オムニバス
クラシックまたは現代音楽の、作曲家で括られていないCDのレビュー置き場。
順番は適当に更新した順。
Doubles Jeux
Henri Dutilleux; Figures de resonances
Darius Milhaud; Quatre danses en deux mouvements
Daniel-Lesur; Contre-fugue
Alain Louvier; VIIIe Etude pour 31 agresseurs
Marcel Mihalovici; Cantus Firmus
Pierre Petit; Le diable a Deux
Andre Jolivet; Patchinko
Georges Auric; Doubles Jeux
Marius Constant; Moulins a Priere
Maurice Ohana; Soron-Ngo
Genevieve Joy and Jacqueline Robin,Piano
Erato WPCC-329
近現代フランスのピアノ二重奏作品集。マイナーな曲ばっかり。
ディティユー「響きの形」、ここではいくつか書かれているうちの最初の3曲を収録。
激しいクラスターが爆発しては極端なまでに対比される第2曲、
極端な高・低音で音型が動いていく第3曲など音響的な広がりがあって、
そういう意味で自分としては聴いていてとても楽しい。
ミヨー「4つの舞曲の2章」、大本はそれぞれ同時にも独立しても演奏可能な6つの舞曲。
ここではそのうちの「サラバンド-パヴァーヌ」と「ルンバ-ジーグ」を組み合わせて演奏されています。
どこかちぐはぐな感じだけれど、語法的にはかなり絶妙に関係性が保たれている、
リズム的な緊張感も感じられるどこか派手で爽快な作品。
ダニエル=ルシュール「コントラ・フーガ」、ゆるやかで厳格なフーガの上を
まるで馬鹿にするかのように音の駆け足が行き来する。
アラン・ルヴィエの「31人の侵略者のためのエチュード第8番」、
とにかく鍵盤がひたすら叩かれる。クラスターのひしめくさまはとても打楽器的。ノイズチック。
いい感じに岡本太郎しています。とりあえず爽快なので気に入った。
ミハロヴィチ「カントゥス・フィルムス」穏健派な作風だけあって
旋法的で近代的和声のなかで堅実に、黙考するような音楽を作り上げる。前後の曲が曲だけにほっと一息。
プティ「馬鹿騒ぎ」、蓋をノックするノイズから始まる異常なまでに速いパッセージ。
そしていきなり挟まれる幾分メランコリックなワルツ。なんだこりゃ。面白いけれど。
ジョリヴェはずばり「パチンコ」。・・・投石器的なアレでなく日本独特のアレです。
まあ単に音密度の濃さや乱暴なリズムの印象から名付けただけらしいですが。
オーリックのタイトル曲「ドゥブル・ジュ」、跳ねるようなタッチと
調性を超えて「全音階的な」スタイルの洒脱な作品。
マリウス・コンスタンはもしかして指揮活動のほうが有名じゃなかろうか。
元はチェンバロ二台用に書かれた「祈祷輪」、混沌とした速い動きの冒頭から
次第に旋律が暴走しては点滅する、無窮動の音楽。
最後のモーリス・オアナ「ソロンゴ」、まだ作者健在なのに未完成とかどういうことだおい。
クラスターや特殊奏法だらけの、幾分か点描的な、けれど反復要素が多い神秘的な作品。
まだ前衛的な影が非常に色濃い。後年の曲はかなり聴きやすいのに。
Set of Five
John Cage; Nocturne
Henry Cowell; Set of Five
Alan Hovhaness; Invocations to Vahakn
Somei Satoh; Toki no Mon
Lou Harrison; Varied Trio
The Abel Steinberg Winant Trio
1991 New Albion NA 036 CD
ニュー・アルビオンおなじみのトリオが贈る、アメリカの聴きやすい現代音楽作品。
ケージの「夜想曲」は、彼40年代の聴きやすい作品の一つ。間の多いながらも美しく響くピアノとヴァイオリン。
まだ前衛思想でいっぱいになる前の、旋律的な音楽が聞けます。
クラスターの提唱者ヘンリー・カウエルの「Set of Five」、
ゴングやシロフォン、トム群といった打楽器が縦横無尽に活躍する不思議な音楽。
ピアノやヴァイオリンは比較的まともで、むしろ素朴でかわいらしい旋律線を奏しているのに、
この打楽器のクラスター的な効果が音楽を格段に異化している。
この流れがそのうちハリー・パーチや下記のハリソンにつながっていくんだなあ・・・
アラン・ホヴァネスの「Invocations to Vahakn」は1946年初期の作品。
その後の神秘主義の中にはまり込んだような音楽を思うと、ここまではっきりとリズミカルな音楽が聴けるのは珍しいかも。
まあもっとも、強い東洋かぶれの音楽であることには全く変わらないんですが。
佐藤聰明の「時の門」、ヴァイオリンの細く長い歌に、ピアノと打楽器が儚く伴奏を添える。
やはり日本の長唄のような感覚が、このエキゾチシズムだらけの選曲の中で非常に落ち着きます。
やっぱり佐藤の曲は、これくらい音数が少なく素朴な方が魅力的。
ルー・ハリソンの「Varied Trio」はカウエルの曲をさらに推し進めたような東洋主義。
ガムランというか、1曲目は日本的な感じがしなくもない。
でも2曲目なんかのどこか虚ろな響きはいつものガムランかぶれなハリソン節。
ちなみに2曲目の打楽器はボウルを箸でたたいた音、終曲はフライパンです。
やっぱりこのトリオで聴くと、この変な構成が当たり前に思えるからすごい。
音楽はまあどれもそこそこいい感じ。あえてどれかと言うなら佐藤か、ハリソンか、といったところ。
ピアノ淡彩画貼/松谷翠
三善晃;オマージュ
八村義夫;彼岸花の幻想
松村禎三;ギリシャに寄せる二つの子守歌
武満徹;ピアノ・ディスタンス
吉松隆;プレイアデス舞曲集より
佐藤敏直;ピアノ淡彩画貼より
小倉朗;ピアノのためのソナチネ
松谷翠、ピアノ 植木三郎、ヴァイオリン 白尾彰、フルート
1994 Camerata 32CM-318
日本の様々な作曲家とも交流を持つ、現代音楽やジャズを得意とするピアニストのCD。
三善晃の「オマージュ」はそれまでに書かれたシリーズをまとめて再構成したもの。
八村義夫の作品は、緊張感を伴った、単音の長いフレーズと錯乱的なパッセージの絡む曲。
作曲者の「透明で不吉な予感」の言葉の通り、美しさを持つものの
そこから湧き上がる不穏な影を隠すことが出来ない音楽。
松村禎三の曲は必ず2曲がセットで演奏されるように指示されていますが、
2曲目の方は直接ギリシャ旋律とは関係ないという作り。
でも、音楽自体は非常にわかりやすく美しいもの。「エーゲ海の、陽光豊かであろう午後」のような楽想。
武満徹の「ピアノ・ディスタンス」は彼初期の代表作の一つ。
ここに収録された吉松隆の「プレイアデス舞曲集」は第1番から。
現在では破棄している「二重人格者へのオード」が最後に収録されています。
言わずもがな、短くも素朴で聴きやすい、美しい小品集。
ただ「オード」に関してはちょっと毛色が違っていて、(出来に関わらず)破棄したのがわかる浮き具合。
佐藤敏直の曲も全3巻10曲の曲集からの抜粋。
こちらは吉松のように変に旋法的な所にこだわらず、風景を自由にスケッチしている。
小倉朗の「ソナチネ」は作者が21歳の時に書いた全7分ほどの簡素な構成。
近代的な、わかりやすい作品です。
演奏は、もうちょっと華やかでもいい気が。十分技量やダイナミクスはあるんですけれどね。
The Ceiling of Heaven
Donald Crockett; Horn Quintet"La Barca", The Ceiling of Heaven
Allen Shawn; Sleepless Night, Wind Quintet No.2
The Conference Faculty
2005 Albany TROY777
カリフォルニア出身の作曲家ドナルド・クロケット(1951-)の一作目、
「ホルン五重奏曲「舟」」は1999年に作られた15分ほどの単一楽章作品。
神秘的で美しい冒頭から和音のブロックによる伴奏でホルンが伸びやかに歌う。
ロンド風というよりは落ち着いたロックやジャズロックに近いような動き。
中盤の静かな旋律の掛け合いなどを見ても、非常に美しく穏健で近代的な作風です。
NY出身のアレン・ショーウン(1948-)はナディア・ブーランジェの師事経験あり。
現在はヴァーモント在住です。「眠れぬ夜」は単一楽章の弦楽四重奏曲。
こちらも神秘的な冒頭ですが、こちらはかなり緊張感漂う音楽。
そこからやがて感情的に盛り上がり、悲歌を熱情的にヴァイオリンが歌います。
現代の近代作風的作曲家らしい、絶妙な調性感で成り立つクラシカルな意味で美しい曲。
「木管五重奏曲第2番」は亡くなった友人オーボエ奏者に捧げられています。
調性感が時折希薄になりながらも、別の箇所では実に美しく旋律を歌い上げる。
第4楽章では華やかで軽快なアレグロを聴けます。
ちなみにこの作風は明らかに、彼が強く影響を受けているシェーンベルク由来のもの。
でも全体的には調性感ははっきりとした、近代音楽的な耳でも聴きやすい作品。
第3楽章のフーガによるラルゴは、ちょっとトバイアス・ピッカーの「Old and Lost River」ぽい。
最後はクロケットに戻って、ピアノ四重奏のタイトル曲。Kenneth Rexrothの詩に基づく作品。
ピアノの特殊奏法によるハンマー音で幕をあけ、メランコリックな美しいファンファーレが響きます。
快活な第2楽章、たゆたいながら劇的に盛り上がるエレジーから激しい結尾へ。
ふたりとも方向性は違えど美しい作品であることは共通しています。
クロケットの方が甘くてショーウンの方は作曲技巧的な美しさが強い感じ。
演奏はとくに問題なし。流れるような音楽の美しさをうまく表現出来ていると思います。
いやあ、買うときは全然期待してなかったけれど、意外にも大きな当たりでした。
パーカッションの妙技
John Cage; Second Construction
Henry Cowell; Pulse
Torbjorn Iwan Lundquist; Sisu
Yoshihisa Taira; Hierophonie V
Akira Nishimura; Kala
Akira Miyoshi; Rin-sai
Isao Matsushita; Airscope II
Minoru Miki; Marimba Spiritual
Keiko Abe,Marimba The Kroumata Percussion Ensemble
1994 BIS/King CD-232+462 / KKCC-9013/14
それまでにBISから出ていた2枚を纏めて再発したもの。
ケージの「セカンド・コンストラクション」で開始とか渋いです。
ごつごつした曲をびっくりする位洗練してまとめています。原始的だけれど非常にスマート。
カウエルの「パルス」、7拍子の中で拍を自由にゆらめかせて絶えず音を響かせる。
音響的にはケージとかなり似ているけれど、構造はずっとしっかりしたもの。
ルンドクウィスト(1920-)の「シス」、スウェーデン語で闘争心、強情、不可侵といったような意味らしい。
音楽は3楽章で、激しくはないけれど絶えずはっきりと進む強さ(パルス)をもったもの。
平義久(1938-)の「イエロフォニーV」、この中で一番気に入りました。
ティンパニの4台それぞれに奏者がつき、掛け声を出しながら強烈な一打を切り付けあう。
即興演奏による間奏部など、非常に東洋的な感覚の作品。カッコイイです。特にラスト。
西村朗「カーラ」はマリンバと6人の打楽器奏者のための作品。
サンスクリット語で「時間、速度」を意味する題、構造も7種のターラ(時の輪)を模した周期が
絡み合い、快速テンポで進んでいく。きらきらとした心地よい楽想です。
三善晃「輪彩」は様々な断片が爆発しては瞑想する、いつも通りの作風。
イメージの喚起と持続の発現に重きを置いた、間の強い即興的な作品。
武満徹の「雨の樹」は音源を既に二、三持っていますが、これが一番硬質な冷たさを持っています。
BISの冷たく奥ゆかしい録音はこの曲にあっていますね。きらきらゆらめく独特の音楽。
そういえば、この曲がクセナキス演奏の第一人者でもあるグァルダに捧げられていたとは。
まあ武満とクセナキスは親交があったようだし驚くほどではないか。
松下功の「エアスコープII」はマリンバとテープのための作品。
マリンバの特殊奏法やテープの具体音と相まって、不可思議な音響がふわふわと広がります。
最後は三木稔「マリンバ・スピリチュアル」、被献呈者による演奏は落ち着いてます。
派手な熱気はないものの、きちんと盛り上げ方を仔細に決めて魅せてくれる。
演奏は、文句などなし。なんせ世界で始めて打楽器アンサンブルの地位を国際的に確立した人たちです。
安倍圭子のマリンバも安定してます。録音は何時もどおり遠めな感じですが、まあ音量上げれば大体は済む話だし。
狩の音楽〜オリジナル狩猟ホルンによる
Jagdmusik -fur originale parforcehorner
Jules Cantin; La Grande Messe de Saint-Hubert
GIoacchino Rossini; Le Rendez-Vous de Chasse
Friedrich Deisenroth; Zwei Alte Deutsche Jagdsignale, Marquis de Dampierre, etc.
Munchner Parforcehorn-Blaser
1982 Orfeo C 034-821 A
安価で売っていたので、なんとなく買ってみた。
ジュール・カンタン(1874-1956)はフランスの、古い狩猟音楽の収集家でその道のエキスパートだったそう。
「サン=ユベールのグランド・ミサ」、堂々とした序奏に始まり、その後もコラール的で
実に古典的な音楽が並ぶ。とても1934年出版作品とは思えません。5曲目のホケトゥスとかいいよね。
ロッシーニの「狩りのランデブー」、まあホルン・アンサンブルの代名詞な作品ですね。
勇壮なホルンが聴きたいときはこれ、という人もいるんじゃないかしらねえ。
まあでも、この曲は好きでも嫌いでもないからさっと聞き流し。
これ以降の曲はフリードリッヒ・ディーゼンロス(ダイセンロート?)(1903-)の作曲というよりは
彼による古楽の三声〜四声編曲と言ったほうがより正確。
この人吹奏楽編曲とかもやってるらしいですが、詳しい情報がよくわかりません。
そんなわけで、内容は構成がどうこう言うもんじゃない狩猟用シグナルやファンファーレ。
のんびりその西洋的牧歌音楽な響きを堪能しましょう。
演奏者のミュンヘン狩猟ホルン・ブラスアンサンブル、いい感じに音が割れてて迫力あって実にいい。
ちょっと低音が弱い気もしますが、まあこれは演奏というより録音が主旋律重視な傾向だからでしょう。
Works by George Perle, David del Trediti, Nicholas Thorne
David del Tredici; Soliloquy, Virtuoso Alice
George Perle; Sonatina, Lyric Intermezzo
Nicholas Thorne; Three Love Songs, Piano Sonata
Michael Boriskin,Piano
1989 New World Records NW 380-2
デイヴィッド・デル・トレディチ(1937-)の「ソリロキー」は彼が作曲家となった頃(1958)にあたる最初期の作品。
時に暴力的でやや無調的、リリシズムの影響も見せる現代的な曲です。
確かに後年につながるような、どこか旋律的な要素も見られるけれど、これが現在のロマン派的な作品書きになるとは。
ジョージ・パール(1915-2009)はエルンスト・クルシェネク(Ernst Krenek)に師事したアメリカの作曲家。
音楽理論の研究者として活躍する一方、独自の12音技法などでの作曲なども行っていました。
「ソナチナ」は若くして亡くなった天才ピアニスト、ウィリアム・カペルのために書かれたもの。
ちなみに私、彼のラフマニノフ演奏はすごく気に入っています。
ワルツ風のアレグレット、重い悲歌のアダージョ、洒脱なアレグロの3曲からなる5分ほどの短い曲。
でもかなりの技巧を必要とする、なかなかクセのある音楽でもある。
ニコラス・ソーン(1953-)はガンサー・シュラーらに作曲を師事、パット・メセニーと即興演奏を学びながら
ロックバンドやジャズを演奏するという、アメリカらしいなかなかボーダーレスなことをしてきている。でも出身はコペンハーゲン。
「3つのラヴソング」はそんな彼らしく、即興的な要素を多分に取り入れたもの。
どこか情緒的なものをもちながら簡素で印象的なモチーフが自由に舞う。
トレディチの2作目は84年の「ヴィルトゥオーゾ・アリス」、こういうのを待ってました。
彼のアリス・シリーズらしい非常にロマン的な美しさを持った、この上なく素晴らしい曲です。
「ファイナル・アリス」にも出てきた子供らしく愛らしいモチーフをテーマにしながら
繊細な半音階も含めたアルペジオやトリルに装飾されたおとぎ話のような音楽が広がる。
タイトルを見た瞬間に購入を決定した甲斐がありました。
パールの「叙情的間奏曲」はシューマンなどの作品に影響をうけたものですが、
そのロマンチックでありながら近代的・現代的な和声が響く辺り(解説にあるように)ベルグに近い印象。
ソーンの「ピアノ・ソナタ」は単一楽章20分の力作。
夢見るような冒頭から激しく動き回るパッセージ、大きな広がりと緊張感をもった技巧的な音楽。
「ラヴソング」とは対照的に、非常に確固とした構成を持っています。
前衛的な面も多く持ちながら、美しい場面もあって聴きやすい。
演奏はとくに不可はなし。どちらかというと重めですが、トレディチが濁るようなものではない。
Scars of the War
Karl Amadeus Hartmann; Symphony No.4
Hans Werner Henze; Tristan
Symphonie-Orchester des Bayerischen Rundfunks Rafael Kubelik,Cond.
Homero Francesch,P. Kolner Rundfunk-Sinfonie-Orchester Hans Werner Henze,Cond.
1999 Deutsche Grammophone POCG-30140
ドイツ・グラモフォン、20世紀の遺産シリーズの一つ。
ハルトマンの弦楽オーケストラのための「交響曲第4番」は戦争直後に書かれた作品。
もの哀しくゆらぐ旋律が延々と続き、抑えきれないかのように盛り上がる第1楽章。
第2楽章は快活ではあるもののどこか切迫した印象も見え隠れし、さまざまに楽想を変えて広がる。
感情がむきだしになったかのように揺れ動く第3楽章では低音に12音音列が使われます。
ハンス・ウェルナー・ヘンツェの「トリスタン」は彼の代表作。
ピアノがワーグナーの亡霊を描くプロローグ、中世のトリスタン伝説を示唆する
エレクトロニクスと数々の打楽器に彩られた悲歌の盛り上がり。
前奏曲と変奏では、対立的な象徴なのかブラームスが引用される。後半は特に重い音楽。
トリスタンの狂気ではノイジーな電子音響が活躍し、ショパンの幻影と管弦楽が激しく叫ぶ。
3つのブルラ(悪ふざけ)と2つのリチェルカーレからなる第5楽章では古い舞曲の残滓が
壊れた音楽世界の隙間から昔を思い起こさせようとする。
ピアノのつぶやきで始まるエピローグは最も有名な部分。長いピアノのモノローグの後、
心臓の鼓動を出すエレクトロニクス、弦楽の重く美しいドローンに乗せ幼児の「トリスタン」朗読が再生される。
非常に美しく、劇的で印象的な部分ですがその部分は一瞬。
金属打楽器が煌く後、管弦楽の妖艶な絡みつきにピアノが混ざり、混沌としながら淡く曲を閉じる。
クーベリックによるハルトマンも全集以上の素晴らしさがあったけれど、
ヘンツェのトリスタンが素晴らしい演奏で聴ける方の印象が大きすぎる。
正直、ヘンツェは今まで交響曲なんかを聴いても何が面白いんだかさっぱりでしたが、これを聴いて一気に評価を改めました。
後期ロマン派のような美しさが影を落とし、頽廃した世界の中に魅力を作り出す。
70年代現代音楽の傑作のひとつと言えるでしょう。
Music of the Composers St.-Peterburg (to the 300th anniversary of the city)
Sergai Slonimsky; Concerto-Buffa
Yuri Falik; Simple Simphony
Lucian Prigojin; Sonata-Burlesque for violin and piano
Varely Gavrilin; "Evening Music" from Symphony Ritual"The Chimes"
Andrey Petrov; Poem for organ, strings and percussion
Boris Tischenko; III.Moderato from Concerto for Harp and Chamber orchestra
St.-Peterburg Philharmonic Symphony Orch. etc.
2002 Moscow Musical Publishers MMI-1-003
サンクトペテルブルクの成立300周年を記念して作られたらしいコンピCD。
同地で活躍した作曲家を6人収録していますが、日本ではなかなかマニアックな人間ばかりです。
シェバーリンらに学んだセルゲイ・スロニムスキーはこの中ではまだ知られている方か。
「コンチェルト・ブッファ」は1964年の作品なので比較的初期の頃の作品。
第1曲「Canonic Fugue」でのぎくしゃくとしながらも小気味良く進行するフーガや
第2曲「Improvisation」のプリペアドピアノやトランペット等に代表されるいかれたような舞踏的パッセージ。
なかなか楽しい曲でした。勢いが収まらずに10分間一気呵成に突っ込んでいくところが激しくて良い。
ユーリ・ファリク(1936-)は現在のウクライナ出身。チェロ奏者などでも活躍しています。
「シンプル・シンフォニー」(1971)はティル・オイレンシュピーゲルの話をベースに
創り上げたものだそうですが、題だけ見るとブリテンしか想像できませんね。
中身はそのせいか、あるいは元の物語の性格からか、やっぱり素朴で軽快、近代的な音楽。
I.Allegro assai、II.Andantino、III.Allegro Bravuraからなる、12分程度のロシアらしい小交響曲。
Lucian Prigojin(プリゴジン?、1926-)は詳細が出てこないなあ。
ウズベキスタンのサマルカンドに生まれ、レニングラード音楽院でショスタコーヴィチやウストヴォルスカヤに学んだそう。
「ソナタ・ブルレスケ」はピアノの特殊奏法も使った、1967年のロシア作品としては幾分前衛的なもの。
ただ、旋律線は逆にロシア民謡的な美しさも持ち合わせていて、その対比が印象的。
I.Camminando risoluto、II.Moderato a bruscamenteからなる8分ほどの曲。
Varely Gavrilin(ワレリー・ガヴリーリン?、1939-99)は北部ロシアの小さな村に生まれ、
音楽教師に才能を見出されてレニングラードへ。ショスタコーヴィチやスヴィリドフにも絶賛されてます。
「イヴニング・ミュージック」は合唱によるとても美しい母音唱法のハーモニーのみからなる曲。
このアルバムにおける清涼剤ですね。全曲だと朗読や打楽器も入るようで面白そう。
アンドレイ・ペトロフ(1930-2006)も重鎮ですね。サンクトペテルブルク生まれで同地の筆頭的な存在でした。
「オルガン、弦楽と打楽器のための詩」ではティンパニに付き添われてオルガンの荘厳な不協和音だらけの序奏が響き、
打楽器やトランペット(あれ?)などが切羽詰った行進へ突き進む。
ショスタコーヴィチが賛美するだけある、ロシア風な交響的構成が得意なようですね。かっこいいです。
ボリス・ティーシチェンコ(1939-)は多分ペトロフ以上の知名度、このCD中一番有名でしょうね。
ここの「ハープ協奏曲」(1978)は第3楽章しか収録されていません。
シロフォンによる軽快で諧謔的なメロディで始まり、ハープがそれを受け継ぎリズミカルな明るい音楽を奏でる。
全体的にどこか諧謔さを持った、リズミカルな作品。面白いです。
コンピ故に演奏や録音状況がまちまちですが、とにかく音楽は面白いものばかりでした。
60-70年代の作品ばかりですが、近代〜現代ロシア音楽が好きな方なら買って問題なし。
個人的には後半3人の曲が特に気に入ったかな。
現代日本の音楽3
芥川也寸志;交響管弦楽のための音楽
近衛秀麿;雅楽「越天楽」
早坂文雄;左方の舞と右方の舞
黛敏郎;舞楽
NHK交響楽団 若杉弘、外山雄三、岩城宏之指揮
1990 KING Record KICC 2013
N響のライヴ録音シリーズ。このシリーズはN響の現代音楽がCDで聴ける数少ない音源なのに、とうに廃盤。
芥川の演奏、第一楽章はかなりゆっくり。ゆったりと歌い、聴かせます。
第二楽章はきびきびした、通常通りのテンポ。けっこうノリが良いですが、最初粗だらけなのが惜しい。
近衛の演奏、いささか直線的な感じはあるものの、むしろそのお陰で聴きやすい。
早坂の演奏も似た感じ。こちらは、その柔らかさがよく合っていて心地よいです。ただ、一番ではないかな。
黛の曲は短縮版。完全版のCDはプレミアものだしねえ・・・
NAXOSのものを以前聴いたけれど、これはそれより断然ダイナミックで良い。
まあ粗もあるけれど、やっぱり黛の曲は力のある演奏じゃないと聴いてて楽しくないものね。
ちなみに、この録音は短縮版の初演演奏です。
あと、全体を通して。会場ノイズがかなり多い。1980年前後日本の録音ってこんなもんだったっけ。
まあ演奏自体は満足できるものだからいいけれど。
Piano Preludes
Wojciech Kilar(1932-); Three Preludes
Kazimierz Serocki(1922-1981); Suite of Preludes
Zygmunt Mycielski(1907-1987); Six Preludes
Henryk Mikolaj Gorecki(1933-); Four Preludes Op.1
Milosz Magin(1929-1999); Five Preludes
Krzysztof Knittel(1947-); Four Preludes
Pawel Mykietyn(1971-); Four Preludes
Magdalena Prejsnar,Piano
2009 Dux DUX 0699
現代ポーランドの作曲家が書いた前奏曲を集めたCD。
ポーランドのレーベルだけあって、もうラインナップが完全に自国のマイナー部分を攻めてます。
キラールは19歳のときの作品、まだ普通の前奏曲ですが、その所々に彼らしいミニマル的、
あるいはちょっと前衛的なメランコリックさが現れる。3曲5分。
セロツキの方は30歳のときの作品、簡素な構成ではありますが、技法はなかなか手の込んだ
(曲によってバルトーク風だったりショパン風だったり)全7曲12分ほどの作品。
ミチェルスキ(ムィチェルスキ)の曲は1954年なので、円熟期の作品といっていいでしょう。作品数は多く無さそうですが。
キラールやセロツキと同じくナディア・ブーランジェに作曲を学び、作家や雑誌編集長などで活躍しました。
音楽は、ガーシュウィンみたいな小洒落た曲調、あるいは後期ロマン派的な沈美さにちょっと現代的なスパイスが入った感じ。
軽快な楽想も多く、少々の不協和音が気にならなければ吉松とか好きな人でもいけそう。
グレツキの作品は言うまでもなし。こうして聴くと、かなりごつごつとした輪郭が目立ちます。
演奏は音のメリハリが効いた硬めの音の演奏。もっさりしていなくてさっと聴けます。
録音はDUXらしく遠目ではありますが、技術的にも不安はなし。こちらの方が演奏としても上手かな。
ミロシュ・マギンは主にピアニストとして活躍した人物。20以上の作品が残されています。
この5つの前奏曲は1963年の作品。様々な時代の楽想をベースにいろんな曲を書いてますが、
基本的にはモノフォニックな印象が強い。べつに実際にそうなってるわけじゃないけれど、
声部が前面的に対立してはいません。でも簡素なわりに音楽は鮮やかではっきりしている。
クシシュトフ・クニッテルは舞台音楽のほか電子音楽も多く手がけている人物。
タデウシュ・バイルドをはじめAndrzej DobrowolskiやWlodzimierz Kotonskiといった面々に音楽を学んでいます。
ポストロマン的な音楽からジャズを思わせるもの、コラール風までいろいろですが、
非常に美しい音楽を書く点では共通しています。1分ほどの中で楽想がころころ変わるのも特徴的。
最後はワルシャワの音楽アカデミー出身の若い作曲家による、1992年に作った若い曲。
このMykietyn(ミキエティン?何て読むんだ?)は交響曲や受難曲をはじめ、近年高い評価を受けているようです。
様々なフォームを有しながらも曲ごとにはほぼ単一のモチーフで美しく聞かせる。
CDのコンセプト上、作曲家の初期の作品も多いのは仕方ない話。
あと、やはり様式が雑多に詰め込まれているのも現代作曲家らしい傾向。
Silvestre Revueltas; Redes, Homenaje a Garcia Lorca
Miguel Bernal Jimenez; Tres Cartas de Mexico
Blas Galindo Dimas; Homenaje a Cervantes
Ricardo Castro Herrera; Vals Capricho
Carlos Chavez; Zarabanda
Cecilia Lopez/Juan Reves/Jesus Ruiz/Alfredo Sanchez Oviedo,Guitars
Eva Suk,P. Orquesta Filarmonica de la Ciudad de Mexico Enrique Batiz,Cond.
1995 ASV CRCB-210
レブエルタスの組曲「網」、この演奏で聴くとずいぶんすっきりした印象。
おかしいな、以前マイナーオケの音源聞いたときはもっと重厚な印象だったんだが。
でもこのほうがいかにもそれらしくて良い。まあバティスの軽さが出ているというだけの話かもしれないが。
「ガルシア・ロルカへの讃歌」は代表作。ここでは楽章分けされてません。
この演奏だと逆に随分がさがさした印象。まあパートをバランスよく聴けるとこういうふうになるとは思う。
ミゲル・ベルナル(・ヒメネス)(1910-56)はローマの教皇庁付属音楽院出身であるなど
宗教的な音楽教育を強く受けた人物。宗教音楽の振興に力を注いだものの、
今知られているのはむしろ世俗的な作品群の方という、なんかちょっとかわいそうな人。
交響組曲「メキシコからの3通の手紙」、1949年の作品としてはそれ以前の近代音楽を正統に受け継いだ内容。
印象派と新古典主義をうまく折衷してメキシコ音楽に盛り込んだような非常に楽しい作品です。
2拍子のノリノリな第1楽章もいいですが、4挺もギターを使って舞曲を披露する第3楽章も見所。
ブラス・ガリンド(・ディマス)(1910-)はチャベスに師事したインディオの血を引くまあまあ有名な作曲家。
「セルバンテスへの讃歌」、古典の舞曲をベースにした古めかしい曲ともとれますが、
オーケストレーションなんかは間違いなく近現代メキシコのもの。重厚なサラバンドとか気に入ってます。
リカルド・カストロ(・エレーラ)(1864-1907)、メキシコ市音楽院ゆかりの人物です。
初期のメキシコ作曲家らしい、まだヨーロッパの影響を抜け出せない人。
「奇想曲風ワルツ」を聴くと実に近代ヨーロッパ。ロマン派。ピアノだらけ。
最後のカルロス・チャベスは「弦楽のためのサラバンド」とちょっとマイナーどころを突く。
彼らしい、ちょっと古風だけれど美しい、そしてどこか物悲しい音楽。
録音やマスタリングはちょっといいかげんな気が・・・ベルナルとか超適当なトラック境界の処理。
London Sinfonietta -Warp Works & Twentieth Century Works
Aphex Twin; Prepared Piano Pieces 1 & 2, AFX237 V7, Polygon Window
Conlon Nancarrow/Yvar Mikhashoff; Study No.7
John Cage; Sonatas 1/2/5/6/12, First Construction in Metal
Steve Rich; Violin Phase, Six Marimbas
Squarepusher; The Tide, Conc 2 Symmetriac
Karlheinz Stockhausen; Spiral
Edgard Varese; Ionization
Gyorgy Ligeti; Chamber Concerto
Clive Williamson&Rolf Hind,Pre.P. Clio Gould,Vn. Simon Haram,Sax. Sound Intermedia,Live Erectronics
London Sinfonietta Jurjen Hempel & Stephen Asbury,Cond.
2006 Warp WARPCD144
ロイヤル・フェスティバル・ホール10周年を記念して、Warpレーベルのアーティストと
20世紀の現代音楽を統合しようとした試みのライヴ録音。
音響のパイオニストでもあった現代音楽家をテクノ音楽と並列化しようという考えであって、クロスオーバーを目的としたものではないです。
エイフェックス・ツインによるプリペアド・ピアノのためのオリジナル作品2つは実に素朴でメロディアスな音楽。
ナンカロウの練習曲は7番なのでかなり初期。まだ分かりやすい構造で聴きやすい。
のどかな音楽がぐちゃぐちゃなリズムで入り乱れていく様はさすがナンカロウ。
イヴァ・ミカショフの編曲でスリリングで興奮できるハイな一曲に仕上がっています。
次はここで本家プリペアド・ピアノ、ケージの「ソナタとインターリュード」から最初のソナタ二つ。
不可思議なこのピアノの音色を最大限効果的に使われた、のどかで緊張感ある音楽。
スティーヴ・ライヒのヴァイオリン・フェイズはフェイズ・シフトを生楽器と録音で行った彼初期の音楽。
クリアな音でずれがよく分かる。クールにテンション上げられる、カッコイイ曲ですよね。
ケージ二発目、第一コンストラクションは第三と共に最初期打楽器音楽の傑作。
スクエアプッシャーの「The Tide」はDavid Horneの手によって立派な現代音楽に早代わり。
アンサンブルの各楽器による特殊奏法を使いまくり、原曲の雰囲気を少しでも出そうと腐心しています。
シュトックハウゼンのスパイラルは、ホワイトノイズとサックスのディレイを伴うソロから始まり、
ソリスティックな音がエレクトロニクス処理に飲み込まれ、電子音と存在を共有していく様がカッコイイ。
CD2はまたケージのソナタ(12番)で壮大に幕を開け、ヴァレーズの電離へ。
打楽器音楽の幕開けを宣言したこの音楽、スマートにくっきりとした演奏をしてくれています。
ライヒの「六台のマリンバ」は比較的落ち着いたテンポ。程よくトリップ出来ますが、流石に自作自演と比べると分が悪い。
スクエアプッシャー二週目、「Conc 2 Symmetriac」は打楽器合奏とエレクトロニクスに編曲されています。
一瞬で終わる、音響系となんら変わらない音楽に。元からそんな感じだけれど。
がさごそしたケージのソナタ(5&6番)を挟んでエイフェックス・ツインの「AFX237 V7」。
現代音楽としか思えない冒頭からファンキーでスリリングなリズムまで、
「現代音楽とロックの融合」と言われたら信じそうな音楽。
リゲティの室内協奏曲は、雲のようなもやもやした音形がたちこめる彼の代表作の一つ。
彼が「練習曲」のようなリズム機構に偏重する前の、こういったシリアスな作品も素晴らしい。
最後はエイフェックス・ツインの「Polygon Window」。編曲はKenneth Hesketh、この人吹奏楽の方で知られてますね。
打楽器アンサンブル曲とロックが組み合わさってノリノリになったみたい。
最後、オリジナル部分のスネアから始まる打楽器アンサンブルは観客と一緒に叫びたいです。
演奏も素晴らしいのですが、それ以上に好感なのは聴衆の態度。
終わった後の拍手と歓声はクラシックなんだかテクノなんだかわからない位の凄い盛り上がりっぷり。
こういうのを生で聴けたらどんなにいいだろう。この前のライヒの来日は行けなかったし。
Tatjana Kukoc, Guitar
Steve Reich; Electric Counterpoint
Stephen Funk Pearson; Mummychogs (Le Monde)
Howard Bashaw; Horos
Tatjana Kukoc, Guitar D.Bass,Niek de Groot
Edition al segno as 2009 2
ずっと欲しかった一枚。図らずもクリスマスプレゼントに。
amazonでしばらく寝かせといたらいきなり値段を上げやがったので
いい加減聴きたかったし高かったけれど思い切って購入。
スティーヴ・ライヒの「エレクトリック・カウンターポイント」。
はっきり言うと、おそらくこれが今一番うまくまとまっているアコースティック版の演奏なのでは。
ちょっと淡い感じで、バランスが危ういところも多いけれど欲しいところはうまく聴かせる。
個人的にもっと聴いてみて欲しい音源ですが、入手が簡単ではないのが痛いところ。
若干安全運転ではあるのが否めないけれど、これは聴いて損はないと思う。
「アメリカの著名な実験的ギター奏者」らしいStephen Funk Pearson(1950-)
の曲は、演者によるマルチトラック・アレンジが行われています。お陰で響きが豪華。
プリペアドしたギターから響いてくるエスニックなアルペジオのきらめきと
平均律を離れた独特の揺らぐような和声感覚。
タイトルがネイティヴ・アメリカンの言葉であることを考えるとおそらくは彼らの音楽を
ある程度念頭にしているのでしょうが、聴いていて非常に東洋的でもある。
なんというか、第二楽章なんかはカントリーなんかにも通じそうな軽快さ。
カナダのHoward Bashaw(1957-)によるギターとベース6台ずつによる「ホロス」。
重々しいダブルベースのうねりに乗せて、ギターの波しぶきが微かに光る。
ベースの唸り声にギターのわななきが淡くかぶる。
リゲティ独特の引きつったリズムを意識しながら書いたという、
確かにあの混沌とした世界を垣間見るような暗い音楽。
ちょっと中途半端な気もする感じだけれど、これはこれで良い。
このギリシャ出身の女性ギタリスト、ちょっと硬い感じもするけれど十分好みな音楽作りをしてくれている。
特にライヒなんかいいね。あとピアソンなんかも。
Music From Six Continents 1992 series
Toshiya Sukegawa; The Eternal Morning 1945.8.6
Nancy Van de Vate; Pura Besakih
David Loeb; Unkei for shinobue and orchestra
Darrell Handel; Kyusyu
黒岩英臣指揮 広島交響楽団 村上弦一郎、ピアノ
Slovak Radio Symphony Orchestra of Bratislava Szymon Kawalla,Cond.
Cincinnati Philharmonia Orchestra Gerhard Samuel,Cond.
1992 Vienna Modern masters VMM 3006
ナンシー・ヴァン=デ=ベイト主宰のレーベルによるシリーズの一。
助川敏弥の「おわりのない朝 1945.8.6」は、題の通り広島の原爆を題材にした音楽。
電子音ドローンに街頭音がかすかに聴こえる。そんな何気ない光景に、サイレンが響き渡る。
無表情な通信音声、タイマーのパルスが不安感を最高潮にまで上げた瞬間、原爆は落とされる。
変調された叫びから弦楽合奏とピアノのパートへ。この曲でピアノとは通常のピアノと原爆に晒されたピアノ、双方を指します。
原爆を耐えしのいだアップライトピアノの壊れた響き、荒漠とした電子音による圧倒。
ピアノの不安定な響きによる悲しげなトレモロ部分は非常に美しい。
やがてピアノは普通のグランドピアノに移り、復活を暗示する。
前半はかなり具像的な、それでいてぴんと張り詰めた緊張と美しさ、儚さを持った素晴らしい音楽です。
ナンシー・ヴァン=デ=ベイト「Pura Besakih」はバリ島の巨大寺院に思いを馳せた音楽。
トランペットのファンファーレで始まり、メランコリックな弦楽が旅愁に似た思いを起こさせる。
以降はその二つの動機を軸にしながら、荒々しい神の怒りや祈りなどが描かれる。
この曲を聴いていると、やたらと吹奏楽的なノリに聴こえてならない。
別にこれで構わないんだけれど、依然聴いた彼女ってこんな作風だったかなあ。
デイヴィッド・ローブの「Unkei(雲景)」は非常に日本的。
篠笛のソロからグロッケンの使い方、弦楽器の合いの手まで、日本的ないわゆる「和風」5音音階が軸。
パッサカリア様式が元のようですが、そんなことよりエキゾチックな「日本」が楽しめて面白い。
ちなみに、ここでは作曲者さん自ら篠笛を吹いて演奏に参加めされてます。すげえ、そこまで歌ってないけれど。
ちなみにタイトル、「運慶」じゃないらしい。英語の解説ではUnkei=Cloud Picturesとしていたので。
ダレル・ハンデルの「Kyusyu(九州)」もノリは似た感じですが、内容はかなり違う。より前衛音楽的。
トムの強烈な冒頭から、強い推進力で音楽が進む。テンポの遅い部分も、基礎は篳篥などの
雅楽的なものだけれど、ちょっと技巧的に変形されている。よく練られて作られている音楽だと思う。
演奏、まあまあ。ぼやけた録音によるところも大きいと思うけれど、なんかちょっとしまりがない気が。
曲の方はどれも非常に楽しめたんだけれど。ヴァン=デ=ベイト以外は日本繋がりなのもすごいカップリングだ。
soundCd no.2
John Coltrane; Venus from Interstellar Space Revisited
John Cage; Excerpt from Sonatas and Interludes, 4'33"
James Tenny; Ergodos II With Percussion Responces
Carl Stone; Excerpt from Guelaguetza
Polar Goldie Cats; Cat Nest
Kraig Grady; Gending Aptos
2004 soundNet Recordings SNR-CD 002
「西海岸のアンダーグラウンド・ミュージック&アートの発信、保護の為に活動する団体」(by Art into Life)、SASSAS。
彼らが催したイベント「sound.」でのライヴ録音のうち(今回は)メジャーどころの作家の作品をあつめたCD。自身のレーベルからです。
ジョン・コルトレーンの「Venus」は電子音、打楽器、ギターの共演。
電子音がふよふよと漂い、トムがころころと跳ね、やがてギターがつぶやくあたりからフリージャズの匂いが濃厚に。
フリーだけれどどこかソリスティックで感傷的に演出されるところは、さすがジャズ出身のコルトレーン。
演奏はGregg BendianとNels Cline。後者の方は、以前にも参加されてるCDいくつか買ってます。Alex Cline Ens.とか。
ケージの「プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード」、説明不要の名作ですね。
自分はこの曲全部を通しで聴くと流石につらく感じてしまうんですが、こういう抜粋だとその美しさに十分浸れます。
今回は第4インターリュード、ソナタ13、15、16。ジェームズ・テニー(!)による演奏です。
そのテニーの作品は、元々電子音楽作品「Ergodos II」に翌年器楽パートを設けたもの。
「〜with Instrumental Responses」なら既にHat盤で持ってますが、あちらはヴァイオリンとピアノがライヴ演奏でした。
こちらはもちろん打楽器ソロとの演奏。変調を施されていないだけにエレクトロアコースティック作品の匂いが
強いですが、打楽器の特殊奏法は、電子音のうなりとインパクトにおいては大差ありません。
お次はテニーが演奏する「4分33秒」。ストップウォッチで計ってます。何かごそごそやってる。
カール・ストーンの抜粋は、いつも通りのぐちゃぐちゃカットアップ。せわしなく目まぐるしく音が空回り。
ライヴの録音のため、残念ながらオリジナルを聴くより音質が良くない。仕方ないけれど。
以下の二人だけは初めて聞いた名前。
Polar Goldie Catsはちょっとヒルビリーなロック音楽がだらだらとミニマルに流れていく。
Kraig Gradyのほうはファゴットとグロッケン、ベースによる素朴で美しいのどかな音楽にタンバリンのリズムがひそやかに加わる。
だんだん静かに盛り上がっていくところがいいです。アメリカ的民族音楽の匂い。
二人とも聴きやすい作風ではありました。
サクソフォーン名協奏曲集
ドビュッシー;アルト・サクソフォーンと管弦楽のための狂詩曲
イベール;アルト・サクソフォーンと11の弦楽のための室内小協奏曲
ヴィラ=ロボス;ソプラノ・サクソフォーンと室内管弦楽のための幻想曲
グラズノフ;アルト・サクソフォーンと弦楽のための協奏曲 変ホ長調 作品109
ベネット;アルト・サクソフォーンと弦楽のための協奏曲
ヒース;ソプラノ・サクソフォーンと管弦楽のための"アウト・オブ・ザ・クール"
ジョン・ハール、サックス アカデミー室内管弦楽団 サー・ネヴィル・マリナー
EMI TOCE-8030
ジョン・ハールによる古典的に有名なものを多く収録した一枚。
ドビュッシーの「狂詩曲」は元々ピアノ伴奏でしたが、弟子のロジェ・デュカスの手でオーケストレーションされています。
彼らしい妖艶な和声の中でサックスが緩やかに歌う。
いい曲なんですが、最後のとってつけたような終わり方だけ気に入らない。
パリジャンなイベールの代表作はやはり素晴らしい。
洒脱な第1・3楽章やメランコリックな第2楽章を聴いているだけで楽しくなる。
しかも古典的な中に技巧的な魅力も盛り込んでいる構成は、現代でも色褪せない。
イベール好きやサックス好きがこぞって名作に挙げるだけのことはある作品です。
ブラジルといえばのヴィラ=ロボスによる「幻想曲」、実はマルセル・ミュールのために書いたものの
生前演奏する機会ができなかったという残念な逸話持ち。
けれど音楽の方は恥じることない見事なヴィラ=ロボス節の甘美な音楽。
ロシアの正統派クラシック、グラズノフの協奏曲はいろいろ雰囲気が変わる。
でも彼らしい民族的な音楽なのはいつも通り。
ブーレーズに師事経験しながら作風はむしろ古典的なベネットの協奏曲、
ここではかなりジャジーな影響を持ったライトなノリの構成です。
最後はデイヴ・ハースの曲、ブルース風のムードが漂う逸品。
アカデミー室内管弦楽団の音はあんまり趣味じゃないけれど、綺麗だから許す。
Soviet Avant-Garde 2
Alexander Mossolov; 5 Sonate
Arthur Lourie; Two Mazurkas Op.7, Two Compositions for Piano
Nikolai Roslavetz; Two Poems, Three Compositions, Prelude
Leonid Polovinkin; Magnets, Dance/Waltz/Lullaby Op.30 Nr.1,4,5 , Foxtrot
Steffen Schleiermacher,Piano
1999 Hat hut 115
最初は「鉄工場」で有名なアレクサンドル・モソロフ(1900-73)の「ピアノ・ソナタ第5番」、
彼らしい民族的な激しさと苦しみを歌うような旋律が聴ける、25歳の時の代表作。
彼の音楽の無機質で爆発的な乱暴さは、この曲からもはっきりと聴けます。
聴覚的にはまるでスクリャービンが暴力性に目覚めたような感じではありますが、
ルディアみたいな神秘性の力強さではなく、機械的・現実的な力の行使。
特に、短い第3楽章スケルツォや非常に重い第4楽章を聴いていると、それが理解出来る。
アルトゥール・ルリエ(1892-1966)は後年西欧諸国に亡命、新古典主義に走りますが
ここに収録されている「2つのマズルカ 作品7」はその前、
未来派の詩人たちと親交を持ち独特の無調や記譜法を展開していた頃の作品。
「ピアノのための2つのコンポジション」はその後パリに移ってからのものですが、
これら二つの作品を聴き比べると彼がどれだけ新古典主義にはまったかがよく分かる変わりぶり。
なんせ作品7は曖昧で幻想的なのにコンポジションはそれよりずっと簡素明快。
ニコライ・ロスラヴェッツ(1881-1944)はロシアン・アヴァンギャルドの父的存在。
ロシア未来派として(音楽的に)極左的な活動を行い、音楽家同盟からは「人民の敵」とまでいわれ、
死の直前までソビエト作曲家同盟にすら入れない不遇な人生でした。
「2つの音詩」「3つのコンポジション」「前奏曲」はどれも、その活動の全盛期(1910年代)に書かれたもの。
スクリャービンとシェーンベルクの橋架けをするような作風は、独特の美しさを持ちます。
レオニード・ポロヴィンキン(1894-1949)はグリエールの弟子に当る作曲家。諧謔的な音楽の作り手で
ロスラヴェッツと似たような運命になりかけましたが、子供向けの作品を作ることでなんとか逃れたようです。
「磁石」は民族的なリズムに乗せた、今までの音楽に比べると足取りが軽い曲。
「作品30より ダンス、ワルツ、子守歌」も、当時としては前衛的な面はありますがとても聴きやすい。
「フォックストロット」、当時のロシアの軽音楽らしい曲が聴けながらもどこかおかしいのがこの時代の前衛らしい。
全体を通して特に印象に残ったのはモソロフとポロヴィンキンのフォックストロットか。
演奏は硬い音に定評のあるシュライエルマッヒャー、ロシア音楽に合わないはずがない。
Szabelski Gorecki Knapik
Boleslaw Szabelski; Toccata feom the Suite for Orchestra Op.10, Concerto Grosso
Henryk Mikolaj Gorecki; Three Dances Op.34
Eugeniusz Knapik; La Flute de Jade for Soprano solo & Orchestra
Bozena Harasimowicz,Soprano The Silesian Philharmonic Symphony Orchestra
Miroslaw Jacek Blaszczyk,Cond.
2009 DUX 0732
ボレスラフ・シャベルスキ(1896-1979)の没後30年を受けて制作された、
その弟子筋も含めてその後のポーランド音楽の流れをある程度見通そうというアルバム。
シャベルスキの「トッカータ」は、彼の作品中もっとも知名度があるもの。
溌剌とした明るい楽想を基本としながらも、そこに前衛的な不協和を絡めて
緊張的で歯切れある展開を聴かせてくれます。たしかにアンコールとかにしたら受けそう。
「コンチェルト・グロッソ」の方は、1954年の作品としてはかなり穏健な響き。
でも、両端楽章のトッカータ的な楽想の中に時折セリエリズム的な響きが聞き取れる辺り、
彼なりには最先端の技法を気になっていたことが想像出来る。
そして両端の溌剌な分、中間楽章は重く暗く響く、おどろおどろしい曲。でもかっこいい。
シャベルスキに師事した中で一番有名なグレツキ、でも「三つの踊り」なんてまたマイナーな選曲だ。
でも前衛からミニマリズム的指向へ移る過渡期の、一番有名な頃の作品ということでは正しいかも。
第1楽章のごつごつした土俗的なリズムと不協和なコード、彼らしいけれどあまりない作風。
第2楽章のミニマルで淡い美しさは、3年後の「交響曲第3番」を想起できるもの。
第3楽章もはっきりとしたリズムにのせてトッカータ風なメロディ。ただ進行は反復進行が基本で、この時期の彼らしい。
総体的に見て、この時期の魅力が十分に詰まった曲といえます。
ただ「踊り」という性格上明るい作風であることや、ちょっと構成的な妙が薄いことから
今まで全く世に出てきていなかったのでしょう。
ただ、自分は普段にない活発なグレツキが聴けたので大満足。にしても第3楽章のアヤシイ明るさは異常。
そのグレツキに師事したクナピク(1951-)の「La Flute de Jade」はソプラノつきの管弦楽作品。
第1楽章の繊細で美しい響きは、グレツキの3番を好きな人が気にいるんじゃないでしょうか。
というか、伴奏の2コード進行も含めてすごくそれっぽい。
まあ73年の作品ですから、師の影響がかなり濃く出ているんでしょう。というか上の「3つの踊り」と同年かい。
第2楽章、作り方は似ていてもこちらはグロテスクに攻めてくる。
第3楽章はわらわらと音がうごめき、動きが激しいために印象ががらりと変わる。ピアノ大活躍。
第4楽章のゴングとピッコロに導かれる神秘的な歌。
やはり師の音楽らしいところが随所で聴ける。それとも、彼の作風は元々こんな感じなのでしょうか。
ちょっと今度きちんと探してみよう。
演奏は、ちょっと遠いし散漫だけれど十分楽しめます。
Johann Sebastian Bach;Magnificat in D minor, BWV 243
Carl Philipp Emanuel Bach; Magnificat Wq.215
Tolzer Knabenchor Collegium Aureum
1995 DHM(Deutsche harmonia mundi) 05472 77411 2
バッハ一族で一番目と二番目に有名な方々のマニフィカトを収録。
J.S.バッハの曲はさすがというべきか、やっぱり(バロックならこれだな)という響き(わけわからん表現だけど)。
最初の合唱曲の派手さは凄く気に入りました。
それ以外の曲のメロディもかなり気に入る部類。いいね、今度外の音源も漁ってみるか。
C.P.E.バッハの方はやっぱりJ.S.の後だと凄く明るく、爽やかに聴こえる。
でもお陰で、気軽に聴けたけれどもう一度とまではいかなかった。
演奏、トランペットがきつそうなのがすっごいよくわかる。結構外しがち。ああ、お疲れ様です・・・
それでも本当に欲しいところはきちんと当ててるから余計に切なくなる。
あと、それ以外も録音で結構ごまかしてる気が。元々が悪いわけではないけれど。
逆に声楽陣は安定してます。というか、良く見たらソリストに”Elly Ameling”とかありました。
Nanae
Somei Sato; Kamu-Ogi-Guoto
Akira Nishimura; Nanae
Joji Yuasa; Cosmos Haptic No.3 -Kokuh
Satoshi Minami; Coloration-Project III
Takashi Yoshimatsu; Moyura
Nanae Yoshimura, 20Strings-Koto Kifu Mitsuhashi,shakuhachi
1991 Camerata 32CM-189
師の野坂恵子と作曲家三木稔によって作られた二十弦琴の使い手、吉村七重のソロCD。
佐藤聰明「神招琴」は、彼らしい間に満ちながらも美しい、淡く繊細な音楽を聴かせてくれる。
いい曲には違いないんですが、「燦陽」なんかに比べると、ちょっと弱いかなあ。
西村朗「七重」は、もちろん女史のために書かれた曲。
7つの弦×2セットを並列に調弦することで二重奏のような印象が生まれる、聴いてても演奏が面倒そうな曲。
でも盛り上がりや音響には不自由せず、楽しんで聴けます。
湯浅譲二の「内触覚的宇宙第三番 虚空」は、彼らしい前衛さ。
尺八も加わりながら、空や風のようなふわふわしたイメージが音を包み込む。
南聰の「彩色計画III」、散文的でどこか旋法的な感じもある音楽がちょっとリズミカルに進行する。
作曲者曰く、題の「色彩」とは単純に多彩な色を出すことではなく
「準備した色をどのように利用するか」という加工・異化の過程・度合いを示すものだそう。
吉松隆「もゆらの五ッ」は、彼らしい旋律的で非常に美しい曲。
佐藤作品とは違った、いわゆるベタな琴らしい音楽に近い美しさが聴ける。
鈴で各部分を区切った、全5曲構成。
千年の響き
Toshi Ichiyanagi; Encounter
Atsuhiko Gondai; Infinite Light/Boundless Life
Ensemble Origin Atsuhiko Gondai,Cond.(Track 2)
fontec FOCD9183
2002年に西欧各地で行われた「千年の響き」演奏会の、イタリア聖イグナチオ教会におけるライヴ。
一柳慧を中心にした、正倉院に残る古楽器の復元、およびそれらの現代における新しい響きの創造と
東洋・西洋の新しい形の融合を目的としたものの記録です。
一柳慧「邂逅」は、チェロ、復元楽器、雅楽、声明のための作品。
チェロの滔々としたソロに古楽器が絡み、合唱が声明を行う。笙の神々しい響きと声明のドローン音響が共鳴する。
使用されている楽器自体は殆どが東洋出自のものですが、
そこから現れる音響は東洋とも西洋とももはや区別し難いもの。
流れのようにまとまったひとつの響きが、幻想的な音で形作られてドローンのように伸びていく。
きらびやかで美しい響きを持つ、素晴らしい作品です。彼の作品では一番気に入ったかもしれない。
権代敦彦の「無量光/無量寿 -無限のひかりといのち-」は声明、雅楽、復元楽器、ソプラノ、オルガンのための作品。
オルガンと声明による細く伸びる音から、「始原の光と火の真言」のような静かな盛り上がり。
琴や方響のきらびやかなパッセージ、観音経のモノローグ。
救世の声と救済の光を示すような音楽が、キリスト教的な音楽世界で描かれる。
やはり彼の音楽は何とも言えない緊張感があって素晴らしいの一言。
演奏も劣らず素晴らしいですが、教会の独特な音響による東洋楽器の音色がたまりません。
演奏メンバーも、宮田まゆみ・石川高の笙や篠崎史子/和子など、著名人ばかり。
滝澤三枝子 ピアノ・アルバム I
伊福部昭;ピアノ組曲
清瀬保二;「第二ピアノ曲集」より アンダンティーノ、子守歌、ブルレスケ、秘唱
石井真木;彼方へ 作品41
ラヴェル;水の戯れ
ファリャ;「四つのスペイン風小品」より アンダルーサ
グラナドス;「12のスペイン舞曲」より アンダルーサ、詩的なワルツ、演奏会用アレグロ
滝澤三枝子、ピアノ
2007 Mittenwald MTWD 99031
桐朋学園出身のピアニストによるアルバム。スペイン音楽と現代曲が得意、というか好きなようで。
最初は、オケ版が「日本組曲」としても有名なピアノ組曲。もちろんこれ目当て。
「盆踊」、けっこう落ち着いたテンポ。というかよくためる。「七夕」が逆にそこまではためない。
「ながし」は緩急つけて表情豊か。「ねぶた」はちょっと平坦ではあるけれど、それなりには高揚できる。
音が力のない感じなので、アグレッシブな伊福部作品にはちょっときついんじゃなかろうか。
ただ、それを除けばかなり聴ける演奏。最後の強引なテンポアップは嫌だけれど。
清瀬の作品は伊福部作品と同時期、1940年ごろのもの。7曲中から4つ抜粋。
こちらは随分フランス音楽の影響が強い。ちょっと日本くさい、軽い音楽。
石井の曲は、内向的でグリッサンド的奏法の印象的な、入野義明追悼作品。12音技法も使っています。
ラヴェルの曲は有名ですよね。こうして聴くと、この人は随分硬質な音を出すんですね。
女性らしい、繊細な響きだけれど、はっきりしたタッチで音が個別に聴こえてくる。
ファリャとグラナドスのアンダルーサはどっちもお気楽なスペイン舞踏。
続くグラナドスの2曲はなかなかの重み。
「詩的なワルツ」は序奏と7つのワルツから成る、彼初期の作品。簡素で美しい15分。
「演奏会用アレグロ」は豪華な音楽院卒業作品。
Compassion
John Tavener; Song of the Angel
Shulamit Ran; Yearuing
Chen Yi; Romance of Hsiao and Ch'in
Hans Werner Henze; Adagio adagio
Yinam Leef; T'Filah
Poul Ruders; Credo
Somei Satoh; Innocence
Wolfgang Rihm; Cantilena
Iannis Xenakis; Hunem-Iduhey
Lukas Foss; Romance
Karel Husa; Stele
Betty Olivero; Achot Ketana
Gyorgy Kurtag; Ligatura
Philip Glass; Echorus
Steve Reich; Duet
Edna Michell,Violin Czech Philharmonic Chamber Orchestra Lukas Foss,Con. etc.
2001 Angel 72435 5 7179 2 4
エドナ・ミッチェルが中心になって演奏する、彼やユーディ・メニューインに捧げられた現代曲を集めたオムニバス。
メニューインの80歳記念の曲が多いですね。
タヴナーの「天使の歌」はオケをバックにソプラノとヴァイオリンが美麗な二重奏を奏でる。
ハレルヤの一語のみが歌詞の、伝統的な民謡風の彼にしてはまだ明るめな透明さを持った曲。
ランの曲はロマンス的な音楽ですが、陰鬱で感情的。不安定に揺れるメロディーが、ソリスティックに歌われながら盛り上がる。
一方チェン・イのほうは中国音階を使ったのどかなロマンス。
ここではヴァイオリン二重奏とオケですが、題にもあるように、もともとは中国民族楽器をソロに想定した曲です。
ヘンツェのピアノ・トリオは、そんなひねたところは無い、近代的な響きの美しく緩やかな曲。
リーフの曲はヴァイオリン三重奏のための、ヘブライ語で「祈る人(Prayer)」の意。
それぞれが個々に歌いながら、時に干渉しあい、同一に聴こえるようなそぶりも見せる。
ルーダースの「クレド」はヴァイオリン二重奏とクラリネット、弦楽のための音楽。細かく錯乱しながら重く美しく盛り上がる。
佐藤聡明の「イノセンス」はヴァイオリンにチェロ6台とソプラノ。
いつも通りの非常に透き通った天上世界。高音しか響かないところが、まるで天界の輝き。
リームの、ヴァイオリンソロのための「カンティレーナ」は終始ppで奏される、非常に穏やかで渋い曲。でもちょっと技巧的。
クセナキスの曲はヴァイオリンとチェロのための作品。晩年(1996)の3分ほどの小品です。「オメガ」並みの微妙さで泣ける。
ルーカス・フォスの「ロマンス」、オケ伴奏のヴァイオリンとソプラノによる非常に美しい曲です。
三拍子の細かな拍子感がアメリカ的なライトミュージック。でも内容はしっかり詰まってます。
カレル・フサのヴァイオリンソロ曲は、彼のメロディアスな手腕が十全に発揮されたソリスティックな曲。
オリヴェロの作品は弦楽にクラ、ソプラノに3つのヴァイオリンソロと独奏だらけ。
13世紀の新年を祝う歌が元になっているそうで、バロックの断片が暗く混然となって響き渡る。
クルタークの曲はヴァイオリン二重奏による短い曲。終始弱音で混然と音が交じり合う。
グラスの曲は実に何時もどおり。弦楽とヴァイオリン2丁にナレーターがGinsburgのWales Visitationを朗読する。
最後はライヒの「デュエット」で閉め。ヴァイオリン二重奏と弦楽のための爽やかな作品。やっぱライヒはいいね。
これだけ様々な作曲家から作品を提供されているだけあってやはり演奏は申し分ない。
勢いはありませんが、曲も穏やかなものが多いので音が合ってます。
Contrasts
Henryk Gorecki; Totus Tuus
Jaakko Mantyjarvi; Ave Maria d'Aosta, I was glad, Come Away,Death
Coen Vermeeren; Keanskes Leste liet
Morten Lauridsen;La Rose Complete, Dirait-on, Sa nuit d'ete, The Shower
Edward Elger; My Love Dwelt in a Northern Land, Go,Song of Mine
Eric Whitacre; Lux aurumque, Water Night
Frantz Biebl; Ave Maria
Vocaal Ensemble Cantatrix Great Jan van Beijeren Bergen en Henegouwen,Cond.
Aliud ACD HN 034-2
グレツキの「全ては御身のもの」で始まり。けっこう早めでサラッと流れる。
特に綺麗さが引き立つわけでもなく、印象に残らなかった。
半年以上かけて取り寄せた割には、全然期待はずれだったかも。
ヤーコ・マンテュヤルヴィ(Jaakko Mantyjarvy)(1963-)はフィンランドの合唱曲作曲家。
なかなか人気の高い人物らしく、音楽の和声もけっこう洒落ている。
ちょっと現代的要素も盛り込んだりと結構手の込んだ曲を書いていますが、
聴いてるだけだとそこまでいい曲かは微妙。これは歌ってる方が楽しそうだ。
Coen Vermeeren(1962-)はオランダの合唱曲作曲家。
曲自体はなんてこと無い普通に綺麗な曲(ちょっとだけペルト寄りの暗さ)なんですが、
彼はなんとデルフト工科大学で航空宇宙工学を学び、そこで教鞭までとっているらしいから凄い。
ラウリッドソンの曲はやはり現代合唱曲の王道的な感動が聴けます。
ラメント的な部分は、彼の大ヒット作「O Magnum Mysterium」みたいな美しさ。
でもその曲自体は収録されていないという・・・
このCDで一番のビッグネーム、エルガー。彼らしいイギリス風の穏やかな合唱曲が2つ。
ウィッテカーは吹奏楽もいい曲書いてるんですが、知名度は合唱での方が上かな。
吹奏楽はど派手でノリノリな音楽も多いですが、ここでは非常に美しい和音を聴かせてくれます。
最後、フランツ・ビーブル(1906-2001)の「アヴェ・マリア」は彼の代表作のひとつの様子。
明るく穏やかな、たしかに合唱受けする曲。自分にはそうでもなかったが。
録音が良くはないし、演奏もまあまあといったもの。あまり良くない意味で線が細く、もやもやしている。
まあマイナーCDはこんなものか。ラウリッドソンの曲が聴けただけ、このCDを買った甲斐はあったかな。
打楽器のための現代作品、ラグタイム、アフリカ音楽
Cage・Marta・Sary・Reich Ragtime・African music
Istvan Marta; Doll's House Story
Laszlo Sary; Pebble Playing in a Pot
John Cage; Second Construction
Steve Reich; Piano Phase(Marimba Phase)
Traditional African Music
George Hamilton Green; Log Cabin Blues(Blue Fox Trot),
Charleston Capers, Jovial Jasper(A Slow Drag)
Amadinda Percussion Group
1987 Hungaroton HCD 12855
現代ミニマル打楽器作品などをメインに据えたアルバム。
イシュトヴァン・マールタの「人形の家の物語」、彼の音楽はクロノスカルテットで聴いて以来気にかけてます。
神秘的でどこか可愛らしいおもちゃの出す高音から、鋭く激しいタムのリズムが現れる。
ゴングのうなり、チャイムとシンセのユニゾンなどを挟みながらも、ひたすら音楽は疾走する。
ゴングの経過句の後に冒頭が淡く戻って音楽は終了。これ気に入った。
このCDはこの曲狙いで買っていただけに一安心。シンセでマールタ自身が参加。
ラースロー・シャーリ「ポットの中の踊る小石」はマリンバの跳ねるような楽句が淡々と続く。
非常にミニマル的な作品。これはこれで悪くない。
ジョン・ケージ「第2コンストラクション」、もはや古典と化した初期の傑作。
初期プリペアド作品にも似た、ごつごつした輪郭でプリミティヴな、けれどノリ良い音楽。
スティーヴ・ライヒ「ピアノ・フェイズ」、実際はマリンバでの演奏なので表記は「マリンバ・フェイズ」が正しい。
硬い音と快速テンポに加えてさらさらとずらしていくので聴きやすいです。
アフリカ伝統音楽2曲のほうは、素朴でリズミカルな素晴らしい曲、なのに曲名すら載ってないのが残念すぎる。
それとも、本当のオリジナルは曲名がないという落ちなんだろうか。
ジョージ・ハミルトン・グリーンのラグタイム・ナンバーはマリンバで奏でるノリノリの音楽。
やっぱこういうのは楽しくていいよね。
演奏、不安は全くなし。流石はアマディンダ・パーカッション・アンサンブル。
ダイナミクスは少ないけれど、その方がある意味ミニマルは楽しめる。
Polska!
Henryk Mikolaj Gorecki; Totus Tuus
Karol Szymanowski; Six Kurpian Songs
Grazyna Bacewicz; String Quartet No.3
Waclaw z Szamotul; Seven Polish Hymns
Krzysztof Penderecki; Agnus Dei
BBC Singers Bo Holton,Cond. Penderecki String Quartet
1994 United 88021 CD
ずーっと欲しかったCD。ようやく入手。BBCのポーランド音楽特集からの、大半がライヴ録音。
グレツキ「Totus Tuus」、けっこうメリハリある歌唱。ビブラートとかもかけてるのがわかります。
抑揚のつけ方で、後半にいろいろ山谷があって新鮮。
これはこれで良いです、やたら細かく作りこんでいる感じ。
ただ綺麗に歌われるよりよっぽど好感が持てる。
シマノフスキ「6つのクルピエ地方の歌」はグレツキのそれと聞き比べると面白い。
似たメロディーもあったりして、こちらはより近代的な語法で技巧的に作ってます。
バツェヴィチ「弦楽四重奏曲第3番」、なぜここでいきなり室内楽曲が。
音楽は古典的な構成にポーランド民謡とちょっと前衛的な技法がまぶされた、全体的には綺麗な曲。
大きな盛り上がりはないけれど、まるで画にあった劇伴みたいな心地よさ。
文化芸術大臣賞を取っただけの作品ではあると思いました。
補足、グラジナ・バツェヴィチ(1909-1969)はヴァイオリニストとしても活躍した、ポーランドでは初めて有名になった女性作曲家。
当時の前衛技法を取り入れながらも、出自をベースにした颯爽とした音楽で有名です。
シャモトゥル(c.1524-1560)だけルネサンス期の人間。このCD、内容が極端すぎて笑えます。
「7つのポーランド聖歌」を聴くと、ポーランド音楽がどのようなものから変遷をして現在に至ったか素晴らしいくらいに見えてくる。
ところでこれ、もしかしてグレツキの作品24の元ネタだったりするんだろうか。一応4声の教会歌だぞ。
最後はペンデレツキの「アニュス・デイ」。彼が前衛を止めだした頃の代表作。
"叫ぶように"の指示がありますが、音楽自体は意外と素直。暗いですが聴きやすく綺麗です。
Sit Fast
Barry Guy;Buzz
Heinrich Isaac;O decus ecclesiae
Poul Ruders; Second Set of Changes
Tan Dun; A Sinking Love
Christopher Tye; Sit Fast
Simon Bainbridge; Henry's Mobile
Sally Beamish; in dreaming
Alfonso Ferrabosco; Hexachord Fantasy
Peter Sculthorpe; Djilile
Johannes Ockeghem; Ut heremita solus
Gavin Bryars; 'In Nomine'(after Purcell)
Elvis Costello; Put away forbidden playthings
Fretwork,viols Michael Chance,Countertenor Paul Agnew,Tenor
1997 Virgin 7243 5 45217 2 0
坂本龍一のアルバム「Out of Noise」にも参加している古楽器合奏団、フレットワークの作品集。
現代音楽作曲家、ベーシストのバリー・ガイ「Buzz」は
パーセルの作品を意識した、淡くも散文的な、コラール要素の強い作品。
特殊奏法のちょっとささくれた響きが広がる、ふわふわした印象。
ハインリヒ・イザーク(c.1450-1517)はジョスカン・デ・プレと同時代のルネサンス期、フランドル楽派の作曲家。
「O decus ecclesiae」、簡素ながらも美しく響く、対位法と六音音階のバロック音楽。
自分が以前から聴いているポール・ルーザスの「Second Set of Changes」は
デンマークの古い民謡をベースにした、ミニマル的な「スイング」感覚を持たせたもの。
タン・ドゥン「A Sinking Love」、パーセルの「ファンタジア第8番」の冒頭をモチーフにした曲。
彼らしい中国的なカウンターテナーの歌い方と、静けさの使い方。
クリストファー・タイ(c.1505-c.1573)の「Sit Fast」は、ここのバロック音楽の中で唯一定旋律(Cantus Firmus)を使っていません。
三声のメロディーがふわふわと絡み合う、薄いけれど非常に繊細で美しい音楽。
Simon Bainbridgeもパーセルを意識していますが、こちらは構造がより直接的。
簡素な三声構造に浮かぶ、怪しくも美しい、まるでしっかりしたフェルドマンみたいな響きの作品。
イギリスの女性作曲家サリー・ビーミッシュの「in dreaming」は、BBCのパーセル&ティペットの生誕記念に書かれたもの。
「テンペスト」がテナーで歌われる。トレモロ中心の緊張感が印象的。
アルフォンソ・フェラボスコ2世(c.1575-1628)はイギリスの宮廷音楽家。
古典的でありながら、新しい技法を好んだ彼らしい豊かな和声を聴かせてくれる。
オーストラリアの代表的作曲家ピーター・スカルソープの「Djilile」、相変わらずアボリジニの音楽をベースにした音楽を聴かせてくれる。
アボリジニのチャントが重く切なく響く、パーセル「Dido and Aeneas」に影響された曲。
オケゲム「Ut heremita solus」、題名に隠されたそのままの六音を使った、さすがは代表格な人物の曲。つまりオーソドックスな古典。
ブライアーズの「イン・ノミネ」はパーセルの同名曲に基づいた、彼らしいモノフォニックな音楽。
コステロはパーセルの他にダウランドのようなメランコリックさも目指したカウンターテナー付の曲。
ハインリヒ・イザーク、スカルソープの曲が個人的にお気に入り。
Frank Martin; Mass for double choir, Passacaille
Ildebrando Pizzetti; Messa di Requiem, De Profundis
The Choir of Westminster Cathedral James O'donnell, The Master of Music & Organ
1998 hyperion GAW21017
ウエストミンスター大聖堂聖歌隊が歌う、近代ミサ曲2つ。
マルタンの「二重合唱のためのミサ曲」は、バラードの香りが漂う、洒脱な一品。
それでいて、ミサ曲本来の荘厳さもきちんと響かせているあたり気品が漂います。
この人は作品によって無調などもばりばり展開する人なんですが、この作品は非常に穏健で美しい。
「パッサカリア」はオルガンソロ。ちょっと厳格な作りの真面目に暗いそれ。
イルデブランド・ピツェッティ(1880-1968)の「レクイエム」は
マルタンのそれに比べると非常に厳格で、本来のミサ曲の風格を持っています。
特に終曲「Libera me」の綺麗さは別格。
やっぱり自分がミサ曲に対して持っているイメージはこういう美しさなんだなあと思いました。
「デ・プロフンディス」もその美しさを十全に詰め込まれた音楽。
それでいて、静かな暗さもそこか併せ持つ、深く染み渡る旋律です。
演奏は線が細めで非常に美しいサウンド。ハイペリオンの録音の中でも一番気に入った方。
グラモフォン誌の年間最優秀賞を取っただけの録音はある。
Repertoire De Stijl : Bauhaus : Dada
Gian Francesco Malipiero; Barlumi
Jacob van Domselaer; Proeven van Stijlkunst
Francis Poulenc; Trois Mouvements Perpetuels
Josef Matthias Hauer; Tanz Op. 10
Vittorio Rieti; Tre Marcie per Le Bestie
Arnold Schoenberg; Sechs Kleine Klavierstucke Op. 19
Arthur Honegger; Trois Pieces Pour Piano
Erik Satie; Ragtime Parade
Daniel Ruyneman; Hallucinate
Egon Wellesz; Eklogen Op. 11
Nino Formoso; Ti-Ta-To
Nelly (Petro) van Doesburg,Piano
LTM LTMCD 2495
オランダのデ・ステイル運動、バウハウス、そしてダダの影響を受けた人物の作品をメインに
デ・ステイルの創始者であるテオ・ファン・ドゥースブルフの妻ネリーが演奏するというなかなか面白そうな趣旨のアルバム。
彼女が夫の行う講義にて取り上げ演奏する現代曲のレパートリーを収録したものです。
ジャン・フランチェスコ・マリピエロ(1882-1973)はヴェニス出身、ドビュッシーにも学んだなかなか有名な人。
「Barlumi」を聴いても分かるように、ドビュッシーの影響が非常に強い作風です。
イタリア古楽の復興に熱心だった(モンテヴェルディとヴィヴァルディの校訂者として有名)上、
イタリア風のドビュッシーみたいな音楽からはこのアルバムの意図に通じるものは感じられませんが、
カゼッラの友人で、彼が弟子には寛容で結果マデルナのような人物が出来上がったことを考えると収録もうなずける。
ヤコブ・ファン・ドムセラール(1890-1960)はオランダの作曲家。自分的にはシメオン・テン・ホルトの師匠として有名。
運動の中心にいた画家ピエト・モンドリアンに出会ったことでデ・ステイルに参画することになります。
収録の「Proeven van Stijlkunst」からの抜粋はその運動の中で作曲したもの。
後年のミニマリズムをも思わせる、新造形主義(ネオ・プラスティシズム)に裏付けされた作品。
ここでプーランク登場。なんで彼が取り上げられたのか・・・当時の先端の作風の一つとしてでしょうか。
非常に簡素な、いかにもパリジャンな近代音楽。まあ有名作だし。
ヨーゼフ・マティアス・ハウアー(1899-1963)はシェーンベルクより早く独自の12音技法を開発した人間。
ここでの「踊り 作品10」はまだ完全な12音を展開する前の作品(1915)ですが、
ここでの幻想的で近代的な作風は非常に興味深く、聴いていて美しい。バウハウスの活動にも積極的に参加していました。
ヴィットリオ・リエティ(1898-1994)はエジプト・アレキサンドリア出身、イタリアで活動した作曲家。
レスピーギや先述のマリピエロ、カゼッラに師事し、仏六人組風の新古典主義な作品を残しています。
ここでの「Tre Marcie per le Bastie」はその影響が顕著。グロテスクなハバネラ風(2曲目)など。
そしてきたシェーンベルグ。彼の代表作「月に憑かれたピエロ」がバウハウス出資の演奏会で披露されたり
バウハウス教官だったカンディンスキーと親交があったのに直接的なバウハウスとの関わりが無いのは
やはり、12音音楽の考えで袂を分かったハウアーとのかかわり合いがあったからでしょうか。
「6つの小さなピアノ曲 作品16」は1911年の作品なのでまだ12音以前の作品ですが、その内容は完全に調性を放棄したもの。
ハウアー以上にすでに先鋭的になっていて、後年を非常に予感させます。でも美しいのが不思議。
お次は六人組のふたりめオネゲル。この「3つの小品」は1915-19年の作品なのでかなり初期のもの。
まだ印象主義の影響が非常に強い、とても美しい音楽。これが5年もしたら「パシフィック231」になっちゃうんだ・・・
その後はサティ、有名所が続きます。まあ彼の先鋭的と言うか異端な活動は言わずもがな。
その後のダダイズムの発端のような人物なのでここにめでたく収録。
有名な「パラード」からの「ラグタイム」をここでは演奏、いかにもなシニカルさを持ったラグタイムです。
ダニエル・ライネマン(1886-1963)はアムステルダム出身の作曲家・ピアニスト。
「最も冒険的な作曲家の一人」といわれるような先鋭的活動を行っていたようです。
ここでの「Hallucinatie」は1915年の「Drie Pathematologien」から抜粋。近代和声的な音楽による、錯覚的・幻惑的な音楽。
エゴン・ヴェレス(1885-1974)はシェーンベルグの伝記なんかも書いているオーストリアの音楽学者・作曲家。
作曲家としてはドビュッシーの影響を早期から受けており、この「Eklogen(Selection)」(1913)でも容易にわかります。
最後のNino Formosoというイタリア作曲家については情報がぜんぜん無い様子。
1ステップの、まあこのあたりの時代的な作風のポピュリズムな短い音楽。
「ネリーはおそらく、Giacomo Ballaの未来派デザインが表紙になったスコアを見て選んだのでは」(James Haywardの解説)
おい!そんな理由でいいのか!
とりあえず、詳しく聴くと以外にダダなどの後年の曲がない。というか収録曲はほぼ全て1910年代のもの。
この時期の音楽の変遷を詳しく見ることができますが、全体的な流れは掴みにくかった。
演奏、可もなし不可もなし。ただダイナミクスはあるので個人的には飽きずに聴けた。
John Adams; Short Ride in a Fast Machine, The Chairman Dances, Harmonium
Louis Andriessen; De Snelheid
BBC National Orchestra of Wales & Mark Elder,Con.
BBC Concert Orchestra & Barry Wordsworth,Con.
Bournemouth Symphony Chorus ASKO Ensemble & Oliver Knussen,Con.
2002 BBC MM222(Vol.11 No.2)
BBC音楽マガジン付録のCDから、アダムスとアンドリーセンのカップリング。
「ショート・ライド〜」、溌剌とした演奏でかなり良い。ライヴなので細かいミスもあるし、録音環境の関係か
音量バランスが良くなくて(もっとここが聴こえて欲しい!)と思うところも多いけれど(特にホルンの吼え)
もしライヴで聴けていたら間違いなく興奮できるレベルの好演。
「主席は踊る」、これもすごく気に入っている曲。フォックストロット風のノリがある洒落たポストミニマルの傑作。
しっかりと纏められた、これまたとても良い演奏。ライヴでもここまでできるとはさすがプロ。
逆に、NonesuchのBOXにあるスタジオ演奏がどれだけ(編集含めて)完成されているか再確認。
「ハルモニウム」は80年代の大作。多分一般的な現代音楽ファンが評価できるのはここらまで。
なにしろこれ以降の作品はポップ色がかなり強くなるので・・・個人的にはそれも悪くないですけれど。
実はBOXで聴いたときは綺麗なだけの印象であまり聴いたことはなかったんですが、
この演奏で聴くとなかなか激しさも伝わってきて、この曲の盛り上がり方がうまくつかめました。
もしかしたらこっちの方が好みの演奏かもしれない。内向さも感情の爆発も表現した良い演奏。
アンドリーセンの「速度」はウッドブロックのパルスにアンサンブルの点描が激しく絡む。
徐々に切羽詰るように早まっていくテンポが爽快。
以前アイスブレイカーの演奏を購入しましたが、あちらの鋭く機械的な演奏に対し
こちらは録音状況も相まって、シンフォニックで表情豊か。熱気がある分こちらの方が気に入っています。
このマガジンの音源シリーズは全てライヴなのが良いですね。この独特の熱気がたまらない。
演奏も、おそらく数あるライヴから厳選しているだけあって素晴らしいものばかり。
録音が微妙なのが残念ですが、ライヴである以上大目に見るべきでしょう。
John Adams; Fearful Symmetries, The Chairman Dances
Lepo Sumera; Symphony No.2
Symphony Orchestra of Norrlands Opera Kristjan Jarvi,Cond.
2001 CCn'C 01912 SACD
ロックとクラシックの繋がり、ということでこの選曲。
ジョン・アダムスの「フィアフル・シンメトリー」、この録音で聴くと凄く「主席は踊る」に似ているのが分かる。
ごつごつとした音楽のロック・・・というかダンサブルな輪郭がはっきり見える。
シンセの大胆な使用、フォックストロットのリズムなどなど。
改めて聴いて、彼らしい作品だとはっきり感じました。ただ演奏してる方が楽しそうかな。
レポ・スメラの「交響曲第2番」は3楽章20分ほどの作品。
ハープのミニマルでメランコリックな旋律に始まり、短い反復に支えられながら
美しく、どこかもの悲しげに展開していく。北欧特有の美しさが聴けるいい作品です。
この2年前に書かれたヴァイオリンとピアノのための曲が基になっているらしい。
「チェアマン・ダンス(主席は踊る)」、この録音はテンション高め、つまりちょっとテンポ早め。
少々騒がしすぎる感じはしますが、十分楽しめると思います。
というか、騒がしい感じなのはどの曲も同じ。良くも悪くも。
指揮者のクリスチャン・ヤルヴィはネーメの末子、パーヴォの弟という予想通りの指揮者家系の一員。
ちなみにアブソリュート・アンサンブルの創設者。
ああ、だからトゥールの「アーキテクトニクス」新録と同じレーベルからなんだ・・・
Klaas de Vries; Strijkkwartet No.1
Bart de Kemp; Ciaccona
Oscar van Dillen; Strijkkwartet
Astrid Kruisselbrink; String Quartet
Edward Top; String Quartet
Hans Koolmees; rozen
DoelenKwartet
2007 Etcetera KTC 1339
ロッテルダム・コンセルヴァトール出身の作曲家の弦楽四重奏を(メインに)集めたCD。
Vries(1933-)の「弦楽四重奏曲第1番」はFマイナーの和音が全体を支配する曲。
第1楽章はとりとめない夢のように、第2楽章は荒々しい嵐のように。
強奏はユニゾンが多く、リズムが強調されます。弱奏は逆に、静寂を愛でるかのように淡い。
de Kemp(1959-2005)の「シャコンヌ」は94年に書かれた晩年の作品。
ポップ音楽のような不思議にリズミカルなピッツィカートからメロディが浮き上がり、古典的な要素が様々に味付けされる。
時によどみ、時に切羽詰るような音楽はどこか伝統的な西洋音楽とは違うものを感じさせます。
Dillen(1958-)の「弦楽四重奏曲第1番」は騒々しさと静寂が入れ替わる前衛的な単一楽章作品。
Kruisselbrink(1972-)の「弦楽四重奏曲」はムンクの絵画にイマジネーションを受けた3楽章制。
まさに世紀末的な、不穏げな音楽世界。3楽章の「叫び」とか面白いです。
Top(1972-)の「弦楽四重奏曲第一番」もインスパイア元は絵画ですが、こちらはヒエロニムス・ボッシュ(ボス)の方。
怒ったように激しくばらまかれる音たち。無作為に脈絡無く広がる音楽はボッシュの奇怪な絵画に合っています。
それにしても彼の絵画はルネサンス期に書かれたとは思えない異常世界ですよね。
最後はKoolmees(1959-)の「ローゼン」、ソプラノ独唱、グロッケン、弦楽四重奏とテープのための作品。
鳥の鳴き声から聖歌風の悲歌、美しいソプラノとグロッケンの調べ。詩篇を歌う、非常に美しい音楽です。
演奏は、クリスピーの効いた鋭いものです。アンサンブルは微妙なところもあるけれど。
Bobissimo! -The Best of Roger Bobo
Johann Ernst Galliard; Sonata No.5 in D minor
J. Ed. Barat; Introduction and Dance
Paul Hindemith; Sonata for Bass Tuba and Piano
Alec Wilder; Children' Suite: Effie the Elephant, Tuba Encore Piece
William Kraft; Encounters II for Unaccompanied Tuba
Robert Spillman; Two Songs
Henri Lazarof; Cadence VI for Tuba and Tape
Roger Bobo,Tuba Ralph Grierson,Piano
1991 Crystal Records CD 125
ロジャー・ボボはチューバ界の伝説的な人物でしょう。俺でもはっきり知ってるレベル。そんな彼のベスト盤。
ガリアードのソナタ第5番はバロック作品。短い4つの楽章から成る小品です。
Baratは詳細の良く分からない方ですが、原曲がバス・サクソルンのために書かれていることを考えるとたぶん19世紀後半の人物。
ソリスティックな歌い回しがこの頃から登場したのがよく分かる。ちょっと暗めの、フランス感性あふれる4分弱の小品。
ヒンデミットのソナタは、この世界じゃ超有名作品ですね。こうして聴くとボボの安定感がよくわかる。
ワイルダー1曲目「子供の組曲」は短い6曲からなります。チューバだけど軽い感じの音楽。
ウィリアム・クラフトの曲はチューバソロ。重音奏法など技巧的でありながら、どこかメロディアスで旋律的。
もちろん暗い感じの独白的な曲調だけれど。
シュピルマンの「2つの歌」は美しい幻想曲風のアンダンテと技巧的なメロディのアレグロからなる。
これはけっこう自分的趣味にはしっくりきましたね。
ラザロフの「カデンスVI」はまた前衛曲。テープ録音された演奏とライヴのチューバによる音の干渉。細かいパッセージで思い切り叫んだり。
ワイルダー2曲目、「チューバ・アンコール・ピース」はトリルの印象的な短い(1分)曲。
やはりボボは凄かった。柔らかい音なのに、細かいパッセージも難なく吹きこなすし。
欠点として、録音がよくない。なんか遠くてダイナミクスが余り感じられません。
折角のヴィルトゥオーゾの魅力が半減してます。残念すぎる。
Europe
Iannis Xenakis; Xas
Krzysztof Penderecki; Quartet for Clarinet and String Trio
Paul Hindemith; Konzertstuck fur zwei Altsaxophone
Per Norgard; Roads to Ixtlan
Cristobal Halffter; Fractal - Concierto a Cuatro
The Rascher Saxophone Quartet
2001 BIS BIS-CD-1153
クセナキスの「カス」、1987年の作品なので晩年のころです。
この時期特有の強烈な和音でモノフォニーに進む、相変わらず強烈な音楽。
ビブラートなしの図太い音がどろりと伸びて行く。実はこの曲、このラッシャーSx.Q.のために書かれたりしています。
ペンデレツキの曲は、作曲者の許可を得てメンバーのHarry-Kinross Whiteが編曲したもの。
93年の作品だから、当然のごとく聴きやすい響き。
夜想曲的なラルゴの影が強い、正直あんまり強い魅力が感じられない曲。
ペンデレツキも初期は良かったけれど、こうなると音響としても楽しみが薄いなあ・・・
ヒンデミットの曲は世界初録音らしい。今のリーダーCarinaの父Sigurd Rascherのために書かれたもの。
音楽は普通のヒンデミットしてます。8分ほどの曲。
ペア・ノアゴーの曲は一定の基音から徐々に落ちて行く、なかなか緊張感ある曲。短い3楽章構成。
最後はクリストバル・ハルフテルの「フラクタル」で締め。
冒頭のフラッターによる音塊から激しく動き回る主部、音響的には非常に爽快。
買う前からそこまで好きな曲はなさそうと思ったが、そのとおりだった。クセナキスとハルフテルくらいか。
演奏メンバーはニューヨーク・カウンターポイントの演奏で覚えていたけれど、
けっこうマイルドな響き。そんなにアタックが厳しくない。
小林武史 -わが故郷より スメタナ-
Tommaso A. Vitali/Charlier,Arr.; Chaconne
Toru Takemitsu; From far beyond Chrysanthemums and November Fog
Jules Massenet; Meditation de Thais
Ikuma Dan; Fantasia No.1 for violin solo and piano
Bedrich Smetana; From the Home Country No.1 and No.2
Eugen Suchon; Sonatina for violin and piano Op.11
Manuel de Falla/Kreisler,Arr.; Danse Espagnole from "La Vida Vreve"
Fritz Kreisler; La Guitana
Kousaku Yamada; Nobara
Maria Theresia von Paradis/S.Dushkin,Arr.; Siciliana
Takeshi Kobayasi,Violin Josef Hala,Piano Tomoko Shinozaki,Piano
1993 EPSON TYMK-002D
日本人で始めて海外オケ(ブルノー・フィル)のコンマスになったヴァイオリニストのアルバム。
ヴィターリ/シャルリエ編曲の「シャコンヌ」はもうこの手のCDお馴染みの曲。
イタリア・バロックの音楽だけあって自分の好み。個人的にはバッハほどではないですが良い曲です。
武満徹の「十一月の霧と菊の彼方から」は1983年に作ったコンクール課題曲。
ゆらめくような音楽にはすでに後期らしい豊かな響きが垣間見えます。
ただ、課題曲だからなのか、そこまでふわふわしている音楽ではなかったです。
マスネ「タイスの瞑想曲」、また名曲。夢見るような美しさですが、個人的にはそこまで好きでもない。
團伊玖磨「ファンタシア第1番」は小林氏による依頼&初演作品。
日本的ではなく、むしろ東洋的と形容するのに相応しい、勢いのある熱い作品。
スメタナの「わが故郷より」、哀愁を歌う第1番に民謡的な激しい舞踏の第2番。
スホニュ(1908-)はチェコスロバキアの作曲家。連盟会長などを務めた、なかなか代表的な立場の方。
この録音が日本初演となる「ソナチネ」ですが、1937年の作品なので初期の部類に入る作品でしょう。
ちょっとモダンな響きも匂わせつつ、東欧的近代音楽を美しく聴かせてくれる。
ファリャ「スペイン舞曲」みたいな音楽は大好き。やっぱりスペイン風民族音楽は楽しいです。演奏も豊かで派手。
クライスラー「ラ・ジターナ」は似たような音楽でも、より自由に歌うジプシーの熱さ。
山田耕筰「野薔薇」でしっとりした後はパラディスの「シチリア舞曲」。
これ1曲しか知られていないベートーヴェンと同時代の作曲家による、美しい子守歌風メロディー。
演奏は、経歴が示すとおり技巧・響きともに非常に良い。
実力があることが、聴いていてはっきりと分かるくらい。音に力もあります。
ただ現代ものは苦手か?期待してた武満はそれほどでもなかった気が。
マスネはもうちょっと歌っても良かったんじゃ。十分良い演奏だけれど。
伴奏は落ち着いてソリスティックなヴァイオリンをサポートしてます。
打 - ツトム・ヤマシタの世界
Heuwell aTircuit; 「踊るかたち」からのヴァリエーション
ツトム・ヤマシタ;「人」の三楽章、渦(即興演奏)
ツトム・ヤマシタ、打楽器 藤舎推峰、能管 藤舎呂悦、鼓 佐藤允彦、ピアニスト
1995 Denon COCO-78456
あの武満徹に「カシオペア」を書かせたほどの実力ある打楽器奏者、ツトム・ヤマシタを
一躍日本で有名にした日本初リサイタルの、歴史的なライヴ録音。
ヒューエル・タークイ(1931-)はルイジアナ出身、ABC交響楽団の打楽器奏者を務めたりした人物。
「「踊るかたち」からのヴァリエーション」は、「室内オーケストラと打楽器のための協奏曲」から
ヤマシタが編曲したもの。チャンチキを用いた日本的な表現や、口まで使った複雑なリズム処理が印象的。
最初は静寂だらけですが、どんどんと盛り上がっていきます。最後なんかソロとは思えない凄さ。
「<人>の三楽章」は鼓、笛、そしてピアニストが入ります。
かなり即興的な音楽ですが、とりあえずピアニストはピアノ弾いてません。壜を割ったり紙を鳴らしてるだけ。
先ほどの曲以上に和の要素が強いです。
「渦」はアンコール、完全な即興演奏。リズム要素がきっちりしていて、和風というよりアフリカン。テンション高くてノれます。
やはり技術は申し分ない。これだけの技量で聞かせるのだから現在の知名度も当然でしょう。
肉体的な表現も、いまとなっては古典的になりましたが、彼がやりだしたのがほぼ最初であるだけに偉大です。
Wolfgang Amadeus Mozart; Concerto for Two Pianos and Orchestra No.10 E flat Major KV.365(316a)
Chick Corea; Fantasy for Two Pianos
Friedrich Gulda; Ping Pong
Chick Corea/Friedrich Gulda,Piano
Concertgebouw Oechestra, Amsterdam Nikolaus Harnoncourt,Cond.
1984 Teldec 8.42961
ごめんなさい、明らかに後半の自作自演が聴きたかっただけです。
フリードリッヒ・グルダとチック・コリア、クラシックとジャズそれぞれの巨星の共演。
モーツァルト、やっぱり二人の技術の凄さが分かる。
活躍ジャンルは違うけれど、どちらも他方のジャンルに多大な興味を示す二人。
だからこそ互いの呼吸がわかり、ぴったりと合わせることができるんでしょう。
そうやって作られる音はクラシックともジャズとも違う響きを持っているように思えますね。
コリアの「ファンタジー」、まさに夢見るような音楽から二人のクラッピングで場面転換。
いつものコリアらしい瀟洒なアドリブの効いた音楽。それに普通のようについていくグルダ。
グルダの「ピン−ポン」、お互いの出番が華麗に入れ替わる様はまさに卓球。
先ほどとは違う味の、落ち着いた美しさ。最後は特殊奏法も使った爆発で締め。
やっぱりこういう作品はいいねえ。
安倍圭子 マリンバセレクションズIII
Minoru Miki; Concerto for Marimba and Orchestra
Toshiya Sukegawa; from 5 Pieces after Paul Klee Op.40
Maki Ishii; Marimba-Stuck mit zwei Schlagzeuger
Katsuhiro Tsubonoh; Meniscus for Marimba
Yoshio Hachimura; Ahania for Marimba
Minao Shibata; Imagery
Keiko Abe, Marimba Hiroshi Wakasugi,Con. Japan Phil. Sym. Orch.
1987 Denon 30CO-1729
三木稔「マリンバとオーケストラのための協奏曲」は、同年の「マリンバの時」、そして
彼の一番の有名作品「マリンバ・スピリチュアル」とあわせてマリンバの三部作となっています。
「生へのうめきのような」ものを示すピッツィカートど動的なものと、死を示す静的な構造が絡み合う。
そして、その中に生そのものとしてマリンバが激しく動きを添える。
助川敏弥「パウル・クレーによせる五つの小品」は、クレーの絵画のような、抽象的でありながら
どこか情緒を持った音楽を自由性、即興性をもって表現したもの。とりとめない、ちょっと素朴な趣き。
石井真木「二人の打楽器奏者をともなったマリンバ曲」は、マリンバ奏者が自身の判断で行う間に
二人の奏者は合わせながら伴奏を行う。音響的にも構造的にもマリンバが軸となるように設定された曲。
坪能克裕「メニスカス」は、レンズを通した像の拡大・縮小のような、音の密度がさまざまに引き伸ばされる
楽器を叩くこと自体について思いをはせた作品。響きが純粋に爽快です。
八村義夫「アハーニア」は、ウィリアム・ブレイクの預言書を題材にした、
個々の音が持つ指向をコントロールすることによる音空間の構築を目指したもの。
柴田南雄「像」は任意順で個性的な4つのフレーズからなる音楽。
不確定性だったりセリー風だったり非常にエネルギッシュだったり。
高橋悠治リアルタイム2
John Zorn; For Your Eyes Only
Haruna Miyake; The Time of Melancholy
Jose Maceda; Dissemination
Masahiko Togashi,Perc. Haruna Miyake,P.&Syn. Jose Maceda,Con.
Tokyo Symphony Orchestra Yuji Takahashi,Con.
Fontec FOCD3151
高橋悠治のシリーズの2。1991年東京ミュージック・ジョイ・フェスティバルのライヴ。
ジョン・ゾーンの「フォー・ユア・アイズ・オンリー」、最初からとんでもない混沌の渦。
雑多な楽想がぐちゃぐちゃと節操無く入り乱れる。クラシック、ジャズ、サンバ、映画音楽、
さらには現代音楽曲のパロディまで飛び出してくる激しい音楽。
打楽器奏者の一人はノイズ専門になっているあたり音響的にも激しい。
三宅榛名の「憂愁の時 -ダブル・コンチェルト」はここで演奏している富樫雅彦を想定して書かれたもの。
第一楽章、徐々に響いてくるプリミティヴなドラミング、そこにヴァイオリンなどのソロが自由に絡んでくる。
チェロとソリストのインプロ、ピアノと打楽器の真似合いインプロを挟み、
最後の第四楽章ではオケ全員が波の様に即興的な演奏を重ねていく。
インプロと協奏的形式を通して、オーケストラと現代文化とのあり方について考える作品。
ホセ・マセダはこの「ディセミネイション」がCD収録されたことで広く知られるきっかけになったはず。
背景の呼子笛とゴングが響き、そこに各楽器が(まるでミニマルのように)絡み合っては結合し合い、
徐々に一つのまとまった運動へと収束していく。30分を超える大作。
フルート、ヴァイオリン、オーボエ、ホルン、低弦が5人ずつに背景4人という小編成ながら、
そこから現れる音の密度や色彩の広大さにはびっくりさせられる。
やはりマセダは素晴らしい作曲家です。
Century XXI UK A-M
Steve Martland; Re-Mix
Graham Fitkin; Flak
Orlando Gough; Drawning
John Godfrey; Euthanasia...
David Canningham; Canta
Laurence Crane; The Swim
1996 Felmay / New Tone nt 6750 2 / 129806750 2
イギリスの新世代音楽とでも言うべき音楽についてのコンピ。
A to Mと題して、アルファベットごとに作曲家の名前やらにこじつけてます。
Jがジャケット、Bがこのプロジェクトについて、なんかはいいけれどOrlando GoughがHにくくられてたのは流石に笑った。
マートランドの「Re-Mix」は、私が持っているどの録音とも別なものの様子。
チェンバロやヴァイオリンの音がよく聴こえる、会場の残響が多い録音。テンポが早く、爽快。
フィットキンの「Flak」はピアノ2台8手の明るく爽やかな曲。
いつも通りのフィットキン節で安心しました。美しい、ノスタルジックな調子が特に気に入りました。
オーランド・ガフ(1953-)の「Drawning」はアラビックというかエスニックと言うか、どこかチープな電子音楽。
だんだんリズムがのってきて、ノリ良いミニマル系音楽に。
ちょっとダウナーになったとおもったらPart2。ギターとか入ってきてさらに盛り上がり?ます。
Part3はさらにゆっくり、ピアノメインのゆるい曲。
全3部21分の大曲。電子音楽、というかMIDI音楽と言った方が聴感としてしっくりくる。
「Euthanasia(Susywimps)...」はアイスブレイカーメンバーの演奏。
サックス、キーボード、ベースによるフリーなジャズ風の音楽。
なんだろう、フィットキン+マートランドでフリーに崩したみたいだ。
ちなみにジョン・ゴドフリー(1962-)はマイケル・フィニッシーに師事経験あるらしいです。
一方、デイヴィッド・カニンガム(1954-)は実験音楽系でも名の知られた人。
「Canta」では、歌をマテリアルとした全曲に細かいディレイをかけて、不思議な世界を作っています。
ローレンス・クレーン(1961-)の「The Swim」は、元は短い映画のサントラらしい。
電子オルガンによる混沌としたドローンの中から、ゆっくりしたメロディーが浮かんでくる。
なかなか楽しめました。前衛的な曲が一つも無い・・・
Leonard Bernstein; Chichester Psalms
John Rutter; Gloria
Arvo Part; Magnificat Antiphon, Missa Sillabica
Choir of Clare College,Cambridge The Wallace Collection Rachel Masters,Hp. Timothy Brown,Con.
Capella Breda Daan Manneke,Con. Ensemble Calefax
2000 Regis RRC 1003
バーンスタインの「チチェスター詩篇」、力強い冒頭からいつものバーンスタイン節。
第一楽章は7拍子に載ってヘブライ的な打楽器が彩る。
第二楽章はハープと女声の美しい音楽の中間に激しい箇所が乱入。
荘厳なオルガンから穏やかな合唱へ移行する第三楽章。
ジョン・ラターの「グロリア」は金管の華やかな(吹奏楽風)ファンファーレに乗せてカッコイイ歌唱。
第二楽章の穏やかで美しいオルガンから輝かしい爆発までも聴き所。
祝祭的な教会音楽をある種吹奏楽的に表現した音楽です。かっこいいの一言が実に合う。
以前から聴きたかった曲ではあったんですが、予想を遥かに超えて素晴らしい曲でした。これいいなあ。
合唱やオルガンといった編成をどうにかできたら、日本の吹奏楽界でもブレイクするであろう一品。
ペルトの無伴奏合唱曲「マニフィカト・アンティフォン」、彼らしい内向的で悲しげな曲集。
美しく、冷たく、けれど柔らかく響く音楽です。1988年の作品。
「Missa Sillabica」は1977年の作品、ちょうどティンティナブリ様式真っ最中の頃。
簡素ながらも実に美しく、そして悲しく響く音楽。やっぱりこの時期の作品が一番綺麗だ。
演奏は、ペルトの方は録音でごまかしてる気もするけれど、この残響は音楽に合っているとも思う。
前2曲はまあまあ派手でいい感じ。ダイナミクスもこれだけあれば合格点。
とりあえず、買って良かった。曲は外れなし、演奏も外れではなし。
Contrabass Typhoon
Joji Yuasa; Triplicity for contrabass
Chinary Ung; Gliding Wind for contrabass
Iannis Xenakis; Theraps pour contrebasse a cordes selue
J.S.Bach; Suiten fur Voloncello Nr.1 G-dur BWV1007
Keizo Mizoiri,Contrabass
2000 Kojima(ALM) ALCD-56
溝入敬三によるコントラバス・ソロアルバム「コントラバス台風」。
湯浅の「トリプリシティ」は弓によるゴングの擦りで開始。
あらゆる種類のボディ・ノックを駆使しながら、様々な特殊奏法で音楽が展開される。
あらかじめ録音された2パート+ライヴ演奏の形で作曲されていて、
それら3パートのどこに優位性があるわけではない上で奇形の音たちが絡み合う。
非楽器的な音が殆どを占める、非常に騒々しくパーカッシブな曲。
チナリー・ウング(1942-)はカンボジア出身の、現在はアメリカ在住の作曲家。
「グライディング・ウインド」は、どこか東洋的な下地の上で音たち、時には旋律、がぐねぐねと
形を変えながらゆらいでいる、さっきと逆に線的な流れの作品。
「宇宙を漂っている想像の物体を表現している」というのは作曲者の言。
クセナキスの「セラプス」、このCDのある意味目玉。
スル・ポンティチェロの弱奏と通常奏法のぶっきらぼうなfの対比、
4分音を使った細かな変化のグリッサンド、二重音による静的な間。
彼独特の荒々しさが出た、やはり難しく聴き応えがある作品。
最後はバッハの「無伴奏チェロ組曲第1番」で閉め。
コントラバスならではの線の細さが優しさを表してくれる。
非常に安定した、素晴らしい演奏でした。
Joseph Haydn; Symphony No.95 c-moll Ho.I:95
Frank Martin; Concerto for seven instruments, timpani, percussion and strings
Igor Stravinsky; The Firebird (Suite)
Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks Ernest Ansermet,Cod.
1992 ORFEO C266 921 B
エルネスト・アンセルメ、バイエルン響を振るin1962年5月。
ハイドンの「交響曲第95番」、短調でも古典作品らしい明るさですよね。
にしても95番て中途半端な作品だ、ハイドン聴かないからこの曲は初めてでした。
マルタンの「7つの管楽器、ティンパニ、打楽器と弦楽器のための協奏曲」、新古典的な響きの、マルタンらしい軽妙な一品。
両端楽章は旋律が細かい。この曲、録音抜きでもティンパニの粒は聴かせづらいよね。
録音は管楽器の音がちょっと大きい、メロディは聴きやすいけれど、本来のちょっと違うような・・・
ストラヴィンスキーの「火の鳥」、全6曲なのって何年版だっけ。
始めはまあまあ遅めな方か。カスチェイの踊りは音割れ感が逆にいい味出してます。
終曲は自分の大のお気に入り。だけに、金管が弱いのは凄く納得いかない・・・
でもアンセルメの指揮する音楽は、やっぱり自分は好きなんだなあということを実感。
フランス的な洒脱さ、ちょっと粘り気のある嫌味にならない程度の甘さ、さっぱりまとめられてはいるものの
迫力のある激しい部分、あまり奇をてらわないけれど味付けはしっかりする演奏。
モノラル録音オリジナルで、デジタルリマスタリングしても状況はかなり良くない。
けれど、それでも十分に楽しめました。
Modern Masters II
David Ward-Steinman(1936-); Concerto No.2 for Chamber Orchestra
Paul Turok(1929-); Threnody Op.54
Norman Dello Joio(1913-2008); Lyric Fantasies for Viola & Strings
Henry Cowell(1897-1965); Hymn for String Orchestra
Paul Creston(1906-85); Partita for Flute, Violin, and String Orchestra Op.12
City of London Sinfonia David Amos,Con.
1990 harmonia mundi HMU 906011
初期ハルモニア・ムンディの現代アメリカ音楽シリーズ、その2。
ウォード=シュタインマンの「室内管弦楽のための協奏曲第2番(1960-62)」は、アメリカ的な躍動感に
どこかバルトークやヒンデミットのような近代的なヨーロッパ音楽の香りを盛り込んだ一品。
正直、かなりカッコイイです。嫌味ったらしくない程度に、爽やかにアメリカ的快楽さ・ヒロイックさを
詰め込みながら、古典的な堅牢さをもった重みのある作品に仕上がっています。
なお、作曲者はナディア・ブーランジェやミルトン・バビットに師事経験あり。
ポール・テューロックの「哀歌(1980)」は、葬送行進曲とでも名づけた方がよさそうな曲調。
自分的には大戦前後のロシアの作曲家が西洋にかぶれたら書きそうな音楽に聴こえる。
でも作曲者はNY生まれジュリアード音楽院卒のバリバリ人間なんだよね。
ノーマン・デロ・ジョイオは、以前から名は知っていたものの純音楽作品を聴くのはたぶんこれが初めて。
「ヴィオラと弦楽のための詩的幻想曲(1975)」、なかなか叙情的で美しい、気品溢れながらも勢いのある曲。
オルガニストの息子でありヒンデミットの弟子でもあることが納得できる、双方の美点を持ち出したような音楽。
ヘンリー・カウエルはケージやガーシュウィンといった大御所を世に送り出したアメリカ前衛の先任者。
ですが、この「弦楽オーケストラのための賛歌(1946)」は
そんなトーンクラスターのイメージとは無縁の非常に美しいコラール風の曲。
最後は吹奏楽でも知られているポール・クレストンの「フルート、ヴァイオリンと弦楽のためのパルティータ(1937)」で締め。
短い5楽章からなる、新古典的な近代音楽、といった様相の明るい綺麗な曲。
演奏は、派手さはないものの十分健闘しているもの。ソリストの技量はあまり・・・といった感じですが、
それでも曲の魅力には十分気づける演奏です。
200 Years of Russian Music for Organ
Mikhail Glinka(1804-57); Three Fugues
Vladimir Odoyevsky(1804-69); Lullaby
Sergey Taneyev(1856-1915); Choral Variations
Cesar Cui(1835-1918); Two Preludes
Ludvig Homilius(1845-1908); Prelude G major
Sergey Lyapunov(1859-1924); Prelude Pastral Op.54
Nikolay Tcherepnin(1873-1945)/arr.J.Handschin; Cherubimic Hymn
Leonid Nikolayev(1878-1942); Fugue E flat minor
Reinhold Gliere(1874-1956); Fugue on a theme of a Russian Christmas Song
Alexander Glazunov(1865-1936); Prelude & Fugue Op.93,98, Fantasia Op.110
Dmitry Shostakovich(1906-75); Passacaglia Op.29 from the Opera"Katerina Izmailova"
Alexander Gedike(1877-1957); Prelude & Fugue Op.34 No.2
Oleg Nirenburg(1938-); Fantasia on a theme of a English Folk Song, Fantasia on a theme of a Russian Folk Song
Alfred Schnittke(1934-); Two Pieces for Organ(Untitled)
Sofia Gubaidulina(1931-); Light & Dark
Alexei Fiseisky,Organ
1992 Etcetera KTC 2019
ロシアのここ200年間のオルガン音楽をいろいろ集めた2枚組み。
作曲者こそビッグネームが多いけれど、曲はどれもどマイナー一直線。
何しろこのCDリリース時点で全て世界初録音だそうですから。
グリンカの「3つのフーガ」、非常に素直な構成のフーガ。構成はバロックだけれど和声はちょっと近代。
Odoyevskyの「子守歌」はロマン期のロシア音楽らしい、素朴で暖かな短い曲。
タネーエフの「コラール変奏曲」は彼晩年の作品。まあ名前の通り。
キュイの「2つの前奏曲」は穏やかで優しい、内向的な小品が2つ。
Homiliusの「前奏曲」はそれに比べると随分と動きがある。短いが華麗で記憶に残る。
リャプノフの「パストラール前奏曲」は明るく壮大でのびのびした曲。個人的には気に入った。
チェレプニンの曲は名の通り、賛歌的な歓喜を描いたような曲。ただ派手ではなく渋い。良い曲だけれど。
ニコラエフとグリエール両氏はどちらも短い近代和声的なフーガ。
グラズノフの「前奏曲とフーガ」2作、作品93は壮大で98はより構成的な、調性を揺らす曲。
Disc2、続いて「幻想曲」もだんだん盛り上げていく雰囲気は前2曲と似ている。
ショスタコは一番前衛に野心を持っていた時期の作品から。原曲のオケ以上にどろどろしてます。
彼の曲の後だとGedikeの曲が一層爽やかに聞こえる。うん、豪華絢爛で良い曲。
Nirenburgの曲は、現代の作品にしては穏健な方か。近代的な和声で不安定に揺れるメロディー。
シュニトケの小品2つ、1つめは穏やかでやや暗いコラール風ですが、2曲目は半音トリルを多用した彼らしい世界。
グバイドゥリーナはオルガン作品が多いだけあって、音響を良く心得てます。
日本の声楽・コンポーザーシリーズ 5
大中恩・小林秀雄
大中恩;五つの叙情歌、五つの現代詩
小林秀雄;胡蝶花に寄せて、日記帳、飛騨高原の早春、瞳、
落葉松、演奏会用アリア「すてきな春に」、夏の日のレクイエム
畑中良輔・立川清登、バリトン 中沢桂、ソプラノ 永田峰雄、テノール 三浦洋一、ピアノ
1997 ビクター VICC-60045
大中の曲は、どれをとっても素晴らしいまでの旋律が私たちの心をくすぐってくれます。
ああそうだ、ぼくら聴衆はこんなメロディーの美しさに気づいて音楽を聴くようになったんじゃないか。
決してあの時の思いを忘れてしまってはいけない・・・そう言わずにいられない曲ばかり。
決して飾らず、直情的でありながら繊細で叙情的、しかも俗っぽさは微塵も感じられない。
小林の曲にも似たことがいえます。けれど、彼の曲はより技巧的。
どの言葉をどのタイミングで、どのように歌わせると一番自然で、効果的で、雄弁に自己を語ることが出来るか。
そこから現れる様式美のようなものは、大中の曲とはまた違った魅力を出してきます。
演奏も、そんな二人の曲を最大限に表現している素晴らしいもの。美しさや優しさが表出した良い声です。
合唱に疎く、たまたま安く手に入っただけのCDでしたが、ここまで良かったとは。
吉原すみれ
パーカッシブ・コスモス 2
1987 CBS/SONY 32DC 1009
打楽器奏者吉原すみれの現代打楽器曲集。高橋悠治と一柳慧は自作自演参加。
八村義夫の「Dolcissima ma Vita」はさまざまな金属製の打楽器がきらめく。
作曲者いわくF音を基調にして展開されていくらしいのですが耳の悪い私はよくわからず。ただ、確かに極端な上下はない。
あまり激しさの無い曲ですが、細かな音の動きが繊細に形を変える様は実に良く練られたものだと実感します。
高橋悠治の「のづちのうた」は、先ほどとうってかわり木質な音が支配する、彼らしい民族的な即興音楽。
メロディーを即興パターンの一つにしたとても簡素な構造だけに素朴な味わいが強いです。
毛利蔵人の「Tenebroso Giorno」は八村義夫の追悼的な意味合いも持つ曲。
スチールドラムの、柔らかで深みのある独特な響きがその曲の性格に良くマッチしています。
一柳慧の「木の刻 水の刻」は打楽器とピアノのための作品。彼らしいミニマル志向の音楽。
自然の営みに思いを向けた、瞑想的な曲。速い部分はミニマルで細かな連符が特徴的。
Piano Music By African American Composers
R. Nathaniel Dett; In the bottoms
Thomas Kerr; Easter Monday Swagger. Scherzino
William Grant Still; Three Visions
John Wesley Work III; Scuppernong
George Walker; Sonata No.1
Arthur Cunningham; Engrams'
Talib Rasul Hakim; Sound-Gone
Hale Smith; Evocation
Olly Wilson; Piano Piece for piano and erectroric sound
Natalie Hinderas,Piano
1992 Composes Recordings Inc.(CRi) CD 629
アメリカの黒人系作曲家のピアノ作品を集めた2CD。
Dett(1882-1943)の曲は1913年に作られた5曲20分の大作で、非常に古典的。
とはいえ、彼なりの黒人を出自とした軽快な作風が現れていて面白い。
ドヴォルザークに影響を受けた彼の代表作であり、黒人による初期西洋曲の重要作品と言うに相応しいと思えます。
Kerr(1915-1988)の父(Henderson Kerr)は初期ジャズ界の主要人物らしいですね。
イーストマン音楽学校を出た彼の曲は、どこか乾いた感じのクールな音楽作品。けっこうジャズ的。
ウィリアム・グラント・スティル(1895-1978)はこの中で際立って有名な作曲家ですね、たぶん。
チャドウィックと親交を結び、ヴァレーズにも教えを受けながらジャズにも積極的に参加した彼の収録曲は比較的初期(1936)の作品。
楽章ごとにどのルーツの影響下にあるかがけっこう異なっていて、雰囲気が激しく変わる。
Fisk,Columbia,Yaleといった大学で教鞭をとっていたJohn Wesley Work III(1901-1967)の曲も黒人的なルーツ、
それも宗教的なものが垣間見えますね。賛歌のような主題などが古典的な構造の中に見られます。
Walker(1922-)のピアノソナタ(1953)は完全4度を主要な構造に置いた、フォークソングの引用もした15分ほどの作品。
はっきりした典型的ソナタ構造に軽妙洒脱な楽想がちりばめられていて楽しい。
Cunningham(1928-)は先のJohn WorkやHenry Brant, Peter Menninらに音楽を教わったようです。
もやもやした音楽から、次第に激しい諧謔的な楽想が飛び出してくる。
Hakim(1940-1988)はスーフィズム(イスラム神秘主義)の影響を受けた作曲家。
内部奏法なども多く見られる、内向的でやや前衛的な曲。ただし、音楽的影響はイスラムよりはジャズの方が比較的濃いでしょうか。
前半と後半はかなり激しいですが、中間部は簡素な聴きやすい構造。
Smith(1925-)は教育者、アレンジャー、また黒人音楽研究などで名のある人。曲は、ジャズの影響がはっきりと見られる小品です。
Wilson(1937-)はジャズのベース奏者としても活躍したことのある、電子音楽に初期から参加した黒人の一人。
特殊奏法を駆使したプリペアド・ピアノの激しい部分と、高音主体のピアノと電子音の語らいが印象的。
そこから徐々に高揚してプリペアドピアノとノイジーな電子音の競演に。結構荒々しいです。
全体を通して演奏は堅実なもの。十分に音楽の特徴を伝えてきてくれます。
曲はまあ掘り出し物はなかったけれどそこそこ楽しめるものばかり。
甦る古代の響き 箜篌
一柳慧;時の佇いII
石井眞木;歴年1200 伶楽のための、作品101
佐々木冬彦、箜篌 ほか
1999 ALM Records ALCD-2002
箜篌とは、西方起源の非常に古い伶楽のための楽器。正倉院に実物が保存されています。
解説は殆どがこの楽器の構造や復元についてで、かなり詳しい。これはこれで楽しめました。
ただ、曲についてこれっぽっちも書いていないのはどうよ。
一柳の曲は箜篌独奏の曲。非常に古楽風で、前衛さはとくに感じられません。気軽に楽しめました。
石井のほうは伶楽のための作品。平安建都1200年記念として京都市から委嘱されたもの。
こちらも非常に古い響きですが、そこに独特の前衛構造を持ってきているあたり彼らしい。
こういう無骨な音を聴いていると、どこか不思議な気分にさせてくれるのがとても面白いです。
たった20分しか収録されていないCDですが、良かった。
Ensemble de Violoncelles
Iannis Xenakis; Windungen
George Apergis; Totem
Robert Paskal; Au plus profund d'un etrange reve eveille
Camille Roy; Tresses
Vinko Globokar; Freu(n)de
Centre de Pratique des Musiques Contemporaines de I'ENMD d'Evry
2005 Ameson ASCP 0506
現代音楽作曲家によるチェロ多重奏のための作品集。
曲順に、12、8、18、12、17人もの奏者が必要という、1桁が少ないと思ってしまう異常さ。
クセナキスの曲は冒頭、びっくりする位普通の旋律。それが、暫くするといきなり崩壊しだす。
その後は彼のオケ作品にも通じる激しい音世界が現れて爽快です。
やっぱりクセナキスの音楽はカッコイイの一言に尽きる。
同郷のジョルジュ・アペルギスの曲も、動きの激しめな曲。様々なテクスチャがごろごろと転がっていく。
1997年の作品なのでまあまあ最近。15分近くあるなかなかの曲でした。
彼の曲、昔聴いて(なかなか激しいな)と思ってはいたんですが、これまであんまり聴いた事無かったんですよね。
今度「四角い三角形」の音源無いか捜してみよう。注目に値する作曲家ですよね。
ロバート・パスカル(1952-)の曲は、狭い音域でのグリッサンドによる不協和が印象的な短い音楽。
そこから協和音によるコラールが見え隠れする。
カミーユ・ロイ(1934-)の作品は短い6曲からなる音楽。激しく動き、あるいはグロテスクにモチーフを提示しあう。
最後、グロボカールの曲は、声や歌、特殊奏法なども使用した、重苦しい感じの曲。
どの曲もチェロ同士の込み合った響きが魅力的で楽しめました。音楽的に好きなのはやはり最初2人かな。
Champ D'Action - Quincunx
Geert Logghe; Time before and Time after
Luc Brewaeys; Trajet
Eric de Visscher; Stille und Larm
Frederic D'Haene; Inert Reacting Substance of ()
Serge Verstockt; Aperion
1994 Megadisc MDC 7869
比較的若手から中堅の作曲家の室内アンサンブル作品をまとめたもの。作曲家、誰も知りません。
1曲目の作曲者はRoland Corynに作曲を学んだベルギーの作曲家。
T.S.エリオットの詩が題の元ネタ。様々な音楽を想起させる不思議な音楽進行。取り留めの無い楽想がぱらぱらある感じ。
どこか切ない感じのする展開は聴きやすく、あえて楽器間の音楽干渉を避けさせている構成も悪くないです。
2曲目は5音音階とカデンツァが大きな鍵を握る、ピアノがメインの曲。
どこか暴力的な、激しい勢いで音響的にも幅広い。細かなモチーフの配列から大きな構造を作り出すようにしているようです。
作曲者は1959年生まれでアンドレ・ラポルト、ドナトーニ、ファーニホウに師事、
ルーカス・フォスと交流があるようです。この曲もフォスに捧げられたもの。
3曲目もピアノメインですが、こちらはジャズの影がかなり濃い。
弦や木管が息の長いメロディーを演奏しながら、打楽器が空気を読まずに割り込んでくる。
ただその割り込み方はきちんと一貫していて、そこは音楽理論を研究している作曲者らしい。
この人ジェームズ・テニーに師事経験があるようです。
4曲目はいきなりカオスな音楽から開始、打楽器の瞑想と挟んで緊張感ある音楽です。
A♭のドローンがベースになって全曲を支配する印象的な曲。このCDの中では一番インパクトありました。
作曲者はジェフスキの補佐を大学で行っている人物らしい。
5曲目は、点描的な風景の中から、様々な音楽の断片がかすかに見え隠れする。
細かなスパンで収束しては散開する、目まぐるしい展開の曲。
作曲者はG.M.ケーニッヒに師事経験があるオランダの作曲家。
超廉価で買いましたが、まあまあの価値はあった・・・だろうか。
Romanian Rhapsody
Alexandru Flechtenmacher; Moldavian National Overture
Eduard Caudella; "Moldova" Overture
George Stephanescu; National Overture
Iacob Muresianu; Overture:"Stephen the Great"
George Enescu; Romanian Rhapsody No.1 in A major
George Draga; Concert Overture No.2
Romanian Radio Symphony Orchestra Carol Litvin,Con.
Cluj-Napoca Philharmonic Orchestra Emil Simon,Con.
Arad Philharmonic Orchestra Eliodor Rau,Con.
Olympia OCD 408
ルーマニアの作曲家による序曲・狂詩曲を集めたCD。メジャーなのはエネスコくらい。
こういうマイナー一直線の企画があるから、オリンピア、特にExplorerシリーズのものは大好きです。
フレクテンマケル(1823-1893)はウィーンでJoseph BohmやJoseph Maysederに師事した人物。
「モルダヴィア国民序曲」は優美な冒頭と、出自ならではの独特なリズム・旋律線を持つ溌剌とした音楽。
カウデラ(1841-1924)は、エネスコの才能を見出した存在としても有名な人間。
「モルドヴァ序曲」は民族調の短調な出だしから、1913年の作品としてはかなり古典的に音楽が進む。
シュテファネスク(1843-1925)はブカレストやパリでDaniel Fr.AuberやAmbroise Thomasに師事し、
ルーマニアとしては初のオペラや交響曲を書いた人物。
「国民序曲」は華やかな、けれど短調の出だしから、明るい音楽の展開。やっぱりまだ普通にロマン的。
このCDの中で、ムレシャヌ(1857-1917)だけはトランシルヴァニア出身。
「ステファン大帝序曲」は静かでメランコリックな音楽が暫く続き、後半いきなり軍楽調に。
エネスコ(1881-1955)は、わざわざここで紹介するまでも無いでしょう。
収録されている「ルーマニア狂詩曲第1番」も彼の代表作、いつ聴いてもこの終始軽やかな楽想は心地よい。
ドラガ(1935-2008)はAnatol Vieruらに師事した人。調べてみたらつい最近に亡くなっておられました。
「演奏会用序曲第2番」はパッサカリア形式を基にしながら暗く、神秘的に音楽が進行する。
ただ、現代の作品としてはかなりクラシカルな音楽。前衛さはあまりないです。
演奏は、少々古さもありますが、こういうマイナー曲演奏にしてはなかなかの水準。
エネスコの演奏も技術の粗に目をつぶれば、演奏の勢いなど、個人的にはかなり好みのものでした。
John Williams; The Five Sacred Trees
Toru Takemitsu; Tree Line
Alan Hovhaness; Symphony No.2 Op.132 "Mysterious Mountain"
Tobias Picker;Old and Lost Rivers
Judith LeClair,Fg. London Symphony Orchestra John Williams,Cond.
1997 Sony SK 62729
ジョン・ウィリアムスのバスーン協奏曲は、題に倣って5楽章制。
バスーンソロから次第に劇画チックにかっこよく盛り上がる。
ヴァイオリンから速いモチーフを提示され、跳ねるような音楽が激しく進み、パセティックな音楽へ。
不穏げな4楽章をさっと過ぎると、3楽章と1楽章を足したような流麗世界。
武満徹の「ツリー・ライン」は1988年の作品なので、響きがかなり豊潤になってからの作品。
初期のような厳しさはなく、幻想的な響きに素直に酔いしれることができます。やっぱり武満はいいねえ。
ホヴァネスの「交響曲第2番「神秘の山」」は、もちろんのごとくホヴァネス節全開。
コラール風のエキゾチックな響きの音楽にチェレスタなどがきらきらと煌く。
このド直球の、ちょっとカルト入ってる音楽が自分は結構好きです。この2番は初期傑作と言えるでしょう。
ピッカーの曲は、短い感動的な小品。まさに「非常にロマンティックでノスタルジック」な音楽です。
演奏は、選曲に良く合う豊かな響き。ソニーの遠い録音は趣味じゃないけれど、繊細なところは好きです。
GROUP 180
Tibor Szemzo; Water-Wonder
Steve Reich; Music for Pieces of Wood
Laszlo Melis; Etude for Three Mirrors
Frederic Rzewski; Coming Together, Attica
Group 180
1983 Hungaroton HCD 12545
ハンガリーの団体「グループ180」によるミニマル・ミュージック集。
ティボル・セムゾーの「水の不思議」は録音とライヴのフルートによる曲。
単音の繰り返しから徐々に音が増えていく様は思い切りライヒのクラッピング・ミュージック。
やがて波紋のように細かな5拍子のフレーズが混和していき、フェードアウトする。この終わり方、クラシカルな音楽じゃありえないよね。
スティーブ・ライヒの「木片のための音楽」は、彼の作品ではマイナーなほう。
内容はほぼ完全にクラッピング・ミュージックと同じ。ただあれよりは音も展開も多いのでのんびり楽しめます。
ラースロー・メリシュの「三つの鏡のためのエチュード」は冒頭のピアノがライヒのエイト・ラインズそのまんま。
長いメロディー主体の中間や勢い激しい部分など、ミニマルの中で頑張って古典音楽のノリを出そうとしてます。
でも基本のリズムが何も変わらないから、残念ながら大して変わってません。
「カミング・トゥギャザー」はジェフスキらしい、アメリカ的開放感溢れるはきはきしたミニマル。
ピアノ主導のビートに語り手が加わります。聴いてて楽しいけれどそんなに良い曲とは正直思えない。
こういう彼の政治的意識が関わっている作品は、自分みたいな政治不信の人間には苛々してしまう概念なのが残念。
ジェフスキ二発目「アッティカ」も大して変わりません。ピアノメインのほのぼのしたメロディー、微妙に歌う語り。
概略を見てみると、ライヒ一派vsジェフスキみたいな感じ。
マイナー作曲家二人はライヒの影響から抜け出せていなくて、そのため聴いてて楽しいけれど独自性ではジェフスキに負けます。
でもジェフスキも「不屈の民」だけで十分な気がしなくもない。ただ「パニルジュの羊」はいつか聴きたいなあ。
Post-avant-garde Piano Music from the ex-Soviet Union
Alexandr Rabinovitch; Musique triste, parfois tragique , Pourquoi je suis si sentimental
Arvo Part; Variationen zur Gesundung von Arinuschka, Fur Alina
Georgs Pelecis; Jaungada Muzika
Tigran Mansurian; Nostalgia
Valentin Silvestrov; Kitsch-Musik fur Fortepiano
Alexei Lubimov,Piano
BIS BIS-CD-702
ロシア出身の著名ピアノスト、アレクセイ・リュビモフが贈る、東欧諸国のポスト前衛音楽・ピアノソロ作品。
アレクサンドル・ラビノヴィチ(1945-)は以前作品集を買って(まあまあだな)といった感想を持ってましたが
今回もやっぱり大差ない感想。「Musique triste,〜」は古典的なピアノ作品の切れ端が顔を覗かせつつ、
どれかというとグラス的なミニマルさをもって流麗に聞かせます。
アゼルバイジャンはバクー出身の、カバレフスキーらに師事経験のあるこの作曲家の曲は、私には可もなし不可もなしといった所。
ペルトの2作品は非常に短いですが、どちらも彼のピアノ作品としてよく演奏・録音されますね。
素っ気無く、静かで、非常に透明感ある作品。
実はこのCDの中で一番期待していたジョルジ・ペレーツィス(1947-)。以前やはりリュビモフのピアノでの
「コンチェルト・ビアンコ」を聴いて、普段はどんな作風なんだろうかと思っていました。
・・・うん、普段もあれと大差ない感じみたいですね。でもお陰でこの曲もお気に入りに追加。
最初は、まるで何かのBGMみたいな非常に「クラシカル」な音楽。なんですが、そこにさりげなく別ジャンルの感覚が割り込んでくる。
ジャズのようなリズム感覚、ロックやポップのようなシーンがぽろぽろ。主にはインスト・ロックの面影が濃いです。
解説では他にクラウス・シュルツのような電子音楽も挙げていますね。
マンスリアン(1939-)だけ、このCDの中では初めて聞く作曲家。
アルメニア、ベイルート出身。コミタス・コンセルヴァトール等で音楽を学びLazar Saryanに師事したそうです。
曲は、さまざまな音楽の断片がぱらぱらとちりばめられた、間の多い作品。
ショパン、ドビュッシーにウェーベルンの影響を語る作曲者らしく、聴こえてくる断片は古典的だったり現代風だったり。
ヴァレンティン・シルヴェストロフ(1937-)の曲は相変わらず綺麗。
シューマン、ショパン、チャイコフスキーなどの音楽を真似た構造で音楽を書き、聴き手に「覚えているか」と喚起を促す。
終始非常に静かに音楽は進み、どこかノスタルジックな感覚にもさせてくれる良い作品です。
最後はまたラビノヴィチ。いかにもセンチメンタルな感じのクラシカルな曲。こういうあからさまなのはちょっと・・・
とりあえず、ラビノヴィチ以外は良い収穫でした。
Wings - Gulda Symphonisch
Friedrich Gulda; Wings - A Concert Piece for Solo Violin, String Orchestra and Rhythm Section
Concertino for Players & Singers
Roland Batik; Blues in F
Mozart;Fantasy KV 397 - Roland Batik; Interlude
Benjamin Scumid,Vn. Roland Batik,P. Heinrich Werkl,E-Bass Fredvard Muhlhofer,Drums
Wiener Motettenchor Ensemble "Die Reihe"
2005 ORF CD 420
1曲目、「Wing」。ヴァイオリンのチューニングから曲は始まり、それがやがてソリスティックになって山を築く。
その頂点から弦楽の伴奏が少しだけ参加するが、6分過ぎまではずっとソロ。
そこからようやく、ちょっとムード音楽してる、タンゴみたいなものが登場。それをしばらくやるとまたソロ独奏、もう良いよ。
そこから今度はロック調の音楽が現れる。ギターやベースも入りながら盛り上がり終了。
「ブルース」はごく普通のピアノソロ。聴きやすく、それっぽい感じ。
「間奏曲」はモーツァルトの曲をベースにBatikがアレンジしたもの。う〜ん、まあ楽しい人には楽しいか。綺麗だし聴き流せる。
最後のグルダは最初からハイテンションでファンキーにいきます。合唱が入りながらドラマチックに進みます。
2楽章はボサノバ風ジャズからクラシカルな合唱に入り、落ち着いたまま静かにブルースに展開して幕を閉じる。
3楽章は古典的なクラシックのメロディーがポップに跳ね回る。素直に乗れて楽しい。
演奏、音が遠い。まあライヴ録音なんだし多めに見よう。録音もよくないし。
ただ強奏の迫力が無いのは単純に演奏に力が無いだけだと思います。
Modern Masters I
Miklos Rozsa(1907-95); Tripartita for Orchestra Op.33
Morton Gould(1913-96); Folk Suite
Gian Carlo Menotti(1911-2007); Triplo Concerto a Tre
Marc Lavry(1903-67); Emek -Symphonic Poem
London Simphony Orchestra David Amos,Con.
1990 harmonia mundi HMU 906010
初期ハルモニア・ムンディの現代アメリカ?音楽シリーズ、記念すべき第1弾。
ミクローシュ・ロージャ(ミクロス・ローザとも)の「管弦楽のためのトリパルティータ」は彼後期の管弦楽作品。
力のある激しい旋律、不穏げな間奏曲、それらが技巧的な構成にうまく組み込まれています。
さらに自身の出自であるハンガリー的な音楽背景が、
音楽に民族音楽的な色彩を与えて非常に個性的なものへ仕上がってますね。
特に第三楽章はかなり興奮できる、素晴らしい曲。
とても映画音楽をメインに作っていた人物の作品とは思えません。
モートン・グールドの「フォーク組曲」は彼らしい爽やかで明るい、まさにアメリカンな曲。
第二楽章「ブルース」ではサックスも使いながら、実に爽快で時には物憂げな音楽を聴かせてくれる。
ジャン・カルロ・メノッティの曲、タイトルを見て?と思った通りソリストが9人います。
コンチェルト・グロッソの形式を念頭に置きながら作られただけに、弦楽器・管楽器・ピアノとハープに打楽器という
3×3人のソリストが配置されている、というわけ。
曲の方は、ロマン的な影響が強い、流麗系のクラシック。こういうのはあんまり趣味ではない。
確かに技巧は申し分ないものだし、多分スコアなんかを手にして聴いたら分かりやすそうでまた感想も変わる曲なんだろうけれど。
以前Chandosの作品集も買ったことあるけれど、そちらも似たような感想だったしなあ。
最後のマルク・ラヴリーのみ初めて聴く作曲家。ラトビアはリガに生まれ、戦前はベルリン、
ナチス台頭後はスウェーデンなどを経た後にイスラエルに安住しました。この人だけアメリカ関係なし。
ここに収録された「交響詩「谷」」は彼の代表作。出身はリガですが、
曲のほうは素晴らしいまでの東洋的管弦楽作品。牧歌的で自由に歌う主題が楽器のなかを動き回る。
最後の方になると徐々に盛り上がり、激しく華やかな民族舞曲になります。
演奏、悪くないけれどそつなくこなしているレベルに留まっている。ロンドン交響楽団ってこんなもんだったっけ?
グールドなんかはもっと飛ばして欲しかった。逆にロージャなんかはいい感じ。
Heitor Villa-lobos; Bachianas Brasileiras No.4 - Prelude
Wagner Tiso; Gypsy Diaspora
Rio Tisa - Fiesta
Matanca do Porco - Trespontana Phapsody
Lenda do Beijo - Samson and Delilah
Zagreb
Cesar Guerra-Peixe/Clovis Pereira dos Santos; Mourao
Francis Hime; Fantasy for Piano and Orchestra
Orquestra de Camara Rio Strings etc.
2003 Biscoito Fino BF-573
リオ弦楽室内管弦楽団の音源を今までに出たCDから集めてきたもの。
ブラジル風バッハ第4番は彼独特の南米情緒溢れる穏やかで切ないバラード。有名な第5番より好きです。
ここからの4曲はWagner Tisoが編曲・まとめたもの。
2曲目は題から連想していた曲想よりは落ち着いていましたが、ゆったりしたテンポの中でもしっかり盛り上がっています。
編成がピアノメインの室内楽なのでかなりムード音楽。3曲目もそれが落ち着いた感じであまり印象は変わらない。
4曲目は最初の動機が荒々しくて印象的だったのに、その後がまた普通に戻ってしまった。
もっとも、こういうピアノの出番の多いバラードも良いけれどね。
5曲目はスタンダードな3+3+2拍子のタンゴ。ようやくアコーディオンが出てきます。
6曲目は短いけれど溌剌とした感じ。作曲者はなかなかブラジルの作曲界では有名だったようですね、交響曲とかが特に。
最後はこのCDの目玉、演奏時間12分の「ファンタジー」。作曲者自身のピアノ。全体としてはノリの良い感じです。
タンゴのムード音楽的な匂いを強く放ちながらも、その中にはクラシカルな曲の組み立て方が垣間見える。
この楽団のために用意された曲が多く、これはこれで一貫したタンゴの世界観が聴いていてとても楽しいです。
ムード音楽にもなる良い通俗さでした。
Bravura
Ottorino Respighi; Feste Romane
Richard Strauss; Don Juan
Witold Lutoslawski; Concerto for Orchestra
The Oregon Symphony James de Preist,Cond.
1987 Delos DE 3070
ローマの祭りは落ち着いたテンポでじっくり聞かせる。
特にソリスティックに聴かせるわけでも、音が一体となって押し寄せるような圧倒感も無いが、
音楽としてはよく纏まった、スムーズな流れを作り出せています。
そういう面から見れば、安心して聴くことができる演奏でしょう。バランスちょっと微妙かも。
ドン・ファンでもそんな感じ。特にずば抜けて巧いわけではないけれど、聴きたいところをしっかり押さえてきてくれる。
ルトスワフスキの管弦楽のための協奏曲は、1950年作の初期の傑作。
まだアドリブ律動とかの混沌とした手法をとる前のものなので、非常にはっきりした構成で聴きやすい。
演奏もしっかりした安定感は変わらず、楽しめました。
指揮者のデプリースト、のだめで知名度ランクが上がった感がしてしょうがないのですが、気のせいかなあ。
岡田知之 パーカッション・アンサンブルIII
岡田知之打楽器合奏団
1998 コジマ録音(ALM Records) ALCD 7047
西原大樹の「3×3」は疾走感激しい作品。マリンバの主題とチャイムの対旋律がさわやかに踊りあう。
カッコイイです。これ演奏会でやったら盛り上がるなあ。
作曲者は普通の打楽器奏者らしい(というかこの録音に参加してる)ですが、依頼が多い理由もうなずけます。
「草の葉」(小野正満)はホイットマンの詩に合う、前半膜質打楽器が主体の大草原なイメージの曲。
ちょっとアフリカンな気がするのは偏見かな。後半はドラム入って思い切りポップに。あーあ前半で止めとけよおい。
ブロドゥマンの「Greetings to Hermann」はトムとバスドラのみの渋い編成。こういう土俗的なもの好きです。
ただ実際に演奏する際にはジャズの感覚を要求されるそう。
ディネフの「Pleteniza」はリズムがちょっとくせのある曲。速いところは楽しいけれど、そうじゃない具像的楽章はそうでもない。
ローズの「Ogoun Badagriss」はブードゥーの儀式を基にした黒い曲。執拗なリズム反復、騒々しい膜質打楽器群が素晴らしい効果。
「さくら」のマリンバ編曲はまあ普通なもので、安心して聴けました。こういうのはやっぱり余計なものは要らないよね。
「花」のほうは・・・だからスイングしなくて良いってば。
水野修孝の「鼓」はこのCDの目玉。彼らしい激しく鋭いリズム展開。日本の伝統音楽風味で掛け声・合いの手が印象的。
盛り上がりのカオス的展開はさすが「交響的変容」を書いた人です。
あぁ、果たして「交響的変容」のCDが入手可能になる日は来るんだろうか・・・オークションで1万8千は無いですよ。
「Portico」(ゴーガー)は10分以上かかる長さ。比較的落ち着いた、どこか荘厳な空気も見せるタイトルどおりの曲。
「ティファナ・サンバ」(ブランド)はメキシカンな普通の曲。これ演奏機会が結構ない?気のせい?
最後はデイヴィスの「オリエンタル・マンボ」。打楽器アンサンブル初期の、本当に題通りのノリ良い曲。
このアンサンブルはリズム感覚が鋭くて、聴いててのれますね。録音も近くて熱気がよく伝わってきます。
Rhodri Davies, Ko Ishikawa
Compositions for Harp and Sho
Taku Sugimoto; Aka to Ao
Masahiko Okura; Torso
Antoine Beuger; Three Drops of Rain / East Wind /Ocean
Toshiya Tsunoda; Strings and Pipes of the Same Length Float on Waves
Rhodri Davies,Harp Ko Ishikawa,Sho
hibari music hibari-09
ロードリ・デイヴィスのハープと石川高の笙による、音響系作家の二重奏作品集。
杉本拓の「赤と青」は、サインウェーブみたいなハープの擦弦音と笙が重なり合いながらのびる。
互いの単音が、異なった間を持って伸ばされるので、どんどんずれていく。
最初から最後までEの音しか演奏されないので、聴いていて正直きつい。ルシエよりさらに単純な音楽。
大蔵雅彦の「Torso」は、笙が主体になって音を伸ばし、込み入った和音を提示する。
その合間を縫って、ハープの短音がぽつぽつと置かれていく。
点描的なハープと線的な笙の対比が、間の多い静寂の中で映える。
アントワーヌ・ボイガーはヴァンデルヴァイザー楽派の代表者的存在。
フェルドマンやケージの曲が持つ静謐さを、極限まで煮詰めすぎたような、非常に抑制された音楽を書きます。
この人が、このCDの中では一番現代音楽畑に密接な人でしょう。曲は・・・
開け放たれた録音スタジオドアの向こうにいる笙からの、微かな音。
その合間に、ぽつぽつとハープの音が小さく鳴らされる。
遠近感による、性質の異なった弱奏が、変化の少ない音に刺激を与えています。
静寂の多いこのアルバム中でも、際立って静かな曲。でも一番気に入った。
角田俊也の曲は、かなり加工を加えているので生演奏とは言い難い。
収録されている音楽は、僅かに違う2種のサインウェーブと、それに等しい笙とハープの音を干渉させている。
その結果現れた音の揺らぎのうち、一定の音圧以下を処理でカットしたもの。
そのため、聴こえてくる音は、だいたいは電子音パルス。
ハウリング音みたいなものが、形を変えきりきり鳴り響く。
収録作品のすべてにおいて、音楽と言うより音についての考察を再現したようなもの。
音楽として自分が楽しめたのは、大蔵・ボイガー両氏の作品でした。
The 1st Osaka International Chamber Music Festa
Maurice Moszkowski; Suite for Two Violins and Piano in G minor Op.71
Bohuslav Martinu; from "Three Madrigals for Violin and Viola"
Pablo de Sarasate; Navarra Op.33
Bela Bartok; From 44Duos, Bagpipes, Sorrow, Arabian Song, Pizzicato, Transylvanian Dance
Panco Vladiguerov; from"7 Symphonic Bulgarian Dances Op.23"
Guo Feng; Let me have a look at you again
Hu Yuan Jun; Two Ponds Reflect the Moon
Tian Ke Jian; The Dragon Boat
Shinji Tanimura; Star
Stankov・Radionov & Nestorova National Chamber Music Ensemble
Yomiuri Telecasting Corporation YC-9303
1993年、第1回大阪国際室内楽フェスタの様子を録音したもの。
まずはヴァイオリン、(曲によっては)ヴィオラ、ピアノのトリオ、スタンコフ=ラディオノフ・デュオとネストロヴァの演奏。
モシュコフスキの作品は、やぱりこういう作品を聴くと、堅実に音楽を書いていた人なんだなと実感する。
軽快な6拍子の第3楽章をはじめ、どこを取ってもロマンあふれるクラシック。
マルティヌーも、彼の時代としては穏健な甘美な作風。演奏者あたりがこういうの好きなのかな。
サラサーテの「ナバーラ」はちょっとマイナーな方。彼らしい技巧たっぷりの小粋な作品。
6分近くあるので、彼にしてはまあ長い方か。
バルトークの「44の組曲」からの抜粋はリズム要素の強いものを選んでいる。
ちょっとここらになると、聴かせ所に悩んでいるというか、技術的に微妙な部分が・・・。
ヴラディゲロフの「7つの交響的ブルガリア舞曲」からの抜粋は4+5拍子の快活な音楽。
選曲が舞曲中心であるところが、聴いていて飽きがくる原因かな。技術は、まあいいんじゃない?くらい。
続いては中国国立室内合奏団。当然全て中国の民族楽器の編成、6人組。
郭峰の「譲我再看[イ尓]一眼」はのんびりした明るい曲。次第に盛り上がってノリよく終わる。
華彦鈞の「二泉映月」はこの手のやつなら絶対入ってる超名曲。のどかな胡弓メインの曲。
田克倹 編曲の「龍船」は細かな装飾音が印象的な、きらびやかな曲。
谷村新司の「星」は、まあ彼らなりの親日表現ですね。良い感じに胡弓とかが歌ってくれます。
Astalos Dumitrescu Avram
Iancu Dumitrescu; Astree Lointaine, Holzwege
Georges Astalos; Symetries
Ana-Maria Avram; Archae
1993 Edition Modern ED.MN.1004
ドゥミトレスクのサックス協奏曲「Astree Lointaine」は期待を裏切らない過激な世界。
おどろおどろしい打楽器・低音群にサックスの破裂音がうねる。太古の原始世界を垣間見るような感覚です。
真っ黒な暗闇の中を赤々とした溶岩が流れ、辺りにしぶきが撒き散らされる。本当に異端的な音響です。
ソリストがドゥラングルなところも聴き所。伝統的な発音がされる所は全く無いけれど。
Georges Astalosの曲は正確に言うとドゥミトレスクとアヴラムによる共作。アスタロスの朗読に二人が電子音などを製作しました。
金属を擦った音に朗読が割ってはいる。声に極端な加工を施して原型が全く分からない音たち。
アヴラム自身の演奏による声のための作品は派手さは無いです。ひたすら細かに様相を変えながら要素が繰り返される。
どこか民謡的なメロディーが断片的に聴こえるので、音響面を除けば意外とまとも。
ヴィオラソロのための「Holzwege」はひたすらにかすれた音がほとんど同音の中で展開される。
ささくれた、枯野のような音風景が彼岸の世界のようです。
Works for Organ ・ Daniel Chorzempa
Richard Wagner/Edwin Lemare; Tannhauser, Die Walkure, Overture"Die Meistersinger von Nurnberg"
Josef Rheinberger; Cantilena
Eugene Gigout; Grand Choeur Dialogue
Louis Vierne; Scherzetto(No.14), Berceuse(No.19) from 24 Pieces en style libre
Leon Boellmann; Suite Gothique
Daniel Chorzempa,Organ of the Cadets' Chapel, West Point
Philips 416 159-2
名手ダニエル・コルゼンパによる、近代オルガン作品集withワーグナー。正直、最初のタンホイザー目当てです。
やっぱり「巡礼の合唱」は素晴らしいですね。思えば私がワーグナーを好きになるきっかけでした。
終始柔らかな音で幻想的に聞かせるあたり、わかってます。
「ワルキューレの行進」、流石に迫力はオケに及ばないけれどかなりの健闘ぶり。
「ニュルンベルグのマイスタージンガー前奏曲」、シンバル使ってますね。
この曲は以前から自分でも思ってましたが、冒頭はオルガンに合いますね。この荘厳さが。
ラインバーガーの「カンティレーナ」はソナタ第11番から。非常に美しい、夢見るような世界。
Gigoutの曲は一転、タイトルらしい壮大な曲。オルガンの格好良さがよくわかります。
ルイ・ヴィエルヌの曲は昔CD聴いたことがあったけれど、何を聴いたのか忘れました。
曲は何の変哲のない、素朴な曲。個人的には子守歌のほうが好き。
Boellmannのゴシック組曲は最初のコラールがお気に入り。やっぱり私は、こういうのが好きなんだなと改めて実感。
Roberto Aussel plays 20th Century Music
Francis Kleynjans; A l'aude du dernier jour
Manuel Ponce; Sonatina Meridional
Alexandre Tansman; Cavatina
Joaquin Rodrigo; En los trigales, Fandango
Alberto Ginastera; Sonata Op.47
Roberto Aussel,Guitar
GHA 126.007
ブエノスアイレス出身のギタリストによる、20世紀のギターソロ作品集。ヒナステラ目当てで購入。
Francis Kleynjans(1951-)はフランスのギタリスト、作曲家。
「At dawn of the last day」は、パルスのようなリズムの印象的な短い「Wating」と、
特殊奏法を多用した冒頭で始まる、なまめかしい「Dawn」からなる内省的な10分ほどの曲。
マニュエル・ポンセの曲は彼らしい素直な南米情緒漂う、3曲からなる音楽。
BGMにも合う、洒落た感じ。やっぱり彼の作品はそんなところが魅力ですね。
タンスマンも小粋な小品集。これで(パリに行ったとはいえ)出身がポーランド、作曲家は面白いなあ。
ロドリーゴの2曲は、どちらも独特の内気さ、というか暗さがふりかかった憂いのある曲。
お待ちかね、ラストを飾るヒナステラのギターソナタは、落ち着いた演奏。
まあ、それ以前の演奏もかなりクールなものだったので熱狂的なものは期待していませんでしたが。
むしろ繊細に、ヒナステラ独特の微妙に前衛的な音楽を作り上げていく手腕には好感を覚えました。
ただ、なぜ3-4楽章だけトラックが分かれていないんだろう。アッタッカでもないのに。
SO Percussion
Evan Ziporyn; Melody Competition
David Lang; The So-Called Laws of Nature
2004 Cantaloupe CA21022
SOパーカッションEによる、エヴァン・ジポリンとデイヴィッド・ラングの打楽器作品を収録。
「Melody Competition」は明るい感じののんびりした曲。落ち着いた音で穏やかに断片が演奏されていきます。
構造的にも使用楽器としても、ちょっと東洋的、かつ民族的。
大きな流れや盛り上がりは特に感じられませんが、そわそわと小気味良く動いていく音は聴いていて楽しいです。
「The So-Called Laws of Nature」は3楽章制。
第1曲は木片によるテンポがゆらぐ、ミニマルな音楽。音色的にも曲調的にも変化が乏しく非常に始原的。
第2曲はどこかの地方の金属楽器。仏教的・アジア的響き。綺麗な音で、これはトリップできる。
後半はトムや騒々しい金属音も加わりさらに土俗的・儀式的な色合いを強めていきます。
第3曲は、木片と金属楽器によるきらきらした音楽。だんだんクラベスも入りつつ、星が瞬くように全曲を閉じる。
民族的でフリーな感じのミニマル音楽。
George Butterworth; A Shropshire Lad, Two English Idylls, The Banks of Green Willow(Idyll)
Frederick Delius; Irmelin:Prelude, The Walk to the Paradise Garden, Brigg Fair
Percy Grainger; Brigg Fair
Mark Elder,Cond. James Gilchrist,Tenor Halle & Halle choir
2003 Halle Concerts Society CD HLL 7503
ジョージ・バターワースとフレデリック・ディーリアス。
この二人は近代英国作曲家の中で最も気に入っている作曲家たちです。あとはホルストくらいかなあ。
バターワースは第一次世界大戦で31歳にして命を落とした早世の作曲家。
残された作品は僅かですが、そのどれも素晴らしい出来です。ここでは彼の現存する全管弦楽作品が聴けます。
1曲目「シュロップシャーの若者」や3曲目「青柳の堤」を聴けばわかるように、甘美で夢見るような作風が満載。
逆に「2つのイギリス田園詩曲」はのどかでありながら華麗な、彼なりの舞曲的側面が伺えます。
もし彼が生きていて作品を作り続けていたら、果たして私たちにどんな曲を聴かせてくれたのでしょうか。
ディーリアスは、その方向性をさらに推し進め完全に自分の世界にした感じ、と言っても良いでしょう。
このCDの「イルメリン」序曲、「楽園への小道」、「ブリッグの定期市」でもその夢見る、とろけそうな甘さは絶品。
その見事なオーケストレーションも素晴らしい仕事ぶり。近年は随分評価されてきて嬉しい限りです。
二人とも、指揮者のエイドリアン・ボールトが熱心に演奏してくれたお陰で知られるようになりました。
この調子でイギリス近代音楽もいろいろと光が当たって欲しいものです。
グレインジャーの合唱曲「ブリッグの定期市」と、その原曲がおまけみたいに入っていますね。
原曲のほうは1908年に録音された非常に価値のあるもの。
民謡採集に熱中したバターワース、グレインジャーらの時代を思うのにとても良い、粋な計らいでもあります。
ピアノ・シュロス コンチェルト・シリーズ Vol.1
Piano Schloss Concerto Series Vol.1
Kosyu Hirayoshi; Piano Concertino for Children
Nobuyoshi Koshibe; Piano Concerto by the Theme of "London Bridge"
Nobuyoshi Inuma; "An Episode" for Piano and Orchestra
Michio Mamiya; Volks Konzert
ズビグニェフ・ラウボ、ピアノ シンフォニア・ヴァルソヴィア フォルカー・シュミット=ゲルテンバッハ指揮
International Piano Schloss Assosiation(Deutsche Grammophon Educational) IPSA-1001
子供たち向けのピアノ協奏曲レッスンのために作曲された曲たちの参考音源、記念すべき第1巻を音源だけ入手。
平吉毅州の「こどものためのピアノコンチェルティーノ」は2楽章制。
5/8と6/8によるまさにロマンチックな、イージーに聴けるきれいな曲。
第2楽章はその雰囲気を保ちつつ、軽快なワルツへ。劇伴にありそう。ジブリ的なファンタジー世界に凄くマッチしますよこれ。
越部信義の「ロンドン・ブリッジによるピアノコンチェルト」はもちろん「London Bridge's Fallin' Down~」のあれです。
いろいろと変奏が繰り広げられる。作者いわく日本風や沖縄風な変奏もあるらしいけれど、そこまではっきりとはしてない。
きちんと西洋的な音楽の範疇に収まった「風」なので、チープさが最小限に抑えられている点はさすが。
飯沼信義の「エピソード -ピアノとオーケストラのための-」は古典的なクラシカルさ。「ロマン派の様式を前提に」した通りの響き。
ドラマチックな音楽で、ピアノパートもけっこう動きながらも基本事項をしっかり押さえている。
間宮芳生の「村人たちの協奏曲」はモーツァルト風序奏と民族風舞曲、メランコリックな中間部と雰囲気のころころかわる、あっさりした曲。
とはいえ、どの曲もなかなか面白い出来で楽しめました。特に平吉・間宮の両名は有名なだけあって構成もなかなか。
レッスン用教材なんだな、と実感させるのはそのトラック。各曲それぞれのオケ伴奏のみのテイクが入ってます。
演奏は、線の細い、豊かな響きには相性のいいシンフォニア・ヴァルソヴィア。
Festspill CD 2006
Sverre Indis Joner/Trad. arr: Gringo No.1(Dovregubbens Hall)
Ole Bull; Et Saeterbesok
Edvard Grieg/Per Arne Glorvigen; Cradle Song Op.68-5
Wolfgang Amadeus Mozart; Piano Concerto No.9 I., Violin Concerto No.3 II
Mgnus Lindberg; Feria
Jean Sibelius; Violin Concerto Op.47 III.
Nils Okland; Grataslag
2006 Pro Musica PPC 9057
今までにいろんなレーベルから出た北欧関連の音源をまとめたもの。
明らかにマグヌス・リンドベルイが聴きたかっただけ。
最初はいきなりタンゴで開始。ちょっと待てよこれ何なんだ、と思ったら知ってるメロディーがようやく出てきた。
グリーグのペールギュント、魔王の曲の編曲でした。ちょっとびびらせないでくれよ。
オーレ・ブルは19世紀の著名ヴァイオリニスト。とても綺麗な北欧的田園風景。
3曲目、グリーグのバンドネオン編曲がこんなに合うなんて以外でした。のどかな光景が目に浮かぶ素晴らしい演奏。
モーツァルトの抜粋はピアノ協奏曲の総北欧勢によるものの、簡素で鋭い響きが気に入りました。
リンドベルイの曲はやっぱり凄い。この曲も20分近い大作であるのに一気に聴いてしまう。
細かなテクスチュアに独特の言い回しがカッコイイ。今回は「祭り」の題どおり、全音階的要素で明るい雰囲気を持つ断片が数多い。
それでも、ずっと緊張感を持っていく手腕は流石です。彼の作品で一番好きですね。ユッカ=ペッカ・サラステの指揮もさすが。
シベリウスの曲。こういう土俗的なリズムの曲も上品さ漂うのがいつ聴いても北欧的だと思ってしまう。やはりシベリウスは偉大です。
Nils Oklandはフィドル系の演奏者のようですね。この音源ではケルト調な趣があるヴァイオリンを披露してます。
Le mejor de Enrique Batiz 3
Manuel Ponce; Concierto para violin
Blas Galindo; Sones de Mariachi
Silvestre Revueltas; La Noche de los Mayas
Jose Pablo Moncayo; Huapango
Henryk Szeryng,Vn. Royal Philharmonic Orchestra
London Philharmonic Orchestra Orquesta Sinfonica del Estado de Mexico
2000 Luzam EB-2002-3
バティスといえば南米、ということでエンリケ・バティスのアルバム・メキシコ盤。
ポンセの「ヴァイオリン協奏曲」は、この時期の作曲家の曲としてはかなり洗練された響き。
ギター協奏曲のイメージが強い自分としては、新鮮に聴けました。
もちろん明るい部分もあるけれど、かなり技巧的というか、当時の先鋭的な響きが。
ガリンドの「マリアッチのしらべ」はノリの良い激しい曲。終始ハイテンション、バティスの演奏が良く似合う。
レブエルタスの「マヤの夜」は彼の代表作。
指揮者のおかげで、ハイテンションな良い仕上がりになってます。
ただ、音にそこまで重みがなかったりするので、意見がかなり分かれそう。
モンカーヨの「ウァパンゴ」も代表作。壮大かつ明るい、直系の南米音楽。
やっぱりどれも押しのある派手な音で鳴らしてくれるバティスは性に合う。
もちろん響きが薄いとか、批判ももっともだと思うけれど。
高橋アキの世界 I 〜Aki Takahashi Piano Space I
武満徹;遮られない休息、ピアノ・ディスタンス
湯浅譲二;コスモス・ハプティク、オン・ザ・キーボード
佐藤慶次郎;ピアノのためのカリグラフィー
松平頼暁;ピアニストのためのアルロトロピー
水野修孝;韻 〜ピアノのための
高橋アキ、ピアノ
1995 EMI 18MN-1015
現代音楽といったら外せないピアニスト、高橋アキのデビュー盤。
「遮られない休息」は3曲構成の小品集。第1曲だけ最初期の作品なのでちょっとぎこちなさがありますが、
それ以降、デビューしてからの2曲は洗練さ・統一感が現れていて(武満だな)と思わせてくれます。
「ピアノ・ディスタンス」は武満のピアノ作品としては珍しく、クラスターなどの奏法が使われていて、彼にしてはかなりアグレッシブ。
「コスモス・ハプティク」はメシアンのMTL(移調の限られた旋法)との関連性が深い、確かにその音楽と響きが似ている音楽。
高いCのオクターヴなど、冒頭の高音の連打が印象的。
ただし、全体的な流れとしては散文的な(「不確定性」を用いたかのような)音楽を1957年に作っているのは凄い。
この時期から既に、湯浅独自の「内触発的宇宙」の概念がはっきりと現れていますね。
「オン・ザ・キーボード」は同音連打から徐々に動きが激しくなり、クラスターの爆発が増えていきます。
どんどんと音の中でエネルギーが渦巻いていくような、緊張激しい音楽。
それにしても、曲の題や契機が、ピアノの内部奏法に否定的な日本の会場管理者への皮肉とは良いですね。
佐藤の曲は、表面的に見ればセリー風の厳しい音楽ですが、根底には違うものが流れていることが傾聴することで理解できます。
沈黙と発音の境界の慎重さ、細かなペダルやテンポの設定などは確かに厳しさを感じさせます。
けれど、曲の意図について「<純粋な生命力>の把握」と述べている作者の言などからすれば、
これは東洋的な世界観をより正確につかみとろうとする作者の気持ちの表れなのではないでしょうか。
松平頼暁の曲は音のパルス的な扱いが中心に据えられた作品。
パルス音形がクラスター、音の幅、ペダリング、発声などにより全8部の中で様々に様相を変えていく。
最後にいきなりショパンの「雨だれ」が引用されかき消される部分は、違う世界を同時に見せられたようで聴き手をはっとさせてくれます。
水野の作品は鐘の鳴るさまを念頭に置いて作られた、彼の数少ないピアノ曲。
和音強打が多く、音響的な面の展開がメインです。強く広い響きを持った、7つの部分からなる13分の曲。
にしても、やっぱり彼は音響面の興味が非常に強い作曲家ですね。千個の鐘を使った作品作りたいってどんなだよ。
イーゴル・ストラヴィンスキー;結婚
モーリス・オアナ;カンティガス
Igor Stravinsky; Les Noces
Maurice Ohana; Cantigas
ロランド・ハイラベディアン指揮 ストラスブール・パーカッション・グループ コンタンポラン合唱団
ミレイユ・ケルシア、ソプラノ ローラン・コニル、ピアノ ほか
ROland Hayrabedian,Cond. Mirelle Quercia,Sop. Roland Conil,P. etc.
1990 Pierre Verany/ビクター VICC-21
ストラヴィンスキーのほうは「春の祭典」のような原始主義をはっきりと見て取れます。
ピアノ4台と4人のソリスト、合唱に打楽器とかなり地味かつ特異な編成ですが、かなり派手な構造。あとロシア語版の録音です。
やっぱりストラヴィンスキーはこういう土俗的な曲が私の趣味にあっていますね。「兵士の音楽」とかも好きだけれど。
ただ、実際この曲は編成などをみると後の新古典主義に通ずる面を見つけることが出来ます。
オアナは以前から注目していましたが、曲を聴くのはこれが初めて。
神秘的な合唱から始まり、アンサンブルが抑えながら参加してくる。
美しく、内面的で妖しげな素晴らしい曲です。前衛的ではないが、個性的。もっと早くから聴いておくんだったなあ。
民族的といえば一番近いんでしょうが、どのジャンルにも属さないような浮いたメロディーが印象的。
演奏は、透明感と無骨さと、双方を曲に合わせて上手く表現した安心できるもの。
ただ、録音は編集点がばればれ、そりゃないよ・・・特にオアナの曲。
Xenia Narati Moondog Sharp harp -Strings for Kings
Alonso Mudarra; Fantasia en la manera de Ludovico
Louis Hardin; Art of Canon,Book1No.4,8 Book3 No.6,20 Book5 No.8,9,14 ,
Elf Dance, Troubadour Harp Book -Pastorale, Sea Horse, Chaconne in A, Mazurka, Fleur de Lis
Lucas Ruiz de Ribayaz; Hachas
Antonio de Cabezon; Pavane and Variations
Francisco Fernandez Palero; Romance
Ottorino Respighi,arr.; Italiana, Siciliana, Passacaglia
Xenia Narati,Harp
2006 Ars Musici AM 1404-2
ハープ奏者のクセニア・ナラディによる、一見びっくりする組み合わせのアルバム。
古楽の美しさは言うこと無し、心が洗われるようで気持ちいいです。特にMudarraの曲はノスタルジックで素晴らしい。
レスピーギ編曲の「古風な舞曲とアリア」第3組曲から1,3,4曲目がハープ版になって収録されてます。
流石にこれは原曲の方が表情豊かだし好みかな。まあ健闘してます。ただアルペジオ多すぎじゃあないかな。
このCDの売りはなんと言ってもムーンドッグことルイス・ハーディンの曲がハープで聴けることでしょう。
ムーンドッグはマンハッタンの路上などで何十年もライヴを続けた盲目の音楽家。
ジャンルを超え様々な要素が現れる彼の自作楽器・笛などによる音楽はその後の音楽シーンに大きな影響を与えています。
遊吟詩人的な要素のある曲たちをナラディがセレクトしてみたようですね、ムーンドッグ選ぶとはやるなあ。
聴いてびっくりしたこと、カノンのシリーズはハープ独奏で聴くとびっくりするほど古典的で普通の曲に感じる。
やはりムーンドッグはきちんとした音楽地盤の上にあの独特の世界があるのだなあと理解します。
第5巻9番のような遅いロマンスみたいな曲があったり侮れない。
PastoraleやSea Horseなどの曲では彼らしいモンド音楽とクラシカルな響きが混和してほのぼのした音楽になってます。
最後のFleur de Lisは打楽器使用。これはチャンス・オぺレーションと5拍子の舞踏が混ざったような
ムーンドッグの凄さがこのアルバムの中で一番よく分かる曲。やはり彼は侮れない。
21世紀へのメッセージ Vol.2
藤家渓子;思いだす ひとびとのしぐさを
湯浅譲二;ピアノ・コンチェルティーノ
田中カレン;ウェーヴ・メカニクス
猿谷紀郎;透空の蔦
木村かをり、ピアノ オーケストラ・アンサンブル金沢 岩城宏之、指揮
1995 Deutsche Grammophon POCG-1860
オーケストラ・アンサンブル金沢と岩城宏之によるシリーズ企画、2年目の音源。
湯浅以外は、3人とも60年代前半の生まれ。
藤家の作品は、様々なテキスチャが目まぐるしく交錯する、せわしない曲。
けれど、よくある混沌とした音楽ではなく、スマートに全体が見通せる点が特徴的。
彼女の作品は、そういった「透き通ったきれいな響きというイメージ」が独特の音楽を作っています。
湯浅の作品は、初期の音楽とは比較にならないくらい温厚な響きの曲。
ロマン派的な美しさを持ちながら、ピアノとオーケストラが共鳴しあう。
こういうのは響きの綺麗さに浸って聴けるのでいいですね。
弦の細やかなノイズドローンから始まる「ウェーヴ・メカニクス」は、ヴィブラフォンの印象的な経過句から
トレモロや管楽器の小爆発を通して、徐々に音が撹拌されていく。
音響を非常に重視した、初期の彼女らしい作品ですが、この曲ですでに、作曲者の感覚や
聴き手への(聴きやすいように、僅かだけれど)譲歩など近年の作風への萌芽も垣間見えます。
猿谷の曲は、木星への彗星衝突を契機(自分の体験した史実だとなんか時代を感じるなあ)に作曲された、
音の集合・離散・射影や軌跡に注目して作り上げられたもの。
錯乱したかのような音たちがくるくると動き回る。
一つのモチーフが見方を変え、様々な方角から自分たちが見ているような、そんな展開。
あくまでも聴こえる音の全体的な印象は、乱暴ではないです。むしろしなやかな方。
A Sonic Experience with Martha Folts at Harvard
Gary White; Antipodes I & II
Pozzi Escot; Fergus Are
Robert Cogan; No Attack of Organic Metals
Alan Stout; Study in Densities and Durations
Martha Folts,Organ
(DELOS RECORDS INC., CA D/QA-25448)
Delosから昔出ていた、現代オルガン作品集のブートCDR再発。
マイナー、というかどちらかというと無名に近い人ばっかり。CD(LP)自体についても情報が殆どないし。
Gary White(1937-)は、アイオワ州立大学の教授をしてる人。
なかなかショッキングな、静と動の対比著しい、緊張感溢れる音楽。中間部の、静かなドローンが次第に崩壊していく様子は良い。
Pozzi Escot(1933-)の曲は点描的な音楽、かと思いきやいきなり激しいクラスターのドローン。
なかなかぶっとんでます。オルガンを手で叩いたり?といった特殊奏法のリズムも出てきたり。
Robert Cogan(1930-)の曲、ドローンにいきなりテープ録音されたノイズが絡んでくる。
相当な実験音楽。オルガンの爆発とノイズのささくれが、徐々に一体化して襲ってくる。
はっきり言って、現代音楽リスナーより音響やノイズのリスナーに聴いてほしい。すげえ、異常すぎる。
Alan Stout(1932-)の曲は、静かなドローンに時たまグリッサンドなどの動きが絡んで進む。
後半はクラスターだらけの、ノイズ・ドローン作品としても聴けるくらいの圧倒的な曲。
殆ど知られていないのがもったいない位の素晴らしい内容です。
欠点は一つ、音質が悪すぎる。LP再生をそのまま焼いているせいで、あのレコードノイズが常時うるさい。
音割れもけっこうあるし、もうちょっと慎重に録音し直してもらいたかった・・・
Bach-Jose-Ginastera
J.S.Bach; Sonata, BWV 1001
Antonio Jose; Sonata para guitarra
Alberto Ginastera; Sonata for Guitar Op.47
Beata Bedkowska-Huang,Guitar
2004 Ars Musici AM 1395-2
ポーランドの女性ギタリスト、ベアタ・ベドコワスカ=ハンのアルバム。
バッハの曲は有名な無伴奏ヴァイオリンソナタをギターで演奏したもの。
もともとそうとも思っていたけれど、この演奏で聴くと特に、この曲はフォークな響きを持っているんだなあと思う。
バッハの曲の暗さと南欧古楽的な寂しさが、自分が混同しているだけなのかあるいは
ヨーロッパ的な同じ定礎を持っているのかわからないけれど、うまくかみ合って聴こえてくる。
アントニオ・ホセ(1902-1936)はクラシック音楽では無名に等しいですが
曲はごく一般的な、近代的ギター音楽。私の琴線には特にきませんでしたが、良い曲であるとは思います。
最後の楽章など溌剌としていてノれますが、私はやっぱりヒナステラの方が良いです。
独特の怪しげな曲調が演奏者の繊細な音とマッチして夕暮れのような情景がうまく表現されていますね。
力強くはないのが残念ですが、これはこれで素晴らしいです。
フレキシブルではっきりとした演奏、風通しが良くクールに聴けました。
Toward the Sea
ドメニコ・ガブリエリ;チェロソナタト長調、イ長調
J.S.バッハ;無伴奏チェロソナタ第1番ト長調
武満徹;海へ
ジョージ・クラム;無伴奏チェロソナタ
Yohei Asaoka,Vc. Richard Stone,Lute William Anderson,Gui.
1999 Cou-Nal Classics CCCT-19991
東京芸大出身のチェリスト、浅岡洋平によるアルバム。
ガブリエリのソナタ2曲は短く古典的なバロック。気楽に聴けました。
バッハの名曲はかなりあっさり。自身の透き通った音に合うように、出きる限り余計な歌い回しを避けさらさらと弾いていく。
個人的にはこれくらいの方が好きです。ちょっと安全運転みたいな雰囲気もあるのが惜しいけれど。
武満の曲は、アルト・フルートのパートをチェロで演奏したもの。この曲はやたら人気がありますね。
これはこれで良い演奏ではありますが、やっぱりフルートの方が本来の響きにあっている気がする。
あの独特の、内省的で気だるい、それでどこか輝かしい音楽には、チェロは分が悪い。
クラムのソナタは、彼がまだブラッハーに師事していたころの、初期の作品。
まだ、後の彼のような神秘主義的な怪しさは影を潜め、古典的な構造の中で音楽が進んでいきます。
とはいえ、内向的で歌うような旋律線はやはり彼らしい。後期に比べれば荒くはありますが、これはこれで。
演奏もそんな曲想によく合ったものだと思います。
この人は基本的に線が細い演奏をするので、この選曲はなかなか的を得ていていいですね。
Knots
Fraser Trainer; Knots, ID
Between the Notes; Tangerine Dance, Lucky
Philip Oakey/Ian Burden; Love Action
Between the Notes Viktoria Mullova,Vn.
2005 Black box BBM1095
「Knots」はこういうバンドにありがちなロックとクラシックを折衷した曲。
なかなか粋で、騒々しいところはしっかり騒いでいる悪くない曲だけれど、ヴァイオリンをソロにするとなんだかありきたりでつまらないね。
逆に言えば、伴奏だけのところはなかなか聴けます。
「Tangerine Dance」はミニマルでノスタルジック。ギターの柔らかいアルペジオにチェロやサックスが歌い上げていく。
アンビエンスでなかなか良いです。
「ID」もやっぱりロックとクラシックの合いの子。さっきよりはフリーで暗めな感じ。
「Lucky」もミニマルな作風ですが、こちらは明るめで、コード変化の動きがあります。
中盤はだんだんロックになってきて自分好みからは外れてきました。でも前半は悪くない。
最後の「Love Action」は80年代ポップスのアレンジ。
最初は素直な感じかなーと思ってたら、後半は結構旋律が絡み合ってぐちゃぐちゃしてます。
ヴァイオリンのヴィクトリア・ムローヴァはかなり有名なヴァイオリニスト、こういうのに参加するような人だったんだ。
日本の現代管弦楽作品集
NHK交響楽団 外山雄三、指揮 他
1991 CBS/SONY CSCR 8375~7
1982年、尾高賞30周年の記念演奏ライヴ3枚組み。大体時系列に沿った収録で大きな流れがすんなり読み取れます。
一枚目は「木挽歌」以外戦前の、有名作品どころばかり。
山田耕筰の「曼荼羅の華」は最初期の日本管弦楽作品。
リヒャルト・シュトラウスのような和声感覚が著しいもので、いわゆる日本らしさは全く感じられません。
けれど、こんなものが第一次世界大戦前に作られていたということが凄い。やや陰鬱な響きを持った非常に綺麗な曲。
逆に、近衛秀麿の「越天楽」は純日本的な響き。原曲の響きを本当にそのまま引き出せているところがいつ聴いても凄い。
こういうものこそが本当の編曲なんだなあと思ってしまいます。
伊福部昭の「交響譚詩」は土俗的な激しいリズムが特徴的ですが、メランコリックな要素が特に強いです。
やけにトロンボーンがうるさい。伊福部マニアじゃない限りこのCD無理して探さなくて良いんじゃないかな。誰に言ってるんだ俺。
早坂文雄の「左方の舞と右方の舞」あたりまでくると西洋的・東洋的な概念がかなり高次元に混合されてきますね。
ちょっとこの演奏は散漫というか骨張ってないだろうか。もっと精緻な方がこの曲に合うと思う。悪くない演奏だけれど。
小山清茂の「管弦楽のための木挽歌」だけ50年代の作品。日本の民族情緒が前衛的な手法に盛り込まれた良い曲です。
これはノリ的にもなかなか雰囲気が良いですね。総じて残響が少ない録音だけにこういう曲が合います。
尾高尚忠の「交響曲第1番」は戦後間もない頃の作品。
非常にオーストリア的な西洋音楽を見事な筆捌きで描いています。
未完の交響曲の第一楽章ではないかという話ですが、もし完成していたら日本人としては類を見ない壮大さをもつ曲になっていたでしょう。
小倉朗の「交響曲 ト調」は作者の言葉通りバルトークやシェーンベルクの影響が濃い曲で、とくにリズム面などが特徴的。
ただ、全体的に調性の通りの明るい雰囲気で満ちており、聴いていてとても楽しいです。聴いてよかった。
芥川也寸志の「チェロとオーケストラのためのコンチェルト・オスティナート」は以前から気に入っていたもの。
妖しげな緩除部分と急くような部分との対比が印象的な、雰囲気は暗いですが構造は簡素明快な作品です。
入手が一番簡単なFontecの録音は正直演奏も録音も微妙だったんですが、こちらはなかなか端正にまとまっていて好感が持てます。
熱気とか派手さは前記のものに比べてありませんが、これはこれで一貫した音楽観を持っていて素晴らしい。
この曲独特の、オスティナート性に裏打ちされた妖しさが存分に堪能できる演奏、これだけでも買った価値ありますね。
外山雄三の「ラプソディー」は今更説明する必要の無い超有名曲。
手法こそ近代的ですが前衛的では無いので気軽に楽しむのが良し。
N響のお得意曲なだけあって手馴れた感じのある実に楽しい演奏。瑕もけっこうありますが、それでもこの演奏は良いものです。
逆に言うと、他の曲ではどうも曲に慣れている感じが少なくてぎこちなさが・・・
三善晃の「ヴァイオリン協奏曲」は彼初期の代表作であり、傑作でしょう。
ディティユのような和声がとくに顕著な、わかりやすい古典的展開を見せるとっつきやすい曲。
特に第2楽章は、最近の作風とはちょっと違う、クラシカルでノリノリなオスティナート。
尾高惇忠の「イマージュ」は、冒頭現れる簡単な音列から徐々に波紋が広がるように管弦楽が興奮していきます。
複雑で重厚な和音が多いですが、並立してメロディが進行することが少なくいたってシンプルなので聴いていてちょうど良い味付けに。
吉松隆の「朱鷺によせる哀歌」は彼の出世作にして代表作。自分も、どれか一つといわれたらこれかなあ。
繊細に細く震える主題や、ピアノによるパッセージがとても泣けます。
切なげで、どこか凛とすましている曲調がたまりませんね。
最近の曲はこういう脆そうな繊細さが無くて残念だなあ。チープな面ばかりが強調されてしまっている感が。
演奏、数あるテイクの中でもしかしたらこれが一番良いかも。崩れそうな危うさと美しさがよく表現されてます。
一柳慧の「空間の記憶」は短いピアノ協奏曲。ただし、ピアノは重要な役割をしているものの出番はそこまで多くは無い感じ。
空間的な音のふるまいを重点に置かれた、響きの広い作品。
前半、彼にしてはとりとめない感じですが、後半は彼らしい反復が出てきて良い。
しまった、意外と長くなっちゃった・・・まあいいや。
N響の録音らしい、良いんだけれど遠い感じがする、良くも悪くも音がそのまま捉えられている感じが演奏を好めるかの分かれ目かも。
ただ、コンセプト的にもなかなか買って損はしないボリュームのCDではあります。
Stick Attack
John Cage; Third Construction
Minoru Miki; Marimba Spiritual
Siegfried Fink; Tangents
Ney Rosaudo; Mitos Brasileiros
Percussion Art Quartett
1991 Thorofon CTH 2113
ケージの「第三コンストラクション」は、この手のCDならたいてい入ってる名曲。
この演奏ではかなり落ち着いた、古典と化した曲の概容が見えます。音の各々がとても温かみある。
音の一つに重みがあって生々しい。なんだかどこかの民族儀式みたいな音の図太さ。でもテンポは後半かなり速い。
三木稔の「マリンバ・スピリチュアル」も現代打楽器のCDにはよくあるラインナップ。
前半の金属打楽器、演奏や音色は良いけれどでかすぎ。けっこうびびった。
マリンバの音量が、特に前半一番小さいのが残念。演奏の技量はまあまあ、特にマリンバは安全運転でちょっと端折ったりもしてます。
ただ後半、速いテンポで爽快に叩いているところに好感がもてました。
フィンクの曲はかなりなじみが無いほう。ミニマルな音形が終始pでじわりじわりと展開する。
耳新しい展開は何も無いけれど、というか思いっきり地味だけれど、こういうのは好きです。
ロサウロの曲は5曲からなる組曲。唯一ふつーの打楽器アンサンブルらしい。1曲目、目まぐるしく表情が変わる激しい曲。
2曲目はシロフォンやビブラフォンのきらめく星空空間。3曲目はアゴゴの活躍するジョークな楽章。
4曲目はシロフォンやマリンバによる瞑想時間。最後5曲目は6拍子の爆発性は無いが力を持った曲。
Oskar Sala & Harald Genzmer
Electronique Et Stereophonie: Musique Spatiale
Oskar Sala; Musique Stereo Pour Orchestre Electronique En Cinq Parties
Harald Genzmer; Cantata Pour Soprano Et Sons Electroniques, Suite De Danses Pour Instruments Electroniques
Oskar Sala,Trautonium & Mixtur Edith Urbanczyk,Sop.
2005 Creel Pone #08
クリールポーンのブートシリーズ第8弾は以前Eratoから出ていたトラウトニウム作品集。
トラウトニウムは、要は電子楽器テルミンやオンド・マルトノの進化形。そこからさらにハモンドオルガンなんかに展開していくんですね。
上記2つに比べ圧倒的に知名度が低いトラウトニウムですが、ヒンデミットが曲を残していてまあまあ知られてます。
あとはこのCD収録の、弟子であるオスカー・ザラ(1910-2002)がやたら気に入っていた様子。
映画音楽や電子音楽を手がける傍らトラウトニウム演奏の第一人者としても活躍しました。
その彼の「エレクトロニック・オーケストラのための5パートのステレオ・ミュージック」は名の通り全5楽章の大作。
トラウトニウムのぴこぴこころころ言う独特のスペーシーな音が転げまわる。
反復を伴いながら音がぽろぽろと、脈絡ないかのように押しかけてくる様が楽しいです。
ハラルド・ゲンツマー(1909-2007)もヒンデミットの弟子、こちらの方が現代音楽作曲家としては有名かな。
「ソプラノとエレクトロニクス音のためのカンタータ」は先ほどに比べるとかなり音色を変化させている。
弦のような柔らかい音、攻撃的な破裂音など、場面によって切り替えてます。
音色などを別にすれば、曲自体は近代音楽の流れを汲むクラシカルな音楽。
「電子楽器のための舞踏組曲」は音数少ないリズムの上をぴろぴろせわしないメロディーが痙攣し、走り回る。
とはいえ、構造は簡素で聴きやすく、とても楽しめます。まあゲンツマーはそう前衛的ではないしね。
Virtuosity - A Contemporary Look
Richard Peaslee; Chicago Concerto, Nightsongs, The Devil's Herald
William Russo; The English Concerto
Gary Smulyan,Br.Sax Stephen Staryk,Vn. Philip A. Smith,Tp. Harvey Phillips,Tuba
Manhattan School of Music Jazz Ensemble London Jazz Orchestra William Russo,Cond. etc.
1991 GM Recordings GM3017CD
リチャード・ピースリーとウィリアム・ルッソの曲を集めたこのアルバムを格安で入手。
一曲目「シカゴ・コンチェルト」。最初から思いっきりビッグバンドによるスウィング・ジャズ。
ちょっと待ってくれ、どこがクラシックなんだか全然分からないよ!
まあ組曲形式なのはたしかにクラシカルですが・・・でもこの音は明らかにクラシックではなくジャズ。
フュージョン系のスマートな音楽がこれでもかと紡がれる。完全なジャズとして楽しめます。
2曲目、ルッソの「イングリッシュ・コンチェルト」は、それを思えばかなり上手にクラシックとジャズの境界線上に位置しています。
ヴァイオリンソロをメインに置きながら、あくまでも曲の構成ははっきりしたクラシック。
そこにジャズのコードやリフを挟みながら曲が進むさまはまさに中途半端、じゃない架け橋的音楽。
ガーシュウィン以後のこういうアーティストは有名どころだけでもグルダやジャレット、ブルーベックとかいますが
個人的には一番上手く2ジャンルを折衷できている人だと思います。
「夜の歌」は随分クラシカルになってます。ハープと弦が目立つ、イージーリスニングな感じのバラード。
柔らかくふわふわした伴奏の中でトランペットが切なげにメロディーを奏でます。ちょっとしたチープさを無視できればかなり良い曲。
後半はちょっと速くなる部分もありますが、基本的にずっとゆっくり。
「The Devil's Herald」はチューバソロがメイン。ソロにホルン四重奏と打楽器というアンサンブル編成。
ホルンの暗めなファンファーレから始まり、吹奏楽チックな展開をしていきます。これはかなりクラシカル、ジャズの要素はかなり薄い。
録音あまりよくないです。特に最後の曲はなんかくぐもっていてクリアな音じゃあない。
ただ、曲はなかなか楽しめました。
Tomoko Mukaiyama -piano- Women Composers
Adriana Holszky; Horfenster fur Franz Lizst
Vanessa Lann; Inner Piece
Galina Ustvolskaya; Piano Sonata VI
Sofia Gubaidulina; Piano Sonata
Meredith Monk; Double Fiesta
BVHAAST CD 9406
女性作曲家のピアノ曲を集めたものですが、どれも暴力的ないし非常に活動的なのは意図してのことなんでしょうか。
しょっぱな、アドリアナ・ヘルスキの「Horfenster fur Franz Lizst」から強烈。
特殊奏法をふんだんに使った、パーカッシブで派手な曲。フリーで暴力的な音はウストヴォルスカヤに匹敵します。
題のとおりシューベルトのメロディーが主題。ただこういう曲は形式よりは音響を楽しみましょう。
ヴァネッサ・ランの「Inner Piece」はプロコフィエフのトッカータ風な楽想から開始する。
そこからやがてジャズの影響を持った音楽が展開します。なかなか激しい。前後の曲の重々しい激しさとは対極にある感じ。
ガリーナ・ウストヴォルスカヤの「ピアノ・ソナタ第6番」は冒頭から重い音塊ががつんと落とされる。
複雑な構成は少なく、和音の塊がこれでもかとふり下ろされる曲想はまさに暴力。終始それが一貫していて怖いぐらい。
ソフィア・グバイドゥリーナの「ピアノ・ソナタ」はそれまでの曲からすると驚くほど古典的に聴こえます、実際彼女の初期重要作品だし。
跳ねるような主題と重々しい伴奏が時にグロテスク、時に劇的に絡む第1楽章。
低音のごりごりした音と高音の煌く音の対比が印象的な第2楽章。短い、重く躍動的な第3楽章。
彼女の曲の、神秘性とはまた違う激しい面が見れる曲、聴いて損はありません。
メレディス・モンクの「Double Fiesta」は彼女らしくピアニストの歌唱から始まります。
彼女独特の、踊るような民族的旋律が繰り返されて絡み合い、ミニマルに進行する。題らしくテンションの高い曲。
相変わらず声のパートに要求される技量が高すぎる。まあ確かにここが普通じゃ全然彼女らしくないんですけれどね。
演奏は何時もどおり固めのはっきりしたタッチで安心して聞かせてくれます。曲のほうも、どれも楽しめてよかった。
Michel van der Aa; Double
甲斐説宗; ヴァイオリンとピアノのための音楽 II
David Lang; Illumination Rounds
一柳慧; ピアノ音楽 第6、弦楽器のために 第2
福井とも子; Schlaglicht
近藤譲; 冬青 Ilex
ROSCO(大須賀かおり、P. 甲斐史子、Vn.)
2005 Zipangu Records ZIP-0015
桐朋学園在学時に結成された、現代音楽を中心に活動しているデュオユニットのCD。
ミシェル・ファン=デル=アーの曲は視覚的要素があるようですが、それがどんなものかわからないたけ、音について推測するしかありません。
かすれたような静寂なドローンから始まり、徐々にピアニストのきっかけによってヴァイオリンが動きを激しくしていく。
甲斐説宗は以前から興味があった作曲家。早世したのが本当に残念ですね。
素直な短い音形が繰り返される。異常なまでに簡素な構造ですが、とても印象的な独特の世界が作られています。
さりげなくそこら辺にたゆたうようで、「庭で植木にハサミを入れる庭師のように」ためらいのない、まっすぐでいて確固たる音でもある。
彼の曲の中で、今まで聴いた中では一番気に入りました。同時に、初期グレツキなどの影響が顕著なことを改めて実感。
この曲の響きはまるで、作品番号1桁のグレツキ作品の音響に晩年の静寂さを振りかけた感じですね。
デイヴィッド・ラングの曲はベトナム戦争の銃撃を音楽のインスピレーション元に選んでいます。
ヴァイオリンの下降グリッサンドや低音の激しい動きが印象的。
一柳の2曲はとても極端。ピアノのほうは終始激しく叩きつけられる爆発作品だが、ヴァイオリンのほうは一つの音が奏法を変えて響くだけ。
福井の曲は「対象を際立たせる強い光」の題通りに、それぞれが互いに際立たせるポジティブな関係を意図しているようです。
たしかに互いが他方にけしかけるような共同体としての興奮がありますが、ピアノが主に低音でアグレッシブに繰り広げるせいで
音高的な対比を連想してしまう部分が多い。確かに他方を打ち消していないのが分かるんですが、ちょっと引っかかってしまった。
対比と対立の違いはどこからなんだろう。難しいものです。
近藤の曲は、このCDの中で一番いわゆる「現代音楽」的。二人の音が、静かに次々と降り積もっていくちょっとフェルドマン的な作品。
全体的に個性的な音響の作品が多く、室内楽CDとしてはびっくりする位音の多様さが楽しめました。
David Felder; In Between, Coleccion Nocturna
Morton Feldman; The Viola in My Life IV, Instruments II
Daniel Druckman,Perc. Jean Kopperud,Vla. Jesse Levine,Cl. James Winn,P.
June in Buffalo Festival Orchestra Harvey Sollberger(Fedler)&Jan Williams(Feldman),Cond.
2001 Electronic Music Foundation Inc. EMF CD 033
アメリカの重鎮フェルドマンと中堅どころの作曲家フェルダーの作品集。どの曲も20分弱の長さ。
「In Between」は冒頭非常にドローン的。緊張感をもって漂う音に、突如音塊がかぶさってくる。
動的な部分では打楽器ソロを隠すようにして楽器が吼える。その凶暴な佇まいと迫力は対比的。
逆に、その管弦楽部分が派手すぎて、本来この曲が打楽器協奏曲であることを忘れてしまいそう。
「The Viola in My Life IV」はやっぱりフェルドマンらしい佇まいですが、何時も以上に古典的な響き。
ヴィオラの枯れた温かみのある音も合っていて良い。どこかメロディアスな部分が顔をのぞかせる瞬間は官能的ですらあります。
「Coleccion Nocturna」も持続音が強いですが、こちらはかなり弦楽器がメインです。
音楽のドラマチックな凶暴性は相変わらずですが、クラリネットとピアノの二重ソロとも相まって一応夜が連想できる仕上がり。
最初と最後のあたりはクラリネットのソリスティックなソロとピアノの穏やかな呟きが対比されて印象的。
「Instruments II」は「The Viola〜」の4年後の作品ですが、その間にフェルドマンがどれだけ変化したか良く分かる。
以前は音同士の繋がりあいがメロディーとして現れていたのに、この曲では個々の音が浮き彫りになっています。
後期フェルドマンらしい、和音と間の連続。静寂な響きに包まれた世界が20分続いていく。
この曲目で聴くと、いかにフェルドマンが自分の世界を確立できていたかが理解しやすいです。
フェルダーも十分良い曲を書いているんだけれどね。
David Taylor Bass Trombone
Frederic Rzewski; Moonrise with Memories
David Liebman; Remembrance
Eric Ewazen; Dagon II
Lucia Dlugoszewski; Duende Quidditas
New World Records 80494-2
現代音楽やジャズを中心に演奏しているバス・トロンボーン奏者のアルバム。
ジェフスキとリーブマンの曲はアンサンブル付き。
ジェフスキはいつもと変わらないミニマルでアメリカンフォークな曲。
「Coming Together」とかの主題をバストロに変換して想像してくれれば良いです。
リーブマンは随分とフリージャズの香りが強い。ビル・エヴァンスへの「追憶」らしいです。
エワーゼンの名前は吹奏楽のCDでもちょくちょく見かけますね。
この「Dagon II」はなかなかカッコイイ。しょっぱなからクセナキスばりの激しいノイズ。
その後もブレストーンなど特殊奏法をメインに目まぐるしい音響が多重録音で繰り広げられます。
最後に9thの和音を基調としたメロディアスな部分がさっと過ぎて終了。
Dlugoszewskiの曲はかなりフリー。30分弱の間、自由な音たちがごろごろ転げまわります。
ミュート付きのバストロと弦を直接擦るピアノの音が非楽器的な音の世界を作っていて面白い。
雰囲気だけ見ればアコースティックなインプロヴィゼーションといえるでしょう。
楽器の組み合わせの関係で、決して軽い音が主体にならないところが聴く上で大事な鍵になるのでは。
民音現代作曲音楽祭'79〜'88
1988 Camerata R-390138~45
民音現代作曲音楽祭の10周年記念の8枚組BOX。大御所からマニア処まで揃ってます。
全部紹介したらきり無いので、ざっと聴いて気になったものだけ軽く書き出し。
たぶん音響的に面白いものメインになってると思うので、(あれ飛ばすのかよ!)って意見はごめんなさい。
佐藤真の「交響曲第3番」は派手に鳴らす爆走作品。テンションの高さが凄い。
細かな素材の一つ一つがこれでもかと突き刺さってくる。
野田暉行「変容」は、邦楽器とそれ以外の微妙なきしみがスリリング。全体として茫洋とした妖しい雰囲気。
副士則夫の打楽器との協奏曲形式といえる「Chromosphere」は、ソロを始めとする打楽器群にオケで色彩をつける方法がとても巧い。
終始細かく動き続ける打楽器も魅力ながら、その色彩対比にも惹かれました。
湯浅譲二の「Scenes from Basho」は彼らしい内省的な、けれど大きな広がりを感じる作品。
松本日之春の「レ・レオニード(獅子座流星群)」は神秘的な序奏がお気に入り。
石井眞木の「半透明の幻影」は、彼独特の重々しいリズムが特徴的。打楽器炸裂の、何時もどおりの作品です。
一柳慧の「ヴァイオリン協奏曲「循環する風景」」は作者の言の通りシンフォニックな響きが強い。
はっきりとした調性感があり、他の収録曲と趣が異なっていて新鮮でした。またそれに限らず良い曲だと思います。
川南智雄の「オンディーヌ」は武満を思わせるような冒頭から内向的に妖しく音が巡っていきます。
ドラマティックな、どこか衝動的な爆発も含めて、ソプラノの歌とうまく引き立てあいます。こういう黒い曲大好き。
三善晃の「響紋」は児童合唱の「かごめ」が怖い(笑)生と死の対比というテーマ上おどろおどろしい音楽に聴こえるのはむしろ当然か。
肥後一郎の「交響曲」は神秘的な精霊たちの饗宴。メシアンに似た官能さを感じました。
メシアンが精霊信仰にはまったみたい。そうか、メシアン+ホヴァネスmeets前衛音楽って言えば済むのか。こういう曲好きです。
作者の言葉は理系の自分には難しくて理解できない・・・宗教的用語はわかりません。学が足りないだけか、そうだよね。
多田栄一の「交響曲第2番」は作者の言通り流れがスムーズで、語法とは別に古典的なシンフォニーの響きがします。
最初と最後の少し前に現れるフルートの低いソロとその伴奏が綺麗で良い感じ。
林光の「第2交響曲「さまざまな歌」」は彼らしい擬古典的?な聴き易い曲。さっきと違い交響曲の雰囲気ゼロ。
ショスタコのピアノ協奏曲第1番からを初めとする引用がすごい直接。というかその辺りのロシア音楽臭が。交響曲ですがピアノ独奏が常に中心的。
八村義夫の「ラ・フォリア」は未完の遺作。厳しく制限された音の断片からはストイックにもがく音がありのままに示されてます。
新実徳英の「交響曲第2番」は「全ての輝ける形容語との対応」との通り、透明で明るい主題といえる構造に様々な楽想が絡みつく。
ミニマルというかオスティナート要素が強く、特に最後は興奮できます。
松村禎三の「チェロ協奏曲」は色彩の激しい曲で楽しめました。
細川俊夫の「時の果てへ・・・」はドローンのように薄い弦の帯が全曲を支配します。とても内向的で静かな曲。
反対にその後の池辺晋一郎による「ピアノ協奏曲 II」はピアノを中心とした躍動的な曲。たたみかけるオケとピアノが印象的。
中川俊郎の「合奏協奏曲第2番」は楽想がころころ変わり目まぐるしい。須川展也が参加してます。
西岡龍彦の「闇の中の黒い馬」も同様ですが、より抽象的で緊迫していますね。
土田英介の「交響的譚詩」はゆっくりと旋律がうねりながら押し寄せてくる広がりをもった作品。
・・・結局大半を紹介していますね、わけわからん。しかもかなりは適当以下の一行説明だし。これで分かるわけないよ。
自分自身の備忘録程度の文章すいません。いつもだけれど。
Iancu Dumitrescu; Mnemosyne, Impulse, Clusterum I
Ana-Maria Avram; Quatre Etudes D'Ombre, AsonantIII, Metaboles
Art Gallery AG 06 CD 50 000065
音響系マニアが大好きなルーマニアの作曲家イアンク・ドゥミトレスクとその弟子筋アナ=マリア・アヴラムの作品集。
Edition ModernからED.MN.1007として出ていたものの再発です。フルートと打楽器メインの作品ばかり。
「Mnemosyne」、編成がコントラバスフルート、バスサックス、プリペアドピアノ、打楽器二人にゴングとテープってやばすぎだろう。
どろどろした地底世界に木管のブレスや破裂音、金属摩擦がこだまする病的世界。
バスフルートと打楽器の「Impulse」は数々の金属打楽器が中心に不気味に乱れ、そこに後半フルートが加わります。
打楽器ソロの「Clusterum I」は膜性打楽器が主体。リズム主体ではありますがとても胃もたれする。
「Quatre Etudes D'Ombre」は10分間ひたすらバスフルートによる息の音と不正発音。
他2曲も印象は大して変わりません。まあ音響的にはほとんど同じ編成だから変わりようないしねえ・・・
そんなわけでこのCDは、インパクトが大きいだけに最初の一曲があれば十分、と思ってしまうのがさびしいところ。
ドラム・トゥゲザー
ペーター・ザードロ&フレンズ
Teldec WPCS-11126
これは凄い。最初に聴いたとき、CD聴いてて涙出たのは本当に久しぶりだと思いました。
ウィルミントンの「Heat」は、ブル・ローラーを合図にして彼自身のディジュリドゥがザードロのマリンバとゆっくり入ってくる。
次第にマリンバを初めとする打楽器にリズムが現れだし、ドラムも加わり熱気を放ちだす。
ひたすら熱気をましていくかと思いきや、やがて音楽は収束してクロテイルのさりげない一打で幕を閉じる。
ケージの「第3コンストラクション」は最初期打楽器作品の名曲であり、ケージの初期重要作品の一つ。
さまざまな音たちが所狭しと大暴れするこの曲、この演奏以上に音が自由で力を持った演奏は聴いたこと無いです。
シュミットの「ガナイア」はファマディ・サコのジャンベを迎えての熱烈なアフリカ世界。
カリンバなどの序奏に始まり、続く主部は強烈なアフリカンリズムの嵐。サコのソロがもう凄すぎる。
クセナキスの「プサッファ」を、ザードロはよくここまできっちり演奏しきったと思う。
一打一打にずっしりと重みがくるのが分かる。
クセナキスの魅力が分かる素晴らしい演奏。最後のテンションはもっとあっても良かったけれど。
三木稔の「マリンバ・スピリチュアル」はこれ以上はありえない完璧な演奏。何度聴いても飽きが来ない。
前半の鎮魂さ、後半の秩父囃子、どこも凄すぎる。録音も相まってとてつもない深み。
ヴェイス「Improvisation Latino」の強烈なビートの応酬はラストに相応しい。
底抜けに熱いラテンのリズムそのままが快感となって体中を突き抜ける。
日常用品から作られた楽器だけで演奏しているという事実もまた凄い。
少なくとも打楽器を修める身なら、このCDを持っていることを常識にしてください。それ位お勧めする一枚。
ピエール・ブーレーズ;リチュエル
ロルフ・リーム;Gewidmet
ヘルムート・ラッヘンマン;ハルモニカ
Pierre Boulez; Rituel -In memoriam Bruno Maderna
Rolf Riehm; Gewidmet
Helmut Lachenmann; Harmonica
Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrucken
Hans Zender,Cond.
1997 cpo 999 484-2
ハンス・ツェンダー指揮のこのcpoものは、本当にはずれが無い。
自身も作曲家なだけあって、聴かせどころを心得ている気がします。録音もクリアで聴きやすいし。
ブーレーズのこれは代表作ですね。独特の呪術的神秘さが好きでよく聴きます。テンポは自作自演盤に比べやや早め。
低音が少なく、銅鑼のずっしりくる一打がとても印象に残ります。
この土台の無い空虚さがこの曲の面白さだと思います。録音もあり、この演奏ではそれが特に顕著。
このCDのリームは、一番有名なヴォルフガングではなく、ロルフのほう。
所々調性的なテキスチャを挟みながらがしゃがしゃと音楽が積みあがっていく。
なかなか面白い。かなり派手な曲なので単純な高揚感が味わえます。
実はヴォルフガングと間違えて買ったんですが、良い間違いでしたね、これ。
ラッヘンマンは以前から興味がありましたが、実はオケ作品を聴くのはこれが初めて。代表作の一つですが、とても楽しめました。
チューバとの協奏曲形式。重厚な音がこれでもかと引っ掻き回され、奇形の音たちと跳ね回る。
やっぱり大編成で聴くと、膨大な音の嵐に埋もれて恍惚状態になれます。
また、特殊音響の特異さ・斬新さといった効果が比較要素があるので分かりやすい。
特殊奏法を追求した作曲家は有名どころでシャリーノとかがいますが、あちらはどうも肌に合いませんでした。
シャリーノは自分の意図する音響を出すために特殊奏法を使いましたが
ラッヘンマンは特殊奏法の開発自体が目的であるあたりがその原因でしょう。
構成の一部としてきっちり組み込まれているよりも、まるで空気を読めずに浮かんでいるほうが趣味に合う。
もっとも、これだけでは音響性だけしか見ていないので曲の組み立てを無視した意見だと言われても仕方ないのですが。
とりあえず、下手な音響系アーティストなんか聴くよりずっと楽しいのは間違いない、とだけ付け加えます。
ああ、今度は「マッチ売りの少女」だ・・・
ヘイノ・エッレル:ハープと弦楽のためのエレジー 他
カリヨ・ライド:交響曲第一番 ハ短調
Heino Eller; Elegia for Harp and Strings etc.
Kaljo Raid; Symphony No.1 in C minor
ネーメ・ヤルヴィ指揮、スコティッシュ・ナショナル管弦楽団
Neeme Jarvi,Cond. Scottish National Orchestra
1987 Chandos CHAN 8525
エッレルは知る人ぞ知るエストニアの重要な作曲家です。
あまりディスクも多くないですがECM Newシリーズにも名前があるようにもっと評価されて良い人物だと思いますね。
彼の曲は基本的には美しさが目立ちます。北欧特有の凛としたメロディーがてんこ盛り。
このCDにはエレジーのほか「弦楽のための五つの小品」「音詩「夜明け」」がありますがどれも素晴らしい。
特に私はエレジーの旋律や盛り上がりが気に入っています。
ちょっと冒頭とかの一部は「久石譲チック」と言えば雰囲気が少しは伝わるか・・・どうかなぁ。
カップリングのRaidの交響曲も白眉。第一楽章は鳥肌ものですね、カッコイイ!
トロンボーンを吹く人間として、こういうおいしい主題を任されているのは羨ましい。
北欧特有のあの涼しさが曲に満載のこのCD、買って本当に良かったと思いました。
ちなみに今はこのエストニアシリーズ第一弾、第二弾とセットになって売られてるはずです。
第二弾もいい曲そろってますよ。
あーRaidの他の曲ももっと聴きたいなあ、入手容易なのって後はトゥビンの補筆くらいか?畜生・・・
Amsterdam×Tokyo
Karen Tanaka: Techno Etudes
Michael van der Aa: Just Before
Toek Numan: Fluweel
Makoto Nomura: Away from Home With Eggs
Merzbow/Atsuhiko Gondai: Black Mass
Tomoko Mukaiyama,Piano
BVHAAST BVHAAST 1000
向井山朋子によるオランダ・日本の作曲家による日蘭交流400年記念企画アルバム。近年の様々な傾向のものが収録されてます。
気に入っているのは日本人による3曲。え、オランダ作品?ん〜、どうも肌に合わない・・・
田中カレンの「テクノ・エチュード」は疾走感の激しい爽快な作品。名前の通りテクノ的なリズムがひたすら進んでいきます。
彼女は個人的に気にしている作曲家。「失われた聖地」聴いたことあるけれど普通に綺麗な曲でした。CD出ないかなあ。
ヴァン=デル=アーの曲はエレクトロニクスを用いたノイジーな一品。
ニューマンの方はトッカータ的要素が強い、このCDの中で一番まともな曲です。
ちょっとジャズの匂いもさせながら終始リズミックに展開する、クラシカルな雰囲気が好きな人がまだ好めそうな作品。
野村誠の「たまごを持って家出する」は聴きやすいと思わせておいて一番異色な存在でした。
前衛の香りも漂いながらも基本的に流麗な音楽が次々と沸いてくる前半は気楽なのですが。
中盤から演奏者によるちょっと変てこな語りが入ります。この文章は野村氏によるものなのかな。
サンプリングされた幼女や老婆の声などと進行しながら、最後は演奏者による意味不明な歌とコーダとはいえないような物でさらっと終了。
慣れるとどこか切なさも感じる普通に良い曲に感じますが、最初に聞いたときは「何じゃこりゃ!」と(笑)
「Black Mass」はメルズバウが向井山の音源を元にノイズを作り、それに権代敦彦がピアノパートを作曲している。
二人の個性がぶつかりあう激しい作品。秋田さん、いつも通りですね・・・
ヴァイオリンのための24のカプリッチョ
24 Capriccios for Violin
Janine Jansen & Joris van Rijn & Benjamin Schmid,Violin
2002 NM Classics NM 92120
ロッテルダム芸術財団がオランダの作曲家24人にパガニーニのそれをもじって作曲を依頼したもの。
もちろんシメオン・テン・ホルト狙いで買いました。でなきゃ買うかよこんな高いオランダ盤!!
私の知ってる作曲家はあんまりいない・・・ってそもそもオランダの作曲家そんな知らないんでした。
Toek Neuman,Michael van der Aa,Willem Breuker,Jacob ter Veldhuisくらいしか知りません。
それもそのはず、クラシックのみならずジャズ界の人もずいぶん混じってるみたいですね。
実際に聴いていても、他の音楽の影響が強く感じられるものが多いです。
その分、独奏のみからなる二枚組みですが面白く聴けました。
Joey Roukensという方が作曲家の中で最年少ですが若すぎる・・・1982年生まれって。
この企画は1998年ですから、依頼されたときはまだ16歳!?曲はジャズどころかロックすら思わせるリズムで楽しい。
Breukerは私の初遭遇が変態じみたオルガン即興だったのでそのイメージがついていますが
このアルバムではかなりクラシカルな響きを出しています。
ホルトは相変わらず。音の細かい旋律が無窮動のようにひたすら反復され盛り上がっていきます。
「Soloduiveldans」みたいな印象。
いつもと変わらないノスタルジックな音楽で安心しました。やっぱカッコイイや。
音楽経典
干海,cond.
中国人民解放楽団 中国民族楽団 中国交響楽団
中国音楽家音像出版社 ISRC CN-A50-97-0046~7-0/A ,etc.
やたらでかい布張りの紙箱に収められた、5枚組みの中国における音楽の集大成チックなセット。正直言って邪魔。
CDごとに、西洋管弦楽・吹奏楽・行進曲・式典音楽・民族音楽と分かれてます。
演奏の方はちょっと不安でしたが、聴いてみれば普通の、そつなくこなされた演奏で安心しました。
直線的な音・表現ではありますが、きちんとまとめられた好感の持てるものです。
吹奏楽のCD、最初の「サモン・ザ・ヒーロー」の打楽器がテンション高すぎで笑いました。
主な収録曲を有名なあたりでざっと挙げると以下の通り。
チャイコフスキー;交響曲第5番
バーンスタイン;「キャンディード」序曲(吹奏楽版)
ガーシュウィン;ラプソディー・イン・ブルー(Blue Rhapsodyって書いてあって最初「?」でした、これも吹奏楽)
團伊玖磨;祝典行進曲
タイケ;旧友
スーザ;星条旗よ永遠なれ
メンデルスゾーン&ワーグナー;それぞれの結婚行進曲
J.シュトラウス;ラデツキー行進曲
Hua Yanjun;二泉映月
Li Huanzhi;春節序曲
他にもいろいろ有名曲・マイナー曲などがひしめきあういろいろとボリュームたっぷりのCDでした。
にしてもこれ詳しい出版情報が全然見つからない・・・誰か教えてください・・・
TOP