オムニバス アンサンブル作品

クラシックまたは現代音楽の、作曲家で括られていないCDのレビュー置き場。
ここではアンサンブルを。ただし、合唱曲や打楽器アンサンブルとかのCDみたいなのも一緒くた。
現代音楽のポストモダン系に多いコンピアルバムなんかも、ここに入ってるのが多いと思います。
順番は適当に更新した順。




The Scott Chamber Players
Jan Swafford; Midsummer Variations, They Who Hunger
Glenn Gass; Piano Quartet, String Trio

1993 Composers Recordings Inc.  CRi CD 633

インディアナ州で主に活動しているアンサンブルによるアルバム。
ハーバード大やエール大でドラックマンらに師事したジャン・スワッフォード(1946-)の
「ミッドサマー・ヴァリエーションズ」(1985)はコラールを主題にした幾分メランコリックなピアノ五重奏。
特殊奏法も時折使いながら長調と短調を揺れ動くようなところで気だるさのある流れに
時折はっとする美しさを出してくるのが憎らしい。やっぱりその綺麗さが引き立っている。
中盤から次第に盛り上がっていき、溌剌として明快なクライマックスはとてもいい。
最後はまた冒頭のような重さのある静けさに戻って終わる。
ピアノ四重奏のための「They Who Hunger」(1989)は増加するホームレス達に捧げられたものですが
作曲する契機の一つには天安門事件も入っているらしい。政治参画が好きな人だ。
淡い序奏ののち華やかに展開する主部。ピアノのアルペジオなどが多く、きらきらした印象。
インディアナ出身、現在はインディアナ大で教鞭を執っているグレン・ガスの作品が後半。
何でもロックやポップスの歴史を授業で教えたりしているようです。
「ピアノ四重奏曲」(1987)は重厚さをもって激しいダイナミクスを見せる第1楽章、
ちょっとロックなシンコペーションリズムの印象的な静けさのある第2楽章、
スケルツォ風の輪郭が伺える第3楽章、アップテンポな所からベースがロック風に聴こえなくもない第4楽章。
ロックの影響が見え隠れする内容からすると、「弦楽三重奏曲」(1983)のほうはかなり古典的。
どの楽章も半音階的なモチーフを展開する手法で書かれていて真面目な作風です。

演奏は、地元で展開している団体としてはかなり高水準。



In Memoriam Hungarian Composers Victims of the Holocaust
Laszlo Weiner(1916-44); Duo
Pal Budai(?-1944~45?); Short Dances from the Ballet"Doll Doctor"
Sandor Kuti(1908-45); Sonata for Violin solo, Serenade for String Trio
Gyorgy Justus(1898-1945); Jazz Suite
Elemer Gyulai(1904-45?); Lullaby, Air
Sandor Vandor(1901-45); Air

Vilmos Szabadi,Vn.  Peter Barsony,Vla.  Ditta Rohmann,Vc.
Emese Mali/Marta Gulyas,P.  Bernadett Wiedemann,Mezzo-Sop.
2008 Hungaroton  HCD 32597

ホロコーストの犠牲になったハンガリーの作曲家を集めた一枚。
Laszlo Weinerはコダーイの作曲クラスで学んだ作曲家。28歳の若さにして、収容キャンプでその生涯を終えさせられました。
ヴァイオリンとヴィオラのための「二重奏」は音楽のメロディアスさがよく分かる。
実に伸びやか(で民族的)な旋律が時に影を持って、また溌剌に跳ね回る。
Pal Budaiについての情報は殆ど残っていない様子。当時の人間に聞いても彼の名を覚えている人は
少なかったようですが、合唱の指揮や作曲を行い最後はやはりFoldvarのキャンプで生涯を終えたようです。
ここに収録された「ショート・ダンス」はピアノ連弾で出版されています。
低音のリズムから愛らしい行進曲調の音楽が響く「Tin Soldiers」、シンコペーションの印象的な「コサック・ダンス」、
優雅な「ワルツ」、スケルツォとも牧歌とも言えそうな「シェパーズ・ソング」、軽快な二拍子の「ファランドール」の短い5曲構成。
Sandor Kutiは1930年代にハンガリー期待の若手として華々しくデビューしましたが、
そのためか1940年にはキャンプ送りになり、そこで最後の作曲活動を行うこととなります。
「ヴァイオリン独奏のためのソナタ」は1944年に書かれた、彼の最後に近い作品。
3楽章8分の作品は、どこもえも言えぬ哀愁と重さ、美しさが漂います。
収容所供給の紙に、妻への最後の言葉と添えて書かれた作品。
Gyorgy Justusはおそらくこの中で一番有名だった人物。作曲家、ピアニスト、評論家などの活躍で名を馳せましたが、
収容から逃れるため2年ほどブダペストで隠遁生活を送り、最後には密告で命を落とします。
「ジャズ組曲」(1928)は、彼の作品の中では今日もっとも知られているもの。
ストラヴィンスキーやヴァイルのような、新古典的とも言えるはっきりした基板の上で旋律が軽やかに跳ねる。
Elemer Gyulaiは現在、彼が書いた2つの音楽書のみで知られている状態。
「子守歌」は5拍子のリズムの上で軽やかに女声が跳ねる、いかにも民族的楽想な短い音楽。
Sandor Vandorはハンガリー内でバルトークやコダーイの普及に尽力し、合唱指揮などにも積極的に活躍しました。
合唱団や街路の名前にも残っているのに、今では作品の演奏機会は殆どないそうです。
最後は収容所におけるあまりに非人間的な扱いで死に至ったとのこと。
チェロとピアノの為の「エアー」はコダーイにも似た、実に美しく切なさも感じられる旋律が舞う。
一方Gyulaiの方の「エアー」はピアノ独奏。簡素な主題がさらさらと流れ、
けれどもその中では詩的でメランコリックな楽想を表現した3分ほどの作品。
最後はSandor Kutiの「弦楽三重奏のためのセレナーデ」。
典型的なソナタ形式の第1楽章、ミュートされた中でやや神秘的に進むスケルツァンド。
最後はチェロで始まるアダージョで締める。
Weiner、Budai、Kutiのソナタ、Vandorの作品が個人的には良かった。



Polonium
Gorecki; Concerto for Piano and String Orchestra Op.40
Janusz Wojtarowicz/Jacek Holubowski; Sounds of War
Witold Lutoslawski; Bucolics
Krzysztof Penderecki; Chaconne in memoriam John Paul II
Wojciech Kilar; Orawa
Marta Ptaszynska; The Last Waltz in Vienna

Motion Trio (Janusz Wojtarowicz/Pawel Baranek/Marcin Galazyn,Accordion)  Leszek Mozdzer,Piano
2013 Akordeonus  AKD 009

アコーディオン3台というアンサンブルによる作品集。
グレツキ「ピアノと弦楽のための協奏曲」、ぶっちゃけかなり早い。
何をそんなに急いでいるのかとつっこみたくなるくらい。
アコーディオンで伴奏の持続音を演奏しているための音長の制約上からでしょうか。
第2楽章はまだ(早いな)と思うだけでそこまでの違和感はないですが、逆に弦楽だけのパートが薄っぺらい。
まあラストは妙にかっこよく終わるので、むしろ中途半端な感じなのが残念。完全な色物でした。
ピアノはプレイスネル作品でおなじみの人物。技量は全員申し分ないだけにアレンジの奇異さが浮いてしまってる。
自作でもある「Sounds of War」はアコーディオンの特殊奏法を駆使して、うまく銃撃音などを描写しています。
背景にショスタコ7番のあれが響いてきたりする。
ルトスワフスキの小品集は実に素朴な音楽ゆえに違和感なし。もちろん原曲を知らないのもある。
ペンデレツキの作品は題名で分かるように近年の作曲なので、びっくりするくらい聴きやすい。
いかにもアコーディオン受けする曲調で良かった。
メインはキラールの「オラヴァ」、これもやたら早い。音が短くなってるのは残念だけど
やっぱりこの曲は想像通りアコーディオンに映える。これはそれなりに楽しめた。
最後に、このトリオのために書かれたワルツ。とはいえ、神秘的でやや前衛的。
そこそこ扇情的で良い感じに楽しめましたが、変な曲だなあ。これで締めかよ。



Dance of the Vampires
Iva Bittova; Dance of the Vampires etc.
Leos Janacek; from On the Overgrown Path

Iva Bittova,Vo./Vn./Vla.  Nederlands Blazers Ensemble
2000 Nederlands Blazers Ensemble  NBECD003

おそらくロマ音楽を演奏するミュージシャンとしては有名な人物の筆頭イヴァ・ビトヴァ(1958-)。
オランダ管楽アンサンブルと組んだ音源の、アンサンブル側の自主レーベルから。
ビトヴァ自身のヴァイオリンと独特の歌唱はチェコの民族音楽、引いてはジプシー音楽の流れを顕著に汲む。
彼女は確かにロマ出身ですがそれだけではなく、むしろかなりアカデミックな経歴を持ちますが
そこが逆に前衛と民族性を組み合わせた独特の活動に昇華されているようです。
このアルバムは自作曲とヤナーチェク作品をアンサンブルメンバーらが編曲したもののライヴ。
最初のあたりはテンポが遅く、次第に速くして盛り上がる構成はロマ音楽のお定まり。
トラック5なんかの非常に荒々しい乱舞は聴きものです。アンコールも良い。
このアンサンブルのCDはRoger Doyleの編曲ものを以前買いましたが、
演奏は相変わらず安定している、というかむしろそれ以上に凄い。
まあやっぱり、オランダの管楽で外れはまずないわな。



Trio Matisse
Charles Edward Ives; Trio for piano,violin and cello
Luis de Pablo; Trio
Alessandro Solbiati; Trio

Trio Matisse
Emanuela Piemonti,P.  Paolo Ghidoni,Vn.  Alberto Drufuca,Vc.
1994 Ermitage  ERM 413

ピアノ、ヴァイオリン、チェロのためのトリオをイタリアの三重奏団が演奏したもの。
アイヴズの「三重奏曲」は第2楽章の「TSIAJ」が本領か。
This Scherzo is a Jokeの頭文字をとったもので、はちゃめちゃというか
ポリリズムの組み合さったぐちゃぐちゃだけど爽快な印象はまさにアイヴズ節。
第3楽章にさりげなくアメリカの歌が混ぜられているあたりも彼らしい。
ルイス・デ・パブロの「三重奏曲」、彼の作品を聴くのは初めて。
第1楽章のアラベスクを土台にした音楽を初めとして、断片的ながらもそこそこ聴きやすい作風。
第3楽章なんかはなかなか悪くなかった。
ただ、この人の作風を知るにはまだまだ別の編成の作品なんかも聴いておかないと…
アレッサンドロ・ソルビアッティ(1956-)も初耳のはず。
冒頭の緊張感を煽る不気味な特殊奏法の音階上昇がかっこいい。
そこから次第にその隙間を埋めるように音が少しづつ激しくこぼれ出すのは秀逸。
収まってヴァイオリンが歌ったのち、そこからまた冒頭のような音型が再帰していく。
この曲は想像以上にカッコよかった、あえて似た雰囲気を挙げるとしたら…権代敦彦か。



The Wooden Branch
John Cage; Quartet
Katsuhiro Tsubonoh; Fantom Fire
Ron Ford; Wanne mine eyhnen misten
Peter Smith; Mare - a'440"
Timbila Music from Mozambique

Percussion Group the Hague  Venancio Mbande,timbila
1992 Globe  GLO 5072

ジョン・ケージの「四重奏曲」は1935年なので最初期の作品。
まだシェーンベルグに師事してた頃のものです。簡素で、リズムを一つ一つ置いていくような音楽。
一番動く第4楽章でも、なんだかひそやかに動くイメージ。ここでは第2楽章を省いてます。
水野修孝や湯浅譲二に師事した坪能克裕(1947-)の「火の幻想」、
マリンバ2台によって、瞑想的なトレモロから活発なリズムまで様々な色彩を見せる。
ロン・フォード(1959-)の作品はメゾソプラノと4つのログドラムのための作品。
鈍いログドラムの響きに歌が細々と歌われる。死や彼岸の世界を表現した、空恐ろしい音楽です。
2群に分かれ、それぞれ肉体と魂を表現するログドラムたちの音は、アフリカ的とか
そういったものを超えて、限りなくシャーマニズムを感じさせてくれる。
ピーター・スミス(1954-)の「Mare - a'440"」はマリンバとエレクトロニクスのための曲。
ディレイシステムを通して展開されるふわふわしたミニマル風な作品。
timbilaはモザンビークの民族楽器、ムビラの系列でもある鍵盤打楽器です。
このCDでは20分の大ボリュームでこの楽器によるアンサンブルが収録されています。
大小さまざまな種類のものがあるので、アンサンブルで演奏されるとなかなかすごい。
比較的短い演奏がいくつも連なった形ではありますが、
このまるでレトロなゲーム音楽がミニマルに進行しているような感覚は心地いいです。



Oiseau Bleu
Jules Massenet; Oh! Si les fleurs avaient des yeux, Crepuscule, Souvenez-vous, Vierge marie!, C'est L'amour!
Maurice Delage; Sept Hai-kais, Trois Poemes Desenchantes, Trois Chants de la Jungle
Louis Beydts; Chansons pour les Oiseaux
Charles Gounod; Les deaux Pigeons, Le soir, Le temps des Roses, L'absent, Viens! Les gazons sont verts!

Darynn Zimmer,Soprano  Gait Sirguey,P.
Solisti New York  Ransom Wilson,Cond.
1995 New Albion  NA078CD

フランス近代の知られざる歌唱曲を集めた、要はマニア向けの選曲作品集。ぶっちゃけドラージュ目当て。
最初はマスネの小品4つ。彼は「タイスの瞑想曲」のような旋律美が魅力ですが、
彼のロマン的な旋律美はここでも健在、実に滑らかに響いてくる。
モーリス・ドラージュ(1879-1961)は、今一番名前が出てくるのは
ラヴェルが「鏡」のなかの「鐘の谷」を彼に献呈しているという所じゃないでしょうか。
そのラヴェルに師事し、彼となかなか良好な関係だったようです。
アンサンブルとのための「7つの俳諧」、古今集の序からテキストを取っている(と思われる)、
当時のフランスでの日本ブームをしのぶこともできる作品。
平均1分以下の非常に短い箱庭空間がくり広げられる、淡く味わい深い小品集。
ルイ・ベーツ(1895-1953)はボルドーに生まれた、オペレッタなどを書いていた作曲家。
ここに収録された歌曲(1950、「鳥の歌」とでも訳すんでしょうか)は、
近代和声とキャッチーな旋律美が組み合わさった実に自分好みな響きでした。
なかなか聞いていて派手さもあるし楽しいんですが、ちょっと声が高そう。
ドラージュ2曲目、「3つの詩曲」(1957)は彼の遺作。
弦楽やオーボエなどのなまめかしい伴奏が印象的な、終始落ち着いた5分ほどの小品。
なんというか、晩年の彼独特な、枯山水の景色が覗けて面白い。
ここでぐグノーの歌曲5連発。こうしてここで聴くと違和感はそこまでないけれど、
それでも彼を近代に入れるのはなんとも納得しがたい気が。
最後もドラージュ、「3つのジャングルの歌」(1935)、もう思いっきり異国趣味。
ピアノ伴奏ですが、艶めかしい作風はこの中で一番はっきり表れていると思う。
歌唱方法に関して、(印象派世代の中では)けっこう実験的な方法を取っている。

ドラージュはその商人の息子という出自のため幼少から実際に東洋へ頻繁に降り立っていた経験が、
師のラヴェルよりもいち早く東洋趣味を音楽に取り入れていた、という点は注目したい。
この経験が、彼にとって終生の音楽創作の原点になったことは作品を見れば明らか。
演奏者はオペラ歌手が本業のアメリカ人。あんまり繊細さが無いのが残念ですが、悪くない。
…あれ、ドラージュの感想ばっかになっちった、まあいいか。ああ、ベーツ良かったですよ。



Fitkin/Nyman/Seddon/Rackham 6台のピアノによるイギリス音楽作品集
Chris Fitkin; Sextet
Michael Nyman; 1-100
Tim Seddon; 16
Simon Rackham; Which ever way your nose bends

Piano Circus
1992 Argo  POCL-1204

クリス・フィットキンの「六重奏曲」(1989)は元々6台の鍵盤打楽器のために作られた作品。
ここではシンセサイザーで似た音を選択して演奏しています。
特定のフレーズが時には少しづつ姿を変えながら八分音符のリズムに乗せて淡々と揺れ動く、
いかにもポストミニマルな趣の曲。シンセサイザー演奏なのが余計にその印象を強くする。
マイケル・ナイマン「1-100」は1976年の作曲なのでかなり実験的な試みをしていて好印象。
100の継続する和音を順番に弾いていくだけなのですが、その順番とタイミングは演奏者に任せられています。
前に演奏した和音が減衰した瞬間に次の和音を弾く指定は演奏者によって違うスパンを醸し出し、
不確定に揺れ動く不思議な音楽を作り出してくれる。
ケージの唱えた不確定性音楽とミニマリズムを取り入れた、ちょっと面白いアイデアの音楽。
ティム・セッダンの「16」は16音符の動きをちりばめた、短くも非常に快活な作品。
ここではシンセサイザー演奏なのが大きな特徴。ただ、正直言うとちょっともたついている。
これだと、ピアノで演奏しているという点もあってBrilliantから出ているJeroen van Veenの多重録音の方がずっといい。
あっちの方は本当に爽快に弾き切ってくれているのが素晴らしかったので…
この曲聴くなら絶対BOXSETのあっち買った方が間違いない。
サイモン・ラックハムの「Which ever way your nose bends」は元々、ライヒ「6台のピアノ」と同時演奏される
演奏会のために作られ、それを基点に考えられた作品。ただ、印象は正反対です。
6台のピアノに変イ長調の音をそれぞれ1つづつ割り当て、主音のみすべてのピアノに割り振る。
そうしてゆっくりと音を増やしながら長いスパンで流れていく音楽はとても瞑想的。
そこにはまるで初期ピーター・ガーランドのような時間軸があって、とても心地よい。



Edgar Mayer; Quintet
Ned Rorem; String Quartet No.4
Emerson String Quartet  Edgar Mayer,D.Bass
1998 Deutsche Grammophon  453 506-2

現代アメリカの弦楽作品を収録したエマーソン弦楽四重奏団のCD。
オクラホマ出身エドガー・メイヤー(1960-)の「弦楽五重奏曲」、作曲者自身がコントラバス奏者で
初演にも参加しただけあってコントラバスの活躍がかなり目立つ、その意味では実においしい曲。
溌剌としたテーマからコントラバスをしばしば中心とした変奏を広げる第1楽章、
カントリーロックが始まったかと勘違いしそうな出だしの第2楽章。
まあモデラートではあるだろうけど、完全にカントリーのリズム。
第3楽章をその分しっとり唄った後、最終楽章は細かい音型が間断なく続く、技巧的で華やかな音楽に。
プレイヤー・コンポーザーらしい、楽しさを追求したアメリカンな1曲。
一方、同じアメリカでもインディアナ出身の重鎮ネッド・ロレム(1923-)の「弦楽四重奏曲第4番」は
ピカソの絵画をモチーフにした10楽章構成の作品。
冒頭から、激しい動きの粗野さを表した音楽。聴きやすいですが、
同じ細かい動きでもメイヤーと違って他ジャンルを感じさせない古典的な印象。
多楽章の強みであるゆえに楽想は幅広いですが、その中でもメイヤーとは違う聴きやすさははっきりとある。
そういう意味ではどちらもアメリカらしい音楽と言えるかもしれませんね。



Forestare avec Richard Desjardins
Pascal Sasseville Quoquochi; Chaman
Richard Desjardins; La Maison est ouverte, Les Yankees
Denis Gougeon; Une Petite Musique de nuit d'ete
Francis Marcoux; Selisir
Steve Reich; Electric Counterpoint
Francois Gauthier; Equus
Leo Brouwer; Acerca del ciero,el aire y la sonrisa

Richard Desjardins,Gui. Forestare
2007 Atma  ACD2 2550

ギターに時々コントラバスが入る、なかなか変てこだけれど音バランス的には素晴らしい
アンサンブルがカナダ出身のフォークシンガーを迎えた一枚。
カナダの作曲家による「シャーマン」はアボリジニのそれを意識した、なかなかフォークロアな感じでかっこいい音楽。
ギターアンサンブルの重厚さを活かした、響きに深みを加えた上にコントラバスの持続音がアクセントになる。
カナダの詩人Charles Coocooもフューチャーし、最後に詩の一説を語らせる。
Richard Desjardins(1948-の1曲目は本人の語りと歌も入る、いい感じにスパニッシュな曲。
Denis Gougeonの曲もカナダで主に演奏されているようです。この曲は
モーツァルトとメタリカをインスピレーション元にしたような、不思議なユニゾン的動きが印象的な無窮動風の曲。
Desjardins2曲目はどちらかというとしっとりとしたナンバー。
Francis Marcouxもこれまでの例にもれずギター曲を主に書く人物。
プリペアドしたギターによる、ガムラン風のサウンドを展開した短いながらも印象的な響きの曲。
さてライヒの「エレクトリック・カウンターポイント」のギターアンサンブル版。
まったりと各パートが溶け合った豊かな響きで聴ける録音。気楽に聴けるのは素晴らしい。
各パートをはっきり聴き分けたい時には厳しいかもしれないですが、
とりあえず今までのアンサンブル版の中ではトップを争う音源でしょう。
ギターアンサンブルゆえに低音はどうしても難しい響きですが、この録音はそれでもがんばっていると思います。
アンサンブルメンバーによる「エクウス」、6/8の軽快なリズムが心地よいナンバー。
最後はギター作品はおなじみレオ・ブローウェルの作品。結構代表的な曲らしい。
前衛技法も用いながら、幾分ミニマルにモチーフが絡み合う前半と牧歌風音楽にグリッサンドが時折異常に絡む後半。
アンサンブルはかなりの精度だし、録音もよし。音楽もなかなか面白い物ばかりで楽しめました。



Of Eternal Light -Musica Sacra
Meredith Monk; Return to Earth
Olivier Messiaen; O Sacrum Convlvlum
Ricky Ian Gordon; Water Music: A Requiem
Gyorgy Ligeti; Lux Aeterna
Kim D. Sherman; Graveside
Robert Moran; Seven Sounds Unseen

Musica Sacra  Richard Westenburg,Cond.
1993 BMG  BVCT-1505

メレディス・モンクの「大地へ還る」は彼女らしい倍音唱法やアメリカ先住民的な音楽を
盛り込んだ、ミニマルな作品。合唱で聴くと実に瞑想的ですごい響き。
リズミカルで妖しいこの響きは個人的に大好きです。ミニマルで倒錯的な面が強調された良い曲。
この中で唯一古典的な立場の現代音楽作曲家メシアンの「聖なる晩餐」は1937年作なので
初期のころ。つまり、まだ印象派なんかの影響が完全に抜け切ってない頃。
なので当然、聴いていて非常に素朴で美しい曲。後年の芳醇な響きはまったくありません。
リッキー・イアン・ゴードン(1956-)はアメリカの舞台音楽を中心に作る作曲家。
「水の音楽:レクイエム」、ブルーノートな響きも感じられる、舞台音楽書きらしい
スマートで流れるような音楽なのが聴きやすい。個人的には第2曲のほうが気に入っています。
リゲティの「永遠の光」は超名作ですね。マイクロポリフォニーの絡むこの曲、
この演奏だと随分さっぱりと聴けます。お蔭で素直に聴いて楽しめました。
キム・D・シャーマン(1954-)の「グレイヴサイド」は
「ボスニア・ヘルツェゴヴィナの死者のための礼拝」という舞台作品の一部。
民謡をベースにしながら、手榴弾で子を失った母の嘆きを重苦しい曲調と
葬送の行進で表現する。足踏みは葬列を表すというより、爆発を連想してしまう。
最後はロバート・モランの「7つの見えない音」。
ケージのテキストを元にして淡くのびやかな音楽を滑らかに紡いでいく。
「薔薇の砂漠」のような非常に綺麗な音楽で素晴らしかった。
モンクとモラン作品が文句なく趣味にストライク。



Pianos + Percussion
George Antheil; Ballet Mecanique
Tomislav Baynov; H - Ais - F - E
Morton Feldman; Piece for Four Pianos
John Christie Willot; 13 Episodi Op.30
Forrest Goodenough; Dance of the Apes

Baynov-Piano-Ensemble
1996 Ars Produktion  FCD 368 352

1989年に設立された6人以上のメンバーを持つアンサンブルのCD。
ジョージ・アンタイル(1900-59)の「バレエ・メカニック」の4台ピアノと打楽器版で開始。
これは作曲者本人によって1952-53年に編曲されたものです。
あのリズミカルで騒々しい音楽がなかなか勢いよく表現されていて楽しい。
正直に言って、この曲を一番楽しいと思った演奏でした。それだけに派手。
まあこけおどしな演奏と言えるかもしれないですが、そんなこと言い出したら曲自体が未来派な感じだしね。
2曲目はこのアンサンブルのリーダー(1958-)による作品。構造はタイトルそのまま。
瞑想的な音楽からしだいに自由に歌うような流れる旋律が現れ、ときには溢れ出す。
悪くないんだけど、中途半端にゴングとかの打楽器が入ってくるのは余計だったんじゃ…
フェルドマン「4台のピアノ」はなんか他にも録音に恵まれてますね。
この演奏はどうも勢いが妙にあって、変てこな感じ。悪くはないけど、瞑想してる感じがあんまりない。
Willot(1962-)の作品は名前の通り13のセクションからなるヴェネツィアの思い出をちりばめた作品。
ただ、内容は前衛的なものの展覧会。聴きやすいというか面白い展開も
主に後半にあるのでとりあえずは聴き通せる。6曲目の「春の祭典」アレンジを聴けば分かるように
作曲家の思い出にコラージュを施している楽章もあるし飽きはしませんが…
Goodenough(1918-)の作品は短くもリズミカルで重厚な作品。最後に相応しいと思えるもの。



Wallace Collection -Hammered Brass
Petr Eben; Quintet 'Variazioni sul'uno corale'
Luciano Berio; Call
Robert Crawford; Hammered Brass
Iannis Xenakis; Khal Perr
Steve Martland; Full Fathom Five

Wallace Collection
2001 Linn Records  CKD 162

ブラスアンサンブルWallace CollectionのCDの一つ。
ピーター・エベン(1929-)の「五重奏曲」(1969)は15世紀のコラールテーマを元にした変奏曲集。
短い楽章5つのそれぞれで各楽器の対立方法は変えられています。
主題のこともあって、音楽は非常に聴きやすい、現代と言うより近代的な響きの音楽。
ただ、10分少々の作品ではありますが、緩急ついたとても聴きごたえのある面白い曲です。
ベリオ「コール」は5分に満たない小品ですが、パルス運動が支配する印象的な作品。
ロバート・クロウフォード(1925-)の作品はこの団体が初演したもの。
打楽器も加えながら、熟練の金属工が楽器を作っていく様を表現している…らしい。
ただまあ中身は技巧的と言うか、普通に金管アンサンブルしてて、どうも印象が薄かった。
クセナキスの「カル・ペル」(1983)、英語だと"Walking Dance"辺りになるそう。
なるほど、晩年の作品にしては雲のような帯状ではなくかなり動き回っている。
演奏が豊かな音色で纏まっているのもあって、彼にしてはかなり普通の作品に聴こえる。
最後にスティーヴ・マートランド。彼らしいロックなノリがやっぱり現れていて、
ミニマルなトランペットの繰り返しに残り3楽器が良い感じに不規則なビートを刻む。
短い4つの楽章からなる曲ですが、なかなか予想通りの音楽で楽しかった。



A Place Between
John Tavener; Ikon of Joy and Sorrow
Arvo Part; Hymn to a Great City, Da Pacem Domine
Alexander Knaifel; O Heavenly King
Valentin Silvestrov; Ikon, 25.X.1893... P.I.Tchaikovsky No.2 'Lullaby'
Henryk Gorecki; Good Night Op.63
John Cage; In a Landscape

Patricia Rozario,S.  Micharl McHale,P.  Ioana Petcu-Colan,Vn.
Vourneen Ryan,Fl.  Stephen Kelly,Perc.  Callino Quartet
2009 Louth Contemporary Music  LCM5901

主に旧ソ連作家の、宗教的な意味合いを時には持った祈りをテーマの作品を集めたもの。
前半は小品ばっかりなので、初録音かこの編成での初録音のものばっかり。
タヴナー作品は弦楽四重奏による、短い宗教的な祈りを感じさせる彼らしい温かみの小品。
ペルト1曲目はピアノソロの結構知られた作品。メインのコラール動機と一貫して奏でられる高音のG#音が印象的。
この演奏は早めにきらきらと演奏してくれているので自分の好み。
クナイフェルの作品はチェレスタの煌めきに導かれて彼らしい淡さと透明感に満ちた祈りの音楽が聴けます。
弦楽四重奏とピアノ、チェレスタ伴奏の形式ではこれが初録音とのこと。
シルヴェストロフの、弦楽四重奏のための「イコン」は対位法による非常に簡素な歌う音楽。
続く、チャイコフスキーへ捧げられた作品は旋律がすごい泣かせにくる。
ペルト2曲目は弦楽四重奏による和声のゆるやかな響きの妙が聴ける。ちとこれは簡素すぎる気も。
内容的には、明らかにグレツキの「おやすみなさい」がメイン。
残響を良い感じにつけていて、神秘的なムードを出そうとしています。
フルートの抑揚はまあこれくらいなら良い感じ。異常に簡素な構造続きで退屈にならないよう演奏している印象です。
特にこれ、と言いたい点が無いのは事実ですが、十分に素晴らしい演奏。最後のゴング、非常に低い響きでカッコいいです。
残響はあって綺麗だし聴きやすいのは間違いないので、後は好みで聴き比べて、って感じでしょうか。
最後に何故かジョン・ケージ「In a Landscape」。まあ綺麗なアンビエント的音楽だし締めには良いよね。
タヴナーとクナイフェル、シルヴェストロフ2曲目が気に入った。



A Spotless Rose
Tavaner; A Hymn to the Mother of God
Josquin Deprez; Avve Maria, virgo serena
Stravinsky; Ave Maria
Giles Swayne; Magnificat I
Jean Mouton; Nesciens Mater
Anon.; Ther is no rose of swych vertu
Herbert Howells; A Spotless Rose
Thomas Ades; The Fayrfax Carol
Palestrina; Stabat Mater
MacMillan; Seinte Mari Moder Milde
Grieg; Ave Maris Stella
Arnold Bax; Mater ora filium
Gorecki; Totus tuus

Gabrieli Consort  Paul McCreesh,Cond.
2008 Deutsche Grammophon  UCCG-1452

ガブリエリ・コンソートとポール・マクリーシュによる聖母マリア賛歌をコンセプトにしたアルバム。
タヴナー「神のみ母への賛歌」の神々しい高まりは実にタヴナーらしい綺麗さで実にいい。
ジョスカン・デ・プレ「めでたしマリア、清らかなる乙女」も
こう聴くと本当に恍惚になれる美しさとキャッチーさがある。
ストラヴィンスキー「めでたし、マリア」は彼の少ない宗教作品。
激しく声部が絡み合いながら、少々粗野なまでにアクセントを持って動く躍動的な音楽はとても面白い。
ジャイルズ・スウェイン(1946-)はニコラス・モーやバードウィッスル、メシアンらに師事したイギリスの作曲家。
この「マニフィカトI」はセネガルを訪れた時の印象を元にしてるそうですが、普通に綺麗な曲。
声部の重なり方や反復方法あたりが民族音楽を反映でもしてるのかなあ、そんな気はしないけれど。
ジャン・ムートン(c.1459-1522)は当時デ・プレ並にイケイケだったのに今やマイナー作曲家に。
「男を知らざる乙女なるみ母が」を聴く限り、十分面白い響きを作る人だと思うんですが。
作者不詳の15世紀作品「これほど徳のあるばらはない」は旋律の透明さがさすがに際立つ。
ハウエルズの「けがれなき薔薇」をアルバムタイトルにするあたり企画者はわかってるね、うん。
この彼らしい、穏健だけれど甘く響く音楽は、短くてもこのアルバムの肝となるに十分。
トーマス・アデス(1971-)はイギリスの筆頭若手の一人。
「フェアファックス・キャロル」を聴くと、ティペットやブリテンを輩出した国だなあと納得してしまう。
パレストリーナ「スターバト・マーテル」は代表作。この簡素で美しいポリフォニーはすごい。
マクミラン「聖なるみ母、優しいみ母」、オルガンも使って劇的に盛り上げるのはいつも通り。
荘厳な響きと独唱を多く使った語り回しなども含め、この中では異色。
グリーグ「めでたし、海の星」はそこへ来ると穏健で落ち着きます。実は珍しい、彼の教会音楽。
アーノルド・バックス「み子のみ母よ、祈りたまえ」は近代的な和声による、堅実ながら実に感動的で壮大な作品。
もちろん個人的には、グレツキ「われはすべて御身のものなり」こそがメイン。
少しだけゆったりめ、奇をてらうことのない安定した進行。好感が持てます。
録音のきらびやかさはグラモフォンだけあってお手の物。
おかげで、細かなバランスの不備なんかはかき消されてまったり聴ける。
かなり上位に来る録音じゃないかと思います。
このCDではタヴナー、ストラヴィンスキー、バックスが実にいい。



American Music
Steve Reich; Different Trains
Samuel Barber; String Quartet in b minor Op.11
George Crumb; Black Angels for electric quartet (Images I)

Quatuor Diotima
2011 naive  V 5272

パリとリヨンの音楽院卒業者からなる、トップが中国系の方の弦楽四重奏団のアルバム。
名前はもちろん、ノーノの作品から取られています。
ライヒの「ディファレント・トレインズ」はきちんと自分らで全パート録音してますね。
ちょっと抑揚というか盛り付けに乏しい気はしますが、これだけ端正にまとまっていれば十分。
特に第3楽章は、切りつめられた硬い響きが逆にいい味出してるのでは。
にしてもnaiveはこの曲好きね、ディファレント・トレインズ弦楽合奏版の初録音もここからだったし。
バーバーの「弦楽四重奏曲」は第2楽章ばっかり超有名。
まあかく言う自分も、全曲を何回も聴いたことあるのに印象が無いくらいには興味は薄い。
音楽自体は端正整った良い曲だけに、自分には刺さらない毒気の無さ、って感じか。
ただ、両端楽章が同じ主題で最終楽章がエピローグみたく短いと、やっぱりそこらへんはおまけみたい。
クラム「ブラック・エンジェルス」も今では録音が山とありますね。
この演奏も実に安定した技術で鋭く聴かせてくれる。
このCDの演奏の中では、この曲が一番凄いと思ったし、最も音楽に合っている響きが聴ける。



Jon Gibson
In Good Company
Jon Gibson; Waltz,Song 3, Extensions II
John Adams; Pat's Aria
Steve Reich; Reed Phase
Terry Jennings; Terry's G Dorian Blues
Philip Glass; Bed, Gradus(For Jon Gibson)
Terry Riley; Tread on the Trail

Jon Gibson,Sax./Perc./Key.  Martin Goldray,P.  Michael Riesman,Key./Org.
Bill Ruyle,Perc.  John Snyder,Perc.  La Monte Young,Digital Piano
1992 Point Music  PHCP-315

「イン・グッド・カンパニー(良き仲間たちと)」と題して、ミニマリズムの中で活動していた仲間たちの
作品を収録した、ミニマル発展していた当時の流れを想像できるアルバム。
ギブソンの「ワルツ」、即興的な簡素な小品。ちょっとサティみたいな繰り返し。
ピアノとソプラノサックスによる素朴な美しい曲です。
ジョン・アダムズの「パットのアリア」は「中国のニクソン」からの抜粋曲。
シンセやピアノの和音にサックスがメロディーを載せる、近年アダムス…というかグラスみたいな曲。
ライヒの「リード・フェイズ」はギブソンのために書かれたものだからこの音源は貴重です。
今となっては破棄されて作品リストに載ってない曲だから余計に。良い曲なんですが。
やっぱり彼の循環呼吸は非常にスムーズですごい。たった5音の旋律が滑らかにずれて響きあう。
テリー・ジェニングス(1940-81)はジャズからミニマリズムに染まり、後年フルクサスにも関与。
彼の活動はスケンプトンやハロルド・ブッド、ピーター・ガーランドといった人間に影響を与えました。
「テリーのG音上ドリア旋法によるブルース」も5音からなる主題。これが反復されながら
サックスが即興的になりデジタルピアノがブルースというかカントリーでロックな伴奏を奏でる。
面白い曲だ。ちなみにさりげなくラ・モンテ・ヤングがピアノ演奏。
グラスの「ベッド」は「浜辺のアインシュタイン」から。ゆったりしたアリアのような音楽の部分。
ライリー「トレッド・オン・ザ・トレイル」はやっぱり聴いていてノリノリになれる。
ここでのジャズセッション風の編成による演奏はさっぱりとしながら旋律のずれを楽しめて良い。
ギブソン「ソング3」は民族楽器に触発された、循環呼吸を伴うとんでもない長唄。
グラスの「グレイダス」は32ビートの中で旋法的な要素が少しずつ置き換えられて姿を変えていく。
ふわふわとした綺麗な印象。やっぱりグラスは売れっ子になる前の初期作品が断然面白い。
最後はギブソンの「イクステンションII」。ドローンや環境音を下地に添え、
音の構造のリンク付けを狙った作品。うーん、正直微妙。アンビエントとしては良いけれど。
やっぱライヒとグラス初期だな。



New Chamber & Solo Music
Robert Helps; Hommage a Faure, Hommage a Rachmaninoff, Hommage a Ravel, Nocturne
David Del Tredici; Trio, Fantasy Pieces
Jan Radzynski; String Quartet, Canto, Five Duets
Tison Street; Trio

Robert Helps/David del Tredici/Arnon Erez,P.  The Aviv String Quartet
Members of Spectrum Ensemble Berlin
1993 Composers Reocrdings Inc.  CRi CD 649

ニュージャージー出身のロバート・ヘルプス(1928-2001)はセッションズに師事。
オマージュ三連作は元々Argoでのリリース用に作られた作品。
流麗な響きはフォーレやラフマニノフのそれを模倣したもの、とても聴きやすい。
トレディチの「トリオ」は1959年作曲、最初期のもの。たぶんこれが最初の作曲作品では。
シェーンベルクのトリオに着想を得たというだけあって、作風は
彼初期の特徴だったセリエリズムを超えて12音音楽風。つまりまだ普通に聴ける。
ピアノソロの「幻想的な小品集」は翌年の作曲。このあたりも傾向としては大差ない。
無調風ななかでふわふわと美しさも漂う、過渡的な作風ですね。ただ勢いあるところは同年の「スケルツォ」みたい。
ヤン・ロジンスキ(1950-)はワルシャワ出身、のちにイスラエルに移住してテルアビブ音大で学び
アメリカでペンデレツキやドラックマンに師事。そんな経歴だからCRiからテルアビブSQ音源でリリース。
「弦楽四重奏曲」はC音を中核にした、中東の羊飼いをインスピレーション元にした音楽。
持続音的な動きから少しづつ音が外れ出し、そこから旋律が力を爆発させるように飛び出していく。
狭い範囲での音の動きと躍動感、この閉塞感がなかなか面白い作品です。
ピアノソロの「カント」はカントゥス・フィルムス(低旋律)が断片的に漂いながら「幻想的に」歌われる。
ただ、雰囲気としてはかなりごつごつとしていて動きが多い。
チェロ2丁のための「5つのデュエット」は似たような経歴をもつチェリストAndre Hajduの誕生日祝い。
イスラエル風の旋律が躍動的に踊る小品集。聴きやすいしすごく楽しい。
タイソン・ストリート(1943-)はボストン出身、トレディチらに師事。
彼の「トリオ」は12音音楽の流儀に沿いながらもクラシカルな響きを忘れていない音楽。
最後はヘルプスの弦楽四重奏による「夜想曲」、セレナーデと題された各楽章を単独で
演奏することが可能な3楽章作品の、その真ん中。マーラーやバルトークを引き合いに出してます。
ロジンスキが断トツで面白かった。



Minimal Tendencies
Steve Reich; New York Counterpoint
Philip Glass; Mishima
Gavin Bryars; Alaric I or II
Michael Nyman; Songs for Tony
Terry Riley; Tread on the Trail

Delta Saxophone Quartet
1998 Clarinet Classics  CC0024

レーベル名がクラリネットなのにサックスアンサンブルのCDとはこれ如何に。
まあライヒの「ニューヨーク・カウンターポイント」はオリジナルがクラだしね…
硬めのどちらかというと短い音ではっきりと聴かせてくる。
お蔭で軽妙な第3楽章はきびきびとした印象があって心地よいです。
こちらはなかなか4人で吹いてる(正確には録音もあるから8人以上か)とは思わせない音の広がりで良い。
グラス「Mishima」はおなじみ映画音楽が元ネタ。
いつものあの調子が簡素かつドラッギーにきけるので、丁度いい。
やっぱりこれくらい単純に聴かせるのがグラスは楽しいと思う。
近作のオペラとかは正直苦痛になりだす場面があるからなあ…
ブライヤーズの曲はノイズの中から淡くミニマルな動機が湧き上がる。
彼の曲って、いつも思うけれどこういう斜に構えた音楽が多いよなあ。
ただ、この4重奏の演奏で聴くと良い感じに淡さが強調されていて儚さが自分好みに。
ナイマン「トニーのための歌」も彼のセンチメンタルなミニマル節が全開。
というか、この曲は映画「The Piano」からの音楽抜粋です。
なので、構成要素は彼の「ピアノ協奏曲」と同じものもあったり。
つまり自分にとってはそっち聴けばいいじゃんという代物。サックスであの曲を吹きたいと思う人向けか。
ライリーの「トレッド・オン・ザ・トレイル」は4重奏版だとまず静かに旋律が入りだす。
そこから次第に盛り上がり、最後はまた静かに終わるという、大アンサンブルの某演奏に慣れた耳には
ちょっと物足りない演奏。いやこれはこれで十分に楽しめるんだけれど、あっちみたいなドローンがあった方が…
全体として、サックスの4重奏では初めて聴く音源が多くて新鮮でした。
サックスの大編成アンサンブルとはまた違う音の広がり。



Baltic Voices 1
Cyrillus Kreek; from Psalms of David
Sven-David Sandstrom; Hear my prayer, O Lord , Es ist genug
Einojuhani Rautavaara; Lorca Suite Op.72
Veljo Tormis; Latvian Bourdon Songs
Arvo Part; ...which was the son of...
Peteris Vasks; Dona nobis pacem

Estonian Pholharmonic Chamber Choir  Tallinn Chamber Orchestra  Paul Hillier,Cond.
harmonia mundi  HMU 907311

「バルチック・ヴォイセズ」シリーズの第1弾、現代合唱作品集の超名盤。
クリーク(1889-1962)はサンクトペテルブルグ音楽院で学んだ人物。
「4つのダヴィデ詩篇」は非常に簡素で純粋に綺麗な宗教合唱曲。幕開けにふさわしい、近代らしい豊かな和声です。
スヴェン=ダヴィド・サンドストレム一つ目は「after Purcell」の副題が示す通り、
まずパーセルの原曲が示され、近代的な和声で処理されながらゆるやかに盛り上がる。
ラウタヴァーラの「ロルカ組曲」は彼女らしい艶めかしさの漂う小品集。
でもこう聴くと、前衛的な要素はかなり少ない曲なのがよくわかる。
トルミス「ラトヴィアのブルドン・ソング」、この民謡編曲シリーズは本当に外れなし。
ちょっと暗く寂しくもとてつもなく美しい旋律が、絶妙な和声で奏でられる。
サンドストレム2曲目、スウェーデンの民謡とブクステフーデの
カンタータをモチーフに長く美しく旋律が絡み合っていく。
ペルトの曲はリズミカルな音楽が素朴に染み渡るように響く。やっぱりこういうのが巧い。
最後は室内楽も加わってヴァスクス。見事なまでに彼らしい静かな祈りの音楽。
弦楽の透き通った響きに、合唱がDona nobis pacemを深くつぶやく。
やっぱり、トルミスとヴァスクスが自分にストライクです。



Minimal Piano Collection Volume X-XX
Simeon ten Holt; Canto Ostinato
William Duckworth; Forty Changes, Binary Images
Michael Parsons; Rhythm Studies No.1 and 2
Douwe Eisenga; City Lines, Les Chants Estivaux, Cloud Atlas, Theme from Wiek
Gabriel Jackson; Rhapsody in Red
Kyle Gann; Long Night for three pianos
Philip Glass; Metamorphosis II~IV, In Again Out Again
Meredith Monk; Ellis Island for two pianos, Phantom Waltz
Morton Feldman; Two Pianos, Intermission 6, Piece for Four Pianos
John Adams; Hallelujah Junction
Colin McPhee; Balinese Ceremonial Music, Rebong, Lagoe Tjondong, Gabor Gong
Marcel Bergmann; Morning Train, Midnight Journey, Incessant Bells, Boogie Mania
Carlos Michans; Joy
Chiel Meijering; Joke, Floating into Space etc.
Arvo Part/arr.J.van Veen; Phasing on Arvo Part
Steve Reich; Piano Phase, Six Pianos
Kevin Volans; Cicada
John Metcalf; Never Odd or Even
Tim Seddon; Sixteen
Jurriaan Andriessen; Portrait of Hedwig, Canon1-12
Wim Mertens; 4 Mains
Louis Andriessen; The Hague hacking
Arvo Part; Hymn to a Great City
Jacob ter Veldhuis; Views from a Dutch Train
Graham Fitkin; Totti, White
Tom Johnson; Voicings
Frederic Rzewski; Les Moutons de Panurge
Julius Eastman; Gay Guerrilla
David Lang; Orpheus Over and Under
Jeroen van Veen; Incanto Nr.1
Joep Franssens; Entrata, Old Songs New Songs, Between The Beats
Alexander Rabinovitch; Liebliches Lied

Sandra & Jeroen van Veen/Elizabeth & Marcel Bergmann/Tamara Rumiantsev,Pianos
2010 Brilliant Classics  9171

Brilliantから出て話題になったミニマル・ピアノ・コレクションの第2弾。相変わらず錚々たるメンツ。
CD1、シメオン・テン・ホルトの「カント・オスティナート」は(ここでは)説明不要の大傑作ですが、
この音源は残念ながらVan Veen Productionから出ているCDと同一音源。あの花畑にピアノがあるジャケのやつです。
CD2、ピアノ2台。ウィリアム・ダックワースの「Forty Changes」、軽快なロック風のモチーフが交差する
ライヒのテクノ感覚にも似たミニマル歓喜の作品。「Binary Images」のほうはパルスのような
連打から少しづつ和声の拡がりで変化していく、また違った趣のミニマル。
イギリスのマイケル・パーソンズ(1938-)による「リズム・スタディー」の1番、
これも機械的なモチーフが少しづつだぶらされて厚みを増していく正当ミニマル。後半実にライヒ。
第2番も構造はほぼ同じ。ゆえにそのままテンション高いまま聴けます。
オランダのダウワ・ エイジンハ(1961-)「シティ・ラインズ」は6拍子の優雅なモチーフ。
これがゆっくりと広がっていくさまはなかなかホルトに通じる世界観で素晴らしい。
ガブリエル・ジャクソン(1962-)はバミューダ出身、合唱曲などが有名ですね。
「赤のラプソディー」は冒頭からのがつんとくる音が印象的。ミニマル作風ですが
普通に音楽の楽想転換は豊かなので、普通の音楽な感覚で聴ける劇伴のようなドラマチックな逸品。
CD3,カイル・ガンの「長い夜」は3台ピアノのための作品。
ロマンチックな旋律が淡く茫洋と折り重なっていく、奏者のテンポの違いを活かした綺麗な大作です。
グラスの「メタモルフォージス」2-4番はJeroen van Veenによるアレンジ。以上。
エイジンハ2曲目、ピアノ4台のための「Les Chants Estivaux」はホルトのレムニシャートに似た旋律が
よりメランコリックと淡さを持ってもの悲しく鳴り響く。これはやばい。好みに直球ストライク。
モンクの「Ellis Island」はいつもの彼女らしい旋律がピアノで。こう聴くと本当に綺麗な音楽なんだけどねえ。
CD4、フェルドマン特集。「Two Pianos」は1957年作。こうして聴くと調性的に思える場面が多い。
「インターミッション6」は1953年作。沈黙の方が多く感じるくらいの静謐さ。
「4台のピアノのための小品」は25分もあるな。というかこれ「Four Pianos」。表記ゆれなだけ。
個人的にはとても好きな作品。ゆらゆらと揺れる音が、演奏のマイルドな音でより強調される。
私の持ってる別テイクでは16分ですのでかなりゆっくり。
間に、ベルグマンとヴァン・ヴェーン両人による自作自演が。もしかしてインプロ?
フェルドマンの音楽に似た点描的な音楽ですが、特殊奏法で基本的に演奏されます。
ごつごつしてて、印象はかなり両極端。2曲目なんてプリミティヴなビートだし。
CD5、ジョン・アダムスの「ハレルヤ・ジャンクション」で華やかに幕開け。
こういう爽快でリズミックに綺麗な曲を書いてるのが彼の本領だと思うんですけどねえ・・・
モントリオール出身のコリン・マクフィー(1900-64)の、ガムランに触発された作品群は
短いもののバリ音楽のエッセンスが詰め込まれていて、実にミニマルらしい構成が浮かび上がる。
2曲目なんか西洋音楽の枠組みにうまくはめられた綺麗で美しい曲だと思います。これで1940年の作品か・・・
マルセル・ベルグマンの自作自演はなかなかタイトルに合った情景を想像できる面白い曲。
適度にロマン指向、ベースにミニマルな考え、響きは映画的なそれ。派手です。
「Boogie Mania」の中間、これジェフスキのコットンブルースのパクリじゃ・・・おっと、
この曲は元からアダムスとジェフスキを元ネタに編まれた曲だから当たり前だし。
ブエノスアイレス→オランダなカルロス・ミチャンス(1950-)の「ジョイ」は幅のある冒頭と
劇的な展開をする「A Minimal Overture」の副題に相応しい音楽。オケ版がオリジナル、超聴きたい。
エイジンハ3曲目は同名の小説に触発されて書いた、メランコリックな音楽。
とても綺麗で良い曲だけれど、ほかの曲と比べると分が悪い気もしてしまう。最高なのは変わらないけれど。
CD6はキエル・マイエリング(1954-)の曲がメインに収録。
オランダの作曲家なだけあって、ホルトの影響を受けていると語っています。
確かにミニマルの影響もありますが、もはや普通にムード音楽。2、16曲目とか悪くない。
最後にペルトの「Fur Alina」をアレンジしたものを収録。
原曲の旋律が折り重なり不規則に鳴り響く、個人的には原曲より好きな響き。
CD7、お待ちかねのライヒです。「ピアノ・フェイズ」、20分以上かけでじっくりずらしてくれていて好印象。
ヴォランズの曲は淡く平坦な楽想が間を挟みながらひたすら反復されていく。
明るくも暗くもない無表情な印象だけれども、そこからの響きはとても心地よい。
ライヒ「六台のピアノ」は硬めの短い音で統一されているので歯切れのいい音の感触。
ジョン・メトカーフの作品はリズムの爽快に絡み合う、短くも印象的な淡い作品。
と思ったら、次のティム・セッドンの曲が異常なまでに爽快でカッコいい、ノリノリな作品でノックアウト。
CD8、ユリアーン・アンドリーセンの「ヘドウィグの肖像」からカノンの部分を抜粋したものは
最初は美しいのびやかな音楽が続くけれども、そこからカノン第3のようにファニーなリズムが出てきたりして侮れない。
第4はもはやファンキーだし、その後も音楽性はなかなか幅広いもののブギウギなリズムが多いのが面白い。
ウィム・メルテンはまあ通常進行ですが、重くも激しいリズムにメランコリックな旋律が踊る短くてなかなかかっこいい曲。
ルイ・アンドリーセンは彼らしい鋭いコードが突き刺さるぎくしゃくした音楽。うむ、かっこいい。
でも彼の一番ミニマルな音楽って「デ・ステイル」なイメージの自分。
こっちのペルトのほうは原曲。こっちの方が素直に聴きやすいかな。
ヤコプ・テル・フェルトハウスはいつもいかれた曲なので期待してましたが、それに見合った
落ち着きながらも細やかな動きと変拍子がくすぐったい実に軽妙な作品で面白かった。
CD9。ピアノ4台。お待ちかねのフィットキン、「Totti」は細かい伴奏相手にいつもの旋律の掛け合い。
「White」のほうはもうちょっと重々しい感じ。個人的にはTottiの方が好きだなあ。
トム・ジョンソンは彼らしいコンセプチュアルなミニマルで、このアルバムでは異色の無機質な感触。
ジェフスキの「パニュルジュの羊」を出してくるとは思わなかった・・・純粋に嬉しい。
この間違えたら弾きなおしをさせることによる偶然的なモアレ効果を狙った傑作、やっぱり楽しい。
NYで育ったアフリカ系ミニマル作曲家ジュリアス・イーストマン(1940-90)の作品は
文字通りミニマルな、一定のパルスの中で少しづつ音を変え響きを変える。
30分の大作でありながら非常にミニマルの文字を想起させる内容です。じわじわ迫るところがカッコいい。
おそらくこのリズムセンスは彼のルーツに根付いているものがあるでしょう。
CD10。ピアノ2台。グラスの「イン・アゲイン・アウト・アゲイン」は1968年の初期作品で
ライヒのピアノ・フェイズと非常に似た、というか同じような構成なので安心してミニマル感覚に楽しめる。
エイジンハ4曲目は一時間近い大作の主題部分。メランコリックな音楽が滔々と流れる。
普通にびっくりするくらい映画音楽みたい。デイヴィッド・ラング作品は
トレモロ音型で終始進行するパレシュタイン作品と先ほどのイーストマン作品が合わさったような印象。
ラストのアクセントが重苦しく絡むあたりかっこいい。
ヴァン・ヴェーンの自作自演、タイトルからも想起できる、まさにホルトの「カント・オスティナート」風作品。
あるいは7拍子が基本であることから彼の「Meandres」的というべきか。
さてとうとう最後のCD11、ピアノ2台のための作品集。ユップ・フランセンス(1955-)は
ルイ・アンドリーセンに師事したやはりオランダの作曲家。
のびやかな旋律が位相差で響いてくるのが基本の作風でしょうか。
「Entrata」は開放的な響きですが、「Old Songs New Songs」は落ち着いたそれ。
盛り上がりとか聴いていると、Laraajiの音楽に似たものすら感じる心地よさ。
「Between the Beats」は他2曲より鋭いリズムで幾分メランコリックというか、ライヒのような印象。
ラビノヴィチも案の定収録。ロマン派の影響が強い、いつもの彼らしい作風。あざといけど、今回はなかなか趣味に合った。
最後の大トリはなんとモンク。メランコリックなワルツが徐々に彼女らしい歌いまわしで
熱を帯びていく様は非常にかっこいい。ラストとしてはなかなか味のある良い曲です。



Compositions for String Quartet and Percussion Trio
Georges Aperghis; Triangle Carre
Francois-Bernard Mache; Eridan, Quatuor a cordes opus 57
Iannis Xenakis; Okho
Allain Gaussin; Chakra

Arditti String Quartet  Trio le Cercle
1991 Disques Montaigne  782002

弦楽四重奏と打楽器三重奏という異色な組み合わせの作品たち。まあどちらか一方のみの作品もありますが。
ジョルジュ・アペルギス(1945-)は、この「四角い三角形」を聴いたのが衝撃的なファースト・コンタクトでした。
四角は弦楽四重奏、三角は打楽器のトリオをあらわし、それぞれが西洋、東洋(というか非西洋)を代表しています。
打楽器は世界中のいろんな民族楽器を使いながら、次第に全体で一体化するように奏でられます。
第2楽章の、声も使う激しい動きはやはりリズミックで印象的。でも一番短い。
第3楽章でみられる、それまでの要素も内包しながらの長い発展が中核的な見物でしょう。
フランソワ=ベルナール・マーシュ(1935-)はメシアンに師事したGRMの作曲家。
どちらかというと電子音楽作曲家としての側面が有名ではないでしょうか。
弦楽四重奏曲の「Eridan」、ペルシャの民族楽器のようなボウイングによる野太い響きで、簡素な音型が反復していく。
その中から次第に動きが激しく広がっていき、そこからポリフォニックでノイジーな次の部分へ。
さらにレガートな動機も組み合わさって展開する、なかなか激しくて飽きない曲です。
ヤニス・クセナキス「オホ」の音源はこれまで聞いた中ではペドロ・カルネイロらの演奏が断トツですごかったのですが、
このトリオ・サークルによる演奏も負けず劣らず。カルネイロのようなスマートさは薄いですが、
硬いどっしりした音色でばんばんと容赦なく鳴らしたてる。適度な残響のある録音もプラス。
個人的には速めのテンポで響きに溺れることができるこちらの方が好みですが、まあここらは人それぞれでしょう。
アラン・ゴーサン(1943-)もやはりメシアンに師事。GRM・IRCAM双方の在籍経験を持ちます。
「チャクラ」は弦楽四重奏のための作品。きしみを上げて弦が激しくノイズをグリッサンドする。
それが次第に変化して様々に移ろいゆく曲。激しいですが、なんていうか、どこかノイズドローン的な印象。



Roger Heaton
Steve Reich; New York Counterpoint
Glyn Perrin; Like He Never Was
Walter Zimmermann; 25 Karwa Melodien
Tom Johnson; Rational Melody No.1, No.21
Morton Feldman; Bass Clarinet and Percussion
Christopher Fox; Stone:Wind:Rain:Sun
Gavin Bryars; Three Elegies for Nine Clarinets
Ennio Morricone/D.Smith and R.Heaton; Cinema Paradiso

Roger Heaton,Clarinets  Simon Limbrick,Perc.  Dave Smith,P.
1994 Clarinet Classics  CC 0009

アンザンブル・モデルンやロンドン・シンフォニエッタ、バラネスクやアルディッティ四重奏団といった
そうそうたる顔ぶれとも多くの演奏経験のあるロジャー・ヒートンの、多重録音によるクラリネット作品集。
ライヒの「ニューヨーク・カウンターポイント」は現代系クラリネットCDなら入れていて不思議のないレベルのメジャー度。
両端楽章はちょっと硬い音を出しすぎな気はしますが、しっかりまとまった演奏で落ち着いて聴けます。
ペリンの4重奏曲はこのCDのために書かれた作品、ということは初録音でしょう。
同じ旋律を異なったテンポで演奏する、というとライヒみたいですが、実際の音楽は全然違います。
間に沈黙や、サンプラーのふとした加工を挟みながら進行します。
彼のポスト・セリエリズムとロックバンドでの活動、双方の作風が見られる・・・らしい。
ワルターのほうのツィマーマン作品は、題どおりドイツの舞踏曲を基にした二重奏作品。
軽やかなメロディーが3度和音を基調にしながら素朴に歌われます。解説でRVWやグレインジャーに例えられているのも分かる。
トム・ジョンソンのソロ2作品は、もとは全37曲あるものからの抜粋。バスクラとクラによる、どちらも短い素朴な一品。
6音音階による、非常に単純な構成は確かにミニマリズムと言えるけれど、それとは全く違う、
表現主義の和音洪水に侵されていないところが特徴的。
21番は思い切り沖縄音階なんですが、その構成は爆笑もの。解説にある楽譜を見れば絶対わかります。
フェルドマンの曲は、金属打楽器中心のぼやけたドローンに、バスクラが一つ一つ音を置いていく。
打楽器には時折、鍵盤系のはっとする和音が現れるあたりが実に何時もどおり。
後期の作品らしい、聴いていて時間の感覚が狂うような、静謐な逸品。この時期(1981)にしては16分と短め。
クリストファー・フォックスの曲は、ジョンソンやW.ツィマーマンの友人らしい、似た感覚の単純さ。
北イングランドの風景を念頭において作られた、ちょっと憂いがある二重奏作品。
ブライアーズのエレジーは、彼らしいメランコリックな美しさ漂う20分弱の作品。
9本のクラリネットによる、流麗なアンサンブル作品。自分には合わない彼の曲のなかでは珍しく、かなり気に入りました。
最後は「シネマ・パラダイス」であっさり〆。ちなみにピアノ出演はこれだけです。
演奏は、ちょっとお堅いですが技術は安定したもの。ちょっとキー操作の音が多いあたり残念。



Berio & Denissow  Works for Voice and Chamber Ensemble
Luciano Berio; Folk Songs, Chamber Music
Edison Dennisow; La Vie en rouge

Ensemble fur Neue Musik Zurich  Jurg Henneberger,Cond.
2009 Hat hut  hat[now]ART 168

べリオの「フォーク・ソングス」は有名な初期の代表作の一つ。
まだ彼がセリー主義なんかに突っ走る前の作品で、民謡編曲がほとんど。
おかげで、淡く響く独特の感性が穏やかな調性音楽の中で調和する、実に聴きやすい作品。
この演奏はあっさり綺麗に響かせてくれて、しかもダイナミックな
ところもしっかり見せてくれるので、気楽に聴けて良いですね。
「チェンバー・ミュージック」はその5年ほど後ですが、その分セリー音楽にしっかり近づいている。
ジェームズ・ジョイスのテキストを使った、彼らしい浮遊感が味わえますが、
やっぱりまだこの作品の頃は思いっきりセリーを使っているわけではない。
あくまでも要素の一つに12音技法を使っている程度。むしろ調性的。
デニソフ「La Vie en rouge」はテキストのBoris Vianが詩人兼ジャズトランぺッターという経歴。
そのためか、音楽も実にボーダーレスなものを感じ取れます。
ウェーベルンのような音楽からシャンソン、ビバップのようなジャズからマーチまで。
それらが混然となって、前衛的なデニソフのスタイルの中で交互に湧き出てくる。
さっと流れるような演奏が実に聴きやすい。



Berlin Philharmonic Wind Quintet - Hungarian Music
Endre Szervanszky; Wind Quintet No.1
Gyorgy Ligeti; Six Bagatelles for Wind Quintet, Ten Pieces for Wind Quintet
Gyorgy Kurtag; Wind Quintet Op.2
Gyorgy Orban; Wind Quintet

Berlin Philharmonic Wind Quintet
1995 Bis  BIS-CS-662

ベルリンフィル木管五重奏団による、現代ハンガリーの木管五重奏曲集。
エンドレ・セルヴァーンスキー(1911-77)は戦後ハンガリーの代表的な作曲家。
「木管五重奏曲第1番」は53年の作曲ですが、ハンガリー民謡の旋律美を
素朴に表示しながらも、適度に近現代の音楽手法を盛り込んだ実に美しい作品。
そこに、晩年ようやく12音技法に手をつけながらも終生戦乱と冷戦下の共産党に翻弄された
作曲家の活動の苦心を垣間見るようです。
リゲティ「6つのバガテル」はおなじみ「ムジカ・リチェルカータ」から抜粋編曲したもの。
ベルリンフィルメンバーが吹くと、ここまで貫録と古典さがにじみ出るものかと感嘆です。
性急で諧謔的な「ディヴェルティメント」的1曲目から痛切で悲嘆的な音楽まで、
音階の構成音を一つずつ増やして作曲するような数理的なアイデアで作曲されたとは思えないほど。
亡命したリゲティに対しハンガリーで今も頑張るクルターク、「木管五重奏曲 作品2」は
動乱後の柔軟政策を若き彼が取り入れた結果を如実に表しています。
ウェーベルン風のミニアチュアな世界。第5曲にみられる、即興演奏による音響的な結合。
彼の音楽は決してとっつき易くなく、面白味も薄い場合があったりさえしますが、
この音響や構成への緊張感持った作曲姿勢は本当に尊敬します。
リゲティ2つめ「10の小品」は亡命後の一番先鋭的な頃の作曲。
そのため音響的な鋭さにおいても非常に特徴的です。最初の響きはロンターノみたい。
けれどその、構造とは裏腹に不思議なまでにあっさりとした印象は
最後の音に書かれた「不思議の国のアリス」からの引用を思わせる。「これでおしまい?」
ジェルジ・オルバーン(1947-)はルーマニア出身の、重鎮の一つ下の世代。
道化のような、サーカス的音楽を描く、実に淡く洒脱で軽快な音楽。
音楽も名作なものばかりですが、やはりこの演奏手腕には驚かされる。



Ai Confini / Interzone
John Hassell; Pigmy Dance
Bebo Baldan;Pil
Peter Gordon; The Departure
Antinomia; Between Two Mirrors(Stefano Boccadoro)
Arturo Stalteri; Arabesque
Wim Mertens; Slam
Michael Nyman; Final Score Part 1
Steve Reich; Music for Pieces of Wood
Harmonia Ensemble; Erik(Alessandra Garosi)
Eddy de Fanti; Djembe
Alessandro Pizzin; Daughter Bubble
The Durutti Column; Megamix(Vini Reilly)

1993 New tone  nt 6714

ライヒが聴きたいがために買った、ポストモダンなアーティストの曲を集めたコンピ。
ジョン・ハッセルの「ピグミーダンス」、民族的なリズムの複雑に絡み合うリズミカルな曲。
フリージャズな自作自演のトランペットが、シンセや打楽器のビートに乗るさまはちょっぴりモルヴェル風。
Baldanの曲はすごくエスニックなイージーリスニング調。
ピーター・ゴードンはまあまあCDも出てて、以前買ったこともあるポストミニマル系の人。
(いつもどおりですが)ジャズやロック、カントリーなど別ジャンルの影響が強い音楽。
いくつかのモチーフが徐々に組み合わさっていく、ダンスのための作品というのが納得出来る内容。
気だるげな進行ですが、徐々にセンチメンタルに盛り上がる様はカッコいい。
ヴェネツィア民謡風の(伴奏が微妙に奇異なシンセの)音楽を聴かせるのはAntinomia。
Stalteriの「アラベスク」は、グラスとライリーを足して割ったようなキーボードソロ。
チープですが、まあまあ地味な構成なので案外悪くないかも。
メルテンの「スラム」はいかにもセンチメンタルなピアノソロ。
ナイマン、いつも通りすぎる(でも裏がなく明るい)リズミックな曲。
さてライヒの「木片のための音楽」、この音源はライヒ自身が参加した自作自演音源です。
超正確、というわけではないですが無機質に淡々と進んでいく感覚は実にこの曲に合っている。
しかも進行具合が手馴れた感じ。実にスムースに位相ずらしをやってくれる。
この曲はあんまり有名じゃないだけに、この音源があるのは嬉しいことですね。
ハルモニアアンサンブル、アンニュイな部分とリズミカルな楽想の絡む普通な室内楽曲。
Fantiの「デジャンベ」は打楽器とシンセによる、ころころしたリズミカルな佳曲。これ楽しい。
Pizzinの曲はシンセによる即興的な楽想。The Durutti Columnはディスコなビートのシンセなナンバー。
面白かったのはハッセル、ゴードン、ライヒ、Fantiあたりかなあ。



Set of Five
John Cage; Nocturne
Henry Cowell; Set of Five
Alan Hovhaness; Invocations to Vahakn
Somei Satoh; Toki no Mon
Lou Harrison; Varied Trio

The Abel Steinberg Winant Trio
1991 New Albion  NA 036 CD

ニュー・アルビオンおなじみのトリオが贈る、アメリカの聴きやすい現代音楽作品。
ケージの「夜想曲」は、彼40年代の聴きやすい作品の一つ。間の多いながらも美しく響くピアノとヴァイオリン。
まだ前衛思想でいっぱいになる前の、旋律的な音楽が聞けます。
クラスターの提唱者ヘンリー・カウエルの「Set of Five」、
ゴングやシロフォン、トム群といった打楽器が縦横無尽に活躍する不思議な音楽。
ピアノやヴァイオリンは比較的まともで、むしろ素朴でかわいらしい旋律線を奏しているのに、
この打楽器のクラスター的な効果が音楽を格段に異化している。
この流れがそのうちハリー・パーチや下記のハリソンにつながっていくんだなあ・・・
アラン・ホヴァネスの「Invocations to Vahakn」は1946年初期の作品。
その後の神秘主義の中にはまり込んだような音楽を思うと、ここまではっきりとリズミカルな音楽が聴けるのは珍しいかも。
まあもっとも、強い東洋かぶれの音楽であることには全く変わらないんですが。
佐藤聰明の「時の門」、ヴァイオリンの細く長い歌に、ピアノと打楽器が儚く伴奏を添える。
やはり日本の長唄のような感覚が、このエキゾチシズムだらけの選曲の中で非常に落ち着きます。
やっぱり佐藤の曲は、これくらい音数が少なく素朴な方が魅力的。
ルー・ハリソンの「Varied Trio」はカウエルの曲をさらに推し進めたような東洋主義。
ガムランというか、1曲目は日本的な感じがしなくもない。
でも2曲目なんかのどこか虚ろな響きはいつものガムランかぶれなハリソン節。
ちなみに2曲目の打楽器はボウルを箸でたたいた音、終曲はフライパンです。
やっぱりこのトリオで聴くと、この変な構成が当たり前に思えるからすごい。
音楽はまあどれもそこそこいい感じ。あえてどれかと言うなら佐藤か、ハリソンか、といったところ。



The Ceiling of Heaven
Donald Crockett; Horn Quintet"La Barca", The Ceiling of Heaven
Allen Shawn; Sleepless Night, Wind Quintet No.2

The Conference Faculty
2005 Albany  TROY777

カリフォルニア出身の作曲家ドナルド・クロケット(1951-)の一作目、
「ホルン五重奏曲「舟」」は1999年に作られた15分ほどの単一楽章作品。
神秘的で美しい冒頭から和音のブロックによる伴奏でホルンが伸びやかに歌う。
ロンド風というよりは落ち着いたロックやジャズロックに近いような動き。
中盤の静かな旋律の掛け合いなどを見ても、非常に美しく穏健で近代的な作風です。
NY出身のアレン・ショーウン(1948-)はナディア・ブーランジェの師事経験あり。
現在はヴァーモント在住です。「眠れぬ夜」は単一楽章の弦楽四重奏曲。
こちらも神秘的な冒頭ですが、こちらはかなり緊張感漂う音楽。
そこからやがて感情的に盛り上がり、悲歌を熱情的にヴァイオリンが歌います。
現代の近代作風的作曲家らしい、絶妙な調性感で成り立つクラシカルな意味で美しい曲。
「木管五重奏曲第2番」は亡くなった友人オーボエ奏者に捧げられています。
調性感が時折希薄になりながらも、別の箇所では実に美しく旋律を歌い上げる。
第4楽章では華やかで軽快なアレグロを聴けます。
ちなみにこの作風は明らかに、彼が強く影響を受けているシェーンベルク由来のもの。
でも全体的には調性感ははっきりとした、近代音楽的な耳でも聴きやすい作品。
第3楽章のフーガによるラルゴは、ちょっとトバイアス・ピッカーの「Old and Lost River」ぽい。
最後はクロケットに戻って、ピアノ四重奏のタイトル曲。Kenneth Rexrothの詩に基づく作品。
ピアノの特殊奏法によるハンマー音で幕をあけ、メランコリックな美しいファンファーレが響きます。
快活な第2楽章、たゆたいながら劇的に盛り上がるエレジーから激しい結尾へ。
ふたりとも方向性は違えど美しい作品であることは共通しています。
クロケットの方が甘くてショーウンの方は作曲技巧的な美しさが強い感じ。
演奏はとくに問題なし。流れるような音楽の美しさをうまく表現出来ていると思います。
いやあ、買うときは全然期待してなかったけれど、意外にも大きな当たりでした。



パーカッションの妙技
John Cage; Second Construction
Henry Cowell; Pulse
Torbjorn Iwan Lundquist; Sisu
Yoshihisa Taira; Hierophonie V
Akira Nishimura; Kala
Akira Miyoshi; Rin-sai
Isao Matsushita; Airscope II
Minoru Miki; Marimba Spiritual

Keiko Abe,Marimba  The Kroumata Percussion Ensemble
1994 BIS/King  CD-232+462 / KKCC-9013/14

それまでにBISから出ていた2枚を纏めて再発したもの。
ケージの「セカンド・コンストラクション」で開始とか渋いです。
ごつごつした曲をびっくりする位洗練してまとめています。原始的だけれど非常にスマート。
カウエルの「パルス」、7拍子の中で拍を自由にゆらめかせて絶えず音を響かせる。
音響的にはケージとかなり似ているけれど、構造はずっとしっかりしたもの。
ルンドクウィスト(1920-)の「シス」、スウェーデン語で闘争心、強情、不可侵といったような意味らしい。
音楽は3楽章で、激しくはないけれど絶えずはっきりと進む強さ(パルス)をもったもの。
平義久(1938-)の「イエロフォニーV」、この中で一番気に入りました。
ティンパニの4台それぞれに奏者がつき、掛け声を出しながら強烈な一打を切り付けあう。
即興演奏による間奏部など、非常に東洋的な感覚の作品。カッコイイです。特にラスト。
西村朗「カーラ」はマリンバと6人の打楽器奏者のための作品。
サンスクリット語で「時間、速度」を意味する題、構造も7種のターラ(時の輪)を模した周期が
絡み合い、快速テンポで進んでいく。きらきらとした心地よい楽想です。
三善晃「輪彩」は様々な断片が爆発しては瞑想する、いつも通りの作風。
イメージの喚起と持続の発現に重きを置いた、間の強い即興的な作品。
武満徹の「雨の樹」は音源を既に二、三持っていますが、これが一番硬質な冷たさを持っています。
BISの冷たく奥ゆかしい録音はこの曲にあっていますね。きらきらゆらめく独特の音楽。
そういえば、この曲がクセナキス演奏の第一人者でもあるグァルダに捧げられていたとは。
まあ武満とクセナキスは親交があったようだし驚くほどではないか。
松下功の「エアスコープII」はマリンバとテープのための作品。
マリンバの特殊奏法やテープの具体音と相まって、不可思議な音響がふわふわと広がります。
最後は三木稔「マリンバ・スピリチュアル」、被献呈者による演奏は落ち着いてます。
派手な熱気はないものの、きちんと盛り上げ方を仔細に決めて魅せてくれる。
演奏は、文句などなし。なんせ世界で始めて打楽器アンサンブルの地位を国際的に確立した人たちです。
安倍圭子のマリンバも安定してます。録音は何時もどおり遠めな感じですが、まあ音量上げれば大体は済む話だし。



狩の音楽〜オリジナル狩猟ホルンによる
Jagdmusik -fur originale parforcehorner
Jules Cantin; La Grande Messe de Saint-Hubert
GIoacchino Rossini; Le Rendez-Vous de Chasse
Friedrich Deisenroth; Zwei Alte Deutsche Jagdsignale, Marquis de Dampierre, etc.

Munchner Parforcehorn-Blaser
1982 Orfeo  C 034-821 A

安価で売っていたので、なんとなく買ってみた。
ジュール・カンタン(1874-1956)はフランスの、古い狩猟音楽の収集家でその道のエキスパートだったそう。
「サン=ユベールのグランド・ミサ」、堂々とした序奏に始まり、その後もコラール的で
実に古典的な音楽が並ぶ。とても1934年出版作品とは思えません。5曲目のホケトゥスとかいいよね。
ロッシーニの「狩りのランデブー」、まあホルン・アンサンブルの代名詞な作品ですね。
勇壮なホルンが聴きたいときはこれ、という人もいるんじゃないかしらねえ。
まあでも、この曲は好きでも嫌いでもないからさっと聞き流し。
これ以降の曲はフリードリッヒ・ディーゼンロス(ダイセンロート?)(1903-)の作曲というよりは
彼による古楽の三声〜四声編曲と言ったほうがより正確。
この人吹奏楽編曲とかもやってるらしいですが、詳しい情報がよくわかりません。
そんなわけで、内容は構成がどうこう言うもんじゃない狩猟用シグナルやファンファーレ。
のんびりその西洋的牧歌音楽な響きを堪能しましょう。
演奏者のミュンヘン狩猟ホルン・ブラスアンサンブル、いい感じに音が割れてて迫力あって実にいい。
ちょっと低音が弱い気もしますが、まあこれは演奏というより録音が主旋律重視な傾向だからでしょう。



soundCd no.2
John Coltrane; Venus from Interstellar Space Revisited
John Cage; Excerpt from Sonatas and Interludes, 4'33"
James Tenny; Ergodos II With Percussion Responces
Carl Stone; Excerpt from Guelaguetza
Polar Goldie Cats; Cat Nest
Kraig Grady; Gending Aptos

2004 soundNet Recordings  SNR-CD 002

「西海岸のアンダーグラウンド・ミュージック&アートの発信、保護の為に活動する団体」(by Art into Life)、SASSAS。
彼らが催したイベント「sound.」でのライヴ録音のうち(今回は)メジャーどころの作家の作品をあつめたCD。自身のレーベルからです。
ジョン・コルトレーンの「Venus」は電子音、打楽器、ギターの共演。
電子音がふよふよと漂い、トムがころころと跳ね、やがてギターがつぶやくあたりからフリージャズの匂いが濃厚に。
フリーだけれどどこかソリスティックで感傷的に演出されるところは、さすがジャズ出身のコルトレーン。
演奏はGregg BendianとNels Cline。後者の方は、以前にも参加されてるCDいくつか買ってます。Alex Cline Ens.とか。
ケージの「プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード」、説明不要の名作ですね。
自分はこの曲全部を通しで聴くと流石につらく感じてしまうんですが、こういう抜粋だとその美しさに十分浸れます。
今回は第4インターリュード、ソナタ13、15、16。ジェームズ・テニー(!)による演奏です。
そのテニーの作品は、元々電子音楽作品「Ergodos II」に翌年器楽パートを設けたもの。
「〜with Instrumental Responses」なら既にHat盤で持ってますが、あちらはヴァイオリンとピアノがライヴ演奏でした。
こちらはもちろん打楽器ソロとの演奏。変調を施されていないだけにエレクトロアコースティック作品の匂いが
強いですが、打楽器の特殊奏法は、電子音のうなりとインパクトにおいては大差ありません。
お次はテニーが演奏する「4分33秒」。ストップウォッチで計ってます。何かごそごそやってる。
カール・ストーンの抜粋は、いつも通りのぐちゃぐちゃカットアップ。せわしなく目まぐるしく音が空回り。
ライヴの録音のため、残念ながらオリジナルを聴くより音質が良くない。仕方ないけれど。
以下の二人だけは初めて聞いた名前。
Polar Goldie Catsはちょっとヒルビリーなロック音楽がだらだらとミニマルに流れていく。
Kraig Gradyのほうはファゴットとグロッケン、ベースによる素朴で美しいのどかな音楽にタンバリンのリズムがひそやかに加わる。
だんだん静かに盛り上がっていくところがいいです。アメリカ的民族音楽の匂い。
二人とも聴きやすい作風ではありました。



Compassion
John Tavener; Song of the Angel
Shulamit Ran; Yearuing
Chen Yi; Romance of Hsiao and Ch'in
Hans Werner Henze; Adagio adagio
Yinam Leef; T'Filah
Poul Ruders; Credo
Somei Satoh; Innocence
Wolfgang Rihm; Cantilena
Iannis Xenakis; Hunem-Iduhey
Lukas Foss; Romance
Karel Husa; Stele
Betty Olivero; Achot Ketana
Gyorgy Kurtag; Ligatura
Philip Glass; Echorus
Steve Reich; Duet

Edna Michell,Violin  Czech Philharmonic Chamber Orchestra  Lukas Foss,Con. etc.
2001 Angel  72435 5 7179 2 4

エドナ・ミッチェルが中心になって演奏する、彼やユーディ・メニューインに捧げられた現代曲を集めたオムニバス。
メニューインの80歳記念の曲が多いですね。
タヴナーの「天使の歌」はオケをバックにソプラノとヴァイオリンが美麗な二重奏を奏でる。
ハレルヤの一語のみが歌詞の、伝統的な民謡風の彼にしてはまだ明るめな透明さを持った曲。
ランの曲はロマンス的な音楽ですが、陰鬱で感情的。不安定に揺れるメロディーが、ソリスティックに歌われながら盛り上がる。
一方チェン・イのほうは中国音階を使ったのどかなロマンス。
ここではヴァイオリン二重奏とオケですが、題にもあるように、もともとは中国民族楽器をソロに想定した曲です。
ヘンツェのピアノ・トリオは、そんなひねたところは無い、近代的な響きの美しく緩やかな曲。
リーフの曲はヴァイオリン三重奏のための、ヘブライ語で「祈る人(Prayer)」の意。
それぞれが個々に歌いながら、時に干渉しあい、同一に聴こえるようなそぶりも見せる。
ルーダースの「クレド」はヴァイオリン二重奏とクラリネット、弦楽のための音楽。細かく錯乱しながら重く美しく盛り上がる。
佐藤聡明の「イノセンス」はヴァイオリンにチェロ6台とソプラノ。
いつも通りの非常に透き通った天上世界。高音しか響かないところが、まるで天界の輝き。
リームの、ヴァイオリンソロのための「カンティレーナ」は終始ppで奏される、非常に穏やかで渋い曲。でもちょっと技巧的。
クセナキスの曲はヴァイオリンとチェロのための作品。晩年(1996)の3分ほどの小品です。「オメガ」並みの微妙さで泣ける。
ルーカス・フォスの「ロマンス」、オケ伴奏のヴァイオリンとソプラノによる非常に美しい曲です。
三拍子の細かな拍子感がアメリカ的なライトミュージック。でも内容はしっかり詰まってます。
カレル・フサのヴァイオリンソロ曲は、彼のメロディアスな手腕が十全に発揮されたソリスティックな曲。
オリヴェロの作品は弦楽にクラ、ソプラノに3つのヴァイオリンソロと独奏だらけ。
13世紀の新年を祝う歌が元になっているそうで、バロックの断片が暗く混然となって響き渡る。
クルタークの曲はヴァイオリン二重奏による短い曲。終始弱音で混然と音が交じり合う。
グラスの曲は実に何時もどおり。弦楽とヴァイオリン2丁にナレーターがGinsburgのWales Visitationを朗読する。
最後はライヒの「デュエット」で閉め。ヴァイオリン二重奏と弦楽のための爽やかな作品。やっぱライヒはいいね。
これだけ様々な作曲家から作品を提供されているだけあってやはり演奏は申し分ない。
勢いはありませんが、曲も穏やかなものが多いので音が合ってます。



Contrasts
Henryk Gorecki; Totus Tuus
Jaakko Mantyjarvi; Ave Maria d'Aosta, I was glad, Come Away,Death
Coen Vermeeren; Keanskes Leste liet
Morten Lauridsen;La Rose Complete, Dirait-on, Sa nuit d'ete, The Shower
Edward Elger; My Love Dwelt in a Northern Land, Go,Song of Mine
Eric Whitacre; Lux aurumque, Water Night
Frantz Biebl; Ave Maria

Vocaal Ensemble Cantatrix  Great Jan van Beijeren Bergen en Henegouwen,Cond.
Aliud  ACD HN 034-2

グレツキの「全ては御身のもの」で始まり。けっこう早めでサラッと流れる。
特に綺麗さが引き立つわけでもなく、印象に残らなかった。
半年以上かけて取り寄せた割には、全然期待はずれだったかも。
ヤーコ・マンテュヤルヴィ(Jaakko Mantyjarvy)(1963-)はフィンランドの合唱曲作曲家。
なかなか人気の高い人物らしく、音楽の和声もけっこう洒落ている。
ちょっと現代的要素も盛り込んだりと結構手の込んだ曲を書いていますが、
聴いてるだけだとそこまでいい曲かは微妙。これは歌ってる方が楽しそうだ。
Coen Vermeeren(1962-)はオランダの合唱曲作曲家。
曲自体はなんてこと無い普通に綺麗な曲(ちょっとだけペルト寄りの暗さ)なんですが、
彼はなんとデルフト工科大学で航空宇宙工学を学び、そこで教鞭までとっているらしいから凄い。
ラウリッドソンの曲はやはり現代合唱曲の王道的な感動が聴けます。
ラメント的な部分は、彼の大ヒット作「O Magnum Mysterium」みたいな美しさ。
でもその曲自体は収録されていないという・・・
このCDで一番のビッグネーム、エルガー。彼らしいイギリス風の穏やかな合唱曲が2つ。
ウィッテカーは吹奏楽もいい曲書いてるんですが、知名度は合唱での方が上かな。
吹奏楽はど派手でノリノリな音楽も多いですが、ここでは非常に美しい和音を聴かせてくれます。
最後、フランツ・ビーブル(1906-2001)の「アヴェ・マリア」は彼の代表作のひとつの様子。
明るく穏やかな、たしかに合唱受けする曲。自分にはそうでもなかったが。
録音が良くはないし、演奏もまあまあといったもの。あまり良くない意味で線が細く、もやもやしている。
まあマイナーCDはこんなものか。ラウリッドソンの曲が聴けただけ、このCDを買った甲斐はあったかな。



打楽器のための現代作品、ラグタイム、アフリカ音楽
Cage・Marta・Sary・Reich Ragtime・African music
Istvan Marta; Doll's House Story
Laszlo Sary; Pebble Playing in a Pot
John Cage; Second Construction
Steve Reich; Piano Phase(Marimba Phase)
Traditional African Music
George Hamilton Green; Log Cabin Blues(Blue Fox Trot),
Charleston Capers, Jovial Jasper(A Slow Drag)

Amadinda Percussion Group
1987 Hungaroton  HCD 12855

現代ミニマル打楽器作品などをメインに据えたアルバム。
イシュトヴァン・マールタの「人形の家の物語」、彼の音楽はクロノスカルテットで聴いて以来気にかけてます。
神秘的でどこか可愛らしいおもちゃの出す高音から、鋭く激しいタムのリズムが現れる。
ゴングのうなり、チャイムとシンセのユニゾンなどを挟みながらも、ひたすら音楽は疾走する。
ゴングの経過句の後に冒頭が淡く戻って音楽は終了。これ気に入った。
このCDはこの曲狙いで買っていただけに一安心。シンセでマールタ自身が参加。
ラースロー・シャーリ「ポットの中の踊る小石」はマリンバの跳ねるような楽句が淡々と続く。
非常にミニマル的な作品。これはこれで悪くない。
ジョン・ケージ「第2コンストラクション」、もはや古典と化した初期の傑作。
初期プリペアド作品にも似た、ごつごつした輪郭でプリミティヴな、けれどノリ良い音楽。
スティーヴ・ライヒ「ピアノ・フェイズ」、実際はマリンバでの演奏なので表記は「マリンバ・フェイズ」が正しい。
硬い音と快速テンポに加えてさらさらとずらしていくので聴きやすいです。
アフリカ伝統音楽2曲のほうは、素朴でリズミカルな素晴らしい曲、なのに曲名すら載ってないのが残念すぎる。
それとも、本当のオリジナルは曲名がないという落ちなんだろうか。
ジョージ・ハミルトン・グリーンのラグタイム・ナンバーはマリンバで奏でるノリノリの音楽。
やっぱこういうのは楽しくていいよね。
演奏、不安は全くなし。流石はアマディンダ・パーカッション・アンサンブル。
ダイナミクスは少ないけれど、その方がある意味ミニマルは楽しめる。



Sit Fast
Barry Guy;Buzz
Heinrich Isaac;O decus ecclesiae
Poul Ruders; Second Set of Changes
Tan Dun; A Sinking Love
Christopher Tye; Sit Fast
Simon Bainbridge; Henry's Mobile
Sally Beamish; in dreaming
Alfonso Ferrabosco; Hexachord Fantasy
Peter Sculthorpe; Djilile
Johannes Ockeghem; Ut heremita solus
Gavin Bryars; 'In Nomine'(after Purcell)
Elvis Costello; Put away forbidden playthings

Fretwork,viols  Michael Chance,Countertenor  Paul Agnew,Tenor
1997 Virgin  7243 5 45217 2 0

坂本龍一のアルバム「Out of Noise」にも参加している古楽器合奏団、フレットワークの作品集。
現代音楽作曲家、ベーシストのバリー・ガイ「Buzz」は
パーセルの作品を意識した、淡くも散文的な、コラール要素の強い作品。
特殊奏法のちょっとささくれた響きが広がる、ふわふわした印象。
ハインリヒ・イザーク(c.1450-1517)はジョスカン・デ・プレと同時代のルネサンス期、フランドル楽派の作曲家。
「O decus ecclesiae」、簡素ながらも美しく響く、対位法と六音音階のバロック音楽。
自分が以前から聴いているポール・ルーザスの「Second Set of Changes」は
デンマークの古い民謡をベースにした、ミニマル的な「スイング」感覚を持たせたもの。
タン・ドゥン「A Sinking Love」、パーセルの「ファンタジア第8番」の冒頭をモチーフにした曲。
彼らしい中国的なカウンターテナーの歌い方と、静けさの使い方。
クリストファー・タイ(c.1505-c.1573)の「Sit Fast」は、ここのバロック音楽の中で唯一定旋律(Cantus Firmus)を使っていません。
三声のメロディーがふわふわと絡み合う、薄いけれど非常に繊細で美しい音楽。
Simon Bainbridgeもパーセルを意識していますが、こちらは構造がより直接的。
簡素な三声構造に浮かぶ、怪しくも美しい、まるでしっかりしたフェルドマンみたいな響きの作品。
イギリスの女性作曲家サリー・ビーミッシュの「in dreaming」は、BBCのパーセル&ティペットの生誕記念に書かれたもの。
「テンペスト」がテナーで歌われる。トレモロ中心の緊張感が印象的。
アルフォンソ・フェラボスコ2世(c.1575-1628)はイギリスの宮廷音楽家。
古典的でありながら、新しい技法を好んだ彼らしい豊かな和声を聴かせてくれる。
オーストラリアの代表的作曲家ピーター・スカルソープの「Djilile」、相変わらずアボリジニの音楽をベースにした音楽を聴かせてくれる。
アボリジニのチャントが重く切なく響く、パーセル「Dido and Aeneas」に影響された曲。
オケゲム「Ut heremita solus」、題名に隠されたそのままの六音を使った、さすがは代表格な人物の曲。つまりオーソドックスな古典。
ブライアーズの「イン・ノミネ」はパーセルの同名曲に基づいた、彼らしいモノフォニックな音楽。
コステロはパーセルの他にダウランドのようなメランコリックさも目指したカウンターテナー付の曲。
ハインリヒ・イザーク、スカルソープの曲が個人的にお気に入り。



Frank Martin; Mass for double choir, Passacaille
Ildebrando Pizzetti; Messa di Requiem, De Profundis

The Choir of Westminster Cathedral  James O'donnell, The Master of Music & Organ
1998 hyperion  GAW21017

ウエストミンスター大聖堂聖歌隊が歌う、近代ミサ曲2つ。
マルタンの「二重合唱のためのミサ曲」は、バラードの香りが漂う、洒脱な一品。
それでいて、ミサ曲本来の荘厳さもきちんと響かせているあたり気品が漂います。
この人は作品によって無調などもばりばり展開する人なんですが、この作品は非常に穏健で美しい。
「パッサカリア」はオルガンソロ。ちょっと厳格な作りの真面目に暗いそれ。
イルデブランド・ピツェッティ(1880-1968)の「レクイエム」は
マルタンのそれに比べると非常に厳格で、本来のミサ曲の風格を持っています。
特に終曲「Libera me」の綺麗さは別格。
やっぱり自分がミサ曲に対して持っているイメージはこういう美しさなんだなあと思いました。
「デ・プロフンディス」もその美しさを十全に詰め込まれた音楽。
それでいて、静かな暗さもそこか併せ持つ、深く染み渡る旋律です。
演奏は線が細めで非常に美しいサウンド。ハイペリオンの録音の中でも一番気に入った方。
グラモフォン誌の年間最優秀賞を取っただけの録音はある。



Klaas de Vries; Strijkkwartet No.1
Bart de Kemp; Ciaccona
Oscar van Dillen; Strijkkwartet
Astrid Kruisselbrink; String Quartet
Edward Top; String Quartet
Hans Koolmees; rozen

DoelenKwartet
2007 Etcetera  KTC 1339

ロッテルダム・コンセルヴァトール出身の作曲家の弦楽四重奏を(メインに)集めたCD。
Vries(1933-)の「弦楽四重奏曲第1番」はFマイナーの和音が全体を支配する曲。
第1楽章はとりとめない夢のように、第2楽章は荒々しい嵐のように。
強奏はユニゾンが多く、リズムが強調されます。弱奏は逆に、静寂を愛でるかのように淡い。
de Kemp(1959-2005)の「シャコンヌ」は94年に書かれた晩年の作品。
ポップ音楽のような不思議にリズミカルなピッツィカートからメロディが浮き上がり、古典的な要素が様々に味付けされる。
時によどみ、時に切羽詰るような音楽はどこか伝統的な西洋音楽とは違うものを感じさせます。
Dillen(1958-)の「弦楽四重奏曲第1番」は騒々しさと静寂が入れ替わる前衛的な単一楽章作品。
Kruisselbrink(1972-)の「弦楽四重奏曲」はムンクの絵画にイマジネーションを受けた3楽章制。
まさに世紀末的な、不穏げな音楽世界。3楽章の「叫び」とか面白いです。
Top(1972-)の「弦楽四重奏曲第一番」もインスパイア元は絵画ですが、こちらはヒエロニムス・ボッシュ(ボス)の方。
怒ったように激しくばらまかれる音たち。無作為に脈絡無く広がる音楽はボッシュの奇怪な絵画に合っています。
それにしても彼の絵画はルネサンス期に書かれたとは思えない異常世界ですよね。
最後はKoolmees(1959-)の「ローゼン」、ソプラノ独唱、グロッケン、弦楽四重奏とテープのための作品。
鳥の鳴き声から聖歌風の悲歌、美しいソプラノとグロッケンの調べ。詩篇を歌う、非常に美しい音楽です。
演奏は、クリスピーの効いた鋭いものです。アンサンブルは微妙なところもあるけれど。



Europe
Iannis Xenakis; Xas
Krzysztof Penderecki; Quartet for Clarinet and String Trio
Paul Hindemith; Konzertstuck fur zwei Altsaxophone
Per Norgard; Roads to Ixtlan
Cristobal Halffter; Fractal - Concierto a Cuatro

The Rascher Saxophone Quartet
2001 BIS  BIS-CD-1153

クセナキスの「カス」、1987年の作品なので晩年のころです。
この時期特有の強烈な和音でモノフォニーに進む、相変わらず強烈な音楽。
ビブラートなしの図太い音がどろりと伸びて行く。実はこの曲、このラッシャーSx.Q.のために書かれたりしています。
ペンデレツキの曲は、作曲者の許可を得てメンバーのHarry-Kinross Whiteが編曲したもの。
93年の作品だから、当然のごとく聴きやすい響き。
夜想曲的なラルゴの影が強い、正直あんまり強い魅力が感じられない曲。
ペンデレツキも初期は良かったけれど、こうなると音響としても楽しみが薄いなあ・・・
ヒンデミットの曲は世界初録音らしい。今のリーダーCarinaの父Sigurd Rascherのために書かれたもの。
音楽は普通のヒンデミットしてます。8分ほどの曲。
ペア・ノアゴーの曲は一定の基音から徐々に落ちて行く、なかなか緊張感ある曲。短い3楽章構成。
最後はクリストバル・ハルフテルの「フラクタル」で締め。
冒頭のフラッターによる音塊から激しく動き回る主部、音響的には非常に爽快。
買う前からそこまで好きな曲はなさそうと思ったが、そのとおりだった。クセナキスとハルフテルくらいか。
演奏メンバーはニューヨーク・カウンターポイントの演奏で覚えていたけれど、
けっこうマイルドな響き。そんなにアタックが厳しくない。



打 - ツトム・ヤマシタの世界
Heuwell aTircuit; 「踊るかたち」からのヴァリエーション
ツトム・ヤマシタ;「人」の三楽章、渦(即興演奏)

ツトム・ヤマシタ、打楽器  藤舎推峰、能管  藤舎呂悦、鼓  佐藤允彦、ピアニスト
1995 Denon  COCO-78456

あの武満徹に「カシオペア」を書かせたほどの実力ある打楽器奏者、ツトム・ヤマシタを
一躍日本で有名にした日本初リサイタルの、歴史的なライヴ録音。
ヒューエル・タークイ(1931-)はルイジアナ出身、ABC交響楽団の打楽器奏者を務めたりした人物。
「「踊るかたち」からのヴァリエーション」は、「室内オーケストラと打楽器のための協奏曲」から
ヤマシタが編曲したもの。チャンチキを用いた日本的な表現や、口まで使った複雑なリズム処理が印象的。
最初は静寂だらけですが、どんどんと盛り上がっていきます。最後なんかソロとは思えない凄さ。
「<人>の三楽章」は鼓、笛、そしてピアニストが入ります。
かなり即興的な音楽ですが、とりあえずピアニストはピアノ弾いてません。壜を割ったり紙を鳴らしてるだけ。
先ほどの曲以上に和の要素が強いです。
「渦」はアンコール、完全な即興演奏。リズム要素がきっちりしていて、和風というよりアフリカン。テンション高くてノれます。
やはり技術は申し分ない。これだけの技量で聞かせるのだから現在の知名度も当然でしょう。
肉体的な表現も、いまとなっては古典的になりましたが、彼がやりだしたのがほぼ最初であるだけに偉大です。



安倍圭子 マリンバセレクションズIII
Minoru Miki; Concerto for Marimba and Orchestra
Toshiya Sukegawa; from 5 Pieces after Paul Klee Op.40
Maki Ishii; Marimba-Stuck mit zwei Schlagzeuger
Katsuhiro Tsubonoh; Meniscus for Marimba
Yoshio Hachimura; Ahania for Marimba
Minao Shibata; Imagery

Keiko Abe, Marimba  Hiroshi Wakasugi,Con.  Japan Phil. Sym. Orch.
1987 Denon  30CO-1729

三木稔「マリンバとオーケストラのための協奏曲」は、同年の「マリンバの時」、そして
彼の一番の有名作品「マリンバ・スピリチュアル」とあわせてマリンバの三部作となっています。
「生へのうめきのような」ものを示すピッツィカートど動的なものと、死を示す静的な構造が絡み合う。
そして、その中に生そのものとしてマリンバが激しく動きを添える。
助川敏弥「パウル・クレーによせる五つの小品」は、クレーの絵画のような、抽象的でありながら
どこか情緒を持った音楽を自由性、即興性をもって表現したもの。とりとめない、ちょっと素朴な趣き。
石井真木「二人の打楽器奏者をともなったマリンバ曲」は、マリンバ奏者が自身の判断で行う間に
二人の奏者は合わせながら伴奏を行う。音響的にも構造的にもマリンバが軸となるように設定された曲。
坪能克裕「メニスカス」は、レンズを通した像の拡大・縮小のような、音の密度がさまざまに引き伸ばされる
楽器を叩くこと自体について思いをはせた作品。響きが純粋に爽快です。
八村義夫「アハーニア」は、ウィリアム・ブレイクの預言書を題材にした、
個々の音が持つ指向をコントロールすることによる音空間の構築を目指したもの。
柴田南雄「像」は任意順で個性的な4つのフレーズからなる音楽。
不確定性だったりセリー風だったり非常にエネルギッシュだったり。



Century XXI UK A-M
Steve Martland; Re-Mix
Graham Fitkin; Flak
Orlando Gough; Drawning
John Godfrey; Euthanasia...
David Canningham; Canta
Laurence Crane; The Swim

1996 Felmay / New Tone  nt 6750 2 / 129806750 2

イギリスの新世代音楽とでも言うべき音楽についてのコンピ。
A to Mと題して、アルファベットごとに作曲家の名前やらにこじつけてます。
Jがジャケット、Bがこのプロジェクトについて、なんかはいいけれどOrlando GoughがHにくくられてたのは流石に笑った。
マートランドの「Re-Mix」は、私が持っているどの録音とも別なものの様子。
チェンバロやヴァイオリンの音がよく聴こえる、会場の残響が多い録音。テンポが早く、爽快。
フィットキンの「Flak」はピアノ2台8手の明るく爽やかな曲。
いつも通りのフィットキン節で安心しました。美しい、ノスタルジックな調子が特に気に入りました。
オーランド・ガフ(1953-)の「Drawning」はアラビックというかエスニックと言うか、どこかチープな電子音楽。
だんだんリズムがのってきて、ノリ良いミニマル系音楽に。
ちょっとダウナーになったとおもったらPart2。ギターとか入ってきてさらに盛り上がり?ます。
Part3はさらにゆっくり、ピアノメインのゆるい曲。
全3部21分の大曲。電子音楽、というかMIDI音楽と言った方が聴感としてしっくりくる。
「Euthanasia(Susywimps)...」はアイスブレイカーメンバーの演奏。
サックス、キーボード、ベースによるフリーなジャズ風の音楽。
なんだろう、フィットキン+マートランドでフリーに崩したみたいだ。
ちなみにジョン・ゴドフリー(1962-)はマイケル・フィニッシーに師事経験あるらしいです。
一方、デイヴィッド・カニンガム(1954-)は実験音楽系でも名の知られた人。
「Canta」では、歌をマテリアルとした全曲に細かいディレイをかけて、不思議な世界を作っています。
ローレンス・クレーン(1961-)の「The Swim」は、元は短い映画のサントラらしい。
電子オルガンによる混沌としたドローンの中から、ゆっくりしたメロディーが浮かんでくる。
なかなか楽しめました。前衛的な曲が一つも無い・・・



甦る古代の響き 箜篌
一柳慧;時の佇いII
石井眞木;歴年1200 伶楽のための、作品101

佐々木冬彦、箜篌 ほか
1999 ALM Records  ALCD-2002

箜篌とは、西方起源の非常に古い伶楽のための楽器。正倉院に実物が保存されています。
解説は殆どがこの楽器の構造や復元についてで、かなり詳しい。これはこれで楽しめました。
ただ、曲についてこれっぽっちも書いていないのはどうよ。
一柳の曲は箜篌独奏の曲。非常に古楽風で、前衛さはとくに感じられません。気軽に楽しめました。
石井のほうは伶楽のための作品。平安建都1200年記念として京都市から委嘱されたもの。
こちらも非常に古い響きですが、そこに独特の前衛構造を持ってきているあたり彼らしい。
こういう無骨な音を聴いていると、どこか不思議な気分にさせてくれるのがとても面白いです。
たった20分しか収録されていないCDですが、良かった。



Ensemble de Violoncelles
Iannis Xenakis; Windungen
George Apergis; Totem
Robert Paskal; Au plus profund d'un etrange reve eveille
Camille Roy; Tresses
Vinko Globokar; Freu(n)de

Centre de Pratique des Musiques Contemporaines de I'ENMD d'Evry
2005 Ameson  ASCP 0506

現代音楽作曲家によるチェロ多重奏のための作品集。
曲順に、12、8、18、12、17人もの奏者が必要という、1桁が少ないと思ってしまう異常さ。
クセナキスの曲は冒頭、びっくりする位普通の旋律。それが、暫くするといきなり崩壊しだす。
その後は彼のオケ作品にも通じる激しい音世界が現れて爽快です。
やっぱりクセナキスの音楽はカッコイイの一言に尽きる。
同郷のジョルジュ・アペルギスの曲も、動きの激しめな曲。様々なテクスチャがごろごろと転がっていく。
1997年の作品なのでまあまあ最近。15分近くあるなかなかの曲でした。
彼の曲、昔聴いて(なかなか激しいな)と思ってはいたんですが、これまであんまり聴いた事無かったんですよね。
今度「四角い三角形」の音源無いか捜してみよう。注目に値する作曲家ですよね。
ロバート・パスカル(1952-)の曲は、狭い音域でのグリッサンドによる不協和が印象的な短い音楽。
そこから協和音によるコラールが見え隠れする。
カミーユ・ロイ(1934-)の作品は短い6曲からなる音楽。激しく動き、あるいはグロテスクにモチーフを提示しあう。
最後、グロボカールの曲は、声や歌、特殊奏法なども使用した、重苦しい感じの曲。
どの曲もチェロ同士の込み合った響きが魅力的で楽しめました。音楽的に好きなのはやはり最初2人かな。



Champ D'Action - Quincunx
Geert Logghe; Time before and Time after
Luc Brewaeys; Trajet
Eric de Visscher; Stille und Larm
Frederic D'Haene; Inert Reacting Substance of ()
Serge Verstockt; Aperion

1994 Megadisc  MDC 7869

比較的若手から中堅の作曲家の室内アンサンブル作品をまとめたもの。作曲家、誰も知りません。
1曲目の作曲者はRoland Corynに作曲を学んだベルギーの作曲家。
T.S.エリオットの詩が題の元ネタ。様々な音楽を想起させる不思議な音楽進行。取り留めの無い楽想がぱらぱらある感じ。
どこか切ない感じのする展開は聴きやすく、あえて楽器間の音楽干渉を避けさせている構成も悪くないです。
2曲目は5音音階とカデンツァが大きな鍵を握る、ピアノがメインの曲。
どこか暴力的な、激しい勢いで音響的にも幅広い。細かなモチーフの配列から大きな構造を作り出すようにしているようです。
作曲者は1959年生まれでアンドレ・ラポルト、ドナトーニ、ファーニホウに師事、
ルーカス・フォスと交流があるようです。この曲もフォスに捧げられたもの。
3曲目もピアノメインですが、こちらはジャズの影がかなり濃い。
弦や木管が息の長いメロディーを演奏しながら、打楽器が空気を読まずに割り込んでくる。
ただその割り込み方はきちんと一貫していて、そこは音楽理論を研究している作曲者らしい。
この人ジェームズ・テニーに師事経験があるようです。
4曲目はいきなりカオスな音楽から開始、打楽器の瞑想と挟んで緊張感ある音楽です。
A♭のドローンがベースになって全曲を支配する印象的な曲。このCDの中では一番インパクトありました。
作曲者はジェフスキの補佐を大学で行っている人物らしい。
5曲目は、点描的な風景の中から、様々な音楽の断片がかすかに見え隠れする。
細かなスパンで収束しては散開する、目まぐるしい展開の曲。
作曲者はG.M.ケーニッヒに師事経験があるオランダの作曲家。
超廉価で買いましたが、まあまあの価値はあった・・・だろうか。



GROUP 180
Tibor Szemzo; Water-Wonder
Steve Reich; Music for Pieces of Wood
Laszlo Melis; Etude for Three Mirrors
Frederic Rzewski; Coming Together, Attica

Group 180
1983 Hungaroton  HCD 12545

ハンガリーの団体「グループ180」によるミニマル・ミュージック集。
ティボル・セムゾーの「水の不思議」は録音とライヴのフルートによる曲。
単音の繰り返しから徐々に音が増えていく様は思い切りライヒのクラッピング・ミュージック。
やがて波紋のように細かな5拍子のフレーズが混和していき、フェードアウトする。この終わり方、クラシカルな音楽じゃありえないよね。
スティーブ・ライヒの「木片のための音楽」は、彼の作品ではマイナーなほう。
内容はほぼ完全にクラッピング・ミュージックと同じ。ただあれよりは音も展開も多いのでのんびり楽しめます。
ラースロー・メリシュの「三つの鏡のためのエチュード」は冒頭のピアノがライヒのエイト・ラインズそのまんま。
長いメロディー主体の中間や勢い激しい部分など、ミニマルの中で頑張って古典音楽のノリを出そうとしてます。
でも基本のリズムが何も変わらないから、残念ながら大して変わってません。
「カミング・トゥギャザー」はジェフスキらしい、アメリカ的開放感溢れるはきはきしたミニマル。
ピアノ主導のビートに語り手が加わります。聴いてて楽しいけれどそんなに良い曲とは正直思えない。
こういう彼の政治的意識が関わっている作品は、自分みたいな政治不信の人間には苛々してしまう概念なのが残念。
ジェフスキ二発目「アッティカ」も大して変わりません。ピアノメインのほのぼのしたメロディー、微妙に歌う語り。
概略を見てみると、ライヒ一派vsジェフスキみたいな感じ。
マイナー作曲家二人はライヒの影響から抜け出せていなくて、そのため聴いてて楽しいけれど独自性ではジェフスキに負けます。
でもジェフスキも「不屈の民」だけで十分な気がしなくもない。ただ「パニルジュの羊」はいつか聴きたいなあ。



Wings - Gulda Symphonisch
Friedrich Gulda; Wings - A Concert Piece for Solo Violin, String Orchestra and Rhythm Section
Concertino for Players & Singers
Roland Batik; Blues in F
Mozart;Fantasy KV 397 - Roland Batik; Interlude

Benjamin Scumid,Vn. Roland Batik,P. Heinrich Werkl,E-Bass Fredvard Muhlhofer,Drums
Wiener Motettenchor Ensemble "Die Reihe"
2005 ORF  CD 420

1曲目、「Wing」。ヴァイオリンのチューニングから曲は始まり、それがやがてソリスティックになって山を築く。
その頂点から弦楽の伴奏が少しだけ参加するが、6分過ぎまではずっとソロ。
そこからようやく、ちょっとムード音楽してる、タンゴみたいなものが登場。それをしばらくやるとまたソロ独奏、もう良いよ。
そこから今度はロック調の音楽が現れる。ギターやベースも入りながら盛り上がり終了。
「ブルース」はごく普通のピアノソロ。聴きやすく、それっぽい感じ。
「間奏曲」はモーツァルトの曲をベースにBatikがアレンジしたもの。う〜ん、まあ楽しい人には楽しいか。綺麗だし聴き流せる。
最後のグルダは最初からハイテンションでファンキーにいきます。合唱が入りながらドラマチックに進みます。
2楽章はボサノバ風ジャズからクラシカルな合唱に入り、落ち着いたまま静かにブルースに展開して幕を閉じる。
3楽章は古典的なクラシックのメロディーがポップに跳ね回る。素直に乗れて楽しい。
演奏、音が遠い。まあライヴ録音なんだし多めに見よう。録音もよくないし。
ただ強奏の迫力が無いのは単純に演奏に力が無いだけだと思います。



岡田知之 パーカッション・アンサンブルIII

岡田知之打楽器合奏団
1998 コジマ録音(ALM Records)  ALCD 7047

西原大樹の「3×3」は疾走感激しい作品。マリンバの主題とチャイムの対旋律がさわやかに踊りあう。
カッコイイです。これ演奏会でやったら盛り上がるなあ。
作曲者は普通の打楽器奏者らしい(というかこの録音に参加してる)ですが、依頼が多い理由もうなずけます。
「草の葉」(小野正満)はホイットマンの詩に合う、前半膜質打楽器が主体の大草原なイメージの曲。
ちょっとアフリカンな気がするのは偏見かな。後半はドラム入って思い切りポップに。あーあ前半で止めとけよおい。
ブロドゥマンの「Greetings to Hermann」はトムとバスドラのみの渋い編成。こういう土俗的なもの好きです。
ただ実際に演奏する際にはジャズの感覚を要求されるそう。
ディネフの「Pleteniza」はリズムがちょっとくせのある曲。速いところは楽しいけれど、そうじゃない具像的楽章はそうでもない。
ローズの「Ogoun Badagriss」はブードゥーの儀式を基にした黒い曲。執拗なリズム反復、騒々しい膜質打楽器群が素晴らしい効果。
「さくら」のマリンバ編曲はまあ普通なもので、安心して聴けました。こういうのはやっぱり余計なものは要らないよね。
「花」のほうは・・・だからスイングしなくて良いってば。
水野修孝の「鼓」はこのCDの目玉。彼らしい激しく鋭いリズム展開。日本の伝統音楽風味で掛け声・合いの手が印象的。
盛り上がりのカオス的展開はさすが「交響的変容」を書いた人です。
あぁ、果たして「交響的変容」のCDが入手可能になる日は来るんだろうか・・・オークションで1万8千は無いですよ。
「Portico」(ゴーガー)は10分以上かかる長さ。比較的落ち着いた、どこか荘厳な空気も見せるタイトルどおりの曲。
「ティファナ・サンバ」(ブランド)はメキシカンな普通の曲。これ演奏機会が結構ない?気のせい?
最後はデイヴィスの「オリエンタル・マンボ」。打楽器アンサンブル初期の、本当に題通りのノリ良い曲。
このアンサンブルはリズム感覚が鋭くて、聴いててのれますね。録音も近くて熱気がよく伝わってきます。



The 1st Osaka International Chamber Music Festa
Maurice Moszkowski; Suite for Two Violins and Piano in G minor Op.71
Bohuslav Martinu; from "Three Madrigals for Violin and Viola"
Pablo de Sarasate; Navarra Op.33
Bela Bartok; From 44Duos, Bagpipes, Sorrow, Arabian Song, Pizzicato, Transylvanian Dance
Panco Vladiguerov; from"7 Symphonic Bulgarian Dances Op.23"
Guo Feng; Let me have a look at you again
Hu Yuan Jun; Two Ponds Reflect the Moon
Tian Ke Jian; The Dragon Boat
Shinji Tanimura; Star

Stankov・Radionov & Nestorova   National Chamber Music Ensemble
Yomiuri Telecasting Corporation  YC-9303

1993年、第1回大阪国際室内楽フェスタの様子を録音したもの。
まずはヴァイオリン、(曲によっては)ヴィオラ、ピアノのトリオ、スタンコフ=ラディオノフ・デュオとネストロヴァの演奏。
モシュコフスキの作品は、やぱりこういう作品を聴くと、堅実に音楽を書いていた人なんだなと実感する。
軽快な6拍子の第3楽章をはじめ、どこを取ってもロマンあふれるクラシック。
マルティヌーも、彼の時代としては穏健な甘美な作風。演奏者あたりがこういうの好きなのかな。
サラサーテの「ナバーラ」はちょっとマイナーな方。彼らしい技巧たっぷりの小粋な作品。
6分近くあるので、彼にしてはまあ長い方か。
バルトークの「44の組曲」からの抜粋はリズム要素の強いものを選んでいる。
ちょっとここらになると、聴かせ所に悩んでいるというか、技術的に微妙な部分が・・・。
ヴラディゲロフの「7つの交響的ブルガリア舞曲」からの抜粋は4+5拍子の快活な音楽。
選曲が舞曲中心であるところが、聴いていて飽きがくる原因かな。技術は、まあいいんじゃない?くらい。
続いては中国国立室内合奏団。当然全て中国の民族楽器の編成、6人組。
郭峰の「譲我再看[イ尓]一眼」はのんびりした明るい曲。次第に盛り上がってノリよく終わる。
華彦鈞の「二泉映月」はこの手のやつなら絶対入ってる超名曲。のどかな胡弓メインの曲。
田克倹 編曲の「龍船」は細かな装飾音が印象的な、きらびやかな曲。
谷村新司の「星」は、まあ彼らなりの親日表現ですね。良い感じに胡弓とかが歌ってくれます。



SO Percussion
Evan Ziporyn; Melody Competition
David Lang; The So-Called Laws of Nature

2004 Cantaloupe  CA21022

SOパーカッションEによる、エヴァン・ジポリンとデイヴィッド・ラングの打楽器作品を収録。
「Melody Competition」は明るい感じののんびりした曲。落ち着いた音で穏やかに断片が演奏されていきます。
構造的にも使用楽器としても、ちょっと東洋的、かつ民族的。
大きな流れや盛り上がりは特に感じられませんが、そわそわと小気味良く動いていく音は聴いていて楽しいです。
「The So-Called Laws of Nature」は3楽章制。
第1曲は木片によるテンポがゆらぐ、ミニマルな音楽。音色的にも曲調的にも変化が乏しく非常に始原的。
第2曲はどこかの地方の金属楽器。仏教的・アジア的響き。綺麗な音で、これはトリップできる。
後半はトムや騒々しい金属音も加わりさらに土俗的・儀式的な色合いを強めていきます。
第3曲は、木片と金属楽器によるきらきらした音楽。だんだんクラベスも入りつつ、星が瞬くように全曲を閉じる。
民族的でフリーな感じのミニマル音楽。



Toward the Sea
ドメニコ・ガブリエリ;チェロソナタト長調、イ長調
J.S.バッハ;無伴奏チェロソナタ第1番ト長調
武満徹;海へ
ジョージ・クラム;無伴奏チェロソナタ

Yohei Asaoka,Vc.  Richard Stone,Lute  William Anderson,Gui.
1999 Cou-Nal Classics  CCCT-19991

東京芸大出身のチェリスト、浅岡洋平によるアルバム。
ガブリエリのソナタ2曲は短く古典的なバロック。気楽に聴けました。
バッハの名曲はかなりあっさり。自身の透き通った音に合うように、出きる限り余計な歌い回しを避けさらさらと弾いていく。
個人的にはこれくらいの方が好きです。ちょっと安全運転みたいな雰囲気もあるのが惜しいけれど。
武満の曲は、アルト・フルートのパートをチェロで演奏したもの。この曲はやたら人気がありますね。
これはこれで良い演奏ではありますが、やっぱりフルートの方が本来の響きにあっている気がする。
あの独特の、内省的で気だるい、それでどこか輝かしい音楽には、チェロは分が悪い。
クラムのソナタは、彼がまだブラッハーに師事していたころの、初期の作品。
まだ、後の彼のような神秘主義的な怪しさは影を潜め、古典的な構造の中で音楽が進んでいきます。
とはいえ、内向的で歌うような旋律線はやはり彼らしい。後期に比べれば荒くはありますが、これはこれで。
演奏もそんな曲想によく合ったものだと思います。
この人は基本的に線が細い演奏をするので、この選曲はなかなか的を得ていていいですね。



Knots
Fraser Trainer; Knots, ID
Between the Notes; Tangerine Dance, Lucky
Philip Oakey/Ian Burden; Love Action

Between the Notes  Viktoria Mullova,Vn.
2005 Black box  BBM1095

「Knots」はこういうバンドにありがちなロックとクラシックを折衷した曲。
なかなか粋で、騒々しいところはしっかり騒いでいる悪くない曲だけれど、ヴァイオリンをソロにするとなんだかありきたりでつまらないね。
逆に言えば、伴奏だけのところはなかなか聴けます。
「Tangerine Dance」はミニマルでノスタルジック。ギターの柔らかいアルペジオにチェロやサックスが歌い上げていく。
アンビエンスでなかなか良いです。
「ID」もやっぱりロックとクラシックの合いの子。さっきよりはフリーで暗めな感じ。
「Lucky」もミニマルな作風ですが、こちらは明るめで、コード変化の動きがあります。
中盤はだんだんロックになってきて自分好みからは外れてきました。でも前半は悪くない。
最後の「Love Action」は80年代ポップスのアレンジ。
最初は素直な感じかなーと思ってたら、後半は結構旋律が絡み合ってぐちゃぐちゃしてます。
ヴァイオリンのヴィクトリア・ムローヴァはかなり有名なヴァイオリニスト、こういうのに参加するような人だったんだ。



Stick Attack
John Cage; Third Construction
Minoru Miki; Marimba Spiritual
Siegfried Fink; Tangents
Ney Rosaudo; Mitos Brasileiros

Percussion Art Quartett
1991 Thorofon  CTH 2113

ケージの「第三コンストラクション」は、この手のCDならたいてい入ってる名曲。
この演奏ではかなり落ち着いた、古典と化した曲の概容が見えます。音の各々がとても温かみある。
音の一つに重みがあって生々しい。なんだかどこかの民族儀式みたいな音の図太さ。でもテンポは後半かなり速い。
三木稔の「マリンバ・スピリチュアル」も現代打楽器のCDにはよくあるラインナップ。
前半の金属打楽器、演奏や音色は良いけれどでかすぎ。けっこうびびった。
マリンバの音量が、特に前半一番小さいのが残念。演奏の技量はまあまあ、特にマリンバは安全運転でちょっと端折ったりもしてます。
ただ後半、速いテンポで爽快に叩いているところに好感がもてました。
フィンクの曲はかなりなじみが無いほう。ミニマルな音形が終始pでじわりじわりと展開する。
耳新しい展開は何も無いけれど、というか思いっきり地味だけれど、こういうのは好きです。
ロサウロの曲は5曲からなる組曲。唯一ふつーの打楽器アンサンブルらしい。1曲目、目まぐるしく表情が変わる激しい曲。
2曲目はシロフォンやビブラフォンのきらめく星空空間。3曲目はアゴゴの活躍するジョークな楽章。
4曲目はシロフォンやマリンバによる瞑想時間。最後5曲目は6拍子の爆発性は無いが力を持った曲。




ドラム・トゥゲザー

ペーター・ザードロ&フレンズ

Teldec  WPCS-11126

これは凄い。最初に聴いたとき、CD聴いてて涙出たのは本当に久しぶりだと思いました。
ウィルミントンの「Heat」は、ブル・ローラーを合図にして彼自身のディジュリドゥがザードロのマリンバとゆっくり入ってくる。
次第にマリンバを初めとする打楽器にリズムが現れだし、ドラムも加わり熱気を放ちだす。
ひたすら熱気をましていくかと思いきや、やがて音楽は収束してクロテイルのさりげない一打で幕を閉じる。
ケージの「第3コンストラクション」は最初期打楽器作品の名曲であり、ケージの初期重要作品の一つ。
さまざまな音たちが所狭しと大暴れするこの曲、この演奏以上に音が自由で力を持った演奏は聴いたこと無いです。
シュミットの「ガナイア」はファマディ・サコのジャンベを迎えての熱烈なアフリカ世界。
カリンバなどの序奏に始まり、続く主部は強烈なアフリカンリズムの嵐。サコのソロがもう凄すぎる。
クセナキスの「プサッファ」を、ザードロはよくここまできっちり演奏しきったと思う。
一打一打にずっしりと重みがくるのが分かる。
クセナキスの魅力が分かる素晴らしい演奏。最後のテンションはもっとあっても良かったけれど。
三木稔の「マリンバ・スピリチュアル」はこれ以上はありえない完璧な演奏。何度聴いても飽きが来ない。
前半の鎮魂さ、後半の秩父囃子、どこも凄すぎる。録音も相まってとてつもない深み。
ヴェイス「Improvisation Latino」の強烈なビートの応酬はラストに相応しい。
底抜けに熱いラテンのリズムそのままが快感となって体中を突き抜ける。
日常用品から作られた楽器だけで演奏しているという事実もまた凄い。
少なくとも打楽器を修める身なら、このCDを持っていることを常識にしてください。それ位お勧めする一枚。



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