テクノ、エレクトロニカ
テクノ系はまとめてここに。
ハウス、クリック、IDMからドラムンベース、ブレイクコアまでいろいろ。
ここら辺はいちいち語彙や知識が少ないから文章が短いこと・・・
A.F.R.I. Studios(Andres F. Krause)
Schwellwert
1998 BMB Lab 001
一応テクノ畑という認識で買いましたが、詳細よくわからず。
茫洋としたドローン風サウンドから、徐々に音が盛り上がって柔らかなパルス状のうねりが見える。
そのパルスが曖昧に響くだけという展開は、静謐ミニマルと言うよりは
単純に実験音響と表現した方が明らかにしっくりくる。これをテクノと言うのはちょっと・・・
でも音楽としてはなかなか面白かった。これをテクノと言い張るネタとしてもまあまあ面白い。
20分というアルバムの長さは、長いと見るべきか短いと考えるべきか・・・
特殊ジャケ。なんていうか、フロッピーディスクみたい。
AGF
Westernization Completed
2004 Orthlorng Musork ORTH18
カットアップされた声とビートが、独特にゆらぐリズム感を出します。
グリッチーなテクノですが、このつぎはぎのお陰で一味もふた味も違う独特の世界が垣間見える。
リズムがはっきりしてる部分なんかはヒップホップみたいな匂いも少し。俺はそっち方面好きじゃないからなあ・・・
あとやっぱり声メインなのが自分にとって拒否反応起こすポイントでしたが、とても上手く自分の音楽を作れていると思います。
もっとリズム崩してくれたら好みだったのになあ。
Akufen
My Way
Force Inc. FIM-1-060
Akufenの音楽は、聴いてすぐそれと分かる強烈な個性を持っています。
ファンキーなビートの上をカットアップされた様々な音が踊り跳ね回る。ミニマルでクリック直系なんだけどそこが大きなポイント。
具体音、電子音、日常音、音楽の断片、それらが一体となって最高にわくわくする音楽を生み出します。
クリック系の音楽はもともと好きだけれど、その中では断トツに気に入っているアーティスト。
私はUnderworldやDaft Pankとか好きだし、SquarepusherやVenetian Snaresの曲を愛し、Kraftwerkフリークでもありますが、
一回だけ話を持てる機会を設けられるとしたら私は迷わずAkufenと直に話をしてみたいです。
このデビューアルバムは特に4、5、7、8曲目がお気に入り。新盤の最後に追加されてるherbert remixがこの旧盤にないのは残念だけれど、
今やプレミアになりかけのこれが2,000円で手に入ったんだから良しとしよう。
やっぱりAkufenはかっこいい。新作ないのが残念だ、気長に待っていますよ。
Another Electric Musician
Use
2005 n5MD CATMD135
Jase Rexによるソロユニットの、きちんとしたプレスCDとしては初のアルバム。
淡いノイズの切れ端の中から、ふわふわと細やかなリズムが浮かんでくる。
ぼんやりとした背景のサウンドに、はっきりとしたビートが刻まれるあたり、
ジャケットみたいな白く柔らかみのある背景に無機質なビルディングが浮かび上がっている風景を連想させます。
特に変哲なところはない分、印象は強くないけれど安心して聴ける。
グリッチ系の入った、心地よいIDMアルバムです。
Alec Empire
Sqeeze the Trigger
1997 DHR DHR CD11
ジャンル的にはおそらくハードコアですが、最初の、結構インダストリアル系よりの曲作りをしている所が目立つ。
強烈な重いビートに大きく歪んだサウンドがのしかかります。音のささくれ具合がEsplendor Geometricoなんかを連想したんでしょう。
ただ比較的多くのトラックは普通にハードなテクノをしていますね。
なかなか面白かったですが、ファンキーな要素がダイレクトに強いのは個人的にあんまり好きじゃない。ダウナーな感覚作りには良いけれど。
まだラップ系やブラック・ミュージックは好きになれそうな曲を聴いたことがない自分。
Aril Brikha
Ex Machina
2007 Peacefrog PFJPCD-001
デトロイト系の落ち着いたテクノ、デリック・メイに見つけられた重鎮の比較的新しいアルバム。
トラック1のちょっとメランコリックな進行の時点ですでに鳥肌もの。
彼の「未来的なサウンド」、クールな響きは一番の特徴であり、魅力。
スウェーデン出身と聴くとなんか納得してしまう、そんなあの涼しさ。
こういう音こそが正統なテクノのサウンドだなあと聞き惚れることができる。
個人的には、たとえばLos Hermanosとかより好きです。
Underworldも最近は薄い感じになっちゃったし・・・こういう影がついたような作風は良いですよね。
Asa Chang & Junray
みんなのジュンレイ
2005 Ki/oon KSCL 8892
Asa Chang & 巡礼は、実は自分がライヴを聴きに行ったことがある数少ないアーティスト。
イデビアン・クルーとのコラボのやつです。イデビアン・クルーの方と一応面識があるし、音楽がこの人なら行くしかない、と。
イデビアン・クルー、最後の公演行けなかった、畜生・・・
このアルバム、音楽は、やっぱり彼ららしい。不真面目さというか、力の抜けた、けれどカッコイイ音楽。
2曲目の「Senaka」などはかなりエレクトロニカ。クールなスクラッチを聴かせてくれます。
レイ・ハラカミっぽいなあ、と思ったら案の定、プログラミングで参加してました。納得。
あと、やはりタブラの存在はこのアルバムでも相当大きい。
タブラのリズムとシンクロしながら、引きつった不規則な進行が音とともに聴き手をひきつける。
2、4、6曲目がお気に入り。
Aurora2
2005 merck 036
MerckレーベルのコンピCDをなんとなく購入。また1000部限定。
2005年のリリースなので、Merckの活動の終わりの頃のものです。
ぼやけた音の中から、可愛らしいリズムが出てくるDeru。
風のようなアンビエント音響からビートがじわじわと押し寄せるGinormous。
環境音ループにセンチメンタルな美しい音楽がかぶさるSabi。
Sabi以上に環境音マテリアルがメインのKettel。
メランコリックなギターが入る、ちょっと暗いMax Spransy。
じりじりしたノイジーさが目立つ空ろなBlamstrain。
ノスタルジックなループがノイズと共演するCepia。
内向的でまだオーソドックスなビート、声が入るTwerk。
アンビエント指向が強い夢見るようなShapeshifter。
SabiとCepiaの曲はいいですね。特にCepiaの曲みたいな切ないものが好きです。
ただ、安く買えたからいいけれど普通の値段じゃ買う気の起こる内容では・・・
The Beige Oscillator and DJ Attache
Waiting for Wood
charhizma cha 010
ベースはエレクトロニカだったりブレイクビーツだったりのビートですが、なかなか実験的な音響が加わっていて味わい深い。
ノイジーな電子音やカットアップされた楽曲が乗っかかって同じ時間軸を進むさまは刺激的。
クラシカルなテープループが次第に変調をきたす4曲目冒頭とかが特に良い。
こういうクールなんだけれどどこか少しいかれている曲は好きですね。聴いていて楽しいです。
ただ後半は最初と比べると落ち着いてしまっているのが残念。
Bomb The Bass & Lali Puna
Clear Cut
2001 Morr Music MM018CD
80年代末から90年代初め、クラブミュージックの勃興期に活躍した
Bomb The BaseことTim Simenonの、2001年リリース。
これ以降最近は、5年ほど自身のアルバムをリリースしていなかったようですね。
ブレイクビーツを軸に、ファンキーなリズム感覚と影がありながらも美しいメロディーが絡む。
激しいビートと、それに乗る音楽の美しさが気に入りました。
Lali Punaの、独特な透明感のある声がまた音楽に深みをもたせていて良い。
なんというか、ドラムンベースとエレクトロニカの美味しいところを合わせた感じ。
2曲目以降は他者のリミックス。どれもなかなか面白い。中身30分足らずで残念。
Bruno Pronsato
Why Can't We Be Like Us
2008 Hello?Repeat Records HELLO010CD
Bruno Pronsatoはシアトル出身、音楽活動初期はスピードメタルバンドのドラマーだった人物。
スタンダードなミニマルテクノの骨組みの中に、
当たり前のようにファンキーな輪郭と気だるげなビート感覚を盛りこんでくる。
ミニマルテクノとしてはけっこうふくよかな盛りこみ具合ですが、それが過度に聴こえない自然さ。
そこに作り込みに対するセンスが感じられて好感がもてます。トラック5の展開とか良いですね。
Akufenのレーベルからのリリースがあるように、確かにそのファンキーな雰囲気はAkufenの名作群と似たものを感じる。
異色の経歴ゆえのものか、そのリズム感覚が非常に独特なもので、とても面白いです。
ああ、ポストミニマルってこういうことかもしれないなあ、なんて考えたりもしてしまう逸品。
Claudia Bonarelli
Everything happens only a certain number of times
2002 mitek MITEK6CD
Johan Fotmeijerによる、この名義でのほぼデビュー・アルバム。
アンビエントを思わせる静かな音に、渋いビートが重なる、沈思的なエレクトロニカ。
一言で言えばディープなミニマル・ダブ。
非常に抑えた音で響く、おしゃれ系なスペースに流せばいいBGMになりそうな曲。
面白かったけれど、仕事前に聴くんじゃなかった。眠い・・・
ちなみに、名義で女性だとだまされないように。本人は無精髭生えた兄ちゃんですよ。
Coppice Halifax
Bedroom Carpet
2009 Milieu Music MMD004
Milieuを初めとしたいろいろな名義でばんばんと限定発行な活動をする
ブライアン・グレインジャーの、主にアンビエントテクノ的な音楽を発表するための名義から。
まあそんな目的であるからして、中身は普通にリズミックでメロディック。
トラック1とかちょっとMouse on Marsっぽい気も。
その後のトラックも、いろいろととりとめない内容ではありますが、
それ系統のころころしたゆるいエレクトロニカ風テクノ〜ダブ音楽が続きます。
それがいかにも自主制作らしいくぐもった響きの中でちまちまと聞こえてくるあたり、彼らしい。
何がいいってわけでもないけれど、このゆるさにつられて思わず聴いてしまう。
限定100枚。
Coppice Halifax & Foamek
Lush Q Trax II
2008 Milieu Music MML034
おなじみBrian Grainger、自身のレーベルから
コネチカットのJake DavisによるFoamekとの共同3インチCDR。
余談だけど、この人このシリーズ以外にリリース音源あるのかしら。
Grainger、最初からいきなり、ちょっとメランコリックだけどチープさもぬぐえない、
カッコいいのか悪いのかよくわからないアシッドテクノが。とりあえず気に入った。
Foamek1曲目はミニマルな感じの不定型な音によるトラック。
なぜか、いつもは音響が壊滅的なCoppice Halifaxなのにここではやたらクリスピーなので
彼のくぐもった感じが欠点にしかならない。なんだよそれ。
Grainger2発目も無意味にカッコよく攻めてくるアップビートな感じなのに。
Foamek2つめは浮遊感を活かした泡の弾けるような音楽。
おお、これはポイント高いぞ、今までの違和感を挽回してくれた。
限定50枚。
Cottage Industries 3 vestibule & separate
Rod; All My Love
Apparat; Riding
Pandatone; Sofa / Fort
Xela; This Moment Will Last A Lifetime
Helios; Hatsu-Yume
Don Mennerich; Pipedreaming
RJ Valeo; Filter
Julien Neto; Voy
Greg Davis; Pinecone Accumulation
Sleepy Town Manufacture; Latatoo
Maps & Diagrams; Fargo
Metamatics & Xela; Vestibule & Separate
2003 Neo Ouija NEO 21 CD
1曲目からノスタルジックで切なげなダウンビートIDM、思いっきり感覚を掴まれます。
今はもうないNeo Ouijaレーベルから出たコンピアルバムの3つ目。視聴して即決断しました。
どの曲もそれぞれのアーティストなりにノスタルジックな世界を作っていて、しかも綺麗にそれが1枚に繋げられているからたまらない。
その夢現の感覚からはエレクトロニカとアンビエントの中間のような印象さえ受けてしまいます。
チープな切なさは嫌だ、けれど真面目なりに聴きやすさは欲しい、そんな(俺みたいな)人にはお勧め。
どの曲もいいけれど、個人的には特に1,9、10曲目なんかがセンチメンタル系で良いなあ、と。
ジャケットもさりげなく手の込んだデザイン。どこを取っても楽しめる素晴らしい一枚。
Craig Leon
Nommos
2009 mushroom sounds
オリジナルは1981年にリリースされた、そこそこレアなLP。
RamonesやTalking Headsの発掘・プロデュースしたことで有名な御仁のアルバムです。
小刻みに震える、渋くちょっとアブストラクトなパルス系ビート。
ビートを軸に、淡く旋律のようなものが展開される。
プログレにも似たビートで音楽のすべてを組み立てられているような感じなので、
聴いていて単純だけれど、かっこいいと思える良さがある。
どのトラックも安心して聴けるプログレテクノの世界。気楽に聴けます。
トラックによってほのぼのした感じだったり、ちょっと陰影があったり。
こういうの、ブートじゃなくて正規リリースしても良さそうなもんなんですけどねえ。
CUSP
Space + Time * Liquids + Metals
1995 Swim Wm 8
輪郭のない低音がゆっくりと近づいてきて、その中からやがてパルスのようなビートが不規則に顔を現す。
最初は中断されたりもするが、やがて確固たるリズムを打ち出してきて、これはエレクトロニカ風味のテクノなんだなと理解する。
ちょっと安っぽくはあるけれどそんなに軽々しいわけではない、むしろ落ち着いたアップテンポ。
だんだん王道テクノ的な音の使い回しが主体のトラック多目に。
ストレートなテクノながら、ぼやけたリズムメインの渋い感じが気に入りました。
Dimitri from Paris
A Night at the Playboy Mansion
2000 Virgin CDVIR105
フランスの人気アーティスト、ディミトリ・フロム・パリのヒット盤。
プレイボーイの創刊者75歳記念パーティーのために様々な楽曲をリミックスしたもの。
彼の曲はムーディーなハウス・テクノで、気楽にノれる軽いところが良いですね。
このリミックスアルバムでは、クールなファンキーさ、
というかスタイリッシュな熱気が感じられる、確かにヒットに相応しい音楽ばかりがノンストップ。
楽しかった。やっぱりこういうのは素直に雰囲気にはまらないと。
・・・彼の名を聞いてあのアニメを思い出す人は、年経た今どの位いるのか少し知りたいこの頃。
DJ erimaki tokage
Electro Lizard 999 GAME NO strikes back
2005 Clay CLAY0002
キャッチーでゆるゆるな音楽の数々。ムード音楽とゲームのBGMを3乗して発酵させた感じです。
聴いていてかっこよさは感じられないけれど、妙に頭にこびりついて離れられなくなる感覚がまさにゲーム。
やっぱりTVゲームまともにやったことない俺でもその世代なんだなあ、と変な感慨が沸いてしまう。いやゲーム好きだよ俺。
クラシカルもノイズもアンビエントも聴きたくない、理性や思考を一切ふっ飛ばしたい、そんな時に時々ふと聴きたくなるんです。
これぞ退廃音楽。シュルホフやアンタイルなんて目じゃない・・・って彼らはそのレッテル貼られただけでしたね。
このCD、実は研究室のある人から「親戚に変な曲作ってる人がいるよ」と紹介されたもの。そんなつながりにびっくり。
紹介してくれてありがとう、面白かった・・・いやマジで、新品での購入が全然痛くないと久しぶりに思ったくらい。
DoF
Mine is May
2004 Abandon Building Records abr002
ペンシルヴァニア在住のBrian Hulickによる、ヒットCD。
ギターのセンチメンタルな旋律にあわせ、美しいエレクトロニカが形作られていく。
ちょっとグリッチーな路線で、非常に優しい音楽を聞かせてくれます。
正統派エレクトロニカというよりはフォークトロニカといったほうが近いか。
この系統としてはかなりテンション高めな方ですが、良い内容でした。
これで収録時間が長ければ最高なんですが。
国内盤はボーナストラックあるけれど、自分のは紙ジャケ輸入盤でした。あーあ。
Dr.Nachtstrom
Leidenschaft
2002 Mego 042
ウィーン出身のWalter Brantnerによるアルバム。
4つ打ちビートとかに激しいカットアップを施したサウンドやコラージュがべたべた乗っていく。
基本的にはダウンビートなテクノや珍奇なアンビエントな音楽があって、そこにコラージュ音源を盛り合わせていく作り方。
ただ、トラックによってはそんなに壊れてなくて、サンプリングを多く使った普通のテクノみたいなものも。
そういう意味では音楽的でしたが、自分的にはそんなにはまるようなものではなかった。
ジャケット写真はもろにSudden Infantの某アルバムみたいな写真コラージュ。
トラック4とかが大好きです。
Dumb Type
Remix
1997 Foil Records FS001
池田亮司も関わる有名ユニット、ダムタイプの97年シングル(3インチCD)。
間の開いたパルスに、エレキギターの軽快なリズムが入り、
それを軸にクリック的な音などが落ち着きながらもどこか愉快な感じに展開する。
ビートは最初の6拍子からファンキーなブレイクビーツに変わったり。
2曲目はパルス+喧騒などフィールド音にムーディーなピアノメインの音楽が。
20分しかないミニCDですが、実に素晴らしいエレクトロニカ風ダンスミュージック(みたいなもの)。
Efdemin
Chicago
2010 dial CD 21
Phillip Sollmannによる、Dialレーベルの看板アーティスト、2nd。
軽快なリズムに乗せて、グリッチなどのエレクトロニカな音響の効いた音が踊る。
厳しく音の振る舞いを抑制しているのはミニマルテクノらしいけれど、
その一定の中での音源の幅広さ、使用リズムのジャンルなどはとても自由です。
ハウス、ダブステップあたりのリズム変化が、通して聴いていて心地良い。
あと、クラフトワークから続くような音源の音色に、ベルリンミニマルサウンドと言われるあたりを妙に納得。
良く練られたアルバムで非常によかったです。
ただ、好みかと言われるとちょっと返答に時間が掛かる。
Endemic Void
Equations
1996 Language/Crammed Word 04
落ち着いた、クールな感じのドラムンベース。
フュージョン系、あるいはクラブジャズの香りを匂わせながら、軽快な音が踊りまわります。
決して熱くならず、それでも疾走感はどの曲も十分に保っている辺りが覚めてる。
テクノを聴いている、という印象はあまり強くなく、実際にそっち系のジャズを聴いているみたい。
まあまあ面白かったですが、こういうのよりはもっとすっ飛ばしてる方が自分好みかなあ。
ちょっと聴きやすい部分が強すぎる。さらにはあまりビートがクリアではない。
Erast
Cyberpunk
2005 Laboratory Instinct LI010CD
ErastはNikakoiの別名義。これはその1stアルバムになるものです。
1曲目はちょっとチープ路線をぎりぎりアウトしてしまった感じの曲ですが、それ以降はとても素晴らしい。
冷たく騒々しいブレイクビートとどこかノスタルジックな揺れ動くメロディー、エレクトロニカとブレイクコアが融合した感じがたまりません。
曲ごとの印象が随分変わる。リズムの崩し具合がトラックによってまちまちなことも理由の一つでしょうか。
さらにポップな感じが強く、普通のリスナーにも面白そうと感じられる点がプラスです。
そんなこともあって彼のアルバムは大体高値がつきやすいんですよねぇ。
Erast
Goodair + Minimissing
2003-2004 Laboratory Instinct LI002+003CD LC13263
グルジア出身のアーティスト、Nikakoi(Erast)の2つのシングルを併せて再発した超名盤。
1曲目、独特の崩れたエレクトロニカなビートに東欧言語の話し声が入る。
2曲目の「Goodair」などは、ビート自体に3+3+2+2という民族音楽を直接的に意識したビートを使い
この手の音楽としては非常にまれな人間くささ・土臭さを感じさせてくれる。
かと思えばその次は非常に早いブレイクビーツで快速にぶっ飛ばしてきて、
その次のビートはスクエアプッシャー的ドラムンベースだったりと、(自分の好みのものばかりで)かなり聞かせてくれる。
それでいて、騒々しいだけでなくどこかメランコリックなメロディーが感じ取れるあたりが素晴らしい。
ユニット名のErastがギリシャ語のLoveであることもうなづけます。というか解説はそれに引っ掛けた文章ばかり。
以上「Goodair」の方でしたが、後半の「Minimissing」も負けず劣らず。
前作のエレクトロニカ、ブレイク、民族音楽などの融合具合が更にナチュラルなものになり、
ノスタルジックで美しいメロディが細かなビートと共に溶け合い、シンセ・ストリングスのピッツィカートが華を添える。
そんなストリングスは11曲目「Georgianintokyo」で頂点を向かえ、同時に締めをも飾る。
跳ねるようなメロディーを弾けたバックビートと共に歌い、クラシカルながらも非常にエキサイティングできる音楽を作る。
それぞれのシングルパート最後に2名のアーティストによるリミックスを収録。
どちらもなかなかの出来です。なんせFreeformとAtomTMによるものですから。
ただ、個人的には無いほうがErastの音楽世界を十分に楽しめてよかったかな。
素晴らしいものだけに、ボーナスCDみたいな感じでついてきたほうが嬉しかった。わがままだけれど。
逆に言えばそれ以外は文句なし。こんな名盤、お願いだから再発してください。プレミアは勘弁です。
Erik M
Zygosis
Sonoris SON-06
フランスの実験ターンテーブリストによる1stアルバム。激しい編集を伴ったミニマルカットアップ音楽。
オーケストラやロック、ポップ音楽や音声などがさまざまに切り取られ繰り返される。
それもあえて違和感を感じさせるようなつぎはぎが多い。
途中、ノイズだけで繰り広げられる混み入っていくループは印象的。
清涼感を感じるジャケと裏腹になかなか過激な展開をする一枚。
ぶっ飛んだループ系が聴きたい方にお薦め。派手で楽しいです。
Esplendor Geometrico
Live in Prague Dec.1995
Live in Warengen Feb.1996
Geometrik EG-CDR02,03
インダストリアルというジャンルを確立させたバンドの一つであるエスプレンドー・ジオメトリコ。
電子音を異常なまでに変調して得られたノイズを元にがちゃがちゃとビートが進んで行く。
そんな彼らの感性はこのライヴ盤でも爆発してます。どのトラックを取ってもノイジーなリズムが延々と垂れ流し。
ライヴならではの音の割れ具合が好きで、ちゃんとしたアルバムよりこっちを聴くほうが多いです。
プラハの方のはぼーっと聴いてると途中で1ランクでかいシャウトにびびるので注意(笑)
個人的にはもっとぐちゃぐちゃしたほうが好きですが、これくらいリズムがはっきりしてる方もノリやすくて良し。
どちらのCDも250枚限定。
Esplendor Geometrico
Live in Elektroanschlag 31.03.2007
Geometrik EG-CDR04
エスプレンドー・ジオメトリコの2007年ライヴ。やっぱり時々聞きたくなる。
モノクロで単調な、溶けた金属色のビート。その上を浮きながらささくれ立つシャウト。
個人的には、EGはライヴが圧倒的に出来が良いと思ってしまう。
元の構成が単純な分、熱気が分かりやすいからなんでしょうか。
今回は何時も以上に落ち着いたビートの曲中心で攻めます。だんだんテンション上がる感じが良い。
灰色の機械的なドラッグ空間。250枚限定ナンバリング付き。
Fennesz
Hotel Paral.lel
2007 Mego 016
ノイズが伸び、虚ろな音が大きくかぶさる。
ひたすらドローンが伸びたあと、ようやく変則的で踊るようなビートが入る。
Fenneszの記念すべき1stアルバム。トラックごとで本当にばらばらな曲調。
後年のグリッチ主導の落ち着きもあるアルバムに比べ、こちらは本当に落ち着きが無い。
もちろん今も昔も変わらない、グリッチーなカッコいい場面もありますが、実験的な面が強い気が。
まあやっぱりはじめの頃だし、いろいろ探ったり実験をしたかったんでしょう。
もちろん、こういう実験的なドローン/グリッチ音だらけも面白い。
ただ、ここまでくるとIDMやテクノというより実験音響。
収録曲「aus」のPVも入ってます。カットアップや逆再生を多用した、曲にあった悪くないセンスの映像。
Fennesz
Endless Summer
2001 Mego 035
Megoのリリースでも一際異彩を放ち、Fenneszの代表作にしてフォークトロニカの名作。
細かくカットアップされた断片の中から、どこかノスタルジックな美しい音楽が立ち上る。
ギターの切なく儚いループにノイズが入りアブストラクトな展開に。
ノイズとヴィブラフォンの夢見るような掛け合い。
甘いエレクトロニカなんだけれど、決してその砂糖成分を出しすぎずビターな味わいにしてくれる。
その不安定で非現実的な美しさがとてもたまりません。
冷徹とまでに言える音遣いは「Hotel Paral.lel」から一貫していて、そこが実にフェネスらしい。
グリッチノイズと楽器音が作り出す不可思議な美麗空間。
テクノを聞く人間なら必ず押さえてほしい一枚です。
The Field
From Here We Go Sublime
kompakt KOMPAKT CD 57
スウェーデン出身のAxel Willnerによるデビュー・アルバム。
素直な感じのミニマル・テクノだけれど、どこかアンビエントな音を奏でているのはさすがkompaktからのリリース。
クールで涼しげだけれど、どこか切ない感じがたまりません。
サンプリングされた声やギターなどのループが、落ち着いてビートと絡み合う。
ただ、あくまで雰囲気はアンビエントでなく、むしろノリノリになれる方の曲が多い。
こういう感傷的なミニマル音楽はおもいっきり私のツボです。ジャンル違うけれどシメオン・テン・ホルトとかもろにそれだし。
後半は比較的普通のエレクトロニカなミニマルになってます。なかなか巧く崩しも入れてきてくれる。
kompaktの初の国内リリースがこれだったとか。やべ、俺持ってるの安く手に入れた輸入盤だ。
そういうの聴いちゃうと解説とか目当てでまた欲しくなる自分がどうしようもないと思う。
Folie
Eyepennies
2005 mitek 22・mdm21722
スウェーデンのアーティスト、2ndアルバム。
ダブ系の重いリズムがメインのエレクトロニカ。
ただ、内向的でどこかクールな音楽が多く、私の趣味にもけっこう合いました。
特に後半が良い感じかな。前半はダブの影響が濃い。7曲目とか良かった。
自分はそこまで素晴らしいとも思えなかったけれど、人によってははまれそうな、そんな魅力を確かに感じられるCD。
Freakbitchlickfly
Kid606; I Got Mine
Max Tundra; Typify Dialup Toll Amateurishness (Fuck Coldplay)
Mortal and Chemist; Way Of The Exploding Lick
Kevin Blechdom; She's A Bitchhole
The Posterboys Of The Apocalypse; Dick Slots
Kid666; Take The Piss On
2001 Violent Turd turd001
ドラムンベース〜ブレイクコア系統が得意なレーベルのカタログ1番のコンピ。
Kid606はラップ風の音楽をマテリアルになかなかいかれたドラムンベースを出してくる。
Max Tundraはそれを受け継ぎながらももうちょっとだけスマートにかっこよく攻める。
Mortal and Chemist、ビートというよりはかなりカットアップ系のヒップホップミックス。
Kevin Blechdomはラップの正当なというかじわじわ攻める感じのビート追加。
The Posterboys Of The Apocalypseだけインスト部分メインでブレイクビーツに攻める。
Kid666てこれ一応Kid606の変名かい。爽快にドラムンベース。
クレジットはトラック6つで30分もないはずなのに収録60分でおかしいのは、最後に長い隠しトラックがあるから。
ノイズにまみれたぐちょぐちょブレイクコア。でもテンポは落ち着いてます。
もっと音が沢山あれば楽しいけれど、一発勝負みたいな即興性が、聴く分にはそこまで・・・
Futuristic Experiments #006
Akufen; Red Skies
Ben Nevile; Some Bass for the Sheep
B.; Booby Trap
Dave Miller; Hue Hip Shizo Censor
Sutekh; Keep Away
Andy Vaz; Last Minute Variation
Helvetica; Intension Release
Si-cut.db; Pocket Money
Rhythm_Maker; Rosmarin
Portable; A Loop of Mass and Energy
DB; Graceland
Background Records BG 035
Akufen目当てで買ったコンピ。
Akufenは何時もどおりで素晴らしい。ファンキーなリズムにアトモスな音を絡ませ、クールに。
Ben Nevileはそれを引き継ぐような軽快リズムに、ゆるい声が伸びる。
B.の曲は軽い具体音のビートでミニマルに。これけっこう良いな。
Dave Millerはノイズや処理したピアノのビートで内向的に。
その流れを汲んでSutekhも抑えたミニマルビートをくりだす。ちょっと溶けた音。
Andy Vazは一転、割れた音をビートに組み込んで、クールな中に発散性を出してる。
Helveticaは抑えられた音を多く使った、シンプルめな曲。
Si-cut.dbは少ない音ながらも、ちょっとファンキーと言うか明るい感じ。ちょっとだけAkufenぽい。
Rhythm_Makerはちょっとメランコリックな感じ。この中では異色だけどなかなか良い。
Portableはぼやけた音と金属音で、ぼやけたミニマルクリック。
DBはカットアップされた音楽断片が徐々にミニマルビートになっていく。巧い。
クリック系ミニマルテクノを存分に楽しめるいいアルバムでした。
Gel:
Dolce
2003 Plop PLIP-3008
フランスのジュリアン・ロケ(Julien Loquet)によるGel名義の2ndアルバム。
淡いビート感の中で浮かぶ、さまざまな具体音の断片と、その亡霊。
メランコリックなプリペアドピアノのループに、ノイジーにも響く溶けた音の洪水がかぶさる。
ピアノの音を中核に配置して、輪郭を常に加工した音たちで固めていく。
ポスト・エレクトロニカとしての完成度は非常に高く、また音の個性もよくわかりますね。
その響きがマイルドになるように注意を払われているお陰で、とても素直に聞くことができます。
こりゃ確かに作り込みのみならず受けもいいな。絶賛されるだけはある。
ただ、その聴きやすさ故にちょっと抽象感が薄く、淡さがないのは個人的に残念だった。
こういう鮮やかな色彩がとりどりに使われているのもいいけれど、
水彩画みたいな曖昧さがあるともっと最高だった。いや、十分気に入っている一枚なんですけれどね。
Goldie
Saturnzreturn
1998 FFRR 422-828-983-2
ドラムンベース、そしてブレイクビーツの大御所ゴールディーの二枚組みアルバム。
ふわふわと伸びて浮かぶシンセ音に柔らかく歌うような声が入ってくる。
それだけの薄く淡い空間だけで冒頭はひたすらすぎていく。まるでドローン音楽。
リズムが出てくるのは20分を過ぎてから。ここでようやくGoldieのアルバムだったことを思い出します。
後半はまた弦楽主体の緩やかなアンビエントに戻って終わる。
長い曲の間で緩やかに盛り上がりがあってすっと聞けます。
テクノアルバムとしては異色なものでしょうが、自分としては何も違和感なし。
というか、まだ音楽の展開が感じられてCD2より楽しめました。チープなシンセ的音響は嫌だけれど。
CD2はいつも通りのドラムンベースしてて一安心。ちょっとノイジーでファンクな音楽。
Groenland Orchester
Trigger Happiness
1999 Staubgold 10
ポップ音響のGuenter Reznicekと心理音響学者のJyrgen Hallという
ちょっと異色なコンビのドイツ出身ユニットによる作品。
ポップなリズムやループに、さも当然のごとくノイズや音塊がからみつく。
基本になっている音楽はとてもポップで可愛らしささえ持っていますが、
そこからゴールまでの間になにかおかしなことがおきてちぐはぐな音楽になっちゃってる。
けれど、これはこれで面白い作品だし、むしろこの方が音の一つ一つにはっきりした意味合いが持てて楽しい。
リズムの方は、(クラフトワークとかがいた国なんだな)と思う、ちょっと重みのあるかんじ。
後半、メロディーもなかなかいい感じにノスタルジックな風味も出てくる。
ダダの流れも感じられる「ジャーマン・テクノイズ・ポップ」。
Harmonious Thelonious
Talking
2010 Otave Lab./Italic OTLCD1442/Italic 092
いくつか名義を使っているアメリカのStefan Schwanderによる、初のフルアルバム。
ひび割れたダイレクトなドラミング。プリミティヴでエネルギーに満ちたそのビートが
やがてテクノの響きと融合して絶妙なトランスを産み出してくる。
そのミニマルな進行と躍動感に満ちたビートが、果たしてテクノ由来のものか
アフリカ音楽からくるものなのか判別がつかないくらい、見事なまでに融合した響きです。
なんでこんなに土俗的なのにハイセンスなんでしょう。非常に洗練された印象を持つ。
その音楽は、民族音楽やテクノのファンはもとより、ライヒやグラスらの古典的なミニマル音楽を好む
人間にも進められそうなほどの出来。マリンバのミニマル音型を多用していることもあって、
特にライヒの「ドラミング」なんかが好きな人には是が非でも聴いてみて欲しいと思う。
アナログな音の輪郭の中で繰り広げられるLPのような印象は、それとも会場の歓声を同時に
背後に隠した構成のように、未開の地の臨場感のようなものを表したかったのか。
トライバルという言葉がここまでクールに聴こえるのも珍しいアフロビート・ミニマルテクノ。
Ilsa Gold
Regretten? Rien!
2003 Mego 058
Christopher JustとPeter "DJ Pure" Votavaによる、オーストリア・
ダンス/レイヴシーンのユニットの結成10周年を記念してリリースされたCD。
ユニット自体は1993年結成の3年後に解散してますが、
こうして未発ミックスなんかをばんと出す辺り、彼らの人気の高さが伺えます。
音楽の内容も実に安定して楽しい、素晴らしいもの。
明るい楽想、軽やかなリズム、なかなか凝った作り込みがあるのに素直に高揚できる流れ。
私のレイヴ初体験は同人での方だったので、これで正当なレイヴを感じることができた意味でも満足。
Megoから出ているだけ、そしてPeter Votavaがいるだけあって実験的サウンドもさり気なく混ざっているため
それが音楽に引き締めを与えてくれている。アシッドの臭いがかなり強い。
CD1の隠しトラック、すげえ思いっきりUnderworld。
Inner Science
Material
2004 soup-disk soup023CD
曲のうわべだけ見ると普通のエレクトロニカorブレイクビーツみたいな感じですが、聴いていてそんな感じがあまりしません。
ドラムが生音使用であることも相まって、ビートが太い音になっているのがその最たる理由でしょう。
どの曲も、どっしりしたビートの中で曲が回っていてリズムを中心に進んでいます。
聴いていてその音に安心して浸ることが出来るので聴きやすい。
ダウンテンポの多い、どこか温かみもある個性的なアルバムでした。
Jake Mandell
Love Songs for Machines
carpark
ちょっとポップな、けれどあくまで渋く落ち着いた雰囲気のエレクトロニカ系テクノ。
リズムとか音楽構成に一癖あって、一筋縄にいかないところが好きです。
素直に表面を取り繕うように努力しているんだけれど、うまくいかずにシニカルな裏面が出ている感じ。
ダイナミクスは大きくなくて一辺倒な響きだけれど、それなりに楽しめた。
Jane
Berserker
2005 Paw Tracks PAW 006 CD
Animal CollectiveのPanda Bear(Noah Lennox)と、
その友人DJのScott Mouによるユニットの正式デビューアルバム。
ミニマルなビートに乗せて、ふわふわと夢見心地なダンスチューンが浮かぶ。
ビートとはいってもささやかなもので、普通のダンスフロアの音楽とはかけ離れたもの。
むしろ、印象としてはエレクトロニカやアンビエントが明らかに近いでしょう。
4曲目「Swan」の25分近い長さでの茫洋とした動きなんて実験ドローンにも通ずるものがあります。
もちろんノイジーな音もありますが、あくまで添え物。
物騒なタイトルとジャケットに似つかわず、美しい印象すらあるアルバムでした。
日本盤には短いボーナストラックあり。こちらは声をマテリアルにした、まあまあいかれた出来。
なかなか高内容のアルバムで良かったです。
Jeff Mills
SleeperWakes
2009 Akis XECD-1122
DJ界の頂点ジェフ・ミルズ、久々のアルバム。
スペーシーなアンビエント風味の音楽から徐々にパルスとビートが浮かんできて、怪しげなテクノが次々と現れる。
なるほど、たしかに「宇宙からの帰還」というコンセプトによく合っている。
ただ、個人的には普通のテクノをやってくれた方が気に入ったかも。
もちろんこのジャーマンテクノ的な胡散臭さは大好きですが。逆に魅力はそこがほとんど。
聴いてて、そのいつもとちょっと違うドラッギーさにはまれるかがポイント。
個人的には・・・良いんだけれど、それでも作り込みや完成度とは別に、手にとるなら他のアルバムにしてしまう。
Joshua Abrams
Busride Interview
luckey kitchen lk015
フィールドレコーディングや電子音響のほのぼのした風味のものをリリースしているらしい
なかなか個性的なレーベルから、Town&Countryのメンバーによる1stソロアルバム。
音声、電子音の引き伸ばし、非常に曖昧とした抽象世界のカットアップ。
ダブルベースのもの悲しいソロが寂寞と奏でられ、虚ろなうねりと弦のかすかな弾かれる音。
エレクトロニカな音響を中核にしながらも、作り方はほぼ完全に実験音響のそれ。
抽象的な世界をひたすら追い求めながら、その響きは空間にソリッドで確固とした土台を連想させる。
基本は即興演奏なんですが、その輪郭がなかなか面白かったです。
後半、中にはかなりアンビエントエレクトロニカな感じの爽やかな音楽(トラック6)もあったりして侮れない。
Kid606
P.S. I love you
Mille Plateaux MP93
クールで落ち着いた音なのはリリース元がミル・プラトーであることからも想像できるでしょう。
ですが、このアルバムの音はノイジーさとビートの温かみがぼやけた空間の中で程よく融合しています。
音がクリックみたいなんですがちゃんと聴くとけっこう自由に音ができている。アコギの音も印象的。
クリック系のテクノの中では現在一番のお気に入り。
彼の作品中で名作と言われるのも尤も。素晴らしいエレクトロニカ。
他のCDでは随分ぶっ飛ばしているものが多いみたい、今度聴こう。
Kid Loops
Time Quake
1997 Dorado/filter FILT 022CD
落ち着いたクール目のドラムンベース。
こういう系のアーティストによくあるR&B系のダウナービートのトラックはやっぱり自分には合いませんでしたが、
細やかな素早いビートを聴かせてくれるトラック(例えば1,4,6)は楽しかった。
強く何かが残ったわけではないけれど、まあ良いんじゃないのかな、という感触でした。
kikushima fumit-0
Turntable Pop
2008 Lotti
沖縄の新人気鋭なターンテーブリスト、菊島史登の2nd。落ち着いた、ターンテーブル駆使のハウスナンバー。
自分はハウス系の音楽はそんな好きではないけれど、こういう簡素で地味な構成は気に入ります。
決して大仰に盛り上げることなく、ちまちまと音を紡いでいくことでできる独特の暖かい空間。
こういう渋いファンキーさは自分の好みに合います。あまり手を込みすぎないでさっと流してくれるのも、
あまりこの手の音楽を聴かない自分にはしっくりきました。
ただし、音響に関しては期待しない方がいいかも。終始鈍い音質。
限定60部。すごい手作り感。
この人、ライブでは白シャツ+ネクタイで登場するらしいですね。面白いなあ。
Klangstabil
Gioco Bambino
1999 Plate Lunch PL 10
音源は任天堂のゲームボーイと僅かなエフェクト処理のみ。
今のご時世、これだけで音楽を作るアマチュアは(それこそ某動画サイトみたいに)
ごまんといますが、プロとしてこうして正規CDで発売までしてしまうのは凄い。
音楽としてはノイズ要素が加わったミニマルテクノといった感じ。
でもトラック2なんかはほのぼのしたいかにもゲーム音楽みたいなメロディーで面白い。
後半はなかなかいい感じに抽象的になってきて、エレクトロニカ/ノイズな味を出してくる。
音源のチープさを音要素の限定と変換し、それを元にモノクロな音楽を作れた素晴らしい成功例。
ネタとしても聴けますが、それ以上に音楽的に十分充実してます。
Kuchen
Kids with Sticks
2001 karaoke kalk ed 10
ふわふわした、温かみのあるシンプルな音楽。そこに落ち着いたビートが加わる。
そこまで複雑な構造ではなく、素直にのんびり聴けます。
ここのレーベルはこういう音楽が多くて良い。西洋的な温もり。
40分無いので、音楽に浸りたいときはちょっと物足りないかも。
でもこれくらいの方が、こういう単純な曲には良い長さかな?
Last Step
1961
2008 Planet Mu ZIQ220CD
Venetian Snaresとして有名なアーロン・ファンクの別名義によるアルバム。
何時ものような激しいブレイクは影を見せず、代わりにアシッドテクノのような音楽が披露されています。
こういうのはそんな好みでもないですが、これはこれで楽しめる。
というか、音の作りこみがいつもの彼と全く一緒。さりげなくリズムを崩す点も。
Los Hermanos
On Another Level
2004 Submerge Recordings SUBJPCD-003
ラテン系のデトロイト・テクノで定評のあるロス・ヘルマノスの1st。
ふと聴いた時点で(これは買いだな)と思って購入。
自分の場合、デトロイト系のテクノはそこまで真剣に聴かないこともままあるのですが、
このアルバムは現時点ではとても気に入っています。
ちょっとセンチメンタルな面が垣間見えるトラックが多いところが多分自分は気に入ったんでしょう。
クールできびきびとした音なのも良い。
トラック2、やたら既聴感があったけれど、どこで聴いたんだろう。
Luke Slater
Freek Funk
1997 Mute NoMu57CD
スタンダードなミニマル系テクノ。
変に妥協したりせずに硬派な音楽作りをしつつ、王道テクノみたいな幅広い表情を持っている点がすごく良い。
音が過度に多すぎず、かといってハードミニマルのようなストイックさは見られない。
落ち着いてクールに聴ける。なかなか素晴らしい内容でした。
1、5、7、10曲目が特に好き。5曲目、以前何かのコンピで聴いた事あったなあ。
Manuel Gottsching
E2-E4 Live
Zeitkratzer Ensemble, Manuel Gottsching;Guit.
2005 MG.Art MG.ART 303
マニュエル・ゲッチングのこれ以上ない名作「E2-E4」の、2005年3月に行われたライヴ。
ただし、アコースティックのアンサンブルと本人のギターというなかなか凄い編成。
チューバとハーモニカとギターが一緒の空間にいる時点でキワモノ臭が(笑)
でもこれはこれで普通に楽しめました。やっぱり元の曲が良いね。こういうアンサンブルでも可能な所が素晴らしい。
オリジナルのアルバムとは印象が随分異なりますね、当たり前だけれど。
元のものはまったりとしたトリップできる音空間でしたが、こちらはリズムがはっきりしている分ダンスミュージックの趣が強い。
普通サイズのCDですが収録時間21分。だまされた、クソッ・・・だってオリジナルは60分もあるじゃないかよっ・・・!
The Marcia Blaine School for Girls
Halfway into the Woods
2007 Highpoint Lowlife Records hpll024
細かな、ちょっとブレイクの入ったビートが心地よいです。
内省的な感じがあるけれど基本明るいので知ってるアーティストの中ではムームみたいな印象をちょっぴり受けました。
ただあれは温かみのある曲が殆どですが、こちらはクールな曲が多いですね。
電子音のドローンとか金属的なものを想起させる音素材が多いせいでしょう。
こういうの好きです。ただジャケ内側の落書きみたいなのは残念ながらちょっと・・・
Mark Fell
Multistability
2010 Raster-Noton R-N 125
マーク・フェルの決定盤的な一枚。
非常に簡素なまでの音源でミニマリスティックに音楽、もといビートを組み上げる。
が、そのビートを細やかに揺らし、明快な理解を拒否するかのように強烈な変拍子を組み上げる。
テクノの持つリズム性のみを抜き出し、それに身をゆだねて揺さぶられることの快感を
極限にまで引きだしたような音楽ばかりで、すごく自分の好みに合う。
渋くはあるけれど、決して地味ではないのは音響の妙がなせる技。
10-Aなんかは畳み掛けてくる不規則ビートが押し寄せてきてたまらなくカッコいい。
基本的にどの曲も捨てられないレベルの面白さ。
まあ当然、裏を返せばワンパターンとも言えるけれど、ここまで簡素化したらそれも普通か。
ミニマル系が好きな人間なら、テクノ・現代音楽問わずお勧めできる素晴らしさ。
marumari
the remixes
electric company (tigerbeat6)
l’usine (isophlux / hymen)
casino vs. japan (wobblyhead / city centre offices)
greg davis (carpark)
colongib(kracfive)
robert lippok (to rococo rot)
lackluster (defocus)
cex (tigerbeat6)
octopus inc. (kracfive)
stars as eyes (tigerbeat6)
2002 carpark crprk cd 14
Josh PresseisenことMarumariの曲を様々なアーティストがリミックスしたアルバム。
暖かい、けれど発散するような外向性のあるMarumariのエレクトロニカを、彼らなりの世界に従って自由に変化させています。
サイケな方面に盛り上げたり(l’usine)、ムームみたいな具体音を使って包み込んだり(greg davis)
がしゃがしゃさせたり(colongib)、メロディアス路線を進めたり(robert lippok)、それぞれのアプローチが楽しめます。
もちろん原曲の良さもあってのこと、なかなか楽しめました。
ジャケットには誰がリミックスしてるか書いてないので、備忘録的な意味をこめてここにトラックを書いときます。
さて、このCDこれだけ見ればまあ随分まともなんですが、それ以外が突っ込みどころ満載。
エンハンスド仕様でmp3が別に収録されているんですが、その数なんと10曲1時間。それだけで1枚作れんじゃん。
内容はやっぱり素晴らしいアンビエント・エレクトロニカなのですが、ビットレートが良くないもの多いです。流石に128kbpsは・・・
まあそれは目をつぶるとしても、曲名どれも無いんでしょうか。アーティスト名がファイル名になっているのでわからない。
つまり聴いてみないと原曲が何なのか全然推測できない。随分いい加減だなあ。
さらにビデオクリップも二つ。情報はいい加減なのにそういうところは無駄に豪華。
BabyM.movはかっこつけた男性が宇宙船で地球を出発、火星っぽいところに下りて怪獣と対戦、クリスタルな人の頭部を取って現地人に渡す。
なんだこれ、意味がわからないとかのレベルじゃねえぞ。
Bacon.movは家で寝そべってるワン公を写してる。まあ普通だなと思ってるといきなり逆再生動画を乱入させてきたり、さっき以上に意味不明。
曲は不規則なビートでなかなか面白いんだけれどなあ・・・
Mathew Jonson
Agents of Time
2010 wagon repair wrl001cd
シングル「Marionette」を聴いていっぺんにどハマリしてしまった。
そのマシュー・ジョンソンがついに出した1stアルバム。
トラック1から、ダウンビート気味な中で美しくメロディを聞かせてくれる。
トラック2からは本領発揮。正統派なのにどこかクセを感じるテクノ音楽。
ただ、やっぱり聴いていて心にぐさりとくるのはトラック5、Marionetteの別バージョン。
あの感情を静かに騒ぎ立てるような、ノスタルジックに細かく震える旋律がたまらない。
ここでのテイクはあの旋律に最低限のビートしかつけていないような感想な構造。
でも、これはこれで深く心に沁み込んでくるから好きです。
やっぱりこういう系統の曲が彼は一番カッコいい。だからトラック10のタイトル曲も好き。
Matthew Hawtin
Once Again, Again
2010 Plus 8 plus8107cd
有名なデトロイト系テクノのアーティストであるRichie Hawtinの弟による作品。
彼がデトロイトのパーティーでDJをしていた90年代の音源がマテリアルのほとんど。
ただ、ミックスによって見事なまでにアンビエント音響に変わっています。
基本ビートは存在せず、エレクトロニカ的なパルス音型が主流。
前半はちょっとダークめだけれど、後半になるとゆらゆら幻想的にゆらぐ雰囲気が主流に。
そのクールでどこかソリッドな響きはアンビエントとしてもテクノとしても楽しめた。
ノンストップでいい感じにたゆたっている感覚が気持ちいいです。
出来栄えがどとか言うより、気軽に流せる辺りを評価したい。特に後半。
MIASMAH
1 Xhale - Pager (6:27)
2 Inner Addictions - Han Ya (3:41)
3 Smash? - See You On The Other Side (6:23)
4 Opia - Venus (Illicit Delights) (4:16)
5 Chimerical Child - Wellenreiter (4:46)
6 Supine - Just As A Woman (4:25)
7 Markus - Interlude (2003 Edit) (1:29)
8 Miasmah Quartet - Sophie's Staccato (8:16)
9 Opia - Blowing Bubbles (4:02)
10 Chimerical Child - Serene (4:43)
11 Markus - Talktalk (2003 Edit) (4:50)
12 Genox - Nokrakr Riworz (2:41)
13 Xhale - Environmental Protection (5:05)
14 Solitaire Albread - The Green Pill (4:02)
15 Solitaire Albread - Unedea (8:43)
16 Sense - Blue Shade 1 (4:09)
2003 Merck Merck018
エレクトロニカ系テクノのコンピ。1000枚限定ですが、コンピで限定は微妙な気が・・・
ネットレーベルの音源からの抜粋です。
冒頭のXhale1曲目は変わらずシリアスめですが、テンポ良いブレイクビートが印象的。
Inner Addictionsはジャジーなダウナービート。
Smashはそこにさらにダークさが入った、ブルース系のマテリアルを使った曲。
Opia1曲目は、ちょっと可愛らしい、落ち着いたファンキービート。
Chimerical Child1曲目、ころころした、明るいのかシリアスなのか不思議な曲。
Supineは内向的ファンキーナンバー。Markus1曲目、似たようなもの。物音ビート。
Miasmah Quartet、跳ねるようなリズムがくぐもりの中からジャズバーの匂いをさせて出てくる。
Opia2曲目は逆にクールな感じ。でもやっぱりヴィブラフォン系の音は外せないらしい。
Chimerical Child2曲目、サンプリング多めのちょっとシリアスめ。
Markus2曲目、内気ファンク。サンプリングもうちょっと気を使ってくれればクリアな音になるのに。
Genox、声加工が印象的。「本番30分前で・・・」
Xhale2曲目も声を使っていますが、こちらはかなりシリアス風味にうまく溶け込ませてる。中盤ドラムンベース風味。
Solitaire Albreadはどちらもシンプルな構成で内向的に展開する。2曲目は悪くない。
SenseはBの音を主軸に、モノクロにぼやけた音楽が進んでいく、題通りのちょっと暗い曲。
好感度はだいたいそのトラックのレビューの長さに相関してます。
Monolake
Gravity
2000 monolake / imbalance computer music ml 006
Robert HenkeとGerard Behlesの二人によるユニット、MonolakeはChain Reactionレーベルのビッグ・ネーム。
例えば1曲目、ミニマルダブなビートの上で、不規則にゆらぐ、連続したクリック音が飛び回ります。
非常に単調な流れの中に催眠的な音でアブストラクトに音楽を奏でられる。
クールな音楽ですが、その中にぐいぐいと引き込んでくれるような中毒性がありますね。
最後の曲はビート無しで素晴らしいアンビエントを聞かせてくれます。
ミニマルなテクノの中ではかなり気に入っているほうのアーティスト。
でもCD媒体はあんまり出してくれていない・・・
Monoton
Monotonprodukt 07 20y++
2003 Oral 02
ウィーン出身のアーティストMonotonことKonrad Beckerの、1981年に少数のみLPリリースした音源の再発。
エレクトロニカな絶え間ないパルスメロディーの独特な動き。
そこに呟きのような声がエコーを伴ってふわふわと電子音とミニマルに戯れる。
ジャーマン・プログレや古典的なテクノ音楽をミニマルかつ禁欲的に展開させた感じ。
かなりドラッギーです。なんだろう、違うジャンルで傾向的に似てるものには
アーサー・ラッセルとかテリー・ライリーとかかなあ。その倒錯具合的に。
時にふわふわと輝かしく、あるときは実験的なモノトーン音響で、じわじわと響いてくる。
すごく地味だけれど決して侮れない味がある。再発されて良かった。
ミニマルから電子音楽好きまで幅広くどうぞ。
Mouse on Mars
Idiology
2001 Tokuma Japan TKCB 72082
マウス・オン・マーズの7番目のアルバム、のはず。
以前聴いた「Autoditacker」よりも格段にクリアになって、しかもポップさが強い。
以前のようなせこせこした印象ではなく、強いビートでしっかりと進んで行く。
もちろん以前のような作風もいいけれど、これもこれで全然ありだと思う。
むしろ、今まで不自然に淡かった色彩をはっきりさせるように塗りなおしたような感じ。
内包する曲調も格段に多くなり、聴いていて飽きない。
ただ、印象はスタンダードなエレクトロニカに近づいてしまっていることも否めない。いや別にそれでいいんだけれど。
個人的には以前の要素が濃いトラック7がお気に入り。
Dodo Nkishiのボーカルをはじめとするゲスト陣のアクセントも素晴らしいです。
日本盤ボーナスとして、1999年にリリースされたシングル「Pickly Dread Rhyzzoms」を収録。
Movingshadow 99.2
Mixed by TIMECODE
1999 Moving Shadow ASHADOW992CD
ドラムンベース・テクノを好きな人なら知らないものは居ない有名老舗レーベルMoving Shadowの二枚組コンピCD。
やっぱりMoving Shadowのアーティストが作る曲は、自分としては大好きですね。
少ない音ながら純粋にグルーヴを感じさせてくれるこの感じが離れられない魅力を放つ。
やや明らかな電子音の、聴きようによってはチープにもなるビートが、妙にマッチしてて良い。
このコンピはシリーズありますが、これはTimecodeの編曲も相まって、クールなハイビートの展開が曲間なしにノンストップ。たまらないです。
RenegadeやE-Z Rollersとかはやっぱり押さえておきたいですね。Omni Trioは言うに及ばず。
Tekniq、60 Minute ManやAquaskyのRemixが特に気に入りました。
二枚目はOmni Trioの曲5曲をAquaskyがリミックスした20分の曲を収録。オムニ・トリオファンの私にはたまりません。買ってよかった。
Mum
Finally we are no one
2002 fatcat records fatcd18
ムームは本当に暖かい音を出す。
日常的な具体音のマテリアルを元に細かいテキスチャーを作り上げて、細密でいて非人工的な温もりを与えてくれます。
布団か何かに包まりながら聴いてると心地よい感覚ですね。
クリスティーンの独特の声もこの雰囲気作りに一役買ってます。
このアルバムはそんな彼らの作品の中でも最上の部類に入る名盤。特に最初の4トラックは至福のひと時、お気に入りです。
エレクトロニカ・・・に分類されるんでしょうが、こんな音楽は彼らにしか作れないでしょう。
出世作「Yesterday was dramatic.Today is OK.」もあわせてどうぞ。
Murcof
Remembranza
2005 leaf BAY 47CD
メキシコ出身のFernando CoronoaことMurcofによる2ndアルバム。
暗い、呟くようなビートに、ピアノの特殊奏法による、ゴリゴリした音が絡んでくる。
一見、ピアノの非楽器的な音はビートを崩しているように見えますが、実際にはとても巧妙に結びついているのがわかる。
それはやがて切なげな弦などと融和して、渋く奥の深い世界を作り出します。
ダークなアンビエントテクノですが決して重苦しくはなく、クール雰囲気で、切なげな一面も見せる曲たちばかり。
現代音楽の影響も読み取れ、内容のある素晴らしい音楽でした。
Muslimgauze
Izlamaphobia
2005 Staalplaat MUSLIMLIM 001
95年に発表された700枚限定LPの、800枚限定CDリイシュー。
ムスリムガーゼの作品の中でも、最もパーカッシヴな作品。
アラビックな音楽が激しいダブ・ミニマルにのせて、2時間フルに踊りまくる。
リズム音は大半がアラブ系民族楽器。強烈な中近東臭です。
普段はダブ音響やテクノの感覚がどちらかというと強めですが、これはかなりビートが強調されている印象。
彼のアルバムの中でも、特にトライバル的倒錯感が強く存分に楽しめる。
CD1の1,9曲目、CD2の1、17曲目なんかは個人的に大ハマリ。
テクノを聴く人全般に強くお勧めしたい、カッコイイアルバムです。
ムスリムガーゼの新作がもう二度と聴けないというのは残念な話だ。
Muslimgauze
Sycophant of Purdah
2009 Staalplaat archive nine
スタールプラートによるムスリムガーゼ・アーカイヴズシリーズの第9弾。
元は1994年にアルバムにする予定だったけれどお蔵入りになっていたものを今回収録。
トライバルでエスニックなビートが、気だるさの中でダウナーに響く。
どこかダークで、アンダーグラウンドらしい腐臭が漂ってくるような危なさ。
変拍子も用いた、強いビートに乗せたセピア色の音楽。やっぱり彼の音楽はノリノリになれる。
12トラック目の5拍子とか好きです。限定700枚。
Muslimgauze
Speaker of Turkish
2006 Soleilmoon Recordings SOL 138 CD
400部限定のボックス入り初版ではなく、1000部限定のデジパックの方。
今回もいつもどおり強烈な中近東臭を漂わせます。今回はいつもより長尺で攻め、6曲で75分かける。
アブストラクトな断片から、しだいに強靭なリズムが現れてくるトラック1など特にカッコイイ。
笛とタブラなどの太鼓に音声が割り込むトラック2以降の展開はなかなか渋い。
ノリノリなリズムで攻め立てるわけではないけれど、これはこれで凄く楽しめる一枚。
Muslimgauze
Drugsherpa
1994 Staalplaat STMCD 001
Staalplaatの3インチCDシリーズ、記念すべき第1弾。
ディレイの作るリズムに乗って、次第にビートがはっきりと顔を出してくる。
ベルの澄んだ音とは裏腹に、音楽の緊張感はどんどんと高まっていく。
ダーク・アンビエントの趣が強い、それでいてとてもカッコいい音楽です。
最後はベルの音の美しい残響の中に淡く消えていく。
いつものような強靭なリズムはないけれど、彼の音楽性は微塵も損なっていないところが良い。
Muslimgauze
Vampire of Tehran
1998 Staalplaat STCD 127
今回のアルバムは、タクシー運転手を装って9人の婦女子を殺害し「テヘランの吸血鬼」と言われた
Gholamreza Kordiehにインスパイアを受けた様子です。
ミニマルに、落ち着いたテンポでひたすら女声とビートがループされ、ドラッギー空間を作り出す。
終始ダウンテンポで繰り広げられ、音の一つ一つが重い力を持って鳴り響く。
ハイテンポなノリノリさはないですが、この強烈な感覚は凄く良い。
ムスリムガーゼの音楽の根源的な魅力を教えてくれる良いアルバムです。
中ジャケには処刑の様子(クレーンでの首吊り)の写真がグロくない程度であったりして、音楽以外の作り込みもなかなか。
Muslimgauze
Arabbox
2003 soleilmoon SOL 144 CD
1993年6月6日に行われたライヴの音源です。
不気味なまでに落ち着いた、アブストラクトなビートが淡々と進んでいく。
外部音源が比較的少なく、シンセ音や電子音を主に使用して作っているあたり、ちょっと物足りなかったかもしれない。
もちろん作り方は他と全く遜色はないし、色濃い中近東臭は健在だけれど。
ダウナーでダークなテクノを好みの方には大推薦。
限定1000部。
Muslimgauze
Maroon
2004 Staalplaat STCD 084
すでに95年にStaalplaatから限定1000部で出ていますが、こちらはそれとは違うリイシュー盤。
ジャケがマスク被った写真で字が赤ならリイシュー。
気怠いベースラインが並行五度の和音で延々伸びて行く。
ディレイの激しく効いた空間内で、フィールド音をかなり多く使いながらじわじわと盛り上がる。
もちろん民族楽器によるリズムや強いアラビア臭ビートも健在。
今までに聴いたなかでは3インチの「Drugsherpa」に似た感じかなあ。
このじわじわ感がたまりません。買って良かった。
Muslimgauze
Syrinjia
2004 Soleilmoon Recordings SOL 132 CD
97年に出たLPの、大量にボーナスをつけた上での再発。
彼のダブ精神が全開、気怠いビートが全編にわたって支配します。
というか、リズム自体はダブを通り越してレゲエに近い場面も。
こういうビートがメインで他の要素が少ないと、ダブ系でも気に入ることができました。
ダークなアラビア色が暗く踊るような音楽イメージはいつも通り。
厚紙封筒の中にシルク刺繍で編まれたジャケットというなかなか特異な仕様。
さらに色違いが7種あって、その再発数もばらばらというからびびる。
自分が持ってるのはブラウンなので、残念ながら一番多い127部限定。
ちなみに普通のジュエルケース仕様だった場合は1000部限定の2ndイシューです。
Nautilis
Stonch
CACTUS ISLAND CACT017
くぐもってはいるがどこか攻撃的なビートに妖しげなメロディーが絡みつく、少し毛色の変わったIDM。
ヒップホップの絡んだエレクトロニカなので自分の好みとは少しずれていましたが、独特の痛々しいハードさは聴いていて楽しかったです。
Planet Muとかでアルバムを出しているのが納得の作風。3曲目は結構シリアスな曲調でとくに好印象。
3曲収録20分の3インチCD。200枚限定・・・なのかな?
Object
Release The Object
2001 Foton Records Foton 03
Peter Van Hoesenによる2001年のアルバム。
超高周波のパルスが響く。それが次第に降りてきて、少しづつ違うタイミングで鳴り出す。
水音の湧くような密かな音がループして、澄んだ電子音が定期的に鳴り響く。
ホワイトノイズがポツポツとカットアップされ、グリッチパルスとつましく響き合う。
非常に静かに繰り広げられるグリッチ・・・というよりはパルス系統のテクノ。
ただ、提示部なんかは相当音数少なく実験的ですが、要の中心部とかでは
そこまで実験的ではなく、一応はっきりとテクノとして聴くことができる。
結構展開もバリエーションあるので、この手の作品としては実にすんなり聴き通せます。
トラック4とか、音がなかなかせわしなく動きまくるので楽しい。
500部限定ナンバリング付き。よくわからないフィルムが付属。
Omni Trio
Skeleton Keys
Moving Shadow ASHADOW 10CD
オムニ・トリオはRenegated Snaresが頭一つ出て有名ですね。
彼(Trioとついてますがメンバーは一人)の曲は音数少ないながらもクールなビートが小気味良く走っていくかっこよさがたまらない。
この5thアルバムはその中でも一番気に入っているもの。
ドラムンベース系の素早い、けれど冷静さは失わないリズムがフルに聴けます。
ちょっと好き嫌い分かれそうな音ですが、個人的には大好き。
もっと聴きたいけど、この手のジャンルってまだまだLP・・・CDでも沢山出てほしいなあ。
余談、自分の頭の中ではMoving Shadow→Omni Trioの図式が完成されてしまってます。
まあ仕方ないよね、殆どのリリースがここからだし。
Ontayso, Sense and Tim Koch
Where have you been? What have you done? And Why?
2004 U-Cover Records U-Cover 20
Ontayso、Sense、Tim Kochによるスプリットアルバム。
Ontaysoはアンビエント調。ダウンテンポのビートが絡んできたりします。
Senceは綺麗なアンビエント・エレクトロニカ。けっこうキャッチーでポップな感じ。気軽に聴けて良い感じ。
Tim Kochの作品が一番気に入りました。ぼやけた風景を思わせるドローンにリズムやメロディーが漂う茫洋空間。
このCDの中では一番底の深い作品たちでした。
Oval
94 diskont.
thrill jockey thrill036
Ovalは、CDの記録面にペンで書いたり傷をつけて音飛びを発生させる音楽のサンプリング手法があまりにも有名。
このCDでも特に後半においてその手法が存分に味わえます。音飛び独自のテンポや発音がほかに無いビート感を出してくる。
1曲目、25分近い長尺の「do while」はアンビエント調で実に聴きやすく、かつ素晴らしい出来。
Oval独特の変調がかかりながら、ノスタルジックな音楽断片がミニマルに繰り返されるので、素直に陶酔できますね。
2曲目以降は5分ほどのトラックが続きますが、どれも音楽が切り崩されて原型を見ることの出来ない崩壊ぶりにも関わらず
そこから音楽の温かみや、音そのものの営みを感じることが出来ます。
最後7曲目は1曲目のマテリアル音源。音飛びでループしていない音源から、どのように音が振る舞いを変化したのかわかってまた感心。
「Ovalprocess」のソリッドで冷たい印象が強い自分としては新鮮な限り。
アンビエントともクリックともつかぬ不思議空間、楽しかったです。今度いろいろ聴いてみようかな。
Pacou
No Computer Involved
1999 Tresor Tresor.99
Pacouは個人的に気に入っているミニマルテクノのアーティスト。
けっこう速いテンポを主体にして細かな絶え間ないビートを落ち着いて繰り出してくる作風がいい。
じわじわと少しずつ変化するために大きなどんでん返しは全く無い。けれどそのビートにはまれば一直線。
ピュアな電子音による内的世界は彼ならではの不思議なもの。
このアルバムでは特にハードな世界が聴きもの。隠しトラックあり。
ピュアな電子音におぼれたい方は「Symbolic Language」をどうぞ。
Peshay
Miles from Home
1999 Universal-Island PFA1CD 1 546 265-2
1曲目。あれ、これMoving Shadowのリリースじゃないの?ってくらい古典的なドラムンベース。
ウッドベースがメインの渋い曲でとても気に入りました。この曲だけでもこれ買う価値あったなあ。
ところが2曲目はファンキーなクラブジャズ、3曲目はラップ系と、ここらだけ雰囲気がびっくりする位がらりと変わる。
4曲目はソウルっぽい感じを持ちつつドラムンベースに舞い戻り、ここからは比較的普通にやってくれます。
とはいえ、その辺りの様々な音楽と普通に混ぜてしまうところが楽しいし、カッコイイ。
全体的にはドラムンベースとハウス系のテクノの中間を揺れ動いているようなアルバムでした。
Portradium
Autopuzzle
2001 Deco 002
既存の音源をこれでもかとカットアップ&コラージュし、それを組み合わせて音楽を作り上げる。
組み立てられたほうも、普通のテクノとはとてもいえない、崩壊したエレクトロニカとブレイクコアを足したようなもの。
ソリッドな音たちが自由に飛びまわり、細かいビートの一つ一つになって押し寄せてくる。
テクノ系アルバムの中では、久しぶりの大当たり。これはカッコイイ。
壊れたリズムではあるけれど、爆発するのではなくあくまでIDMみたいなクールさを持っているところが素晴らしい。
Pulseprogramming
Tulsa for One Second
2003 Aesthetics AST26CD
どちらかというと、硬質でソリッドな音。簡素で落ち着いたサウンドでビートは展開する。
けれど、その上に浮かぶ、エコーの効いたヴォイスが非常に暖かい。
それらが組み合わさった結果、とてもクリアでかつ安心できるエレクトロニカに仕上がっている。
凄く私的にはムームの音を普通のIDMにした感じ、の印象。
後半は声の出番も無いので、普通のエレクトロニカに。
キャッチーでノスタルジックな雰囲気の曲なので気軽にも聴けました。なかなかのお勧め。
個人的に7、9曲目とか好きです。
PCでビデオクリップが見れます。こちらの曲はかなりアンビエント、これも良い。
ビデオの方は良く意図がつかめなかったけれど。女性がぼやけて写ったコマ写しに、逆再生や早送りの機能がついてる。
この2ndの前の1stはかなり硬派なドローン系だったらしい。そっちも聴きたいなあ。
Rechord
Skokoll
audio.nl (kompakt) 020CD
非常に抑えられた、判断が難しいビート。殆どパルスの世界。
その中で、音が控えめにぽつぽつと置かれていく。
思い切りIDMを絞りきり、その残りかすを広げていった感じ。
中盤からはまだビートがきちんと聴こえてきますが、それでもミニマルクリック系の非常に希薄な音楽。
なかなか良かった。ただ好みとしては、もうすこし音が鋭い方がいいなあ。
ビートを初めとした音たちが、効果として靄の中に隠れている感じが趣味とは合わなかった、残念。
Rei Harakami
Unrest
Sublime Records IDCS-1018
近年有名なレイ・ハラカミ。彼の最初のアルバムがこれ。
温かみのある音とブレイクビート主体の落ち着いた展開が心地よいです。
決して熱くならず、丸い音たちが踊っているところがとてもアンビエント風。
どこか浮遊感も漂う綺麗な曲が目白押し。彼のアルバムは大体そんな感じですが、これは一番アンビエントに近い。
彼の音は元が殆どRolandのSC-88Proだということも凄い。あれからこういう音楽が作れるんですね。
独特の音楽観だけでなく、こういった巧みな加工技術も彼の強みでしょう。
Rei harakami
lust
Sublime Records IDCS-1014
レイ・ハラカミの比較的近作。
2曲目の「joy」がお気に入り。3連のリズムと4ビート基本のはねるような動きが
重なり合いスリリングかつうきうきする展開を作り出す。
多くの曲でビートのずれが中心に作られていて楽しいですね。それでいていつもの暖かい音が健在。
もちろんポリリズムはこのアルバムに限らず普通に使われているものだけれど、
ぎくしゃくした動きをあえて見せ付けている所が良い。もっとも、そういった聴き方は
彼の曲ではあまり一般的とは言えないものの気がしますが。俺が楽しいから良いんだよこれで、ね。
彼の作品の中では個人的に一番良い出来だと思います。
riow arai
beat bracelet
2001 soup-disk soup015CD
ブレイクビーツ系ダンス・テクノを得意とするリョウ・アライの4枚目のアルバム。
ファンキーで太いビートに乗せて、短くカットアップされた音源が新たなメロディーを作り出す。
なかなか細かい作りこみをしていて楽しいです。
今までのアルバムとはちょっと雰囲気が違うらしいが、残念ながらこれが初聴きなんだよね。
でも、ダンスミュージックとしてはこれくらい落ち着いた音楽でいいんじゃないだろうか。
まあ個人的にはそれ以前のドラムンベース風音楽の方が気になるけれど。
車とかに乗っているときならもう一回聴きたいと思うかな。個人的な好みとしてはまあ普通。
Robert Henke
Atom/Document
2008 Imbalance Computer Music ICM 07
Monolakeといえばよく伝わるロバート・ヘンケのシリアス一直線なアルバム。
このアルバムタイトルは、元は64のイルミネーションされた風船のためのパフォーマンスのこと。
LEDを配置し、光パターンで風船を動かすようにしてあります。
Christopher Bauderと共作のこのアート作品の音楽部分がこのアルバムというわけですね。
じりじりとした硬派なドローンが荒漠な風景を創り上げる。
そこから金属の転がるようなパルスループ、ピアノとグリッチパルスの美しい掛け合い。
普段の彼のテクノ的な音楽からすると信じられないくらい実験音響してます。
もちろん彼らしい硬派なビート・パルスがあるあたりかっこいいんですが。
やはり彼はこういう実験的な音楽は似合うなあ。というか音響がソリッドなのに心地良い所が凄い。
だいたいテクノ的音楽と実験音響が交互に出てくる感じ。
RYUKYUDISKO
peekan
2006 compactsounds Plat-10
琉球ディスコは、クラブ系テクノバンドの中でも大きな個性を持った団体でしょう。
そのテクノサウンドと琉球音楽を直結させ、沖縄音階を4ビートに乗せて打ち出す音楽は強烈です。
私自身も彼らの1stからずっと(これはイケルな)と思っていましたが、いまや見ての通りの人気、さすが。
そんな彼らの2006年アルバム、今回はいつもよりちょっとハイテンポの印象。
ジャケットの強靭な陽射しのように、鮮やかな音楽が跳ね回る。
これくらい高いテンションだとかなり楽しめますね。もともと高めだと思いますが。
16ビートと三連ビートの激しい交差も頻出、リズム感覚の揺さぶりが沢山あって盛り上がれます。
Savath & Savalas
Manana
2004 Warp WAP177CD
どこかスペイン系の異国情緒を思わせる音源が細切れになりながら音楽を再構築していく。
プレフューズ73の音楽にエヴァ・プエロ・ムンズの歌声が入ってくる。
特に変なところはない、エレクトロニカとフォークの中間みたいな音楽。
まあ悪くないけれど、自分の趣味にはあんまり響くものが無くて残念。
1曲目とか、音楽のいじり具合はまあまあ面白かったんだけれど。
Seasonal Greetings "a compilation of 13 CHRISTMAS AND WINTER songs"
2002 mobile records mobcd2
クリスマスをテーマにして、各アーティストの様々なクリスマスをイメージした曲をコンパイルしたCD。
フォーク系の暖かな音楽のLow、ムード音楽とフォークとエレクトロニカを合体させたみたいなOrso、Opiate。
フォーク系エレクトロニカのKomeit、エレクトロニカにさわやかな歌が入るFuture 3。
Whamの有名ナンバー(Last Christmas)をカバーしたErlend Oye、シンセ主体のキャッチーな歌を聴かせるSt. Etienne。
ブルースやソウル風の洋楽、Badly Drawn Boy。フォーク風だが一味違うHood。
ちょっと壊れた切ないアンビエント・エレクトロニカのDomotic、オルゴール調のやさしいエレクトロニカ、Herrmann&Kleine。
穏やかな風のようなドローンからいつも通りの暖かいメロディーと歌へ、このCDの目当て、Mum。
どの曲も彼らなりのクリスマス観を出していて、とても聴いていて気持ち良い気分になれる。
特に1、6、7、11、12、13が気に入っています。
ブックレット形の凝ったジャケ、中にはポール・オースターの名作「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」全文と
各アーティストのディスコグラフィ等の説明があります。
こういう手の込んだCDはそれだけでも素晴らしいですね。曲も素朴で素晴らしく言うことなし。
Shitmat
Full English Breakfest
2004 Planet Mu ZIQ105CD
イギリスの、ブレイクコア・ガバ系テクノを手がけるHenry Collinsのシリーズ作品。
LPではVol.5まで出てますが、CDは記念すべきこの第1作が出てるだけ、残念だなあ。
コラージュばりばりのブレイクコア。最初から最後までぶっちぎり。
トランスになったりサントラやラップが聴こえてきたり、クラシックが挟まれたり。
このせわしない感覚がたまらない。
ガバやジャングルの影響が顕著で、リズム崩しはそんなにやってはいないけれど楽しいからOK。
Slowly Minute.
Somewhere in Recollections
2003 Childisc CHCD-035
Chiba Takahiroによるスロウリー・ミニッツの3rdアルバム。
グロッケンかオルゴールのような可愛らしい跳ねるような伴奏に乗せ、ビートやメロディーが紡がれる。
生音のマテリアルも多く使いながら、エレクトロニカな感覚の音処理で音楽に温かみを持たせる。
非常にポップなエレクトロニカの数々。可愛らしく、どこか切ない感じがたまりません。
たまにあるノイジー/ドローンなトラックはご愛嬌。
カラフルでシンプルなジャケットも相まって、ポップなテクノも素晴らしいと思える一枚。
The Source Experiece
Different Journeys
1994 Sony SRCS 7568
アンビエントな冒頭から徐々にビートが頭角を出してダンスに誘う。
控えめでクールな音裁きですが、その内側には確固たる熱を秘めたような、そんな音楽の展開。
爽やかで軽い音、そのため非常にあっさりした風味ですね。もちろんビートはその範囲の中でしっかり打ってくる。
スタンダードなクラブテクノとしてはなかなかミニマルな展開で私好みでした。
トラックも一つ一つが長めで音楽に浸りやすい。
speedometer.
Out of Order
2002 Beams BBR-C-6007
日本製ハウス系ブレイクビーツテクノ。ちょっと癖のある音作りではあるけれどスタンダードで聴きやすい。
特に個人的に押せるポイントも無かったんですが、まあこれはこれでいいんじゃない?
6曲目のぼやけた感じは好きかな、って程度。
が、最後の隠しトラックが凄い、これはやばいね。ハーシュノイズとハウステクノが絡み合ったみたいな激しいダウンビート音楽。
これだけでも買った甲斐あったなあ。隠し含め44もトラックがあって最初びびる。
Speedy J
Loudboxer
2002 novamute NOMU93CD
小気味良いクールなハードミニマルのテクノ。
ストイックな感じはせず、むしろその決められた音の中で自由にふるまおうとする感覚が見られます。
あらかじめ決められた音楽の枠をあえて壊していくような、知的なノイジーサウンド。
特に後半はパワーのある、なかなか熱狂できる音楽が多いですね。とてもカッコイイ。
11トラック目はライヴ音源かな。音楽もやばければ観衆のノリも素晴らしい。どっちももうノリノリです。
こういうミニマルテクノの中にリズム崩しが入ってくる所はたまんないですよね。
Sovacusa
Centrepoint
Expanding Records ecd22:05
Tim Martin (aka Maps & Diagrams)とSteve Broca (aka Broca)のプロジェクト。
IDMど真ん中のエレクトロニカ。控えめだがノイジーなリズムが気持ち良い、こういうグリッチ音は素晴らしいアクセントになる。
そして、それを包み込むかのようにふんわりしたメロディーが奏でられます。
この暖かいノイジーさは、リズムと共に自分としてはムームを連想しました。
ただ、どの曲も速めのテンポで清涼感あふれる、青空と高層ビルのジャケットが良く合う印象。
まあどちらにせよ、聴いていてとても穏やかになれるのは同じ。
トラックの曲名に日本の地名が混じってる(渋谷、銀座、秋葉原など)のは何だろう、日本びいきなのかな。
Squarepusher
Numbers Lucent
2008 Warp WARP258CD
ドラムンベースの代表格で大御所、スクエアプッシャーの2008年EP。
あれ、久しぶりに聴いたけれど、スクエアプッシャーってこんな普通だったっけ?
それとも俺が最近ヴェネチアンスネアズを聴きすぎておかしくなっただけなのか?
・・・と思って調べてみたら、これサイケ系の趣向入ったアルバム「Just a Souvenir」の続きみたいな感じなのね。
そうか、「Big Loada」と似たような位置づけのCDか。ちょっと納得。
まあ背景はともかく、カッコイイことは間違いない。また昔みたいに近年のアルバム集めだそうかな。
でもこれやっぱりテンション高い普通めのテクノだよなあ。「ダンス・フロア・サイケデリア」とか宣伝文句にあるけれど。
5曲目は何時もどおりで安心しました。
Stardust
Music Sounds Better with You
1998 Roule/Virgin 7243 8 95312 2 0
Daft Punkの相方、Thomas Bangalterの参加しているユニットのシングル。
元は彼のRouleレーベルがひっそりと出したものでしたが大ヒット、ヴァージンでリリースされ日本では邦盤が出る始末。
何しろ、これがなければ「One More Time」もその後のダフト・パンクももしかしたら無かったであろうという話。
自分もこの曲は大好き。たぶんダフト・パンクよりも好き。本当に何回聴いたかわからない。
どこかもの悲しげな曲調が、ノリのいいダンスビートに乗せて踊らせられる、まさにフレンチハウス。
あまり変化が大きくない、それこそミニマルに近い変化だけれど、そこが素晴らしいトランス感覚を与えてくれる。
それだけ原曲が好きだからこそ・・・なのか、3トラック目Bob Sinclarのリミックスは嫌い。
Steve Bug
Sensual
2002 Poker Flat Recordings PFR CD07
ベルリンにおけるクラブ・シーンを代表するDJのひとり、スティーヴ・バグの3rd。
簡素でミニマルなビートに乗せて音楽がゆるく進む。
あれ、テクノってこんなスカスカだったっけ、と思うくらいなミニマル・ファンク。
ノリは好きじゃないけれど、ビートのミニマルさは気に入った。
なんだろう、ポップなファンキーさが個人的にダメだったのかも。
でも、ドイツのテクノだからなのか、クラフトワークを上流に感じるような音楽
(トラック5)なんかもあって、それはなかなか良かった。
Subz & Matik
Low Pressure Area
basswerk BW-CD 05
ドイツのドラムンベース・レーベルの人気どころ。
実にクールで落ち着いた音の響きで、爽快にリズムを聞かせてくれる。
どちらかというとブレイクビーツみたいな、あのハウスなノリがある・・・というか
リズムはそんなにアクセントのシンコペーションなところがない。
そんな重さを感じるあたりドイツのテクノだなあなんて思ってしまうのは偏見かな。
ただ、その落ち着いた展開も含めて、構成はなかなか良かったです。
こういうクールな作りこみがテクノの醍醐味だと思うんですよ。
個人的にはトラック3、4とか気に入った。
Surgeon
Communications
1996 Downward DNCD1
ハードミニマルの大御所Surgeonの1stアルバム。深い落ち着いたビートにのってディープに踊る彼らしいサウンド。
彼の曲って、ノイジーで丸くない音が多い点が特徴ですよね。
最初はそこが微妙な気もしましたが、今では逆に気に入っています。
ハードミニマルは、独特の渋い展開が大好き。
きちんと聴かないと流してしまうけれど、細かなビートや音の変化が絶えず変化してゆらいでいるあの感覚が。
特に彼の曲はちょっぴりファンキーで盛り上がりが分かりやすい点もあってノリやすい。特にこのアルバム。
こういう曲の方がトランス状態になれると思うんだよなあ、誰だよあんな普通な曲のジャンルにトランスなんてつけたやつ。
Sven Vath
Fusion
1998 virgin VJCP-25380
ジャーマンテクノの大御所スヴェン・ヴァスの、四枚目のアルバム。
馬鹿みたいに明るいカーニバルのBGMみたいな1曲目に始まり、その後の曲も陽気なクラブテクノ。
ですが、4曲目とか真ん中になってくるとリズムがミニマルな落ち着いた曲になってきて侮れない。
後半ではもう最初の溌剌さはどこへやら、内省的なミニマルダブ風の音楽になってます。
ただ、個人的な好みでいえば後半のノリが好き。9曲目とかいいですね。
Thomas Brinkmann
Klick
2000 Max Ernst max.E.-CD1
ケルンのDJトーマス・ブリンクマンによるまあまあ有名なアルバム。
LPレコードをぶった切り、それをまた繋ぎあわせてエフェクトをちょっとつけるだけ。
まさに物理的なカット&ペーストを施してしまった作品。
もちろん、できた音楽は期待通りの素晴らしいハードミニマル。
非常に簡素なビート、ささやかな効果音、背景にレコードの規則的なノイズ。
テクノ本来のポップさを完全に外に押しやり、リズムの無機的な羅列がノイズにまみれながら佇むだけ。
その中から微かに、けれどはっきりグルーヴ感が感じられるあたりたまんない。
ミニマル、クリック好きなら確実にはまれる個性的な世界。買って良かった。
To Rococo Rot.
Kolner Brett
2001 staubgold 22
Ronald Lippok、Robert Lippok、Stefan Schneiderによるロンドンのメジャーなユニット。
アルバム名はケルンの建物の名前、そこで行われた建築展覧会のために製作されたもの。
エレクトロニカ主体なIDM、内向的で残響が多い曲。
1曲3分と制限をかけて展開する短い音楽はどこか切ない曲調。
2、7、曲目なんかはそのノスタルジーな感じが気に入ってます。
Tosca
Suzuki
2000 G-Stone Recordings / Studio !K7 K7 085CD
Richard DorfmeisterとRupert Huberによるユニットの初期のアルバム。
ダブ系のファンキーで落ち着いたダウンテンポの音楽が、エレクトロニカの音で進む。
どちらかというと落ち着いたダブ、といった印象。エレクトロニカの主張はあくまでムード止まり。
こういうのトリップホップっていうのかな。他人の評価を見るとこの手のものとしては出来がいいようですが、
たしかに自分が聴いても(良い内容だなあ)と素直に思えました。
ダウンテンポの音楽は自分の気に入るものが少ないだけにこれは良かった。
エレクトロニカ的なサウンドが綺麗にダブのリズムと一体化しているあたりがはまったのかな。
World's End Girlfriend
Farewell Kingdom
2001 MIDI creative CXCA-1089
時にドラムンベース、時にアンビエント、時にロック、時にクラシック。
さまざまなマテリアルを全く区別なく組み立てていくその感覚は独特なものです。
幅広いジャンルを複合しながらも自然に音楽が流れていく。曲ごとの構成感もかなりしっかりしています。
ただこのアルバムはイージーリスニング的ポップ色が強めであんまり好みじゃありませんでした。
ピアノやヴォーカル、チェロ等のメロウな音が多いので、そっち系が好きな人は良いのでは。
個人的には「Dream's End Come True」の方が、ごつごつしたテクノ色が強くて気に入っています。
underconstructing #02
Proactive Criteria
2000 Underconstructing Records #02
Underconstructing Recordsというレーベルは、主にネットでの交流を通して活動し、コンピCDのメンバーを決めているようですね。
アブストラクトなドローンの上にソリッドな音の動きが被さってくる。ほとんどドローンなPlusの「MONA」。
跳ねるようなビートがふわふわ悶えるArovaneの「MEN-N」。
空間に沈んだビートが絞られた音と踊り姿を変えていくInfomax「Semiparametric model」。
細かい音使いと重いビートのアンビエントテクノ、Localの「Koncept decoy」。
クリック音メインからひび割れたミニマルへ鋭く音楽を進めるexokernel「seabeat」。
電子音の吼え声から壊れたビートがこだまするDolguの「Dismembrered Body」。
太いクリック音の心地よい、温かみのあるMokiraの「Barklong」。
少し不規則なクリック音のビートで音楽が展開する、ストイックだが心地よいHanumand「elements」。
ピアノ等の具体音響が即興的に激しく絡み合うisao horikoshi「for antonin artaud」。これだけ異常に録音悪い。わざとじゃないよね?
羽音のような電子音から変哲なビートとほのぼのした旋律のちぐはぐな音楽、pepe「fission」。
ノイジーな音がだんだんはっきりとビートを刻んでいくArovane「LEVD」。
これはこれでなかなか楽しめました。素晴らしいと言うほどではないですが、嫌いな曲も特になし。
Underworld
Barking
2010 PCDT 21-22
アンダーワールド、前作から実に3年ぶりの新作アルバムが登場です。
80年代の初期作品を振り返って、その感覚で作ってみたというだけあって、
初期のアルバムにあったような、鋭い感情が漏れでてくるような作品がそろってます。
そこへ様々なテクノシーンの人物をコラボすることで、また一味違う刺激を加えてくれる。
なんだかトランス的なリズム感覚がさらに強くなってはいる気も。
近年のクラブシーンでダブステップなんかがメジャーになってきているからか、それっぽいリズムも多い。
トラック3はドラムンベースだし(これがまた良い)トラックによっていろいろというのが総括か。
Venetian Snares
Detrimentalist
2008 Planet Mu ZIQ211CD
ヴェネチアン・スネアズの新譜。やっぱり彼のリズム感覚は最高です。
彼は多作なので正直今から全部買う気が起きないのが残念。
それでもやっぱりあると買ってしまう。買ってから、ああしまった財布の中がと後悔することしきり。ああこれ何時ものことでしたね。
今回の特に気にいってるトラックは1、7、8、9。やっぱりこれくらい速いほうがテンション上がるね。
時々意義がよく分からない試みをしたりとかするけれど、やっぱり彼はこういう風に普通に音作りしてもらってるほうが嬉しいなあ。
Venetian Snares
Hospitality
2006 Planet Mu ZIQ140CD
珍しくシンフォニックでゆっくりした出だしだなあと思っていたら、案の定壊れた暴走リズムが乱入してきて一安心。
今回はなかなかクールな路線です。爆発音は少なめで、タイトな音で細かいビートを前面に出しています。
25分しかないシングルでしたが、十二分に楽しめました。
やっぱヴェネチアンスネアズは崩し具合がいいね。
Venetian Snares + Speedranch
Making Orange Things
2001 Planet Mu ZIQ028CD
イギリスのハードコア方面で活動しているSpeedranchとブレイクコアのVenetian Snaresが組んじゃった一枚。
かすれたノイズ音が上がっていってテンションを準備、その頂点から音楽が爆発します。
ノイジーな激しいブレイクコア。ハーシュノイズに変調された声がぐじゃぐじゃのビートと暴れまわる。
二人ともかっ飛ばしすぎててやばいです。これは凄い。
ブレイクコアとハーシュノイズを足しっぱなしにした音楽。いや、ノイズ寄りかな。
休憩という言葉を忘れてしまったかのようにノンストップで破壊し尽くす40分間11曲です。
ヴェネチアン・スネアズのアルバム中でかなりの上位に来る位気に入りました。
Voodeux
The Paranormal
2009 Mothership MSHIP019
James WattsとTanner Rossによるユニットの1stアルバム。
ジャケだけ見るとスラッシュメタルか何かのアルバムを買ったのかと勘違いしそう。ていうか、した。
トラック1のサイケと言うかホラーな感じは確かにジャケのイメージそのままですが、
トラック2以降は実に正当なミニマル系のディープなテックハウスを聴かせてくれる。
ちょっとダークな雰囲気は全体ににじませていますが、音楽作りはまっとうなもの。
メタラーな感じは微塵もなかったので、買ってからジャケ見返した時の
「あれっ、なんか買うの間違えたかな」感は綺麗に消えてくれました。
Xinlisupreme
Murder Lisense
fatcat FAT-SP06
このシンリシュープリームというバンドは日本人らしい。
テクノとノイズとロックを足しっぱなしにしたみたいな、超ハイテンション音楽。
激しいノイズに包まれたビートに、ゲーム音楽的なシンセの長いメロディ。
ちょっとチープさも漂う辺りが、現代日本のアンダーグラウンドっぽい。
7曲目は普通の安っぽいピアノ曲。
ノイズ、音響、あるいはブレイクコアやロックを聴く人に広く薦められそう。
個人的にはひさびさのヒット。
Yair Etziony
Flawed
spekk kk: 013
ちょっと不穏げなループに、寂しげなピアノの音が入ってくる。
非常に音数少ないビートに、微かなクリック音とぼやけた音が絡んで、その上に壊れたピアノが広がる。
あるいは、同じように途切れがちなベースラインとビートに、心地よいふわふわした音とギターみたいなハウリングが被さる。
ちょっとダークな、アンビエントとエレクトロニカの境を行く音楽たち。
spekkだからと、その場のノリ@半額セールで買って良かったです。
8トラック目だけちょっとノイジー。
Yoko Ono
Open Your Box
2007 astralwerks ASW 88710
言わずと知れたオノ・ヨーコ。
ジョン・レノンの妻であり、フルクサスに入ってたり、様々な活動をこれまで行っていましたが、
近年はついにクラブ・シーンにまで進出したという凄さ。これはそのリミックスアルバムです。
14のアーティストによる、クラブ系ハウス・テクノ。音楽自体はそこまで変なものではないです。
まあ、ちょっとストレンジというか傍流に入っている感じではあるけれど。
けれど、これがあのオノ・ヨーコの活動の関連なのかと考えるだけで、十分価値がある、気がする。
彼女の活動性には脱帽するばかりですね。もう70過ぎてるのに。
Yoshihiro Hanno
April
2000 cirque CQCD-001
半野喜弘自身のレーベルからの、初のシングル作品。5曲収録とはいっても50分近いボリューム。
アンビエントが壊れたようにループし、ノイズが無神経に邪魔してくる。
ノイズなのかアンビエントなのかいまいちよく分からない、境界線上の音楽。
それでも、聴けば聴くほど味が出てくる素晴らしい作品。ぶつぶつに切られているのに、どこか暖かく切ない。
これは素晴らしいですね、そこらの口当たりがいいだけのアンビエントが酷くチープに見えます。
2曲目のヴォーカル風な音による「lab suite」を聴いて、何で俺は(最近のライヒっぽい)と思ったんだろう・・・
まあ確かにミニマル色が強いからそんな感じもするけれど。
5曲目、ギターの爪引きが儚く浮かんでいるところに、1曲目のピアノループの断片が絡んでくる辺りは感動的です。
かなりの当たりでした。満足。
Yoshinori Sunahara
Subliminal
2010 Ki/oon Records KSCL 1665
砂原良徳は「Lovebeat」以来だから、何とまあ9年ぶりのオリジナルアルバムです。
時計のような落ち着いたクリックパルスから、ふわりと音楽が現れる。
そこから発展する音楽は、実に彼らしいクールなビートの楽想を持っている。
トラック2からの女声サンプリングを用いた盛り上げがたまりません。
たった4曲しか入ってないですが、それでも変わらず健在であることを知らしめてくれました。
5thアルバムの発売はいつになるでしょうかねえ。
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