オムニバス 小管弦楽・弦楽

クラシックまたは現代音楽の、作曲家で括られていないCDのレビュー置き場。
ここでは比較的小編成の管弦楽作品や弦楽合奏など。
順番は適当に更新した順。




Laberintos
Herbert Vazquez; Los Laberintos del Sueno
Maria Granillo; Trance
Georgina Derbez; Cuarteto de Cuerdas No.1
Horacio Uribe; Trio No.1
Armando Luna Ponce; Sonata de Camara No.2

Onix Ensemble  Jose Arean,Cond.
2006 Urtext  UBCC 130

メキシコの若手作曲家による現代作品を演奏している一枚。
ギタリストでもあるヘベルト・ヴァスケス(1963-)はレオナルド・バラダやルーカス・フォスらの師事経験あり。
作品は弦楽トリオとフルート・ギター・ヴィブラフォンの組み合わせが
音響的な対比にもなる、5部分からなるリズミカルな音楽。
各楽器間の分担がいい具合に流れを損なわせない。最後はちょっと冒頭に似た雰囲気になって終了。
マリア・グラニージョ(1962-)はメキシコでエストラーダらに学んだ後イングランドにも渡っている女性作曲家。
室内管弦楽のための「トランス」(1999)は緊張感を持った、やや旋律的な印象を持つ掛け合いに始まり
次第にティンパニなどのリズムが現れてリリカルな感覚も持った優雅さも兼ねた踊りに発展する。
中間部のトロンボーンソロはエキゾチックさがホヴァネスみたい(と解説は言ってる)。
最後は前半のような盛り上がりを見せながらも、次第に消えるように終わる。
同じく女性作曲家ヘオルヒナ・デルベス(1968-)の「弦楽四重奏曲第1番」(1998)は
スル・ポンティチェロの薄い持続音から次第に動きが出てきて、同じ和声的持続の中でも
熱気がどんどんと漏れ出していく。最後は冒頭に戻るような感じですが、旋律的な動きはより現れている。
ホラシオ・ウリベ(1970-)モスクワのチャイコフスキー音楽院で学んだこともある人物。
「ピアノ三重奏曲第1番」第1楽章は変拍子も使ったリズミカルなModerato Ritmico。
作曲者曰く「オリエンタルな感じにもした」らしいんですが、あんまり感じません。
ただ、メキシカンなイメージではないことははっきりわかる。
長さとしてはメインの第2楽章、弦楽器の独特な歌いまわしは民謡的なものというか、むしろショスタコ。
そこらへんは学んだ場所柄なんでしょうか。盛り上がりも良いけれどリズム処理がすごくそれっぽい。
第3楽章はポリフォニーも思いきり使った鮮やかな曲。こっちのほうがむしろオリエンタルだよな…
アルマンド・ルナ・ポンセ(1964-)も主に師事した人間としてはレオナルド・バラダやルーカス・フォス。
作品は4楽章からなり、序奏的なとりとめないリズムがちらばる第1楽章、
サルタレロを意識したうねるような動きが特徴的な第2楽章、アダージョの第3楽章、
他ジャンルのダンスも想起させる激しさの第4楽章。
どれも悪くなかったけど、聴きやすさとしては中3曲。楽しさとしてはグラニージョ、ウリベ、ルナ・ポンセか。



Robert Davine, Accordion
hans Lang; Prelude and Fugue in C Major
Cecil Effinger; Nocturne
Paul Creston; Prelude and Dance Op.69
Ted Zarlengo; Suite for Accordion,Cello and Piano
Adamo Volpi; Preludio Op.31
Normand Lockwood; Sonata-Fantasy
John Gart; Vivo
Carmelo Pino; Concertino for Strings and Accordion
David Diamond; Night Music for Accordion and String Quartet
Matyas Seiber; Introduction and Allegro for Cello and Accordion

Robert Davine,Accordion  Lamont Chamber Players
1995 Crystal Records  CD160

アメリカ・デンバー大の音楽学校でアコーディオンを教える人物の、配下を伴奏に引き連れての録音。
ハンス・ラング(1897-1968)の「前奏曲とフーガ」は新古典主義な趣の
オルガン作品をアコーディオンで演奏したもの。小品ですが勢いがあって良い。
コロラド大で学んだセシル・エフィンジャー(1914-90)の「夜想曲」は
フォークな旋律を使いながらも近代的で聖歌のような歌いっぷりを和声でつけてくれる。
クレストンの「序奏と踊り」は重厚な序奏と軽快な踊りの対比。
とりわけ後半の踊りがアコーディオンらしいフォークさとクレストンの作風があっていて楽しい。
セッションズや前出のエフィンガーらに学んだテッド・ザーレンゴ(1924-)の「組曲」は
ロマン〜近代みたいな(解説はドボルザークを引き合いに)フォーク風音楽が聴ける。
短くも表情豊かな5楽章からなる小品集で、とても小気味いい。これ好きです。
主に宗教曲を書いたアダモ・ヴォルピ(1903-86)の「前奏曲」は
いかにもバッハのトッカータみたいな響きを持った、短くも劇的な作品。
アネア・ロックウッドなら知ってましたが、こちらはノーマンド・ロックウッド(1906-2002)。
ブーランジェやレスピーギに学んだ人間ですが、この「ソナタ=ファンタジー」(1965)は
技巧的というか前衛的な面も。第1曲は当時隆盛の極みだった前衛を意識しています。
ジョン・ガルト(1905-88)はロシア出身、グリエールらに学んだ人物、後年は渡米しました。
「ヴィヴォ」はそんなルーツを強く感じさせる、非常に快活なアンコールピース。楽しい。
カーメロ・ピノ(1934-)はアコーディオン奏者として活躍する人物。
時折タンゴやロックを意識したリズムも出ますが、基本は新古典風。
ダイアモンドの「夜の音楽」、ブーランジェやセッションズらに学んだ手腕は流石。
シリアスながらも美しい旋律が独特の音響で展開される面白い曲。これで演奏がもっとよかったら…
最後は、ブダペスト出身でイギリスに帰属したマティアス・セイバー(1905-60)の「序奏とアレグロ」。
ハンガリーの民謡を強く思わせる音楽で、序奏のゆったりした響きは確かにコダーイにも似てる。
後半のアレグロはいかにもな伴奏で笑えるけど、ノリの良い曲です。
演奏、アコーディオンはともかく伴奏の弦楽がかなり微妙な出来。



Stanislaw Moryto; Four Pieces in Polish Style
Henryk Mikolaj Gorecki; Three Pieces in Olden Style
Romuald Twardowski; Triptych of the Virgin Mary
Witold Lutoslawski; Five Folk Melodies
Wojciech Kilar; Orawa

Sinfonia Academica Chamber Orchestra  Leszek Sokolowski,Cond.
2012 DUX  0939

現代ポーランドの弦楽合奏作品を集めた、微妙にマニア心をくすぐる選曲。
まずはTadeusz Paciorkiewiczに作曲を学んだスタニスワフ・モリト(1947-)の「ポーランド風の4つの小品」(2011)。
聴いた感じは、後に収録されたグレツキの曲にとても似ている、つまり非常に穏健。
独特の和声のモダンさからは確かにルトスワフスキや後期ペンデレツキに通ずるものもあるけれど、
特にこの1曲目はグレツキの曲の3曲目と酷似してます。楽しいから良いけど。
グレツキの「古い形式の3つの小品」、録音は多いですが一般流通での新録は久しぶりな気がする。
こうして聴くと無骨な印象の演奏、第2楽章は長めのアーティキュレーション。
めりはり聴いているので楽しめます。わざわざ探しても微妙ですが、
曲目ラインナップにつられて買って聴いたときに十分魅力が伝わる演奏とは思います。
ナディア・ブーランジェへの師事経験もあるロムアルト・トファルドフスキ(1930-)の「新婚の三連曲」(1973)、
新ロマン主義に与する作曲家らしく、実に素朴な音楽の流れ。
ただ、和声が曲によっては良い感じに刺激的で、現代の作曲家が書いた音楽ということがすぐわかる。
和声の豊かなメイン3曲の間に実に穏健で軽快な舞曲が挟まれているので実際に聴いていると5曲構成っぽい。
ルトスワフスキ「5つの民謡」(1952)は本来ピアノのために書かれた「12の民謡」からの抜粋編曲。
有名な「管弦楽のための協奏曲」の少し前の曲であり、素直な小品の中に
彼が滾らせていた技法への野心を感じ取れる、すごく充実した音楽になっています。
最後はキラールの人気作「オラヴァ」。この録音はけっこう最初から飛ばしてる。
ちょっと重みはないけれど、その扇情感は悪くない。ただアンサンブルは粗い。
雰囲気が同じじゃなければ、これだけ演奏家が違うだろと思いたくなるくらいに高い音とか音程が無い。
あと、途中のチェロソロは絶望的にアンサンブルと合っていなくて、逆にすげえと思った。
まあ「オラヴァ」を聴いてわかるように、技術は精緻なものじゃないけれど
音楽を楽しむ分にはまあまあ問題ない感じで良かった。特に、同曲異演を知らない曲は楽しめる。



The Minimalists
Steve Reich/arr.Anthony Fiumara; City Life
Kyle Gann; Sunken City(in memoriam New Orleans)
Louis Andriessen; Workers Union
Terry Riley; In C
David Lang; Street
John Adams/arr.Anthony Fiumara; Short Ride in a Fast Machine

Orkest de Volharding  Jussi Jaatinen,Cond.
2009 mode  214/215

オランダの前衛アンサンブルによる、ミニマリズム作品を集めた2枚組。
ライヒの「シティ・ライフ」のこの団体のために編成を編曲されたバージョン、
こうして聴くと微妙に響きが肉厚になっていて楽しい。
正直この曲は彼の作品の中でもちょっと微妙な方だと思ってたので、この方が良い。
カイル・ガンによるピアノと管楽器による協奏曲「沈みゆく都市」は
ニューオリンズの思い出に捧げられているだけあって、20年代ジャズへのトリビュート溢れた作品。
管楽アンサンブルであることを利用した、見事にオールドジャズな音楽の連続。
長い後半はブルースの世界になります。ピアノの甘い世界が広がる、とても聴きやすい曲でした。
アンドリーセンの「ワーカーズ・ユニオン」はこの団体のために書かれた作品。
そもそもの団体の名前がアンドリーセンの作品だし、繋がりはそもそも凄く深いわけです。
演奏も良く纏まった(?)不協和だらけのぐちゃぐちゃなものになっていて、かつリズムは異常にまとまっている。
この曲はリズム指定のみ厳密で、音高指定は線でガイドラインを引いてあるだけ。
この演奏は初演者の名に恥じない、初めて聴くにふさわしい音源だと思います。
個人的な好みとしはRicciotti Ensembleの音源も捨てがたいが、
こっちのピアノのクラスターとドラム音がずっしり響いてくるのも良い。
ライリーの「In C」はピアノ、ベースにヴィブラフォン、サックスに
トランペットとこの団体らしい組合せ。落ち着いた見通しの良い演奏です。
デイヴィッド・ラングの「ストリート」、どうやら先ほどのアンドリーセン作品と同じような構想からできた作品らしい。
ただし、聴覚上は正反対。淡く和声が伸びて変化していく、アンビエントドローン風の音楽。
最後にジョン・アダムス「高速機械で早乗り」。冒頭の木管が死んでて思わず笑ってしまってごめんなさい。
でもなんとなくごまかせるそれ以降はなかなか悪くなかった。原曲フルオケと比べると流石に音響は中途半端だけど。



Casablancas/Casas/Guinjoan/Guzman/Pladevall
Benet Casablancas; New Epigrams
Josep Lluis Guzman; D'haver-vos ofes(If I have Offended You)
Josep Maria Pladevall; Cadencia
Pere Casas; Quatre peces per a 11 instruments
Joan Guinjoan; Self-Parafrasis

London Sinfonietta  Edmon Colomer,Cond.
1999 Ensayo  ENY-2001

スペインの、主に50年代生まれの作曲家の室内楽曲をロンドン・シンフォニエッタが演奏した一枚。
ベネット・カサブランカス(1956-)はチェルハらに学んだ作曲家。「ニュー・エピグラムス」は彼の代表作。
短い構成ユニットを高い密度で目まぐるしく絡み合わせた音楽。神秘的で夜想曲のような第2曲を経て、
第3曲ではまた躍動的になり、今度はコンチェルタンテのようなピアノを少し引き立てた音楽に。
全曲10分ほどですが、非常に劇的で聴いていて飽きない。スペインの大御所なだけはある。
ジョセプ・ルイス・グスマン(1954-)の詳細はぱっと出てこなかった…
曲は伝統的なスタイルに則った「聖歌(Chant)」と「後奏曲(Postlude)」の短い2曲からなる。
16世紀スペイン音楽風の、実に素朴できれいな小品です。これ普通にいいな。
ジョセプ・マリア・プラデバル(1956-)はカサブランカスと同郷の作曲家。
「カデンツィア」はチェロのソロを主役にした小さな協奏曲風の作品。
ラテンの舞踏のようなリズムを随所に表せながら、音楽は題のように自由に変化する。
ペレ・カサス(1957-)もうまく情報が出てこないなあ…
「11楽器のための4つの小品」は和声的・リズム的に同じ動機で作られているとのこと。
なるほど、システマティックなものを重視する作曲家らしい堅牢な構成の音楽。
カタルーニャ出身のジョアン・ギンジョアン(1931-)だけこの中では別格、古株です。
知名度はカサブランカスの方があると思いますが、この方も負けてない、はず。
「セルフ・パラフレーズ」を聴いていると、なるほどセンスが古いというか、一世代違うんだなというのを実感。
音楽の構成はきっちりしていて近代的、面白いけど先刻までの人物たちのような破天荒さは一切なし。
単純に好みで分かれるだけなんですが、自分の感覚ではなかった。

カサスの曲なんかもホールで聴いたら面白そうだけど、こうして聴く分には最初2人かなあ。
演奏は問題なし。ロンドン・シンフォニエッタらしい豊かな歌いまわしも効いてる。



Silver Apples of the Moon -Irish Classical Music
Arthur Knox Doff; Meath Pastral, Irish Suite for Strings
John Francis Larchet; Mac Ananty's Reel, The Dirge of Ossian
Thomas C. Kelly; O'Carolan Suite in Baroque Style, Three Pieces for Strings
Joan Trimble; Suite for Strings
Aloys Fleischmann; Elizabeth MacDermott Roe

Irish Chamber Orchestra  Fionnuala Hunt,Cond.
1997 Black Box  BBM1003

アイルランドの作曲家による弦楽合奏のための作品集。
アイルランド放送交響楽団の指揮もしていたアーサー・ダフ(1899-1956)の作品1つめは
この時代の作品らしい、実に甘美で甘い旋律が聴けて大満足。
4分ほどの小品で、ウォーロックとかディーリアスがちょっと古典になった感じ。
ジョン・F・ラーチェット(1884-1967)はやはり同時期ダブリンで活躍した人物。
非常に軽快で心地良い1曲目と歌うような旋律の甘さを味わえる2曲目、どちらも小品。
トーマス・C・ケリー(1917-85)はダブリンの西のキルデアにあるClongowes Wood Collegeで教鞭を執っていたようです。
蛇足、ジョイスもここに入ってたことがあるらしいですね。退学してますが。
「バロック形式によるオキャロラン組曲」はアイルランドでは伝説的に有名な
盲目のハープ奏者/作曲家ターロック・オキャロラン(Turlough O'Carolan)の旋律を元に作られたもの。
ソロヴァイオリンを据えた、まさにタイトル通りの小ざっぱりとした小品が5つ入れられた珠玉作品。
ジョアン・トリンブル(1915-2000)は北アイルランド出身の女性作曲家。
ロンドン王立音大でベンジャミン、ハウエルズ、RVWらに師事してます。「弦楽のための組曲」は上記のダフによる指揮で初演。
このCDの中ではインテリ系に属するだけあって、和声の絡みはただ綺麗なだけじゃない。
まあ旋律の組み立て方がそもそも対位法ばりばりな時点でほかのバロックや牧歌風とは全然違いますわな。
ただ作り方が違うだけで、漂うムードはやっぱりアイルランド風の気品。第3楽章とか
ダフ2曲目「弦楽のためのアイルランド組曲」は彼の代表作。まさに先述の2人、
特にウォーロックに近い響き。溌剌としたリズムの切れ味のよさがたまりませんね。
ドイツ系のルーツを持つアロイス・フレイシュマン(1910-92)の曲はやはりオキャロランがオリジナル。
ゆっくりと歌うような旋律が幾重にも絡み合って展開する、ゆるやかな音楽。
最後にケリーの「弦楽のための3つの小品」。こちらは比較的初期の、しっとりとした音楽がメインの作品。
演奏も音楽もよし、実にすばらしい一枚でした。
ウォーロックやバターワースまで一通りイギリス近代を聴いた人なら、手を出して絶対損はない。



Ensemble MW2
David Cope; Towers
Thuring Bram; Ara for flute and tape
Roman Haubenstock-Ramati; Alone2 for doublebass and tape
Bent Lorentzen; Syncretism
Adam Kaczynski; Shape for two pianos

Ensemble MW2
Vienna Modern Masters  VMM 2024

ポーランドはクラクフを拠点とする、現代音楽中心に演奏するアンサンブルのCD。
デイヴィッド・コープ(1941-)はカリフォルニア出身。
「塔」、低いうねり、錯乱する高音、コントラバスのうめくようなグリッサンド。
図形楽譜に基づいた、3つのクライマックスを持つ4重奏曲。
スイス出身のテュリング・ブラム(1944-)による「Ara」は
フルートアンサンブルかテープ共演による作品。神秘的で怪しげな旋律がカノンのようにこだまして、
モノフォニックなはずの構成にポリフォニックな音の帯を形作らせていく。
対比的な、ビートを感じさせるリチュアルな楽想も印象的。
ご存じ図形楽譜の大御所ラマティの「Alone2」、クラクフで初演された上に
初演者のKazimierz Pyzikのエレクトロニクスを使用しているからという選曲理由がありそうです。
緩急激しいエレクトロニクスに朗読、そこにコントラバスのかきむしりが入る。
激しい音響的なうねりが爽快な逸品ですが、元はたった1ページの図形楽譜。
というかこれ、Pyzikのミュージック・コンクレート風な編集手腕がすごいのでは。
ベント・ロレンセン(1935-)は以前聴いた電子音楽作品集が高内容でしたね。
この「シンクレティスム」、特殊奏法による過激な音響が全編のほとんどを彩ります。
ピアノ、トロンボーン、チェロ、クラリネットの編成なのがかすんで見える。
そのさまはシャリーノやラッヘンマンに近づく勢い。各楽器の同一化を図ろうとする意図はいいのですが、
ここまでノイズ音で攻めてくるとは。この人は電子音楽以外でもやばかった。
最後はアンサンブル創設者でもあるアダム・カチンスキ(1933-)の「シェイプ」。
音程などの具体的な指示を出していない、ある程度演奏者の裁量に任せる偶然性がある作品ですが、
メカニカルで激しい爽快な冒頭やメロディックな楽想などを聴いているとあんまりそう思えない。
むしろ、影響としてはミニマル音楽のほうが強く感じられます。
そこに容赦なく挟まれるクラスター風の音塊による衝撃が心地よい。いきなりの朗読はびっくりするけど。
出来としては、真ん中3曲が良い感じかなあ。
最後は聴きやすいけれど、長い割にはどうも微妙な感じが。



Young Composers' Group Anthology-IV.
Laszlo Ditroi Kelemen; Sonata for Violin Solo
Katalin Pocs; Meditation
Bela Farago; Notes on a Dream
Szilvia Elek; Late Dream-letters
Sandor Kiss; Reading from the Ecclesiastes

Eszter Perenyi,Vn.  Ildiko Vekony,Cimbaron  Group 180
Eva Lax,Mezzo-S.  Szilvia Elek,P.  Balazs Kocsar,Cond.  etc.
1995 Hungaroton  HCD 31192

1976年に設立された、ハンガリーの作曲家連盟に所属する作曲家の作品集。
Laszlo Kelemen(1960-)はトランシルバニア出身の、民族音楽にも力を入れる作曲家。
「ヴァイオリンソロのためのソナタ」はバロック風の構成とフォークロアな感性を
同時に表現し、BACH音型を盛り込んだ4楽章制の作品。
第4楽章などははっきりとその影響が出ていてわかりやすいうえに溌剌とした楽想が楽しい。
Katalin Pocs(1963-)はブダペストの女性作曲家。
ツィンバロン独奏のための「瞑想」は上昇音型の五度音階などがゆったりと響く曲。
淡い独特なツィンバロンの響きが音楽を美しくもアンビエントな世界にしていて素晴らしい。
中間部は対照的に激しく動きまわりますが、あまり長くはありません。
Bela Farago(1961-)はHungarotonのタイトルによく出てきたりするので知ってはいた。
ハーグへの留学経験もある、この中での実力派と言えそうな人物。
曲の方は、とてもノスタルジックな弦楽のコラールに始まり、
室内楽の淡い旋律がピアノの緩やかなリズム音型に乗せ長く伸びていく夢のような音楽。
ただ、ちょっぴりHans Otteとか坂本龍一とかの
ミニマルとアンビエントを足したような音楽になっているあたり何とも言えない。
後半、シンセやエレキベースも入ってなんかドキュメンタリーのBGMみたいな感じだし。
Szilvia Elekはもブダペストに生まれた女性作曲家。クルタークへの師事経験あり。
彼女の作品は短い5曲からなる歌曲集ですが、素朴で夜想曲のような音楽が気に入った。
最後のSandor Kiss(1960-)もブダペスト出身。専門がバリトンのようで、ここでも自作曲を歌ってます。
音楽のほうはそこそこ前衛的なレチタティーヴォの体裁。
ただ、ラグタイムも好きらしく音楽にもそれが時折出るので侮れない。
7重奏の伴奏とバリトンがころころと絡み合いながら、聖書の一節を歌う。
ちなみに、この声質だとバリトンと言うよりフォークロアなテノールの気がする。



Robert Linn; Divertimento for Oboe, 2 Horns and Strings
Frederick Lesemann; Sir Blue Slips a Trend (5 Fugues for String Quartet),
Doubles for Viola and Horn, Duo for Horn and Piano

Southwest Chamber Music
2000 Cambria Master Recordings  8810

Composer Portrait Seriesと題したカップリング作品集。
ロバート・リン(1925-99)は私が個人的に最も評価しているアメリカ作曲家のひとり。
サンフランシスコ出身、ミヨー、セッションズ、インゴルフ・ダール(Ingolf Dahl)らに師事。
彼の作品リストは吹奏楽の比率が多いですが、そのあたりはダールあたりの流れを汲んでいるのかもしれません。
この「オーボエ、2つのホルンと弦楽のためのディヴェルティメント」は95-96年に書かれたので晩年のもの。
モーツァルトのK.251ディヴェルティメントを意識しているであろうこの5楽章制作品は
やはり1,3,5の速い楽章で彼らしいシステマティックな音楽の流れが聴ける。
この目まぐるしさにも似た感覚はリンの作品でしか味わえないもの。
第3楽章はワルツ、形式の軽快さと彼らしい展開が組み合わさって非常に面白い。
ゆったりとした音楽の流れはそれを思うとかなりすっきりしたもの。
一方フレデリック・レセマン(1936-)はリチャード・ホフマンやダールらに師事した人物。
「サー・ブルー・スリップス・ア・トレンド」は副題の通り、
古典的なフーガ構成にアメリカらしい開放的な音楽性が入ったさっぱりした曲。
ただし、フーガによって音楽の印象はかなり変わってます。
ヴィオラとホルンのための「ダブルス」はこの演奏者のために書かれた作品。
2音間で揺れ動く動機が中核となって繰り広げられる10分ちょっとの曲。
ちなみにこの曲はけっこう編成のバリエーションがあるみたい。
最後は「ホルンとピアノのための二重奏曲」、ソナタじゃないらしい。たしかに音楽の印象はレチタティーヴォ風。
演奏、悪くないんですがちょっと盛り上がりに欠ける。
特に最後のカタストロフがないのはちょっと聴いていて物足りない・・・
中身はそつなくまとめられているだけに残念。



Aldo Clementi/Riccardo Nova - Caput Ensemble
Aldo Clementi; Adagio, Berceuse, Impromptu, Scherzo, Triplum
Riccardo Nova; Sex Nova Organa, Sequentia Super Beata Viscera, Carved Out, Sequentia Super Sex Nova Organa

Caput Ensemble,Reykjavik  Gudmundur Oli Gunnarsson,Cond.
Stradivarius  STR 33336

イタリアの重鎮と若手の作曲家を並列して収録した一枚。
最初のアルド・クレメンティ(1925-2011)はシチリア出身の作曲家。
「アダージョ」(1983)は中期の作風を如実に表している作品。専門的に分けた場合は・・・第4期?
暗くうごめくような構造が反復される、まるでフェルドマンのような世界が耳に届く。
オルゴールが止まっていくかのような手法「カノン・ラレンタンド」を使った最後なども非常に印象的。
なおこの曲バージョンがあるようですが、ここではピアノ四重奏+コントラバスの編成。
「子守唄」(1979)も同様手法を使った作風。プリペアド?されたピアノの
ハープシコードのような響きと、その上でのバスクラリネットの艶めかしい歌がいい味です。
「間奏曲」(1989)はより音楽の響きは曖昧になってくる。
旋律断片の部分的拡大及び縮小を施した「ファラドワルツ」by wikipedia
の手法も使ってるんでしょうか、響きの移ろい方がとても絶妙なゆらぎ具合。
「スケルツォ」(1985)はそこそこ元気に動き回る楽器群の旋律の上をずっと
一定のクラスターで電子音が流れているあたりインパクトは大きい。
「トリプルム」(1960)はこの中で唯一初期の作品。彼がまだセリエルで完全に統制された作品を
完成させようとしていた時期のもので、点描構造がはっきりとわかる、というか収録曲の中で浮いてる。
彼の個性的と言われた作風が分かるラインナップで良いです。
一方ミラノ出身のリッカルド・ ノヴァ(1960-)はヴェルディ音楽院で学びIrcamなどの在籍経験もある人物。
タイトルを見ても分かるように、ベリオをかなり意識した作曲をしているようです。
「Sex Nova Organa」なんか、ばらばらとした動きから次第に切羽詰まる動きが出てくるあたり印象的。
「セクエンツィア」のシリーズは彼がそれまで作ってきた作品をセクエンツィアの概念の下に再作曲したシリーズ。
ベリオの「セクエンツァ」シリーズにおける一連の「シュマン」に相当するものでしょう。
「Sequentia Super Beata Viscera」は冒頭から、続唱らしくはっきりと一定のシークェンスを不規則に反復している。
不規則なビートと打楽器のリズムが刺激的でとても楽しいのですが、ここまでくるとミニマルみたいにも思えてくる。
「Sequentia Super Sex Nova Organa」はオリジナルも同時収録されているので比較容易で面白い。
相対的にはクレメンティが面白いけれど、セクエンツィアシリーズのノヴァ作品も捨てがたい。
演奏者は87年設立のアイスランド団体。この国特有な淡さと鋭さ、悪くないです。



Festival Milano Musica Live -Volume 4
Gyorgy Kurtag; Hipartita Op.43
Salvatore Sciarrino; Aspern Suite

Hitomi Kikuchi,Vn.  Ensemble Recherche  Petra Hoffmann,S.
2010 Stradivarius  STR 33890

ミラノ音楽祭のライヴ音源から抜粋してCD化されたもの。
クルタークの「ヒパルティータ」はヴァイオリンソロのための作品。2006年の第15回ミラノ音楽祭音源。
それまでに作曲されたフルート(1曲目)や声楽(5曲目)のための作品も編曲して盛り込み、
30分弱を要するソロ作品としてはかなりの大作に仕上げています。
元から彼の作品は古典的な要素が強いですが、この作品ではそれが特に顕著。
パルティータ、とりわけバッハのそれを意識した音楽はゆっくりと動きながら影を彫る。
初演者で被献呈者である菊地裕美の演奏はさすがのもの。タイトルの「Hi-」も「Hitomi」から来ているとのこと。
一方、シャリーノ「アスパン組曲」は、ヘンリー・ジェイムズの「アスパンの恋文」を
原作とした音楽劇の組曲版。とはいっても40分を超える大きさになっていますが。第12回の音源。
モーツァルトの「フィガロの結婚」を音楽的ベースにしているので、その断片が聴けることも。
序曲の小気味よくも特殊奏法で完全に彩られた、ある種フォークロアな雰囲気で音楽は幕開け。
フルートや弦楽器、ティンパニなどの亡霊のような響きの中でソプラノがテキストを歌う。
その古典の世界がほの暗い中で響くことによる亡霊的な感覚がシャリーノの音響で倍増されるあたり、
彼は自分の音がどうすれば聴き手に強い印象を与えるかよくわかっていますね。



St. Michel Strings in Poland with Tadeusz Wicherek
Grazyna Bacewicz; The Concerto for String Orchestra
Mieczyslaw Karlowicz; The Serenade for Strings Op.2
Mariusz Matuszewski; Seven Pictures of Poland
Romuald Twardowski; Old Polish Concerto

St. Michel Strings in Poland  Tadeusz Wicherek,Cond.
Alba Records  ABCD 173

近現代ポーランドの弦楽オーケストラのための作品集。
グラジナ・バツェヴィチ(1909-69)の「弦楽のための協奏曲」は彼の代表作の一つ。
第1楽章の溌剌とした鋭いアレグロは聴いていてすごく小気味よくて爽快。
重厚で荘厳に響く第2楽章から冒頭のような勢いで、跳ねるようなリズムを展開する第3楽章。
実に聴いてて楽しい、元気に満ちた作品です。
ミェチスワフ・カルウォーヴィチ(1876-1909)はシマノフスキと並ぶ
近代ポーランドの実力派若手だったにも関わらず、山岳事故で早逝してしまった人物。
後年の交響詩の数々による感傷的な作風に隠れたファンも少なくないのですが、
ここに収録された「弦楽セレナード」は作品2という初期の作品。
まあ彼の作品カタログは作品14までしかないんですけどね・・・
素晴らしく甘美で気品漂う、それでいて軽妙なマーチ、情緒たっぷりに歌われるロマンス、
軽やかに踊るこれ以上なく正統なワルツ、快活ながらも端正にまとまったフィナーレ。
ワーグナー、チャイコフスキー、リヒャルト・シュトラウスに傾倒しながら
甘美な近代的和声とポーランド風のわずかな土着的旋律の風味を見せる、情緒にあふれた音楽です。
マリウシュ・マトゥシェウスキ?(1948-)はポーランドの戦後第2世代あたりの人物でしょうか。
ポズナニ音楽アカデミーで教鞭を執っている、正直国外には知名度が薄い人物のようです。
「7つのポーランドの風景」はグラジナ・バツェヴィチ国際作曲コンクールでの受賞作品。
特定の絵画・写真をモチーフにしているわけではないようなのでPictureを風景と訳してみた。
ちょっと癖はあるけれど、普通に展開する素朴な小品集。
ロムアルト・トファルドフスキ(1930-)はナディア・ブーランジェへの師事経験がある
グレツキらと同世代の作曲家。「古風なポーランド協奏曲」は軽快でロマン派的な音楽。
グリーグあたりの時代を想起させる、情緒的で穏健な美しい曲です。
どの曲も非常に素晴らしかった。演奏も地元なだけあってツボを実によく押さえている。
個人的な趣味だと、バツェヴィチとトファルドスキかなあ。カルウォーヴィチも良いけれど。



Crosswinds
Morten Thybo; Dagenes Speil(Mirror of the Day)
Henrik Sorensen; Triplets in Space
Anders Muller; Visions and Views, Secrets of the Mill
Hanne Romer; Amor Cascada
Jakob Riis; Three Indications

Ensemble NEW  Randers Chamber Orchestra  David Riddell,Cond.
Classico  CLASSCD 260

デンマークの、ジャズ協会絡みと思われる作曲家連盟(DEN 3. VEJ)所属の作曲家作品を収録した一枚。
このレーベルは、お国ものとはいえそういうどマイナーな音楽を当然のようにぽんと出してくるから面白い。
モルテン・ティボの曲はリズミカルで洒脱な音楽。ライトな室内楽ジャズのノリで、サックス、ピアノ、ベースが中核を成す。
クラシックとジャズの中間を行く、実に滑らかできれいな楽想はさっぱりしていて心地よい。
ヘンリク・ソレンセン?はモノコードによるドローンからベースのメロディーが浮かび、民族打楽器などを中心として
アフリカンルーツを持ったフュージョン系ジャズのような楽想を見せる。
ミュラー作品一発目「Visions and Views」はいかにもネオクラシカルで爽やかな冒頭。
その後もジャズ風のクールさは匂わせつつ、ずっと軽快に室内楽作品の体を展開していく。
ハンネ・ロマー?の曲はやや衝撃的な冒頭とちょっとバラード気味な歌が印象的。
が、中核はやっぱり地中海ジャズの香り漂う、サックスと一定のベース音が支配的な楽想に。
リースの曲はこの中では一番現代的。旋律が激しく絡み合い、混沌とした音響に。
何というか、フリージャズが好きなのかなあ、この人。
最後はミュラーの「Secrets of the Mill -Fantasia on a Danish Folk Tune」。
古典的な幻想曲のような展開の中に、映画音楽みたいな情景を思わせるブルーノート和音で
じわじわと盛り上がる。リズムのごつごつした輪郭がいかにも民謡音楽。

はっきり言って、どの作曲家も軽い検索じゃ情報がさっぱり。
ただまあ、北欧ジャズの雰囲気が好きでこういうオーバークロス系がいける人は聴いてみると良いかも。
自分としてはティボ、Sorensen、Romerの曲あたりがよかった。次点で最後の曲。



沈黙の声 -バルト諸国の音楽1
Baltic Works for String Orchestra Vol.1
Osvaldas Balakauskas; Ostrobothnian Symphony
Peteris Vasks; Symphony for Strings "Stimmen"
Onute Narbutaite; Opus Lugubre

Ostrobonian Chamber Orchestra  Juha Kangas,Cond.
1995 Finlandia  WPCS-4931

ヴァスクスの音源は明らかに持ってたけれど、確かこのCD自体は持ってなかった気が。
というわけで両端作家の作品を聴くために安く購入。
オスヴァルダス・バラカウスカス(1937-)はリャトシンスキーに師事したリトアニアの代表的作曲家。
「オストロボスニア交響曲」、印象的な混み合った和音の汽笛で始まり、それが次第に動きを顕にしていく。
そこからは、セリエリズムへの傾向と、リズムとイントネーションへの探求という
彼の一見相反したものへの同時的な嗜好がよく読み取れます。
その独特の謎めいた感覚や、和音が長く伸びていく持続的な音楽が気に入った。
決して聴きづらい前衛さが押し出されているわけではないので気軽。
さて(自分にだけ)お馴染みラトヴィアのペーテリス・ヴァスクス、
「弦楽のための交響曲「声」」はちょうどラトヴィアの独立運動とソ連の対立があった頃の作品。
第1楽章の冒頭、このノスタルジックで儚げな旋律を聴くだけで彼の曲とわかる。
この優しげで切ない旋律性が彼の音楽の一番大きな特徴。
それが第2楽章で盛り上がっても実にクラシカルなふくよかなもの。
まあ、もう今の自分としては両端楽章みたいのがちょっとあれば十分なんですが。
でもこれだけ聴きやすくて構成もあるのは一定の価値が確かにある。
オヌテ・ナルブタイテ(1956-)はリトアニアの女性作曲家。
絵画的な音楽記述を行っているそうですが、ここの「悲しい作品」を聴いていても
その微細な動きが細やかに重なっていくさまは曖昧な抽象さを持った絵画のよう。
というか、印象は異なっても武満的な音楽観にかなり近い。
生年がちょうど10年単位だったので、それも絡めながら概観が出来るかなと思ったんですが、
そんなことはなかった。あくまで作風などはてんでばらばら。



London Sinfonietta -Warp Works & Twentieth Century Works
Aphex Twin; Prepared Piano Pieces 1 & 2, AFX237 V7, Polygon Window
Conlon Nancarrow/Yvar Mikhashoff; Study No.7
John Cage; Sonatas 1/2/5/6/12, First Construction in Metal
Steve Reich; Violin Phase, Six Marimbas
Squarepusher; The Tide, Conc 2 Symmetriac
Karlheinz Stockhausen; Spiral
Edgard Varese; Ionization
Gyorgy Ligeti; Chamber Concerto

Clive Williamson&Rolf Hind,Pre.P. Clio Gould,Vn. Simon Haram,Sax. Sound Intermedia,Live Erectronics
London Sinfonietta Jurjen Hempel & Stephen Asbury,Cond.
2006 Warp  WARPCD144

ロイヤル・フェスティバル・ホール10周年を記念して、Warpレーベルのアーティストと
20世紀の現代音楽を統合しようとした試みのライヴ録音。
音響のパイオニストでもあった現代音楽家をテクノ音楽と並列化しようという考えであって、クロスオーバーを目的としたものではないです。
エイフェックス・ツインによるプリペアド・ピアノのためのオリジナル作品2つは実に素朴でメロディアスな音楽。
ナンカロウの練習曲は7番なのでかなり初期。まだ分かりやすい構造で聴きやすい。
のどかな音楽がぐちゃぐちゃなリズムで入り乱れていく様はさすがナンカロウ。
イヴァ・ミカショフの編曲でスリリングで興奮できるハイな一曲に仕上がっています。
次はここで本家プリペアド・ピアノ、ケージの「ソナタとインターリュード」から最初のソナタ二つ。
不可思議なこのピアノの音色を最大限効果的に使われた、のどかで緊張感ある音楽。
スティーヴ・ライヒのヴァイオリン・フェイズはフェイズ・シフトを生楽器と録音で行った彼初期の音楽。
クリアな音でずれがよく分かる。クールにテンション上げられる、カッコイイ曲ですよね。
ケージ二発目、第一コンストラクションは第三と共に最初期打楽器音楽の傑作。
スクエアプッシャーの「The Tide」はDavid Horneの手によって立派な現代音楽に早代わり。
アンサンブルの各楽器による特殊奏法を使いまくり、原曲の雰囲気を少しでも出そうと腐心しています。
シュトックハウゼンのスパイラルは、ホワイトノイズとサックスのディレイを伴うソロから始まり、
ソリスティックな音がエレクトロニクス処理に飲み込まれ、電子音と存在を共有していく様がカッコイイ。
CD2はまたケージのソナタ(12番)で壮大に幕を開け、ヴァレーズの電離へ。
打楽器音楽の幕開けを宣言したこの音楽、スマートにくっきりとした演奏をしてくれています。
ライヒの「六台のマリンバ」は比較的落ち着いたテンポ。程よくトリップ出来ますが、流石に自作自演と比べると分が悪い。
スクエアプッシャー二週目、「Conc 2 Symmetriac」は打楽器合奏とエレクトロニクスに編曲されています。
一瞬で終わる、音響系となんら変わらない音楽に。元からそんな感じだけれど。
がさごそしたケージのソナタ(5&6番)を挟んでエイフェックス・ツインの「AFX237 V7」。
現代音楽としか思えない冒頭からファンキーでスリリングなリズムまで、
「現代音楽とロックの融合」と言われたら信じそうな音楽。
リゲティの室内協奏曲は、雲のようなもやもやした音形がたちこめる彼の代表作の一つ。
彼が「練習曲」のようなリズム機構に偏重する前の、こういったシリアスな作品も素晴らしい。
最後はエイフェックス・ツインの「Polygon Window」。編曲はKenneth Hesketh、この人吹奏楽の方で知られてますね。
打楽器アンサンブル曲とロックが組み合わさってノリノリになったみたい。
最後、オリジナル部分のスネアから始まる打楽器アンサンブルは観客と一緒に叫びたいです。
演奏も素晴らしいのですが、それ以上に好感なのは聴衆の態度。
終わった後の拍手と歓声はクラシックなんだかテクノなんだかわからない位の凄い盛り上がりっぷり。
こういうのを生で聴けたらどんなにいいだろう。この前のライヒの来日は行けなかったし。



Johann Sebastian Bach;Magnificat in D minor, BWV 243
Carl Philipp Emanuel Bach; Magnificat Wq.215

Tolzer Knabenchor  Collegium Aureum
1995 DHM(Deutsche harmonia mundi)  05472 77411 2

バッハ一族で一番目と二番目に有名な方々のマニフィカトを収録。
J.S.バッハの曲はさすがというべきか、やっぱり(バロックならこれだな)という響き(わけわからん表現だけど)。
最初の合唱曲の派手さは凄く気に入りました。
それ以外の曲のメロディもかなり気に入る部類。いいね、今度外の音源も漁ってみるか。
C.P.E.バッハの方はやっぱりJ.S.の後だと凄く明るく、爽やかに聴こえる。
でもお陰で、気軽に聴けたけれどもう一度とまではいかなかった。
演奏、トランペットがきつそうなのがすっごいよくわかる。結構外しがち。ああ、お疲れ様です・・・
それでも本当に欲しいところはきちんと当ててるから余計に切なくなる。
あと、それ以外も録音で結構ごまかしてる気が。元々が悪いわけではないけれど。
逆に声楽陣は安定してます。というか、良く見たらソリストに”Elly Ameling”とかありました。



千年の響き
Toshi Ichiyanagi; Encounter
Atsuhiko Gondai; Infinite Light/Boundless Life

Ensemble Origin  Atsuhiko Gondai,Cond.(Track 2)
fontec  FOCD9183

2002年に西欧各地で行われた「千年の響き」演奏会の、イタリア聖イグナチオ教会におけるライヴ。
一柳慧を中心にした、正倉院に残る古楽器の復元、およびそれらの現代における新しい響きの創造と
東洋・西洋の新しい形の融合を目的としたものの記録です。
一柳慧「邂逅」は、チェロ、復元楽器、雅楽、声明のための作品。
チェロの滔々としたソロに古楽器が絡み、合唱が声明を行う。笙の神々しい響きと声明のドローン音響が共鳴する。
使用されている楽器自体は殆どが東洋出自のものですが、
そこから現れる音響は東洋とも西洋とももはや区別し難いもの。
流れのようにまとまったひとつの響きが、幻想的な音で形作られてドローンのように伸びていく。
きらびやかで美しい響きを持つ、素晴らしい作品です。彼の作品では一番気に入ったかもしれない。
権代敦彦の「無量光/無量寿 -無限のひかりといのち-」は声明、雅楽、復元楽器、ソプラノ、オルガンのための作品。
オルガンと声明による細く伸びる音から、「始原の光と火の真言」のような静かな盛り上がり。
琴や方響のきらびやかなパッセージ、観音経のモノローグ。
救世の声と救済の光を示すような音楽が、キリスト教的な音楽世界で描かれる。
やはり彼の音楽は何とも言えない緊張感があって素晴らしいの一言。
演奏も劣らず素晴らしいですが、教会の独特な音響による東洋楽器の音色がたまりません。
演奏メンバーも、宮田まゆみ・石川高の笙や篠崎史子/和子など、著名人ばかり。



Polska!
Henryk Mikolaj Gorecki; Totus Tuus
Karol Szymanowski; Six Kurpian Songs
Grazyna Bacewicz; String Quartet No.3
Waclaw z Szamotul; Seven Polish Hymns
Krzysztof Penderecki; Agnus Dei

BBC Singers  Bo Holton,Cond.  Penderecki String Quartet
1994 United  88021 CD

ずーっと欲しかったCD。ようやく入手。BBCのポーランド音楽特集からの、大半がライヴ録音。
グレツキ「Totus Tuus」、けっこうメリハリある歌唱。ビブラートとかもかけてるのがわかります。
抑揚のつけ方で、後半にいろいろ山谷があって新鮮。
これはこれで良いです、やたら細かく作りこんでいる感じ。
ただ綺麗に歌われるよりよっぽど好感が持てる。
シマノフスキ「6つのクルピエ地方の歌」はグレツキのそれと聞き比べると面白い。
似たメロディーもあったりして、こちらはより近代的な語法で技巧的に作ってます。
バツェヴィチ「弦楽四重奏曲第3番」、なぜここでいきなり室内楽曲が。
音楽は古典的な構成にポーランド民謡とちょっと前衛的な技法がまぶされた、全体的には綺麗な曲。
大きな盛り上がりはないけれど、まるで画にあった劇伴みたいな心地よさ。
文化芸術大臣賞を取っただけの作品ではあると思いました。
補足、グラジナ・バツェヴィチ(1909-1969)はヴァイオリニストとしても活躍した、ポーランドでは初めて有名になった女性作曲家。
当時の前衛技法を取り入れながらも、出自をベースにした颯爽とした音楽で有名です。
シャモトゥル(c.1524-1560)だけルネサンス期の人間。このCD、内容が極端すぎて笑えます。
「7つのポーランド聖歌」を聴くと、ポーランド音楽がどのようなものから変遷をして現在に至ったか素晴らしいくらいに見えてくる。
ところでこれ、もしかしてグレツキの作品24の元ネタだったりするんだろうか。一応4声の教会歌だぞ。
最後はペンデレツキの「アニュス・デイ」。彼が前衛を止めだした頃の代表作。
"叫ぶように"の指示がありますが、音楽自体は意外と素直。暗いですが聴きやすく綺麗です。



Heitor Villa-lobos; Bachianas Brasileiras No.4 - Prelude
Wagner Tiso; Gypsy Diaspora
Rio Tisa - Fiesta
Matanca do Porco - Trespontana Phapsody
Lenda do Beijo - Samson and Delilah
Zagreb
Cesar Guerra-Peixe/Clovis Pereira dos Santos; Mourao
Francis Hime; Fantasy for Piano and Orchestra

Orquestra de Camara Rio Strings etc.
2003 Biscoito Fino  BF-573

リオ弦楽室内管弦楽団の音源を今までに出たCDから集めてきたもの。
ブラジル風バッハ第4番は彼独特の南米情緒溢れる穏やかで切ないバラード。有名な第5番より好きです。
ここからの4曲はWagner Tisoが編曲・まとめたもの。
2曲目は題から連想していた曲想よりは落ち着いていましたが、ゆったりしたテンポの中でもしっかり盛り上がっています。
編成がピアノメインの室内楽なのでかなりムード音楽。3曲目もそれが落ち着いた感じであまり印象は変わらない。
4曲目は最初の動機が荒々しくて印象的だったのに、その後がまた普通に戻ってしまった。
もっとも、こういうピアノの出番の多いバラードも良いけれどね。
5曲目はスタンダードな3+3+2拍子のタンゴ。ようやくアコーディオンが出てきます。
6曲目は短いけれど溌剌とした感じ。作曲者はなかなかブラジルの作曲界では有名だったようですね、交響曲とかが特に。
最後はこのCDの目玉、演奏時間12分の「ファンタジー」。作曲者自身のピアノ。全体としてはノリの良い感じです。
タンゴのムード音楽的な匂いを強く放ちながらも、その中にはクラシカルな曲の組み立て方が垣間見える。
この楽団のために用意された曲が多く、これはこれで一貫したタンゴの世界観が聴いていてとても楽しいです。
ムード音楽にもなる良い通俗さでした。



Astalos Dumitrescu Avram
Iancu Dumitrescu; Astree Lointaine, Holzwege
Georges Astalos; Symetries
Ana-Maria Avram; Archae

1993 Edition Modern  ED.MN.1004

ドゥミトレスクのサックス協奏曲「Astree Lointaine」は期待を裏切らない過激な世界。
おどろおどろしい打楽器・低音群にサックスの破裂音がうねる。太古の原始世界を垣間見るような感覚です。
真っ黒な暗闇の中を赤々とした溶岩が流れ、辺りにしぶきが撒き散らされる。本当に異端的な音響です。
ソリストがドゥラングルなところも聴き所。伝統的な発音がされる所は全く無いけれど。
Georges Astalosの曲は正確に言うとドゥミトレスクとアヴラムによる共作。アスタロスの朗読に二人が電子音などを製作しました。
金属を擦った音に朗読が割ってはいる。声に極端な加工を施して原型が全く分からない音たち。
アヴラム自身の演奏による声のための作品は派手さは無いです。ひたすら細かに様相を変えながら要素が繰り返される。
どこか民謡的なメロディーが断片的に聴こえるので、音響面を除けば意外とまとも。
ヴィオラソロのための「Holzwege」はひたすらにかすれた音がほとんど同音の中で展開される。
ささくれた、枯野のような音風景が彼岸の世界のようです。



Iancu Dumitrescu; Mnemosyne, Impulse, Clusterum I
Ana-Maria Avram; Quatre Etudes D'Ombre, AsonantIII, Metaboles

Art Gallery  AG 06 CD 50 000065

音響系マニアが大好きなルーマニアの作曲家イアンク・ドゥミトレスクとその弟子筋アナ=マリア・アヴラムの作品集。
Edition ModernからED.MN.1007として出ていたものの再発です。フルートと打楽器メインの作品ばかり。
「Mnemosyne」、編成がコントラバスフルート、バスサックス、プリペアドピアノ、打楽器二人にゴングとテープってやばすぎだろう。
どろどろした地底世界に木管のブレスや破裂音、金属摩擦がこだまする病的世界。
バスフルートと打楽器の「Impulse」は数々の金属打楽器が中心に不気味に乱れ、そこに後半フルートが加わります。
打楽器ソロの「Clusterum I」は膜性打楽器が主体。リズム主体ではありますがとても胃もたれする。
「Quatre Etudes D'Ombre」は10分間ひたすらバスフルートによる息の音と不正発音。
他2曲も印象は大して変わりません。まあ音響的にはほとんど同じ編成だから変わりようないしねえ・・・
そんなわけでこのCDは、インパクトが大きいだけに最初の一曲があれば十分、と思ってしまうのがさびしいところ。



イーゴル・ストラヴィンスキー;結婚
モーリス・オアナ;カンティガス
Igor Stravinsky; Les Noces
Maurice Ohana; Cantigas

ロランド・ハイラベディアン指揮 ストラスブール・パーカッション・グループ コンタンポラン合唱団
ミレイユ・ケルシア、ソプラノ  ローラン・コニル、ピアノ ほか
ROland Hayrabedian,Cond. Mirelle Quercia,Sop.  Roland Conil,P. etc.
1990 Pierre Verany/ビクター  VICC-21

ストラヴィンスキーのほうは「春の祭典」のような原始主義をはっきりと見て取れます。
ピアノ4台と4人のソリスト、合唱に打楽器とかなり地味かつ特異な編成ですが、かなり派手な構造。あとロシア語版の録音です。
やっぱりストラヴィンスキーはこういう土俗的な曲が私の趣味にあっていますね。「兵士の音楽」とかも好きだけれど。
ただ、実際この曲は編成などをみると後の新古典主義に通ずる面を見つけることが出来ます。
オアナは以前から注目していましたが、曲を聴くのはこれが初めて。
神秘的な合唱から始まり、アンサンブルが抑えながら参加してくる。
美しく、内面的で妖しげな素晴らしい曲です。前衛的ではないが、個性的。もっと早くから聴いておくんだったなあ。
民族的といえば一番近いんでしょうが、どのジャンルにも属さないような浮いたメロディーが印象的。
演奏は、透明感と無骨さと、双方を曲に合わせて上手く表現した安心できるもの。
ただ、録音は編集点がばればれ、そりゃないよ・・・特にオアナの曲。



Virtuosity - A Contemporary Look
Richard Peaslee; Chicago Concerto, Nightsongs, The Devil's Herald
William Russo; The English Concerto

Gary Smulyan,Br.Sax Stephen Staryk,Vn. Philip A. Smith,Tp. Harvey Phillips,Tuba
Manhattan School of Music Jazz Ensemble London Jazz Orchestra William Russo,Cond. etc.
1991 GM Recordings  GM3017CD

リチャード・ピースリーとウィリアム・ルッソの曲を集めたこのアルバムを格安で入手。
一曲目「シカゴ・コンチェルト」。最初から思いっきりビッグバンドによるスウィング・ジャズ。
ちょっと待ってくれ、どこがクラシックなんだか全然分からないよ!
まあ組曲形式なのはたしかにクラシカルですが・・・でもこの音は明らかにクラシックではなくジャズ。
フュージョン系のスマートな音楽がこれでもかと紡がれる。完全なジャズとして楽しめます。
2曲目、ルッソの「イングリッシュ・コンチェルト」は、それを思えばかなり上手にクラシックとジャズの境界線上に位置しています。
ヴァイオリンソロをメインに置きながら、あくまでも曲の構成ははっきりしたクラシック。
そこにジャズのコードやリフを挟みながら曲が進むさまはまさに中途半端、じゃない架け橋的音楽。
ガーシュウィン以後のこういうアーティストは有名どころだけでもグルダやジャレット、ブルーベックとかいますが
個人的には一番上手く2ジャンルを折衷できている人だと思います。
「夜の歌」は随分クラシカルになってます。ハープと弦が目立つ、イージーリスニングな感じのバラード。
柔らかくふわふわした伴奏の中でトランペットが切なげにメロディーを奏でます。ちょっとしたチープさを無視できればかなり良い曲。
後半はちょっと速くなる部分もありますが、基本的にずっとゆっくり。
「The Devil's Herald」はチューバソロがメイン。ソロにホルン四重奏と打楽器というアンサンブル編成。
ホルンの暗めなファンファーレから始まり、吹奏楽チックな展開をしていきます。これはかなりクラシカル、ジャズの要素はかなり薄い。

録音あまりよくないです。特に最後の曲はなんかくぐもっていてクリアな音じゃあない。
ただ、曲はなかなか楽しめました。



音楽経典

干海,cond.
中国人民解放楽団 中国民族楽団 中国交響楽団

中国音楽家音像出版社  ISRC CN-A50-97-0046~7-0/A ,etc.

やたらでかい布張りの紙箱に収められた、5枚組みの中国における音楽の集大成チックなセット。正直言って邪魔。
CDごとに、西洋管弦楽・吹奏楽・行進曲・式典音楽・民族音楽と分かれてます。
演奏の方はちょっと不安でしたが、聴いてみれば普通の、そつなくこなされた演奏で安心しました。
直線的な音・表現ではありますが、きちんとまとめられた好感の持てるものです。
吹奏楽のCD、最初の「サモン・ザ・ヒーロー」の打楽器がテンション高すぎで笑いました。
主な収録曲を有名なあたりでざっと挙げると以下の通り。
チャイコフスキー;交響曲第5番
バーンスタイン;「キャンディード」序曲(吹奏楽版)
ガーシュウィン;ラプソディー・イン・ブルー(Blue Rhapsodyって書いてあって最初「?」でした、これも吹奏楽)
團伊玖磨;祝典行進曲
タイケ;旧友
スーザ;星条旗よ永遠なれ
メンデルスゾーン&ワーグナー;それぞれの結婚行進曲
J.シュトラウス;ラデツキー行進曲
Hua Yanjun;二泉映月
Li Huanzhi;春節序曲
他にもいろいろ有名曲・マイナー曲などがひしめきあういろいろとボリュームたっぷりのCDでした。
にしてもこれ詳しい出版情報が全然見つからない・・・



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