。
黒いジャケットに夕焼けが浮かぶデザインも綺麗で気に入った。
Stephan Mathieu
On Tape
Hapna H.18
冒頭の激しい電子音が過ぎ去ると、虫の飛ぶ、静かな屋内の音が聞こえるだけ。
そこから徐々に音が重なり、彼らしいかすれたドローンがこだましてくる。
それが徐々に重なり、どこかノスタルジックな思いを奏でていきます。
やがてドラムの単音が重なり、そこからドローンが細分化されて茫洋としたパルスに収束していく。
それが少しずつ弱まり、代わりに鳥の声などのフィールド音とオルゴールの音が入ってくる。
マシューのドローン的ではない音響的側面が伺えるCDです。
Stephan Mathieu and Ekkehard Ehlers
Heroin
2003 Orthlorng Musork ORTH 12
2001年にStaalplaatから出していたCDに、他作家のリミックスを加えて二枚組でのリイシュー。
花火の音を背景に、ハーモニカとノイズの狭間で編集されながら、オルガンの心地よい夢見るような音楽が流れていく。
暖かいノイズからギターの穏やかなリズムが浮かび上がる。
無表情なノイズやドローンの間から立ち上るほのかな温かみのある音楽が実に素晴らしい。
現れる音楽には実験音響だったりエレクトロニカ風味だったり、さらにはG線上のアリアのコラージュと幅がありますが
それらをアブストラクトなノイズ・ドローンの世界に内包してひとつの大きな流れにまとめている。
両端に印象的な「New Years Eve」を置いているのもその顕著な例。
Disc2に8人のアーティストによるリミックスを収録。
Joseph Suchyのギター部分をマテリアルにした、幻想的な響き。
竹村延和の、実験音響パルスからブレイクビーツに乗せての盛り上がり。
激しく動くノイズに乗せて、オリジナルの断片が淡く過ぎ去る。
Freibandの、鈍いドラムビートとノイズの融合。Kit Claytonのファンキーなリズムへの加工。
Fenneszの美しいノイズにまみれた憂えるギターと電子音は、彼らしくいつも通り。
Oren Ambarchiの太い電子音ドローンを基にした音楽も彼らしい。
Carmen Baierの虚ろで儚い実験音響、Akira Rabelaisのオルガンドローンを基調とした美しい抽象世界。
こちらも本編に負けず劣らず素晴らしかった。
Stephen Vitiello
Bite the Neighbor
2000 Institute For Electronic Arts IEA01
サウンド・アーティストとして有名なStephen Vitielloの、比較的初期の3インチCDR。
穏やかな細かいパルス音形がいきなりノイズ加工される。
ドローンが不穏げに伸び、うねる中からぷちぷちとノイズが見える。
溶けた、アトモス的なノイズに電子音が絡みつき、徐々にノイズが音の振動を激しくしていく。
枯葉の森の中を進む穏やかなサウンドスケープに、マイク的なノイズが少し。
不思議な20分間を味わえる4曲でした。サウンドアート直系の音楽。
stone free + akaiwa
hiba
Radio R939
音響作家のstone freeと、エレクトロニカ系作品を作るStrange Gardenのakaiwaによる、コラボ2CD-R。
深海底の熱水噴出を創作の根底概念にしたらしく、非常に内向的で神秘的な音楽。
コラボ作品らしく、音響系音楽とエレクトロニカ・テクノの中間を行くような曲が続きます。
ぶんぶんとくぐもった電子音のうねり、曲によっては入ってくるクリック音のビート。
不可思議でひそやかな、光の届かない深海を容易にイメージできる作品です。
CD1が「hiba」、CD2が「clear smoker」と言う構成ですが、何も書いてないCDRだからどっちがどっちかわかりません。
Stone Glass Steel
Industrial >Icon<
1993 Typtoken CD104
Philip Easterによるプロジェクト。
シンフォニックな趣もちょっとだけある、荘厳な感じのノイズ・ドローン。
もうちょっと具体的には、インダストリアルな音響ですね。
その中から漠然としたやはりインダストリアル系のビートがおぼろげに出てきては消える。
ピアノのようなマテリアルが規則的に鳴り響き、ロックの幻影が現れる。
マテリアルとしてはいろいろなものが聴こえてくるけれど、
くぐもった輪郭の中、荒廃した世界観で統一されているのは変わらない。
場面場面で見ると普通に面白い感じだけれど、全体を通して聴くとなかなか倒錯的。
Strotter Inst.
Minenhund
Hinterzimmer hint05
スイスのターンテーブル奏者Strotter Inst.による2009年アルバム。
改造ターンテーブルを使って作り出される音は、ごりごりとしたループによる規則的なビート。
その響きは、まさにタイトル通り鉱山でのハンマーと砕石ノイズのイメージにすごく似ている。
ジャケットの、坑口へ入っていく分岐したレールとそこで貨車を引く人夫の古い写真がとてもよく合っている。
トラックによっては声があったりマテリアルがわかりそうな所もありますが、
基本的にはごつごつとした荒々しい音楽で進む。
だから、たとえばトラック9みたいなのが入っているだけで凄く綺麗なアンビエントドローンになる。
実演風景は複数のターンテーブルに無数の改造を施し、そこに奇形LPなどを載せていくかなり衝撃的な様子らしい。
その風景も納得の、実にすばらしい内容でした。
Sylvain Chauveau
The Black Book of Capitalism
2008 Type TYPE025
Sylvain Chauveauの記念すべき1stのリイシュー。
非常にノスタルジックなメロディーがピアノや弦楽アンサンブルで演奏される。
曲によってはサンプリング音楽みたいな、ちょっと耳に優しくはないものもあるけれど、全体としてはそんな感じ。
アコースティックなトラックもあればドラムとエレキギターがメインのトラックもあり。
エレクトロニカよりのトラックもあったりと、具体的な曲調は一言ではなかなか言い表せません。
自分の趣味には、まあまあ合うかなと言ったところ。
Tape
Rideau
Hapna HAPNA025
Hapnaはスウェーデンの音響系を中心としたレーベルですが、Tapeはそこの看板的な存在の人気バンド。
このサードアルバムは、音響系の人のみならず、インディーズとかを聴く人間にもお勧めできる勢いの聴きやすさ。
ギター、ベース、トランペット、ピアノ、電子音、音の全てがありのままのような、素朴な出で立ちである点が素晴らしい効果を出してます。
温かみのある、独特の音響を持った音がややミニマルをベースとした構成の元にゆったりと編み上げられていきます。
もちろん、音響系の満足するようなアクセントもありますが、基本とても柔らかな気持ちになれる、個性的な音響系の作品。
こういうジャンルの中でほのぼのした音は貴重ですね。
個人的には2、5曲目がお気に入り。4曲目、マラカスがライヒの「Four Organs」みたい。
Remixが収録されてる再発の日本盤買っとけば良かった、畜生・・・
Tape
Opera
Hapna H.9
Tapeの音響は、その中にどこか温もりを感じさせる、生物的・人間的佇まいが素晴らしいです。
この1stアルバムでも、そのフリージャズ出自の独特な感性が光ってます。
ギターやアコーディオンをメインとした、フォークな音が主体。
リズミカルな要素はあまりなく、その後の曲に比べフリーな要素が強い感じ。
しかし、夕焼けを見ているようなその雰囲気はとても表現できないノスタルジーをもたらしてくれます。
西日の差す部屋の中、思い思いの楽器を手に空間をささやかな音で埋めていく光景が見える。
HEADZから新曲を加えて再発されましたが、自分の持ってるのは初期盤。
Temporal Marauder
Contempt
2011 Digitalis Limited ltd # 183(Cassette)
フランスのJean Logarinのアーカイヴスから。
80年代に活動していたインダストリアル・バンドの、80年代中ごろ録音の音源。
ぽぽぽぽと奇妙なパルス風のリズム処理に乗せて、ノイズが奇天烈な踊りを披露する。
心地よいシンセミニマルの伴奏に乗せて、女声がふわりと歌を歌う。
A面の後2曲なんかはかなりさっぱりとした感触で楽しいです。
B面のほうはドラミングから始まり、ついにサイケ全開かと思ったら
ギターとかがいい味出してて、ミニマルサイケには違いないけれど結構あっさりした味わいに。
シンセミニマルとサイケの世界が融合した、聴きやすくて楽しい80年代世界。
限定80本。31分テープ。
Tetsu Inoue + Andrew Deutsch
Field Tracker
2001 Anomalous Records nom9
アンビエント・エレクトロニカの大御所テツ・イノウエと実験音響大家Andrew Deutschの共演。
電子音がまるで回線の接続音のようにきゅるきゅる動き、ノイズが細やかに絡む。
グリッチされた音の欠片の海に、抑えられたノイズの川が注ぎ込まれる。
虚ろで無機質な音が細部に至るまで分解され、再構成されて、
まるで絵画的に音楽を作りながらも流れるような感触も同時に与えていきます。
音楽の表情は、かなりテツ・イノウエ寄り。エレクトロニカな音楽にノイズがかぶさる。
トラック3のギターが淡く広がる音楽は、ノイズ/エレクトロニカな輪郭の中に
非常に爽やかな美しさを持っていて素晴らしいです。
二人の異なる個性がちょうどうまく重なりあったアルバム。
Tetsuo Furudate, Sumihisa Arima, Pneuma
Autrement Qu'Etre
1995 Les Disques Du Soleil Et De L'Acier DSA 54040
サウンド・アーティスト古舘徹夫が、同じくサウンド・アーティストの有馬純寿やpneumaと組んだ作品、東京でのライヴ。
男女の落ち着いた声が、ディレイを持って響いてくる。そこにオケ風の電子音が加わり、叫びと共に熱狂していく。
低い弦のような音が猛獣の唸りのように、ノイジーに絡み合う。そこへ音楽や声のサンプルが騒々しく押し入ってくる。
ひそやかな男の声がやがて苦悩に叫びだし、そこから堰を切ったように楽器音がなだれ込んでくる。そこから鐘の祈りへ。
重い電子ドローンから、シンフォニックに暗く、広い空間の中で音楽が進んでいく。重々しい行進、叫び声。
淡い管弦楽サンプルからノイズが立ち上がり、オルガンや甲高い電子音も絡みながら音楽は混沌とした荒漠世界に突入していく。
どのトラックもひたすらにシリアスな音楽です。
THU20
Nancy - Het Archief
1999 Alluvial Recordings A14
オランダの大御所実験音響ユニット。Roel MeelkopやFrans de Waardを初め、
有名な名前の人物も多く在籍しています。
94年にG.R.O.S.S.からリリースされていたカセット音源をリイシュー。
前半は長尺トラック「Nancy」。電子音の飛ぶ冒頭を過ぎると、曖昧模糊な低い響きが聞こえてくる。
次第に音はバリエーションと動きを少しずつ増やし、膨らんでは消えてゆく。
古風な電子音のパルスが飛び交い、具体音の乾いた音がこだまする。
音の配置を慎重に考えながら作られているのがよくわかる。
たとえるなら、ノイズというより電子音楽を聴いているような音世界の感触。
はっきり言って、ノイズシーンの感覚で聴いていませんでした。
後半の「Het Archief」も基本的な響きは同じ。ただ、実際の作りは
声をメインに加工したノイズ風だったり、朗読的なつぶやきが続いたりといろいろ。
実力派であることがこれだけを聴いても歴然とわかる、内容の濃さ。
非常に面白い、残るべき内容の実験的音楽。
Twinsistermoon
Bogyrealm Vessels
2012 Handmade Birds HB-045
Mehdi Amezianeによる個人プロジェクトの作品。
トラック1から、穏やかに輝くようなドローン音楽。凄くアンビエント風で良い感じ。
トラック2はギターの音が倒錯的に反響する中で女声が淡く歌う。
曲によって印象は大まかに以上の2つに分けられますが、基本的にはどこかゆがんだサウンドスケープ。
幻想的というよりはどこか非現実的と言った方が近いような、奇異さを感じるアンビエントです。
やっぱり好みはどちらかと言えばドローン風の曲か。トラック9,11みたいな割れた感じは好み。
まあでも、全体的に見ても悪くなかったと思います。ちょっとさりげなくネジの外れた感じが。
納得いかなかったのは、いかにも海外らしい絵柄の漫画絵なジャケットだけでした。
限定500枚。
Vibracathedral Orchestra
Tuning to the Rooster
2005 Important Records IMPREC061
キ●ガイ即興サイケ集団、ヴィブラカテドラルオーケストラ。彼らの演奏は聴衆をトランスの彼方へいとも簡単にすっ飛ばしてくれます。
このアルバムも、いつも通りのすばらしいトビ具合。弦楽器のドローン、太鼓のリズムにピアノがころころと乱れています。
聴こえる音の多くが民族楽器による即興であるため、音がとても民族調。
今回はだいたい切れ目無く続く4トラックですが、曲によっては落ち着いた普通に心地よい音楽もあり良い感じ。
Visor
Visor
1998 Digital Narcis DNTOM001
Jorg Follert,Jens Massel,Tom SteinleからなるVisorの、多分唯一のアルバム。
Tomlabから出ていたものの、間髪つけずの再発盤です。
ちょっと暗くメランコリックなループと、少し温かみを持った減衰音のアルペジオ。
ぼんやりとした響きの中でノスタルジックなループがおぼろげに見える。
この独特な音響にくるまれた短く儚い音楽達が、個性的なポップサウンドに聴こえる。
30分もない短いものですが、Tomlabらしい暖かい音が聴けて満足。
2,4曲目あたりがとくに好き。
Veltz
In Dust, Real Sound Archives 2008-2010
2010 VLZ Produkt VLZ00023
Veltzこと松岡亮の、これまでのリリースからの抜粋や新作を交えたベスト的CDR二枚組。
朦々と垂れこめる攻撃的なノイズの雲が押し寄せてくるトラック2、
金属質のごつごつした輪郭からピアノの褪せた響きに収束するトラック3、
プリミティヴな太鼓と蝉の音の渦巻くトラック5や
鬱屈としたピアノの響く空間から徐々に混迷を極めノイズが充満していくトラック6など
ノイズがこれでもかと詰め込まれた2時間。
Disc2最初の壊れたループなんかはノイズとは違った激しさで良い。
トラック4の長いひきつるようなジャンク音響はTNBやOrganumの流れも組んだコンクレート風の響き。
ライヴでも感じましたが、実力を持った正統派のノイズアーティストで安心できる。
Walter Marchetti
De musicorum infelicitate -Dieci pezzi in forma di variazioni dolenti
alga marghen 16NMN.039
ぐちゃぐちゃごりごり、ピアノの音による無法地帯。
従来の奏法だとか特殊奏法だとかの観念を超え、とにかくハイテンションで最初から最後まで60分ぶっちぎる。
LPの売り文句から推察するに、どうやら五線譜の上に適当にドットをばら撒き、それをスコア化して演奏しているようです。
そりゃこんな爆発した音楽になるよなあ。
6分ごとにぶつ切りしてるのが残念。全部繋いじゃえば聴いててすっ飛べるのに。
でも、アルバムの題が"The Unhappiness of Music"、「音楽の不幸」であることを思えば、その苛々が正しい感覚なのかなあ。
副題には"Ten Pieces in the Form of Painful Variations"とあります。
「この音楽を聴いている間、音楽が語っているそれ自体を解してはならず、そして何も理解してはいけない。」 (W. Marchetti, tud.899訳)
何ですと。流石はフルクサスのお人だ。
Walter Smetak
Interregno
mushroom sounds?
ブラジルを拠点に活動する、アヴァンギャルドな団体の1980年アルバム。
なんでも人形劇のための音楽だそうなんですが、かなり前衛的なものなんじゃないでしょうか。
民族楽器などのさまざまなつぶやきに、エレキギターなどの特殊奏法ノイズがかぶさる。
基本的に即興的なノイズがじりじりと照り付けるあたりやばい。
楽器のバリエーションが個性的なお蔭で、音響はなかなかカオスになってて面白い。
即興系なアヴァンギャルドではなかなかの異彩を放っていると思います。
そういうのが好きな人なら掘り出し物と思えるはず。
Wheaton Research
Living under a thin film
Bake Records Bake Records 015
Brent Gutzeitメインの音源集。インプロ風のエレクトロニクス音楽が、ドローン状に引き伸ばされた展開をしていきます。
薄い音が多く、響きはそれなりにソリッドなものですが全体を通して茫洋とした印象をもたらします。
一方、人と組んだ音源はまた違ったもの。Todd Carterとの5曲目「Radio Zagreb」は重々しいドローン展開。
秋山徹次との「Stories」は多彩な音の展開が見られる題どおりの作品。
6曲目はJim O'rourkeとKevin Drumm参加。ぎらぎらした重厚ドローンに甲高いノイズが絡む。ただ音源切れてて2分足らず、畜生が。
ライヴ音源で音質が良くないものもありますが、このハードな内容は価値あるもの。
思いっきりCDR。ジャケットがふつーのコピーで泣けてきます。
Wolf Vostell
De-Collage Musik
mushroom sounds
ドイツの画家・彫刻家ヴォルフ・フォステル(1932-1998)は主にフルクサス関係の活動が有名ですが、
こんなノイズミュージック系の音源も残しています。80年頃の音源。
ぐちゃぐちゃになりながら引きつった具体音の残骸が転げまわる。
電気信号、声、音楽断片、もはや判別不能な具体音がテープヒスと会場残響の中で混然となって同時に主張しあう。
音素材の加工自体はそこまでいろいろやってるわけではないんですが、とにかく重ね方がえげつない。
ラジオから流れてくる効果音を10くらい同時再生しているかんじ。
ささくれた音同士が互いを貪り合って、素っ気無くも攻撃的な音響に。
この音の衝撃が生々しく伝わってくる辺りしびれます。下手なハーシュノイズより破壊力がずっと高い。
短いトラックのぶつ切り感がぶっきらぼうさに拍車。
後半はいかれたテープループコラージュも登場します。これまた微妙にテンション高くて良い。
Wilburn Burchette
Wilburn Burchette's Guitar Grimoire
mushroom sounds
ウィルバーン・バシェットなる人物による、1973年の自主レーベルからのLPを復刻。
エレキギター?の物憂げな爪弾きがぽろぽろと零れ落ちて簡素な波紋を作る。
独特のエコーが音の輪郭を非現実的にゆらがせて、まさに瞑想的。
始原的で神秘的、オカルティックな思想のもとに繰り広げられるインプロヴィゼーション。
・・・ですが、まあ結局音楽自体はリヴァーブだらけのギター即興。
このもやもやした音楽の形もアンビエントや実験音響に慣れた耳では何とも思わんのが実情。
トラック4とかの音数多い音楽ではテンションを上げ、そうでない音楽ではのんびりと。
トラック3の冒頭を聴いてライヒの「エレクトリック・カウンターポイント」を思い浮かべた自分はミニマル信者。
いや、展開は全然似ても似つかないんだけれどね、それでも思っちゃうんだよ・・・!
山田ノブオ
Tape Recorder's Mad Joy
abh-05
安物のテープレコーダーで、古いカセットにいろいろなラジオ音源を録音し、
それを部屋の中にあったありとあらゆる物体の音と併せ極端にコラージュした作品。
ホワイトノイズのかかった世界の中で、様々な光景が秒単位で目まぐるしく入れ替わっていく。
2曲目はちょっと落ち着いてノイズの波の応酬。どのチャンネルもやってません、みたいな感じ。
流石はThe New Blockadersのマテリアル提供なんかもしている人です、音のゴリゴリ感も満載。
あまりにも強烈過ぎる音楽です。カットアップ系音楽が好きな人は見逃しては駄目でしょうね、これ。
Yellow6
Merry6mas2008
2008 Make Mine Music mmm055
ロンドン出身のギタリストJon Attwoodが、デビュー当初から毎年行っているクリスマスプレゼント企画のCD、2008年版。
ギターが基本的にはソロでしっとりと歌う。伴奏も全てエレキギター。基本的には即興みたいですね。
エレクトロニカとフォークの中間のような、独特のモノトーン空間。
ノイズとは無縁、あってもエフェクト。聴いていてとても気持ちよくなれる曲集です。
ノスタルジックな気持ちになりたい時にどうぞ。150部限定、60分弱収録。
にしても、クリスマスにこんな切ない曲で良いのか。音に温かみはあるが、もうちょっと明るくても・・・
まあいいか、どうせクリスマスが日常と変わらなかった人間が言う話じゃないですね、あはははは。
*0
0.000
2000 Mu Rebel 002
日本のNosei Sakataによるプロジェクトの第3作。彼自身のレーベルから。
非常に微弱なサイン波が微かに動きを見せながら、極限までに小さな世界を作る。
微かなゆらぎに強弱、様々な位相からの響き、それだけで構成される純粋なサイン波の音楽。
無について考え、自らの名も無を意味する(ゼロをかける)だけあって、
完全なまでに静寂音響の中心を突っ走っています。
最初と最後は「test」として1000ヘルツのサイン波を流すんですが、
要はこれだけ普通の音量なので気を付けてないと最後ものすごくびびる。本気でびっくりしたよ畜生!
なかなかヤバイ感じに良かった。静寂音響の名作の一つ。
our bubble hour vol.2
Holger Hiller; Gut Und Bose
TBA; Bridge/Post Itaka, Waiting for Yulaya
Andrew Chalk + Daisuke Suzuki; Flaxen
スマーフ男組; 3,4 Smurph
Coasaru; Bully
Nobuo Yamada; Echoes #4
world's end girlfriend feat.湯川潮音; 君をのせて〜ナウシカ・レクイエム
chib; ((0))
DJ KLOCK; Harmony
なし
chibや山田ノブオが参加した、2008年2月2日の千駄ヶ谷loop-lineでのイベント「our bubble hour vol.2」入場者に配布された限定コンピCDR。
Holger Hillerはサイケなジャーマンテクノ。クラフトワークの流れを汲んでます。
TBAはエコーの強くかかった声による冒頭から、音響とエレクトロニカの合いの子みたいな音楽が。
ただシリアスな感じは薄く、けっこう普通と言うか、気楽に聴ける。
アンドリュー・チョークと鈴木大介の曲は「The Days After」に収録されているもの、残念ながら未発表ではありません。
海の穏やかなフィールド音から徐々にドローンが浮かび上がってくる、何時もどおり素晴らしい作品です。
のんびり浸ってると、直後のスマーフ男組のユル系ハウステクノ風音楽でぶち壊されるので注意。
Coasaruは音響アンビエントな冒頭ですが、その後はそれにダウンビートをかぶせて内向的なエレクトロニカ系テクノに。
山田ノブオは残響激しい音の応酬、銭湯で叩くおけみたいな音にひよこの鳴き声とかが。
world's end girlfriend・・・こんな(と言っちゃ失礼か)ものに10分もかけて、頑張った。
彼にしちゃかなりスタンダード、というか綺麗に進んでいるなあ、と思ったら盛り上がり辺りから少しずつブレイク音が。やっぱりね。
でも、まだ十分普通の人が聴けるレベルだと思います。
chibはアブストラクトな音響からほのぼのした旋律が浮かび上がってくる。
最後はDJ KLOCKのチップチューンみたいな加工をした音の、ファンキーリズムな心地よい曲。
けっこう見つけ物な曲があったりして楽しかった。
AVANTO 2006
Tony Conrad; Dagadag for La Monte
Ralf Wehowsky; Wurgengels Lachende Hand
Jim O'Rouke; Out with the Old
2006 Avanto Recordings AAAAA-2006
毎年フィンランドはヘルシンキで行われている芸術祭Avanto Festival。
その中で披露された作品をCD化して毎年の活動資金にしているようですが、これはその2006年版。
ちなみに、音源はすべて新作か、新Mixです。要は非公開音源。
コンラッドの曲はヴァイオリンの素朴な長い旋律で始まる。
無加工の音が次第に電子変調され、重ねられて姿を大きく変貌させていく。
じわじわと単旋律が微妙にずれた加工処理でノイズドローン風に加熱していくさまは
コンラッドらしいと同時に電子音楽的、そして程よくヘテロフォニー。
RLWことウェホスキーは、虚ろなドローンノイズから次第にミクロな音が響いてくる。
しばらくそれでじりじりやっていたら、突然浮遊的なサウンドに様変わり。
この構成を一直線にせず、多角的に攻めてくる手法がやっぱり巧い。
子供の声、ギター、電子ノイズ、すべての異なる音が混然一体となってコンクレート風に攻め立てる。
オルーク、エレキギターによる夢見るような美しいドローン。
見事なまでに幻想的な音響を見せてくれます。こういうのは本当に得意技。
最後の次第に淡く消えゆくあたりが、たまらなく綺麗。
神下山 高貴寺 ザ・ライヴ 第11回[Final]百千万秋楽
志村禅保:尺八、南澤靖浩:シタール、出口煌玲:龍笛、鈴木昭男:磐笛
2002 Studio NIRVANA NRV-01/2
宇都宮泰氏が企画・制作を行った神下山は高貴寺における一連のライヴ、その最終回の模様を収録したもの。
各々の演奏音の合間に静寂が入る代わり、当日の大雨の音が介入してきて不可思議な世界を作っています。
静寂以上に緊張感あるような、この臨場感は素晴らしいです。シタールあたりからの雨音は本当に凄い。
雨の降る様子を軒下でぼうっと眺めている感覚、という表現が一番近いのでは。
この場にいて実際に体験してみたかったなあ。
「これを聴いて、ただの雨だというやつは、耳を引きちぎってやる。」 (鈴木昭男、帯から)
↑いいこと言ってくれます。
After Tape
duenn,PsysEx,LiSM aka GoHIYAMA,白石隆之,on_14,aen,pawn.aka.hidekiumezawa,
HAKOBUNE,Kmmr,ヒトリアソビタラズ,source,TAGOMAGO,Escalade,Go koyashiki,
akira_mori,yui onoder + Hiroki Sasajima,arcars,tamaru,polarM,
koyas,毛利桂,Computer Soup,NERAE
2011 duenn label dnn001(Cassette)
福岡のアンビエントレーベルが、国内の様々な電子音楽アーティストたちに
ひとり一曲、1分で曲を作るようお願いして集めたコンピカセット。
1曲聴いているともう次の曲に移っているので個々に書くことはできませんが、
どの人もそれぞれの感性でアンビエントな音楽を書いてきているのが面白い。
ギターなんかを使ったいかにも綺麗な音楽があれば、ピアノ音源などを激しく切り貼りしていたり
かなり虚ろな輪郭が強くダークアンビエントに近い輪郭のものまであったりと千差万別。
けれど、その儚くさっと過ぎ去る光景は、まさに(宣伝通り)俳句のような簡素な美しさ。
ふわふわと夢気分で聴ける23分。A面・B面それぞれ同じテイク。
公式HPから音源がダウンロード可能なのもうれしい。100部限定。
tetuzi akiyama / toshimaru nakamura / otomo yoshihide / taku unami
Compositions For Guitars Vol.2
Toshimaru Nakamura; gt flo #2
Tetuzi Akiyama; Moebius Rings(for two guitars)
Otomo Yoshihide; Plastics Pick & Mini-Motor
Taku Unami; The Whisperer in Darkness
Otomo Yoshihide; Softly, as in five guitars feedbacks
2004 a bruit secret 104
このレーベルによる、実験音響作家によるギター楽曲コンピのシリーズ第2弾。
面子が壮観すぎて凄いですね。
中村としまるの曲、虚ろなハウリング音が響き渡る。フィードバックの微妙な変化や
ピックによる微細な音響のみで構成された、実に彼らしい曲。
どんよりしたドローンが続くようで、びっくりするくらい音の幅がある。
秋山徹次作品、ナイロン弦のアコギにオーバーダブ処理を施したもの。素っ気ない爪弾きが淡々と巡っていく。
大友良英の1曲目、エレキソロによるノイズ勝負。こういうの、弾くのすごく面白そう。
もちろんホモフォニックではありますが、緩急激しいのでかなり楽しめました。
宇波拓の曲は、自身のペダル・スチール・ギターと秋山徹次のアコギの動きがシンクロしながら
ぽつぽつとグリッサンドが響いていく。似た動きではあるけれど、楽器の特性上
決して同じようには響かず近似値で進んでいくあたり単純な発想だけど面白い。あと沈黙だらけ。
大友2曲目は5人のギターによるフィードバック演奏。が、実に渋い。
じりじりとしたノイズ音などがうねりあう、緊張感のある音楽が広がります。
流石の内容で、期待どおりでした。
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