オムニバス 独奏・二重奏

クラシックまたは現代音楽の、作曲家で括られていないCDのレビュー置き場。
ここではソロや、ピアノ伴奏などを含む二重奏のものを置いてます。
順番は適当に更新した順。




Pianoduo Post & Mulder -uit De Nieuwe Kollektie
Richard Ayres; No.35(Overture)
Gerard van Dongen; Eine Animierdame stosst Bescheid
Boudewijn Tarenskeen; Sonnet 129
David Dramm; Medusa Runs the Voodoo Down

Pauline Post/Nora Mulder,P.  Gabor Tarjan,Timp.  Pierre Konings,Euph.
Roswitha Bergmann/Jenny Haisma,S.  Gerard van Dongen/David Dramm,E.
2002 BVHaast  CD 0102

"The New Collection"と題しておそらく毎年オランダで活躍する作曲家に新作を委嘱している
ピアノデュオの、2000年に披露された4作品を収録したもの。
イギリス出身、ダルムシュタットなどでフェルドマンに学び現在はオランダ在住の
リチャード・アイレス(1965-)の「No.35」。この人は番号が作品の題になってます。
ピアノの豪快ながらも変哲な乱稚気ぶりを示す、いかにも序曲風の楽想が
次第にユーフォニウムやティンパニも入りながら冒頭示される。
その後、ピアノの断続的な音塊に息の音などが絡みつき、アコーディオンやリコーダーまでも乱入しながら
流れは比較的古典的ながらも内容はとにかく馬鹿にしたというか伝統的な音楽をこけにしたような
不協和音とノイズが耳につく変な音楽がひたすら展開される。
そんな中でも、音楽のクラシカルな体裁はしっかり保たれているあたりが逆にいらいらしてしまう。
でも、こういう冗談音楽みたいなノリは嫌いじゃないです。
Gerard van Dongen(1967-2006)は作曲稼業の傍らプログラマとしても働いていた人物。
作品は先ず、ピアノの特殊奏法によるやや不気味な分散音が次第にエレクトロニクスなども使い密度を増していく。
ソプラノが、エーリッヒ・ケストナーによるナイトクラブのホステスを題材にしたテキストを歌い読む。
散文的で沈黙の一瞬も多く使いながら、夜の非現実的な光景を描くような音楽を聴ける。
Boudewijn Tarenskeen(1952-)はオランダ生まれの作曲家。公式サイト英語も用意してくれよ。
「ソネット129」はタイトルの通り、シェイクスピアの有名なソネットを題材にしたもの。
ピアノの低いE音連打で開始。低音を基調とした、沈黙の多い構造の合間に、ソプラノの寂寞とした歌が入る。
緊張感の高い、かつ劇的な要素も垣間見える作品でした。個人的にはかなり好み。
デヴィッド・ドラム(1961-)はイリノイ出身、アンドリーセンやアール・ブラウンの教えを受けています。
作品はピアノの音をギターのエフェクトを通して演奏させる、終始ディストーションが効いたような
ささくれた響きの中で音楽が爆発する派手な内容。ポップシーンとの関わりが深い作品を多く作る人物らしい作風。
演奏されている構造はクセナキスの「エヴリアリ」から取られています。
アヴァンポップと言えばフェルトハウスですが、このアメリカンなノリのアヴァンポップ?も楽しい。
後半2曲が好みでした。



20th Century Harpsichord Music
Arnold Rosner; Musique de Clavecin, Sonatine d'Amour
Daniel Pinkham; Partita for Harpsichord

Barbara Harbach,Harpsichord
2012 MSR Classics  MS 1443

アメリカのマイナーどころをこれでもかと感じる一枚。
前半は、NYに生まれロマン派等の古典的な作曲方法で音楽を制作していた
ユダヤ系の作曲家アーノルド・ロスナー(1945-2013)による2作品。
「クラヴサンのための音楽」作品61(1974)、最初のロンドはむしろサラバンド的。
アルペジオを多く使ったなかなか迫力ある響き。2曲目の踊りは明快かつ溌剌としていてテンション上がる。
3曲目の非常にダイナミックな和声の応酬はとても爽快。
4曲目はどうやら過去作品から抜粋改訂したらしい、短い音楽。
終曲のパッサカリアは一番荘厳さが現れながらも、冒頭のような路線に戻って終了。
これは演奏も相まって、バロックの概形が伺えながらも派手に鳴らしてくれる刺激的な面白い作品でした。
「愛のソナチネ」(1987)は上記作品を見事に弾くBarbara Harbachからの要請で作ったもの。
第1楽章はコードの上に自由な旋律が流れるバロックらしい音楽ともいえますが
拍子が意外とおかしいあたりが印象的。第2楽章は幾分テンポの上がった舞曲風の歓喜的な音楽。
マサチューセッツに生まれハープシコードを学んだ経験もあるダニエル・ピンカムの
「ハープシコードのためのパルティータ」(1964)は彼の代表的な作品と言ってもいいでしょう。
現代美術のドキュメンタリーの伴奏を依頼され、その際演奏会作品にも使えるようなものをとして
制作された30分の大作です。バッハを初めとするバロックの影響を強く受ける構成ながら
音の響き自体は技巧的というか割と不協和な和声も多く使っている。
このあたりは「クリスマス・カンタータ」なんかの印象だった綺麗な響きとはまた違う側面が見れて新鮮でした。
もちろん、たとえば第5曲のスケルツォなんかには華々しい音楽があってそちらの魅力もしっかり聴ける。
演奏録音ともに臨場感があって素晴らしかった。



Repeat!
Laszlo Sary; Pebble Playing on a Pot, Canon
Arvo Part; Pari Intervallo, Spiegel im Spiegel
Luc Ferrari; Madame de Shanghai
Louis Andriessen; Lacrimosa, De Lijn
Salvatore Sciarrino; Immagine Fenicia
Tom Johnson; Kirkman's Ladies -Rational harmonies in three voices, 32 Breaths
Kevin Volans; Walking Song
John Cage; Ryoanji
Morton Feldman; Trio for Flutes
Alvin Lucier; 947
Stefano Scodanibbio; Ritorno a Cartagena, Voyage Resumed
Aldo Clementi; Canzonetta, Parafrasi 2
Viktor Ekimovsky; In Canes Venatici
Jonathan Harvey; Ricercare una Melodia
Zoltan Jeney; Landscape ad Hoc

Manuel Zurria,Flutes
2008 Die Schachtel  ZeitC01

イタリアのフルート奏者による、ミニマリズム系統の音楽を集めた3CD。
ラースロー・シャーリ「Pebble Playing in a Pot」の4本フルート版、
小気味よい旋律が少しづつずれながらも特定の和声を不規則にアクセントで鳴らす。
ペルト作品は、オリジナルは4つのレコーダーによる作品らしいですが、
ここではボトルやグラスも用いた、不思議なエレクトロアコースティック風世界。
音楽自体は中期の彼らしい、すごく簡素で憂いのある綺麗な音楽。
リュック・フェラーリ「上海の夫人」は3フルートとテープのための作品。
中国歌謡と会話のサンプリングに始まり、ディレイのようにも聞こえてくる
フルートのモチーフと交互しながら、倒錯した不思議な音楽を作る手腕はまさにフェラーリ。
アンドリーセン「ラクリモーサ」は元々ファゴット2台のための作品をバスフルートで演奏。
彼らしい不思議な長い旋律を少しづつずらしながら倒錯的・瞑想的な世界を作っていく。
それにしても、結構な高音域なのにあえてバスフルート等の低音楽器で行わせる辺り
音響効果としての不安定さが巧い具合に使われていて良い。
シャリーノ作品は増幅されたフルート独奏。キー操作のかすかなビートに乗せ
ブロウイングの音がリズミカルにアクセントをつける。彼にしてはすっきりした、聴きやすい作品。
ペルト「鏡の中の鏡」は有名作。ここではハープシコードにバスフルート、それとグラスやベルなどを添えて。
これくらいの不可思議アレンジだと、この曲は適度に刺激的でかつ綺麗さを損なわない。
アンドリーセン2つめ「線」は3フルートによる1分に満たない小品。
非常に活発で小気味よい、さっきとは別に彼らしい旋律が少しづつずれて和声になっていく。
最後は6フルート版のシャーリ「カノン」で。旋法的な音楽が絶妙に絡み合う、ライヒ的音響。
CD2、トム・ジョンソン作品は同名のHat hutからのCD持ってた。ここでは作曲者自身のナレーターつき。
和声をぱらぱらとこぼす音楽の合間に朗読が細切れになって入る、彼らしいミニマル。
ケヴィン・ヴォランズ「ウォーキング・ソング」はハープシコードとの二重奏にクラッピング付き。
ハープシコードとフルートの補完的な難しい掛け合いにはじまり、クラッピングのリズムがビート感を出す。
ケージの「龍安寺」がここに入っていることに笑えるけれど定番に感じる。
4バスフルート、東洋打楽器、テープの編成で録音された、金属打楽器の中国感が果てしない17分。
フェルドマン「フルートのためのトリオ」は1972年作品ですが5分に満たない短さ。
原曲は普通のC管のために書かれていますが、ここでは何故かバスフルートで演奏。
ただ、この方が曲の虚ろでゆったりとした時間の流れを感じられていいかもしれない。
アルヴィン・ルシエ御大の「947」、解説がこのCDにないので題の由来は分かりませんが、
中身は実に何時も通りのサイン波と独奏が共演して倍音のうなりを発生させるだけ。
ジョンソン2発目「32Breaths」はブレス音のゆっくりとしたビートの合間に一つずつ音が増えていく旋律が挟まれていく。
CD3、コントラバス奏者として即興演奏も得意としていた
ステファノ・スコダニッビオ(1956-2012)の1曲目は増幅されたバスフルートのための曲。
増幅されたキー操作のビートも、バスフルートで行うと虚ろなドラミングになるのが凄い。
そこにブローイングなどの風音がさっと過ぎ去り、プリミティヴな空間が広がります。これすごく良い。
アルド・クレメンティ1品目も、2本のG管フルートのためのものをバスフルートで演奏。
短いながらも、全音でのずれを使った絶妙な響きが聴ける。
ヴィクトル・エキモフスキーの曲は3フルートとテープのための。
テープ音響の空虚なエコーに包まれて、フルートたちが茫洋と旋律を重ねていく。
ハーヴェイ作品はデジタルディレイを比較的シンプルに使った意味ではミニマルな反復性か。
旋律もかなり技巧的で、5分という長さの割にはかなり聴きごたえがある。
ハンガリーのゾルターン・イェネイ(1943-)による作品は鳥の鳴き声のサンプルとシンセサイザーが伴奏。
環境音のようなふわふわしたシンセにフルートが簡素な旋律をつける。
なんか音響的にはちょっとダークなアンビエントを思わせる。
クレメンティ2曲目、テープとの作品はちょっと素っ気ない感じの旋律を録音したパートが幾重にも追っていく。
次第に収束して、旋律対和声に替わっていくあたりが彼らしい筆さばき。
スコダニッビオ2曲目は本来テープとコントラバスのための作品。
低弦の持続音を意識したドローンにフリーで幾分かエキゾチックな旋律。
次第に熱気を帯びてリズミカルになるあたり、ラーガみたいな構成。この人の曲良いなあ。
実に満足できる3枚組でした。



Come Dance With Me
Alberto Ginastera; Danzas Argentinas, Suite de Danzas Criollas
Joaquin Turina; Danzas Gitanas Op.55
Olivier Messiaen; Prelude No.1 & 8 from eight preludes
Ernesto Lecuona; La Comparsa, Malaguena
Andre Mathieu; Prelude No.5 'Prelude romantique'
Zygmunt Stojowski; Vision de danse Op.24-4, Intermezzo-Mazurka Op.15-2, mazurka fantasque Op.28-1
George Gershwin; Prelude No.3 from three preludes
Henryk Mikolaj Gorecki; Four Preludes Op.1
Frederic Mompou; Canciones y Danzas

Katarzyna Musial,Piano
2013 Meridian Records  CDE 84621

ポーランド系カナダ人女性によるアルバム。
ヒナステラの名曲「アルゼンチン舞曲集」で開始。すっきりした流れと程よいテンポ感の良さが心地よいです。
勢いはそこまでないのは残念ですが、安全運転と評することなく好感を持てるのが良い。
なので、肝心の第3曲の派手さは期待してはいけませんが、全曲は落ち着いて聴ける。
トゥリーナ作品はアンダルシア音楽を題材にしたなかなか熱い逸品。ただ、これは流石に演奏が端正すぎる気が。
メシアン作品は彼最初の出版曲なだけあって、まだドビュッシーなどの印象派に強く影響を受けていたもの。
聴いていて、後年の趣は全く感じられません。演奏はこういうのだと良い感じ。
レクオーナの「La Comparsa」は17歳の作曲、アフロキューバンなリズムが心地よい。
マラゲーニャは代表作ですね、こういうストレートな作風は良い感じの演奏。
Andre Mathieu(1929-68)はケベックのピアニスト・作曲家。「カナダのモーツァルト」と言われただけあって
この作品も20歳の時のもの。近代の作風をくみながらもロマン的な旋律。
ジグムント・ストヨフスキ(1887-1946)はドリーブやパデレフスキらに師事したポーランド出身のピアニスト・作曲家。
柔軟な旋律回しとポーランドらしい骨太のリズム感覚が良い。音楽はロマン派に近いですが。
ガーシュウィンの曲も有名な作品、これだと演奏はちょっと大人しめかな…曲のノリがいいだけに。
グレツキ作品は最初期の作品なのにこれで録音がさらに多くなる。まあ数少ないピアノソロ作品だから…
演奏としては、やはり丁寧なタッチながらダイナミクスは程よくにつけてくれるので中々いい。
残響が適当についているので、以前からの盤に比較して聴きやすくなってます。
派手さはないですが、それを抜かせば勢いもあってかなりレベルが高い演奏。
モンポウ作品は彼らしい軽いタッチが聴ける。
最後のヒナステラ作品は、悪くないけど第1曲とかはもっと繊細な響きにしてほしかった。
ただ、それ以降の勢いの良い曲群は良い感じに和声を響かせていて楽しい。
曲目はかなり好みだっただけに高すぎる期待を持ってましたが、端正かつ表情付けが豊かで悪くない。
ただ、これ録音の音量レベルが低すぎるんじゃない?



Book of Horizons
Julius Eastman; Piano 2
"Blue" Gene Tyranny; The Drifter
Stuart Saunders Smith; Fences,In Three Tragedies
Michael Byron; Book of Horizons

Joseph Kubera,Piano
2014 New World Records  80745-2

アメリカのメジャーでない個性派作曲家を集めたマニアックな一枚。
ジュリアス・イーストマン(1940-90)の「ピアノ2」(1986)は彼の貴重なピアノソロ作品。
有名なアンサンブル作品の方では強迫的なミニマリズムを聴かせてくれましたが
この曲ではミニマリズムの流れを汲んでいるとはいえ、かなり古典的な構成。
和声的にも、普通に近代作品を聴いているような感覚になります。
けれど、その表面的な響きの奥に、異様なまでに変化の薄い音価と
そこから印象つけられる強靭さと強迫的観念がイーストマン作品らしさをはっきりと隠しています。
特に第3楽章の冒頭に現れる同音連打は、「Gay Guerrilla」や「Crazy Nigger」を連想させるに足るもの。
彼の音源がほとんどまともにリリースされない中、この録音は本当に貴重です。
それにしても、荒い自筆譜を基にここまで導き出せるとは、親しい関係者だっただけのことある。
アヴァンギャルド系ピアニストとしても活躍する"ブルー"ジーン・ティラニー(1945-)の
「ドリフター(漂流者)」(1994)は独特のジャジックな心地よい主題を基にゆったりと広がる音楽。
チベット仏教的な時の漂流をも意識した、即興的な流れのとても美しい曲です。
このCDの中では、断トツで再生数が多い。
スチュアート・サンダース・スミス(1948-)の作品はポピュラーソングを幾分か素材にして
3-4段譜にちりばめた非常に複雑な作品。掲載されてるスコアはかなり微妙なリズムばっかで気が遠くなる。
音楽も、フィニッシーとフェルドマンを足したような、としか言いようのない絶妙なリズム感覚。
もちろんそこから旋律要素が聞き取れるのはどちらかといえば前者ぽいのですが…
ピーター・ガーランド、アシュレー、リース・チャタムらとの親交も篤いマイケル・バイロン(1953-)の曲は
彼独特の"非対称的な対位法"を基にして作り上げられた、Kuberaのための大作。
ピーター・ガーランドに捧げられた1曲目からしてわかるように、
常に2声の対位法で編み上げられている点はバロック風なのですが
そこから作られる和声やリズムは非常に複雑で鮮やか、かつリズミカル。
2曲目のペダルさばきが絶妙な音楽なんか凄く流麗だし3曲目の軽やかなリズムもパズルを組み上げたかのような爽快さ。
娘に捧げられた4曲目はその不思議な組み合わさり方が一番わかる綺麗な曲でしょう。
ポランスキーに捧げられた終曲は断片的な連なりが次第に絶え間ないリズムへと変化していく。
シンプルゆえに難しさが際立つ、それでいて聴いていても非常に楽しい作品でした。



Polish Violin Music
Aleksander Zarzycki; Mazurka in G major Op.26, Mazurka in E major Op.39,
Introduction and Cracovienne Op.35, Andante?Polonaise Op.23, Romance Op.16
Zygmunt Noskowski; Chanson ancienne Op.24-1 from 3 Morceaux
Piotr Drozdzewski; Two Caprices for Solo Violin
Henryk Gorecki; Sonatina in One Movement Op.8, Variazioni Op.4, Little Fantasia Op.73
Ignacy Jan Paderewski; Chanson
Witold Lutoslawski; Recitativo e Arioso
Karol Lipinski; Two Impromptus for Solo Violin Op.34

Kinga Augustyn,Violin  Efi Hackmey,Piano
2014 Naxos  9.70192

ポーランドのヴァイオリン作品を収録した、ナクソスらしいマニアックさ発揮の一枚。DL販売のみ。
アレクサンデル・ザジツキ(ザルチスキ,1834-95)はワルシャワ音楽協会創設者の一人。
音楽としてはどれもこの時代らしく、ショパン風なものにちょっとサロン的気楽さを混ぜたようなもの。
ここに収録されているのは半数が初録音ですが、なかなか悪くない。サラサーテに献呈されたもの(Op.26)もあります。
なお、これらの作品は全て管弦楽伴奏版も存在するとのこと、凄いな…
ジグムント・ノスコフスキ(1846-1909)は作曲家として多作だっただけでなく
ワルシャワフィルの指揮者としても活躍し同時代の作曲家作品を多く紹介していました。
3つの小品からの「第1番 古風なシャンソン」はその名の通り懐古的な落ち着いた旋律の小品。
ピオトル・ドロヅィゼヴスキ(1948-)は作曲家と同時に科学者としても働く変わり種。
「2つのカプリス」は2人のヴァイオリン・ヴィルトゥオーゾ作曲家、リピンスキとパガニーニを各々意識したもの。
ヴァイオリンソロによる、オマージュを含みながらも彼の作風であるバッハ礼賛的なバロックの響き。
グレツキ「単一楽章のソナチネ」はこれがたぶん初競合盤。
音塊状の和声使用、快活でポーランド的な近代風旋律。
初期の短くも印象的な作品を手堅くしっかり演奏してくれています。
「変奏曲」はこれが久しぶりの新録音。少々荒っぽい感はありますが
早めのテンポでノリ良く演奏してくれている点は評価できる。
変奏ごとの表情がはっきりと出ているのでわかりやすい。
「小幻想曲」はこれが初録音。ヴァイオリンソロの開放弦の和声に乗せて、ピアノが静かに旋律を奏でだす。
次第に瞑想的な音楽はは発展しながら後期グレツキらしい荒々しさに乗せオスティナートされていく。
すぐに静まり、不気味な後奏になるのですが、後半部分はびっくりする位穏やかで綺麗な音楽も出てくる。
様々な楽想を豊かに組み上げる構成は初期の「変奏曲」と比較できると思う。
ただ、その要素はそのそれぞれがグレツキらしい楽想に満ちていて面白い。
演奏も音楽の移り変わりを表現してくれていて、ちょっと粗いけど素直に聴ける。
パデレフスキ「シャンソン」は彼らしいリリカルな小品。
ルトスワフスキ「レチタティーヴォとアリオーソ」は結構普通に聴ける。
もっとも、彼の小品は結構管弦楽ほどはちゃめちゃしてない事も多い気が。
リピンスキ「2つの即興曲」は独奏のためのヴィルトゥオーゾ。良い締めです。



4/20

Piano Music From Scotland
Francis George Scott/arr.Ronald Stevenson; Eight Songs
Ronald Center; Piano Sonata, Six Bagatelles Op.3, Children at Play
Ronald Stevenson; Beltane Bonfire, Two Scottish Ballads

Murray McLachlan,Piano
1990 Olympia  OCD 264

スコットランドの知られざる作曲家のピアノ曲を集めた、オリンピアらしいマニアックさの一枚。
フランシス・ジョージ・スコット(1880-1958)は主に歌曲で活躍した人物。
ここでは全5巻からなる彼の代表作「Scottish Lyrics Set to Music」からの抜粋を編曲されたものが収録されています。
編曲もあってちょっと刺激的な和声もありますが、旋律美は見事なまでにロマン派。
6曲目みたいな激しさは良い。ロマン派〜近代の旋律美を存分に味わえる。
ロナルド・センターは生年が1913年は良いとして、没年がわからない。ネット情報は全て1973年としているんですが、
CD解説は1958年グラスゴー没と明記してる。どっちなんだろか、多分73年なんだろうけど…
管弦楽作品も知られているようです。「ピアノソナタ」は、ピアニストでもあった彼が
主に私的な場で演奏することが多かった作品とのこと。第1楽章の和声とリズムの鋭さは爽快。
第2楽章も4度音程がうまくバラード風のかっこよさを醸し出している。第3楽章は古典的な響きに似たカノン〜フーガ。
終楽章はタランテラ風の短く激しい音楽。今では彼の代表作となっています。
「6つのバガテル」は1953−55年ごろの作品と考えられています。
コラール風の淡い第1曲、オスティナートの印象的な第2曲、神秘的で劇的な展開の(プロコ風)第3曲、
リズミックで様々な印象が味わえる第4曲、5拍子の舞曲風第5曲、非常に活動的で軽い第6曲。
1950年代に作られたと思しき「Children at Play」からの第2楽章抜粋。
簡素で温かみのある旋律の心地よい前半、非常に躍動的な中間部、冒頭への回帰。
ロナルド・スティーヴンソン(1928-)はランカシャー出身の作曲家。
「ベルタインの篝火」、ソラブジやグレインジャーなどが好きな彼らしい熱気を持った音楽。
「3つのスコットランド・バラード」は彼の民謡編曲物の一つ。なぜか第1曲を除いて2曲だけの収録。
スコット作品とセンターのピアノソナタあたりが面白かった。



Pimpin'
Scott McAllister; Pistol Packin' Mamma
Michael Djupstrom; Walimai
John Mackey; Sultana
Rob Smith; Schizo 'squito
Robert Paterson; Tongue and Groove
Joseph Rubinstein; Spirit
Jocob TV; Pimpin'

Jeremy Justeson,Saxes.  etc.
2011 American Modern Recordings  AMR1033

アメリカ若手を中心とした、ポストモダンなサックス作品を集めたアルバム。
フロリダ出身の作曲家スコット・マカリスター(1969-)の作品、
まだ普通の室内楽風にスタートした音楽はすぐにロック風なビートの音楽と交差して盛り上がる。
中間部はバラード風な牧歌部分が挟まりますが、基本的にはぐいぐい来るので爽快。
ミネソタ出身のマイケル・ジュプストロム(1980-)による作品はピアノとアルトサックスのための曲。
熱帯雨林の樹冠下の独特な暗い世界を描写した、神秘的なソナタ。
特にエスニックな素材を用いずジャズのバラード風な華麗な展開をしてくれるので好み。
フィラデルフィア出身のジョン・マッケイ(1973-)作品は元々ソプラノサックスと吹奏楽のための協奏曲に
おける第4楽章だったもの。実にエスニックな香り漂うタンゴみたいな音楽。短いけど良い曲。
ロブ・スミスの「蚊のスケルツォ」は特殊奏法も少し出る、ゆるやかな旋律と激しいノイズが交互に現れる
アルトサックスソロ作品。ノイズ部分は良い感じにフリージャズしてる。
ロバート・パターソン(1970-)のマリンバとの二重奏作品はだいたいタイトル通りのなかなかにリズミカルな音楽。
ジョセフ・ルビンシュテイン作品は彼自身のピアノによるとても流麗な音楽に始まり
すごくバラードな旋律をアルトサックスが奏でる。実験的要素はほぼなしで劇伴みたいなレベルの綺麗さ。
これは普通に演奏して人気が出そうな曲。気に入った。
最後、これのために買ったフェルトハウス作品。「ポン引き」とでも訳すか。近年の用例らしく
「すけこまし」でも悪くないか。アメリカの売春斡旋人や娼婦の言葉を今回はサンプリング音源にしています。
実にいつも通りのファンキー路線まっしぐら。バリトンサックスのための曲だけに低音好きならたまらない。
これがアルバムでは綺麗な余韻のあとにガツンとくるので衝撃的。
演奏、ジャケットのインパクトほどにはハジケてないけど、十分に満足できるレベル。



Ulrich Krieger - Walls of Sound
James Tenny; Saxony
John Cage; Four5
Joseph Celli; Video Sax(Berlin Mix '96)
Phill Niblock; Didjeridoos and Don'ts

Ulrich Krieger,Sax./Didjeridu/digital delay
1997 OO Discs  OO 32

ウルリッヒ・クリーガーによるソロ作品作品集。面子からしてすでにヤバい内容なのがびんびん分かる。
ジェームズ・テニーの「サキソニー」(1978)、バリサクの持続音にディレイが加わりドローンに。
そこに、ゆっくりと各種サックスによる倍音構造和声が積み上げられて倍音を強化していく。
まさにこれだけ。中間部は動き(ほとんど非均等なリズムを鳴らすだけ)もついて激しくなっていきますが
なかなかにハードな作品。25分以上もかけて響かせる曲を書く神経も、それをこれだけ魅せる演奏も凄い。
ジョン・ケージの「Four5」(1991)、ここでは演奏効果もあって完全に、和音がちょっと入れ替わっていくだけのドローン。
このCDに入っていると、ランダムではあるのだけれど不思議と淡い音楽に聴こえる。
ジョセフ・チェリは同じOO Discsからの作品集を持ってて同じ作品が入ってますが、
こちらの題名から見ての通りその後さらにミックスをしているバージョンの様子。
ディレイによる倒錯具合がさらに増している印象の、ややフリーなイメージの作品、
最後はお待ちかねフィル・ニブロックの「ディジュリドゥとそれ以外」(1992)。
あの独特の音が幾重にも響きあって延々と伸びる、期待通り以上の鈍重なハードコアドローン。
やっぱり、このCDはおかしかった。持続音好きじゃないと絶対に聴けない内容。



Player Piano 6 -Original Composition in the Tradition of Conlon Nancarrow
James Tenny; Music for Player Piano, Spectral Canon for Conlon Nancarrow
Tom Johnson; Study for Player Piano
Daniele Lombardi; Toccata
Steffen Schleiermacher; Four Pieces, Funf Stucke
Krzysztof Meyer; Les Sons Rayonnants
Marc-Andre Hamelin; Solfeggietto a cinque(after C.P.E.Bach), Pop Music?, Circus Galop

MDG  645 1406-2

主に、ナンカロウに影響された後進の作曲家たちの作品を集めた一枚。Jurgen Hocker監修。
ジェームズ・テニーの「自動ピアノのための音楽」はまだナンカロウを知る前の作品。
初期の彼らしい混迷とした動きが広がる音楽ですが、その後の「スペクトラル・カノン」は
名前の通り簡素な旋律を次第に強烈に重ねてはちゃめちゃに終わらせる、すごく意識した作品に。
トム・ジョンソンの「練習曲」はミニマル系作曲家だけにシンプルかつこれまた強烈な内容。
40音からなるクラスターが次第に少しずつずれてアルペジオ状態になり、さらに容赦なくずれてやがては元に戻っていく。
ダニエル・ロンバルディの「トッカータ」はどちらかというとMIDI音楽みたいな
古典的トッカータのイメージから極端に音を増やしたような勢いの音楽。
シュライエルマッヒャー1つめ「4つの小品」は自動ピアノとプリペアドされた自動ピアノの二重奏。
機械的で強烈なビートがひたすらに押し寄せてくる、なんだか木山光作品をノリノリに聴きやすくしたような音楽。
ポップやテクノのビートを織り込んだ、非常に打楽器的でハードコアな作品です。
2つめ「5つの小品」。こちらは先ほどに輪をかけてミニマルでナンカロウ的な後味の残る作品。
機械的なモチーフやグリッサンドを多く使った音楽は、ナンカロウとそれに影響を受けた後期リゲティを合わせたよう。
クシシュストフ・メイヤー作品は自動ピアノ2台にシンセも入る、このシンセは各種フルートの生演奏が本当はいいみたい。
ここまでがここまでだっただけに、凄く普通の曲らしい流れが聴けて落ち着きすら感じます。
もっとも、単純に聴くと十分に無茶苦茶なリズム構造とかしてるんですが。
最後はマルカンドレ・アムランの曲三連。最初はC.P.E.バッハの曲を元にしたカノン変奏のようなもの。
きちんと旋律は保たせながら混沌とした何かへ向かっていく作風のお蔭で中々にかっこいい。
「ポップ・ミュージック?」は有名なフォークソングを元にした自由な変奏曲。
自由というか、洒脱な中に皮肉を混ぜ込んだような刺激的な展開がたまりませんね。
「サーカス・ギャロップ」は某所でも有名なはちゃめちゃの極み。
二台の自動ピアノによる、ナンカロウをオマージュして最初に作り上げた爽快な作品です。
どの作品も強烈で凄いのだけれど、特にプレイヤーコンポーザーである2氏の作品が音響的にいかれてて良い。



Z-Zeit ...Contemporary Organ Music
Wolfgang Rihm; Bann,Nachtschwarmerei
Peter Ruzicka; Z-Zeit
Morton Feldman; Principal Sound
Giacinto Scelsi; In Nomine Lucis
Hans Joahim Hespos; SNS

Friedemann Herz,Organ
1993 Koch Schwann  3-1389-2

現代オルガン作品を集めた、なかなか貴重な音源。
リームの曲は名前の通り、静まりかえった夜に響くような、幽霊のような妖しさを持った音楽。
じわじわと展開していき頂点を迎えますが、どこまでもおどろおどろしいイメージそのままの楽想で、逆に心地よいです。
その意味では、ある程度調性的な響きが聴ける、ということでもある。
ペーター・ルジツカのタイトル曲は、「Zeit」という紛らわしい名前の作品と同時に作られています。
冒頭に奏でられるコードを中核に、音塊が断続的に叩かれる。
フェルドマンの曲は人気で結構録音も多いですが、この作品は他に果たして録音があるのかどうか。
いつもなら間の支配的な点描風の世界になるわけですが、ここではオルガン独自の持続音響を使っていて面白い。
アシスタントなしでは演奏不可なくらいに音量などの調節が細かいですが、
反復的なプロセスなどはいつも通りのフェルドマンで楽しかった。
シェルシ作品はやっぱり特定の音に拘泥するような持続的展開で、すごく重厚に聴かせてくる。この曲もかっこいい。
最後はヘスポスの曲。ソーシャルネットサービスがどうしたんだろうと思いましたが、
タイトルはこれで「Essence」と読むらしい。何だ、Twitterの話じゃないのか。
短いですが、特殊奏法バリバリのノイズな作品。というか、オルガンの特殊奏法自体全然詳しくないですが、
どうやったらこんな破裂音が出せるんだろう。短いですが印象は強烈。



Chilli con Tango -Music for Mandolin and Guitar
Hans Boll; Prelude
Beth Anderson; September Swale
Egberto Gismonti; Forrobodo
Thomas Schmidt-Kowalski; Romeo und Julia Fantasie G-dur Op.82
Robert Lombardo; Sudden Departures
Jaime Mirtenbaum Zenamon; Chilli con Tango Op.89-2

Duo Ahlert & Schwab (Daniel Ahlert,Mandolin  Birgit Schwab,G.)
2000 Bella Musica / Antes  BM-CD 31.9153

現代のマンドリンとギターの二重奏作品を集めたコアなCD。
ドイツ・テューリンゲン出身のハンス・ボル(1923-)による「前奏曲」は
ギターの伴奏に乗せマンドリンがセンチメンタルな旋律を小気味よく奏でる、短いながらもなかなか心地よい音楽。
ケンタッキー州出身のベス・アンダーソン(1950-)作品は、彼女のロマン趣味というか
古楽趣味というか、そんなものが前面に出たどうにも古典というよりカントリーな音楽。
どことなく、サティみたいなサロン風音楽と表現したくなる、とりとめない軽い音楽。
唯一名前を知ってたエグベルト・ジスモンチ(1947-)作品も含めて、このCDはすべて初録音。
タイトルの通り、陽気で粗暴な、どこかいかれた騒ぎを表すような、けれど彼らしい上品さに収められたのり良い音楽。
ベルリンで学んだトーマス・シュミット=コワルスキ(1949-)の曲はこのCDのために書き下ろされたもの。
タイトルから連想できるような、甘いムードを引き出す叙情的音楽。
シチリアをルーツに持つアメリカのロベルト・ロンバルド(1932-)作品は元々フルートとギターのための作品。
短い楽想が立ち代り現れる、けれど散文的ではなくはっきりと関連性のある展開をしている。
最後メインにボリビア出身のギタリスト兼作曲家のセナモン(1953-)による作品。この人ジャズギタリストもやってるそう。
第1楽章はアジア風ともとれる序奏からリズミカルでノスタルジックな部分との交差。
第2楽章は曰く、メキシカンのアフターランチ風らしい。確かにまどろむような美しさ。
第3楽章はタレガやメンデルスゾーンのオマージュも含んだ、ノリノリの南米風ワルツ。
演奏は端正かつ程よくノリも良くて、とても楽しかった。



Revolutionary Rhythm
Russell Pinkston; Talespin for piano and prerecorded sounds
Samuel Barber; Sonata for Piano Op.26
John Corigliano; Etude Fantasy
Daniel Bernard Roumain (DBR); 24Bits: Hip-Hop Studies & Etudes

Jade Simmons,Piano
2009 E1 Music  KIC-CD-7760

The Rhythm Projectと題して、リズミカルと言うかビートの激しい音楽を集めた、なかなかマニア好みの選曲。
ラッセル・ピンクストン(1949-)はテキサス大学オースティン校の電子音楽スタジオに所属する人物。
ジョン・アップルトンに学んでいることからも、電子音楽が本領分であることがわかる。
この「テイルスピン」はエレクトロニクス(いかにもPCメイドの音響)のリズムにのせて短い曲が連続する10分弱の作品。
ロマン派のクラシカルな趣を残しつつ、ポストモダンな斜に構えた音楽。
バーバーの「ピアノソナタ 作品26」は12音技法をある程度取り入れている作品ではありますが、
その音楽は聴いてわかるとおり実にドラマティックでメロディアス。
ごつごつした第1楽章から躍動的なスケルツォの第2楽章、12音を使いながらも情熱的ですらある第3楽章、
華やかに爆発する劇的な終楽章。演奏もかなり派手に演奏してくれるので聴きごたえ抜群です。
コリリアーノの「エチュード・ファンタジー」は彼の作品としては珍しく自分好み。
6音音階の左手のみによる衝撃的な第1曲とかなかなか良いです。
以降も基本的にごりごりとリズムに乗っかって攻めてくる音楽ばかり。
第4曲とかで特に聴ける、低音がバリバリに動き回る部分が多くて爽快です。
ダニエル・バーナード・ロメイン(1971-)はミシガン大出身のハイチ系アメリカ人。
きちんとした音楽教育を受けてますが、クラシックからブラックミュージックまでいろいろやってます。
この「ヒップ・ホップ練習曲」も名前からしてなかなかトんでるなあと思いました。
ドラムマシンなどをバックに繰り広げられる不可思議なネオクラシカルのヒップホップ風音楽。
意識されている音楽にバッハとフィリップ・グラスが同列に出てくるあたり何ともはや。

演奏者はサウスカロライナ出身の黒人系女性の方。流石、リズムセンスはお手の物です。
あと余談ですがかなり美人。



The Enchanted Dawn
haseo Sugiyama; Bridal Doll
Michio Miyagi; Haru no Umi
Ravi Shankar; The Enchanted Dawn
Rentaro Taki; Moon over a Ruined Castle
Arvo Part; Spiegel im Spiegel
Tim Brady; Circling
Makoto Shinohara; Kassouga

Lise Daoust,Fl.  Marie-Josee Simard,Perc.
Atma  ACD 2 2115

日本の民謡などとシャンカールやペルトを組み合わせる、何とも不思議なカップリングの一枚。
杉山長谷夫(1889-1952)の童謡「花嫁人形」でほのぼのと開始。
宮城道雄の「春の海」をマリンバ、ビブラフォンとフルートで聴くと、なんとも面白い。
こじんまりとした盆栽的な音楽性を感じさせてくれます。
ラヴィ・シャンカールの「魅惑の夜明け」、まあまあメジャーな作品かな。
瞑想的なラーガから次第にリズミカルに進みだし、静かながらも華やかに終わる。
この終始落ち着きながらも興奮していくさまは、この組み合わせによくあっている。
滝廉太郎の「荒城の月」をマリンバとフルートでやられると実にひそやかでムードたっぷり。
ここまで聴いて、この編成だからこそ日本民謡的なわびさびの感覚を強調できるんだなと気づく。
ペルト「鏡の中の鏡」は非常に簡素できれいな、彼らしい音楽。
ヴィブラフォンのアルペジオが、以前から想像していた通り実にマッチする。
カナダの作曲家Tim Bradyによる献呈作品、最初は呪術的なムードに始まり
次第にノスタルジックな動きから次第に変拍子で躍動感に満ちた音楽になる、なかなか楽しい曲。
最後は篠原眞(1931-)の「春日」。のびやかにさえずるフルートには尺八の影を見ることができる。



Ladder of Escape 4
Igor Stravinsky; Agon
John Cage; Three Dances for Two Prepared Pianos
Louis Andriessen; De Staat

Gerard Bouwhuis/Cees van Zeeland,Pianos
Attacca  BABEL 8949-2

ストラヴィンスキー「アゴン」は彼晩年の、十二音技法を使った作品。
とはいえ、新古典趣味に目覚めていた彼がこれを使うとなんとも不思議なものになる。
鋭いリズムにはポップの影をも感じさせながら、無調のようでそうでないように思える旋律が
ぎくしゃくと、けれど止まりそうな不安感はさせないで進んでいく。
このピアノ2台へのリダクション版でもその片鱗はうかがえる。ただ、やっぱりオケの方が面白いんじゃないかなあ。
最後のトリオなんかはいかにも彼らしい音楽で楽しい。
ケージ「2台のプリペアの・ピアノのための3つの踊り」は個人的に隠れた傑作と思ってるんですが如何でしょう。
実際にはもっと有名なんかな、ここに収録されている位だし。
特にその両端楽章の完全にパーカッシブな音楽と強烈なリズムの進行がたまりません。
演奏は、シュライエルマッヒャーの全集よりライトな音ですが、リズムの軽やかさはそれはそれで楽しめる。
何しろあっちはかなごりごりと鈍重に突き進む感じだったので…
この二人による演奏は、特に最終楽章は素晴らしいノリで、軽やかにステップを踏んでくれる勢い。
アンドリーセンの「国家」をピアノ演奏で聴くというのはなかなか新鮮。
オリジナルは異常に濃密な音の塊がひたすら30分40分続くので、聴いていると意外と疲れますが
こちらは圧倒さはない分素直に聴けて気楽でいいです。和声もまだ理解しやすい。



Beuger・Cage
Antoine Beuger; Dialogues(Silences)
John Cage; Music for One

Jurg Frey,Clarinet
1996 Edition Wandelweiser Records  EWR 9607

もうレーベル名を見ればどんなものか一目瞭然、ヴァンデルヴァイザー楽派の作品を中核に添えたシリーズの一。
中核メンバー、というかヴァンデルヴァイザー楽派生みの親のアントワーヌ・ボイガー「対話(沈黙)」、
長い沈黙の間に、時折聴こえる短いパッセージ。全ての動きは沈黙の中に挟まれ、全てが沈黙に戻って行く。
うん、素晴らしいくらいに予想通りな音楽だ。ぽつぽつと現れる音たちも、
ほぼ全てが発音されるかどうかぎりぎりのものばかり。後半になればなるほど沈黙だらけになってくる。
あれ、音が多くなったかなと思ったらその感覚は正しい。
ジョン・ケージ「Music for One」の開始です。晩年のタイム・ブラケットを使用した30分ほどの作品。
短い旋律のような断片が、少しづつ陰影を変えながら遥かに響いていく。
ボイガーの後に聴くと、普通に感じてしまうのが恐ろしい。古典的にすら聴こえます。
演奏者はメインメンバーでもあるユルク・フレイ。バッチリです。



Reflections
Nicky Hind; Ripples, Reflections, Crossings
George Winston; Carol of the Bells, Night Sky
Steve Reich; Electric Counterpoint

Jose Luis Bieito,Guitars
Ars Harmonica  AH205

スペインのギタリストによる、イージーリスニング感覚の一枚。
ニッキー・ハインド(1962-)はイージーリスニング系統の分野で主に活躍する人物。スコットランド出身。
そのためあってか、なかなかにそれっぽい流麗でややミニマル気味な音楽。
タイトル曲はエコーをはっきりかけているあたり、いかにもヒーリング系の音楽。
ただもちろん、嫌味じゃない程度にすっと聴きながら雰囲気を楽しめるので十分に心地よい。
タイトル曲は比較的幅のあるモチーフが反復される感じが強いので、一番ミニマルに聴こえる。
ただ、両端の曲の方が好みとしては良かったかな…
ジョージ・ウィンストン(1949-)はこの分野一番の大御所。
前半の曲は「December」収録、多重録音によるギターアンサンブルはピアノソロよりもすごく豪華。
後半は「Forest」収録なので前の曲の12年後のアルバムから。こちらはより淡さ引き立つ演奏に。
ここにしれっとライヒの「エレクトリック・カウンターポイント」が入っているのが何とも。
まあ確かにその感覚でも聴けるし、楽しいんだけれども、なんか笑っちゃうような違和感が。
ただ演奏は至極まっとうなものです。伴奏音はちょっともっさりした感じですが、
アコースティックの生演奏旋律とエレキなそれ以外をうまく対比させるように浮き上がらせた聴きやすい録音。
ただ一つ大きな落ち度は、最終楽章の転調後、伴奏のコード部分がまるまる演奏されていないこと。
お蔭で一番大事な後半部分の盛り上がりに大きく欠けてしまっています。
まあ気楽に聴き流すようなものが目的ならそれでいいんでしょうけど、
自分みたいにこの曲が聴きたくて買った人間にはとてつもないマイナスポイント。
他は良かったのに、その一点だけで大きく評価を下げた残念な一枚でした。
ちなみにDVDもついてるんですが、全曲ビデオ収録されてるのかと思いきや
ビデオはReflectionsのライヴパフォーマンス(一部)のみであとは単に諸データと各曲のDVDプレーヤー再生用トラック音源だけ。
こちらはCarol of the Bellsとライヒは5.1chで再生可能になってる所が魅力でしょう。
そして超大事な点、こっちだときちんと第3楽章のコード伴奏も収録されてます。
え、こりゃあれかい、5.1ch非対応オーディオはトラック足りなくなるとかいう話?
そんなのないよね、CDの方は単純にミックスするときにトラック重ね忘れたってこと?



Melodies Francaises Oubliees
Valentin Neuville; Proses des mortes
Martial Caillebotte; Melodies
Alfred Bruneau; Melodies
Louis Durey; Vergers
Henri Tomasi; Chants laotiens
Jean Hubeau; Quatre Rondels

Mario Hacquard,Baryton  Claude Collet,Piano
1997 Alienor  AL 1075

近現代フランスのバリトン歌曲を集めた、実にマニアックな選曲の一枚。
まともに知れている名前でトマジとデュレというのがすごすぎる・・・
というか、マニアックすぎて、CaillebotteやBruneauの収録曲が単一歌曲集なのか単独曲詰め合わせなのか判断できない。
まあ十中八九後者な気がしますが、すべての題をここに書くのも面倒なので、とりあえずジャケのまとめ表記でごまかす。
ヴァレンティン・ヌーヴィユ?(1863-1941)、出てくるネット情報は仏語ばっかでまったくわからんです。
ドビュッシーとは同世代。収録曲は1894年の作曲なので、初期〜中期の作品と言えるのでしょう。
和声は時代相応なロマン派から印象派にそろそろ手が動くか、というようなもの。
まあもっとも、結果としては穏健派に落ち着いてはいるんですが。7曲20分の力作。
兄のギュスターヴはそこそこ名の知れた印象派画家ですが、写真の好事家でもあった
マーシャル・カイユボット(マルシャル・カイユボット、1853-1910)は今も昔も見事に無名の作曲家レベルに・・・
情報も兄のおまけのようにあるだけで詳しい情報はまた仏文だけですが、ショーソンやサン=サーンスに学んだのかな?
まあ正直言って中身の構造は前者と同じようなもの。もっとも、どちらもあっさりした美しい曲で期待通り。
アルフレッド・ブリュノー(1857-1934)はマスネに師事した保守派作曲家。
イタリア歌劇や、とりわけワーグナーに傾倒したオペラ作曲家だったようです。
収録曲を聴くと、それがよくわかる出来。前の二人が先進的に見えるくらいにどっぷりロマン派音楽してる。
ルイ・デュレ(1888-1979)は六人組の一人ですといえば「ああ!」となる感じの影の薄さがなんとも。
まあ音楽を志したのは20歳を過ぎてからですし、曲も特に派手さは無いですからねえ。長寿だったのに。
「果樹園」(でいいのかな?Op.42)は1932年作品。印象派の影響も見せながら
落ち着いたどこか古典的な美しさを見せてくれる、素朴に綺麗な曲です。
こうして聴くと、六人組の急進さは本当に限定的なものだった気がしてしまいますね。この人は元からですが。
この中でアンリ・トマジ(1901-71)は一番メジャーな知名度じゃ・・・ないかな?
この「ラオスの歌」(1948)もそうですが、彼の作品目録を見ると、歌曲はとくに
民謡の影響をそのまま表している作品が非常に多い。この曲もおもいっきり東洋音階風に始まります。
もっとも、中身はトマジらしくお洒落にまとまってるあたり、耳触りが柔らかい。
最後はジャン・ユボー(1917-92)で。ピアニストとしての知名がほとんどでしょうが、
「トランペットとピアノのためのソナタ」を聴いて衝撃を受けて以来、ずっと他の曲が聴いてみたかった。
でもこの「4つの詩」(1936)って表記が確かなら結構初期の作品ですね。
前述の「ソナタ」も43年作曲だし、きっと50年代以降は作曲活動をまともに行ってなかったんでしょうねえ。
内容は、「ソナタ」のようなバラード性とエキゾチズムの代わりにドビュッシー風の印象主義が強まり
いかにも近代フランスの作風を地に足着いて書いたかのような音楽。
ただ「ソナタ」の2楽章を思わせるような輪郭もあったりして、同じ作曲家なのはよくわかります。

ううむ、ある意味濃い内容だった。でも演奏のそつなく落ち着いて聴ける安定感もあって
全体を通して近代フランスの響きを十分に楽しむことができました。
この中で、個人的には最初二人も掘り出し物でしたが、デュレの曲がかなり気に入った。



無伴奏チェロ作品集
Gaspar Cassado; Suite for Violoncello Solo
Toshio Mayuzumi; Bunraku
Zoltan Kodaly; Sonate Op.8

Mineo Hayashi,Cello
1990 Pavane Records  ADV 7221

桐朋学園卒のチェリスト林峰男によるソロ作品集。
もちろんガスパール・カサド(1897-1966)の「無伴奏チェロ組曲」目当て。
稀代のチェロ奏者として大戦前後の世界で活躍した彼の代表作の一つ。
この、出身のスペイン風味あふれるメランコリックな歌が実に素晴らしいですね。
演奏の方は、音の一つ一つに芯のこもった振動が染み渡る、落ち着いた演奏。
ただ、そのおかげで実に安定して聴き楽しむことができます。
第三楽章の歌いっぷりは、自分には違和感あるところもありましたが、
それでもこれだけ情緒たっぷりに歌ってくれれば、聴いてて満足感は十二分。
黛敏郎「BUNRAKU(文楽)」が続くのも個人的にはうれしいところ。
「涅槃交響曲」などに続く日本文化の反映、とりわけここでは三味線と義太夫の語りがチェロ一本で再現されていく。
様々に変化のあるピッツィカート、グリッサンドによる音高のメリスマ、劇的なコントラスト。
流石は日本の奏者、この曲を野太い響きではばたかせてくれます。
コダーイの「無伴奏チェロソナタ」があるのはまあ普通。大体入ってるよね。
30分もかかる故再演がなかなかなかったのに、今ではこの手のアルバムにまず入ってる。
こちらでも太い響きを出しているおかげで、この曲の魅力がとてもよく伝わってくる。
録音が近いことがさらに強調、とても楽しめる一枚でした。



グレン・グールド 20世紀カナダのピアノ音楽
Oskar Morawetz; Fantasy in D minor
Istvan Anhalt; Fantasia
Jacques Hetu; Variations

Glenn Gould,Piano
1989 CBS/Sony  28DC 5303

オスカー・モラヴェッツ(1917-2007)はボヘミアに生まれ、ナチを逃れてカナダに移住した作曲家。
「幻想曲(ニ短調)」はいかにも古典的なソナタ・アレグロの形式。
1948年の作品とは思えないまでに明確に、形式に倣った音楽が聴ける。
そういう意味では、なぜこの曲が幻想曲というタイトルがついているのか不思議ですが、
それは「プロポーションの感覚」を考える事で見えてくると言われています。
はっきりとした構成の中に出てくる、影のような細かな部分構成の曖昧さや後期ロマン派を思わせる詩的なやりとり。
どこか牧歌的な楽想に繋がる点が鍵なのでしょう。
イシュトヴァン・アンハルト(1919-)はブダペスト出身の移民。ナディア・ブーランジェらに師事しています。
電子音楽も手がけているようで、Hugh Le Caineやシュトックハウゼンとも関係があるようす。
「幻想曲」はシェーンベルクやベルクのような印象をもち、事実そこに負う構成もあります。
ただ、全体の作り込みはそれに限らず様々な技法を無駄なく詰め込んだもの。
派手さとは無縁ですが、その音が実によく計算されたものがよくわかる。
グールドが「その真価にふさわしいほどには認められていない」と言うのに納得できる作品。
渋く魅力的という言葉がよく似合う、純粋に構成美が聴ける佳作。
ジャック・エテュ(1938-2010)はケベック出身、ルーカス・フォスに学んだことがあります。
「変奏曲」、刺激的な序奏部に続き、調性的なセリーを元に柔軟かつ非常に構成を重んじた展開を行う。
その音楽は、聴いていて華やかでありながら構成美を同時に感じ取れると言う面白いもの。
最後のトッカータにおける不思議な爽快感は聴きもの。
演奏は聴けばグールドと分かる。鼻歌がやっぱりばっちり収録。



Arcobaleno
Carlos Guastavino; Cuatro Canciones Argentinas  etc.
Carlos Lopez Buchardo; Cancion del Carretero  etc.
Alberto Ginastera; Canciones populares sobre textos del Cancionero popular  etc.

Carlos Palazzo,Baritone  Paule Van den Driessche,Piano
2000 EMS  AAOC-94462

アルゼンチン3人の作曲家の歌曲を集めたアルバム。
にしても、このEMSレーベルは情報が凄く少ないのががっかりすぎる。
折角音源の方はマニアックなものが多くあって面白いというのに。
カルロス・グァスタビーノ(1912-2000)はアルゼンチンの国民楽派的な存在の代表格。
調性をはっきり持ちロマン的な作風の中に民族音楽を色濃く残した作風の作品。
彼は歌曲を膨大に書いているので、ここに収録されている9曲もそのごく一部。
その音楽は非常に朴訥としていて、穏健なもの。
ただ、アルゼンチン的な音楽は何かと言われたら、彼の曲こそがその答えになるでしょう。
個人的には4曲目や歌曲集のラストなんかが良かった。
カルロス・ロペス=ブチャルド(1881-1948)はちょっとマイナーな部類かな。
ルーセルへの師事経験がある、国内で活躍した人物ですが
音楽性としてはグアスタビーノをもうちょっとおとなしくした感じ。
まあ時代相応な和声の差がある、といった具合でしょうか。
こっちの方が収録曲の緩急変化が富んでいて、思ったより好み。
ヒナステラはもう俺は説明不要。ただ収録曲がこのレーベルの相変わらずで一見じゃ意味不明。
最初の2曲は「Dos canciones(二つの歌曲)Op.3」の曲。なんで各曲のタイトルだけでメインタイトルが表記なしなんだよ。
2曲目は作曲者によるピアノソロ版「ミロンガ」もあるので比較的耳にする機会はあるかも。
「Canciones populares sobre textos del Cancionero popular」というのは要は
「Cinco canciones populares argentinas(アルゼンチン民謡による5つの歌曲集)」Op.10からの
2-3-1曲目を抜粋収録しているだけのこと。
演奏、ちょっと平坦で硬い感じですが、音楽をそれなりには楽しめるし
マイナーな曲の音源としては十分に聴けるのでとりあえずは文句は言わない。



Guy Klucevsek -Altered Landscapes
Henry Cowell; Iridescent Rondo in Old Modes
Amy Denio; Ohio Rhyming Sequel
Guy Klucevsek; Altered Landscapes, Accordion Misdemeanors
John Cage; Dream
Alvin Lucier;Music for Accordion with Slow Sweep Pure Wave Oscillators
Alan Hovhaness; Suite for Accordion
Burt Bacharach; Raindrops Keep Fallen' on My (Wives and Lovers) Head
Charlie Haden; Silence

Guy Klucevsek,Accordion
1998 evva  33011

「変わりゆく風景 -バカラックからケージまでアメリカ音楽いろいろ」と題して
現代アコーディオン奏者を代表するガイ・クルセヴェク(1947-)が文字通りいろいろな音楽を奏する一枚。
カウエル「古い旋法による玉虫色のロンド」は最初期のアメリカ作曲家によるアコーディオン曲。
彼らしい素朴な旋律の積み重ねが軽快なロンドを作り上げます。ごく普通の曲ですが心地よい。
エイミー・ディナイオ(1961-)はシアトル在住のマルチ・インストルメンタリスト。
アコーディオンも弾ける関係上か「オハイオと韻を踏んだ結果」という曲が。
このオハイオとは、彼女の姓が読みづらい人へ「オハイオと韻を踏んで」とアドバイスする点から。
ゆるやかなリズム、穏やかで長い旋律が心地よくそよいでいく。クルセヴェクの編曲あり。
クルセヴェク自作「変わりゆく風景」バルカン風の憂いを持った旋律がゆったりと現れ、
変奏を通して長く穏やかに、しかし激しく音楽を燃え上がらせる。
カウエルの、調性の核は保持したまま内部の音階を変えるモーダル・モジュレーションを使用。
ジョン・ケージの「夢」は彼が初期に書いた、美しい単旋律が広がる作品。
メロディカ等の構造による独特の、フレーズからの音の持続がまた音楽に浮遊感を与えてくれる。
さて、ここに来てアルヴィン・ルシエ。「アコーディオンと緩やかに動く正弦波発信機のための音楽」。
2つのオシレーターが出すサイン波がゆっくりと上下に動く。
そのはざまをアコーディオンがノン・ビブラートの音を伸ばし、様々なうねりを出していく。
ルシエ作品は内容が実に安定しているので安心ですね。完全に音響実験の域に達している、という意味で。
ホヴァネスの「アコーディオン組曲」は1959年の作品。
アコーディオンの構造は知らないのですが、プリセット・コード・ボタンを無視して演奏させるというのは
普通の音楽ではやらないことなんでしょうか。ドローン風伴奏と中近東の音楽に影響を受けた、簡素な小品。
クルセヴェク2作目、「アコーディオン軽犯罪」は、E. Annie Proulxによる同名小説の
オーディオブックのために作られた音楽。アメリカンで軽快な小品が続く楽しい作品。
ぶっちゃけ、普通に聴き流していると、ホヴァネスとの繋ぎが自然すぎる。
バート・バカラックの「(素晴らしき恋人たちは)雨に濡れても」、こうして聴くと、なんだかすごいタンゴな感じになる。
最後のチャーリー・ヘイデン(1937-)はジャズ・ベーシスト。いちばん普通の曲に聴こえる。



Together in Music -Icelandic & Polish Flute Music
Arni Bjornsson;Four Icelandic Folk Songs
Jonas Tomasson; Green Snow
Atli Heimir Sveinsson; 7 Tonaminutur, Intermezzo, Lokasongur
Atli Ingolfsson; Three Moments
Sorkell Sigurbjornsson; Kalais
Paul Kletzki; Concertino Op.34
Henryk Mikolaj Gorecki; Three Diagrams Op.15
Tadeusz Szeligowski; Sonata for Flute and Piano

Ashildur Haraldsdottir/Ewa Murawska,Flute Joanna Zathey-Wojcinska,P.
2009 Acte Prealable  AP0224

前半アイスランド、後半ポーランドの現代作曲家のフルート曲集。
作曲家・ピアニスト・フルート奏者と活躍したアウルニ・ビョルンソン(1905-1995)の「4つのアイスランド民謡」(1950)、
近代的な和声による、メロディアスで美しく滑らかな4つの小曲。凄く短いですが気に入りました。
作曲家で歌手のヨウナス・トウマソン(1946-)による「緑の雪」(1994)、長い息の旋律と
どこか旋法的なピアノ伴奏、そこから次第に盛り上がるところは実力派であることを伺わせます。「プーランク風」。
アトリ・ヘイミル・スヴェインソン(1938-)はトウマソンと並んでアイスランド音楽界をリードする人物、らしい。
「21の小曲(1981)から 7つの小曲」は特殊奏法を駆使した、音響的には幅広いけれど構造的には古典的な曲。
各曲約1分のなかで繰り広げられる、様々な音響の小世界。
アトリ・インゴウルフソン(1962-)の「3つの瞬間」、あっという間に終わる近代的で美しい音楽。
スヴェインソン2曲目「間奏曲」、実に情緒豊かで綺麗な小品。普通のリサイタルにも入れて欲しい1曲。
アイスランドの重鎮ソルケル・シグルビョルンソン(1938-)の「Kalais」、いきなり特殊奏法から始まり、
その後も北風の神を示す題どおりの厳しく激しい実験世界が広がる。アイスランド初期フルート独奏音楽。
ここからポーランド。指揮者として有名なパウル・クレツキ(1900-1973)のフルートとピアノのための「コンチェルティーノ」、
彼らしい不協和音を効果的に用いた劇的で美しい曲。古典的な構成の中で聴かせる、かっこいい音楽です。
グレツキの「3つの図表」、非常に点描的で幾分セリエルな音楽。彼が前衛の先端にいたことがよくわかる作品です。
ただ特殊奏法を全く使っていないので、初期の彼らしいノイズらしさは全くありません。
ワルシャワ音楽院で教鞭をとっていたタデウシュ・シェリゴフスキ(1896-1963)の「フルート・ソナタ」、
冒頭からして既に、ここはフランスかと思いたくなるほど爽やかで洒脱な音楽。
近代音楽ファン(特に六人組とか)は絶対に見逃せない一品です。あれ、この人ポーランド出身だよね?
ラスト、スヴェインソンの「最後の歌」はピアノとフルート二重奏。実にメランコリックで美しい、
何かのテーマ音楽みたいな楽想です。これもアンコールピースとかに良いんじゃないかな。

録音、演奏ともに実にクリアで素晴らしい。
曲はビョルンソン、クレツキが気に入りましたがシェリゴフスキも実に捨てがたい。



Electronics and Percussion - Five Realisations by Max Neuhaus
Earle Brown; Four Systems for four amplified symbals
Morton Feldman; The King of Denmark
Sylvano Bussotti; Coeur pour Batteur - Positively Yes
Karlhenz Stockhausen; No.9 Zyklus for one percussionist
John Cage; Fontana Mix - Feed

Max Neuhaus,Electronics & Percussion
Sony  SICC 79

打楽器奏者、電子音響作家、サウンド・インスタレーションや環境音楽の方面の活動を行っていた
マックス・ニューハウス(1939-2009)の、有名な打楽器演奏による不確定な音楽群をおさめた一枚。
1968年にオリジナルのLPがリリースされながら、半世紀も復刻がありませんでした。
アール・ブラウン「4つのシステム」は4つの増幅されたシンバルによる演奏。
水平のラインだけで構成された楽譜をシンバルの持続音で再現すると、見事に金属ジャンクドローンに。
モートン・フェルドマン「デンマークの王」では、彼のひそやかな音響を再現しつつ、
音響にも広がりを与えるために、かなりバリエーションのある打楽器を使っています。
シルヴァーノ・ブソッティの「打楽器奏者のための要点-全くその通り」、こういうコンセプトなら
彼の名前も外せないですね。上下左右のない1Pの楽譜ですが、ニューハウスはこれを
全バージョン用意したうえでこれを短冊切り、好きにつなぎ合わせて楽譜としています。
かなり増幅を行うため、通常とは全く違う響きが支配していて面白い。
シュトックハウゼンの「第9チクルス」、いくつもの表記から自由に選択し、多くの打楽器の間を
回るように演奏していく曲。そのうち今回選んだ方法のために「自然発生バージョン/反時計まわり」の副題が。
演奏自体は普通なので、結果このなかでは一番安心して聴ける音楽に。
ケージの「フォンタナ・ミックス」をもとにしたニューハウスの「フィード」なので「フォンタナ・ミックス-フィード」。
マイクを乗せたいろんな打楽器をスピーカーの正面に置くことでフィードバックなノイズ音響を作り出す。
そして、音のコントロールを基本的に「フォンタナ・ミックス」のスコアから導いた構造で行う。
ただでさえ、プラスチックシートを用いた本格的な偶然性の作品をさらにこんな処理にすると、
もはやノイズドローンと区別がつかなくなってきてしまいます。
デヴィッド・バーマンのプロデュースだからかは知らないけれど、これじゃあ
打楽器奏者向けというより電子音楽やノイズ好きに受けそうな、とんでもない内容だ。凄いけれど。



Sonic Encounters: The New Piano
John Cage; Primitive, In the Name of the Holocaust
Alan Hovhaness; Orbit No.2 Op.102-2, Jhala Op.103
George Crumb; Five pieces for Piano
Somei Satoh; Cosmic Womb
Ge Gan-Ru; Gu Yue(Ancient Music)

Margaret Leng Tan,Piano
1988 mode  15

モード初期のリリース、マーガレット・レン・タンによる現代ピアノ作品集。
最初はジョン・ケージの初期プリペアドピアノ音楽から2つ。
「プリミティヴ」、おかしいな、以前聴いた音源とは全く印象が違うんだが、こんな演奏の変わる曲だったっけか。
後半はたしかにそれっぽいので同じ曲なんだろうが・・・たしか記憶にあるのはNaxos盤だったろうか。
「ホロコーストの名において」は正確にはプリペアドというよりはストリング・ピアノの為の作品。ガムラン的な響きがゆっくりと響く。
アラン・ホヴァネスの2作品はどちらも彼初期の作品。作品番号は100超えてても初期。
一応パッサカリア形式らしいですが、旋律線は明らかにインドのラーガ音楽。
2つとも1952年の作品ですが、もうこのころからホヴァネスの民族音楽嗜好は全開です。
ただ間の多く瞑想的な趣がかなり強いのは面白い。もっと後の管弦楽作品だと
たとえ動きは少なくても間が支配するような作品なんてそうないですからね。そういう意味ではまだ前衛思想も持ってたんだろうか。
ジョージ・クラムの「ピアノの為の5つの小品」も1962年作曲ですから初期の頃。
でもやっぱり、音に込められた緊張感や特殊奏法への嗜好などはもうしっかり現れている。
点描的で前衛的だけれど、どこか美しさも感じられる、淡い曲。
佐藤聰明の「胎内宇宙」(1975)は彼の「リタニア」「太陽讃歌」に続く、同系統の初期作品。
デジタルディレイを伴ったピアノ2台のトレモロが美しくも神秘的にきらめく。
前述の2作品と手法は全く同じだけれど、たぶんこの作品が一番落ち着いた、美しさを感じる響き。
ゲ・ガンリュ(葛甘孺,1954-)は中国生まれの作曲家。中国の作曲家では初期の方の先鋭作曲家です。
「Gu Yue」は中国の民族楽器を模した響きを楽章ごとに追求した音楽。
特殊奏法がそのほとんどを占めますが、その不可思議で美しい響きは個性的。
最後のドラムを表現した低音が跳ねる楽章とか面白い。
同じ東洋出身(まあレン・タンはシンガポール出身ですが)の作品を最後に持ってくるあたり良いね。



三村奈々恵 マリンバ・スピリチュアル
Enya/N.Mimura; Caribbean Blue
Joseph Schwantner; Velocities
Enrio Morricone/N.Mimura; Deborah's Theme
Fritz Kreisler; Schon Rosmarin
Daniel Levitan/N.Mimura; We Two
Otoemon Ayahiro Sumi; Length of Variable Echo
J.S.Bach/N.Mimura; Chaconne in D minor
arr.N.Mimura; Transformation of Pachelbel's Canon

Minoru Miki; Marimba Spiritual
三村奈々恵、マリンバ  鈴木重弘、ピアノ  伊勢友一・萩原松美・奥田真広、パーカッション
2000 Sony  SRCR 2565

国立音大、ボストン音楽院を出たマリンバ奏者、三村奈々恵によるソロ・アルバム。
技巧や響きは申し分ない。柔らかめの彫りが深い音で、ゆったりした曲が合う音です。
以下、シリアス?な音楽作品を先に感想。
シュワントナーの「ヴェロシティーズ(常動曲)」は、彼の曲としてはかなり明るい素直な響き。
もちろん彼独特のメランコリックさは感じられるけれど、ミニマルなパッセージの配列で作られた曲の構成が
非常に躍動感溢れる音楽として聴こえてくるために、いつものオケ作品のような陰鬱感は全く無い。
ダニエル・レヴィタンの「ウィ・トゥー」は、2つの楽章を作者とその妻に見立てていることからの題名。
ゆったりした7/8の、リズム感覚が揺れる第1楽章、暖かく躍動的な第2楽章。
なおこの曲、オリジナルはマリンバ四重奏で編曲版は二重奏。多重録音かな。
鷲見音右衛門文広の「変化する共鳴の長さ」はコンピューターによる加工音つき。
マリンバの特殊奏法音やノイズが薄く広がる中、マリンバが旋法的なふわふわした音楽を奏でる。
2000年の現代音楽新作としては、かなり聴きやすい作品の部類に入る。
近年の作曲シーンらしい、音響的にノイズやオルタナティブ系の影響を受けた作品。ていうか作曲者名凄いな。
最後に三木稔「マリンバ・スピリチュアル」が来るのはもはやこの手のお約束。
この人の得意な曲でもありますが、確かにかなり崩しているものの(特に前半)これはこれで均整が保てている。
後半も非常にうまいのだけれど、残念ながら熱気が足りない。良く練られた佳演ではあるのですが。
その他、編曲物の感想。
エンヤの「カリビアン・ブルー」、マリンバとヴィブラフォンによる、オルゴール的な深く美しい編曲。
モリコーネ「デボラのテーマ」、有名なワンス・アポン・ア〜の中の曲。いかにもな、トレモロによる心地よい編曲。
バッハの「シャコンヌ」はこう聴くとちょっと違和感。バッハは、マリンバとの相性は微妙だと思う自分。
三村編曲の「パッヘルベルのカノン」は、そんなへんなところも無い素直な変奏曲。



Musique Pour Flute et Guitare
Ravi Shankar; L'aube Enchantee
Toru Takemitsu; Toward the Sea
Astor Piazzolla; Histoire du Tango
Jose-Luis Campana; Feed-Back

Pierre-Andre Valade,Flute  Roberto Aussel,Guitar  Vincent Limouzin,Perc.
1987 Circe  87103 LD

そこそこは名の知られた二名による現代作品集。ちなみにこのレーベルはAddaの系列の様子。
ラヴィ・シャンカールの「魅惑的な夜明け」、ギターの動きはほとんどシタールのそれ。
瞑想的な音楽にフルートが味付ける音楽が次第に盛り上がり、リズムがはっきりと底に流れる第2部へ。
主にフルートの動きがテンション高いですね。まあ演奏のほうもそうだし・・・
ただシタール的な音を想像すると、これくらい落ち着いていてもいいのかもしれない。
ジャン・ピエール・ランパルに献呈された、見事なまでにシャンカール節の音楽。
武満徹「海へ」があったから当然このCDも買う見切りをつけたというもの。
ただ、演奏はかなりあっさりした印象。うーん、もっとゆったりとたゆたうような感じが合うと思うんだけれど。
悪くないんですが、緩急が激しすぎる。あとギターの残響がかなり少なめ。
第3楽章はまあ悪くなかったと思うのは、この曲が一番好きな自分の偏見でしょうか。
アストル・ピアソラ「タンゴの歴史」も文句なしの名曲ですね。
軽い響きが実にこういう音楽には合いますね。ちょっとノリが硬い感じはしますが、
特に流れ自体がぎこちないわけではないし、さっと聞ける感じが自分には合う。
さてこの中で唯一マイナーなホセ=ルイス・カンパーナ(1949-)はブエノスアイレス出身。
テープ音楽をその活動の主要なものにしているようですが、この「フィードバック」はノーマルな三重奏。
個々の断片をたぐりよせ、相互に確かめ合いながら音を進めていく。幾分か散文的で即興的。

演奏、Roberto Ausselは以前聴いた時もそうだったんですが、線が細く響きが弱い。
あんまり自分の好みではない感じですねえ。フルートの方はまあまあ。



Dogen Kinowaki  - blower
Astor Piazzolla; Histoire du Tango
Kaori Yonekura; Arioso
J.S.Bach; Suite No.1 BWV1007-Prelude
Norio Nakagawa; Dark Matter
Tomoko Fukui; A Color Song on B
Sessyu Kai; Musik fur solo flote
Toshi Ichiyanagi; In a Living Memory

Dogen Kinowaki,Flute  Norio Sato,Guitar
2002 Zipangu Products  ZIP0004

現代日本のフルート奏者として大御所、現代音楽も積極的に吹いてくれる木ノ脇道元のアルバム。
ピアソラ「タンゴの歴史」はさっとしながらも溜めはしっかりと。
結構好感が持てる演奏で非常に良かったです。狭い会場で演奏してるような録音がまた(この場合は)良い。
時折挟まれる「blower」はフルート演奏の音を電子編集したもの。
パッセージのようなものではありますが、これはこれで十分楽しい。2の茫洋とした音響とかいいです。
東京芸大で松下功らに師事した米倉香織(1973-)「アリオーソ」、乱暴に奏されるのっぺらな音の切れ端、
素っ気ない音の連続が次第に有機的な輪郭を持って成長していく。
バッハの有名なプレリュード、バスフルート独奏で吹いてくれてます。
中川統雄「ダークマター」はバスフルートの激しいノイジーなパッセージを時にコラージュのような音響も見せながら進む。
攻撃的なバスフルートのやせた音、というのがあまり聴いたことなかったし。
福井とも子「A Color Song on B」はBの音を中心音にしながらカラートリルなどを特殊奏法を中核に
亡霊が暴れるかのように虚ろなノイズの持続音を紡ぎだす。
甲斐説宗「フルート・ソロのための音楽」が聞きたくてもちろん購入しました。
ビブラートなしの音、丸裸で全く洗練されていないそのままの音。それがぽつぽつと、小石を置いていくように滔々と続いていく。
やっぱり、彼の音楽は河原の小石を眺める様な感覚がとても楽しいですね。
一柳慧「忘れ得ぬ記憶の中に」はコンクールの課題曲として書かれているんですが、
特殊奏法をそれとなくちりばめながら幅広く暴れまわる音がそれにしてはすごい。



Upper Air Observation
Nils Vigeland; Vara
Alvin Lucier; Self Portrait
Yasunao Tone; Trio for a Flute Player, Lyrictron
Barbara Held; Upper Air Observation

Barbara Held,Flute  Joseph Kubera,Piano
1991 Lovely Music  LCD 3031

フルート奏者バーバラ・ヘルドのソロアルバム。ほぼフルート独奏。
ニルス・ヴィーゲラン(1950-)はニューヨーク州バッファロー生まれの、
ルーカス・フォスに作曲を学んだ作曲家・ピアニスト。フェルドマンの録音にも名前を見ることができますね。
「Vara」はフルートとピアノのための作品。同一の主題がフルートとピアノで徐々にずれていき、
時折ピアノのアクセントがガラスが割れるように挟み込まれる。
調性的な美しいパッセージも様々に織り込まれながら、変奏曲のように響きが移ろいゆく。
30分近い長い作品ですが、構成よりはふわふわとその雰囲気を楽しみながら聴くのが楽しい。
アルヴィン・ルシエ「セルフ・ポートレート」はやっぱりいい意味でひどい作品。
フルート奏者は風速計からある程度距離をとった場所に位置し、光のレーザーが反対側から当たるようにします。
フルートを通して出てくる吐息の風を元に光が照射され、演奏者の体が部分的に浮かび上がる・・・というもの。
音を聴いているだけだと、フルートの虚ろな音が長く伸び、風速計の回転する音らしきものがたまにパルスとして響いてくるだけ。
ああ、ルシエだ。でもやっぱりこの人はこうじゃないとね。
その後に来る人物が刀根康尚とかいう辺り、このアルバムの選曲はいかれている。
「ソロ・フルート奏者のためのトリオ」は万葉集を題材にして、フルートの音、奏者の声、エレクトロニクスサウンドの
音を共演させる、ということでトリオと題されています。
フルートの旋律と並行するように響く、引き伸ばされたようにきしむ電子音がいかにも彼のサウンド。
「Lyrictron」は、それの声と電子編集が合体したような音楽。ロボボイス。
どちらの作品も、ルシエ同様コンセプチュアルでパフォーマンスの要素を持っているため、
音だけじゃその作品の概形を想像することは難しい。でも音だけでも彼らの作品だとすぐ分かるのが凄い。
最期はヘルド自身の自作自演「Upper Air Observation」。
ラジオゾンデの電波音が流れ、加工されていく。・・・これフルートはどこに?
まあ普通に電子音楽としては楽しめたからいいや。



BRENDEL Mussorgsky・Stravinsky・Balakirev
Mussorgsky;Pictures at an Exhibition
Stravinsky;Petrouchka Suite
Balakirev;Islamey(Oriental Fantasy)

Alfred Brendel,Piano
1998 Vox Music  VOX 7203

チェコ出身、現在はオーストリアに住むアルフレート・ブレンデルの
近代ロシア作品でまとめたアルバム。廉価版だけれど。
ムソルグスキー「展覧会の絵」、最初のプロムナードから硬くはっきりとした音で叩き、
そのままの勢いで思いっきり「小人」をたたいてくれるあたりロシアを強調していて良い。
「古城」のややあっさりめのテンポなんかも自分の趣味に合いますね。
ブレンデルらしく、奇をてらわない落ち着いた解釈と素直な盛り上げ方は実にすっと聴くことができるので好きです。
にしても、このCD音源はすべて1955年録音のものですから、この原典版の録音としてはかなり古いものでは。
リヒテルが原典版の録音をリリースして一挙に有名になるのが58年らしいですし・・・
ブレンデル自身が31年生まれであることを考えると、チェコ出身とはいえ
この版を選んで演奏するあたり若さと挑戦心が見れて、そこもまた良い。
もちろん、勢い任せだからなのか、結構飛ばしている音なんかもあるけれど・・・
ストラヴィンスキー、「ペトルーシュカ組曲」となっていますが、要は「ペトルーシュカからの三楽章」のこと。
やっぱり、軽やかなタッチでのり良く弾いてくれるので、
曲のかわいらしさや跳ねるようなリズム感が耳にまず入ってくる。
技術の方もそうは不安になるところはないし、やはりそつなくこなす手腕が安心できる。
バラキレフの「イスラメイ」もこの手の名曲にして難曲。
こっちは技巧が華々しさを盛り上げる重要な要素になってくるので、幾らか分が悪かったか。
でも、十分に楽しめるので全く問題なし。
やっぱりブレンデルは安定して聴けるから良いね。



schlagArtig
Maki Ishii; Thirteen Drums
Markus Hauke; Richard; ausatmen...
Bryan Wolf; ...and our words mingle like tears and our tears whisper like fire...
John Cage; Composed Improvisation
Iannis Xenakis; Psappha

Markus Hauke,Percussion solo
2000 New Classical Adventure(NCA)  60104-215

ドルトムント出身、現代音楽のレパートリーを精力的にこなす打楽器奏者のソロアルバム。
石井眞木「サーティーン・ドラムス」から粒のはっきりした、実に爽快な演奏を聞かせてくれる。
この曲は日本の打楽器曲でも屈指の有名曲ですが、ここまでノリノリな演奏はあんまりない。
真摯かつ丁寧に叩いているんだけれど、この曲の原始的で粗野な性格も同時にしっかり出してくる。
実にそつなく技術とノリの双方をバランスよく配置した、好感の持てるもの。
マルクス・ハウケ自身の曲はタイトルでも指しているようにワーグナーの曲が念頭にあります。
「ニーベルングの指輪」を下敷きに、そこからリズム・モチーフを取り出したりして展開するんですが、
そうでなくてもティンパニにシンバルを置いて様々に表情を付ける様がなかなか楽しい。
ブライアン・ウルフ(1960-)はミシガン出身の作曲家、晩年のシュトックハウゼンの
サポートを、主にエレクトロニクス方面で積極的に行っていたようです。
この長いタイトルは、詩人/小説家のジム・ハリソンの著作からでしょう。三部作のラストを飾る曲らしい。
金属打楽器の音が煌めきながら、テープ加工を施された打楽器の録音が並走する。
民族楽器が多く使われ、響きも実に民族的、というかスピリチュアルなもの。
2m四方の枠に実に多くの打楽器を詰め込んで演奏する、25分の力作。
ケージの「コンポーズド・インプロヴィゼーション」は1990年の作品。スネアドラム・ソロ。
全8分からなる8部分に64の断片をちりばめるやり方は、晩年のタイム・ブラケットな作風よりは
中期の偶然性に近い感じ。音の振る舞いもたしかに間の多い感じではないです。
ただ、音そのものの楽しさはやっぱり多分に感じられる。こそこそと音が動き回ります。
最後にクセナキスの「プサッファ」がくるのはまあ、定番か。
硬い粒でやはり快速テンポに飛ばしてくれるのは、やはり心地よい。
ただ、クセナキスらしい鬱屈した意志というよりは、純粋に開放的な造形美のようなものを強く感じます。
凄みは感じさせないけれど、聴いていて楽しい演奏、と言えばいいんでしょうか。
総じて、非常に楽しめる素晴らしい演奏でした。録音も悪くない。



Richard Stoltzman
New York Counterpoint

Richard Stoltzman,Cl.  Bill Douglas,P.etc.
Jeremy Wall,Syn.  Ediie Gomez,B.  Glen Velez,Perc.
1995 BMG  BVCF-1540

なんで買ったかなんて、ここを見るような人間ならわかるよね。
ビル・ダグラズの曲もこれはこれで好きです。トラック1とか爽快なナンバーはいいよね。
トラック2はミュージカル「キャッツ」のナンバーから。「メモリー」じゃないけれどこれもしっとりした曲。
そんな感じで聴いてたらいつの間にかアイヴズの曲が。
とはいってもそんないかれた曲の方ではないしアレンジされてるから気軽に聞ける。
あとペロタンの曲はアレンジされているせいか、すごい牧歌風に聴こえる。
で、そんなこんなで最後に「ニューヨーク・カウンターポイント」を置くあたり分かっているね。
何たって彼のために書かれた作品なんだから、これくらいの扱いは当然でしょ・・・とほざいてみる。
冒頭のパルスは固めに、以降の旋律は最初からすでに跳ねるように。
ジャジーな音楽も多いこのアルバムの中の流れに合わせたものなのか、
それとも純粋に音楽としてこのほうがいいと考えたのかはわかりませんが、少なくとも自分はこの歌い方は気に入っている。
まあ多重録音のマスタリングが有名なエヴァン・ジポリンのものと比べると結構しょっぱいですが。
はっきりとした硬質な、けれど艶のある音で気楽に吹いているのがわかる、いい演奏です。



Poemas Tabulares
Jorge Ritter; Poemas Tabulares, 3 Piezas para Guitarra
Mari Takano; Are you going with me?
David L. Young; Jasmine
Paul Dresher; Where we are now 〜Elastic Music No.2

Norio Sato/Juan Carlos Laguna,Guitars
ALM Records  ALCD-43

日本を代表するギタリストの一人佐藤紀雄(武満の「虹へ向かって、パルマ」の初演者です)と
メキシコ出身で自国を中心に活躍するファン・カルロス・ラグーナのデュオ・アルバム。
メキシコシティ出身の作曲家ホルヘ・リテール(1957-)、同市の国立音楽院で学び、ギターを中心とした作品を多く発表しています。
「ポエマス・タブラーレス(平板な詩)」はギターデュオ作品。
絶えず八分音符の動きで小気味良く旋法的な音楽が目まぐるしく入れ替わる第1楽章、
対話的な動きにラズゲアード(かき鳴らし)のアクセントが弾かれる、ちょっと調性が薄い第2楽章。
第1楽章の再現ながら、2演者が対比的に動き出してより華やかな第3楽章。
短いですが実に爽快で楽しい曲です。ギターらしいかっこよさがよく出た曲。
「ギターのための3つの小品」は1982年のギター独奏曲。
先程の構成に民族色を盛り込みながら簡素に小ぢんまりとしたような作品。
なるほどメキシコの色合いが出た良い音楽だなあと思いますが、ぶっちゃけさっきのほうが好み。
高野眞理(たかの舞俐、1960-)はファーニホウやリゲティに師事した作曲家。
ギター二重奏のこの曲は、題名から分かるとおりパット・メセニーを結構意識してる。
このナンバーもいいけれど同時期ならPhase Danceも捨てがたいよね。話がずれるけれど。
ニュージャズの記憶を残しながら呟かれる、美しく簡素な旋律の掛け合いが次第に無調のベールに覆われていく。
デイヴィッド・ヤング(1969-)はオーストラリア出身の作曲家。
ギター独奏のための「ジャスミン(茉莉花)」は様々な奏法の音響が
蔓のからみつくように激しくもつれ合う。点描的で激しい響きはなかなか爽快です。
最後はお馴染みポストミニマル作曲家ポール・ドレッシャー(1951-)の「今、僕たちのいるところ」。
これが聴きたいがため買った。ギター2台によるトレモロが淡く干渉し、ふわふわとリズムが浮かび
ロックや民族音楽の幻影が見え隠れしながら、アルペジオに乗せて美しく音楽が流れていく。
これはたまりませんね、実に王道を行くミニマル。そこにギターらしい物憂げな響きが加るかっこよさ。
個人的には、ドレッシャーの作品中で一番の出来。
演奏も含めて、実に素晴らしかった。



Doubles Jeux
Henri Dutilleux; Figures de resonances
Darius Milhaud; Quatre danses en deux mouvements
Daniel-Lesur; Contre-fugue
Alain Louvier; VIIIe Etude pour 31 agresseurs
Marcel Mihalovici; Cantus Firmus
Pierre Petit; Le diable a Deux
Andre Jolivet; Patchinko
Georges Auric; Doubles Jeux
Marius Constant; Moulins a Priere
Maurice Ohana; Soron-Ngo

Genevieve Joy and Jacqueline Robin,Piano
Erato  WPCC-329

近現代フランスのピアノ二重奏作品集。マイナーな曲ばっかり。
ディティユー「響きの形」、ここではいくつか書かれているうちの最初の3曲を収録。
激しいクラスターが爆発しては極端なまでに対比される第2曲、
極端な高・低音で音型が動いていく第3曲など音響的な広がりがあって、
そういう意味で自分としては聴いていてとても楽しい。
ミヨー「4つの舞曲の2章」、大本はそれぞれ同時にも独立しても演奏可能な6つの舞曲。
ここではそのうちの「サラバンド-パヴァーヌ」と「ルンバ-ジーグ」を組み合わせて演奏されています。
どこかちぐはぐな感じだけれど、語法的にはかなり絶妙に関係性が保たれている、
リズム的な緊張感も感じられるどこか派手で爽快な作品。
ダニエル=ルシュール「コントラ・フーガ」、ゆるやかで厳格なフーガの上を
まるで馬鹿にするかのように音の駆け足が行き来する。
アラン・ルヴィエの「31人の侵略者のためのエチュード第8番」、
とにかく鍵盤がひたすら叩かれる。クラスターのひしめくさまはとても打楽器的。ノイズチック。
いい感じに岡本太郎しています。とりあえず爽快なので気に入った。
ミハロヴィチ「カントゥス・フィルムス」穏健派な作風だけあって
旋法的で近代的和声のなかで堅実に、黙考するような音楽を作り上げる。前後の曲が曲だけにほっと一息。
プティ「馬鹿騒ぎ」、蓋をノックするノイズから始まる異常なまでに速いパッセージ。
そしていきなり挟まれる幾分メランコリックなワルツ。なんだこりゃ。面白いけれど。
ジョリヴェはずばり「パチンコ」。・・・投石器的なアレでなく日本独特のアレです。
まあ単に音密度の濃さや乱暴なリズムの印象から名付けただけらしいですが。
オーリックのタイトル曲「ドゥブル・ジュ」、跳ねるようなタッチと
調性を超えて「全音階的な」スタイルの洒脱な作品。
マリウス・コンスタンはもしかして指揮活動のほうが有名じゃなかろうか。
元はチェンバロ二台用に書かれた「祈祷輪」、混沌とした速い動きの冒頭から
次第に旋律が暴走しては点滅する、無窮動の音楽。
最後のモーリス・オアナ「ソロンゴ」、まだ作者健在なのに未完成とかどういうことだおい。
クラスターや特殊奏法だらけの、幾分か点描的な、けれど反復要素が多い神秘的な作品。
まだ前衛的な影が非常に色濃い。後年の曲はかなり聴きやすいのに。



ピアノ淡彩画貼/松谷翠
三善晃;オマージュ
八村義夫;彼岸花の幻想
松村禎三;ギリシャに寄せる二つの子守歌
武満徹;ピアノ・ディスタンス
吉松隆;プレイアデス舞曲集より
佐藤敏直;ピアノ淡彩画貼より
小倉朗;ピアノのためのソナチネ

松谷翠、ピアノ 植木三郎、ヴァイオリン 白尾彰、フルート
1994 Camerata  32CM-318

日本の様々な作曲家とも交流を持つ、現代音楽やジャズを得意とするピアニストのCD。
三善晃の「オマージュ」はそれまでに書かれたシリーズをまとめて再構成したもの。
八村義夫の作品は、緊張感を伴った、単音の長いフレーズと錯乱的なパッセージの絡む曲。
作曲者の「透明で不吉な予感」の言葉の通り、美しさを持つものの
そこから湧き上がる不穏な影を隠すことが出来ない音楽。
松村禎三の曲は必ず2曲がセットで演奏されるように指示されていますが、
2曲目の方は直接ギリシャ旋律とは関係ないという作り。
でも、音楽自体は非常にわかりやすく美しいもの。「エーゲ海の、陽光豊かであろう午後」のような楽想。
武満徹の「ピアノ・ディスタンス」は彼初期の代表作の一つ。
ここに収録された吉松隆の「プレイアデス舞曲集」は第1番から。
現在では破棄している「二重人格者へのオード」が最後に収録されています。
言わずもがな、短くも素朴で聴きやすい、美しい小品集。
ただ「オード」に関してはちょっと毛色が違っていて、(出来に関わらず)破棄したのがわかる浮き具合。
佐藤敏直の曲も全3巻10曲の曲集からの抜粋。
こちらは吉松のように変に旋法的な所にこだわらず、風景を自由にスケッチしている。
小倉朗の「ソナチネ」は作者が21歳の時に書いた全7分ほどの簡素な構成。
近代的な、わかりやすい作品です。
演奏は、もうちょっと華やかでもいい気が。十分技量やダイナミクスはあるんですけれどね。



Works by George Perle, David del Trediti, Nicholas Thorne
David del Tredici; Soliloquy, Virtuoso Alice
George Perle; Sonatina, Lyric Intermezzo
Nicholas Thorne; Three Love Songs, Piano Sonata

Michael Boriskin,Piano
1989 New World Records  NW 380-2

デイヴィッド・デル・トレディチ(1937-)の「ソリロキー」は彼が作曲家となった頃(1958)にあたる最初期の作品。
時に暴力的でやや無調的、リリシズムの影響も見せる現代的な曲です。
確かに後年につながるような、どこか旋律的な要素も見られるけれど、これが現在のロマン派的な作品書きになるとは。
ジョージ・パール(1915-2009)はエルンスト・クルシェネク(Ernst Krenek)に師事したアメリカの作曲家。
音楽理論の研究者として活躍する一方、独自の12音技法などでの作曲なども行っていました。
「ソナチナ」は若くして亡くなった天才ピアニスト、ウィリアム・カペルのために書かれたもの。
ちなみに私、彼のラフマニノフ演奏はすごく気に入っています。
ワルツ風のアレグレット、重い悲歌のアダージョ、洒脱なアレグロの3曲からなる5分ほどの短い曲。
でもかなりの技巧を必要とする、なかなかクセのある音楽でもある。
ニコラス・ソーン(1953-)はガンサー・シュラーらに作曲を師事、パット・メセニーと即興演奏を学びながら
ロックバンドやジャズを演奏するという、アメリカらしいなかなかボーダーレスなことをしてきている。でも出身はコペンハーゲン。
「3つのラヴソング」はそんな彼らしく、即興的な要素を多分に取り入れたもの。
どこか情緒的なものをもちながら簡素で印象的なモチーフが自由に舞う。
トレディチの2作目は84年の「ヴィルトゥオーゾ・アリス」、こういうのを待ってました。
彼のアリス・シリーズらしい非常にロマン的な美しさを持った、この上なく素晴らしい曲です。
「ファイナル・アリス」にも出てきた子供らしく愛らしいモチーフをテーマにしながら
繊細な半音階も含めたアルペジオやトリルに装飾されたおとぎ話のような音楽が広がる。
タイトルを見た瞬間に購入を決定した甲斐がありました。
パールの「叙情的間奏曲」はシューマンなどの作品に影響をうけたものですが、
そのロマンチックでありながら近代的・現代的な和声が響く辺り(解説にあるように)ベルグに近い印象。
ソーンの「ピアノ・ソナタ」は単一楽章20分の力作。
夢見るような冒頭から激しく動き回るパッセージ、大きな広がりと緊張感をもった技巧的な音楽。
「ラヴソング」とは対照的に、非常に確固とした構成を持っています。
前衛的な面も多く持ちながら、美しい場面もあって聴きやすい。
演奏はとくに不可はなし。どちらかというと重めですが、トレディチが濁るようなものではない。



Piano Preludes
Wojciech Kilar(1932-); Three Preludes
Kazimierz Serocki(1922-1981); Suite of Preludes
Zygmunt Mycielski(1907-1987); Six Preludes
Henryk Mikolaj Gorecki(1933-); Four Preludes Op.1
Milosz Magin(1929-1999); Five Preludes
Krzysztof Knittel(1947-); Four Preludes
Pawel Mykietyn(1971-); Four Preludes

Magdalena Prejsnar,Piano
2009 Dux  DUX 0699

現代ポーランドの作曲家が書いた前奏曲を集めたCD。
ポーランドのレーベルだけあって、もうラインナップが完全に自国のマイナー部分を攻めてます。
キラールは19歳のときの作品、まだ普通の前奏曲ですが、その所々に彼らしいミニマル的、
あるいはちょっと前衛的なメランコリックさが現れる。3曲5分。
セロツキの方は30歳のときの作品、簡素な構成ではありますが、技法はなかなか手の込んだ
(曲によってバルトーク風だったりショパン風だったり)全7曲12分ほどの作品。
ミチェルスキ(ムィチェルスキ)の曲は1954年なので、円熟期の作品といっていいでしょう。作品数は多く無さそうですが。
キラールやセロツキと同じくナディア・ブーランジェに作曲を学び、作家や雑誌編集長などで活躍しました。
音楽は、ガーシュウィンみたいな小洒落た曲調、あるいは後期ロマン派的な沈美さにちょっと現代的なスパイスが入った感じ。
軽快な楽想も多く、少々の不協和音が気にならなければ吉松とか好きな人でもいけそう。
グレツキの作品は言うまでもなし。こうして聴くと、かなりごつごつとした輪郭が目立ちます。
演奏は音のメリハリが効いた硬めの音の演奏。もっさりしていなくてさっと聴けます。
録音はDUXらしく遠目ではありますが、技術的にも不安はなし。こちらの方が演奏としても上手かな。
ミロシュ・マギンは主にピアニストとして活躍した人物。20以上の作品が残されています。
この5つの前奏曲は1963年の作品。様々な時代の楽想をベースにいろんな曲を書いてますが、
基本的にはモノフォニックな印象が強い。べつに実際にそうなってるわけじゃないけれど、
声部が前面的に対立してはいません。でも簡素なわりに音楽は鮮やかではっきりしている。
クシシュトフ・クニッテルは舞台音楽のほか電子音楽も多く手がけている人物。
タデウシュ・バイルドをはじめAndrzej DobrowolskiやWlodzimierz Kotonskiといった面々に音楽を学んでいます。
ポストロマン的な音楽からジャズを思わせるもの、コラール風までいろいろですが、
非常に美しい音楽を書く点では共通しています。1分ほどの中で楽想がころころ変わるのも特徴的。
最後はワルシャワの音楽アカデミー出身の若い作曲家による、1992年に作った若い曲。
このMykietyn(ミキエティン?何て読むんだ?)は交響曲や受難曲をはじめ、近年高い評価を受けているようです。
様々なフォームを有しながらも曲ごとにはほぼ単一のモチーフで美しく聞かせる。
CDのコンセプト上、作曲家の初期の作品も多いのは仕方ない話。
あと、やはり様式が雑多に詰め込まれているのも現代作曲家らしい傾向。



Tatjana Kukoc, Guitar
Steve Reich; Electric Counterpoint
Stephen Funk Pearson; Mummychogs (Le Monde)
Howard Bashaw; Horos

Tatjana Kukoc, Guitar  D.Bass,Niek de Groot
Edition al segno  as 2009 2

ずっと欲しかった一枚。図らずもクリスマスプレゼントに。
amazonでしばらく寝かせといたらいきなり値段を上げやがったので
いい加減聴きたかったし高かったけれど思い切って購入。
スティーヴ・ライヒの「エレクトリック・カウンターポイント」。
はっきり言うと、おそらくこれが今一番うまくまとまっているアコースティック版の演奏なのでは。
ちょっと淡い感じで、バランスが危ういところも多いけれど欲しいところはうまく聴かせる。
個人的にもっと聴いてみて欲しい音源ですが、入手が簡単ではないのが痛いところ。
若干安全運転ではあるのが否めないけれど、これは聴いて損はないと思う。
「アメリカの著名な実験的ギター奏者」らしいStephen Funk Pearson(1950-)
の曲は、演者によるマルチトラック・アレンジが行われています。お陰で響きが豪華。
プリペアドしたギターから響いてくるエスニックなアルペジオのきらめきと
平均律を離れた独特の揺らぐような和声感覚。
タイトルがネイティヴ・アメリカンの言葉であることを考えるとおそらくは彼らの音楽を
ある程度念頭にしているのでしょうが、聴いていて非常に東洋的でもある。
なんというか、第二楽章なんかはカントリーなんかにも通じそうな軽快さ。
カナダのHoward Bashaw(1957-)によるギターとベース6台ずつによる「ホロス」。
重々しいダブルベースのうねりに乗せて、ギターの波しぶきが微かに光る。
ベースの唸り声にギターのわななきが淡くかぶる。
リゲティ独特の引きつったリズムを意識しながら書いたという、
確かにあの混沌とした世界を垣間見るような暗い音楽。
ちょっと中途半端な気もする感じだけれど、これはこれで良い。
このギリシャ出身の女性ギタリスト、ちょっと硬い感じもするけれど十分好みな音楽作りをしてくれている。
特にライヒなんかいいね。あとピアソンなんかも。



Soviet Avant-Garde 2
Alexander Mossolov; 5 Sonate
Arthur Lourie; Two Mazurkas Op.7, Two Compositions for Piano
Nikolai Roslavetz; Two Poems, Three Compositions, Prelude
Leonid Polovinkin; Magnets, Dance/Waltz/Lullaby Op.30 Nr.1,4,5 , Foxtrot

Steffen Schleiermacher,Piano
1999 Hat hut  115

最初は「鉄工場」で有名なアレクサンドル・モソロフ(1900-73)の「ピアノ・ソナタ第5番」、
彼らしい民族的な激しさと苦しみを歌うような旋律が聴ける、25歳の時の代表作。
彼の音楽の無機質で爆発的な乱暴さは、この曲からもはっきりと聴けます。
聴覚的にはまるでスクリャービンが暴力性に目覚めたような感じではありますが、
ルディアみたいな神秘性の力強さではなく、機械的・現実的な力の行使。
特に、短い第3楽章スケルツォや非常に重い第4楽章を聴いていると、それが理解出来る。
アルトゥール・ルリエ(1892-1966)は後年西欧諸国に亡命、新古典主義に走りますが
ここに収録されている「2つのマズルカ 作品7」はその前、
未来派の詩人たちと親交を持ち独特の無調や記譜法を展開していた頃の作品。
「ピアノのための2つのコンポジション」はその後パリに移ってからのものですが、
これら二つの作品を聴き比べると彼がどれだけ新古典主義にはまったかがよく分かる変わりぶり。
なんせ作品7は曖昧で幻想的なのにコンポジションはそれよりずっと簡素明快。
ニコライ・ロスラヴェッツ(1881-1944)はロシアン・アヴァンギャルドの父的存在。
ロシア未来派として(音楽的に)極左的な活動を行い、音楽家同盟からは「人民の敵」とまでいわれ、
死の直前までソビエト作曲家同盟にすら入れない不遇な人生でした。
「2つの音詩」「3つのコンポジション」「前奏曲」はどれも、その活動の全盛期(1910年代)に書かれたもの。
スクリャービンとシェーンベルクの橋架けをするような作風は、独特の美しさを持ちます。
レオニード・ポロヴィンキン(1894-1949)はグリエールの弟子に当る作曲家。諧謔的な音楽の作り手で
ロスラヴェッツと似たような運命になりかけましたが、子供向けの作品を作ることでなんとか逃れたようです。
「磁石」は民族的なリズムに乗せた、今までの音楽に比べると足取りが軽い曲。
「作品30より ダンス、ワルツ、子守歌」も、当時としては前衛的な面はありますがとても聴きやすい。
「フォックストロット」、当時のロシアの軽音楽らしい曲が聴けながらもどこかおかしいのがこの時代の前衛らしい。
全体を通して特に印象に残ったのはモソロフとポロヴィンキンのフォックストロットか。
演奏は硬い音に定評のあるシュライエルマッヒャー、ロシア音楽に合わないはずがない。



Nanae
Somei Sato; Kamu-Ogi-Guoto
Akira Nishimura; Nanae
Joji Yuasa; Cosmos Haptic No.3 -Kokuh
Satoshi Minami; Coloration-Project III
Takashi Yoshimatsu; Moyura

Nanae Yoshimura, 20Strings-Koto  Kifu Mitsuhashi,shakuhachi
1991 Camerata  32CM-189

師の野坂恵子と作曲家三木稔によって作られた二十弦琴の使い手、吉村七重のソロCD。
佐藤聰明「神招琴」は、彼らしい間に満ちながらも美しい、淡く繊細な音楽を聴かせてくれる。
いい曲には違いないんですが、「燦陽」なんかに比べると、ちょっと弱いかなあ。
西村朗「七重」は、もちろん女史のために書かれた曲。
7つの弦×2セットを並列に調弦することで二重奏のような印象が生まれる、聴いてても演奏が面倒そうな曲。
でも盛り上がりや音響には不自由せず、楽しんで聴けます。
湯浅譲二の「内触覚的宇宙第三番 虚空」は、彼らしい前衛さ。
尺八も加わりながら、空や風のようなふわふわしたイメージが音を包み込む。
南聰の「彩色計画III」、散文的でどこか旋法的な感じもある音楽がちょっとリズミカルに進行する。
作曲者曰く、題の「色彩」とは単純に多彩な色を出すことではなく
「準備した色をどのように利用するか」という加工・異化の過程・度合いを示すものだそう。
吉松隆「もゆらの五ッ」は、彼らしい旋律的で非常に美しい曲。
佐藤作品とは違った、いわゆるベタな琴らしい音楽に近い美しさが聴ける。
鈴で各部分を区切った、全5曲構成。



滝澤三枝子 ピアノ・アルバム I
伊福部昭;ピアノ組曲
清瀬保二;「第二ピアノ曲集」より アンダンティーノ、子守歌、ブルレスケ、秘唱
石井真木;彼方へ 作品41
ラヴェル;水の戯れ
ファリャ;「四つのスペイン風小品」より アンダルーサ
グラナドス;「12のスペイン舞曲」より アンダルーサ、詩的なワルツ、演奏会用アレグロ

滝澤三枝子、ピアノ
2007 Mittenwald  MTWD 99031

桐朋学園出身のピアニストによるアルバム。スペイン音楽と現代曲が得意、というか好きなようで。
最初は、オケ版が「日本組曲」としても有名なピアノ組曲。もちろんこれ目当て。
「盆踊」、けっこう落ち着いたテンポ。というかよくためる。「七夕」が逆にそこまではためない。
「ながし」は緩急つけて表情豊か。「ねぶた」はちょっと平坦ではあるけれど、それなりには高揚できる。
音が力のない感じなので、アグレッシブな伊福部作品にはちょっときついんじゃなかろうか。
ただ、それを除けばかなり聴ける演奏。最後の強引なテンポアップは嫌だけれど。
清瀬の作品は伊福部作品と同時期、1940年ごろのもの。7曲中から4つ抜粋。
こちらは随分フランス音楽の影響が強い。ちょっと日本くさい、軽い音楽。
石井の曲は、内向的でグリッサンド的奏法の印象的な、入野義明追悼作品。12音技法も使っています。
ラヴェルの曲は有名ですよね。こうして聴くと、この人は随分硬質な音を出すんですね。
女性らしい、繊細な響きだけれど、はっきりしたタッチで音が個別に聴こえてくる。
ファリャとグラナドスのアンダルーサはどっちもお気楽なスペイン舞踏。
続くグラナドスの2曲はなかなかの重み。
「詩的なワルツ」は序奏と7つのワルツから成る、彼初期の作品。簡素で美しい15分。
「演奏会用アレグロ」は豪華な音楽院卒業作品。



Repertoire De Stijl : Bauhaus : Dada
Gian Francesco Malipiero; Barlumi
Jacob van Domselaer; Proeven van Stijlkunst
Francis Poulenc; Trois Mouvements Perpetuels
Josef Matthias Hauer; Tanz Op. 10
Vittorio Rieti; Tre Marcie per Le Bestie
Arnold Schoenberg; Sechs Kleine Klavierstucke Op. 19
Arthur Honegger; Trois Pieces Pour Piano
Erik Satie; Ragtime Parade
Daniel Ruyneman; Hallucinate
Egon Wellesz; Eklogen Op. 11
Nino Formoso; Ti-Ta-To

Nelly (Petro) van Doesburg,Piano
LTM  LTMCD 2495

オランダのデ・ステイル運動、バウハウス、そしてダダの影響を受けた人物の作品をメインに
デ・ステイルの創始者であるテオ・ファン・ドゥースブルフの妻ネリーが演奏するというなかなか面白そうな趣旨のアルバム。
彼女が夫の行う講義にて取り上げ演奏する現代曲のレパートリーを収録したものです。
ジャン・フランチェスコ・マリピエロ(1882-1973)はヴェニス出身、ドビュッシーにも学んだなかなか有名な人。
「Barlumi」を聴いても分かるように、ドビュッシーの影響が非常に強い作風です。
イタリア古楽の復興に熱心だった(モンテヴェルディとヴィヴァルディの校訂者として有名)上、
イタリア風のドビュッシーみたいな音楽からはこのアルバムの意図に通じるものは感じられませんが、
カゼッラの友人で、彼が弟子には寛容で結果マデルナのような人物が出来上がったことを考えると収録もうなずける。
ヤコブ・ファン・ドムセラール(1890-1960)はオランダの作曲家。自分的にはシメオン・テン・ホルトの師匠として有名。
運動の中心にいた画家ピエト・モンドリアンに出会ったことでデ・ステイルに参画することになります。
収録の「Proeven van Stijlkunst」からの抜粋はその運動の中で作曲したもの。
後年のミニマリズムをも思わせる、新造形主義(ネオ・プラスティシズム)に裏付けされた作品。
ここでプーランク登場。なんで彼が取り上げられたのか・・・当時の先端の作風の一つとしてでしょうか。
非常に簡素な、いかにもパリジャンな近代音楽。まあ有名作だし。
ヨーゼフ・マティアス・ハウアー(1899-1963)はシェーンベルクより早く独自の12音技法を開発した人間。
ここでの「踊り 作品10」はまだ完全な12音を展開する前の作品(1915)ですが、
ここでの幻想的で近代的な作風は非常に興味深く、聴いていて美しい。バウハウスの活動にも積極的に参加していました。
ヴィットリオ・リエティ(1898-1994)はエジプト・アレキサンドリア出身、イタリアで活動した作曲家。
レスピーギや先述のマリピエロ、カゼッラに師事し、仏六人組風の新古典主義な作品を残しています。
ここでの「Tre Marcie per le Bastie」はその影響が顕著。グロテスクなハバネラ風(2曲目)など。
そしてきたシェーンベルグ。彼の代表作「月に憑かれたピエロ」がバウハウス出資の演奏会で披露されたり
バウハウス教官だったカンディンスキーと親交があったのに直接的なバウハウスとの関わりが無いのは
やはり、12音音楽の考えで袂を分かったハウアーとのかかわり合いがあったからでしょうか。
「6つの小さなピアノ曲 作品16」は1911年の作品なのでまだ12音以前の作品ですが、その内容は完全に調性を放棄したもの。
ハウアー以上にすでに先鋭的になっていて、後年を非常に予感させます。でも美しいのが不思議。
お次は六人組のふたりめオネゲル。この「3つの小品」は1915-19年の作品なのでかなり初期のもの。
まだ印象主義の影響が非常に強い、とても美しい音楽。これが5年もしたら「パシフィック231」になっちゃうんだ・・・
その後はサティ、有名所が続きます。まあ彼の先鋭的と言うか異端な活動は言わずもがな。
その後のダダイズムの発端のような人物なのでここにめでたく収録。
有名な「パラード」からの「ラグタイム」をここでは演奏、いかにもなシニカルさを持ったラグタイムです。
ダニエル・ライネマン(1886-1963)はアムステルダム出身の作曲家・ピアニスト。
「最も冒険的な作曲家の一人」といわれるような先鋭的活動を行っていたようです。
ここでの「Hallucinatie」は1915年の「Drie Pathematologien」から抜粋。近代和声的な音楽による、錯覚的・幻惑的な音楽。
エゴン・ヴェレス(1885-1974)はシェーンベルグの伝記なんかも書いているオーストリアの音楽学者・作曲家。
作曲家としてはドビュッシーの影響を早期から受けており、この「Eklogen(Selection)」(1913)でも容易にわかります。
最後のNino Formosoというイタリア作曲家については情報がぜんぜん無い様子。
1ステップの、まあこのあたりの時代的な作風のポピュリズムな短い音楽。
「ネリーはおそらく、Giacomo Ballaの未来派デザインが表紙になったスコアを見て選んだのでは」(James Haywardの解説)
おい!そんな理由でいいのか!
とりあえず、詳しく聴くと以外にダダなどの後年の曲がない。というか収録曲はほぼ全て1910年代のもの。
この時期の音楽の変遷を詳しく見ることができますが、全体的な流れは掴みにくかった。
演奏、可もなし不可もなし。ただダイナミクスはあるので個人的には飽きずに聴けた。



Bobissimo! -The Best of Roger Bobo
Johann Ernst Galliard; Sonata No.5 in D minor
J. Ed. Barat; Introduction and Dance
Paul Hindemith; Sonata for Bass Tuba and Piano
Alec Wilder; Children' Suite: Effie the Elephant, Tuba Encore Piece
William Kraft; Encounters II for Unaccompanied Tuba
Robert Spillman; Two Songs
Henri Lazarof; Cadence VI for Tuba and Tape

Roger Bobo,Tuba  Ralph Grierson,Piano
1991 Crystal Records  CD 125

ロジャー・ボボはチューバ界の伝説的な人物でしょう。俺でもはっきり知ってるレベル。そんな彼のベスト盤。
ガリアードのソナタ第5番はバロック作品。短い4つの楽章から成る小品です。
Baratは詳細の良く分からない方ですが、原曲がバス・サクソルンのために書かれていることを考えるとたぶん19世紀後半の人物。
ソリスティックな歌い回しがこの頃から登場したのがよく分かる。ちょっと暗めの、フランス感性あふれる4分弱の小品。
ヒンデミットのソナタは、この世界じゃ超有名作品ですね。こうして聴くとボボの安定感がよくわかる。
ワイルダー1曲目「子供の組曲」は短い6曲からなります。チューバだけど軽い感じの音楽。
ウィリアム・クラフトの曲はチューバソロ。重音奏法など技巧的でありながら、どこかメロディアスで旋律的。
もちろん暗い感じの独白的な曲調だけれど。
シュピルマンの「2つの歌」は美しい幻想曲風のアンダンテと技巧的なメロディのアレグロからなる。
これはけっこう自分的趣味にはしっくりきましたね。
ラザロフの「カデンスVI」はまた前衛曲。テープ録音された演奏とライヴのチューバによる音の干渉。細かいパッセージで思い切り叫んだり。
ワイルダー2曲目、「チューバ・アンコール・ピース」はトリルの印象的な短い(1分)曲。
やはりボボは凄かった。柔らかい音なのに、細かいパッセージも難なく吹きこなすし。
欠点として、録音がよくない。なんか遠くてダイナミクスが余り感じられません。
折角のヴィルトゥオーゾの魅力が半減してます。残念すぎる。



小林武史 -わが故郷より スメタナ-
Tommaso A. Vitali/Charlier,Arr.; Chaconne
Toru Takemitsu; From far beyond Chrysanthemums and November Fog
Jules Massenet; Meditation de Thais
Ikuma Dan; Fantasia No.1 for violin solo and piano
Bedrich Smetana; From the Home Country No.1 and No.2
Eugen Suchon; Sonatina for violin and piano Op.11
Manuel de Falla/Kreisler,Arr.; Danse Espagnole from "La Vida Vreve"
Fritz Kreisler; La Guitana
Kousaku Yamada; Nobara

Maria Theresia von Paradis/S.Dushkin,Arr.; Siciliana
Takeshi Kobayasi,Violin  Josef Hala,Piano  Tomoko Shinozaki,Piano
1993 EPSON  TYMK-002D

日本人で始めて海外オケ(ブルノー・フィル)のコンマスになったヴァイオリニストのアルバム。
ヴィターリ/シャルリエ編曲の「シャコンヌ」はもうこの手のCDお馴染みの曲。
イタリア・バロックの音楽だけあって自分の好み。個人的にはバッハほどではないですが良い曲です。
武満徹の「十一月の霧と菊の彼方から」は1983年に作ったコンクール課題曲。
ゆらめくような音楽にはすでに後期らしい豊かな響きが垣間見えます。
ただ、課題曲だからなのか、そこまでふわふわしている音楽ではなかったです。
マスネ「タイスの瞑想曲」、また名曲。夢見るような美しさですが、個人的にはそこまで好きでもない。
團伊玖磨「ファンタシア第1番」は小林氏による依頼&初演作品。
日本的ではなく、むしろ東洋的と形容するのに相応しい、勢いのある熱い作品。
スメタナの「わが故郷より」、哀愁を歌う第1番に民謡的な激しい舞踏の第2番。
スホニュ(1908-)はチェコスロバキアの作曲家。連盟会長などを務めた、なかなか代表的な立場の方。
この録音が日本初演となる「ソナチネ」ですが、1937年の作品なので初期の部類に入る作品でしょう。
ちょっとモダンな響きも匂わせつつ、東欧的近代音楽を美しく聴かせてくれる。
ファリャ「スペイン舞曲」みたいな音楽は大好き。やっぱりスペイン風民族音楽は楽しいです。演奏も豊かで派手。
クライスラー「ラ・ジターナ」は似たような音楽でも、より自由に歌うジプシーの熱さ。
山田耕筰「野薔薇」でしっとりした後はパラディスの「シチリア舞曲」。
これ1曲しか知られていないベートーヴェンと同時代の作曲家による、美しい子守歌風メロディー。
演奏は、経歴が示すとおり技巧・響きともに非常に良い。
実力があることが、聴いていてはっきりと分かるくらい。音に力もあります。
ただ現代ものは苦手か?期待してた武満はそれほどでもなかった気が。
マスネはもうちょっと歌っても良かったんじゃ。十分良い演奏だけれど。
伴奏は落ち着いてソリスティックなヴァイオリンをサポートしてます。



Contrabass Typhoon
Joji Yuasa; Triplicity for contrabass
Chinary Ung; Gliding Wind for contrabass
Iannis Xenakis; Theraps pour contrebasse a cordes selue
J.S.Bach; Suiten fur Voloncello Nr.1 G-dur BWV1007

Keizo Mizoiri,Contrabass
2000 Kojima(ALM)  ALCD-56

溝入敬三によるコントラバス・ソロアルバム「コントラバス台風」。
湯浅の「トリプリシティ」は弓によるゴングの擦りで開始。
あらゆる種類のボディ・ノックを駆使しながら、様々な特殊奏法で音楽が展開される。
あらかじめ録音された2パート+ライヴ演奏の形で作曲されていて、
それら3パートのどこに優位性があるわけではない上で奇形の音たちが絡み合う。
非楽器的な音が殆どを占める、非常に騒々しくパーカッシブな曲。
チナリー・ウング(1942-)はカンボジア出身の、現在はアメリカ在住の作曲家。
「グライディング・ウインド」は、どこか東洋的な下地の上で音たち、時には旋律、がぐねぐねと
形を変えながらゆらいでいる、さっきと逆に線的な流れの作品。
「宇宙を漂っている想像の物体を表現している」というのは作曲者の言。
クセナキスの「セラプス」、このCDのある意味目玉。
スル・ポンティチェロの弱奏と通常奏法のぶっきらぼうなfの対比、
4分音を使った細かな変化のグリッサンド、二重音による静的な間。
彼独特の荒々しさが出た、やはり難しく聴き応えがある作品。
最後はバッハの「無伴奏チェロ組曲第1番」で閉め。
コントラバスならではの線の細さが優しさを表してくれる。
非常に安定した、素晴らしい演奏でした。



200 Years of Russian Music for Organ
Mikhail Glinka(1804-57); Three Fugues
Vladimir Odoyevsky(1804-69); Lullaby
Sergey Taneyev(1856-1915); Choral Variations
Cesar Cui(1835-1918); Two Preludes
Ludvig Homilius(1845-1908); Prelude G major
Sergey Lyapunov(1859-1924); Prelude Pastral Op.54
Nikolay Tcherepnin(1873-1945)/arr.J.Handschin; Cherubimic Hymn
Leonid Nikolayev(1878-1942); Fugue E flat minor
Reinhold Gliere(1874-1956); Fugue on a theme of a Russian Christmas Song
Alexander Glazunov(1865-1936); Prelude & Fugue Op.93,98, Fantasia Op.110
Dmitry Shostakovich(1906-75); Passacaglia Op.29 from the Opera"Katerina Izmailova"
Alexander Gedike(1877-1957); Prelude & Fugue Op.34 No.2
Oleg Nirenburg(1938-); Fantasia on a theme of a English Folk Song, Fantasia on a theme of a Russian Folk Song
Alfred Schnittke(1934-); Two Pieces for Organ(Untitled)
Sofia Gubaidulina(1931-); Light & Dark

Alexei Fiseisky,Organ
1992 Etcetera  KTC 2019

ロシアのここ200年間のオルガン音楽をいろいろ集めた2枚組み。
作曲者こそビッグネームが多いけれど、曲はどれもどマイナー一直線。
何しろこのCDリリース時点で全て世界初録音だそうですから。
グリンカの「3つのフーガ」、非常に素直な構成のフーガ。構成はバロックだけれど和声はちょっと近代。
Odoyevskyの「子守歌」はロマン期のロシア音楽らしい、素朴で暖かな短い曲。
タネーエフの「コラール変奏曲」は彼晩年の作品。まあ名前の通り。
キュイの「2つの前奏曲」は穏やかで優しい、内向的な小品が2つ。
Homiliusの「前奏曲」はそれに比べると随分と動きがある。短いが華麗で記憶に残る。
リャプノフの「パストラール前奏曲」は明るく壮大でのびのびした曲。個人的には気に入った。
チェレプニンの曲は名の通り、賛歌的な歓喜を描いたような曲。ただ派手ではなく渋い。良い曲だけれど。
ニコラエフとグリエール両氏はどちらも短い近代和声的なフーガ。
グラズノフの「前奏曲とフーガ」2作、作品93は壮大で98はより構成的な、調性を揺らす曲。
Disc2、続いて「幻想曲」もだんだん盛り上げていく雰囲気は前2曲と似ている。
ショスタコは一番前衛に野心を持っていた時期の作品から。原曲のオケ以上にどろどろしてます。
彼の曲の後だとGedikeの曲が一層爽やかに聞こえる。うん、豪華絢爛で良い曲。
Nirenburgの曲は、現代の作品にしては穏健な方か。近代的な和声で不安定に揺れるメロディー。
シュニトケの小品2つ、1つめは穏やかでやや暗いコラール風ですが、2曲目は半音トリルを多用した彼らしい世界。
グバイドゥリーナはオルガン作品が多いだけあって、音響を良く心得てます。



日本の声楽・コンポーザーシリーズ 5
大中恩・小林秀雄
大中恩;五つの叙情歌、五つの現代詩
小林秀雄;胡蝶花に寄せて、日記帳、飛騨高原の早春、瞳、
落葉松、演奏会用アリア「すてきな春に」、夏の日のレクイエム

畑中良輔・立川清登、バリトン 中沢桂、ソプラノ 永田峰雄、テノール 三浦洋一、ピアノ
1997 ビクター  VICC-60045

大中の曲は、どれをとっても素晴らしいまでの旋律が私たちの心をくすぐってくれます。
ああそうだ、ぼくら聴衆はこんなメロディーの美しさに気づいて音楽を聴くようになったんじゃないか。
決してあの時の思いを忘れてしまってはいけない・・・そう言わずにいられない曲ばかり。
決して飾らず、直情的でありながら繊細で叙情的、しかも俗っぽさは微塵も感じられない。
小林の曲にも似たことがいえます。けれど、彼の曲はより技巧的。
どの言葉をどのタイミングで、どのように歌わせると一番自然で、効果的で、雄弁に自己を語ることが出来るか。
そこから現れる様式美のようなものは、大中の曲とはまた違った魅力を出してきます。
演奏も、そんな二人の曲を最大限に表現している素晴らしいもの。美しさや優しさが表出した良い声です。
合唱に疎く、たまたま安く手に入っただけのCDでしたが、ここまで良かったとは。



吉原すみれ
パーカッシブ・コスモス 2

1987 CBS/SONY  32DC 1009

打楽器奏者吉原すみれの現代打楽器曲集。高橋悠治と一柳慧は自作自演参加。
八村義夫の「Dolcissima ma Vita」はさまざまな金属製の打楽器がきらめく。
作曲者いわくF音を基調にして展開されていくらしいのですが耳の悪い私はよくわからず。ただ、確かに極端な上下はない。
あまり激しさの無い曲ですが、細かな音の動きが繊細に形を変える様は実に良く練られたものだと実感します。
高橋悠治の「のづちのうた」は、先ほどとうってかわり木質な音が支配する、彼らしい民族的な即興音楽。
メロディーを即興パターンの一つにしたとても簡素な構造だけに素朴な味わいが強いです。
毛利蔵人の「Tenebroso Giorno」は八村義夫の追悼的な意味合いも持つ曲。
スチールドラムの、柔らかで深みのある独特な響きがその曲の性格に良くマッチしています。
一柳慧の「木の刻 水の刻」は打楽器とピアノのための作品。彼らしいミニマル志向の音楽。
自然の営みに思いを向けた、瞑想的な曲。速い部分はミニマルで細かな連符が特徴的。



Piano Music By African American Composers
R. Nathaniel Dett; In the bottoms
Thomas Kerr; Easter Monday Swagger. Scherzino
William Grant Still; Three Visions
John Wesley Work III; Scuppernong
George Walker; Sonata No.1
Arthur Cunningham; Engrams'
Talib Rasul Hakim; Sound-Gone
Hale Smith; Evocation
Olly Wilson; Piano Piece for piano and erectroric sound

Natalie Hinderas,Piano
1992 Composes Recordings Inc.(CRi)  CD 629

アメリカの黒人系作曲家のピアノ作品を集めた2CD。
Dett(1882-1943)の曲は1913年に作られた5曲20分の大作で、非常に古典的。
とはいえ、彼なりの黒人を出自とした軽快な作風が現れていて面白い。
ドヴォルザークに影響を受けた彼の代表作であり、黒人による初期西洋曲の重要作品と言うに相応しいと思えます。
Kerr(1915-1988)の父(Henderson Kerr)は初期ジャズ界の主要人物らしいですね。
イーストマン音楽学校を出た彼の曲は、どこか乾いた感じのクールな音楽作品。けっこうジャズ的。
ウィリアム・グラント・スティル(1895-1978)はこの中で際立って有名な作曲家ですね、たぶん。
チャドウィックと親交を結び、ヴァレーズにも教えを受けながらジャズにも積極的に参加した彼の収録曲は比較的初期(1936)の作品。
楽章ごとにどのルーツの影響下にあるかがけっこう異なっていて、雰囲気が激しく変わる。
Fisk,Columbia,Yaleといった大学で教鞭をとっていたJohn Wesley Work III(1901-1967)の曲も黒人的なルーツ、
それも宗教的なものが垣間見えますね。賛歌のような主題などが古典的な構造の中に見られます。
Walker(1922-)のピアノソナタ(1953)は完全4度を主要な構造に置いた、フォークソングの引用もした15分ほどの作品。
はっきりした典型的ソナタ構造に軽妙洒脱な楽想がちりばめられていて楽しい。
Cunningham(1928-)は先のJohn WorkやHenry Brant, Peter Menninらに音楽を教わったようです。
もやもやした音楽から、次第に激しい諧謔的な楽想が飛び出してくる。
Hakim(1940-1988)はスーフィズム(イスラム神秘主義)の影響を受けた作曲家。
内部奏法なども多く見られる、内向的でやや前衛的な曲。ただし、音楽的影響はイスラムよりはジャズの方が比較的濃いでしょうか。
前半と後半はかなり激しいですが、中間部は簡素な聴きやすい構造。
Smith(1925-)は教育者、アレンジャー、また黒人音楽研究などで名のある人。曲は、ジャズの影響がはっきりと見られる小品です。
Wilson(1937-)はジャズのベース奏者としても活躍したことのある、電子音楽に初期から参加した黒人の一人。
特殊奏法を駆使したプリペアド・ピアノの激しい部分と、高音主体のピアノと電子音の語らいが印象的。
そこから徐々に高揚してプリペアドピアノとノイジーな電子音の競演に。結構荒々しいです。
全体を通して演奏は堅実なもの。十分に音楽の特徴を伝えてきてくれます。
曲はまあ掘り出し物はなかったけれどそこそこ楽しめるものばかり。



Post-avant-garde Piano Music from the ex-Soviet Union
Alexandr Rabinovitch; Musique triste, parfois tragique , Pourquoi je suis si sentimental
Arvo Part; Variationen zur Gesundung von Arinuschka, Fur Alina
Georgs Pelecis; Jaungada Muzika
Tigran Mansurian; Nostalgia
Valentin Silvestrov; Kitsch-Musik fur Fortepiano

Alexei Lubimov,Piano
BIS  BIS-CD-702

ロシア出身の著名ピアノスト、アレクセイ・リュビモフが贈る、東欧諸国のポスト前衛音楽・ピアノソロ作品。
アレクサンドル・ラビノヴィチ(1945-)は以前作品集を買って(まあまあだな)といった感想を持ってましたが
今回もやっぱり大差ない感想。「Musique triste,〜」は古典的なピアノ作品の切れ端が顔を覗かせつつ、
どれかというとグラス的なミニマルさをもって流麗に聞かせます。
アゼルバイジャンはバクー出身の、カバレフスキーらに師事経験のあるこの作曲家の曲は、私には可もなし不可もなしといった所。
ペルトの2作品は非常に短いですが、どちらも彼のピアノ作品としてよく演奏・録音されますね。
素っ気無く、静かで、非常に透明感ある作品。
実はこのCDの中で一番期待していたジョルジ・ペレーツィス(1947-)。以前やはりリュビモフのピアノでの
「コンチェルト・ビアンコ」を聴いて、普段はどんな作風なんだろうかと思っていました。
・・・うん、普段もあれと大差ない感じみたいですね。でもお陰でこの曲もお気に入りに追加。
最初は、まるで何かのBGMみたいな非常に「クラシカル」な音楽。なんですが、そこにさりげなく別ジャンルの感覚が割り込んでくる。
ジャズのようなリズム感覚、ロックやポップのようなシーンがぽろぽろ。主にはインスト・ロックの面影が濃いです。
解説では他にクラウス・シュルツのような電子音楽も挙げていますね。
マンスリアン(1939-)だけ、このCDの中では初めて聞く作曲家。
アルメニア、ベイルート出身。コミタス・コンセルヴァトール等で音楽を学びLazar Saryanに師事したそうです。
曲は、さまざまな音楽の断片がぱらぱらとちりばめられた、間の多い作品。
ショパン、ドビュッシーにウェーベルンの影響を語る作曲者らしく、聴こえてくる断片は古典的だったり現代風だったり。
ヴァレンティン・シルヴェストロフ(1937-)の曲は相変わらず綺麗。
シューマン、ショパン、チャイコフスキーなどの音楽を真似た構造で音楽を書き、聴き手に「覚えているか」と喚起を促す。
終始非常に静かに音楽は進み、どこかノスタルジックな感覚にもさせてくれる良い作品です。
最後はまたラビノヴィチ。いかにもセンチメンタルな感じのクラシカルな曲。こういうあからさまなのはちょっと・・・
とりあえず、ラビノヴィチ以外は良い収穫でした。



Rhodri Davies, Ko Ishikawa
Compositions for Harp and Sho
Taku Sugimoto; Aka to Ao
Masahiko Okura; Torso
Antoine Beuger; Three Drops of Rain / East Wind /Ocean
Toshiya Tsunoda; Strings and Pipes of the Same Length Float on Waves

Rhodri Davies,Harp  Ko Ishikawa,Sho
hibari music  hibari-09

ロードリ・デイヴィスのハープと石川高の笙による、音響系作家の二重奏作品集。
杉本拓の「赤と青」は、サインウェーブみたいなハープの擦弦音と笙が重なり合いながらのびる。
互いの単音が、異なった間を持って伸ばされるので、どんどんずれていく。
最初から最後までEの音しか演奏されないので、聴いていて正直きつい。ルシエよりさらに単純な音楽。
大蔵雅彦の「Torso」は、笙が主体になって音を伸ばし、込み入った和音を提示する。
その合間を縫って、ハープの短音がぽつぽつと置かれていく。
点描的なハープと線的な笙の対比が、間の多い静寂の中で映える。
アントワーヌ・ボイガーはヴァンデルヴァイザー楽派の代表者的存在。
フェルドマンやケージの曲が持つ静謐さを、極限まで煮詰めすぎたような、非常に抑制された音楽を書きます。
この人が、このCDの中では一番現代音楽畑に密接な人でしょう。曲は・・・
開け放たれた録音スタジオドアの向こうにいる笙からの、微かな音。
その合間に、ぽつぽつとハープの音が小さく鳴らされる。
遠近感による、性質の異なった弱奏が、変化の少ない音に刺激を与えています。
静寂の多いこのアルバム中でも、際立って静かな曲。でも一番気に入った。
角田俊也の曲は、かなり加工を加えているので生演奏とは言い難い。
収録されている音楽は、僅かに違う2種のサインウェーブと、それに等しい笙とハープの音を干渉させている。
その結果現れた音の揺らぎのうち、一定の音圧以下を処理でカットしたもの。
そのため、聴こえてくる音は、だいたいは電子音パルス。
ハウリング音みたいなものが、形を変えきりきり鳴り響く。
収録作品のすべてにおいて、音楽と言うより音についての考察を再現したようなもの。
音楽として自分が楽しめたのは、大蔵・ボイガー両氏の作品でした。



Works for Organ ・ Daniel Chorzempa
Richard Wagner/Edwin Lemare; Tannhauser, Die Walkure, Overture"Die Meistersinger von Nurnberg"
Josef Rheinberger; Cantilena
Eugene Gigout; Grand Choeur Dialogue
Louis Vierne; Scherzetto(No.14), Berceuse(No.19) from 24 Pieces en style libre
Leon Boellmann; Suite Gothique

Daniel Chorzempa,Organ of the Cadets' Chapel, West Point
Philips  416 159-2

名手ダニエル・コルゼンパによる、近代オルガン作品集withワーグナー。正直、最初のタンホイザー目当てです。
やっぱり「巡礼の合唱」は素晴らしいですね。思えば私がワーグナーを好きになるきっかけでした。
終始柔らかな音で幻想的に聞かせるあたり、わかってます。
「ワルキューレの行進」、流石に迫力はオケに及ばないけれどかなりの健闘ぶり。
「ニュルンベルグのマイスタージンガー前奏曲」、シンバル使ってますね。
この曲は以前から自分でも思ってましたが、冒頭はオルガンに合いますね。この荘厳さが。
ラインバーガーの「カンティレーナ」はソナタ第11番から。非常に美しい、夢見るような世界。
Gigoutの曲は一転、タイトルらしい壮大な曲。オルガンの格好良さがよくわかります。
ルイ・ヴィエルヌの曲は昔CD聴いたことがあったけれど、何を聴いたのか忘れました。
曲は何の変哲のない、素朴な曲。個人的には子守歌のほうが好き。
Boellmannのゴシック組曲は最初のコラールがお気に入り。やっぱり私は、こういうのが好きなんだなと改めて実感。



Roberto Aussel plays 20th Century Music
Francis Kleynjans; A l'aude du dernier jour
Manuel Ponce; Sonatina Meridional
Alexandre Tansman; Cavatina
Joaquin Rodrigo; En los trigales, Fandango
Alberto Ginastera; Sonata Op.47

Roberto Aussel,Guitar
GHA  126.007

ブエノスアイレス出身のギタリストによる、20世紀のギターソロ作品集。ヒナステラ目当てで購入。
Francis Kleynjans(1951-)はフランスのギタリスト、作曲家。
「At dawn of the last day」は、パルスのようなリズムの印象的な短い「Wating」と、
特殊奏法を多用した冒頭で始まる、なまめかしい「Dawn」からなる内省的な10分ほどの曲。
マニュエル・ポンセの曲は彼らしい素直な南米情緒漂う、3曲からなる音楽。
BGMにも合う、洒落た感じ。やっぱり彼の作品はそんなところが魅力ですね。
タンスマンも小粋な小品集。これで(パリに行ったとはいえ)出身がポーランド、作曲家は面白いなあ。
ロドリーゴの2曲は、どちらも独特の内気さ、というか暗さがふりかかった憂いのある曲。
お待ちかね、ラストを飾るヒナステラのギターソナタは、落ち着いた演奏。
まあ、それ以前の演奏もかなりクールなものだったので熱狂的なものは期待していませんでしたが。
むしろ繊細に、ヒナステラ独特の微妙に前衛的な音楽を作り上げていく手腕には好感を覚えました。
ただ、なぜ3-4楽章だけトラックが分かれていないんだろう。アッタッカでもないのに。



高橋アキの世界 I 〜Aki Takahashi Piano Space I
武満徹;遮られない休息、ピアノ・ディスタンス
湯浅譲二;コスモス・ハプティク、オン・ザ・キーボード
佐藤慶次郎;ピアノのためのカリグラフィー
松平頼暁;ピアニストのためのアルロトロピー
水野修孝;韻 〜ピアノのための

高橋アキ、ピアノ
1995 EMI  18MN-1015

現代音楽といったら外せないピアニスト、高橋アキのデビュー盤。
「遮られない休息」は3曲構成の小品集。第1曲だけ最初期の作品なのでちょっとぎこちなさがありますが、
それ以降、デビューしてからの2曲は洗練さ・統一感が現れていて(武満だな)と思わせてくれます。
「ピアノ・ディスタンス」は武満のピアノ作品としては珍しく、クラスターなどの奏法が使われていて、彼にしてはかなりアグレッシブ。
「コスモス・ハプティク」はメシアンのMTL(移調の限られた旋法)との関連性が深い、確かにその音楽と響きが似ている音楽。
高いCのオクターヴなど、冒頭の高音の連打が印象的。
ただし、全体的な流れとしては散文的な(「不確定性」を用いたかのような)音楽を1957年に作っているのは凄い。
この時期から既に、湯浅独自の「内触発的宇宙」の概念がはっきりと現れていますね。
「オン・ザ・キーボード」は同音連打から徐々に動きが激しくなり、クラスターの爆発が増えていきます。
どんどんと音の中でエネルギーが渦巻いていくような、緊張激しい音楽。
それにしても、曲の題や契機が、ピアノの内部奏法に否定的な日本の会場管理者への皮肉とは良いですね。
佐藤の曲は、表面的に見ればセリー風の厳しい音楽ですが、根底には違うものが流れていることが傾聴することで理解できます。
沈黙と発音の境界の慎重さ、細かなペダルやテンポの設定などは確かに厳しさを感じさせます。
けれど、曲の意図について「<純粋な生命力>の把握」と述べている作者の言などからすれば、
これは東洋的な世界観をより正確につかみとろうとする作者の気持ちの表れなのではないでしょうか。
松平頼暁の曲は音のパルス的な扱いが中心に据えられた作品。
パルス音形がクラスター、音の幅、ペダリング、発声などにより全8部の中で様々に様相を変えていく。
最後にいきなりショパンの「雨だれ」が引用されかき消される部分は、違う世界を同時に見せられたようで聴き手をはっとさせてくれます。
水野の作品は鐘の鳴るさまを念頭に置いて作られた、彼の数少ないピアノ曲。
和音強打が多く、音響的な面の展開がメインです。強く広い響きを持った、7つの部分からなる13分の曲。
にしても、やっぱり彼は音響面の興味が非常に強い作曲家ですね。千個の鐘を使った作品作りたいってどんなだよ。



Xenia Narati Moondog Sharp harp -Strings for Kings
Alonso Mudarra; Fantasia en la manera de Ludovico
Louis Hardin; Art of Canon,Book1No.4,8 Book3 No.6,20 Book5 No.8,9,14 ,
Elf Dance, Troubadour Harp Book -Pastorale, Sea Horse, Chaconne in A, Mazurka, Fleur de Lis
Lucas Ruiz de Ribayaz; Hachas
Antonio de Cabezon; Pavane and Variations
Francisco Fernandez Palero; Romance
Ottorino Respighi,arr.; Italiana, Siciliana, Passacaglia

Xenia Narati,Harp
2006 Ars Musici  AM 1404-2

ハープ奏者のクセニア・ナラディによる、一見びっくりする組み合わせのアルバム。
古楽の美しさは言うこと無し、心が洗われるようで気持ちいいです。特にMudarraの曲はノスタルジックで素晴らしい。
レスピーギ編曲の「古風な舞曲とアリア」第3組曲から1,3,4曲目がハープ版になって収録されてます。
流石にこれは原曲の方が表情豊かだし好みかな。まあ健闘してます。ただアルペジオ多すぎじゃあないかな。
このCDの売りはなんと言ってもムーンドッグことルイス・ハーディンの曲がハープで聴けることでしょう。
ムーンドッグはマンハッタンの路上などで何十年もライヴを続けた盲目の音楽家。
ジャンルを超え様々な要素が現れる彼の自作楽器・笛などによる音楽はその後の音楽シーンに大きな影響を与えています。
遊吟詩人的な要素のある曲たちをナラディがセレクトしてみたようですね、ムーンドッグ選ぶとはやるなあ。
聴いてびっくりしたこと、カノンのシリーズはハープ独奏で聴くとびっくりするほど古典的で普通の曲に感じる。
やはりムーンドッグはきちんとした音楽地盤の上にあの独特の世界があるのだなあと理解します。
第5巻9番のような遅いロマンスみたいな曲があったり侮れない。
PastoraleやSea Horseなどの曲では彼らしいモンド音楽とクラシカルな響きが混和してほのぼのした音楽になってます。
最後のFleur de Lisは打楽器使用。これはチャンス・オぺレーションと5拍子の舞踏が混ざったような
ムーンドッグの凄さがこのアルバムの中で一番よく分かる曲。やはり彼は侮れない。



A Sonic Experience with Martha Folts at Harvard
Gary White; Antipodes I & II
Pozzi Escot; Fergus Are
Robert Cogan; No Attack of Organic Metals
Alan Stout; Study in Densities and Durations

Martha Folts,Organ
(DELOS RECORDS INC., CA D/QA-25448)

Delosから昔出ていた、現代オルガン作品集のブートCDR再発。
マイナー、というかどちらかというと無名に近い人ばっかり。CD(LP)自体についても情報が殆どないし。
Gary White(1937-)は、アイオワ州立大学の教授をしてる人。
なかなかショッキングな、静と動の対比著しい、緊張感溢れる音楽。中間部の、静かなドローンが次第に崩壊していく様子は良い。
Pozzi Escot(1933-)の曲は点描的な音楽、かと思いきやいきなり激しいクラスターのドローン。
なかなかぶっとんでます。オルガンを手で叩いたり?といった特殊奏法のリズムも出てきたり。
Robert Cogan(1930-)の曲、ドローンにいきなりテープ録音されたノイズが絡んでくる。
相当な実験音楽。オルガンの爆発とノイズのささくれが、徐々に一体化して襲ってくる。
はっきり言って、現代音楽リスナーより音響やノイズのリスナーに聴いてほしい。すげえ、異常すぎる。
Alan Stout(1932-)の曲は、静かなドローンに時たまグリッサンドなどの動きが絡んで進む。
後半はクラスターだらけの、ノイズ・ドローン作品としても聴けるくらいの圧倒的な曲。
殆ど知られていないのがもったいない位の素晴らしい内容です。
欠点は一つ、音質が悪すぎる。LP再生をそのまま焼いているせいで、あのレコードノイズが常時うるさい。
音割れもけっこうあるし、もうちょっと慎重に録音し直してもらいたかった・・・



Bach-Jose-Ginastera
J.S.Bach; Sonata, BWV 1001
Antonio Jose; Sonata para guitarra
Alberto Ginastera; Sonata for Guitar Op.47

Beata Bedkowska-Huang,Guitar
2004 Ars Musici  AM 1395-2

ポーランドの女性ギタリスト、ベアタ・ベドコワスカ=ハンのアルバム。
バッハの曲は有名な無伴奏ヴァイオリンソナタをギターで演奏したもの。
もともとそうとも思っていたけれど、この演奏で聴くと特に、この曲はフォークな響きを持っているんだなあと思う。
バッハの曲の暗さと南欧古楽的な寂しさが、自分が混同しているだけなのかあるいは
ヨーロッパ的な同じ定礎を持っているのかわからないけれど、うまくかみ合って聴こえてくる。
アントニオ・ホセ(1902-1936)はクラシック音楽では無名に等しいですが
曲はごく一般的な、近代的ギター音楽。私の琴線には特にきませんでしたが、良い曲であるとは思います。
最後の楽章など溌剌としていてノれますが、私はやっぱりヒナステラの方が良いです。
独特の怪しげな曲調が演奏者の繊細な音とマッチして夕暮れのような情景がうまく表現されていますね。
力強くはないのが残念ですが、これはこれで素晴らしいです。
フレキシブルではっきりとした演奏、風通しが良くクールに聴けました。



Oskar Sala & Harald Genzmer
Electronique Et Stereophonie: Musique Spatiale
Oskar Sala; Musique Stereo Pour Orchestre Electronique En Cinq Parties
Harald Genzmer; Cantata Pour Soprano Et Sons Electroniques, Suite De Danses Pour Instruments Electroniques

Oskar Sala,Trautonium & Mixtur  Edith Urbanczyk,Sop.
2005 Creel Pone  #08

クリールポーンのブートシリーズ第8弾は以前Eratoから出ていたトラウトニウム作品集。
トラウトニウムは、要は電子楽器テルミンやオンド・マルトノの進化形。そこからさらにハモンドオルガンなんかに展開していくんですね。
上記2つに比べ圧倒的に知名度が低いトラウトニウムですが、ヒンデミットが曲を残していてまあまあ知られてます。
あとはこのCD収録の、弟子であるオスカー・ザラ(1910-2002)がやたら気に入っていた様子。
映画音楽や電子音楽を手がける傍らトラウトニウム演奏の第一人者としても活躍しました。
その彼の「エレクトロニック・オーケストラのための5パートのステレオ・ミュージック」は名の通り全5楽章の大作。
トラウトニウムのぴこぴこころころ言う独特のスペーシーな音が転げまわる。
反復を伴いながら音がぽろぽろと、脈絡ないかのように押しかけてくる様が楽しいです。
ハラルド・ゲンツマー(1909-2007)もヒンデミットの弟子、こちらの方が現代音楽作曲家としては有名かな。
「ソプラノとエレクトロニクス音のためのカンタータ」は先ほどに比べるとかなり音色を変化させている。
弦のような柔らかい音、攻撃的な破裂音など、場面によって切り替えてます。
音色などを別にすれば、曲自体は近代音楽の流れを汲むクラシカルな音楽。
「電子楽器のための舞踏組曲」は音数少ないリズムの上をぴろぴろせわしないメロディーが痙攣し、走り回る。
とはいえ、構造は簡素で聴きやすく、とても楽しめます。まあゲンツマーはそう前衛的ではないしね。



Tomoko Mukaiyama -piano- Women Composers
Adriana Holszky; Horfenster fur Franz Lizst
Vanessa Lann; Inner Piece
Galina Ustvolskaya; Piano Sonata VI
Sofia Gubaidulina; Piano Sonata
Meredith Monk; Double Fiesta

BVHAAST  CD 9406

女性作曲家のピアノ曲を集めたものですが、どれも暴力的ないし非常に活動的なのは意図してのことなんでしょうか。
しょっぱな、アドリアナ・ヘルスキの「Horfenster fur Franz Lizst」から強烈。
特殊奏法をふんだんに使った、パーカッシブで派手な曲。フリーで暴力的な音はウストヴォルスカヤに匹敵します。
題のとおりシューベルトのメロディーが主題。ただこういう曲は形式よりは音響を楽しみましょう。
ヴァネッサ・ランの「Inner Piece」はプロコフィエフのトッカータ風な楽想から開始する。
そこからやがてジャズの影響を持った音楽が展開します。なかなか激しい。前後の曲の重々しい激しさとは対極にある感じ。
ガリーナ・ウストヴォルスカヤの「ピアノ・ソナタ第6番」は冒頭から重い音塊ががつんと落とされる。
複雑な構成は少なく、和音の塊がこれでもかとふり下ろされる曲想はまさに暴力。終始それが一貫していて怖いぐらい。
ソフィア・グバイドゥリーナの「ピアノ・ソナタ」はそれまでの曲からすると驚くほど古典的に聴こえます、実際彼女の初期重要作品だし。
跳ねるような主題と重々しい伴奏が時にグロテスク、時に劇的に絡む第1楽章。
低音のごりごりした音と高音の煌く音の対比が印象的な第2楽章。短い、重く躍動的な第3楽章。
彼女の曲の、神秘性とはまた違う激しい面が見れる曲、聴いて損はありません。
メレディス・モンクの「Double Fiesta」は彼女らしくピアニストの歌唱から始まります。
彼女独特の、踊るような民族的旋律が繰り返されて絡み合い、ミニマルに進行する。題らしくテンションの高い曲。
相変わらず声のパートに要求される技量が高すぎる。まあ確かにここが普通じゃ全然彼女らしくないんですけれどね。
演奏は何時もどおり固めのはっきりしたタッチで安心して聞かせてくれます。曲のほうも、どれも楽しめてよかった。



Michel van der Aa; Double
甲斐説宗; ヴァイオリンとピアノのための音楽 II
David Lang; Illumination Rounds
一柳慧; ピアノ音楽 第6、弦楽器のために 第2
福井とも子; Schlaglicht
近藤譲; 冬青 Ilex

ROSCO(大須賀かおり、P. 甲斐史子、Vn.)
2005 Zipangu Records  ZIP-0015

桐朋学園在学時に結成された、現代音楽を中心に活動しているデュオユニットのCD。
ミシェル・ファン=デル=アーの曲は視覚的要素があるようですが、それがどんなものかわからないたけ、音について推測するしかありません。
かすれたような静寂なドローンから始まり、徐々にピアニストのきっかけによってヴァイオリンが動きを激しくしていく。
甲斐説宗は以前から興味があった作曲家。早世したのが本当に残念ですね。
素直な短い音形が繰り返される。異常なまでに簡素な構造ですが、とても印象的な独特の世界が作られています。
さりげなくそこら辺にたゆたうようで、「庭で植木にハサミを入れる庭師のように」ためらいのない、まっすぐでいて確固たる音でもある。
彼の曲の中で、今まで聴いた中では一番気に入りました。同時に、初期グレツキなどの影響が顕著なことを改めて実感。
この曲の響きはまるで、作品番号1桁のグレツキ作品の音響に晩年の静寂さを振りかけた感じですね。
デイヴィッド・ラングの曲はベトナム戦争の銃撃を音楽のインスピレーション元に選んでいます。
ヴァイオリンの下降グリッサンドや低音の激しい動きが印象的。
一柳の2曲はとても極端。ピアノのほうは終始激しく叩きつけられる爆発作品だが、ヴァイオリンのほうは一つの音が奏法を変えて響くだけ。
福井の曲は「対象を際立たせる強い光」の題通りに、それぞれが互いに際立たせるポジティブな関係を意図しているようです。
たしかに互いが他方にけしかけるような共同体としての興奮がありますが、ピアノが主に低音でアグレッシブに繰り広げるせいで
音高的な対比を連想してしまう部分が多い。確かに他方を打ち消していないのが分かるんですが、ちょっと引っかかってしまった。
対比と対立の違いはどこからなんだろう。難しいものです。
近藤の曲は、このCDの中で一番いわゆる「現代音楽」的。二人の音が、静かに次々と降り積もっていくちょっとフェルドマン的な作品。
全体的に個性的な音響の作品が多く、室内楽CDとしてはびっくりする位音の多様さが楽しめました。



David Taylor Bass Trombone

Frederic Rzewski; Moonrise with Memories
David Liebman; Remembrance
Eric Ewazen; Dagon II
Lucia Dlugoszewski; Duende Quidditas

New World Records  80494-2

現代音楽やジャズを中心に演奏しているバス・トロンボーン奏者のアルバム。
ジェフスキとリーブマンの曲はアンサンブル付き。
ジェフスキはいつもと変わらないミニマルでアメリカンフォークな曲。
「Coming Together」とかの主題をバストロに変換して想像してくれれば良いです。
リーブマンは随分とフリージャズの香りが強い。ビル・エヴァンスへの「追憶」らしいです。
エワーゼンの名前は吹奏楽のCDでもちょくちょく見かけますね。
この「Dagon II」はなかなかカッコイイ。しょっぱなからクセナキスばりの激しいノイズ。
その後もブレストーンなど特殊奏法をメインに目まぐるしい音響が多重録音で繰り広げられます。
最後に9thの和音を基調としたメロディアスな部分がさっと過ぎて終了。
Dlugoszewskiの曲はかなりフリー。30分弱の間、自由な音たちがごろごろ転げまわります。
ミュート付きのバストロと弦を直接擦るピアノの音が非楽器的な音の世界を作っていて面白い。
雰囲気だけ見ればアコースティックなインプロヴィゼーションといえるでしょう。
楽器の組み合わせの関係で、決して軽い音が主体にならないところが聴く上で大事な鍵になるのでは。



Amsterdam×Tokyo

Karen Tanaka: Techno Etudes
Michael van der Aa: Just Before
Toek Numan: Fluweel
Makoto Nomura: Away from Home With Eggs
Merzbow/Atsuhiko Gondai: Black Mass

Tomoko Mukaiyama,Piano
BVHAAST  BVHAAST 1000

向井山朋子によるオランダ・日本の作曲家による日蘭交流400年記念企画アルバム。近年の様々な傾向のものが収録されてます。
気に入っているのは日本人による3曲。え、オランダ作品?ん〜、どうも肌に合わない・・・
田中カレンの「テクノ・エチュード」は疾走感の激しい爽快な作品。名前の通りテクノ的なリズムがひたすら進んでいきます。
彼女は個人的に気にしている作曲家。「失われた聖地」聴いたことあるけれど普通に綺麗な曲でした。CD出ないかなあ。
ヴァン=デル=アーの曲はエレクトロニクスを用いたノイジーな一品。
ニューマンの方はトッカータ的要素が強い、このCDの中で一番まともな曲です。
ちょっとジャズの匂いもさせながら終始リズミックに展開する、クラシカルな雰囲気が好きな人がまだ好めそうな作品。
野村誠の「たまごを持って家出する」は聴きやすいと思わせておいて一番異色な存在でした。
前衛の香りも漂いながらも基本的に流麗な音楽が次々と沸いてくる前半は気楽なのですが。
中盤から演奏者によるちょっと変てこな語りが入ります。この文章は野村氏によるものなのかな。
サンプリングされた幼女や老婆の声などと進行しながら、最後は演奏者による意味不明な歌とコーダとはいえないような物でさらっと終了。
慣れるとどこか切なさも感じる普通に良い曲に感じますが、最初に聞いたときは「何じゃこりゃ!」と(笑)
「Black Mass」はメルズバウが向井山の音源を元にノイズを作り、それに権代敦彦がピアノパートを作曲している。
二人の個性がぶつかりあう激しい作品。秋田さん、いつも通りですね・・・



ヴァイオリンのための24のカプリッチョ
24 Capriccios for Violin

Janine Jansen & Joris van Rijn & Benjamin Schmid,Violin
2002 NM Classics  NM 92120

ロッテルダム芸術財団がオランダの作曲家24人にパガニーニのそれをもじって作曲を依頼したもの。
もちろんシメオン・テン・ホルト狙いで買いました。でなきゃ買うかよこんな高いオランダ盤!!
私の知ってる作曲家はあんまりいない・・・ってそもそもオランダの作曲家そんな知らないんでした。
Toek Neuman,Michael van der Aa,Willem Breuker,Jacob ter Veldhuisくらいしか知りません。
それもそのはず、クラシックのみならずジャズ界の人もずいぶん混じってるみたいですね。
実際に聴いていても、他の音楽の影響が強く感じられるものが多いです。
その分、独奏のみからなる二枚組みですが面白く聴けました。
Joey Roukensという方が作曲家の中で最年少ですが若すぎる・・・1982年生まれって。
この企画は1998年ですから、依頼されたときはまだ16歳!?曲はジャズどころかロックすら思わせるリズムで楽しい。
Breukerは私の初遭遇が変態じみたオルガン即興だったのでそのイメージがついていますが
このアルバムではかなりクラシカルな響きを出しています。
ホルトは相変わらず。音の細かい旋律が無窮動のようにひたすら反復され盛り上がっていきます。
「Soloduiveldans」みたいな印象。
いつもと変わらないノスタルジックな音楽で安心しました。やっぱカッコイイや。



TOP