オムニバス 管弦楽・協奏曲

クラシックまたは現代音楽の、作曲家で括られていないCDのレビュー置き場。
ここでは管弦楽作品や協奏曲など、特に大編成の作品(がメインになっている)ものの置き場。
順番は適当に更新した順。




The Ricciotti Ensemble -21 Years stage on street
Van Dyke Parks/arr.W.Witteman; Four Mills Brothers
Henry Brant; Horizontal Extending, Whoopee
Paul Stouthamer; Movement for String Orchestra
Chiel meyering; Hypomania
Charles Ives; The Unanswered Question
Louis Andriessen; Workers' Union
Dino Fekaris & Freddie Perren/arr.Wim van Binsbergen; I Will Survive
Jimmy Layne Webb/arr.John Tadgenhorst; McArthur's Park Disco

The Ricciotti Ensemble  Leonard van Goudoever,Cond.
BVHaast  CD 9110

1970年に学生40人で結成して以来ずっと、野外での演奏活動を信条にしているオランダのオーケストラの一枚。
ヴァン・ダイク・パークス「Four Mills Brothers」で開始、アメリカンポップらしい超軽快なアレンジ。
ヘンリー・ブラント「Horizontal Extending」は2つの管楽器群と打楽器ソロに分かれて演奏。
アメリカの作曲家ですが、編成としても聴いててもどうもブラスというよりマーチング曲を限界に前衛にした感じ。
バルセロナに住むストリート・チェリストによる「弦楽のための楽章」、
ここでは最初の部分しか演奏していないようです。そこそこ溌剌とした感じ。
Chiel Meyeringの曲は何というかハチャメチャ。野外録音なのも相まって乱稚気してるだけな感じの良い感じに崩壊した曲。
アイヴス「答えの無い質問」は野外版と室内版があります。室内版の(珍しく)繊細な演奏も良いですが、
野外版は終わった瞬間上手い具合に鐘が鳴るあたりが良い。どこから響くかわからないトランペットソロ、
鳥や子供の声も入り混じる、実にこの団体をよく現した音源だと思います。
ブラント2曲目、すごくのどかなポルカ。途中のコントラファゴットとバスサックスのソロが曲の諧謔さを強調してます。
アンドリーセンの"いくつかの大音量で鳴り響く楽器群のための"有名作「ワーカーズ・ユニオン」も収録。
楽器を指定していない偶然性を盛り込んだ作品ですが、この演奏はとにかく最高です。
終始ものすごい勢いで音を叩きつけまくる。こんなぐちゃぐちゃで破天荒な演奏を聴いた後だと、他の端正な音源なんてつまらない。
「I Will Survive」、テナーサックスソロを入れた実にポップなアレンジ。アンドリーセンの後にこれとかキてるな。
「McArthur's Park Disco」もポップスステージのトリに演奏するとよさげなナンバー。7分はちょっと長いけど良い編曲。
演奏の精緻よりも聴いていて楽しめることを重視していることがよくわかる、個人的には素晴らしい一枚でした。



Sharon Isbin -American Landscapes
John Corigliano; Troubadours (Variations for Guitar and orchestra)
Joseph Schwantner; From Afar... A Fantasy for Guitar and Orchestra
Lukas Foss; American Landscape

Sharon Isbin,Guitar  The Saint Paul Chamber Orchestra  Hugh Wolff,Cond.
1995 Virgin classics  CDC 7243 5 55083 2 4

現代アメリカのギター協奏曲を集めた一枚。
コリリアーノの「トルバドゥール」は、題のように叙情的でロマンチックな音楽の断片。
消え入るように淡い響きからギターがトレモロの記憶を引き出していく。
中盤は速いテンポのタランテラ風舞曲。非常に中世的なイメージが引き出される音楽です。
この部分はかなり旋律的なので聴きやすいけど、場面転換は非常に激しいので演奏は難しそう。だからかっこいいんだけど。
ギターの落ちつきを取り戻すようなカデンツァののち、また冒頭の淡さの中に消えていく。
シュワントナーの作品は、冒頭から彼らしいドラマティックな音楽が全開でしびれます。
そこにギターがかき鳴らしたりして颯爽とソロを奏でていくのがたまらない。
シュワントナーが元ジャズギタリストであることも関与してか、なかなかかっこいい作品に仕上がっています。
ルーカス・フォスの「アメリカの風景」、第1曲は民謡も使った朝の風景っぽい。
次第に陽気になりながらカントリーとジャズが同居するような小気味よい不規則リズム。
第2曲はタッピングを使った穏やかな音楽ですが、後半はトロンボーンソロもあったり意外とリズミカル。
第3曲は1曲目の雰囲気が戻ってきて、より民謡的なムードが満載に。
ほのぼのした明るい音楽がひたすら続きます。ただ最後は割とあっけなく終わる。



Youliana Tochkova
Harp's Compositions & Interpretations
Youliana Tochkova; Concerto for Harp & Orchestra, Arpeggio
Louise Charpentier; Rhapsody
Felix Godefroid; Concert's study in Eflat Major Op.193

Youliana Tochkova,Harp  Collegium Musicum Bankia  Dominique Patrouilleau,Cond.
1994 Gega new  GD 167

(多分)ブルガリア出身、ハープ奏者として活躍しながらエレクトロアコースティック作品を含む
作曲活動も行っているヨウリアナ・トチコヴァ(1965-)の自作自演を含むアルバム。
彼女自身の代表作らしい「ハープ協奏曲」は彼女が23歳の時の作品とのこと。
クラシカルな構成の中にさりげなくブルガリア風の歌いまわしを盛り込んだ、変拍子がやっぱりアクセントの第1楽章。
和声もなかなか手の込んだものが多く、第2楽章はそれがハープの音色とかみ合った独特の美しさが聴ける。
第3楽章はその2つの要素がうまく組み合わさり、特殊奏法も使いながらなかなか熱狂的に盛り上がる。
なかなか面白い曲で良かったです。後半にはコンポーザー=パフォーマーの独奏作品を3つ。
まずは自作の「アルペッジョ」、特殊奏法もかなり多く使って随分と前衛的な音楽になってます。
ただそこにタイトルらしい動きも多く絡んでいてはっとする綺麗な響きも同時に絡んでいるから侮れない。
次に収録されているシャルパンティエは有名なギュスターヴではなくルイーズ・シャルパンティエ(1902-64)の方。
ギュスターヴは叔父に当たりますが、このおじさん「ルイーズ」なんてオペラも書いてるから検索時はかなりややこしい。
ハープ奏者としての活動が主で、作曲活動は元からあまりやってはいなさそうです。
ただこの「狂詩曲」は幾分即興的な歌いまわしではあるものの、近代らしい和声とアルペジオのきらめきを
十分に楽しめる作品で良かった。いろいろ展開もあって10分かかるなかなかの重さな作品です。
最後にベルギーのハーピストであったフェリックス・ゴドフロワ(1818-97)の「演奏会用練習曲 変ホ長調」。
19世紀の作品らしく和声はいちばんかっちりしてますが、アルペジオの甘くも切ない音楽はなかなかに魅力的。

正直、買った時は初期Gegaらしい安物感漂うジャケで不安でしたが、内容はかなり面白かった。
録音も悪くはないし、演奏はしっかりしてる。



Henri Pousseur; Couleurs Croisees
Jean-Louis Robert; Aquatilis

Orchestre Philharmonique de Liege  Pierre Bartholomee,Cond.
Spil Ricercar  RIC 036015

電子音楽の重鎮アンリ・プスール(1929-)の珍しい管弦楽作品音源。
クーゼヴィツキー音楽財団の委嘱によるこの「交叉する色彩」(1967)は
セリエルな作曲された断片と、ポピュラーソング"We Shall Overcome"の旋律をマテリアルにして
作曲者としては、ジャズとクラシックの融合みたいなものを目指しているようです。
そこには彼がアメリカへ行ってそれらの関係性を目の当たりにしたことが契機の一つになっている様子。
シンバルなどの非常に淡い持続から、ピアノやチェンバロのモノローグが開始。
それがやがて全楽器に伝染していき、音楽は激しく断片を展開していく。
マテリアルの極端さもあって、時折調性的な音楽がいきなり出てくるのが面白い。
後半になるほど、歌からの素材と思しき調性のある断片が現れて、ふわふわとした響きを作る。
和声の複雑さは、普段から音響をいじっていて慣れているのか、かなり刺激的で良い。
後半には、自動車事故で31歳にして他界してしまったジャン=ルイ・ロベール(1948-79)の作品。
プスールの元で勉強し、ライヒに興味を示しケージやヴァレーズに賞賛を送っていたものの
作風としてはセリエリズムを元にした発展的な作品を書いていたようです。
ちなみにこの作曲家、Cypresレーベルが親身になっているようで作品集も出ています。
この「アクアティリス」(1977)は基本的には楽譜に記されているものの、即興性もかなり含んでいる様子。
オーボエの主導的な音で始まり、やはり弟子らしく音響の鮮やかさが素晴らしい展開を見せてくれる。
ただ、こちらの作品は持続的な中心音に支えられた展開から一気にリズミカルな音楽に変わる。
中間部からは瞑想的な楽想も加わりながら双方の音楽は噛み合わさり興奮していきますが、
金管の長いコラールがそこから立ち上り、音の美しく煌めく中から冒頭のオーボエがまた現れてくる。
無名に近い存在ですが、なかなか面白い曲でした。



Musik in der DDR Vol.1 musik fur orchester
Gunter Kochan; Symphony No.2
Friedrich Goldmann; Symphony No.1
Udo Zimmermann; Sinfonia come un grande lamento
Siegfried Kurz; Concerto for Trumpet and String Orchestra Op.23
Siegfried Matthus; Concerto for Violin and Orchesra
Paul-Heinz Dittrich; Concerto for Cello and Orchestra
Reiner Bredemeyer; Oboe Concerto
Ottmar Gerster; Festival Overture 1948
Rudolf Wagner-Regeny; Introduction and Ode
Friedrich Schenker; Landscapes
Georg Katzer; Sentimantal Music
Ruth Zechlin; Music for Orchestra

Berliner Sinfonie-Orchester  Rundfunk-Sinfonie-Orchester Berlin etc.
1995 Berlin Classics  0090692BC

東ドイツの作曲家作品を集めたここらしいシリーズの一つ目、管弦楽作品。CD1は交響曲。
ギュンター・コーハン(1930-)はボリス・ブラッハーとハンス・アイスラーに学んだ作曲家。
単一楽章の「交響曲第2番」(1967-8)は劇的で場面転換の激しい音楽。
時に神秘的に、盛り上がりでは打楽器も交え激しく展開するあたりはかっこいい。
ただその描写はやはり同じ東側の作曲家、たとえばショスタコやプロコフィエフみたいなものを連想します。
これは初期〜中期ショスタコファンが聴いたら高確率ではまるんじゃないかなと予測。最後トランペットが美味しい。
フリードリヒ・ゴールドマン(1941-)の「交響曲第1番」(1972-3)、グロテスクでどこか機械的なパッセージが金属音と共に揺れ動く冒頭。
BACH動機も顔を出しながら、彼なりの伝統的語法からの脱却の成果が聴ける。
最終楽章の錯乱状態はなかなか前衛をかっ飛ばしていて爽快です。
ウド・ツィマーマン(1943-)の作品はロルカに捧げる哀歌として書かれたもの。
ティンパニによる長い独白(8分ほどの第1楽章の半分)と淡い弦楽の哀歌。
第2楽章でようやく木管の歌が現れるものの、際限なく重なり合っていき混沌とした頂点からさらに暴力的に吹き荒れる。
3楽章は一応葬送行進曲みたいなものなのか、重いリズムと弦楽の哀歌。
CD2は協奏曲集。ジークフリード・クルツ(1930-)の「トランペット協奏曲」(1953)は清々しいまでに近代。
踊るようなリズムの第1楽章、アダージョというよりブルースな第2楽章、民謡風のリズムが心地よい第3楽章。
ジャズとバルカン民謡を取り入れた、刺激的で聴きやすく楽しい1曲。これ良いです。
ジークフリード・マトゥス(1934-)もそんな前衛から振り返った作風の人物ですが、
「ヴァイオリン協奏曲」(1968)は先ほどと比べると実に堅牢というかお堅いというか、真面目な作品。
技巧的で劇的、ちょっと旧ソ連風の雰囲気が良い味出している、こちらもなかなかの作品。
パウル=ハインツ・ディトリッヒ(1930-)の「チェロ協奏曲」(1974-5)は小説風の物語展開をしているそう。
込み合った構造がひたすら進んでいく作風はどちらかというと作り込みを鑑賞する方が楽しみ方。
ライナー・ブレデマイヤール(1929-95)の「オーボエ協奏曲」(1977)は装飾的なパッセージで彩られた短い5楽章制の作品。
CD3はその他の管弦楽曲。オットマール・ゲルスター(1897-1969)は穏健な作風もあってナチス下でも活動できていた作曲家。
戦後の「祝典序曲1948」もインターナショナルやマルセイエーズをモチーフにした社会主義リアリズムに合致するような内容。
友人でもあったヒンデミットが穏健で社会主義に迎合的だったらこんな感じの曲を書くでしょうか。
内容はかなりロマン風ではありますが、まあそこそこ楽しめた。
ルドルフ・ヴァーグナー=レーゲニ(1903-69)の「序奏と頌歌」(1967)は重く静かな冒頭から次第に弦楽器で悼む様な旋律が
ゆっくりと湧き上がる。ピアノが入ると次第に控えめながら音楽は躍動感を持ち出していきますが音楽は終始淡いまま終わる。
フリードリヒ・シェンカー(1942-)の「風景」(1974)はやはり完全に前衛の世界。
錯乱するような激しい音のぶつかり合いが衝撃的な4つの短い曲からなるアヴァンギャルド風景。
アコーディオンや金属打楽器、ハープシコードも入る音響は流石に圧巻。
ゲオルク・カッツァー(1935-)の「感傷的な音楽」(1976)はどこが感傷的なのかわからないくらいに
込み入った旋律と緊張感を持った前衛的な進行だらけの、弦楽のための作品。
中間部の打楽器掃射まで入ると、タイトルの持つ18世紀なノリへの再定義的な意味合いがよく分かる。
ルート・ツェヒリン(1926-2007)の「管弦楽のための音楽」(1980)は弦楽の怪しげな持続から
各楽器群に分かれた音響で音楽の変遷を示す、前衛的な詩的表現音楽。和声含め、意外と面白い。

こうしてみると、比較的後年の作曲家は社会主義にそこまで縛られずに前衛活動が出来ていたのがわかる。



William Schuman; Symphony No.7
Leonardo Balada; Steel Symphony

Pittsburgh Symphony Orchestra  Lorin Maazel,Cond.
1987 New World Records  80348-2

アメリカを代表する大御所、ウィリアム・シューマン(1910-92)の交響曲は
10番までありますが、うち1,2番はお蔵入りになっているので現存するのは8つ。
「交響曲第7番」は1960年に書かれた、4楽章構成とはいえ流れ的には2楽章のような作品。
重苦しい序奏のコラールから始まり、音楽はひたすらゆっくりとストイックに組み上げられる。
それが次第におさまっていった瞬間第2楽章。金管主導の技巧的で印象に残る短い音楽。
第3楽章はまたゆっくりした音楽ですが、今度は弦楽のメロディーが美しく絡み合わさる緊張感を持った音楽の進み方。
第4楽章は「ジョーク」のようなスケルツォ、軽快な楽想の絡み合いは実に
イメージ通りのアメリカンなシンフォニック音楽の響き。マゼールの指揮も手堅いもの。
レオナルド・バラダ(1933-)は以前聴いた作品集で興味を持っていましたが、
この「鋼鉄交響曲」は彼の代表作と言ってもいいでしょう。スペイン色を色濃く残した、前衛的なアメリカの作曲家。
ピッツバーグの鉄工場を動力源にしたこの作品は、まさにこの団体が演奏すべきでしょう。
チューニング音の混沌に始まり、次第にうねりから機械的な規則性が現れてくる。
この様々な要素が絡み合い、カタルシスを感じるような明快な流れを感じさせないものの
緊張感を果てしなく延々と煽り続ける音楽はまさにバラダ。
もやもやとした混沌からリズムが浮かび上がって盛り上がっては瓦解していく。
ただ、後半になるにしたがってその凶暴さがリズムになって押し寄せてくるあたりは実に爽快。
まあただ、モソロフとかのノリで聴きにきちゃう人なんかは「何これ」って気分になっちゃうだろうなあ。
演奏、実はそこそこといったところ。これなら爆演系が得意な人がもっとぶっとばしてくれそう。



Clasicos de las Americas Volume 1-5 etc.
Ignatio Cervantes; Suite de Danses et Portraits
Manuel Saumell; Quatre Contredanses
Louis-Moreau Gottschalk; Le Bananier, Les Yeax Creoles, Bamboula, La Savan, Souvenir de Porto-Rico, Morte! ,etc.
Carlos Guastavino; Songs
Agustin Barrios; Guitar Music
Heitor Villa-Lobos; Chamber Vocal Music
George Gershwin; Rhapsody in Blue, Three Preludes, Cuban Overture, Porgy and Bess

Georges Rabol,P.  Margot Pares-Reyna,Sop.  Jesus Castro Balbi,Gui.
Marcel Quillevere,T.  Noel Lee,P.  Ensemble Erwartung  Bernard Desgraupes,Cond.
Jazzogene Orchestra  Jean-Luc Fillon,Cond.
1990~92 Opus 111  OPS 30-9001,2/19-9209/50-9114/30-64,65

ラテンアメリカの知られざる作品を発掘したマニアックなシリーズ。第1集はぜんぶ初録音。
イグナシオ・セルバンテス(1847-1905)はキューバ・ハバナ出身。
後述でもあるゴットシャルクに才能を見出され、フランスでアルカン
(この人物があのシャルル=ヴァランタンなのかいまいち不明)らに師事。
政治に翻弄されながらもアメリカや本国で活躍しましたが、晩年にはうつ病を患ってしまっています。
ここに収録された「舞曲とポートレート」の組曲は彼晩年の作品。
キューバ独特の音楽リズムも直接現れる、素朴なこの時期の作曲家らしい楽しい曲ばかり。
キューバのショパンと評されることもあるのがよくわかるとても素晴らしい出来です。
同郷のマヌエル・サウメル(1817-70)はクレオールの音楽概念を西洋音楽に導入した最初の人物。
ほぼ独学で国外にも出なかったため和声的にはロマン派初期程度ですが、その音楽の印象は強烈。
「コントラダンサ集」は全52曲の膨大な小品集ですが、ここではそのうちたった4曲だけを収録。
ただ、その収録曲は実にリズミカルで楽しいもの。残念ながらこれらの作曲年代は今では不明になっていますが、
19世紀中ごろにすでにこんなエキゾチシズム満載のクラシック作品があることに彼の先進性を感じ取れます。
ルイス・モロー・ゴットシャルク(1829-69)はニューオリンズ生まれですがクレオールの血筋。
ピアニストとしても活躍し、そのルーツに根差した南米的な楽想を盛り込んだ音楽は、
このCDの中では一番知られているでしょう。ここでは小品を6つ収録。
どの曲も技巧派なロマン作品にラテンの香りをまぶした、この中では一番マイルドで
かつ華やかさの感じられる音楽。いかにも神童から進んだスターの書く、くせのない雰囲気。
どちらがどうというわけではなく、これが彼の作風でしょう。これはこれで楽しい。
ちなみに最後の「死」は彼が倒れた演奏会で最後に弾いていた作品。
演奏、華やかというわけではないですが、同じクレオールの血が流れているだけあってとても気楽に聴ける。
Volume 2はグァスタビーノの歌曲集。全部単曲での表記になっていますが、本当にそうかは不明。
Volume 3はバリオスのギター作品集。抜粋が多いですが、音楽は本当に心地よい。
Volume 4はゴットシャルクのピアノ作品集。おいおいお前もう1集で結構入ってたじゃねえか。
まあでも音楽は確かに楽しくていいものが多くはある。未出版の作品もちらほら。
Volume 5はヴィラ=ロボスの室内楽等の伴奏によるテノール歌曲集。
こうして聴くと実にメランコリックというか淡い曲が多くて面白い。トラック33とか。
6というか補遺みたいな感じでガーシュウィン作品集が最後に。
「ラプソディー・イン・ブルー」はオリジナルのビッグバンド編成でとのこと。
ちょっと散漫ですがノリは面白い。やっぱこんな感じがノリとしてはこの曲に合っている。
リズミカルな音楽が心地よい「3つの前奏曲」はピアノソロ作品では一番知られたガーシュウィン作品。
「キューバ序曲」、この田舎者な感覚は本来の感じなんだろうけど、これはもっとシンフォニックな方が自分に合うなあ。
もちろん、曲が持つカリビアンなノリは十二分に出ているので文句はなし。
まあ別人のオーケストレーションだし。終わりにリズムセクションのソロ回しがついたりしてコーダが結構変わってる。
「ポーギーとベス」もRabolによるピアノアレンジ。ジャズピアノらしい印象をさせる編曲に仕上がってる。



Karl Amadeus Hartmann; Miserae, Gesangsszene
Luigi Dallapiccola; Canti di Liberazione

Wolfgang Schone,Br.  Hermann Pfister,Fl.  Chor des Suddeeutschen Rundfunks
RIAS Kammerchor  Bamberger Symphoniker  Ingo Metzmacher,Cond.
1997 EMI  7243 5 56468 2 8

ハルトマンの交響詩「ミゼレ」(1933-34)は彼最初のオーケストラ作品。
当時台頭していたナチスへの反対を表明する意を込めた作品であり、
これがきっかけとなって戦後まで自作の演奏が不可能な状態にさせられてしまいます。
このころはまだこの時代のドイツ音楽らしい近代的でリズムに支えられた普通にかっこいい音楽。
主部ではトロンボーンなども含めソリスティックに激しく動き回ります。
重苦しさも漂う、ナチの犠牲者へ向ける葬送行進のような連想をさせる曲です。
逆に、次の作品、カンタータ「歌の情景」(1963)は未完の遺作。
ジャン・ジロドゥの「ソドムとゴモラ」をテキストにして、晩年独特のグロテスクな音楽が動く。
古典的な響きを持ちながらも音が激しく絡み合う異常な構造を、メッツマッハーはスマートに聴かせてくれる。
交響曲全集に収録されているクーベリックのようなどろどろとした暗さはないですが、
音楽の持つ力を綺麗に整理して躍動感あるものに仕上げてくれています。お蔭で聴きやすくて楽しい。
混沌とした激しい音楽を良くも悪くも整理した力に乗せてかき鳴らす。
ダッラピッコラ「解放の歌」は「アンナリベラの音楽帳」と同時期の作品。
彼独特の十二音技法が淡くゆらゆらと響き、第2楽章では鮮やかに緊張感をもって音がはじける。
彼の「囚われの歌」からの3部作に入る、力作です。



Music from Six Continents 1997 series
Kaoru Koyama; Violin Concerto
Aaron Rabushka; Concerto for Clarinet, Bass Clarinet and Chamber Orchestra Op.20
Tsippi Fleischer; Salt Crystals
Nancy Van de Vate; Suite from Nemo

Eiji Arai,Vn.  Japan Shinsei Symphony Orchestra  Kazumasa Watanabe,Con.
Jaromir Jerabek,Cl.  Josef Horak,B.Cl.
Bohuslav Martinu Philharmonic Orchestra  Milos Machek,Con.
Warsaw Philharmonic  Gerard Wilgowicz,Con.
Ruse Philharmonic Orchestra  Tsanko Delibozov,Con.
Vienna Modern Masters  VMM 3038

「六大陸からの音楽」シリーズ、97年版。
石桁眞礼生、松村禎三、浦田健次郎といった面々に師事した小山薫(1955-2006)は
今となってはマイナーな存在でしょうか。公式サイトも消えてしまったし・・・
「ヴァイオリン協奏曲」(1994)は彼の代表作と言ってもいい知名度を誇る作品でしょう。
繊細で崩れ落ちそうな美しさを持つ、暗く妖しげな第1楽章、
一転して淡くまどろむような、穏やかな美しさを主体に繰り広げる第2楽章。
全体を支配する、ポスト武満のような曖昧さと淡さが実にすばらしい。
とりわけ、第2楽章のややクラシカルでありながらも現代音楽の響きを見せ、かつ淡い美しさを表現している点はとてもいい。
中間部には混沌としたクラスター風の盛り上がりもありますが、「もののあはれ」な情感は損なわない。
セントルイス出身の作曲家アーロン・ラブシカ(1958-)の「クラリネット、バス・クラリネットと
室内管弦楽のための協奏曲」。近代風な和声に支えられながらも形式はコンチェルト・グロッソにかなり忠実。
カンタービレの情感を全体的に漂わせながら、旋律が対位的に絡み合う。
ツィピ・フライシャー(1946-)はイスラエル・ハイファ出身の女性作曲家。ポーランド系ユダヤ人の家系。
アメリカ留学の経験もありますが、基本母国で教鞭を執っているようです。
「塩結晶」はおそらく、死海にそのインスパイアを得たのでしょう。
トムの特徴的なリズムを契機に、リズミカルではあるけれども細かく揺れるモチーフが様々に干渉する。
バスーンを初めとした木管楽器の(どこか民族楽器的な趣もある)積極的な使用もあって、
シリアスながらもどこかユーモラスな印象を併せ持つ。リズミカルですがミニマルとはちょっと違う。
最後は主宰ナンシー・ヴァン・デ・ヴェイト(1930-)。
主宰だからって自作曲よく入れてるよね。まあ気持ちはわかるけど。
4幕からなるオペラ「ネモ」からの組曲。もちろんあのネモ船長の事です。
意外にも、映画音楽でも聴いているかのような分かりやすさ。アメリカンな吹奏楽の匂いすら感じます。
ああ、これならアマチュアでやっても普通に面白そうね。
音楽としては小山とフライシャーの2作品が特に良かった。
その代り、演奏が全体的にちょっと残念な水準。一番いいのはフライシャーか?
前半はまあこんなもんか、とも思えるそこそこな感じなので別に良いんですが、
ヴァン・デ・ヴェイト作品なんて、正直二流以下と言いたくなってしまうような感じです。
…一応ブルガリアの代表的なオケって書いてあるんだけどなあ…



Greek Symphonies
Nikos Skalkottas; Symphony "The Return of Odysseus"
Manolis Kalomiris; Symphony No.1 "Levendia" Op.21

Danish Radio Symphony Orchestra  Miltiades Caridis,Cond.
Singverein der Gesellschaft der Musikfreunde in Wien  ORF-Symphonieorchester
1990 Koch Schwann  CD 311 110 H1

ニコス・スカルコッタス(1904-49)はシェーンベルクの12音技法を身に着けた
先進的なギリシャ作曲家として近年急速に再評価されていますね。
交響曲「オデュッセウスの帰還」は本来オペラの序曲として構想されたもの。
18音からなる音列を基本に展開される、一応はソナタ形式の単一楽章作品。
無調的なものを思わせる冒頭から次第に技巧的で断片的な音楽が次第に高揚していく。
こんな作品が1942年にギリシャで書かれていたのは凄い。同じシェーンベルクの弟子で後年濃密な作風になった
ロベルト・ジェラールでもこのあたりだとまだスペインで国民楽派ばりばりの音楽書いてたんだから、
そりゃギリシャで冷たい目しか向けられないでしょうね…
ちょっと録音のせいもあっていまいち熱気や臨場感はありませんが、演奏自体はスマートなもの。
この代表作の一つと言える作品の割には少ない録音としては、これだけの演奏は満足です。
マノリス・カロミリス(1883-1962)は正確にはエーゲ海を挟んだトルコ・スミルナ(現イズミル)地方出身。
ウィーン留学ののち、アテネに落ち着いたからこのアルバムタイトルで収録してるんでしょう。
「交響曲第1番「勇士」」(1918-20)はマケドニアを初めとするフォーク音楽の旋律を用いながら作曲されています。
第1楽章からすでに後期ロマン趣味が炸裂。ただそこに民族性やリムスキー=コルサコフ趣味が入ってるお蔭で個人的に楽しめる。
かなりロシア国民楽派な部分が聞き取れます。断片的にはパクってるんじゃないかと思うような場面もあり。
第2楽章もレントというよりは、楽語のイメージ的にはマエスオトーソって感じ。
第3楽章のスケルツォ、チェレスタが入りながら蛮族的リズムとロマンの響きが合わさったテンション高い音楽。
普通に終わっちゃっうノリであれ、っと思ったら最終楽章は仕切り直して超壮大に進む。
これ以上ないくらいに荘厳絢爛、すごい。そこに合唱が入ってくるあたり、清々しいまでにインパクト中心。
演奏はやっぱりちょっと粗いけれど、音楽の楽しさを十分に楽しめる。
ギリシャ国民楽派の確立に力を注いだ人物らしい、実にクラシック然とした大作。



Szabelski Gorecki Knapik
Boleslaw Szabelski; Concertino
Henryk Mikolaj Gorecki; Refrain
Eugeniusz Knapik; Islands

Zbigniew Raubo,P.  Adam Wagner,Vn.  Piotr Ruranski,Contrabass
The Silesian Philharmonic Symphony Orchestra  Miroslaw Jacek Blaszczyk,Cond.
2011 DUX  0865

なんか以前にもこの師弟孫弟子の三人コンビのCDがあったよね…
ボレスワフ・シャベルスキの、ピアノと管弦楽のための「コンチェルティーノ」は彼の作風ど真ん中。
バルトーク、ストラヴィンスキーの流れをくむ様な熱気のあるリズムさばきは鮮烈。
緩やかな部分のロマン派を少し引きずるような婉曲表現も含めてバツェヴィチに似た作曲家だとつくづく感じます。
第2楽章はびっくりするくらい壮大に幕を閉めたと思ったら、
第3楽章はヒンデミットの「画家マティス」よろしくグロテスクに動くタランテラ風味の音楽。
凄くカッコいい音楽でしびれますね。彼の音楽は刺激的。
グレツキ「リフレイン(反射)」の新録音とはなかなかやってくれますDUXレーベル。
何しろ、今までクレンツ指揮の1種類しかリリースされていませんでしたからね…
こちらはやっぱり録音が新しいだけあって動きがすごくわかりやすい。
両端のじわじわとのびるクラスター音響の発展がとても澄んで響くので、構造が把握しやすい。
クラスターに挟まれる金管楽器の小さな破裂音がスパイスになっていて緊張感を増す様子が手に取るようにわかる。
一瞬にも思える爆発部分は迫力はそこそこですが、やっぱりクリアに聴ける意義は大きい。
クナピク「島」はグレツキの前作に似た雰囲気ですが、こちらはずっと穏健的。
水を表すヴァイオリンソロと大地を示すコントラバスソロを伴いながら、
同じ雲のような流れでも内部構造はクラスターでなく旋律の積み重なりになっています。



Karel Ancerl Gold Edition 40
Jarmil Burghauser; Seven Reliefs for Large Orchestra
Vaclav Dobias; Symphony No.2

Czech Philharmonic Orchestra  Karel Ancerl,Cond.
2005 Supraphon  su 3700-2 011

スプラフォンが出してる、膨大なカレル・アンチェルの録音アーカイヴシリーズから。
ドボルザーク作品を研究し、目録にB番号を付けた業績が一番著名であろう
チェコの作曲家ヤルミル・ブルクハウザー(ブルグハウゼルとも、1921-97)は
主にロマン派でネオクラシカルな音楽が有名なようですが、ここに収録された
「大オーケストラのための7つのレリーフ」(1963)はセリエリスムに彼が感化されたころの作品となっています。
そのため、ハーモニック・セリエリスムなる技法を使って、無調ではないものの
和声の響きの変化だけを使った短い7楽章制のこの曲を作り上げたようです。
基本的に旋律的な展開は一切なし。和声や単純なリズムを付与しただけで、そのすべての楽想変化を作る。
ただまあ、前衛作品に慣れた耳で聴くと、ちょっと実験してるだけの普通に聴ける作品。
むしろ音響面だけで聴ける作品として、クラシカルな落ち着きをもって楽しめます。
ヴァーツラフ・ドビアーシュ(1909-78)はノヴァークらに師事したボヘミア出身の作曲家。
アロイス・ハーバに師事したあたりから四分音を使った作品を書いたりしているようですが、
「交響曲第2番」(1956-57)はそういったものを感じさせない、
彼の主な作風であるフォーク音楽に感化されたものを持つ近代的な作品。
ソナタ形式を使った、雄大で劇的な第1楽章は凄くボヘミアの作曲家らしい歌いまわしが凄くかっこいい。
スケルツォ形式の第2楽章はプレストで木管楽器が軽やかに走り回る。
第3楽章はトランペットの葬送みたいなファンファーレに始まり、ゆっくりと行進が過ぎていく。
終楽章はそのまま次第に盛り上がって壮大に幕を閉じます。
全体的に薄暗い感じではありますが、これだけの曲が埋もれているのはなかなか惜しいと思える、長いですが良い作品です。
演奏もちょっと線が細いですが、アンチェルとチェコフィルらしいのびやかな響きは心地よい。



Edwin London Vol.1  New and Histric Recordings
Edwin London; Peter Quince at the Clavier
Iannis Xenakis; Nuits
Valentin Silvestrov; Spectre for chamber orchestra
Mauricio Kagel; Anagrama

Paul Sperry,Tenor  Kiev Camerata Orchestra  Ineluctable Modality
  Champaign/Urbana Orchestra  Illinois Festival Chamber Orchestra  Edwin London,Cond.
2000 TNC Recordings  CD-1442

フィラデルフィア生まれ、ホルン奏者と同時にジャズバンドの経験もあり。
ガンサー・シュラーやミヨー、ダラピッコラの師事経験があるエドウィン・ロンドン(1929-)。
彼の指揮・作曲活動に焦点を当てたアルバムの1枚目のようです。
最初は自作自演、25分の力作です。Peter Quinceは有名な「真夏の夜の夢」に出てくる大工。
アメリカの詩人Wallace Stevensが彼を題材に作った詩をテキストにしています。
アメリカの作曲家らしく、曖昧な前衛さの中にはっきり調性を入れてロマンチックな空間を演出しています。
なかなか面白かったけれど、ほかの曲も聴いて自己評価を決めたいところ。
クセナキス「夜」は現代合唱曲の最高峰の一つですよね。
あのおどろおどろしいグリッサンドを声楽で表現してしまったこの作品、
ライヴ録音ですがかなり熱気があって激しく、かなり良好な演奏です。
シルヴェストロフの「スペクトル」は1965年の作品ですから結構初期の作品かな。
音楽も12音技法に支えられた、点描が強い曲。近年の淡さとは一味違う。
カーゲルの「アナグラマ」も1957-8年の作ですからかなり初期。
ラテン語のテキストを元に4つの言語で、演奏者の自由に言葉を分割されながら
アルファベットごとに決められた音程などをアブノーマルな歌い方で演奏する。
この時期からすでに諧謔的な要素ははっきりと盛り込まれていたようですね。
音楽の印象としては、完全に錯乱してます。おどろおどろしい。
演奏、予想以上に良いです。とくにライヴの2曲、クセナキスとカーゲルは掘り出し物だった。



Lutoslawski/Husa/Creston
Witold Lutoslawski; Fanfare for Louisville
Karel Husa; Apotheosis of the Earth, Monodrama(Portrait of an Artist)
Paul Creston; Invocation and Dance

University of Louisville Concert Choir
The Louisville Orchestra  Lawrence Leighton Smith/Karel Husa,Cond.
1991 The Louisville Orchestra  LCD005

ルイビル交響楽団の自主制作CD。First Edition Recordingsと名を打ったなかなかレアな録音揃い。
収録時間的には、ほとんどフサのアルバムみたいな感じではありますが。
ルトスワフスキの「ルイビルのためのファンファーレ」(1987)はこの楽団50周年を祝うために
この録音でも指揮しているローレンス・レイトン・スミスに依頼されたもの。
多分、というかこれ明らかにアドリブ書法を使ってるよな…と思わせるハチャメチャな冒頭。
後半ははっきりした動きになってスマートに終わる、不思議な1分ちょっとのファンファーレ。
フサ作品は全部自作自演。「この地球を神と崇める」、2年後に作られた管弦楽版の貴重な録音。
ただ、基本的なオーケストレーションは吹奏楽版と変わりません。
ちなみに、弦楽器だけでなく合唱まで加わっているという大編成ぶり。すげえ。
もやもやとした和声の部分を弦と合唱が結構引き受けてくれているので、両端楽章はなかなか良いムードのおどろおどろしさ。
第2楽章でも合唱がその勢いで呻いてくれちゃってるもんだから、なんかもうホラーかつ笑える。
吹奏楽版の感覚で聴くと、第2楽章の後半なんかはどう反応していいかわからなくなると思います。
演奏、想像以上に良かったです。凄いってほどでもないけれど、ツボはちゃんと押さえているので
良い感じに緊張感を持ったまま最後までそこそこ楽しんで聴けます。
ちょっと真面目と言うか変に端正と言うか、安全運転に終始している感じなのは否めないのですが、
希少な編成による音源なので、その意味ではこれだけの演奏なら一先ず満足。
管楽器が比較的弱い録音なのが残念と言えば残念かな…
クレストンの「祈りと踊り」もこの団体に委嘱されて53年に作られ、翌年初演された作品。
比較的短い、木管ソロ主体の静かで怪しげな音楽から次第にリズミカルになっていく。
ぶっちゃけ、ただでさえ短い祈りの部分は、さらにその半分くらいはすでに踊るような音楽になってます。
ただ、その後始まる踊りパートは本当にノリノリで楽しい12/8の音楽。
弦楽器が刻む上に管楽器が旋律を組み上げていく様を聴くに、吹奏楽編曲も安易にできちゃいそう。
演奏も雰囲気に合っていて良いし、内容も楽しい、この中で一番の掘り出し物。
フサ2曲目「モノドラマ(ある芸術家の肖像)」の指している人物は特定ではなく、一般化された対象としての芸術家。
芸術家としての葛藤を音楽構成に見立てている「オーケストラのためのバレエ」(これ副題です)。
さっきの冒頭みたいな序奏にその後の発展系な1曲目。大体はフサと聞いて思い浮かべる通りの楽曲展開。
如何にも決闘のような感じの間奏曲を過ぎて、「この地球を〜」と「プラハ〜」のあいのこみたいな2曲目。
最後はプラハの終楽章みたいなノリで激しい混沌の高まりで終わります。
うーん、音楽の方が何とも言えない出来だ…ファンじゃない限りは別に探す必要もなさそうな出来栄え。
ただ、演奏はさっきの「この地球を〜」より格段に良いので、そこが余計に何とも言えない気持ちにさせてくれる。



Khachaturian・Ippolitov-Ivanov
Aram Khachaturian; Gayaneh, Masquerade, Spartacus -suite
Mikhail Ippolitov-Ivanov; Caucasian Sketches Op.10

Yuri Boghosian,Vn.  Armen Mesrobian,Vc.
Armenian Philharmonic Orchestra  Loris Tjeknavorian,Cond.
1991 ASV  CD DCA 773

ハチャトゥリヤンの有名バレエ組曲3連単+イッポリトフ=イワーノフ。
「ガイーヌ」、単体でも名曲とされるナンバーが多いですが、
チェクナヴォリアンらしい勢い満点のエネルギッシュな演奏で大満足です。
ただ剣の舞は文句のない出来なんですが、レズギンカの方は勢いが良すぎて初めて聴く人間に
勧められるかは怪しいなあ・・・いや、これくらい迫力ある方が好みなんですけどね。
「マスカレード」、こちらはワルツやらマズルカやらで落ち着いた音楽内容が主体ですが、
こちらも十分に音楽の流れをくみつつ民族的な力強さを出してくれるから良い。
もちろん最後のギャロップはノリノリで最高です。
「スパルタクス」も実に軽快な音楽を披露してくれていて素晴らしい。
いやはや、彼の指揮はテルテリャーンの交響曲でちょっと肩すかしを食らっていたので
ちょっと不安要素もあったんですが、これは間違いなく名演と言っていいでしょう。
こういうのやらせたら彼の演奏は輝くんですねえ。
カップリングにイッポリトフ=イワーノフ「コーカサスの風景」。
これまでとは変わってのどかな光景にシフト。これもこれで悪くないです。
第4楽章のノリの良さは相変わらず。



Iannis Xenakis; Dammerschein, Persephassa, La Deesse Athena
Edgard Varese; Ameriques

Philip Larson,Bar.  Timothy Adams,Perc.
Carnegie Mellon Philharmonic  Juan Pablo Izquierdo,Cond.
1997 mode  58

クセナキスとヴァレーズを集めた、それも曲目がなかなかいかれている一枚。
「デーメルシャイン」と「アテネの女神」は、いまだにこれが唯一の録音のはず。さすがmode。
「デーメルシャイン」、クラスター音響がどろどろと楽器群ごとにばらまかれていく。
異常なまでに他の存在を寄せ付けない、空恐ろしいまでの混沌とした音の塊は、
94年という彼最晩年の音楽の凄みをこれでもかと見せつけてくれる。
「ペルセファッサ」は打楽器アンサンブルのための代表作。
いろいろ録音があるけれど、これはなかなか落ち着いて演奏している。
熱気はないけれど、音に芯はあってこの(実際にはかなり理論的な)音楽をさらっと聴きやすくしている。
ただやっぱり、ストラスブールなんかの演奏と比較すると弱いのも事実。
「アテネの女神」も晩年、1992年の作品。エウメニデスの著作からテキストを用いて…
というか、彼唯一のオペラ「オレステイア」第3部の挿入曲。
激しく入れ替わるバリトンの低音-ファルセットや、木管のキチガイじみた叫び、鮮烈な打楽器。
たとえば「ナ・シマ」のような音楽と比較すると、晩年の音楽が持つ狂気がとてもよくわかってしまう。
ただ、演奏はかなりいい線言っているのだけれど、もっとはじけてもいいんじゃないの、とも感じてしまうかな。
ヴァレーズの「アメリカ」は彼の(この作風の)処女作にして一番の大曲。
このとても1920年代の作品とは思えないような空間を作り出す一品はシャイーの全集なんかが有名ですが、
ここでの演奏は、それと比較しても遜色ないかなりいい出来。
音の動きの細部がはっきりと把握でき、しかも理知的に過ぎない聴いていて高揚できるもの。
ダイナミクスはそこまで大きくはないですが、この曲の理想的な音源の一つ。
あとはラストがもっと派手に行ければ文句なしだったんですが・・・
クセナキスとヴァレーズの音楽的な関係と、実際の彼らの関係の理解にも役立つ一枚。



Paradisi Gloria 21
Oriol Cruixent; Abismes -Diptych for Orchestra
Gerd Kuhr; Introductio - Meditatio - Magnificat - Epilogus
Joanna Wozny; Archipel
Johanna Doderer; Salve Regina

Chor des Bayerischen Rundfunks  Munchner Rundfunkorchester  Ulf Schiemer,Con.
2010 BR Klassik  900302

ミュンヘン放送交響楽団による、若手作曲家の宗教的テーマによる作品集。
Oriol Cruixent(1976-)はバルセロナ出身の作曲家。
混沌とした音の渦と特徴的な旋律断片、そこから次第に勢いのある音楽が進みだす。
シンフォニックに、直管楽器の活躍する音楽は、けれどどこかその手の吹奏楽にも通じる聴きやすさ。
ただ、チープさはあまりなく純粋にクラシカルな響きを楽しめる。
祈りのような音楽に合唱が淡々と語りを入れ、そこからグレゴリオ聖歌がユニゾンで盛り上がる。
最後はチベタンベルで淡く締める。なかなか面白かった。
Gerd Kuhr(1952-)はオーストリアの小村出身、ヘンツェに師事。
ここではリルケとリヒテンベルグのテキストを用いてなかなか前衛的な曲を書いています。
同音やごく狭い範囲の音程での展開に固執しているあたりが緊張感を生む。
Joanna Wozny(1973-)はポーランド生まれの女性作曲家。
弦楽器の繊細なグリッサンドの帯から、次第にもつれがほどけていくような感覚の音楽。
17分ある大編成の曲ですが、遠い地平線を眺めるような淡い作品です。
Johanna Doderer(1969-)はオーストリア出身、ウィーン在住。
音楽、オルガンまで動員した実に壮大な出だし。思いっきりD-minor。
随所に現代音楽の破片はくっついていますが、基本はバロック以前の旋律を基にした宗教カンタータ。
実に聴きやすく美しい。そしてそこに淡く不協和な影。
凄くドラマティックでカッコいい感じ。これはなかなか個人的な好みに大ヒットです。



山口恭子/一ノ瀬トニカ/猿谷紀郎:作品集
Yasuko Yamaguchi; Das Stehaufmannchen ist umgefallen
Tonika Ichinose; Burying all that was beautiful with a heap of petals
Toshiro Saruya; Anamnesis

Ayako Takagi,Fl.  Orchestra Ensemble Kanazawa  Hiroyuki Iwaki,Cond.
2004 Werner Music Japan  WPCS-11723

岩城宏之とオーケストラ・アンサンブル金沢のライヴ録音シリーズ。
山口恭子(1969-)は間宮芳夫やトロヤーンに師事した長崎出身の作曲家。
「だるまさんがころんだ」では、「遅いテンポを持つ速い曲」をテーマに、
子供遊びの持つ一瞬の激しい動作と静止の繰り返しに結び付けて展開される短い作品。
初演場所の長い残響を活かした、パルス的な激しい動きと
弦楽器に代表される、繊細で緊張の伸びる静止したような楽器のさざなみが交互に細かく現れる。
こういう高いテンションに満ちている曲は好きです。
一ノ瀬トニカ(1970-)は山口と同じく東京芸大出身。
この立原道造の文を囲繞した「美しかったすべてを花びらに埋めつくして・・・」は彼女の代表作の一つです。
淡く立ち上るような弦楽器の特殊奏法の風から、フルートがひらりと舞い降りる。
やがてその中からリズムが現れては盛り上がり、消え去っていき、荒ぶり、
最後には淡くも非常に華やかで美しい音楽が完成して、フルートソロのフェードアウトに消えていく。
現代音楽的な前衛要素もはっきり持ちつつキャッチーな聴きやすさと綺麗さを兼ね備えた、とても面白い作品でした。
現代吹奏楽の作曲家がもっと前衛要素を使いこなせるようになったらこんな曲を書くんでしょうねえ。
猿谷紀郎(1960-)はこの中で一番有名でしょう。海外を含め精力的に活動しています。
「碧い知嗾」は雑踏のような喧噪を示唆するような散漫な動きに始まり、
それが集まってはまた間から零れ落ちていくような、抽象的な観念が非常に強い作品。
現代音楽として正統な作り方を汲んだ密度の濃い作品です。
ただ、このCDだとそれが逆に浮いている感じがして何とも。



Otto Klemperer; Merry Waltz
R. Vaughan Williams; Fantasia on a Theme by Thomas Tallis
Maurice Ravel; Rapsodie Espagnole
Johaness Brahms; Symphony No.4 in E minor Op.98

New Philharmonia Orchestra  Leopold Stokowski,Cond.

実はストコフスキー、ドアティのあの曲は聴いてるくせに本人の指揮はあんまり聴いたことがなかった。
指揮者として有名なクレンペラーの「メリー・ワルツ」、実に素朴で甘い、普通の短いウインナワルツ。
映える曲ですが、ちょっと響きに不思議な感じが。クレンペラーは近代の和声が好みらしい。
RVWの「トーマス・タリスの主題による幻想曲」、彼の甘い作風が存分に味わえる名曲。
こういうのだとニューフィルハーモニア管弦楽団の響きはいいね。
ラヴェルの「スペイン狂詩曲」、細かく浮かんでは消える抑揚がこの淡く美しい印象派音楽に重なって非常に美しい。
なるほど、周囲の評価内容とは全くの見当違いかもしれないけれど、
たしかに素晴らしいと思えるには十分な音楽を引き出せている。
決して派手ではありません。でもそのかわり、慎重に盛り上がりを押さえてカタルシスを完全に自分のものにしている。
彼の音楽の味付けが非常にメリハリ効いたものであることが魅力なんでしょう。
あとはもうちょっとトランペットが余裕を持っていてくれれば本当にすばらしかったんだけれど。
ブラームスの「交響曲第4番」も同じ印象。録音か演奏由来かはわからない
楽器間の極端なバランスは場合によってはあまり好きではないけれども、この盛り上げ方の巧さには脱帽もの。
74年の録音なので状態はかなりいい方。でもAADだが。



ポール・パレーの芸術Vol.4 20世紀フランス作品集
Paul Paray; Mass for 500th Anniversary of the Death of Joan of Arc
Florent Schmitt; La tragedie de Salome Op.50
Jacques Ibert; Escales
Henry Barrard; Offande a une ombre
Albert Roussel; Suite in F Op.33, Le Festin de l'araignee Op.17

Detroit Symphony Orchestra  Paul Paray,Cond.  etc.
2009 mercury/Tower Records  PROA-293/4

米マーキュリーが保管していたパレーの音源をタワレコが廉価再発した2枚組。
「ミサ曲「ジャンヌ・ダルク没後500年を記念して」」は彼の代表作であり、彼の作風をよく表しているもの。
解説にもあるように、フォーレなどの19世紀の感覚を素直に受け継いだ、実に美しい曲。
Reference Recordingsでのジェームズ・ポールと比べても録音が良いし、それ以前に自作自演。
収録後の自身による賛辞も納得出来る、実に素晴らしい演奏です。
フローラン・シュミットのバレエ「サロメの悲劇」は彼の少ない代表作。
ラヴェルの親友であることが納得出来る印象主義的な和声と
ロマン派らしい進行が同時に味わえる、落ち着いた美しさのある曲。
イベール「寄港地」はやはり初演者だけあって見事なさばきぶり。
デュトワみたいな繊細さは薄いですが、このリズミカルな躍動感は素晴らしい。
アンリ・バロー(1900-97)はこの中でちょっと知名度がワンランク下かな。
「ある影への捧げ物」はそんな彼の中では有名な作品。
木管の低い音によるソロで導かれる、どこか暗い影の美しさが漂う曲。
また、戦死した作曲家Maurice Jaubert追悼の意を込めた影でもあります。
ルーセル「組曲 ヘ長調」、題名からして新古典主義であることが伺えるくらいの曲。
「バレエ組曲「くもの饗宴」」も情景的ですが基本は同じ。
こういう曲調は個人的にそこまで好みじゃないんですが、組曲の終曲は気に入った。
パレーの指揮は、こうやって録音が近いマーキュリーの録音で聞くと凄いエネルギッシュさが伝わってくる。



Johan de Meij; Symphony No.2'The Big Apple'
John Adams; Slonimsky's Earbox

North Netherlands Symphony Orchrestra  Jurjen Hempel,Cond.
2003 Q Disc  Q 97035

ヨハン・デ=メイの「交響曲第2番「ビッグ・アップル」」はオリジナルが吹奏楽。
この演奏団体の委嘱によってデ=メイ本人による編曲が行われました。
が、聴いてわかるとおり、編成に思いっきりサックスが入ってます。
弦楽は完全に響きの厚みを添える役割で、美味しいところはだいたい管楽器がそのまま吹いてる。
おいおい、ヒナステラの「エスタンシア」とかじゃあるまいし、弦はそんな扱いで良いんか。
まあ結果が良くも悪くも、吹奏楽作品オリジナルを管弦楽配置にするとこんなもんなんでしょう。
(別人による)交響曲1番の管弦楽配置はなかなか良かったんですが・・・
演奏の方はさすが委嘱団体、そして吹奏楽隆盛なオランダなだけあって管楽器バリバリで爽快。
ちょっと技術の方は微妙な点もなくはないですが、とりあえず
聴いていてとくに音楽の高揚感を裏切られるような不満はありません。
というか、自分の持ってた吹奏楽版だと第3楽章が冗長に過ぎてきつかったんですが、
この演奏だと鋭いサウンドで攻めてくるので結構さっと聴けます。
後半はジョン・アダムス「スロニムスキーのイヤーボックス」。
この曲のきらきらと動く要素が最大限に聴ける、という意味では素晴らしい。
ただ、デ=メイでもあった、良くも悪くも大雑把な印象は否めない。
でもやっぱり、ピューリッツァー賞獲得のこの曲はこれくらい気楽に聴いてノれる方がいいと思う。
この団体の演奏の魅力を知る意味でも、この録音は聴くべきと言えるでしょう。



East German Revolution -Contemporary East German Composers/A Portrait in Music
Georg Katzer; Sonata No.2 for Orchestra
Jorg Herchet; Composition 1 for Organ
Friedrich Goldmann; Three Pieces for Mixed Choir
Reinhard Wolschina; Pezzo capriccioso pur trio
Lothar Voigtlander; Structures and Turbulences on D-B for Piano

Hans-Jurgen Scholze,Org.  Brahms-Trio Weimar  Dieter Brauer,P.
Leipzig Radio Symphony Orchestra  Adolf Fritz Guhl,Cond.
Leipzig Radio Choir  Jorg Peter Weigle,Cond.
1990 PILZ  44 2078-2

「旧東ドイツの作曲家たち/音楽の肖像」と題し、代表的な作曲家のさまざまなジャンルの作品を収録。
解説の内容を鑑みるに、ライプツィヒのラジオ音源から抜粋してCD化したもののようです。
ゲオルグ・カッツァー(1935-)はハンス・アイスラー最後の弟子。
「管弦楽のためのソナタ第2番」はその流れを正当に汲んだ、かっちりした構成の中から
前衛的で非常に暴力的な音の嵐、まどろむ様な遅滞と諧謔的な調子、
それら音楽の振れ幅が実に広い、聴きごたえのある音楽が展開します。
ドレスデン出身、デッサウらに師事してヤーコプ・ウルマンらを弟子に持つ
ヨルク・ヘルヘット(1943-)の「オルガンのためのコンポジション1」は比較的初期の作品か。
音色や音響をねちねちと積み上げて次第に音楽を肥大化、最終的にクラスターまで発展し、
また冒頭へと収束していく音楽はなかなかかっこいい。
指揮者としても活躍し、シュトックハウゼンやデッサウとの交流も深かった
フリードリッヒ・ゴールドマン(1941-2009)、「混成合唱のための3つの小品」。
第1曲で「時報」の名の通り、メカニカルでパルス的な音楽なのが面白い。
かと思いきや第3曲「扇動」は結構前衛的に緊張感あふれる破裂するような流れだったり。
レインハルト・ヴォルシナ(1952-)はワイマールの作曲家。
「三重奏のためのカプリッチョ風小品」はピアノのややリズミカルな出だしから
時に美しくノーブルに、ある時はクレズマー風の音楽を出して、
どこか気楽に流れていくような音楽をはっきりしたクラシックの型にはめて作り出す。
ロタール・フォレクトレンダー(1943-)は電子音響などもその作品に積極的に使うようですが、
この「ニ〜ロ調の構造と乱れ」はピアノソロ。題名らしく、不安定に暴れてはゆらめくちょっとミニマルな小品集。
やっぱりこうして聴くと面白い作品ばかり。ちょっと音源の質は微妙なものもあるけれど、
こうしてマイナーになってしまっている作品が聴ける価値は大きい。



Amy Marcy Beach; Piano Concerto in C sharp minor Op.45
Daniel Gregory Mason; Prelude & Fugue for Piano & Orchestra Op.20, String Quartet in G minor Op.19

Mary Louise Boehm,P.  Westphalian Symphony Orchestra  
Siegfried Landau,Con.  The Kohon Quartet
1996 Carlton Classics  30371 00282

エイミー・ビーチ(1867-1944)はアメリカの女性作曲家としては初めて成功した人物。
ピアニストとしても、当時ヨーロッパなど幅広く活躍していました。
「ピアノ協奏曲 嬰ハ短調」は1899年頃に書かれた、彼女の(比較的)代表作の一つ。
ものすごくロマン派。後期とかじゃなく、ブラームスやショパンみたいな勢いのロマン派。
ピアノが切なげな旋律を揺すり、弦楽がそれを盛り上げる。
ただ、フランス的な(あるいは女性的な)柔らかさも持っていて、そこが「フランクやツェムリンスキーに」近い。
和声もちょっとだけブラームスあたりよりは手が込んでいる感じ、「ワーグナー風」。
まあ作風は完全に自分の好みな範疇ではないので何とも言えん。
ダニエル・グレゴリー・メイソン(1873-1953)はペイン(John Paine)やチャドウィックの後ダンディに師事したアメリカ人。
「ピアノと管弦楽のための前奏曲とフーガ」、重々しい序奏の後にピアノで前奏曲の主題。
その後もずっしりした基部の上で旋律が呼応していく。
ああ、ドイツで学んだ初期アメリカ人の音楽だな、とうなずける内容。
「弦楽四重奏曲ト短調」は「黒人の主題による」という副題が添えられています。
一応ドビュッシー風な和声を聴かせてくれることもあるらしいこの作曲家ですが、ここでは完全にドボルザーク寄り。
黒人霊歌から取った旋律が軽快に踊り、感情豊かに歌い上げる。
こちらの方の曲も、幾分は和声が近代的ですがまだまだブラームス。
くそっ、全然俺の趣味にはまんなかったぞ畜生。
まあロマン派好きなら聴く価値あり。自分は「弦楽四重奏曲」辺りまでだな。
演奏、きいたことない人たちですが、水準はまあまあ。特に弦楽四重奏は悪くはないです。
それより録音の微妙さの方が・・・



Rumanian Anthology
Stefan Niculescu; Ison II
Anatol Vieru; Clarinet Concerto
Myriam Marbe; String Quartet No.1'Les Musiques Compatibles'
Pascal Bentoiu; Sinfonia V Op.26
Tiberiu Olah; Sinfonia III 'Metamorphoses sur la Sonate a la Lune'
Octavian Nemescu; Combinations in Cercles
Nicolae Brindus; Vagues
Cornel Taranu; Garlands
Doina Rotaru; Troite for Clarinet, piano and percussion
Calin Ioachimescu; Celliphonia for Cello & Tape
Adrian Iorgulescu; String Quartet No.2
Liviu Danceanu; Glass Music Op.20
Mihai Moldovan; Origins

National Radio Orchestra, Bucharest  etc.
Attacca Babel  9264-3~5

ルーマニアの現代作曲家の作品ばかりを集めたというとんでもない3枚組CD。
一応現代ルーマニアを代表する方ばかりではありますが、あまりにもマイナーすぎる。
シュテファン・ニクレスク(1927-2008)はブカレスト音楽院出身、ダルムシュタット夏期講習に出た経験もある人物。
「Ison II」(1975)はフルート、トランペット、ホルン、トロンボーン、打楽器それぞれ4人づつのための音楽。
フルートのさえずるような旋律が次第に広がっていき、金管の重いドローンが静かに添えられる。
静かに金管同士の淡いコラールが絶妙に重なっていき、金属打楽器がほのかにきらめく。
そのまま次第に打楽器のリズムが主張してきて、楽器群の静止したような持続音にアクセントが添えられる。
打楽器の荒々しさと管楽器のドローン状な淡い色彩が対比しながら絡む、抽象的な美しさの曲。これ好きです。
アナトール・ヴィエル(1926-98)はハチャトゥリアンらに師事した、DAADのコンポーザー・イン・レジデンツ参加経験もある作曲家。
「クラリネット協奏曲」(1975)はクラリネットの不正発音で騒々しく開始、怪しい音楽から次第にリズム要素も
現れながら不気味に展開していく。トリルを多用したソロはどこかジャジーな場面も。
2台のエレキギターの爪弾きもグロテスクに現れる、思い切り前衛的な曲。
ピアニストとしても活躍した女性作曲家ミリアム・マルベ(1931-97)はブカレスト音楽院で長く教鞭をとっていました。
「弦楽四重奏曲第1番」(1981)はアイヴズ、エネスコ、バルトークの音楽断片も盛りこんだ、
長年対位法を教えている彼女らしい技巧的な曲。多分に前衛的な夜想曲の雰囲気。
パスカル・ベントイウ(1927-)はルーマニアの教育者として指導的な立場の人物。エネスコの交響曲校訂もしています。
オーボエ群による長い長い素朴な旋律が非常にゆっくりと展開し、木管群を主体にひたすら対旋律を増やしていく。
(民族音楽を研究していた彼らしい)旋律の、その草原のような広大さと美しさを保ちながらも次第に音楽はカオティックな様相を見せ始め、
さまざまに分岐した旋律が幾重にも折り重なって際限なく盛り上がったその頂点でオルガンを伴った壮大なコラールが鳴り響く。
まさにはっとするような、壮大で感動的な盛り上がり。が、次第にそこからまたあのゆらぐような旋律が分岐してきて、
オルガンも交えながらやや前衛的に激しく絡みあう。最後はいきなり収束して終わり。でもいい曲です。
なお、これはOlympiaから出ていた音源とおそらく同一の様子。一瞬(別録音か!?)とびびってました。
ただ確認したくてもOlympiaのCDは実家に送っちゃったんだよね・・・

CD2。ティベリウ・オラフ(1928-2002)は代表的なルーマニア映画音楽の作曲家であり、前衛音楽でも活躍した人物。
この人もさりげなくベルリンのDAADに参加してます。
「交響曲第3番」、前衛的な音の霞からふわりとベートーヴェンな旋律が顔をのぞかせる。そう、副題を見れば明らかな通り、
「月光ソナタによる変容」です。前衛的な点描構造と持続音の中でいきなり飛び出てくる調性的な断片が印象的。
オクタヴィアン・ネメスク(1940-)、他の方にも多い経歴ですがMihail Joraに師事しています。
水のせせらぎや息遣いの聴こえる冒頭、打楽器の金属ノイズと一体になって響いてくるチェロ独奏。
トロンボーンも入ってきて、前衛的でノイジーではありますが、緊張感があってなかなかドラマティック。
よく見たらIancu Dumitorescuが一枚噛んでました。うん、納得。凄く彼の電子音楽作品みたい。
Nicolae Brindus(1935-)もダルムシュタット夏期講習に参加したことがあるらしい。ブカレスト音楽院出身。
「Vagues」(1972)、特殊奏法による亡霊のような音が吹きすさぶ。バスクラやギターなどの音が点描的に淡くばらまかれる、
冒頭などは実にラッヘンマンを連想させる音楽です。中間は点描的なままかなり暴力的に変貌する。
コルネル・ツァラヌ(1934-)はダルムシュタットでリゲティに学びArs Novaアンサンブル設立者の一人と輝かしい経歴を持ちます。
「Guirlandes(Garlands)」(1979)、ヴァイオリンの亡霊から嘆くような動きの各楽器が動きまわる、Mihai Moldovanへ献呈の曲。
前半は非常に前衛的ですが、後ろになるにつれて反復やモノフォニックな動きも多くなる。最後の反復音型の美しさは印象的。

ドイナ・ロタル(1951-)はティベリウ・オラフに師事した女性作曲家。
「Troite」(1990)は題通りトリオですが、奏者はかなり多くの楽器をかけ持ちします。オカリナ的な響きの混迷する冒頭から
錯乱するパッセージ、打楽器やピアノクラスターの爆発にシンセ不協和音とソプラノサックスのノイジーなソロ。
死の前に感じるである3つの感情表現を行ったという、とにかく音響的に派手でせわしない曲。
最後、「諦念」のパートはヴォイスも入りながら静かに展開する、綺麗で始原的な音楽です。面白いです。
カリン・イオアチメスク(ヨアヒメスク?、1949-)はシュテファン・ニクレスクの弟子。
チェロ独奏とテープのための「Celliphonia」(1988)、コンピューターで加工した録音チェロをライヴ演奏にさりげなくからませた作品ですが、
残念ながら趣旨がよくわからんかった。まあこの微妙な差異のある音響はそれなりに楽しめたけれど。
アドリアン・イオルグレスク(1951-)もティベリウ・オラフへの師事経験あり。
この人政治活動も盛んでルーマニアの文化大臣とかやっちゃってます。
「弦楽四重奏曲第2番」(1983)、和音が淡く伸びる中からメランコリックな旋律断片が性急な勢いで現れてくる。
彼なりにミニマルを意識したそうで、民族的なモチーフ反復が終始音楽を支配する。
特に不協和な要素も多くないので、メランコリックな美しい音楽として普通に聞けます。
なんというか、エルッキ=スヴェン・トゥールとか北欧のポストモダンな作曲家好きならかなりストライクな感じ。
リヴィウ・ダンチェアヌ(1954-)もシュテファン・ニクレスクの生徒。
「グラス・ミュージック」(1985)は5人の奏者がグラスをいろいろと操って音を出す、実験音響作家みたいな作品。
3つのグラスは予め音程を決めて弓で弾き、3つ以上のグラスを吊るしてはスティックで叩き、
ガラスのボトルに息を吹き込み、ガラス破片によるウインドチャイムを鳴らし、ガラス破片を入れたボトルをシェイクする。
音楽は普通に点描的な現代音楽のそれですが、音響がとにかくこの中では異色。
ミハイ・モルドヴァン(1937-81)はSigismund TodutaとMihai Joraに師事した早逝の作曲家。
「Origins」は合唱のための作品。叫び、混沌とした動き、切迫した行進。異常なまでの緊張感。
見事に前衛的な合唱作品ですが、その根底にははっきりとトランシルヴァニアの民族性が隠れている。

いやあ、4時間収録はボリュームがあった。どれもなかなか面白い作品ばかりです。
北欧の作曲家なんかは近年日本にも多く紹介されてきていますから、ここらのほとんど日本に紹介されていない
作曲家の音楽ももっと音源が発売されて接触する機会が増えて欲しいものですね。
まあ、かなり難しいでしょうが。



Joaquin Rodrigo; Concierto de Aranjuez, Fantasia para un gentilhombre
Heitor Villa-Lobos; Concerto for Guitar and Orchestra 'Copacabana'

Regino Saintz de la Maza/Julian Bream,Gui.
Orquesta Manuel de Falla  Cristobal Halffter,Cond.
London Symphony Orchestra  Andre Previn,Cond.
2007 BMG/Tower Records  TWCL 4022

タワレコ廉価再発シリーズNo.21。ロドリーゴとヴィラ=ロボスのカップリング。
「アランフェス協奏曲」はクラシックに疎い人でも第2楽章は聴けば知ってるレベルの名曲。
でも第1、3楽章の快活な踊りの方が個人的には好きなんだよね。
第1楽章のいかにもスペイン情緒が云々と言いたくなる旋律なんか。
第3楽章のちょっと抜けてるけれど格式高さも同時にある3拍子も楽しい。
そして、第2楽章などを聴いていると、デ・ラ・マーサのギターのスペイン臭が実に素晴らしい。
さすがはこの曲を献呈され初演しただけのことはある。
ちょっと洗練さとは距離があるものの、その歌いまわしの妙には否応なしに引き込まれる。
指揮者もスペイン情緒豊かな曲を書く作曲家、クリストバル・アルフテルと正にベストマッチ。
「ある貴紳のための幻想曲」はセゴビアのために書かれた曲ですが、こちらも自分は大好き。
第1楽章、ビリャーノとリチェルカーレの流麗な対比。
第2楽章のエスパニョレータだ良い。レスピーギ編「古風な〜」の「シチリアーナ」みたいだ。
ファンファーレの小気味良い不協和音リズムも好きだけれど。
第3・4楽章と性格の違う快活さも楽しい。演奏もやっぱり上記に同じで大満足。
ヴィラ=ロボスの「ギター協奏曲「コパカバーナ協奏曲」」は1951年作。
性格の違う主題が豊かにからみ合う第1楽章、色彩豊かなカデンツァありの憂える第2楽章、
様々な主題が奔流のように入れ替わる、美しくも勢いある第3楽章。
※思いっきりコパカバーナしてる訳ではありません。普通にヴィラ=ロボス流の音楽です。
演奏はブリーム&プレヴィンと一気に洗練されましたが、その分技術は申し分なし。



Elzbieta Chojnacka Klawesyn
Henryk Mikolaj Gorecki; Concerto for Harpsichord and String Orchestra Op.40
Zygmunt Krauze; Commencement for Solo Harpsichord, Pour El for solo Harpsichord
Pawel Szymanski; Through the lookingglass ...III for solo Harpsichord
Andrzej Kurylewicz; Impromptu with Rosemary for solo Harpsichord Op.50
Jerzy Kornowicz; The Shapes of the Elements for Harpsichord and Tape
Krzysztof Knittel; Histoire III for Harpsichord and Tape
Pawel Mykietyn; Klave foe Harpsichord and Chamber Orchestra

Elzbieta Chojnacka,Harpsichord  National Polish Radio Symphony Orchestra  Kazimierz Kord,Cond.
Chamber Orchestra of the City of Tychy  Marek Mos,Cond.
2009 Polskie Radio / Polskie Nagrania  PRCD 1047 / PNCD 1271

現代のチェンバリストといったらこの人、エリザベト・ホイナツカのために書かれたポーランド人作品集。
グレツキの協奏曲、重々しい弦とさらに重々しいホイナツカのハープシコードが素晴らしい。さすがは初演者&被献呈者。
彼女の演奏で聴くと、この曲のソロパートがいかに音が混み合っているのかよくわかる。
つまり、一番メジャーなNonesuch盤のような聴きやすさはあまりなく、ごつごつとした音塊が容赦なく叩きつけられる。
この時期の彼の作品に顕著な混み合った和声がありのままに振舞っている姿を聴ける、
そういった意味でも実に貴重です。ただ、最初に聴かないほうがいい気もするなあ。
ジグムント・クラウゼ(1938-)はシコルスキーやナディア・ブーランジェに師事しIRCAMとも関わりのある人物。
「開始」はバロックな美しさを放つ音楽の断片が浮かぶ、残響の心地良い独奏曲。
パヴェル・シマンスキ(1954-)はバイルドやラマティに学びダルムシュタット夏期講習に出たこともある作曲家。
「鏡を通して…III」もやはりバロックの輝きが強い作品ですが、クラウゼ作品の印象がガラスに浮かぶ
不定形な像だとしたら、シマンスキのそれは弾けたガラスの反射する光の断片。
アンジェイ・クリレヴィチ(1932-2007)の「即興曲とローズマリー」は時にロマンティク、
ある時はロックにと様々に楽想が入れ替わりながら激しく進む。ずいぶんと視点がクラシカルらしくないのは当然、
彼は現代音楽作曲家としてよりはポーリッシュ・ジャズのピアニストとしての活動が有名な御仁でした。
っていうか、ポーランドジャズ界の代表格の一人らしいですね。
バイルドやMarian Borkowskiに学んだイェジ・コルノヴィチ(1959-)による
ハープシコードとテープのための「元素の形状」は「Sounds of Nature」の副題が示すように、
軽音楽のリズムで軽やかに飛び回るハープシコードの狭間を生物の鳴き声が飛び交う、
確かに「バイオロジカル」な世界。その勢いが実に楽しい。
クラウゼ2つめ「Pour El(エルのために)」は4つの部分が絶え間なく続くアルペジオ音型が印象的な音楽。
クシシュトフ・クニッテル(1947-)はこの中でもメジャーな方でしょう。
シリアスな電子音楽も多く製作した彼らしく「歴史 III」はハープシコードとテープのための作品。
メランコリックな美しい序奏から電子音のロックバンドに乗せてなかなかイカれた世界へ様変わり。
ジャズともヒップホップともつかぬ音楽展開はなかなかショッキングです。楽しいけれど。
パウェル・ミキェティン?(1971-)はKotonskiの下で学んだ若手作曲家。
「チェンバロと室内管弦楽のための協奏曲」?はパルス音響が飛び交う中に
古典的なクラシックの幻影が見え隠れする、ポストモダンな前衛作品らしい展開。
演奏はとりたてて文句なし。音楽も、ちょっと傾向が偏っている感じはありますが良かった。



Conciertos para Arpa y Orquesta
Alberto Ginastera; Harp Concerto
Xavier Montsalvatge; Concierto-Capriccio

Maria Rosa Calvo-Manzano,Hp.  Orquesta Sinfonica Mediterranea  Matias Gonsalves,Cond.
Arlu Records

やられた・・・!なんだこのとんでもなく悪い録音は!
明らかにオリジナルがアナログ。それも50年代レベルの。
それを一応は処理しましたみたいなマスタリングをしただけのシロモノ。
楽章分けされていないところを見ても、LPのそのまま盤起こし臭がぷんぷん。
頼むからジャケにアナログなことを示しててくれよ・・・よく考えたら録音年すら書いてないし。
演奏者だけで判断しろってか?これだからブートみたいなレーベルは・・・
・・・とひと通り毒を吐ききったので以下普通に内容について。
ヒナステラの協奏曲はこの手の名曲。荒々しさと美しさの同居するこの不思議さも含めて魅力。
演奏、ちょっとゆったりめ。のんびりと音楽を美しく聴かせます。なので第2楽章とかはなんかしっくりきていい感じ。
でも第3楽章の冒頭カデンツァの部分はいい感じに荒々しかったりするのでこれはいいぞと思ってたら
オケが入ってからは一気に評価ガタ落ち。全然力が入ってねえ・・・まあよくまとまってはいますが。
テンポもやっぱり遅いし。音自体に勢いはあるのに、なんかこう盛り上がりがいまいち。
モンサルバーチェの「コンチェルト・カプリッチョ」は初めて聴く曲。
第1楽章の破茶滅茶な音楽展開は聞いてて楽しい。でもそれでいてソロのターンは
美しい音楽な場面もあったりしてなかなかいい曲ですね。
第2楽章の夢見るような動きはたまりません。第3楽章のロンドもここまでの流れを踏まえて、
威勢よい古典的なロンドに南アメリカなノリが入ったり、前衛的なパッセージも入ったりと面白い。
うん、これはきちんとした音源を探してまた聴く必要があるな。この音源はまあ・・・アレだし。



Music from Tajikistan・Georgia・Azerbaijan・Armenia
Giya Kancheli; ...a la Duduki
Benjamin Yusupov; Nola -Concerto for various Flutes and String Orchestra
Fikret Amirow; Gulistan Bayaty Shiraz -Symphonic Mugam
Awet Terteryan; Symphony No.3

Matthias Ziegler,Soloist(Flute)  Arayik Bakhtikyan/Vazgen Makaryan,Dubuk and Zurna
Dresdner Sinfoniker  Michael Helmrath,Cond.
2001 Arte Nova  74321 82556 2

東欧諸国の作曲家を集めた、個人的にかなり良いチョイスの2枚組。
ギヤ・カンチェリ(1935-)はECMでも相当なリリースをされているお陰で、国外での知名度が随一のグルジア作曲家でしょう。
「...a la Duduki」のDudukiとは、オーボエに似た形状の民族楽器のこと。
むせび泣くような叫びが美しく思い切り爆発し、非常に切なげな旋律がトランペットの慟哭にかき消される。
重く儚く、そして美しくも力に満ちた音楽はまさにカンチェリの音楽。
ただ、彼の交響曲なんかに比べると音楽の流れは一定の時間軸に沿って滑らかに進んでいる。
そのため、相変わらずの極端なダイナミクスではあるものの、音楽の表情にそのまま素直に浸っていられる。
お陰で、彼の作品の中では一番気に入りました。何しろ彼の作品はドローン聴く時みたいな
恍惚状態で聴いていると心臓に悪いことが非常に多いからね・・・
ベンヤミン・ユスポフ(1962-)はタジキスタン出身、モスクワで音楽を学んだ作曲家。
「Nola」は弦楽オーケストラと様々なフルート属楽器のための2楽章制協奏曲。
低い低いコントラバスフルートのうねりは、まるで異世界的な深い森の中から響いてくるような感じ。
民族的な男声のうなり、弦楽器の微かなわななき。
特殊奏法(か民族楽器)のソロが実にエスニックな音階に基づいた揺れる旋律を奏でる。
物悲しく、空虚でありながらも美しい第1楽章は、後半次第に民族舞踏に変化して不協和の渦の中で瓦解する。
アッタッカの第2楽章、虚ろな(ディジュリドゥを思わせる)土俗的リズムに乗せてフルートと弦楽器が熱狂的に踊りを披露する。
これは凄く楽しいぞ、ちょっと暗いところも多いけれど、すごく高揚できる曲だ。
ソロはマイクを使用しているので低い繊細な響きも上手く伴奏と拮抗している。
民族性が顕著に現れた、それでいて前衛語法をうまく盛り込んだ綺麗な曲を書いている点では
なかなか素晴らしい曲を書いていると思う。
フィクレト・アミロフ(1922-84)は俺的には「アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)」でお馴染みの作曲家。
アゼルバイジャン出身、バクーで音楽を学び同地で主に活躍しながら民族音楽に深く根付いた音楽を作っていました。
「ギュリスタン・バヤティ・シラズ(?) -交響的ムガーム」、ムガームとはアラビア起源の瞑想的な音楽のことを元は指し、
現在では中央アジア一体に派生して広がる、音楽形式としては組曲と狂詩曲を合わせたようなもの、らしい。
この曲はそんな、彼が新しく提唱した形式を使ったシリーズの三作目。
重い低弦の序奏から爆発的に盛り上がり、重々しいリズムで重厚に進行する。
ピアノも入りながら民族音楽の強靭なリズムに支えられて進む音楽はとても激しいもの。
さまざまな楽想が次々に入れ替わり絢爛に舞う、楽しい曲です。最後は静かに終わっちゃいますが。
アーヴェト・テルテリャーン(1929-94)は日本国内でもその激しい音楽性でファンが結構いますね。
アルメニアの作曲家(ただし出生はアゼルバイジャンのバクー)の中でも代表格。
「交響曲第3番」は彼の作品の中でも録音に恵まれた、比較的知られた作品では。
ティンパニの一打をきっかけに、打楽器が嵐のごとく乱打する。
ファゴットやトロンボーンの低いうねりが長く響く中いきなり民族楽器とホルンがサイレンのように咆哮し、
管弦楽が狂気の渦に飲み込まれていく。ああ、このいかれ加減は流石カンチェリの友人だ。
第2楽章の不気味なまでに静かな彼岸世界を過ぎて、第3楽章は予想通り狂ったような打楽器乱打。
7拍子の強烈なリズムに乗って金管が吼え、弦楽器がうなり、民族楽器ががなりたてる。
暴力的で土俗的な音楽の果てに音楽はふと途切れ、不気味なトロンボーンのつぶやき。
もちろんこれはラストへの布石、最後はまた大爆発で終わる。

音楽、演奏、録音どれも実に素晴らしかった。Arte Novaの中では文句なしに名盤。
全てライヴの音源ですが、実にダイナミックで素晴らしい演奏。
カンチェリなんか、ECMやNonesuchのクールな録音よりこっちの
荒々しさが伝わる録音のほうが明らかに音楽にあっていて良いと思うだけれども。
あ、でもテルテリャーン終楽章、一番の盛り上がりでシンバルが派手に間違えてくれます。やっちまったな・・・



Gavriil Popov; Symphony No.1 Op.7
Dmitri Shostakovich; Theme and Variations Op.3

London Symphony Orchestra  Leon Bostein,Cond.
2004 Telarc  CD-80642

ガヴリール・ニコラエヴィチ・ポポフ(1904-1972)はショスタコーヴィチと同世代の作曲家。リムスキー=コルサコフに師事。
ピアニストとしての活躍、社会主義リアリズムによる強烈な批判と強制的な転向など、
その生き様などショスタコーヴィチと非常に似たものがありますね。
ただ残念ながら彼と異なるのは、その後生前は立ち直る決定的な機会がなかったことでしょう。
アル中になりながらも曲を書き続けましたが、国内で知られだしたのはこのCDが出てからくらいじゃないでしょうか。
「交響曲第1番」は1934年に作曲された、プラウダが革命15周年として開催したコンクールで2位を受賞したもの。
この時期のロシアはロシアン・アヴァンギャルド全盛の時代、冒頭からなかなか黒さが出ていて実にいい。
「闘争と挫折」を表しているという言の通り、とても重々しく力強さがにじみ出た第1楽章。
非常に美しくも素朴な第2楽章、はっきりしたリズムに支えられながら騒々しく派手に盛り上がりを見せる第3楽章。
特に第1楽章なんかを聴いていると、ショスタコーヴィチとの交流、さらには
彼の「交響曲第4番」に影響を及ぼしたことがわかる自由な構成です。当時のロシアの潮流を代表する傑作のひとつ。
演奏も西洋的な美しさでありながら、曲の魅力を損なうことなくその力を表現しています。
彼の音楽を再評価させるに足る見事なものと言えるでしょう。
一方、そのショスタコーヴィチの「主題と変奏」はかれ最初期の作品。まだ10代半ばのころの作曲です。
こうしてロンドン交響楽団の洗練された響きで聴くと、実にスタンダードで落ち着いた響き。
これが出るまで、ロジェストヴェンスキーの演奏がこの曲は有名にしてほぼ唯一の音源でしたが、
このあっさりした流れでこの曲が聴ける価値は大きい。このほうがそれらしい気もする。



Fiesta
Silvestre Revueltas; Sensemaya
Inocente Carreno; Margaritena
Antonio Estevez; Mediodia en el Llano
Arturo Marquez; Danzon No.2
Aldemaro Romero; Fuga con Pajarillo
Alberto Ginastera; Estancia
Evencio Castellanos; Santa Cruz de Pacairigua
Leonard Bernstein; Mambo

Simon Bolivar Youth Orchestra of Venezuela  Gustavo Dudamel,Cond.
2008 Deutsche Grammophon  UCCG-1395

日本でも来日演奏でセンセーションを呼んだドゥダメルのアルバム。
レブエルタスの「センセマヤ」は彼の代表作。チューバがソロ含めてよく聴こえていい感じ。
すっきりとまとまりながらもあたりまえのように熱く進んでくれるのはさすが南米の団体。
イノセンテ・カレーニョ「マルガリテーニャ」(1954)は西洋的な形式の中に
巧みにベネズエラのマルガリテーニャ様式に基づいた歌を組み込んだ優雅な作品。
アントニオ・エステベス「平原の真昼」(1948)は彼が印象派に傾倒していた若い頃の曲。
神秘的でいて起伏のなだらかな、広大なロス・ジャノスの平原に思いを寄せた作品。
アルトゥーロ・マルケスの「ダンソン第2番」はメキシコでは超有名な曲。
まさにラテンアメリカと言えるような、憂いを持ったメロディが展開していく。
悩ましげな場面から熱く激しい舞踏まで幅広く聴かせてくれます。
アルデマーロ・ロメーロ「フーガ・コン・パハリージョ」ははっきりとしたフーガ形式に
典型的なベネズエラ舞曲のパハリージョを取り込んだ傑作。
ヒナステラ「エスタンシア」は自分にとって説明不要であるだけでなく、
彼らにとってもまさにおなじみのスタンダート・ナンバー。
このクリオールのアク強い音楽をびっくりするくらい手馴れた処理であっさり演奏する。
それでいて熱気を余りあるくらいに放つ力に溢れた演奏。やはり凄い。
この曲の最上位に来る演奏であることは間違いないです。
エベンシオ・カステジャーノスの交響組曲「パカイリグアの聖なる十字架」(1954)は
宗教的な祭典の様子を貧富双方の視点から描写した音楽。
トランペットの印象的なソロから激しく盛り上がる前半、流麗な中間部、
コラール音型が壮大に響きらんちきのまま打ち上がる結尾部など、見事な作品を聴けます。
最後はバーンスタインの「マンボ」、見事なまでにノリノリ。そこらのアンコールなど霞んでしまうほど。
これだけはアンコールのライヴ録音。だからこそ余計に凄い。
まだ非常に若いのにこれだけ騒がれることが納得出来る、素晴らしい一枚。
特に彼(ら)のルーツゆえのノリが全開な意味でも、これほど楽しい一枚は稀でしょう。
ああ、やっぱり来日演奏行けば良かった、と動画を見ながら後悔する日々。



Gustav Holst; The Planets Op.32
Colin Matthews(1946-); Pluto, the Renewer
Kaija Saariaho(1952-); Asteroid 4179: Toutatis
Matthias Pintsche(1971-)r; Towards Osiris
Mark-Anthony Turnage(1960-); Ceres
Brett Dean(1961-); Komarov's Fall

Rundfunkchor Berlin  Berliner Philharmoniker  Sir Simon Rattle,Con.
2006 EMI  TOCE-55855・56

発売時は相当宣伝されていたホルスト「惑星」のライヴ2CDを今更入手。
いや、発売当初から欲しかったんだけれど、待ってれば中古で安く手に入るな、と。
自分はこの曲はさんざんベルリンフィル&カラヤンの演奏を聴いてきていた人間のため、
もはや何を聴いてもそれが基準になってしまうのがちょっと残念。
けれど、この演奏は(同じベルリンフィルの演奏だからというわけとも恐らく違って)すんなり入ってくる。
サイモン・ラトル特有の豊かな響きが音楽の全てに満ちわたり、ホルストがこの曲で試した
当時の最先端の和声が心地よく響いてくる。カラヤンの古典的なドイツの響きとはまた異なる
豊穣さとラトルの指揮に特徴的な筋張らない気の抜けた感覚がとても好ましいです。
もちろん、もっと力を入れても良いんじゃないかなあ、と思う部分も結構あるけれど全体の流れは文句なし。
やはりこの曲は響きを出せる演奏こそが一番映えることを再認識。
コリン・マシューズの「冥王星」は、まともに聴くのは2回目。
非常に速いテンポで、まるで今までの反射が響いてきているような音楽。
マシューズはホルストを模倣することはせず、自身の前衛的技法で描こうとしていますが、
この試みはたしかにこれで良かったと思います。下手な模倣をされても困るし。
結果として印象的にはたいして繋がっていませんが、構成的にこれより上の作り方はまず無いでしょう。
Disc2はこのときの演奏会で初演された、現代作曲家4人の新作。
サーリアホの「小惑星4179:トータチス」、彼女らしい美しさと妖しさが通奏的なリズムの中で爆発する小品。
トランペットを軸に、くるくると激しく、せわしなく動き回るマティアス・ピンチャーの「オシリスに向かって」。
ターネジの「セレス」は性質の異なる主題二つを合体・瓦解させる、小惑星スケールの黙示録を想像した音楽。
ブレット・ディーン「コマロフの墜落」は、ソユーズ1号の大気圏再突入失敗で命を落とした宇宙飛行士
ウラジーミル・コマロフの追悼として書かれた作品。
コマロフと管制センターの会話、最後へと向かっていく緊迫感、コマロフと妻の別れを描いた淡く緊張感溢れる音楽。
んー、どの曲ももうちょっとボリュームが欲しいと思ってしまった。



Scars of the War
Karl Amadeus Hartmann; Symphony No.4
Hans Werner Henze; Tristan

Symphonie-Orchester des Bayerischen Rundfunks  Rafael Kubelik,Cond.
Homero Francesch,P.  Kolner Rundfunk-Sinfonie-Orchester  Hans Werner Henze,Cond.
1999 Deutsche Grammophone  POCG-30140

ドイツ・グラモフォン、20世紀の遺産シリーズの一つ。
ハルトマンの弦楽オーケストラのための「交響曲第4番」は戦争直後に書かれた作品。
もの哀しくゆらぐ旋律が延々と続き、抑えきれないかのように盛り上がる第1楽章。
第2楽章は快活ではあるもののどこか切迫した印象も見え隠れし、さまざまに楽想を変えて広がる。
感情がむきだしになったかのように揺れ動く第3楽章では低音に12音音列が使われます。
ハンス・ウェルナー・ヘンツェの「トリスタン」は彼の代表作。
ピアノがワーグナーの亡霊を描くプロローグ、中世のトリスタン伝説を示唆する
エレクトロニクスと数々の打楽器に彩られた悲歌の盛り上がり。
前奏曲と変奏では、対立的な象徴なのかブラームスが引用される。後半は特に重い音楽。
トリスタンの狂気ではノイジーな電子音響が活躍し、ショパンの幻影と管弦楽が激しく叫ぶ。
3つのブルラ(悪ふざけ)と2つのリチェルカーレからなる第5楽章では古い舞曲の残滓が
壊れた音楽世界の隙間から昔を思い起こさせようとする。
ピアノのつぶやきで始まるエピローグは最も有名な部分。長いピアノのモノローグの後、
心臓の鼓動を出すエレクトロニクス、弦楽の重く美しいドローンに乗せ幼児の「トリスタン」朗読が再生される。
非常に美しく、劇的で印象的な部分ですがその部分は一瞬。
金属打楽器が煌く後、管弦楽の妖艶な絡みつきにピアノが混ざり、混沌としながら淡く曲を閉じる。

クーベリックによるハルトマンも全集以上の素晴らしさがあったけれど、
ヘンツェのトリスタンが素晴らしい演奏で聴ける方の印象が大きすぎる。
正直、ヘンツェは今まで交響曲なんかを聴いても何が面白いんだかさっぱりでしたが、これを聴いて一気に評価を改めました。
後期ロマン派のような美しさが影を落とし、頽廃した世界の中に魅力を作り出す。
70年代現代音楽の傑作のひとつと言えるでしょう。



Music of the Composers St.-Peterburg (to the 300th anniversary of the city)
Sergai Slonimsky; Concerto-Buffa
Yuri Falik; Simple Simphony
Lucian Prigojin; Sonata-Burlesque for violin and piano
Varely Gavrilin; "Evening Music" from Symphony Ritual"The Chimes"
Andrey Petrov; Poem for organ, strings and percussion
Boris Tischenko; III.Moderato from Concerto for Harp and Chamber orchestra

St.-Peterburg Philharmonic Symphony Orch. etc.
2002 Moscow Musical Publishers  MMI-1-003

サンクトペテルブルクの成立300周年を記念して作られたらしいコンピCD。
同地で活躍した作曲家を6人収録していますが、日本ではなかなかマニアックな人間ばかりです。
シェバーリンらに学んだセルゲイ・スロニムスキーはこの中ではまだ知られている方か。
「コンチェルト・ブッファ」は1964年の作品なので比較的初期の頃の作品。
第1曲「Canonic Fugue」でのぎくしゃくとしながらも小気味良く進行するフーガや
第2曲「Improvisation」のプリペアドピアノやトランペット等に代表されるいかれたような舞踏的パッセージ。
なかなか楽しい曲でした。勢いが収まらずに10分間一気呵成に突っ込んでいくところが激しくて良い。
ユーリ・ファリク(1936-)は現在のウクライナ出身。チェロ奏者などでも活躍しています。
「シンプル・シンフォニー」(1971)はティル・オイレンシュピーゲルの話をベースに
創り上げたものだそうですが、題だけ見るとブリテンしか想像できませんね。
中身はそのせいか、あるいは元の物語の性格からか、やっぱり素朴で軽快、近代的な音楽。
I.Allegro assai、II.Andantino、III.Allegro Bravuraからなる、12分程度のロシアらしい小交響曲。
Lucian Prigojin(プリゴジン?、1926-)は詳細が出てこないなあ。
ウズベキスタンのサマルカンドに生まれ、レニングラード音楽院でショスタコーヴィチやウストヴォルスカヤに学んだそう。
「ソナタ・ブルレスケ」はピアノの特殊奏法も使った、1967年のロシア作品としては幾分前衛的なもの。
ただ、旋律線は逆にロシア民謡的な美しさも持ち合わせていて、その対比が印象的。
I.Camminando risoluto、II.Moderato a bruscamenteからなる8分ほどの曲。
Varely Gavrilin(ワレリー・ガヴリーリン?、1939-99)は北部ロシアの小さな村に生まれ、
音楽教師に才能を見出されてレニングラードへ。ショスタコーヴィチやスヴィリドフにも絶賛されてます。
「イヴニング・ミュージック」は合唱によるとても美しい母音唱法のハーモニーのみからなる曲。
このアルバムにおける清涼剤ですね。全曲だと朗読や打楽器も入るようで面白そう。
アンドレイ・ペトロフ(1930-2006)も重鎮ですね。サンクトペテルブルク生まれで同地の筆頭的な存在でした。
「オルガン、弦楽と打楽器のための詩」ではティンパニに付き添われてオルガンの荘厳な不協和音だらけの序奏が響き、
打楽器やトランペット(あれ?)などが切羽詰った行進へ突き進む。
ショスタコーヴィチが賛美するだけある、ロシア風な交響的構成が得意なようですね。かっこいいです。
ボリス・ティーシチェンコ(1939-)は多分ペトロフ以上の知名度、このCD中一番有名でしょうね。
ここの「ハープ協奏曲」(1978)は第3楽章しか収録されていません。
シロフォンによる軽快で諧謔的なメロディで始まり、ハープがそれを受け継ぎリズミカルな明るい音楽を奏でる。
全体的にどこか諧謔さを持った、リズミカルな作品。面白いです。
コンピ故に演奏や録音状況がまちまちですが、とにかく音楽は面白いものばかりでした。
60-70年代の作品ばかりですが、近代〜現代ロシア音楽が好きな方なら買って問題なし。
個人的には後半3人の曲が特に気に入ったかな。



現代日本の音楽3
芥川也寸志;交響管弦楽のための音楽
近衛秀麿;雅楽「越天楽」
早坂文雄;左方の舞と右方の舞
黛敏郎;舞楽

NHK交響楽団 若杉弘、外山雄三、岩城宏之指揮
1990 KING Record  KICC 2013

N響のライヴ録音シリーズ。このシリーズはN響の現代音楽がCDで聴ける数少ない音源なのに、とうに廃盤。
芥川の演奏、第一楽章はかなりゆっくり。ゆったりと歌い、聴かせます。
第二楽章はきびきびした、通常通りのテンポ。けっこうノリが良いですが、最初粗だらけなのが惜しい。
近衛の演奏、いささか直線的な感じはあるものの、むしろそのお陰で聴きやすい。
早坂の演奏も似た感じ。こちらは、その柔らかさがよく合っていて心地よいです。ただ、一番ではないかな。
黛の曲は短縮版。完全版のCDはプレミアものだしねえ・・・
NAXOSのものを以前聴いたけれど、これはそれより断然ダイナミックで良い。
まあ粗もあるけれど、やっぱり黛の曲は力のある演奏じゃないと聴いてて楽しくないものね。
ちなみに、この録音は短縮版の初演演奏です。
あと、全体を通して。会場ノイズがかなり多い。1980年前後日本の録音ってこんなもんだったっけ。
まあ演奏自体は満足できるものだからいいけれど。



Silvestre Revueltas; Redes, Homenaje a Garcia Lorca
Miguel Bernal Jimenez; Tres Cartas de Mexico
Blas Galindo Dimas; Homenaje a Cervantes
Ricardo Castro Herrera; Vals Capricho
Carlos Chavez; Zarabanda

Cecilia Lopez/Juan Reves/Jesus Ruiz/Alfredo Sanchez Oviedo,Guitars
Eva Suk,P.  Orquesta Filarmonica de la Ciudad de Mexico  Enrique Batiz,Cond.
1995 ASV  CRCB-210

レブエルタスの組曲「網」、この演奏で聴くとずいぶんすっきりした印象。
おかしいな、以前マイナーオケの音源聞いたときはもっと重厚な印象だったんだが。
でもこのほうがいかにもそれらしくて良い。まあバティスの軽さが出ているというだけの話かもしれないが。
「ガルシア・ロルカへの讃歌」は代表作。ここでは楽章分けされてません。
この演奏だと逆に随分がさがさした印象。まあパートをバランスよく聴けるとこういうふうになるとは思う。
ミゲル・ベルナル(・ヒメネス)(1910-56)はローマの教皇庁付属音楽院出身であるなど
宗教的な音楽教育を強く受けた人物。宗教音楽の振興に力を注いだものの、
今知られているのはむしろ世俗的な作品群の方という、なんかちょっとかわいそうな人。
交響組曲「メキシコからの3通の手紙」、1949年の作品としてはそれ以前の近代音楽を正統に受け継いだ内容。
印象派と新古典主義をうまく折衷してメキシコ音楽に盛り込んだような非常に楽しい作品です。
2拍子のノリノリな第1楽章もいいですが、4挺もギターを使って舞曲を披露する第3楽章も見所。
ブラス・ガリンド(・ディマス)(1910-)はチャベスに師事したインディオの血を引くまあまあ有名な作曲家。
「セルバンテスへの讃歌」、古典の舞曲をベースにした古めかしい曲ともとれますが、
オーケストレーションなんかは間違いなく近現代メキシコのもの。重厚なサラバンドとか気に入ってます。
リカルド・カストロ(・エレーラ)(1864-1907)、メキシコ市音楽院ゆかりの人物です。
初期のメキシコ作曲家らしい、まだヨーロッパの影響を抜け出せない人。
「奇想曲風ワルツ」を聴くと実に近代ヨーロッパ。ロマン派。ピアノだらけ。
最後のカルロス・チャベスは「弦楽のためのサラバンド」とちょっとマイナーどころを突く。
彼らしい、ちょっと古風だけれど美しい、そしてどこか物悲しい音楽。

録音やマスタリングはちょっといいかげんな気が・・・ベルナルとか超適当なトラック境界の処理。



Music From Six Continents 1992 series
Toshiya Sukegawa; The Eternal Morning 1945.8.6
Nancy Van de Vate; Pura Besakih
David Loeb; Unkei for shinobue and orchestra
Darrell Handel; Kyusyu

黒岩英臣指揮 広島交響楽団 村上弦一郎、ピアノ
Slovak Radio Symphony Orchestra of Bratislava  Szymon Kawalla,Cond.
Cincinnati Philharmonia Orchestra  Gerhard Samuel,Cond.
1992 Vienna Modern masters  VMM 3006

ナンシー・ヴァン=デ=ベイト主宰のレーベルによるシリーズの一。
助川敏弥の「おわりのない朝 1945.8.6」は、題の通り広島の原爆を題材にした音楽。
電子音ドローンに街頭音がかすかに聴こえる。そんな何気ない光景に、サイレンが響き渡る。
無表情な通信音声、タイマーのパルスが不安感を最高潮にまで上げた瞬間、原爆は落とされる。
変調された叫びから弦楽合奏とピアノのパートへ。この曲でピアノとは通常のピアノと原爆に晒されたピアノ、双方を指します。
原爆を耐えしのいだアップライトピアノの壊れた響き、荒漠とした電子音による圧倒。
ピアノの不安定な響きによる悲しげなトレモロ部分は非常に美しい。
やがてピアノは普通のグランドピアノに移り、復活を暗示する。
前半はかなり具像的な、それでいてぴんと張り詰めた緊張と美しさ、儚さを持った素晴らしい音楽です。
ナンシー・ヴァン=デ=ベイト「Pura Besakih」はバリ島の巨大寺院に思いを馳せた音楽。
トランペットのファンファーレで始まり、メランコリックな弦楽が旅愁に似た思いを起こさせる。
以降はその二つの動機を軸にしながら、荒々しい神の怒りや祈りなどが描かれる。
この曲を聴いていると、やたらと吹奏楽的なノリに聴こえてならない。
別にこれで構わないんだけれど、依然聴いた彼女ってこんな作風だったかなあ。
デイヴィッド・ローブの「Unkei(雲景)」は非常に日本的。
篠笛のソロからグロッケンの使い方、弦楽器の合いの手まで、日本的ないわゆる「和風」5音音階が軸。
パッサカリア様式が元のようですが、そんなことよりエキゾチックな「日本」が楽しめて面白い。
ちなみに、ここでは作曲者さん自ら篠笛を吹いて演奏に参加めされてます。すげえ、そこまで歌ってないけれど。
ちなみにタイトル、「運慶」じゃないらしい。英語の解説ではUnkei=Cloud Picturesとしていたので。
ダレル・ハンデルの「Kyusyu(九州)」もノリは似た感じですが、内容はかなり違う。より前衛音楽的。
トムの強烈な冒頭から、強い推進力で音楽が進む。テンポの遅い部分も、基礎は篳篥などの
雅楽的なものだけれど、ちょっと技巧的に変形されている。よく練られて作られている音楽だと思う。
演奏、まあまあ。ぼやけた録音によるところも大きいと思うけれど、なんかちょっとしまりがない気が。
曲の方はどれも非常に楽しめたんだけれど。ヴァン=デ=ベイト以外は日本繋がりなのもすごいカップリングだ。



サクソフォーン名協奏曲集
ドビュッシー;アルト・サクソフォーンと管弦楽のための狂詩曲
イベール;アルト・サクソフォーンと11の弦楽のための室内小協奏曲
ヴィラ=ロボス;ソプラノ・サクソフォーンと室内管弦楽のための幻想曲
グラズノフ;アルト・サクソフォーンと弦楽のための協奏曲 変ホ長調 作品109
ベネット;アルト・サクソフォーンと弦楽のための協奏曲
ヒース;ソプラノ・サクソフォーンと管弦楽のための"アウト・オブ・ザ・クール"

ジョン・ハール、サックス  アカデミー室内管弦楽団  サー・ネヴィル・マリナー
EMI  TOCE-8030

ジョン・ハールによる古典的に有名なものを多く収録した一枚。
ドビュッシーの「狂詩曲」は元々ピアノ伴奏でしたが、弟子のロジェ・デュカスの手でオーケストレーションされています。
彼らしい妖艶な和声の中でサックスが緩やかに歌う。
いい曲なんですが、最後のとってつけたような終わり方だけ気に入らない。
パリジャンなイベールの代表作はやはり素晴らしい。
洒脱な第1・3楽章やメランコリックな第2楽章を聴いているだけで楽しくなる。
しかも古典的な中に技巧的な魅力も盛り込んでいる構成は、現代でも色褪せない。
イベール好きやサックス好きがこぞって名作に挙げるだけのことはある作品です。
ブラジルといえばのヴィラ=ロボスによる「幻想曲」、実はマルセル・ミュールのために書いたものの
生前演奏する機会ができなかったという残念な逸話持ち。
けれど音楽の方は恥じることない見事なヴィラ=ロボス節の甘美な音楽。
ロシアの正統派クラシック、グラズノフの協奏曲はいろいろ雰囲気が変わる。
でも彼らしい民族的な音楽なのはいつも通り。
ブーレーズに師事経験しながら作風はむしろ古典的なベネットの協奏曲、
ここではかなりジャジーな影響を持ったライトなノリの構成です。
最後はデイヴ・ハースの曲、ブルース風のムードが漂う逸品。
アカデミー室内管弦楽団の音はあんまり趣味じゃないけれど、綺麗だから許す。



Szabelski Gorecki Knapik
Boleslaw Szabelski; Toccata feom the Suite for Orchestra Op.10, Concerto Grosso
Henryk Mikolaj Gorecki; Three Dances Op.34
Eugeniusz Knapik; La Flute de Jade for Soprano solo & Orchestra

Bozena Harasimowicz,Soprano  The Silesian Philharmonic Symphony Orchestra
Miroslaw Jacek Blaszczyk,Cond.
2009 DUX  0732

ボレスラフ・シャベルスキ(1896-1979)の没後30年を受けて制作された、
その弟子筋も含めてその後のポーランド音楽の流れをある程度見通そうというアルバム。
シャベルスキの「トッカータ」は、彼の作品中もっとも知名度があるもの。
溌剌とした明るい楽想を基本としながらも、そこに前衛的な不協和を絡めて
緊張的で歯切れある展開を聴かせてくれます。たしかにアンコールとかにしたら受けそう。
「コンチェルト・グロッソ」の方は、1954年の作品としてはかなり穏健な響き。
でも、両端楽章のトッカータ的な楽想の中に時折セリエリズム的な響きが聞き取れる辺り、
彼なりには最先端の技法を気になっていたことが想像出来る。
そして両端の溌剌な分、中間楽章は重く暗く響く、おどろおどろしい曲。でもかっこいい。
シャベルスキに師事した中で一番有名なグレツキ、でも「三つの踊り」なんてまたマイナーな選曲だ。
でも前衛からミニマリズム的指向へ移る過渡期の、一番有名な頃の作品ということでは正しいかも。
第1楽章のごつごつした土俗的なリズムと不協和なコード、彼らしいけれどあまりない作風。
第2楽章のミニマルで淡い美しさは、3年後の「交響曲第3番」を想起できるもの。
第3楽章もはっきりとしたリズムにのせてトッカータ風なメロディ。ただ進行は反復進行が基本で、この時期の彼らしい。
総体的に見て、この時期の魅力が十分に詰まった曲といえます。
ただ「踊り」という性格上明るい作風であることや、ちょっと構成的な妙が薄いことから
今まで全く世に出てきていなかったのでしょう。
ただ、自分は普段にない活発なグレツキが聴けたので大満足。にしても第3楽章のアヤシイ明るさは異常。
そのグレツキに師事したクナピク(1951-)の「La Flute de Jade」はソプラノつきの管弦楽作品。
第1楽章の繊細で美しい響きは、グレツキの3番を好きな人が気にいるんじゃないでしょうか。
というか、伴奏の2コード進行も含めてすごくそれっぽい。
まあ73年の作品ですから、師の影響がかなり濃く出ているんでしょう。というか上の「3つの踊り」と同年かい。
第2楽章、作り方は似ていてもこちらはグロテスクに攻めてくる。
第3楽章はわらわらと音がうごめき、動きが激しいために印象ががらりと変わる。ピアノ大活躍。
第4楽章のゴングとピッコロに導かれる神秘的な歌。
やはり師の音楽らしいところが随所で聴ける。それとも、彼の作風は元々こんな感じなのでしょうか。
ちょっと今度きちんと探してみよう。
演奏は、ちょっと遠いし散漫だけれど十分楽しめます。



John Adams; Short Ride in a Fast Machine, The Chairman Dances, Harmonium
Louis Andriessen; De Snelheid

BBC National Orchestra of Wales & Mark Elder,Con.
BBC Concert Orchestra & Barry Wordsworth,Con.
Bournemouth Symphony Chorus  ASKO Ensemble & Oliver Knussen,Con.
2002 BBC  MM222(Vol.11 No.2)

BBC音楽マガジン付録のCDから、アダムスとアンドリーセンのカップリング。
「ショート・ライド〜」、溌剌とした演奏でかなり良い。ライヴなので細かいミスもあるし、録音環境の関係か
音量バランスが良くなくて(もっとここが聴こえて欲しい!)と思うところも多いけれど(特にホルンの吼え)
もしライヴで聴けていたら間違いなく興奮できるレベルの好演。
「主席は踊る」、これもすごく気に入っている曲。フォックストロット風のノリがある洒落たポストミニマルの傑作。
しっかりと纏められた、これまたとても良い演奏。ライヴでもここまでできるとはさすがプロ。
逆に、NonesuchのBOXにあるスタジオ演奏がどれだけ(編集含めて)完成されているか再確認。
「ハルモニウム」は80年代の大作。多分一般的な現代音楽ファンが評価できるのはここらまで。
なにしろこれ以降の作品はポップ色がかなり強くなるので・・・個人的にはそれも悪くないですけれど。
実はBOXで聴いたときは綺麗なだけの印象であまり聴いたことはなかったんですが、
この演奏で聴くとなかなか激しさも伝わってきて、この曲の盛り上がり方がうまくつかめました。
もしかしたらこっちの方が好みの演奏かもしれない。内向さも感情の爆発も表現した良い演奏。
アンドリーセンの「速度」はウッドブロックのパルスにアンサンブルの点描が激しく絡む。
徐々に切羽詰るように早まっていくテンポが爽快。
以前アイスブレイカーの演奏を購入しましたが、あちらの鋭く機械的な演奏に対し
こちらは録音状況も相まって、シンフォニックで表情豊か。熱気がある分こちらの方が気に入っています。
このマガジンの音源シリーズは全てライヴなのが良いですね。この独特の熱気がたまらない。
演奏も、おそらく数あるライヴから厳選しているだけあって素晴らしいものばかり。
録音が微妙なのが残念ですが、ライヴである以上大目に見るべきでしょう。



John Adams; Fearful Symmetries, The Chairman Dances
Lepo Sumera; Symphony No.2

Symphony Orchestra of Norrlands Opera  Kristjan Jarvi,Cond.
2001 CCn'C  01912 SACD

ロックとクラシックの繋がり、ということでこの選曲。
ジョン・アダムスの「フィアフル・シンメトリー」、この録音で聴くと凄く「主席は踊る」に似ているのが分かる。
ごつごつとした音楽のロック・・・というかダンサブルな輪郭がはっきり見える。
シンセの大胆な使用、フォックストロットのリズムなどなど。
改めて聴いて、彼らしい作品だとはっきり感じました。ただ演奏してる方が楽しそうかな。
レポ・スメラの「交響曲第2番」は3楽章20分ほどの作品。
ハープのミニマルでメランコリックな旋律に始まり、短い反復に支えられながら
美しく、どこかもの悲しげに展開していく。北欧特有の美しさが聴けるいい作品です。
この2年前に書かれたヴァイオリンとピアノのための曲が基になっているらしい。
「チェアマン・ダンス(主席は踊る)」、この録音はテンション高め、つまりちょっとテンポ早め。
少々騒がしすぎる感じはしますが、十分楽しめると思います。
というか、騒がしい感じなのはどの曲も同じ。良くも悪くも。
指揮者のクリスチャン・ヤルヴィはネーメの末子、パーヴォの弟という予想通りの指揮者家系の一員。
ちなみにアブソリュート・アンサンブルの創設者。
ああ、だからトゥールの「アーキテクトニクス」新録と同じレーベルからなんだ・・・



Wolfgang Amadeus Mozart; Concerto for Two Pianos and Orchestra No.10 E flat Major KV.365(316a)
Chick Corea; Fantasy for Two Pianos
Friedrich Gulda; Ping Pong

Chick Corea/Friedrich Gulda,Piano
Concertgebouw Oechestra, Amsterdam  Nikolaus Harnoncourt,Cond.
1984 Teldec  8.42961

ごめんなさい、明らかに後半の自作自演が聴きたかっただけです。
フリードリッヒ・グルダとチック・コリア、クラシックとジャズそれぞれの巨星の共演。
モーツァルト、やっぱり二人の技術の凄さが分かる。
活躍ジャンルは違うけれど、どちらも他方のジャンルに多大な興味を示す二人。
だからこそ互いの呼吸がわかり、ぴったりと合わせることができるんでしょう。
そうやって作られる音はクラシックともジャズとも違う響きを持っているように思えますね。
コリアの「ファンタジー」、まさに夢見るような音楽から二人のクラッピングで場面転換。
いつものコリアらしい瀟洒なアドリブの効いた音楽。それに普通のようについていくグルダ。
グルダの「ピン−ポン」、お互いの出番が華麗に入れ替わる様はまさに卓球。
先ほどとは違う味の、落ち着いた美しさ。最後は特殊奏法も使った爆発で締め。
やっぱりこういう作品はいいねえ。



高橋悠治リアルタイム2
John Zorn; For Your Eyes Only
Haruna Miyake; The Time of Melancholy
Jose Maceda; Dissemination

Masahiko Togashi,Perc.  Haruna Miyake,P.&Syn.  Jose Maceda,Con.
Tokyo Symphony Orchestra  Yuji Takahashi,Con.
Fontec  FOCD3151

高橋悠治のシリーズの2。1991年東京ミュージック・ジョイ・フェスティバルのライヴ。
ジョン・ゾーンの「フォー・ユア・アイズ・オンリー」、最初からとんでもない混沌の渦。
雑多な楽想がぐちゃぐちゃと節操無く入り乱れる。クラシック、ジャズ、サンバ、映画音楽、
さらには現代音楽曲のパロディまで飛び出してくる激しい音楽。
打楽器奏者の一人はノイズ専門になっているあたり音響的にも激しい。
三宅榛名の「憂愁の時 -ダブル・コンチェルト」はここで演奏している富樫雅彦を想定して書かれたもの。
第一楽章、徐々に響いてくるプリミティヴなドラミング、そこにヴァイオリンなどのソロが自由に絡んでくる。
チェロとソリストのインプロ、ピアノと打楽器の真似合いインプロを挟み、
最後の第四楽章ではオケ全員が波の様に即興的な演奏を重ねていく。
インプロと協奏的形式を通して、オーケストラと現代文化とのあり方について考える作品。
ホセ・マセダはこの「ディセミネイション」がCD収録されたことで広く知られるきっかけになったはず。
背景の呼子笛とゴングが響き、そこに各楽器が(まるでミニマルのように)絡み合っては結合し合い、
徐々に一つのまとまった運動へと収束していく。30分を超える大作。
フルート、ヴァイオリン、オーボエ、ホルン、低弦が5人ずつに背景4人という小編成ながら、
そこから現れる音の密度や色彩の広大さにはびっくりさせられる。
やはりマセダは素晴らしい作曲家です。



Leonard Bernstein; Chichester Psalms
John Rutter; Gloria
Arvo Part; Magnificat Antiphon, Missa Sillabica

Choir of Clare College,Cambridge  The Wallace Collection  Rachel Masters,Hp.  Timothy Brown,Con.
Capella Breda  Daan Manneke,Con.  Ensemble Calefax
2000 Regis  RRC 1003

バーンスタインの「チチェスター詩篇」、力強い冒頭からいつものバーンスタイン節。
第一楽章は7拍子に載ってヘブライ的な打楽器が彩る。
第二楽章はハープと女声の美しい音楽の中間に激しい箇所が乱入。
荘厳なオルガンから穏やかな合唱へ移行する第三楽章。
ジョン・ラターの「グロリア」は金管の華やかな(吹奏楽風)ファンファーレに乗せてカッコイイ歌唱。
第二楽章の穏やかで美しいオルガンから輝かしい爆発までも聴き所。
祝祭的な教会音楽をある種吹奏楽的に表現した音楽です。かっこいいの一言が実に合う。
以前から聴きたかった曲ではあったんですが、予想を遥かに超えて素晴らしい曲でした。これいいなあ。
合唱やオルガンといった編成をどうにかできたら、日本の吹奏楽界でもブレイクするであろう一品。
ペルトの無伴奏合唱曲「マニフィカト・アンティフォン」、彼らしい内向的で悲しげな曲集。
美しく、冷たく、けれど柔らかく響く音楽です。1988年の作品。
「Missa Sillabica」は1977年の作品、ちょうどティンティナブリ様式真っ最中の頃。
簡素ながらも実に美しく、そして悲しく響く音楽。やっぱりこの時期の作品が一番綺麗だ。
演奏は、ペルトの方は録音でごまかしてる気もするけれど、この残響は音楽に合っているとも思う。
前2曲はまあまあ派手でいい感じ。ダイナミクスもこれだけあれば合格点。
とりあえず、買って良かった。曲は外れなし、演奏も外れではなし。



Joseph Haydn; Symphony No.95 c-moll Ho.I:95
Frank Martin; Concerto for seven instruments, timpani, percussion and strings
Igor Stravinsky; The Firebird (Suite)

Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks  Ernest Ansermet,Cod.
1992 ORFEO  C266 921 B

エルネスト・アンセルメ、バイエルン響を振るin1962年5月。
ハイドンの「交響曲第95番」、短調でも古典作品らしい明るさですよね。
にしても95番て中途半端な作品だ、ハイドン聴かないからこの曲は初めてでした。
マルタンの「7つの管楽器、ティンパニ、打楽器と弦楽器のための協奏曲」、新古典的な響きの、マルタンらしい軽妙な一品。
両端楽章は旋律が細かい。この曲、録音抜きでもティンパニの粒は聴かせづらいよね。
録音は管楽器の音がちょっと大きい、メロディは聴きやすいけれど、本来のちょっと違うような・・・
ストラヴィンスキーの「火の鳥」、全6曲なのって何年版だっけ。
始めはまあまあ遅めな方か。カスチェイの踊りは音割れ感が逆にいい味出してます。
終曲は自分の大のお気に入り。だけに、金管が弱いのは凄く納得いかない・・・
でもアンセルメの指揮する音楽は、やっぱり自分は好きなんだなあということを実感。
フランス的な洒脱さ、ちょっと粘り気のある嫌味にならない程度の甘さ、さっぱりまとめられてはいるものの
迫力のある激しい部分、あまり奇をてらわないけれど味付けはしっかりする演奏。
モノラル録音オリジナルで、デジタルリマスタリングしても状況はかなり良くない。
けれど、それでも十分に楽しめました。



Modern Masters III
Norman Dello Joio(1913-2008); Meditations on Ecclesiastes
Alan Hovhaness(1911-2000); Psalm and Fugue for String Orchestra, Shepherd of Israel
Arnold Rosner(1945-); Responses,Hosanna,and Fugue Op.67

The Philharmonia Orchestra  David Amos,Con.
1990 harmonia mundi  HMU 906012

初期ハルモニア・ムンディの現代アメリカ音楽シリーズ、その3。
なんでこのシリーズ、指揮者は同じなのに団体の方は毎回違うんだろう。
今回の選曲は流麗系の作曲家で攻めているようですね。
ノーマン・デロ・ジョイオの「知恵の書による瞑想」は1957年のピューリッツァー賞受賞作品。
弦楽器による、非常に美しく、そしてちょっとエキゾチックな趣も感じる30分の大作。
やっぱり、彼の作品にはどこか気品さと言うかノーブルというか、上品な響きを感じ取れる。
自分にとっては印象的な特徴の一つ、と言う以上に興味は湧かなかったけれど、これは聴く人によってははまるなあ。
何しろアダージョからアニマートまで、様々な楽想の全てをその気品さで包み込めているんですから。
アラン・ホヴァネスは2000年に亡くなられましたね、なかなか気に入っていた作曲家だけに残念なことです。
「詩篇とフーガ」、やはりこの素朴で美しいコラールがたまらない。弦楽合奏がそれを引き立てる。
ただ、次の作品と比べると、まだ「ホヴァネスらしさ」は出てない。
「イスラエルの羊飼い」、前作の10年以上後(1952)の作品。
フルートソロで始まり、テノールが入ったりして、先ほどよりもろにアルメニア臭がする音楽。そして宗教音楽くさい。
アーノルド・ロスナーは、たぶんまともに聴くのは初めて。
「応唱、ホザンナとフーガ」は弦楽四重奏とハープをソリストにした、近代和声の豊かな曲。
美しいのはこれまでの曲と同様ですが、これはまた違った響きを持ちますね。
なんだろう、例えるならより壮大な映画風音楽、といったところでしょうか。現代の穏健派作曲家らしい曲です。
まあ悪くない。クラシック聴く人はだいたいいけるはず。でも自分の好みにはひっかからなかったからいいや。
演奏、やっぱり線が細い。良くも悪くも。録音は無難なものなので、粗を隠してはくれなかった。



Modern Masters II
David Ward-Steinman(1936-); Concerto No.2 for Chamber Orchestra
Paul Turok(1929-); Threnody Op.54
Norman Dello Joio(1913-2008); Lyric Fantasies for Viola & Strings
Henry Cowell(1897-1965); Hymn for String Orchestra
Paul Creston(1906-85); Partita for Flute, Violin, and String Orchestra Op.12

City of London Sinfonia  David Amos,Con.
1990 harmonia mundi  HMU 906011

初期ハルモニア・ムンディの現代アメリカ音楽シリーズ、その2。
ウォード=シュタインマンの「室内管弦楽のための協奏曲第2番(1960-62)」は、アメリカ的な躍動感に
どこかバルトークやヒンデミットのような近代的なヨーロッパ音楽の香りを盛り込んだ一品。
正直、かなりカッコイイです。嫌味ったらしくない程度に、爽やかにアメリカ的快楽さ・ヒロイックさを
詰め込みながら、古典的な堅牢さをもった重みのある作品に仕上がっています。
なお、作曲者はナディア・ブーランジェやミルトン・バビットに師事経験あり。
ポール・テューロックの「哀歌(1980)」は、葬送行進曲とでも名づけた方がよさそうな曲調。
自分的には大戦前後のロシアの作曲家が西洋にかぶれたら書きそうな音楽に聴こえる。
でも作曲者はNY生まれジュリアード音楽院卒のバリバリ人間なんだよね。
ノーマン・デロ・ジョイオは、以前から名は知っていたものの純音楽作品を聴くのはたぶんこれが初めて。
「ヴィオラと弦楽のための詩的幻想曲(1975)」、なかなか叙情的で美しい、気品溢れながらも勢いのある曲。
オルガニストの息子でありヒンデミットの弟子でもあることが納得できる、双方の美点を持ち出したような音楽。
ヘンリー・カウエルはケージやガーシュウィンといった大御所を世に送り出したアメリカ前衛の先任者。
ですが、この「弦楽オーケストラのための賛歌(1946)」は
そんなトーンクラスターのイメージとは無縁の非常に美しいコラール風の曲。
最後は吹奏楽でも知られているポール・クレストンの「フルート、ヴァイオリンと弦楽のためのパルティータ(1937)」で締め。
短い5楽章からなる、新古典的な近代音楽、といった様相の明るい綺麗な曲。
演奏は、派手さはないものの十分健闘しているもの。ソリストの技量はあまり・・・といった感じですが、
それでも曲の魅力には十分気づける演奏です。



Romanian Rhapsody
Alexandru Flechtenmacher; Moldavian National Overture
Eduard Caudella; "Moldova" Overture
George Stephanescu; National Overture
Iacob Muresianu; Overture:"Stephen the Great"
George Enescu; Romanian Rhapsody No.1 in A major
George Draga; Concert Overture No.2

Romanian Radio Symphony Orchestra Carol Litvin,Con.
Cluj-Napoca Philharmonic Orchestra Emil Simon,Con.
Arad Philharmonic Orchestra Eliodor Rau,Con.
Olympia  OCD 408

ルーマニアの作曲家による序曲・狂詩曲を集めたCD。メジャーなのはエネスコくらい。
こういうマイナー一直線の企画があるから、オリンピア、特にExplorerシリーズのものは大好きです。
フレクテンマケル(1823-1893)はウィーンでJoseph BohmやJoseph Maysederに師事した人物。
「モルダヴィア国民序曲」は優美な冒頭と、出自ならではの独特なリズム・旋律線を持つ溌剌とした音楽。
カウデラ(1841-1924)は、エネスコの才能を見出した存在としても有名な人間。
「モルドヴァ序曲」は民族調の短調な出だしから、1913年の作品としてはかなり古典的に音楽が進む。
シュテファネスク(1843-1925)はブカレストやパリでDaniel Fr.AuberやAmbroise Thomasに師事し、
ルーマニアとしては初のオペラや交響曲を書いた人物。
「国民序曲」は華やかな、けれど短調の出だしから、明るい音楽の展開。やっぱりまだ普通にロマン的。
このCDの中で、ムレシャヌ(1857-1917)だけはトランシルヴァニア出身。
「ステファン大帝序曲」は静かでメランコリックな音楽が暫く続き、後半いきなり軍楽調に。
エネスコ(1881-1955)は、わざわざここで紹介するまでも無いでしょう。
収録されている「ルーマニア狂詩曲第1番」も彼の代表作、いつ聴いてもこの終始軽やかな楽想は心地よい。
ドラガ(1935-2008)はAnatol Vieruらに師事した人。調べてみたらつい最近に亡くなっておられました。
「演奏会用序曲第2番」はパッサカリア形式を基にしながら暗く、神秘的に音楽が進行する。
ただ、現代の作品としてはかなりクラシカルな音楽。前衛さはあまりないです。
演奏は、少々古さもありますが、こういうマイナー曲演奏にしてはなかなかの水準。
エネスコの演奏も技術の粗に目をつぶれば、演奏の勢いなど、個人的にはかなり好みのものでした。



John Williams; The Five Sacred Trees
Toru Takemitsu; Tree Line
Alan Hovhaness; Symphony No.2 Op.132 "Mysterious Mountain"
Tobias Picker;Old and Lost Rivers

Judith LeClair,Fg. London Symphony Orchestra John Williams,Cond.
1997 Sony  SK 62729

ジョン・ウィリアムスのバスーン協奏曲は、題に倣って5楽章制。
バスーンソロから次第に劇画チックにかっこよく盛り上がる。
ヴァイオリンから速いモチーフを提示され、跳ねるような音楽が激しく進み、パセティックな音楽へ。
不穏げな4楽章をさっと過ぎると、3楽章と1楽章を足したような流麗世界。
武満徹の「ツリー・ライン」は1988年の作品なので、響きがかなり豊潤になってからの作品。
初期のような厳しさはなく、幻想的な響きに素直に酔いしれることができます。やっぱり武満はいいねえ。
ホヴァネスの「交響曲第2番「神秘の山」」は、もちろんのごとくホヴァネス節全開。
コラール風のエキゾチックな響きの音楽にチェレスタなどがきらきらと煌く。
このド直球の、ちょっとカルト入ってる音楽が自分は結構好きです。この2番は初期傑作と言えるでしょう。
ピッカーの曲は、短い感動的な小品。まさに「非常にロマンティックでノスタルジック」な音楽です。
演奏は、選曲に良く合う豊かな響き。ソニーの遠い録音は趣味じゃないけれど、繊細なところは好きです。



Modern Masters I
Miklos Rozsa(1907-95); Tripartita for Orchestra Op.33
Morton Gould(1913-96); Folk Suite
Gian Carlo Menotti(1911-2007); Triplo Concerto a Tre
Marc Lavry(1903-67); Emek -Symphonic Poem

London Simphony Orchestra David Amos,Con.
1990 harmonia mundi  HMU 906010

初期ハルモニア・ムンディの現代アメリカ?音楽シリーズ、記念すべき第1弾。
ミクローシュ・ロージャ(ミクロス・ローザとも)の「管弦楽のためのトリパルティータ」は彼後期の管弦楽作品。
力のある激しい旋律、不穏げな間奏曲、それらが技巧的な構成にうまく組み込まれています。
さらに自身の出自であるハンガリー的な音楽背景が、
音楽に民族音楽的な色彩を与えて非常に個性的なものへ仕上がってますね。
特に第三楽章はかなり興奮できる、素晴らしい曲。
とても映画音楽をメインに作っていた人物の作品とは思えません。
モートン・グールドの「フォーク組曲」は彼らしい爽やかで明るい、まさにアメリカンな曲。
第二楽章「ブルース」ではサックスも使いながら、実に爽快で時には物憂げな音楽を聴かせてくれる。
ジャン・カルロ・メノッティの曲、タイトルを見て?と思った通りソリストが9人います。
コンチェルト・グロッソの形式を念頭に置きながら作られただけに、弦楽器・管楽器・ピアノとハープに打楽器という
3×3人のソリストが配置されている、というわけ。
曲の方は、ロマン的な影響が強い、流麗系のクラシック。こういうのはあんまり趣味ではない。
確かに技巧は申し分ないものだし、多分スコアなんかを手にして聴いたら分かりやすそうでまた感想も変わる曲なんだろうけれど。
以前Chandosの作品集も買ったことあるけれど、そちらも似たような感想だったしなあ。
最後のマルク・ラヴリーのみ初めて聴く作曲家。ラトビアはリガに生まれ、戦前はベルリン、
ナチス台頭後はスウェーデンなどを経た後にイスラエルに安住しました。この人だけアメリカ関係なし。
ここに収録された「交響詩「谷」」は彼の代表作。出身はリガですが、
曲のほうは素晴らしいまでの東洋的管弦楽作品。牧歌的で自由に歌う主題が楽器のなかを動き回る。
最後の方になると徐々に盛り上がり、激しく華やかな民族舞曲になります。
演奏、悪くないけれどそつなくこなしているレベルに留まっている。ロンドン交響楽団ってこんなもんだったっけ?
グールドなんかはもっと飛ばして欲しかった。逆にロージャなんかはいい感じ。



Bravura
Ottorino Respighi; Feste Romane
Richard Strauss; Don Juan
Witold Lutoslawski; Concerto for Orchestra

The Oregon Symphony  James de Preist,Cond.
1987 Delos  DE 3070

ローマの祭りは落ち着いたテンポでじっくり聞かせる。
特にソリスティックに聴かせるわけでも、音が一体となって押し寄せるような圧倒感も無いが、
音楽としてはよく纏まった、スムーズな流れを作り出せています。
そういう面から見れば、安心して聴くことができる演奏でしょう。バランスちょっと微妙かも。
ドン・ファンでもそんな感じ。特にずば抜けて巧いわけではないけれど、聴きたいところをしっかり押さえてきてくれる。
ルトスワフスキの管弦楽のための協奏曲は、1950年作の初期の傑作。
まだアドリブ律動とかの混沌とした手法をとる前のものなので、非常にはっきりした構成で聴きやすい。
演奏もしっかりした安定感は変わらず、楽しめました。
指揮者のデプリースト、のだめで知名度ランクが上がった感がしてしょうがないのですが、気のせいかなあ。



George Butterworth; A Shropshire Lad, Two English Idylls, The Banks of Green Willow(Idyll)
Frederick Delius; Irmelin:Prelude, The Walk to the Paradise Garden, Brigg Fair
Percy Grainger; Brigg Fair

Mark Elder,Cond.  James Gilchrist,Tenor  Halle & Halle choir
2003 Halle Concerts Society  CD HLL 7503

ジョージ・バターワースとフレデリック・ディーリアス。
この二人は近代英国作曲家の中で最も気に入っている作曲家たちです。あとはホルストくらいかなあ。
バターワースは第一次世界大戦で31歳にして命を落とした早世の作曲家。
残された作品は僅かですが、そのどれも素晴らしい出来です。ここでは彼の現存する全管弦楽作品が聴けます。
1曲目「シュロップシャーの若者」や3曲目「青柳の堤」を聴けばわかるように、甘美で夢見るような作風が満載。
逆に「2つのイギリス田園詩曲」はのどかでありながら華麗な、彼なりの舞曲的側面が伺えます。
もし彼が生きていて作品を作り続けていたら、果たして私たちにどんな曲を聴かせてくれたのでしょうか。

ディーリアスは、その方向性をさらに推し進め完全に自分の世界にした感じ、と言っても良いでしょう。
このCDの「イルメリン」序曲、「楽園への小道」、「ブリッグの定期市」でもその夢見る、とろけそうな甘さは絶品。
その見事なオーケストレーションも素晴らしい仕事ぶり。近年は随分評価されてきて嬉しい限りです。
二人とも、指揮者のエイドリアン・ボールトが熱心に演奏してくれたお陰で知られるようになりました。
この調子でイギリス近代音楽もいろいろと光が当たって欲しいものです。

グレインジャーの合唱曲「ブリッグの定期市」と、その原曲がおまけみたいに入っていますね。
原曲のほうは1908年に録音された非常に価値のあるもの。
民謡採集に熱中したバターワース、グレインジャーらの時代を思うのにとても良い、粋な計らいでもあります。



ピアノ・シュロス コンチェルト・シリーズ Vol.1
Piano Schloss Concerto Series Vol.1

Kosyu Hirayoshi; Piano Concertino for Children
Nobuyoshi Koshibe; Piano Concerto by the Theme of "London Bridge"
Nobuyoshi Inuma; "An Episode" for Piano and Orchestra
Michio Mamiya; Volks Konzert

ズビグニェフ・ラウボ、ピアノ  シンフォニア・ヴァルソヴィア  フォルカー・シュミット=ゲルテンバッハ指揮
International Piano Schloss Assosiation(Deutsche Grammophon Educational)  IPSA-1001

子供たち向けのピアノ協奏曲レッスンのために作曲された曲たちの参考音源、記念すべき第1巻を音源だけ入手。
平吉毅州の「こどものためのピアノコンチェルティーノ」は2楽章制。
5/8と6/8によるまさにロマンチックな、イージーに聴けるきれいな曲。
第2楽章はその雰囲気を保ちつつ、軽快なワルツへ。劇伴にありそう。ジブリ的なファンタジー世界に凄くマッチしますよこれ。
越部信義の「ロンドン・ブリッジによるピアノコンチェルト」はもちろん「London Bridge's Fallin' Down~」のあれです。
いろいろと変奏が繰り広げられる。作者いわく日本風や沖縄風な変奏もあるらしいけれど、そこまではっきりとはしてない。
きちんと西洋的な音楽の範疇に収まった「風」なので、チープさが最小限に抑えられている点はさすが。
飯沼信義の「エピソード -ピアノとオーケストラのための-」は古典的なクラシカルさ。「ロマン派の様式を前提に」した通りの響き。
ドラマチックな音楽で、ピアノパートもけっこう動きながらも基本事項をしっかり押さえている。
間宮芳生の「村人たちの協奏曲」はモーツァルト風序奏と民族風舞曲、メランコリックな中間部と雰囲気のころころかわる、あっさりした曲。
とはいえ、どの曲もなかなか面白い出来で楽しめました。特に平吉・間宮の両名は有名なだけあって構成もなかなか。
レッスン用教材なんだな、と実感させるのはそのトラック。各曲それぞれのオケ伴奏のみのテイクが入ってます。
演奏は、線の細い、豊かな響きには相性のいいシンフォニア・ヴァルソヴィア。



Festspill CD 2006
Sverre Indis Joner/Trad. arr: Gringo No.1(Dovregubbens Hall)
Ole Bull; Et Saeterbesok
Edvard Grieg/Per Arne Glorvigen; Cradle Song Op.68-5
Wolfgang Amadeus Mozart; Piano Concerto No.9 I., Violin Concerto No.3 II
Mgnus Lindberg; Feria
Jean Sibelius; Violin Concerto Op.47 III.
Nils Okland; Grataslag

2006 Pro Musica  PPC 9057

今までにいろんなレーベルから出た北欧関連の音源をまとめたもの。
明らかにマグヌス・リンドベルイが聴きたかっただけ。
最初はいきなりタンゴで開始。ちょっと待てよこれ何なんだ、と思ったら知ってるメロディーがようやく出てきた。
グリーグのペールギュント、魔王の曲の編曲でした。ちょっとびびらせないでくれよ。
オーレ・ブルは19世紀の著名ヴァイオリニスト。とても綺麗な北欧的田園風景。
3曲目、グリーグのバンドネオン編曲がこんなに合うなんて以外でした。のどかな光景が目に浮かぶ素晴らしい演奏。
モーツァルトの抜粋はピアノ協奏曲の総北欧勢によるものの、簡素で鋭い響きが気に入りました。
リンドベルイの曲はやっぱり凄い。この曲も20分近い大作であるのに一気に聴いてしまう。
細かなテクスチュアに独特の言い回しがカッコイイ。今回は「祭り」の題どおり、全音階的要素で明るい雰囲気を持つ断片が数多い。
それでも、ずっと緊張感を持っていく手腕は流石です。彼の作品で一番好きですね。ユッカ=ペッカ・サラステの指揮もさすが。
シベリウスの曲。こういう土俗的なリズムの曲も上品さ漂うのがいつ聴いても北欧的だと思ってしまう。やはりシベリウスは偉大です。
Nils Oklandはフィドル系の演奏者のようですね。この音源ではケルト調な趣があるヴァイオリンを披露してます。



Le mejor de Enrique Batiz 3
Manuel Ponce; Concierto para violin
Blas Galindo; Sones de Mariachi
Silvestre Revueltas; La Noche de los Mayas
Jose Pablo Moncayo; Huapango

Henryk Szeryng,Vn.  Royal Philharmonic Orchestra
London Philharmonic Orchestra  Orquesta Sinfonica del Estado de Mexico
2000 Luzam  EB-2002-3

バティスといえば南米、ということでエンリケ・バティスのアルバム・メキシコ盤。
ポンセの「ヴァイオリン協奏曲」は、この時期の作曲家の曲としてはかなり洗練された響き。
ギター協奏曲のイメージが強い自分としては、新鮮に聴けました。
もちろん明るい部分もあるけれど、かなり技巧的というか、当時の先鋭的な響きが。
ガリンドの「マリアッチのしらべ」はノリの良い激しい曲。終始ハイテンション、バティスの演奏が良く似合う。
レブエルタスの「マヤの夜」は彼の代表作。
指揮者のおかげで、ハイテンションな良い仕上がりになってます。
ただ、音にそこまで重みがなかったりするので、意見がかなり分かれそう。
モンカーヨの「ウァパンゴ」も代表作。壮大かつ明るい、直系の南米音楽。
やっぱりどれも押しのある派手な音で鳴らしてくれるバティスは性に合う。
もちろん響きが薄いとか、批判ももっともだと思うけれど。



21世紀へのメッセージ Vol.2
藤家渓子;思いだす ひとびとのしぐさを
湯浅譲二;ピアノ・コンチェルティーノ
田中カレン;ウェーヴ・メカニクス
猿谷紀郎;透空の蔦

木村かをり、ピアノ  オーケストラ・アンサンブル金沢  岩城宏之、指揮
1995 Deutsche Grammophon  POCG-1860

オーケストラ・アンサンブル金沢と岩城宏之によるシリーズ企画、2年目の音源。
湯浅以外は、3人とも60年代前半の生まれ。
藤家の作品は、様々なテキスチャが目まぐるしく交錯する、せわしない曲。
けれど、よくある混沌とした音楽ではなく、スマートに全体が見通せる点が特徴的。
彼女の作品は、そういった「透き通ったきれいな響きというイメージ」が独特の音楽を作っています。
湯浅の作品は、初期の音楽とは比較にならないくらい温厚な響きの曲。
ロマン派的な美しさを持ちながら、ピアノとオーケストラが共鳴しあう。
こういうのは響きの綺麗さに浸って聴けるのでいいですね。
弦の細やかなノイズドローンから始まる「ウェーヴ・メカニクス」は、ヴィブラフォンの印象的な経過句から
トレモロや管楽器の小爆発を通して、徐々に音が撹拌されていく。
音響を非常に重視した、初期の彼女らしい作品ですが、この曲ですでに、作曲者の感覚や
聴き手への(聴きやすいように、僅かだけれど)譲歩など近年の作風への萌芽も垣間見えます。
猿谷の曲は、木星への彗星衝突を契機(自分の体験した史実だとなんか時代を感じるなあ)に作曲された、
音の集合・離散・射影や軌跡に注目して作り上げられたもの。
錯乱したかのような音たちがくるくると動き回る。
一つのモチーフが見方を変え、様々な方角から自分たちが見ているような、そんな展開。
あくまでも聴こえる音の全体的な印象は、乱暴ではないです。むしろしなやかな方。



日本の現代管弦楽作品集

NHK交響楽団  外山雄三、指揮 他
1991 CBS/SONY  CSCR 8375~7

1982年、尾高賞30周年の記念演奏ライヴ3枚組み。大体時系列に沿った収録で大きな流れがすんなり読み取れます。
一枚目は「木挽歌」以外戦前の、有名作品どころばかり。
山田耕筰の「曼荼羅の華」は最初期の日本管弦楽作品。
リヒャルト・シュトラウスのような和声感覚が著しいもので、いわゆる日本らしさは全く感じられません。
けれど、こんなものが第一次世界大戦前に作られていたということが凄い。やや陰鬱な響きを持った非常に綺麗な曲。
逆に、近衛秀麿の「越天楽」は純日本的な響き。原曲の響きを本当にそのまま引き出せているところがいつ聴いても凄い。
こういうものこそが本当の編曲なんだなあと思ってしまいます。
伊福部昭の「交響譚詩」は土俗的な激しいリズムが特徴的ですが、メランコリックな要素が特に強いです。
やけにトロンボーンがうるさい。伊福部マニアじゃない限りこのCD無理して探さなくて良いんじゃないかな。誰に言ってるんだ俺。
早坂文雄の「左方の舞と右方の舞」あたりまでくると西洋的・東洋的な概念がかなり高次元に混合されてきますね。
ちょっとこの演奏は散漫というか骨張ってないだろうか。もっと精緻な方がこの曲に合うと思う。悪くない演奏だけれど。
小山清茂の「管弦楽のための木挽歌」だけ50年代の作品。日本の民族情緒が前衛的な手法に盛り込まれた良い曲です。
これはノリ的にもなかなか雰囲気が良いですね。総じて残響が少ない録音だけにこういう曲が合います。

尾高尚忠の「交響曲第1番」は戦後間もない頃の作品。
非常にオーストリア的な西洋音楽を見事な筆捌きで描いています。
未完の交響曲の第一楽章ではないかという話ですが、もし完成していたら日本人としては類を見ない壮大さをもつ曲になっていたでしょう。
小倉朗の「交響曲 ト調」は作者の言葉通りバルトークやシェーンベルクの影響が濃い曲で、とくにリズム面などが特徴的。
ただ、全体的に調性の通りの明るい雰囲気で満ちており、聴いていてとても楽しいです。聴いてよかった。
芥川也寸志の「チェロとオーケストラのためのコンチェルト・オスティナート」は以前から気に入っていたもの。
妖しげな緩除部分と急くような部分との対比が印象的な、雰囲気は暗いですが構造は簡素明快な作品です。
入手が一番簡単なFontecの録音は正直演奏も録音も微妙だったんですが、こちらはなかなか端正にまとまっていて好感が持てます。
熱気とか派手さは前記のものに比べてありませんが、これはこれで一貫した音楽観を持っていて素晴らしい。
この曲独特の、オスティナート性に裏打ちされた妖しさが存分に堪能できる演奏、これだけでも買った価値ありますね。
外山雄三の「ラプソディー」は今更説明する必要の無い超有名曲。
手法こそ近代的ですが前衛的では無いので気軽に楽しむのが良し。
N響のお得意曲なだけあって手馴れた感じのある実に楽しい演奏。瑕もけっこうありますが、それでもこの演奏は良いものです。
逆に言うと、他の曲ではどうも曲に慣れている感じが少なくてぎこちなさが・・・

三善晃の「ヴァイオリン協奏曲」は彼初期の代表作であり、傑作でしょう。
ディティユのような和声がとくに顕著な、わかりやすい古典的展開を見せるとっつきやすい曲。
特に第2楽章は、最近の作風とはちょっと違う、クラシカルでノリノリなオスティナート。
尾高惇忠の「イマージュ」は、冒頭現れる簡単な音列から徐々に波紋が広がるように管弦楽が興奮していきます。
複雑で重厚な和音が多いですが、並立してメロディが進行することが少なくいたってシンプルなので聴いていてちょうど良い味付けに。
吉松隆の「朱鷺によせる哀歌」は彼の出世作にして代表作。自分も、どれか一つといわれたらこれかなあ。
繊細に細く震える主題や、ピアノによるパッセージがとても泣けます。
切なげで、どこか凛とすましている曲調がたまりませんね。
最近の曲はこういう脆そうな繊細さが無くて残念だなあ。チープな面ばかりが強調されてしまっている感が。
演奏、数あるテイクの中でもしかしたらこれが一番良いかも。崩れそうな危うさと美しさがよく表現されてます。
一柳慧の「空間の記憶」は短いピアノ協奏曲。ただし、ピアノは重要な役割をしているものの出番はそこまで多くは無い感じ。
空間的な音のふるまいを重点に置かれた、響きの広い作品。
前半、彼にしてはとりとめない感じですが、後半は彼らしい反復が出てきて良い。

しまった、意外と長くなっちゃった・・・まあいいや。
N響の録音らしい、良いんだけれど遠い感じがする、良くも悪くも音がそのまま捉えられている感じが演奏を好めるかの分かれ目かも。
ただ、コンセプト的にもなかなか買って損はしないボリュームのCDではあります。



David Felder; In Between, Coleccion Nocturna
Morton Feldman; The Viola in My Life IV, Instruments II

Daniel Druckman,Perc. Jean Kopperud,Vla. Jesse Levine,Cl. James Winn,P.
June in Buffalo Festival Orchestra  Harvey Sollberger(Fedler)&Jan Williams(Feldman),Cond.
2001 Electronic Music Foundation Inc.  EMF CD 033

アメリカの重鎮フェルドマンと中堅どころの作曲家フェルダーの作品集。どの曲も20分弱の長さ。
「In Between」は冒頭非常にドローン的。緊張感をもって漂う音に、突如音塊がかぶさってくる。
動的な部分では打楽器ソロを隠すようにして楽器が吼える。その凶暴な佇まいと迫力は対比的。
逆に、その管弦楽部分が派手すぎて、本来この曲が打楽器協奏曲であることを忘れてしまいそう。
「The Viola in My Life IV」はやっぱりフェルドマンらしい佇まいですが、何時も以上に古典的な響き。
ヴィオラの枯れた温かみのある音も合っていて良い。どこかメロディアスな部分が顔をのぞかせる瞬間は官能的ですらあります。
「Coleccion Nocturna」も持続音が強いですが、こちらはかなり弦楽器がメインです。
音楽のドラマチックな凶暴性は相変わらずですが、クラリネットとピアノの二重ソロとも相まって一応夜が連想できる仕上がり。
最初と最後のあたりはクラリネットのソリスティックなソロとピアノの穏やかな呟きが対比されて印象的。
「Instruments II」は「The Viola〜」の4年後の作品ですが、その間にフェルドマンがどれだけ変化したか良く分かる。
以前は音同士の繋がりあいがメロディーとして現れていたのに、この曲では個々の音が浮き彫りになっています。
後期フェルドマンらしい、和音と間の連続。静寂な響きに包まれた世界が20分続いていく。
この曲目で聴くと、いかにフェルドマンが自分の世界を確立できていたかが理解しやすいです。
フェルダーも十分良い曲を書いているんだけれどね。



民音現代作曲音楽祭'79〜'88

1988 Camerata  R-390138~45

民音現代作曲音楽祭の10周年記念の8枚組BOX。大御所からマニア処まで揃ってます。
全部紹介したらきり無いので、ざっと聴いて気になったものだけ軽く書き出し。
たぶん音響的に面白いものメインになってると思うので、(あれ飛ばすのかよ!)って意見はごめんなさい。

佐藤真の「交響曲第3番」は派手に鳴らす爆走作品。テンションの高さが凄い。
細かな素材の一つ一つがこれでもかと突き刺さってくる。
野田暉行「変容」は、邦楽器とそれ以外の微妙なきしみがスリリング。全体として茫洋とした妖しい雰囲気。
副士則夫の打楽器との協奏曲形式といえる「Chromosphere」は、ソロを始めとする打楽器群にオケで色彩をつける方法がとても巧い。
終始細かく動き続ける打楽器も魅力ながら、その色彩対比にも惹かれました。
湯浅譲二の「Scenes from Basho」は彼らしい内省的な、けれど大きな広がりを感じる作品。
松本日之春の「レ・レオニード(獅子座流星群)」は神秘的な序奏がお気に入り。
石井眞木の「半透明の幻影」は、彼独特の重々しいリズムが特徴的。打楽器炸裂の、何時もどおりの作品です。
一柳慧の「ヴァイオリン協奏曲「循環する風景」」は作者の言の通りシンフォニックな響きが強い。
はっきりとした調性感があり、他の収録曲と趣が異なっていて新鮮でした。またそれに限らず良い曲だと思います。
川南智雄の「オンディーヌ」は武満を思わせるような冒頭から内向的に妖しく音が巡っていきます。
ドラマティックな、どこか衝動的な爆発も含めて、ソプラノの歌とうまく引き立てあいます。こういう黒い曲大好き。
三善晃の「響紋」は児童合唱の「かごめ」が怖い(笑)生と死の対比というテーマ上おどろおどろしい音楽に聴こえるのはむしろ当然か。
肥後一郎の「交響曲」は神秘的な精霊たちの饗宴。メシアンに似た官能さを感じました。
メシアンが精霊信仰にはまったみたい。そうか、メシアン+ホヴァネスmeets前衛音楽って言えば済むのか。こういう曲好きです。
作者の言葉は理系の自分には難しくて理解できない・・・宗教的用語はわかりません。学が足りないだけか、そうだよね。
多田栄一の「交響曲第2番」は作者の言通り流れがスムーズで、語法とは別に古典的なシンフォニーの響きがします。
最初と最後の少し前に現れるフルートの低いソロとその伴奏が綺麗で良い感じ。
林光の「第2交響曲「さまざまな歌」」は彼らしい擬古典的?な聴き易い曲。さっきと違い交響曲の雰囲気ゼロ。
ショスタコのピアノ協奏曲第1番からを初めとする引用がすごい直接。というかその辺りのロシア音楽臭が。交響曲ですがピアノ独奏が常に中心的。
八村義夫の「ラ・フォリア」は未完の遺作。厳しく制限された音の断片からはストイックにもがく音がありのままに示されてます。
新実徳英の「交響曲第2番」は「全ての輝ける形容語との対応」との通り、透明で明るい主題といえる構造に様々な楽想が絡みつく。
ミニマルというかオスティナート要素が強く、特に最後は興奮できます。
松村禎三の「チェロ協奏曲」は色彩の激しい曲で楽しめました。
細川俊夫の「時の果てへ・・・」はドローンのように薄い弦の帯が全曲を支配します。とても内向的で静かな曲。
反対にその後の池辺晋一郎による「ピアノ協奏曲 II」はピアノを中心とした躍動的な曲。たたみかけるオケとピアノが印象的。
中川俊郎の「合奏協奏曲第2番」は楽想がころころ変わり目まぐるしい。須川展也が参加してます。
西岡龍彦の「闇の中の黒い馬」も同様ですが、より抽象的で緊迫していますね。
土田英介の「交響的譚詩」はゆっくりと旋律がうねりながら押し寄せてくる広がりをもった作品。

・・・結局大半を紹介していますね、わけわからん。しかもかなりは適当以下の一行説明だし。これで分かるわけないよ。
自分自身の備忘録程度の文章すいません。いつもだけれど。



ピエール・ブーレーズ;リチュエル
ロルフ・リーム;Gewidmet
ヘルムート・ラッヘンマン;ハルモニカ

Pierre Boulez; Rituel -In memoriam Bruno Maderna
Rolf Riehm; Gewidmet
Helmut Lachenmann; Harmonica

Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrucken
Hans Zender,Cond.

1997 cpo  999 484-2

ハンス・ツェンダー指揮のこのcpoものは、本当にはずれが無い。
自身も作曲家なだけあって、聴かせどころを心得ている気がします。録音もクリアで聴きやすいし。
ブーレーズのこれは代表作ですね。独特の呪術的神秘さが好きでよく聴きます。テンポは自作自演盤に比べやや早め。
低音が少なく、銅鑼のずっしりくる一打がとても印象に残ります。
この土台の無い空虚さがこの曲の面白さだと思います。録音もあり、この演奏ではそれが特に顕著。
このCDのリームは、一番有名なヴォルフガングではなく、ロルフのほう。
所々調性的なテキスチャを挟みながらがしゃがしゃと音楽が積みあがっていく。
なかなか面白い。かなり派手な曲なので単純な高揚感が味わえます。
実はヴォルフガングと間違えて買ったんですが、良い間違いでしたね、これ。
ラッヘンマンは以前から興味がありましたが、実はオケ作品を聴くのはこれが初めて。代表作の一つですが、とても楽しめました。
チューバとの協奏曲形式。重厚な音がこれでもかと引っ掻き回され、奇形の音たちと跳ね回る。
やっぱり大編成で聴くと、膨大な音の嵐に埋もれて恍惚状態になれます。
また、特殊音響の特異さ・斬新さといった効果が比較要素があるので分かりやすい。
特殊奏法を追求した作曲家は有名どころでシャリーノとかがいますが、あちらはどうも肌に合いませんでした。
シャリーノは自分の意図する音響を出すために特殊奏法を使いましたが
ラッヘンマンは特殊奏法の開発自体が目的であるあたりがその原因でしょう。
構成の一部としてきっちり組み込まれているよりも、まるで空気を読めずに浮かんでいるほうが趣味に合う。
もっとも、これだけでは音響性だけしか見ていないので曲の組み立てを無視した意見だと言われても仕方ないのですが。
とりあえず、下手な音響系アーティストなんか聴くよりずっと楽しいのは間違いない、とだけ付け加えます。
ああ、今度は「マッチ売りの少女」だ・・・



ヘイノ・エッレル:ハープと弦楽のためのエレジー 他
カリヨ・ライド:交響曲第一番 ハ短調

Heino Eller; Elegia for Harp and Strings etc.
Kaljo Raid; Symphony No.1 in C minor

ネーメ・ヤルヴィ指揮、スコティッシュ・ナショナル管弦楽団
Neeme Jarvi,Cond.  Scottish National Orchestra
1987 Chandos CHAN 8525

エッレルは知る人ぞ知るエストニアの重要な作曲家です。
あまりディスクも多くないですがECM Newシリーズにも名前があるようにもっと評価されて良い人物だと思いますね。
彼の曲は基本的には美しさが目立ちます。北欧特有の凛としたメロディーがてんこ盛り。
このCDにはエレジーのほか「弦楽のための五つの小品」「音詩「夜明け」」がありますがどれも素晴らしい。
特に私はエレジーの旋律や盛り上がりが気に入っています。
ちょっと冒頭とかの一部は「久石譲チック」と言えば雰囲気が少しは伝わるか・・・どうかなぁ。
カップリングのRaidの交響曲も白眉。第一楽章は鳥肌ものですね、カッコイイ!
トロンボーンを吹く人間として、こういうおいしい主題を任されているのは羨ましい。
北欧特有のあの涼しさが曲に満載のこのCD、買って本当に良かったと思いました。
ちなみに今はこのエストニアシリーズ第一弾、第二弾とセットになって売られてるはずです。
第二弾もいい曲そろってますよ。
Raidの他の曲ももっと聴きたいなあ、入手容易なのって後はトゥビンの補筆くらいか?



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