吹奏楽

これどういう順で整理しよう。まあ良いよね、適当に紹介した順番で。




Points of Departure
William Bolcom; Machine from symphony no.5
Frank Ticheli; Concerto for Clarinet
Evan Chambers; Outcry and Turning
Michael Daugherty; Ladder to the Moon
Roshanne Etezady; Points of Departure

Daniel Gilbert,Cl.  Yehonatan Berick,Vn.
University of Michigan Symphony Band  Michael Haithcock,Cond.
2013 Equilibrium  EQ 110

ボルコムの交響曲第5番終楽章編曲は機械的な強い推進力を味わえる。
こうして吹奏楽で聴くとよりリズムの分厚さが強調されていて悪くない。
ティケリの「クラリネット協奏曲」はガーシュウィン、コープランド、バーンスタインを
オマージュしたパロディの多い音楽。冒頭からラプソディー・イン・ブルーを丸パクリ。
第2楽章はコープランドの緩徐楽章を意識した、淡くも開放的な音楽で良い。
第3楽章はバーンスタイン。タイトルもそうだし、この編成だと
彼の「プレリュード、フーガとリフ」を強く思い起こさせます。
エヴァン・チェンバース作品はイラク戦争への警鐘を込めて書かれた作品。
混沌とした冒頭から次第にリズムを伴って激しくなっていく音楽はとてもかっこいい。
劇的な構成の、難しくも挑戦し甲斐のありそうな曲です。気に入った。
ドアティ作品はヴァイオリンソロを管楽八重奏とコントラバス、打楽器がサポート。
ジョージア・オキーフの絵画にインスパイアされた音楽です。
第1楽章はニューヨークの夜を描いた、ドアティらしいクールさを聴ける。
第2楽章はまた別の都市風景、ヴァイオリンのカデンツァを挟んで
強いリズムを放つドアティの音楽が持つビートがアメリカ精神らしい音楽を組み上げる。
ボルコムやドアティらに学んだ女性作曲家(1973-)の作品は、朗読をメインに据えた歌曲集。
様々な旅の形態を記した自身のテキストを、メゾソプラノが歌う。
音楽としては、歌い方もあってなんだかジョン・アダムスを聴いているよう。
彼の「I was Looking at the Ceiling」みたいな感じがもうちょっとクラシカルになったような
妙に聴きやすい快活さがある。個人的には良いけれど、一般としてはどうなんだろう。
第4楽章はスチールパンまで使ってカリビアンな雰囲気満載。
なんというか清々しいまでにポップなところが前述の作品と共通している。



Morton Gould; West Point Symphony
Vittorio Giannini; Symphony No.3
Alan Hovhaness; Symphony No.4 Op.165

Eastman Wind Ensemble  Frederick Fennell/A. Clyde Roller,Cond.
1992 Mercury  434 320-2

吹奏楽ファンにはおなじみの古典的一枚、大昔借りたけどようやく買って聴き返す。
モートン・グールド「ウエストポイント交響曲」、
第1楽章の重々しく展開するところは、録音はあまりよろしくないものの
フェネルの透明な指揮捌きはすごくよく分かる。まあ元の曲があまり
自分に合わないのもあるけど、どちらかというと古い音質のせいで規範的な印象に。
ただ、勢いで録音を凌駕できる後半なんかは良い感じ。
もちろん、第2楽章のマーチは鋭さがかっこいい。粗いのも否めませんが。
ジャンニーニ「交響曲第3番」もこうして聴くと時代を感じる内容。
アメリカンな正統派古典吹奏楽のノリを、この録音では清々しく鳴らしてくれる。
やはり最終楽章みたいなのがすごく快活で心地よい。
ホヴァネス「交響曲第4番」は、たぶん未だに唯一の録音なんじゃなかろうか。
第1楽章の低音楽器ソロ回しの時点で、もう完全に独自の世界にイっちゃってる。
第2楽章のプリミティヴな感じはこの演奏だからこそ、というのもあるかも。
第3楽章中間部、トロンボーンがグリッサンドしまくるなかで
バストロなんかが変わらずエスニックな旋律をぶちかますところは本当に衝撃でした。
その後の賛美歌風展開と言い、どこをとっても完全にホヴァネス。
演奏もやや荒っぽいところが良い感じに+になってて素晴らしい。



When The Trumpets Call
Dmitri Shostakovich/arr.Hansberger; Festive Overture
Morton Gould; Symphony for Band "West Point"
David Gillingham; When Speaks the Signal-Trumpet Tone
Donald Grantham; Southern Harmony
John Philip Sousa; The Gridiron Club March
Ron Nelson; Rocky Point Holiday

W. Fred Mills,Tp.  University of Georgia Wind Symphony
H. Dwight Satterwhite & John N. Culvahouse,Cond.
1999 Summit  DCD 247

ショスタコの「祝典序曲」はこのハンスバーガー編曲の中では一番まともに聴こえる演奏かも。
落ち着いたテンポと素直な範囲での優雅な響きを出しているので、違和感を強調する部分が非常に少ない。
これくらい普通にやってくれると、それなりに楽しんで聴けますね。
モートン・グールド「バンドのための交響曲「ウエスト・ポイント」」はアメリカの軍楽アカデミー150周年を祝うもの。
第1楽章は鎮魂の意を込めた重くも荘厳な音楽、そこから次第にチューバによるパッサカリアから
熱を帯びて細かい動きの上にしばらくだけ展開します。
第2楽章のマーチ、おずおずと開始して技巧的に華々しく広がっていく。
ギリングハム作品はいつものちょっとノスタルジックな感じがピアノや木管にきらきら出ていて良い感じ。
そこにトランペットソロが信号ラッパの動きを模したソロを華麗に響かせる。
第2楽章の重さも悪くないけど、やっぱり第3楽章の爽やかというか輝かしく光るソロがかっこいい。
この主題だけでももうちょい欲しい。途中のティンパニなんかもかなりおいしい。
第二次大戦への思いを込めた、20分近いトランペット協奏曲。
グランサム作品は、1835年にWilliam Walkerが編纂出版した同名のアメリカ民謡集を元にしたもの。
ペンタトニックなどを使った旋律が多く採集されているため、聴いていると不思議な感覚になる。
第3楽章は手拍子も使ったフランキーな音楽で良いノリ。
スーザの曲はどっちかというとマイナーな方か?
最後はネルソン「ロッキー・ポイント・ホリデー」で爽やかに締め。
この音源は演奏も全体的にスマートにまとめてくれていて、響きがすごく心地よい。
その点では、このCDは凄くお勧めできる。ただ選曲が微妙にマニアック。



Landscapes: Music for Wind Band
Michael Torke; Javelin(arr.Merlin Patterson), Mojave
Frank Ticheli; An American Elegy, Simple Gifts:Four Shaker Songs
Aaron Copland; Quiet City(arr.Donald Hunsberger), Variations on a Shaker Melody

Ji Hye Jung,Mar.  Steve Leisring,Tp.  Margaret Marco,E.Hr.
University of Kansas Wind Ensemble  Paul W. Popiel,Cond.
2013 Naxos  8.573104

Naxosが送るアメリカの吹奏楽作品集…というコンセプトですが、オリジナルでないものもちらほら。
マイケル・トークはArgoレーベルのお蔭でもうばっちり知ってる。
彼の代表作でもある「ジャベリン」はこうして吹奏楽で聴いた方がぶっちゃけ楽しかった。
確かに伴奏の持続音とかはきついだろうけど、あそこまで倍音がないほうがすっきりしてて良い。
「モハーヴェ」はマリンバとの協奏曲。5拍子の音楽はシェーカー教徒の踊りがモチーフのよう。
だから特に後半は、ミニマリズムの名作であるアダムス「シェーカー・ループス」にも似た響き。
ここから、このアルバムはシェーカーの音楽を選曲の主軸に置いてたことが分かる。
落ち着いたテンポに跳ねるような旋律がとても心地よい、やっぱこの人吹奏楽の方が合うよ。
フランク・ティケリ(1958-)は近年特に海外でやたら評価が高い吹奏楽作曲家。
「アメリカン・エレジー」は長くも綺麗な優しい悲歌。聴く分には良いけど演奏してみたくはない。
「シンプル・ギフト -4つのシェーカー教徒の歌」はやはり落ち着いた舞曲で
4つの短い音楽を繰り広げてくれる、こちらは演奏頻度も高そうな内容。
最後に大御所コープランド、「静かな都市」は吹奏楽ではおなじみハンスバーガーの編曲。
この人の編曲は奇異に感じることのないスムーズな変換なのが良い。
「シェーカー教徒の旋律による変奏曲」は素朴ながら綺麗でなかなか感動的な小曲。
あんまり期待してなかったけどなかなか良かった。「モハーヴェ」なんかかなり繰り返し聴いてます。



A Musical Observance
John Heins; Overture for Band
Edvard Grieg; Funeral March
Bob Margolis; Color
Timothy Mahr; Endurance
Arne Running; Toccata from 'Sinfonia Festiva'
Morton Gould; Fanfare for Freedom
Glenn Miller; Glenn Miller in Concert
Daniel Bukvich; Symphony No.1
William Schuman; When Jesus Wept
Robert Jager; Epilogue:"Lest We Forget"
John Williams; Midway March

The St.Olaf Band  Timothy Mahr,Cond.
Westmark / St.Olaf Records  WCD 29623

アメリカ・聖オラフカレッジのバンドによる音源。
後半は終戦50年を記念した演奏講演みたいなものですが、
そんなことより全曲ティモシー・マーの指揮なのに注目。自作自演まであるよこれ。
ジョン・ヘインズ(1956-)の「バンドのための序曲」6/8ベースのリズムが小気味よい。
これ、ちょっと細かい音型を練習すれば普通に凄く面白そう。
グリーグ作品はフェネルらの編曲。まあいいんじゃないですかね。
ボブ・マーゴリス(1949-)「カラー」はやっぱりイギリスの舞踏曲がオリジナル。この人本当に古楽とか好きだな。
さっと過ぎ去るような短い曲ばかりですが、その方が古楽…というか元ネタの17世紀音楽らしく聴こえる。
さて注目の自作自演「エンデュランス」、演奏は微妙な気もしますが響きの練り方は流石に上手い。
技術ではない、そつなく纏まっているだけなんだけど安心して聴けるこの感覚が良いです。
アーン・ラニング(1943-)「シンフォニア・フェスティーヴァ」からのトッカータは評判通りのどこかいかれた曲。
テンション高くて程よくはじけた、技量があれば是非ノリノリでやってみたい曲。技術があれば。
というか、この曲はこのバンドが初演しているのか…
グールド「自由のためのファンファーレ」はコープランドの例のあれと同じく戦意高揚のために
グーセンスによって委嘱されたものの一つ。だから非常にテンション高い、いかにもファンファーレな曲。
グレン・ミラーの曲はスコット編曲。…どこのスコットさんだよ、頼むからフルネーム書いてくれ。
ダニエル・バクヴィッチ(1954-)はモンタナ出身の吹奏楽メインな作曲家。
吹奏楽のための「交響曲第1番」は"In Memoriam: Dresden,Germany,1945"とあるようにドレスデン爆撃が題材。
プロローグのクラスターから銃撃のようなモチーフの絡み合いで盛り上がり、
第3楽章で寂寞に祈り、終楽章は演奏者の喚きと打楽器でひたすら煽り、次第に消えてゆく。
全曲8分弱のちょっと交響曲と呼ぶには短すぎるような音楽ですが悪くなかった。ただとっつきやすくはないなこれ。
ウィリアム・シューマンの「イエス、涙を流したもう時」は彼のニューイングランド三部作の真ん中。
オーボエとファゴットが重要な役割を果たす、静かな祈りの音楽。
ロバート・ジェイガー作品はやはり第二次大戦に捧げられた重くも綺麗な音楽。
最後はジョン・ウィリアムス(カーナウ編曲)のリズムが癖になる「ミッドウェー行進曲」で締め。
演奏はまあアメリカのアマチュアとしては頑張っている方。やっぱり個人の力量が問われる場面は弱いけど、
テュッティで聴かせるところはうまく纏まっているのでCD音源でもそこそこ楽しめます。



Chronicles
Percy Fletcher/Brant Karrick; Vanity Fair
Luis Serrano Alarcon; Concertango
Karel Husa; Cheetah
Gordon Jacob; Flag of Stars
Andrew Boysen Jr.; Branden's Rainbow
Chang Su Koh; As the Sun Rises

North Texas Wind Symphony  Eugine Migliaro Corporon,Cond.
2009 GIA WindWorks  CD-774

フレッチャーの「虚栄の市」、実に近代イギリスらしい音楽。ホルストから土臭さをなくした感じ。
軽快だし中間部は綺麗だし、まあ近代英ものが好きならどうぞ、といった感じ。
ヴァレンシア出身のルイス・セラーノ・アラルコンによる「コンチェルタンゴ」、サックスのソロに導かれて始まるタンゴ。
タンゴなのにジャズトリオがいたりちょっとメインジャンルが不明な一品なんですが、
まあまあ終始ノリ良くタンゴしているので聴いていて楽しい。いかにもなピアソラ風タンゴです。
さてカレル・フサの「チーター」、これ目当てで買いました。
滅び行く野生動物の狩りの様(しかも失敗する様子らしい)を描く辺りフサだなあと思う。
機械的に進行するモチーフ群からグロテスクに発展するさまは実にいつも通り。
出来は相変わらずなんだけれど、どうも押しに弱い。まあ演奏にまるで熱がないからなあ。
ゴードン・ジェイコブ「フラッグ・オブ・スターズ」、トランペットのファンファーレで始まり、
広々とした空間をイメージさせるゆったりした動機から重厚な祝祭的音楽へ。
彼の重要な初期ウインドバンド作品(1956)といえるでしょう。でも好みと微妙に違う・・・
ボイセンJr.の「ブランデンの虹」、ぼやけたドローンの中からトランペットやトロンボーンソロ。
ぼやけを振り払いながら次第にゆっくり盛り上がり消えていく。そこからまた盛り上がると
今度は輝かしくファンファーレにまで発展しますが、またすぐに冒頭のトランペットに回帰して終了。
淡く美しい作品です。この人の曲はけっこうセンスがあっていいですね。
高昌帥による吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」は30分の大作。
見事なまでに後期ロマン派の作風。シューマンとかそこらの時代のマイナー作曲家の交響曲を聴いてるみたい。
つまり何が言いたいか。うん、見事なまでに自分の趣味から外れてます。
演奏は、まあ可もなし不可もなし。いつも通り安全運転な感じ。



Indiana University Wind Ensemble  Ray E. Cramer,Conductor
David Dzubay; Celebratory Fanfare for Six Trumpets
Jindrich Feld; Joyful Overture
Karel Husa; Les Couleurs Fauves
J.S.Bach/arr.Yohsihiro Kimura; Fugue in G minor S.578(Little)
Frederick Fox; Four Times Round
W. Paris Chambers; The Boys of the Old Bridge
Jeffrey Hass; All the Bells and Whistles
Frank Ticheli; Blue Shades
Shostakovich/arr.H.Robert Reynolds; Folk Dances

2000 RIAX Records  RICA-6001

Dzubayのファンファーレはトランペット6本による技巧的で華やかな音楽。
ちょっとフサみたいな旋律回しがあったし同郷かな?と思いましたが、本人自身は普通にオレゴン出身でした。
名前からして、たぶんルーツはチェコとか東欧にあると思うんだけれどなあ・・・
Feldの曲はちょっとロマン派な雰囲気漂うスタンダードな音楽。
目当てのフサ、綺麗ながらもグロテスクさが漂う、なかなか面白い曲です。
演奏も、インパクトはありませんがよく纏まっていて安心できる。
バッハの小フーガを挟んで、フォックスのそこそこな長さの作品。多分メイン。
グロテスクなモチーフが反復されながら次第に変化していく、鬱屈した音楽。
次のチェンバースは19世紀後半から20世紀初頭に活躍した兼コルネット奏者。
音楽はマーチと言うかポルカ。短いですがノリノリで良し。
ジェフリー・ハース作品はエレクトロニクスも使ったなかなか激しい曲。
ただなんかこう、錯乱具合が微妙に少なくて物足りなかった。確かに面白いけれど。
最近は随分有名になったティケリ、スイングジャズの音楽を色濃く反映した作品。
最後のショスタコ、詳細不明。最近発掘された曲なんかな。



Trittico
Vaclav Nelhybel; Trittico
Zdenek Lukas; Musica Boema
H. Owen Reed; Ut Re Mi
Ernst Toch; Spiel
Roger Nixon; Mondavi Fanfare
Hugo Alfven; Fest-Overture

Rutgers Wind Ensemble  William Berz,Cond.
2007 Mark  7249-MCD

ネリベルの「トリティコ」、スネアのきびきびしたリズムに乗せて、あの切羽詰まる音楽が進む。
打楽器が重く叩かれファゴットが唸る第2楽章が長さ的にはメイン。
第3楽章は彼にしては珍しく祝祭的な曲調で開始・・・と思いきややっぱり一癖ある旋律。
ズデニェク・ルーカシュ(1928-2007)はチェコの作曲家。かなり多岐のジャンルの曲を多く書いてます。
「ボヘミアの音楽」はトランペットの哀愁漂うソロで開始。行進風の音楽はやがて
トムの勢いあるリズムに活気づけられるものの、次第にハープと鍵盤打楽器の美しくきらめく音楽から
木管が舞踏を華麗に躍り出る。第2曲ではよりバラード的な感覚が強調されます。
H.O.リードの「ド・レ・ミ」、聖ヨハネへの古い賛歌を基にした変奏曲。
ハ長調の音階をもう一つのマテリアルとしながら、なかなか技巧的な奏法を金管に要求してます。
そしてその中に漂う、民族的というかアステカな香りの響き。
途中にしばらく歌が入るあたりなかなか難しそうですが、音楽は面白かった。最後は静かに終了。
エルンスト・トッホの「シュピール」は1920年代の曲なのもあって実に素直。
近代ドイツの典型的な祝祭風バンド音楽です。
ロジャー・ニクソンの曲、トランペットたちが華麗にファンファーレしてるあたり
典型的なアメリカンの彼らしい音楽です。逆に、ヒューゴー・アルヴェーンの「祝祭序曲」、
近代スウェーデンの大御所なだけあってさらっとした語り口のロマン派音楽。
演奏者のラトガーズW.E.、第一印象は良くなかったんですがこれでは普通に楽しめる。



ウインド・オーケストラのための交響曲 3
Nikolay Miaskowsky; Symphony No.19 Es Major Op.46
Vincent Persichetti; Symphony No.6 Op.69
Paul Fauchet; Symphony in B Major

The Osaka Municipal Symphonic Band  Heinz Friesen,Cond.
1995 EMI  TOCZ-9262

東芝EMIの、一番本格的な吹奏楽のための交響曲シリーズその3。
ニコライ・ミャスコフスキー(1881-1950)は、ロシアマニア以外にはこれくらいでしか有名じゃないんじゃないかなあ。
第1楽章、重々しい序奏から、彼らしい(ロシアにしては軽い感じの)主題が
クラリネット主導の第2主題と華やかに音楽を流していく。
いかにも交響曲で使われそうなワルツ風の第2楽章、冒頭チューバのおいしい民謡風ののびやかな第3楽章。
最終楽章はやはり軽やかな主題がちりばめられて終わる、彼らしい軽さの良作。
ヴィンセント・パーシケッティ(1915-87)のほうが知名度としては上だと思うんですがどうでしょう。
第1楽章、冒頭の不穏な雰囲気の中で打楽器が絶えずころころと活躍する。
音楽はやがてアレグロの主部へ、アメリカらしい快活さで展開します。
以前作曲した主題を使用した讃美歌風の第2楽章、ホルストみたいな軽快さの第3楽章、
快速な第4楽章は彼に相応しい、ころころと変えながらも劇的な音楽に成長します。
ポール・フォーシェ(1881-1937)なんて、以前本で(このCDのことを)読まない限り絶対知らなかったぞ。
パリ音楽院に学び、同所で教鞭も執りましたが、50なかばで世を去ります。
第1楽章、ホルンなどで始まる、いかにもフランス近代作品の響き。
アレグロの主部、ファンファーレ調の6拍子が優雅な軽さを引き立てる。
10分あるこの楽章、堂々と完結してしまっていてこれで終わりになっちゃいそう。
ホルンの物憂げなソロで第2楽章は始まり、美しい庭園のように広がる。
第3楽章はリズミカルな牧歌風音楽。第4楽章のいかにもなギャロップ。
ああ、本当に正統のど真ん中を行く人だったんだなあ。素朴でいい曲です。
演奏、フリーセンの指揮だとけっこう自分好みの響きになるから不思議。



Stockholm Symphonic Wind Orchestra
Arnold Ashonberg; Theme and Variations Op.43A
Launy Grondahl; Concerto for Trombone and Band
Miklos Maros; Aurora
Toshiro Mayuzumi; The Ritual Overture
F. Mendelssohn; Ouverture fur Harmoniemusik Op.24
Aulis Sallinen; Chorali

Omnibus Kammarblasare  Hakan Bjorkman,Tbn.
Stockholm Symphonic Wind Orchestra  Jun'ichi Hirokami,Cond.
1996 Caprice  CAP 21516

某書でもよく取り上げられてるので知名度は結構高いであろうアルバム。
シェーンベルクの「主題と変奏」はこの手の趣旨のアルバムによく入ってる。
十二音主義にはしる前の結構代表的な作品です。個人的には「室内協奏曲第1番」ほどは
軽快さが足りないのでそんな好きでもないんですが、その構成手腕はそれに劣らず見事なもの。
演奏も、手馴れた感じからしてもこの曲の音源のトップクラスに位置づけられるものでしょう。
ラウニー・グレンダール(1886-1960)はデンマーク出身の作曲家・指揮者。
13歳にしてヴァイオリニスト・デビューをするなど早熟の天才でもありました。
Paul Ivan Mollerによって編曲された「トロンボーンとバンドのための交響曲」(1924)は
はっきりしたロマン派の音楽ですが、その優雅な旋律をトロンボーンで吹くと
これだけ自分好みに響かせられるんだなあと個人的な発見。
まあそうでなくても、たとえば同時代の北欧〜ロシア作品が好きな人なら楽しく聴けるはず。
第2楽章、ピアノ伴奏しててこの時代らしくない気もするのは編曲の影響下。
ミクローシュ・マロシュ(1943-)は超とまではいかなくとも有名な現代の作曲家。
「アウロラ」は10の管楽器と吹奏楽のグロッソ的な様式。木管の印象的なアルペジオ音型と
込み入った和音のドローン、マロシュの様式であると同時にオーロラのような美しいモチーフです。
これが元になって、ミニマルな展開を中軸にしながら激しく展開する、かっこいい曲。
打楽器も超活躍します。これ良いよ、面白い。音価のバリエーションはすごく簡素だけれども。
黛敏郎の「礼拝序曲」は「トーンプレロマス'55」を改作したもの。
ヴァレーズ趣味丸出しのこの曲を、ストックホルムSWOは豪快に料理してくれてます。
やっぱこういう曲は破天荒なところがないと面白くない。東京佼成はいいんだけれど真面目すぎて・・・
ここで何故かメンデルスゾーンの「管楽合奏のための序曲 ハ長調」。
ここでこれ聴いちゃうと実に普通の安心出来る曲になっちゃいます。まあそうなんだが。
まあ締めの前にちょっと休んどけ、ってことでしょうか。
そして大取りアリウス・サッリネン(1935-)の「コラーリ」。メリカントに学んだ
現代フィンランドを代表する作曲家の一人による1970年の力作です。
神秘的なコラール主題がやがて葬送行進曲に似た音楽へ発展する、重く暗い曲。
けれど、その幻想的でもある響きが気に入りました。終わりはあっさりですがカッコいい。



Luminaries
D. Shostakovich/Arr.H.R.Reynolds; Prelude Op34-14, Folk Dances
Eric Whitacre; Ghost Train Triptych
Yasuhide Ito; Guloriosa
Paul Hindemith/K.Wilson; Symphonic Metamorphosis on Themes of Carl Maria von Weber

North Texas Callege of Music Wind Symphony  Eugene Corporon,Cond.
1996 Klavier  KCD 11077

最初はショスタコの編曲作品2つ。これ2つで「ルミナリーズ」ってタイトル・・・なのかなあ。
第1曲は「24の前奏曲 作品34」から第14番。これはまた微妙すぎるところから・・・
彼の交響曲11番みたいな重苦しい音楽で、これはこれで楽しい。
第2曲は「民族舞曲」、これオリジナルはなんだろう。解説は1950年に作曲された、
元はM.Vakhutinskyの手による編曲だと言っているだけで、原曲については何も触れていない。
なんだろう、「バレエ組曲」シリーズはL.アトヴミャーンの編曲だし・・・
軽快なマーチ風の民謡的旋律に、ショスタコらしい動きがちょっと出てくる。
エリック・ウィッテカーの「ゴーストトレイン」は、今は単にそう呼べばこの3部作のことを示しますね。
最初は第1曲だけでそう呼んでいたために、こうしてはっきり書くことも多いです。
やっぱり、こうして聴くとジャズやロックの影響が顕著。特に第2曲。
構造が細かく見えるいい演奏。自分の好きな第1曲もなかなかノリ良くまとめてくれて心地良い。
とりあえず、今まで持ってる音源の中では(最後以外)一番良いもの。本当はベガスの大学の演奏が一番派手なんだが。
伊藤康英「ぐるりよざ」も彼の代表作ですね。そういえば本当はバリトン独唱もつくんでした。
グレゴリオ聖歌と日本音楽の結びついたこの独特な宗教観を吹奏楽の中で表現した面白い曲です。
ヒンデミット「ウェーバーの主題による交響的変容」も吹奏楽界では超有名。
これ、バレエが構想のもとなのは覚えてたけれど、ダリが話に絡んでたのね。そりゃ相性が悪かった・・・
とりあえずこの作品は第4曲だけ大好き。
やっぱり、このコンビは佳演だけれどもう一歩が欲しくなる。
うまくまとまってるけれど、ノリや爽快感がもっと欲しい。



Stockholm Symphonic Wind Orchestra
Arnold Ashonberg; Theme and Variations Op.43A
Launy Grondahl; Concerto for Trombone and Band
Miklos Maros; Aurora
Toshiro Mayuzumi; The Ritual Overture
F. Mendelssohn; Ouverture fur Harmoniemusik Op.24
Aulis Sallinen; Chorali

Omnibus Kammarblasare  Hakan Bjorkman,Tbn.
Stockholm Symphonic Wind Orchestra  Jun'ichi Hirokami,Cond.
1996 Caprice  CAP 21516
某書でもよく取り上げられてるので知名度は低くはないであろうアルバム。
シェーンベルクの「主題と変奏」はこの手の趣旨のアルバムによく入ってる。
十二音主義にはしる前の結構代表的な作品です。個人的には「室内協奏曲第1番」ほどは
軽快さが足りないのでそんな好きでもないんですが、その構成手腕はそれに劣らず見事なもの。
演奏も、手馴れた感じからしてもこの曲の音源のトップクラスに位置づけられるものでしょう。
ラウニー・グレンダール(1886-1960)はデンマーク出身の作曲家・指揮者。
13歳にしてヴァイオリニスト・デビューをするなど早熟の天才でもありました。
Paul Ivan Mollerによって編曲された「トロンボーンとバンドのための交響曲」(1924)は
はっきりしたロマン派の音楽ですが、その優雅な旋律をトロンボーンで吹くと
これだけ自分好みに響かせられるんだなあと個人的な発見。
まあそうでなくても、たとえば同時代の北欧〜ロシア作品が好きな人なら楽しく聴けるはず。
第2楽章、ピアノ伴奏しててこの時代らしくない気もするのは編曲の影響下。
ミクローシュ・マロシュ(1943-)は超とまではいかなくとも有名な現代の作曲家。
「アウロラ」は10の管楽器と吹奏楽のグロッソ的な様式。木管の印象的なアルペジオ音型と
込み入った和音のドローン、マロシュの様式であると同時にオーロラのような美しいモチーフです。
これが元になって、ミニマルな展開を中軸にしながら激しく展開する、かっこいい曲。
打楽器も超活躍します。これ良いよ、面白い。音価のバリエーションはすごく簡素だけれども。
黛敏郎の「礼拝序曲」は「トーンプレロマス'55」を改作したもの。
ヴァレーズ趣味丸出しのこの曲を、ストックホルムSWOは豪快に料理してくれてます。
やっぱこういう曲は破天荒なところがないと面白くない。東京佼成はいいんだけれど真面目すぎて・・・
ここで何故かメンデルスゾーンの「管楽合奏のための序曲 ハ長調」。
ここでこれ聴いちゃうと実に普通の安心出来る曲になっちゃいます。まあそうなんだが。
まあ締めの前にちょっと休んどけ、ってことでしょうか。
そして大取りアリウス・サッリネン(1935-)の「コラーリ」。メリカントに学んだ
現代フィンランドを代表する作曲家の一人による1970年の力作です。
神秘的なコラール主題がやがて葬送行進曲に似た音楽へ発展する、重く暗い曲。
けれど、その幻想的でもある響きが気に入りました。終わりはあっさりですがカッコいい。



The Divine Comedy -Symphonic Band Works of Robert W. Smith
The Divine Comedy, The Gathering of the Yeomen, In the Bleak Midwinter,
Twelve Minutes to the Moon, Pavane, The Tempest, Symphonic Festival, Africa: Ceremony, Song and Ritual

George Mason University Wind Ensemble  Anthony Maiello,Cond.
CPP Media Records  EL9748CD

たぶん、けっこう古典的で有名なロバート・W・スミスの作品集。
たまたま超安価で売ってるところを見つけてすかさずゲット。そこまで好きじゃないけど。
「ダンテの神曲」は4楽章からなるけっこうな力作。思えばこの「地獄編」が初めて聴いたスミス作品だったな・・・
ここでの演奏はなかなかテンション高く早めのテンポで突っ走ってくれるから嬉しい。
今聴くとこの中間部、もろもろに「春の祭典」にしか聴こえないなあ。
「煉獄編」はほとんど聴いた記憶がない。でもこっちの方がリズムが荒々しくノリノリで良いんじゃないかなあと
思ってたら、いきなりグロリアを歌いだす。ああ、演奏頻度の低いわけがよくわかった。
「キリストの昇天」、メランコリックでちょっとジャジーな和声。あ、でも冒頭過ぎたら普通に綺麗な吹奏楽だ。
なのに中間のこのいきなり動的な展開はなんでしょう。まあいいや、ダンテ読んでない以上展開はつっこめん。
凄いスミスらしい情熱的な展開だけれど・・・え、これの後まだ曲が続くんだよね?
「天国編」、鍵盤打楽器のきらめきにホルンのコラール。やっぱり合唱も入ってきた。
ティンパニ主導の壮大な盛り上がりはいかにもだ。良いんだけれど、前の楽章でもさんざ盛り上がったでしょうに。
以下、単独曲。
「農民の集い」、軽快な6/8の民謡風輪舞曲は農民を表そうとしているのか。
中間部の旋律は好みだけれど、それ以外の展開がどうも肌に合わなかった。
「冬のさなかに」だけDr. Ben Hawkins指揮。有名なホルスト作曲のクリスマスキャロルです。
うーん、これスミスの作風とあまりにもちぐはぐすぎやしないか・・・?
「月まで12秒」は結構日本でも演奏されますね。序奏の後に華やかで軽快な音楽が
一気呵成に突き進むさまは実に爽快。怪しげな中間部はいつも通りですが、
やっぱり最後のど派手な展開は演奏映えして良いですよね。最初と最後聴けば満足。
「パヴァーヌ(亡き王女のための)」はもちろんラヴェルのあれのアレンジ。
素朴に無難に、かつまあまあ簡素にアレンジしているので一安心。まあ、これで前の曲みたくやられてもね。
「テンペスト」、重いリズムで暗く進む、短い曲。この中だと影が薄い曲だ・・・
「交響的序曲」、颯爽とした曲でいい感じ。まあ確かに、普段の彼と比べたらかなりシンフォニックな響きだ。
「アフリカ」もよく演奏されますね。派手でリズミカル、演奏効果が高い。ただ自分はそこまででもない。

うん、「ダンテの神曲」「月まで12秒」があれば問題ないな。あとは「交響的序曲」「アフリカ」がオプションで。
演奏はかなり生々しさが伝わってくる、熱気ある演奏で非常に好感もてます。激しさが必要な場面なんかは実にいい。
ただ、演奏技術の方ははっきりと「上手い」とは言えないかな・・・残念ながら。



Conservatory Editions III
Andrew Boysen Jr.; Ovations, Celebration for Brass
Robert Jager; Maditations on an Old Scottish Hymn Tune
Frank Bencriscutto; Concertino for Clarinet and Band
Jack Stamp; Divertimento in "F"
John Zdechlik; Concerto for French Horn and Band
Roger Nixon; A Centennial Overture, Ceremonial Piece for Brass
John Heins; Overture for Band, Treasure State Festival Overture
Saint-Saens/Leigh Steiger; Danse Bacchanale
Rimsky-Korsakov/Terry Vosbein; Dance of the Tumblers
John Paulson; Epinicion
Berlioz/Yo Gotoh; Hungarian March
Offenbach/Lawrence Odom; La Belle Helene Overture
Praetorius/Paul Beck; Misericordia Domini
Charles Knox; Voluntary on Hyfrydol
Nicolai/David Baldwin; A Mighty Fortress
Monteverdi/Barry Toombs; Cruda Amarilli
Marcello/Barry Toombs; Psalm XIX: The Heavens Declare

1995 Neil A. Kjos Music Company  NN9524B

Kjos Musicから出ているグレード5以上の吹奏楽曲の参考音源&楽譜サンプル。
ボイセンJr.の「Ovations」、打楽器とトロンボーンソロによる重々しい序奏の後、トランペットに始まる爽やかな音楽に。
なかなかカッコいい音楽が次から次へと出てくる、金管が終始華やかな曲。これいいなあ。
ジェイガーはトランペット協奏曲の形式。神秘的で鎮魂的な讃歌が
トランペットを軸にゆっくりと展開し、オルガンまで入りながらレスピーギの「ステンドグラス」よろしく進む。
ベンクリシュートーは日本では編曲者としての方が有名かな。
「クラリネット協奏曲」、疾走感ある爽やかな音楽。リズムがちょっとトリッキーですが、聴いてて楽しい。
しかも聴きごたえはありながらもそこまでハチャメチャな難しさじゃないのが分かって良い。
この音源はライヴ、その後に作曲者自身が話してきて別の参考テイクがちょっぴり。
スタンプの「"F"のディヴェルティメント」はFで始まる5つの楽章からなる15分ほどの作品。
変拍子がなかなか激しい、コラール的な進行が多い曲。
ズデクリクの「ホルン協奏曲」、6/8の軽やかな第1楽章、それを基調としながらロマンス調になる
第2楽章、快活ながらも落ち着いた進行の第3楽章。
ニクソンの「A Centennial Overture」は木管と金管の掛け合いから華やかに盛り上がり、
彼らしいオーソドックスな展開。でもこれくらいなら自分も楽しく聴ける。
ヘインズの曲、12/8の動きがちょっと面倒な感じではあるけれど、曲としてはけっこう面白い。
「バッカナール」、これクラとフルートが相当肝な編曲だな。まあ元々そうか。
コルサコフの方は原曲の記憶があんまりないなあ、彼らしい曲なのは認める。
ポールソンの曲は結構前衛的。ブレストーン、拍節のない音楽。
わけのわからなさは随一だけれど、なかなかはちゃめちゃに激しくて個人的には楽しい。
ベルリオーズとオッフェンバックを過ぎて、ヘインズ2曲目「Treasure State Festival Overture」、
明るく派手めだけれどちょっと趣味じゃあないかも。ニクソンのブラスナンバーは3/4にのせてゆったり開かれる祝典的な短い音楽。
プレトリウスのバロックを聴いたあとはボイセンJr.のブラス作品へ。リズムずらしが印象的な、自分好みの曲です。
「Voluntary on Hyfrydol」、思いっきり19世紀風のコラールや展開。簡素だけれど良い。
ニコライの曲は元がバロックだけにやはり似た構成。
金管五重奏のための最後2曲も・・・というかここらへんで聴く力が尽きた。



トーンプレロマス55 -黛敏郎管楽作品集
打楽器とウインド・オーケストラのための協奏曲、花火、
トーンプレロマス55、彫刻の音楽、テクスチュア、「天地創造」より

東京佼成ウインドオーケストラ  岩城宏之指揮
1999 Kosei Pub.  KOCD-2907

伊福部昭に師事した人間の中で最も有名な作曲家の一人である彼の管楽作品集。
彼は(武満と対比されるように)開放的でエネルギーに満ちた音楽を得意としました。
「協奏曲」時代劇でも始まりそうな重い序奏から高揚を増し、彼らしい小刻みな主題が現れる。
金管から現れる短い音型の旋律が木管に受け継がれ、神秘的な部分も現れるが終始颯爽と飛ばす。
「花火」はそれに比べるとかなり音の跳躍が不協和的。
主部の木管の音型などはころころとしていますが、前衛の影響がやや直接出ています。
この演奏なんと花火のパートをカットしている。この時点で評価が下がった・・・
「トーンプレロマス55」はこの方面の作曲で一番知られているものでしょう。
團伊玖磨や芥川也寸志と三人の会を結成した2年後の作品、タイトルは
大きな影響を受けたヴァレーズの造語Tonepleromasから(この言葉は現在のトーンクラスターに同義)。
邦楽のような冒頭に始まり、ヴァレーズを彷彿とさせる音の構築と
ミュージカルソウの個性的な響き、ヴァレーズらしくもジャズの影響を見ることのできる旋律。
後半に現れるジャズのコラージュは非常に異色です。
このヴァレーズを過度なまでに意識した音楽は、音の力を持った確かな良品。
「彫刻の音楽」はここまでの作品と違い、音の蓄積による響きを意識した作品。
4分ほどの中で、透明でありながらもクラスターのような響きを持った不思議な存在感の音が作られていく。
「テクスチュア」は前作の方向をさらに進めた、まるで雅楽を思わせるような響きが支配します。
笙のような輪郭の音にはじまり、それが大きく壮大に成長する。
「Bugaku」を書いた直後の作品というのが意味深に思えてくる、1962年作品。
最後の「天地創造」はヒューストン監督の同名映画のための音楽をKen Whitcombが編曲したもの。
ホルン開始で壮大に響く「メインテーマ」、アラビックな「ノアの方舟」、どちらも4分ほどの小品に仕上がっています。
やはり彼の音楽はクリスピーな音響に満ちていた。
さらにいえば、他の三人の会メンバーと共通する音の動きが非常に多く、それも面白かった。
ちなみに解説は白石美雪、こりゃ吹奏楽を超えて本格的だ。あと黛作品は6管編成が多いのね。



Pageant
Vincent Persichetti; Pageant
Norman Dello Joio; Scenes from "The Louvre"
Robert Russell Bennett; Symphonic Songs
Samuel Barber; Commando March
John Barnes Chance; Incantation and Dance
William Schuman; Newsreel in Five Shots
Joseph Wilcox Jenkins; American Overture
Floyd Werle; Concertino for Three Brass and Band
Jack Stamp; Cheers!

The Keystone Wind Ensemble  Jack Stamp,Cond.
1998 Citadel  CTD 88132

某書のお陰で随分と有名になったCD。確かにマニアにはたまらない選曲かも。
パーシケッティの「ページェント」、彼らしいパッサカリア風の展開による、落ち着いた美しい前半。
バラード的な格好良さがいいです。後半は元気になってお得意の構成的技法で盛り上げる。
デロ=ジョイオの「"ルーブル"からの場面」は管弦楽がオリジナル。
ドキュメンタリーのBGMですが、実に美しい正統な音楽を書きます。
ただ、すでに管弦楽版を持つ身としては、聴くためにこちらを選ぶ理由があまり・・・
ベネットの「シンフォニック・ソング」は彼の代表作ですね。
アメリカ的な楽天さとバカバカしさと美しさが同居した、景気いい傑作。
ただ、まとまっていていい演奏だけれど大江戸WOのライヴを聴いた身には大人しく写ってしまう。
バーバーの「コマンド・マーチ」、意外と知名度はあるからびっくり。
きびきびした、アメリカンで小気味良い行進曲。普通だけれど手が込んでて楽しい。
チャンスの「呪文と踊り」、これが聴きたかった。中2の時コンクールで吹いたなあ。
暗いフルートの怪しげな旋律から不気味な盛り上がり、打楽器とトロンボーンに導かれて始めるひきつった巧妙な踊り。
まさに劇的の言葉が似合う名作です。演奏も十分ツボを抑えていて満足。
ウィリアム・シューマンの曲は彼初期の作品。短い5曲からなる印象的な音楽。
ここのジェンキンスはカールじゃなくてジョセフ・ウィルコックス。
「アメリカ風序曲」は快活でカントリーな雰囲気の曲、5分足らず。楽しくて好き。
フロイド・ワールのコンチェルティーノ、7分ほどのアメリカらしい洒脱な一品。
最後はジャック・スタンプの派手なファンファーレ「チアーズ!」で締め。

演奏はけっこう荒いですが十分楽しめるもの。録音も近めで良い。
にしても初録音が多いなあ。「呪文と踊り」とかこれが初なんて嘘だろ・・・?



In Concert with the University of Illinois Symphonic Band
The Begian Years Volume XIV
Carl Nielsen; Masquerade Overture
Loris Chobanian; Armenian Dances
Claude Debussy; Premiere Rhapsody
Fisher Tull; Sketchs on a Tudor Psalm
Ingolf Dahl; Sinfonietta
Aaron Copland/Mark Hindsley; El Salon Mexico

Mark 3086-MCD

びびるくらい大量のシリーズが出ているイリノイ州立大学シンフォニックバンドのライヴ録音。
ニールセンの「マスカレード序曲」、やっぱこうして聴くと比較的穏健なデンマークの作曲家なんだなあ。
コバニアン(1933-)はアルメニアにルーツを持つイラク出身の作曲家。なので曲も納得。
5つの短い「アルメニアン・ダンス」が簡素に繰り広げられます。
ドビュッシーの「第一狂詩曲」、なんだこれ聴いたことないぞと思ったら・・・
パリ音楽院の演奏会のために作曲したクラリネットとピアノ伴奏のための曲のようです。
おそらくこの編曲は、作者が後に行った管弦楽配置をもとにされているんでしょう。
フィッシャー・タルの「Sketchs on a Tudor Psalm」、
タリスの「第二詩篇」をもとに作られた彼らしい作品。吹奏楽的なダイナミックさ。
インゴルフ・ダール「シンフォニエッタ」は確固とした形式を持ちながらも軽妙洒脱に音楽が進んでいく、
20分の大作。これは派手じゃないけれど心地よくて好きです。
コープランドの「エル・サロン・メヒコ」、簡素だけれど楽天的な彼の人気作品。自分の評価は微妙。
そして・・・ついに来た、録音大外れ品。ニールセンとタルに至ってはものすごいモノラル感+ホール残響。
演奏はとりあえず問題ないんだけれど、録音が酷すぎです。
まあコバニアンとダールの曲が(演奏は)良かっただけ、これを聴くために買うのはまだありかな。



Johan de Meij
Symphony No.3 "Planet Earth"
Windy City Overture, Extreme Make-over

Banda Sinfonica La Artistica Bunol  Henrie Adams,Con.
Women's Choir Orfeon Universitario de Valencia
2007 World Wind Music / Amstel  WWM 500.144

「ウィンディ・シティ序曲」はきらきらした序奏から派手派手に展開する、映える曲。
「エクストリーム・メイク=オーバー」はチャイコフスキーの有名な「アンダンテ・カンタービレ」を
主題にした変奏曲。彼のほかの作品(「ロメオとジュリエット」「第4、6交響曲」)
の断片も入れながら劇的に展開する、前半クラシカル、後半ど派手吹奏楽な一品。
「交響曲第3番「プラネット・アース」」は、ホルストの「惑星」に対抗して
地球が無いなら作っちゃえ、みたいな勢いのご様子。たしか管弦楽版が先だったかな。
第1楽章、冒頭からいきなり効果音で開始、小惑星が飛び交うようなスペーシー電子音から、
「海王星」を思わせる楽想が響きます。そこから美しい情景を偲ぶような儚い楽想、
華麗なファンファーレからまたもとのスーペーシー空間へ。
第2楽章はずっと普通です。何と言えばいいか・・・第1番の音形が第2番のノリで展開されている、
と書けばまだ伝わるでしょうか。それが一通り過ぎ去ると、電子音・生楽器入り乱れた輝きで第3楽章へ。
また今度は違ったファンファーレ、その後はころころと愛らしい楽想が続く。
中間部からは彼らしい壮大なクライマックスが合唱つきで来ます。ここだけだと凄いカッコイイ。
聴いていて感じたこと。デメイ、どんどん気宇壮大な音楽になってきているなあ・・・
流れはきちんとしているけれど、音楽としては勢いだけで希薄な感じが。
演奏はもうバリバリ。アルティスティカだもんね。



PUSH
Rob Smith; Push
Walter S. Hartley; Sinfonia No.4
Percy Grainger; Ye Banks and Braes 'o Bonnie Doon, Faeroe Island Dance
Aaron Copland; The Red Pony
David del Trediti; In Wartime

Rutgers Wind Ensemble  William Berz,Con.
2006 Mark  67618-MCD

ロブ・スミスの「プッシュ」、ちょっと不穏げな序奏から、ファンキーなジャズの影響だらけの音楽に。
単純にそれで突き抜けられると面白くないんですが、これはずいぶん楽想が行ったりきたり。
微妙にハチャメチャ展開なので、聴いててなかなか楽しめました。
ハートレーの「シンフォニア第4番」、お気楽な短い4楽章。
グレインジャーは「イエ・バンクスとボニー・ドゥーン川のほとり」「フェロー島の踊り」という
あまりメジャーではないナンバー2連発。とはいっても、いつもの民謡編曲チックな音楽。
コープランド「赤い馬」、彼のスタンダードな作風ですね。アメリカ的な明るさとリズム。
これはこれで良い曲なんだけれど、ほかの作品と比べてこれという所もない。
デル・トレディチの「イン・ウォータイム(戦時)」、これを聴くために購入したようなもんです。
やっぱりこの曲、もとい作曲家は素晴らしいですね。まるでロマン派のような叙情さを持った、素朴な逸品。
サイレンで曲が終わるのはちょっと拍子抜けですが、構成としてはきちんと纏まっている。
曲の長さから見ても、このCDのメインともいえそうです。アルバムタイトルは置いといて。
演奏、このラトガーズ・ウインド・アンサンブルはウィッテカーの作品集でしょっぱい思い出があったんですが
これはまあまあ安定しています。トレディチとか良い感じ。



ウインド・オーケストラのための交響曲 4
H.Owen Reed; La Fiesta Mexicana
Paul W. Whear; Symphony No.1"Stonehenge"
Robert Washburn; Symphony for Band

The Osaka Municipal Symphonic Band  Yoshihiro Kimura,Cond.
1996 EMI  TOCZ-9274

東芝EMIの、一番本格的な吹奏楽のための交響曲シリーズその4。
H.O.リードの「メキシコの祭り」は彼の代表作。交響曲の区分だったのねこれ。
鐘の音と激しい太鼓、金管の勇壮な序奏に始まり、低音から現れる動機が徐々に盛り上がっていく。
人々の集まりと高揚を表す前半部の後はマリアッチの演奏を模したパッセージをはさみアズテックダンスへ。
民族舞踏の強いリズムと執拗なオスティナートが非常に興奮します。ゴングの一打で音楽は止み、
また鐘と今度は荘厳なコラールで始まる第2楽章へ。
こちらは厳粛で壮大なミサの様子を模した、それでいてこの地域独特の宗教風景を表したもの。
第3楽章は祭りの喧騒を表す華やかでリズミック、そして明るく派手な音楽。
ポール・ホエアーの交響曲第1番「ストーンヘンジ」は、その名の通りのインスピレーション。
ウインドマシーンが荒れた土地を示唆し、各楽器が重く不穏げ、かつ荘重な動機を奏でる。
第2楽章、打楽器とホルンの荒々しい音楽をきっかけに盛り上がり、
オーボエやトランペットの優美なメロディと激しく対立をしていく。それまでの主題が混ざり合い、その頂点から第3楽章へ。
重いリズムの上で、生贄の儀式を模す重苦しい旋律が次第に激しく高揚していく。
狂気の頂点からやがて冒頭の風景に戻り、寂しく音楽を結ぶ。
ロバート・ウォッシュバーンはホヴァネス、ナディア・ブーランジェ、ミヨーといったなかなか凄い顔ぶれに師事。
「交響曲」、pで金管の伴奏に木管が旋律というちょっと変わった響きの冒頭(アンダンテ)から
ちょっと憂いを持った感じで音楽がアレグロに展開、スタンダードな対位法的発展で美しく聴かせる。
穏やかなメロディーからやはり爽やか、全曲直球勝負の爽快なかっこよさを持った曲。
演奏、素晴らしいんだけれどもっと迫力が欲しいなあ。ちと真面目すぎやしませんか。



「フェスタ」Japanese Band Repertoire Vol.9
北爪道夫;フェスタ(2004版)
吉松隆;祝典序曲「鳥たちへのファンファーレ」Op.90-1
天野正道;ユーフォニアム協奏曲
田村文生;スノー・ホワイト
武満徹;13管楽器のための室内協奏曲
西村朗;巫楽:管楽と打楽器のためのヘテロフォニー(94年版)

岩城宏之指揮  東京佼成ウインドオーケストラ
2004 Kosei Publishing  KOCD-2909

北爪道夫の作品は、自然賛美の彼らしい爽やかで透明な響きの曲。
「フェスタ」という題ですが、そんな舞踏的な激しいものではなく、風がひらめき舞うような印象。
吉松の曲は、このCDを見て買うきっかけとなったもの。
自分も初めてこの作品のことを聴いたときは(ああ、ついにやっちゃったか・・・)と思いました。
そんな彼が作曲を禁じていた吹奏楽作品の例外、意外なほど気に入りました。
近作の吉松作品はチープさが目だってちょっと遠慮していたのですが、これは実に爽やか(北爪とは違った)でメロディアス。
彼の作品のチープさって、もしかしたら吹奏楽に合うんじゃないでしょうか。皮肉っぽく聞こえてしまうけれど。
天野の作品、これは結構前衛的なほうか。ただ伴奏の方はそう滅法に難しくはない。
内向的に、時にはジャズのように響く音楽。やっぱり良い曲だけれど天野作品は合わないなあ。
田村文生の作品は相変わらず不安定に揺れ動き、奇妙に爆発する。
この不穏げで激しく動き回る作風が自分は好きです。まだ「アルプスの少女」よりは分かりやすい構成か。
武満のこの作品、聴けるとは思いませんでした。
まだ彼が「弦楽器のためのレクイエム」で有名になる前のもの、
書いたはいいものの未完のままお蔵入りとなった、彼としては珍しい管楽作品。
3分足らずの短い音楽ではありますが、レクイエムに通ずる幽玄さが聴けて満足。
西村の作品は代表作。この改訂版では編成を多様化しているため、
ヘテロフォニーを損なわないための編集がいろいろと行われています。
(ヘテロフォニー:旋律を多くの奏者でほぼ同一に奏し、個々にずれを生じさせることで多声部化させる手法)
儀式的な色合いの強い、ドローン的でドラッギーな作品です。
演奏、やっぱり落ち着いているけれど物足りない・・・



In Concert with the University of Illinois Symphonic Band
The Begian Years Volume XVI
Morton Gould; American Salute
George Gershwin/R.R.Benett,Arr.; Selections from Porgy and Bess, Rhapsody in Blue
Jerry H. Bilik; Symphony for Band, Concerto for Trumpet
Domenico Savino/Floyd Werle; Corrida
Joseph W. Jenkins; American Overture for Band

University of Illinois Symphonic Band  Dr. Harry Begian,Cond.
2004 Mark  4886-MCD

びびるくらい大量のシリーズが出ているイリノイ州立大学シンフォニックバンドのライヴ録音。
今回16回目はガーシュウィンを初めとしてライトな作風のものを集めています。
グールドの「アメリカン・サリュート」、マーチバンドに合いそうなきびきびした楽想に華やかな展開、
やっぱり彼の音楽はアメリカ的なかっこよさがある、と思える一曲。メインとなるメロディーは民謡的だけれど、すごく激しい。
「ポーギーとベス」からの抜粋は、最初にサマータイムから始まり、おいしいところをさらさらと聴かせてくれるなかなか良いアレンジ。
「ラプソディー・イン・ブルー」、冒頭のクラは嫌味すぎず無表情すぎず、自分の好み。
ピアノなど、やはりソリスト技量は一流の演奏と比べると分が悪いですが、アマチュアでこれだけできているなら十分に楽しめる。
ジェリー・ビリクはちょっと前の世代のおじさまおばさまなら「ブロックM」が有名ですね。
こちらの「バンドのための交響曲」は彼の(真面目な方面の)代表作。
とはいっても、ソナタやフーガと言った典型的な構造にちょっと技巧的なパッセージ、
それらにアメリカ的な楽天さをまぶしたら完成といったようなもの。
強烈なダンスミュージックに変貌する第三楽章が聴き物です。ここだけ演奏したい。
一方「トランペット協奏曲」はこのバンドとBegianのために書かれた曲。当然初演の記録です。
マーチリズムを背景に軽快で洒脱な楽想を奏でる第1楽章をはじめ、こちらのほうが感情豊かで彼らしい気がする。
聴いていても楽しいし、演奏者も気合が入っているし。ファンキーブルースな第三楽章はちょっと笑った。
まあ楽しい音楽だからいいよ。気に入った。
「Corrida」はちょっとスパニッシュなアンコール小品。「American Overture」も明るく元気な短い序曲。これは悪くない。
とりあえず、このCDはビリクの協奏曲が掘り出し物でしたね。
演奏はグールドと最後2曲が一番安定している。ビリクはちょっと不安定かも。録音、相変わらず微妙。
まあいつものダイナミックな演奏はきちんと聴けるので問題ないか。



'98 国立音楽院 Wind Ensemble
ハチャトゥリアン;組曲「ガイーヌ」より
リード;オセロ、小組曲
スッペ;喜歌劇「軽騎兵」序曲
バーンズ;レジェンド
ショスタコーヴィチ;祝典序曲

ベーシック・ビデオ・アーツ(Basic)  BCD-98004

国立音楽院の吹奏楽によるこの演奏会のシリーズ、近年はビッグバンドとの2部構成みたいな感じですが
この頃はまだウインド・アンサンブルのみのようです。
ハチャトゥリアンのガイーヌは剣の舞よりレスギンカの方が好きです。
リードの「オセロ」は、彼の作品の中で一番気に入っている作品。最初に聴いたのは中2の頃だったかなあ、懐かしい。
主題が気に入っています。そういえばこの曲のオケ版、録音あるのかなあ。存在自体はスコア持ってるから間違いないんだけれど。
スッペを挟んだリード2曲目「小組曲」もお気に入り。すごく簡素な構成ですが、なんでか好きなんですよね、この曲。
バーンズは結構淡い感じの音楽が次第に盛り上がって終わる。まあ彼らしいメロディ。
ショスタコのこれはよくやってるけれど、絶対オケの方が良い。吹奏楽で良いと思えたことが一度も無いです。
とりあえずアンチェルかスヴェトラーノフの指揮をまずは聴こう。
演奏は、正直に言うとそんなに上手くない。まあ無難に纏まっているけれど、ダイナミックでも美しい感じでもない。
ただ、選曲とかが自分のツボを押さえてるんだよなあ。このCDにしてもリードの好きな作品ばかりだし。
個人的には、まあ損はしてないかなという感じにはなれるシリーズ。



Ritual Dances
Shawn E. Okpebholo; Ritual Dances
James L. Hosay; Till Men No Longer Die in War
ほか、Timothy Johnson, Douglas Courtなどの曲

The Band of the Belgian Navy  Peter Snellinckx,Cond.
The Royal Band of the Belgian Air Force  Maurice Dubois
2004 Curnow Records  CR 204.025-3

カーナウ・レコーズのVol.23。もちろん主催者にはジェームズ・カーナウ。
「Ritual Dances」と「Till Men〜」が長さを見るだけでメインとわかりますが、
解説にあるグレードを見ても高いのはその2曲だけ。後は全部2〜3。
まずは表題曲、構成はそこまで複雑ではありませんが、聴き応えはなかなか。演奏も技術が必要そうで、実際グレード5。
変拍子も多く使いながら、典型的な3部形式の中で派手に、そして色濃く音の色彩をちりばめてくれます。
最後は余韻のなかで静かに終わるクールさがまたいい。疾走感ある、ぐいぐいと引っ張ってくれる曲&演奏。
ホゼイの「Till Men No Longer Die in War」は、アメリカ軍元帥を務めノーベル平和賞を受賞したジョージ・マーシャルのための曲。
日本からすると微妙な立場の人物ではありますが、アメリカ側からすれば英雄と呼んで差し支えない人物でしょう。
ナレーターを使った、音楽絵巻のようなもの。ホゼイらしいと思った分、自分には合わなかった。
後の曲は、ヨーロッパ系の簡素な吹奏楽曲らしい、明るく短い曲ばかり。
演奏がしっかりしてるし落ち着いて聴けるけれど、それ以上の価値は正直・・・個人的には1曲目だけで十分だわ。
まあ、学生バンドの曲探しなんかを一番の目的としてるであろうCDシリーズですから、こういう批評は大人気ないとも思うけれど。



饗宴 III

2000 Brain  BOCD-7454~5

VIと一緒に買ったはいいが、そっち聴いておなかいっぱいでこの前まで放置してた。
建部知弘の「祝典前奏曲」、最初はメリロのゴッドスピードを思い出した。派手で印象に残る。
「瞬間の記憶」は薄い薄い。印象が残らなかった。持続音多めで綺麗だったかなあ。
戸田顕の「そして全ては失われた」、同音での展開に固執する「春の祭典」風音楽。
天野正道「ドゥジェム・バレー・シメリック」、ああ、やっぱり全然面白くなかった。
毎度思うけれど、何で俺、彼の曲は気に入らないんだろう。自分でも不思議。生真面目に崩れてる感じが駄目なのか?
鈴木英史「モーニング・スターズ」、悪くない。地味に展開するくらい感じが。
大城まき「風の民」、中間部の細かなリズムの面倒そうなダンスしか記憶にない。
山内雅弘「吹奏楽のためのシンフォニア」、出だしが一番期待できた。後は・・・うーん。最後の10秒くらい。
真島俊夫「5つの沖縄民謡による組曲」、最後だけテンション高くて楽しい。というか彼の曲は速いところしか聴き応えが・・・
小長谷宗一「リリック・マーチ」、彼らしいライトなマーチ。
福田洋介「KA-GU-RA」、和風な普通の曲。いい曲だけど、すっきりした構成の分本来の神楽っぽさは当然ない。
飯島俊成「風の詩」、彼の淡い曲調は好きです。これもなかなか良かった。
酒井格「大仏と鹿」、悪くないけれど、たなばたのほうがやっぱり一般受けすると思う。
福島弘和「よだかの星」、以前から聴きたい曲だったけれど、なかなかいい曲。
持続音がベースのゆっくりした部分はこのCDの中で一番気に入った。
松尾善雄「未来都市」、コンサートマーチらしいちょっと一癖ある音楽。



Grenzeloos
Rob Goorhuis; Le Champion de Tir
Bernard van Beurden; Grenzeloos
Alexander Comitas; Armeense Rapsodie No.II Op.32
Leon Vliex; The Eagles of Snowdon

Frysk Fanfare Orkest  Jouke Hoekstra,Con.
2000 World Wind Music  WWM 500.057

フライスク・ファンファーレ・バンドなるオランダのファンファーレバンドのライヴ音源。
「Le Champion de Tir」は神秘的な冒頭の後、堂々とした動機が力強く現れる。
ころころと雰囲気を変えながらもファンファーレ団体らしい華やかでどこか伸びやかな音楽。
タイトル曲「Grenzeloos」はソプラノも交えた大きな編成。でも一番短い曲でやんの。
ティンパニとソプラノから始まる、物語りな世界。
アレクサンドル・コミタスの「アルメニアン・ラプソディー第2番」、これを聴いてみたいがために買った。
サックスの憂いげな冒頭から、不規則で複雑なリズムに乗せ民謡の旋律がゆらゆらと燃える。
やっぱり自分にはこういう民謡ネタ+古典的なクラシック構成が趣味に合うようです。
彼を知るきっかけになった「カルビン砂漠の夜」でも言えますが、ドラマティックな流れ作りと
激しくも流麗な場面転換、そして音楽に一貫して漂っているある種の重暗さが特徴です。
いや、これは良い曲でした。ライヴなのがさらに。これ買った甲斐があった。
蛇足、聴衆の拍手・口笛に混じって誰かが第二主題(っぽいもの)を真似して口笛してます。笑えるけどすげえ。
「The Eagles of Snowdon」、鐘がなる静けさのなかから、ソリスティックなソプラノサックスが浮かぶ。
前衛的とまではいかなくとも、持続音と不協和音で攻めるかなり不穏げな冒頭。
そこから始まる早い機械的なパッセージから節操なく飛び出すマーチ。
最後はこれ以上無い絢爛豪華な音楽でど派手に終了。なんだこりゃ。
まあとりあえずは盛り上がれるからいいけれど・・・別々の方が素直に楽しめた気が。
まあ、やっぱコミタスが一番ですね。演奏、特には文句なし。



Fanfare Orchestra of the Netherlands - in concert
Otto Ketting; Eclips
Kees Olthuis; Persephone
Geert van Keulen; Disco
Leonard Bernstein/Danny Oosterman; Overture to Candide
Jan Van der Roost; Arsenal
Andre Waignein; Rhapsody for Flugelhorn
Sergey Prokoiev/Hans van der Heide; Romeo and Juliet
John Williams/Klaas van der Woude; Hymn to the Fallen
Robin Dewhurst/Pierre Volders; Brasilia
Eric Ball/Sytze van der Hoek; Journey into Freedom
Bill Whelan/Gert Buitenhuis; RiverDance

Fanfare Orchestra of the Netherlands  Micha Hamel & Jacob Slagter,Cond.
2001 NM extra  98022

MuziekGroep NederlandといえばMNだけれどレーベルはNM、ややこしいね。
まあとにかく、オランダのサックス含む金管バンドのライヴ。蘭国のプロ音楽家による混成団体です。
この録音はWMC五十周年のときの演奏会の模様。Disc1は国内作曲家の新作3つ。
Ketting(1935-)はハルトマンに師事した事のある作曲家。
込み入った和声に細かい痙攣するような旋律、独特の暗さはまあ確かに通じる気もする。
Olthuis(1940-)はオランダ国内で主に活躍している作曲家。
曲はギリシャ神話に基づいた、5部に分けられる25分の大作です。
伝統的な作曲技法で近代的な和声を使い、冥界へ連れて行かれたペルセポネのストーリーを描きます。
緊張感があって派手な、構成としても聴き応えのある作品。
van Keulenはロイヤルコンセルトヘボウ管のバスクラ奏者でもあった人物。
曲はディスコと現代音楽がファンファーレ風に組み合わさった、ちょっとアンドリーセン風な作品。
演奏もしっかり纏まっていて聴き応えあり。
Disc2は編曲物。オケやら吹奏楽やらの有名どころや微妙なところを持ってきます。
「キャンディード序曲」、聴いていて楽しいし頑張っているけれど、やっぱこういう細かい曲はきついでしょ。粗だらけ。
ローストの「アルセナール」は粗も目立たないし、このバンドの良い面が強調されています。
ただ、普段聴こえにくい木管のパッセージが思いっきり聴こえるのは、新鮮とも珍奇ともいえる。
Waigneinの狂詩曲はブルースジャズだったり勇壮な吹奏楽になったり。ああ吹奏楽らしいごった煮な曲だ。
プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」、まあいいんじゃない、うん。
ウィリアムスの曲は初めて聴いたけれど、普通のコラール・ファンファーレに感じました。
スピルバーク映画のサントラからなんだ、う〜ん、原曲はどんな感じなんだろう。
DewhurstはTVや映画の音楽作家、「ブラジリア」はブラックダイスのトロンボニストのために書かれた曲。
ライトな感じのジャズ。自分のやってた楽器だから贔屓してしまうけれど、良い感じ、悪くない。
エリック・ボールはまあまあメジャーか?曲の方は前半、某レズギンカみたいな速いパッセージが印象的。
後半のコラール的な展開が映えて聴こえます。編曲とかはともかく、気に入った。
アンコールはウィーランの「リヴァーダンス」、やっぱり最後はこういうテンション上がる曲じゃないとね。



Timothy Reynish Volume 4 with the Ithaca Wind Ensemble
Andreas Makris; Improvisations-Rhythms
Richard Rodney Bennett; Reflections on a 16th Century Tune
Christopher Marshall; L'Homme Arme, Resonance
Adam Gorb; Dances from Crete
Marcel Wengler; Marsch from "Versuche uber einen Marsch"

Ithaca College Wind Ensemble  Timothy Reynish,Cond.
2006 Mark  6804-MCD

ティモシー・レイニシュがイサカ大学のバンドを振ったライヴ録音。
マクリスの「即興-リズム」は冒頭ピッコロの妖しげな序奏から始まり、それが木管楽器を主体として散発的に組合わされていく。
たしかにインプロヴィゼーションな趣はありますが、かなり構成が垣間見えているのでそんなでもない。
強打二つで次の活動的な部分へ。ずっと輪郭がはっきりして明るい音楽になっています。
ベネットの曲はのどかではありますが現代的な和音・展開を伴って素晴らしい盛り上がりを見せてくれます。
派手な展開はありませんが独特な色彩のある技巧的な変奏曲風の音楽。
ここからクリストファー・マーシャル2連発。これ目当てで買いました。
「L'Homme Arme」はトロンボーンの咆哮で幕を開け、のどやかな変奏、激しい民族的変奏、
ロックやジャジーな変奏、シンフォニックな変奏などなど表情がころころ変わり飽きません。派手です。
私の持っている初演盤よりは落ち着いていますが、その分きっちり音楽が見通せて良い。
「レゾナンス」はこれが世界初演。どこか民族的で即興的な、ゆれるメロディー断片がコラールと掛け合う。
この二つが互いに現れながら次第に盛り上がっていき、最終的には同時に奏でられて穏やかなフィナーレへ繋がります。
アダム・ゴーブの「クレタからの踊り」は5分ほどの曲が4つずつ。
第1曲は荒々しい変拍子の舞曲。第2曲は5拍子のさっきよりは落ち着いたがまだ華やかな曲。
第3曲は妖しげな、木管ソロの掛け合いから派手に盛り上がっていく。
第4曲は重いリズムののんびりしたメロディーと急くようなポルカ風音楽、民謡的なクラリネットの主題が絡み合い、
陶器の割る音まで使いながら目まぐるしく変化して終わります。
ウェングラーのマーチは落ち着いた普通の行進曲。ちょっとリズムがひねてるかな。
演奏は非常によく纏まった聴きやすい演奏。ただ技術は粗もちらほら。
ソロが比較的弱いですね、1箇所へろへろなトランペットが・・・
ただ、トュッティはその分うまくカバーできていて不安さはそんなに感じられません。



Wind Band Masterworks Volume III
Aaron Copland; Fanfare for Common Man
Schubert/Ticheli; Ave Maria
Ron Nelson; Rocky Point Holiday
Davis Stanhope; Folk Songs for Band, Set III
Edward Gregson; Festivo
Percy Grainger; Ye Banks & Braes O' Bonnie Doon
Malcom Arnold; English Dances, Set II
John Barnes Chance; Blue Lake Overture
Norman Dello Joio; Scenes from "The Lourve"
Wagner/Cailliet; Elsa's Procession to the Cathedral
Samuel Barbar; Commando March

Texas A&M University Symphonic Band  Timothy Rhea,Cond.
2005 Mark  6173-MCD

ネルソンの曲は彼らしい快活さが詰まった代表作といって良いもの。5分ほどの曲ですが展開のころころ変わる、よく映える曲です。
スタンホープのこのシリーズは結構人気がありますね。派手だけど素朴、どこか奇妙な音楽の数々。
簡素な主題がメインではありますが、そのグロテスクな展開はグレインジャーのセッティングを現代風に改めた感じ。
グレグスンはこの曲でも何時もどおり、どこか荘重さを感じさせる格式ある祭りを披露しています。細やかだけれど品のある展開が彼らしくていい。
アーノルドも民謡編曲ですが、こちらは比べて落ち着いた立派な趣の編曲に仕上がっています。
目新しさは無いですが落ち着いて聴けますね。ちょっと難しい場所が多い感じ。このCDで一番粗が多い演奏。
チャンスの曲は動きのある主題とワルツのような軽妙な中間部の構成的な展開が実に彼らしい。
ジョイオ自身は随分昔から知っていたのですが、曲はこれで初めて聴きました。これはなかなか古風な作風ですね。
ただこれはいわゆる劇伴用の曲なので、ほかも聴いてみたいところ。特に「アベラールの歌」。
バーバーのこの曲も初めて。激しく爽快な、技巧的な面も見せる演奏効果の高いマーチ。
演奏は堅実なものですが結構あっさりしています。そのため、特に編曲もので不足感が残る。
落ち着いた味付けであうグレグスンやチャンスの曲は良い感じですが、ネルソンやスタンホープの曲では熱気がもっとほしいところ。



The Belgian Air Force Band -Andel's Wind Band Series Vol.2
Jean Kesteman; Spaceman
Roland Cardon; Variety Suite, Cop's Dillema
Carl Davis/Ray Farr; Galaxies
Arthur Prevost; Mars van de Belgische Rijkswacht
Alan Crepin; Friendshipshymn, Suite Tastevinesque
arr.Rita Defoort; Classics for Band
Guy Rodenhof; Dance Party

Captain Alain Crepin,Cond.
Eurosound Digital  ES 47.092 CD

作曲家でもあるアラン・クレパン率いるベルギー空軍軍楽隊のアルバム。
Kestemanの曲はライトな雰囲気の、吹奏楽らしい曲。マーチありロマンスありの明るい曲。
自分の趣味には合わないけれど、吹奏楽好きな人は聴いてみるといいんじゃないだろうか。
Cardon一発目「Variety Suite」は全4楽章。
「アクロバット&ジャグラー」「パレード」とかの曲名から見るとサーカス的なものを連想して作曲したのかな。
内容もそれっぽい、軽快な音楽。軽い軽い。ひねくれた俺にはまぶしいや。というか構造も思っきし簡素。
「ギャラクシーズ」はいかにも軍楽隊らしい吹奏楽。軽快さと生真面目さが折半された感じの華々しい曲。
Prevostの曲は最初とか主題のトランペットがちょっとめんどくさそうな壮大系軍楽マーチ。
クレパン自作自演1曲目「FriendshipsHymn」はのどかなドラム付きバラード。うーん、好きじゃない。
「Classics for Band」はクラシック名曲をポップアレンジ。パガニーニの主題とか。なんかドラムが微妙。
Cardon二発めはチューバ2台をメインに据えた曲。といってもやっぱり軽い音楽。
Rodenhofの曲はボサやタンゴなどの様々なジャンルのダンス、軽くてノリが良い。
クレパン2曲目はしっかりかっちりした吹奏楽。平易で分かりやすい曲。
演奏や録音はけっこういいだけに、自分の趣味にまるで合わない曲が殆どで、聴いてて残念。



Messiaen - Revueltas - Ruggles
Olivier Messiaen; Et Expecto Resurrectionem Mortuorum
Silvestre Revueltas; Homenaje a Garcia Lorca
Carl Ruggles; Angels for Muted Brass

Ensemble 21  Arthur Weisberg,Cond.
1991 Summit  DCD 122

クラシック作曲家の管楽アンサンブル作品集。
メシアンの「我死者の復活を待ち望む」は個人的に好きな曲。このアルバムのメインでもあります。
この録音はなかなか健闘している方。きちんと纏まったサウンドが聴けます。
打楽器の音も、メシアンの曲に合うような独特の響きをきちんとさせている。
ただ、少々真面目くさい感じがして、ダイナミクスやサウンドの豊かさにちょっと乏しいところは減点。
作りこみは悪くないんだけれどなあ。
レブエルタスの「ガルシア・ロルカへのオマージュ」も実はだいたい管楽アンサンブル編成。
こちらはなかなか、悪くない。グロテスクで南米色彩豊かな音楽が楽しめます。
カール・ラッグルズ(1876-1971)はアメリカ現代音楽黎明期の重要な存在。
ただ寡作家で、生涯に12曲しか書いてないらしい。生前は画家としての活動が人気だったようです。
4本のトランペットと3本のトロンボーンのための「天使」は、元は3曲からなる組曲の2曲目。
1曲目は破棄、3曲目は他作品に転用した上、この曲自体も改訂を施しています(Tbn.ありは改訂版)。
賛歌風の冒頭から短く盛り上がり、また憂いを持って賛歌に消える、3分ほどの小曲。
無調的な構成に加え、終始ミュートをつけた金管による音が、独特の音楽的魅力を見せてくれます。
このアンサンブル21という団体はアリゾナ州立大学のバンド。まあ技術はあんまり言っちゃまずいのかな。
もっとも、良くも悪くもない、といったあたり。



饗宴 VI

2003 Brain  BOCD-7470~1

半分は、毎年行われている新作演奏会のようなものですよね、このシリーズ。
毎回、その道の実力者や有名人の曲が聴けて嬉しい限り。
どれもなかなかの音楽が揃っていますが、特に面白いと感じたものをいくつか。
八木澤教司の「輝きの海へ」はいつも通りの豊かな響きと細やかなきらめきが印象的。
飯島俊成の「失わざるべき記憶」は、原爆を題材にしているだけあってダイナミクスの激しい、力と優しさを持った曲。
門脇治の「Toward」も、特にアリアがなかなか暗めの劇的な展開でよかった。
黒川圭一は1980年生。若いなあ、曲はなんのひねりも無い普通のマーチだけれど。
高橋伸哉の「アトランティス」が小編成向けでも大きな音楽を描いていて楽しかったかな。
小長谷宗一の「異国の祭典」、細かいリズムはウィリアムスの「オリンピック・ファンファーレ」、
主部の旋律は何故かファリャの「火祭りの踊り」を連想。うーん、自分でもそんな似てないと思うんだが。
長生淳の「翠風の光」は線が細いノスタルジックな、けれど華やかな曲。この中では一番気に入りました。
星出尚志の「ラ・グラン・マルシュ」、これ絶対「パリのアメリカ人」だよね。
真島俊夫の「ミラージュIII」は完全にジャズの方面。まあミラージュはどれもそうだけれど。
良い曲だし、ゲストソリストも凄いけれど、こういう曲はどうしてもハードな音・音楽じゃないと不満になってしまうのが悪い癖。
やっぱり大編成ジャズはクリスピーなものが一番爽快でいいなー



Wildflowers
Ernst Toch; Spiel, Op.39
Joseph Schwantner; ...and the Mountains rising nowhere
Percy Grainger; Lincolnshire Posy
Dana Wilson; Dance of the New World
William Childs; Concerto for Solo Percussionist
Paul Hart; Cartoon

North Texas Wind Symphony  Eugine Corporon,Cond.
1996 Klavier  KCD 11079

北テキサスとコーポロンのセットは、クラヴィアときたらまず思い浮かべる組み合わせ。
トッホの曲はだいたい普通の陽気な曲なんだけれど、どこかおかしい。
スタンホープのノリをちょっと前衛的にした感じ。
どうでもいいけど、今までトッホを現代作曲家にみなしていた。誰と混同したんだろう。
シュワントナーの「そしてどこにも山の姿はない」は代表作ですよね。
シンフォニックに、前衛的な面をきちんと聞かせる演奏は好感。
この曲は感動的な面もあるせいでそこが強調されがちですが、それだけじゃ意味がない。
グレインジャー「リンカーンシャーの花束」はもっと名作。
ちょっと他の演奏とは違う解釈をしながら、スマートでかつ豊かな流れになっていて印象に残る。
ただ、ちょっと粗が出すぎかな・・・聴いた感じはシンプルな曲だから分かりやすくなってしまう。
ダナ・ウィルソンの「新世界の踊り」は初めて聴く曲。
トムがキーになる、土俗的な音楽。単純なリズムをチープにならずに聞かせてくれる。
こういう、ちょっと混沌としたテンション高い曲は楽しいですね。
チャイルズの「打楽器協奏曲」、長い割にはあんまり印象が強くなかった。
けっこうころころ楽想が変わるわりに、ライトと言うか、軽々しいと言うか、耳触りがいいだけ。
2楽章はまあまあ趣味にあったけれど、合わなかったほかの部分はもういいや。
第3楽章は案の定ジャズ風。テンション高いからなんとか聴けた。
ぶっとばすならハートの「カートゥーン」くらいはやらないと。
ゆるゆるのだらしない音楽が次々出てくる。これくらい馬鹿になってくれれば笑って聴けます。
演奏は不安のないもの。普段は響きがこじんまりしてて微妙なんですが、今回はかなり良かったほう。



CAFUA Selection 2004 吹奏楽コンクール自由曲選「ジェリコ」
鈴木英史;イントラーダ「S-S-S」
ベルト・アッペルモント;ジェリコ
ジェイ・ボコック;シャックルフォード・バンクス
樽屋雅徳;民衆を導く自由の女神
デイヴィッド・R・ホルジンガー;スクーティン・オン・ハードロック
天野正道;レジェンダ・イ・レジェネラチェァ
ロバート・W・スミス;人々の力 〜そして彼らは空に向かう
エリオット・デル・ボルゴ;シー・トリロジー
真島俊夫;さくらの花が咲く頃
ラルフ・フォード;ラスト・バトル
フィリップ・スパーク;暗闇から光へ

航空自衛隊西部航空音楽隊 加藤浩幸指揮
2004 CAFUA  CACG-0052

自衛隊音楽隊によるこのCAFUAのシリーズは演奏レベルからしても、また選曲としてもいい物が揃ってて重宝します。
鈴木の曲は自由曲というより、演奏会の頭に持ってきたら映えるファンファーレ風の堂々とした曲。
アッペルモントの作品は有名なほうだけれど、実はあんまり好きじゃない。
いや、確かに激しいところとかはいいなとも思うけれど、いかんせん音楽の流れが一本調子に纏まりすぎている感じ。
それなのに、雰囲気はころころ変わる。もっとライトな流れの方が、彼の曲は良い味が出る、気がするんだけどなあ。
ボコックの曲はだいたい素直で簡素な響きですが、これもその例に漏れず。
とくに難しいところも無い(グレード2)、短い掌品。これくらい直球だと逆に聴ける。高橋宏樹・西洋版みたいな感じ。
樽屋はまあ彼の曲を聴いた人は大体わかるでしょう。
彼の曲でどれか1曲お勧めを、と言われたら、自分ならこれを推す、かも。
「マゼラン」とか「絵のない〜」も似た感じではあるけれど。
個人的には、鈴木→樽屋→八木澤の流れで聴いてる人が多い気がするけれど、どうなんだろうね。
ホルジンガーのこの曲、やりたいなあ。ただこの曲、聴かせるのが難しそう。
これを含めていくつか演奏を聴いたけれど、ジャズ・ロックの感覚が大変そう、というかそんなことあまり考えて無さそう。
まあ普通にシンフォニック・ロックでOKだろう、と自分でも思っているけれど、いつかごりごりのリズムや音のセンスを持った演奏を聴いてみたい。
ちなみに、音の硬さならこの演奏、テンポの爽快感は武蔵野音大の演奏が比較的好きです。
なんで俺、天野さんの曲が好きになれないんだろう。響きは考えられてるし、構成も悪くないのに。
瞬間瞬間の音楽は(いいなあ)と思えるけれど、全体を通して聴く気が起きない。これも駄作とは言えないけれど・・・
スミスは何時もどおり。今回はエキゾチック成分強め。トロンボーンが弱いと映える演奏は難しいかな。
デル・ボルゴは名前は良く聞くけれど、あんまり自分の趣味ではない内容ばかりの印象。
聴いてみて、やっぱり。グレード低いからなんともいえないけれど、これのレベル上げても普通の吹奏楽曲にしか感じないかも。
真島の作品はけっこう単純。まあ「ヤコブ」の印象でこの人の曲は聴くもんじゃないね、雰囲気は一緒だけれど。
フォードの作品をまともに聴いたのはこれが初めて、悪くない。テンションが高い、難しさはないけれど楽しめる曲でした。
スパークの曲はテンション控えめ。彼の歌う感じが好きな人は是非。俺は駄目。



Illuminations
Arthur Pryor; Blue Bells of Scotland, Fantastic Polka, Love's Enchantment
Joseph Turrin; Illuminations
Eric Cook; Bolivar
Johan de Meij; T-Bone Concerto
Gardell Simons; Atlantic Zephyrs

Joseph Alessi,Tbn.  New Mexico Wind Symphony and Friends  Eric Rombach-Kendall,Con.
2003 Summit  DCD 367

まさかジョセフ・アレッシを知らないトロンボーン吹きはいないよね?・・・ごめん、言い過ぎた。
まあとにかく、超一流トロンボニストによる協奏曲編成の吹奏楽作品集です。
「スコットランドの青いベル」は何かの古典的なオペラの編曲じゃないの、って感じ。イタリア的な明るい変奏曲。
「ファンタスティック・ポルカ」も似たような感じ。変奏曲からポルカになっただけ。「恋の魔法」、言いたいことはわかるよね。
まあアーサー・プライヤーは軍楽隊の人だったから仕方ないか。
どれも、アレッシの技巧が思いっきり聴けます。素直な曲で良い感じ、でも趣味じゃあないなー。
ジョゼフ・トゥリン(1947-)の「イルミネーション」は鐘のような吹奏楽とソロのノスタルジックな冒頭から、
スタッカートな楽想を経て徐々に激しくなっていく。けれど、決して音楽の透明さは失わずに、そのまま木管ソロ主導の寂しげな部分へ。
最後はまた細かな動きと華々しく熱情的な楽想が絡み合って終わる。この曲はいいなあ、気に入った。カッコイイ。
エリック・クックの「ボリヴァル」は思い切りスパニッシュ。短調な曲で普通にかっこいいのに、この人全然情報が無い。
とりあえず、元はピアノ伴奏でNorman Richardson(1905-1974)が1955年に吹奏楽編曲したことしか解説には載ってない。
さて、デ・メイの「T-ボーン・コンチェルト」はこのCDの目玉。
堂々とした出だし、高潔なイメージを思わせる3楽章編成の素晴らしい曲です。曲名は思い切りネタだけれど(ステーキのTボーン)。
こちらは有名なリンドベルイのライヴ演奏よりソロは手馴れた感じ。そりゃあっちは一発本番に近いけどこっちは練習しただろうしね。
ただ録音がクリアな分から見ても、こちらを聴く価値は十分あります。伴奏はリンドベルイ盤より微妙なところもあるけれど。
ガーデル・シモンズの「大西洋のそよ風」、プライヤーと傾向の似た曲で締め。
やっぱりアレッシは凄いなあ・・・



Johan de Meij; Symphony No.1 "The Lord of the Rings"
Leonard Bernstein; Divertimento

Dainish Concert Band  Jorgen Misser Jensen,Cond.
1995 Rondo  MRCD 8346

デンマーク・コンサート・バンド(指揮;ヤーウェン・ミッサー・イェンセン)による、名作2曲。
ヨハン・デ・メイの交響曲第1番「指輪物語」は、彼の一番の代表作。まあ編曲ものはこれ以上に演奏頻度高いけれど。
堂々とした第1楽章、煌びやかなワルツ調の第2楽章、ソプラノサックス主導による不恰好な歩みの第3楽章。
重々しい行進曲の第4楽章、快活な、そして同時に第1楽章の再現でもある第5楽章。
彼の最初の吹奏楽作品ですが、素晴らしい完成度だと思います。
この録音も、聴きたいところをしっかりと響かせてくれる、聴いていて安心できるまとまった演奏。
ただ、音のそれぞれが分離して聴こえてくる録音に好き嫌いは分かれるかも。
ちなみに私は、この曲の一番素晴らしい演奏はオケ版(紙ジャケのやつ)だと信じて疑いません。
続く、バーンスタインのディヴェルティメントはグランドマン編曲。
短い8曲が連なり、彼らしいアメリカ風のごった煮音楽がばんばんと矢継ぎ早に繰り出されます。
そんなに好きなわけでもないけれど、まあ楽しい曲ですよね。
やっぱりバーンスタインはウエストサイドストーリーだよ。



Highlights WMC 1985
Henk Badings; Figures Sonores, Sagas
Dmitri Shostakovich/H.Suykerbuyk&H.Mertens; Symphony No.9
Arfred Reed; Third Suite
Jurriaan Andriessen; Sinfonia II Flume
Hardy Mertens; Nulli Cedo voor Fanfare en Tenorstem
Vaclav Nelhybel; Trittico
Karel Husa; Apotheosis of the Earth

1993 Mirasound  399150/399151

1985年のWMCの様子を抜粋で収録した2CD。残念ながらトラックが楽章わけされてません。
バディングスの2作品は期待通りのドラマティックな作品。
彼の吹奏楽作品は初めて聴きましたが、思ったより前衛さは少ないですね。普通に聴けます。
ショスタコはまあ・・・やっぱりこういうオケ作品は原曲が良いなあ。
リードの組曲はかなり軽めのポップ調なものが多いので好きではないです。
有名なルイではないアンドリーセンの曲は、細かな音が絶えず動き回る疾走感激しい曲。
メルテンスは民族音楽の影響が濃い作品が多く、これもその例に漏れません。
トムをはじめとする打楽器が主体の、彼の中では比較的シリアスな雰囲気のある曲。男声(テノールかな?)つき。
「トリティコ」は東京佼成の録音が有名ですが、こちらの方が激しくかつ暗さのある良い演奏だと思います。
フサの「この地球を神と崇める」は、この曲を選ぶだけあってかなり良い演奏。呪術的おどろおどろしさが出ています。
とくに第2楽章、管楽器の暴力性はアルティスティカ以上で凄いです。
ただそのときの打楽器が録音もあって迫力が無いのがとても惜しい。あとバスドラムが無さそう。人足りなかったのかな・・・
演奏はどの団体もライヴ起因のミスを除けば素晴らしいものばかり。
ただ録音、ホールの残響があるのは良いのですがパート間で弱い音はかき消されて聴こえないことが多いです。
もう少し良い録音なら素晴らしかったんですが。もっとも、気にせず聴けるレベルではあります。



Tolga Kashif
The Queen Symphony

Banda Sinfonia 'La Artistica Bunol' Henrie Adams,Cond. Orfeon Universitario de Valencia
2008 World Wind Music  WWM 500.151

伝説的ロックバンド「クイーン」のメロディーを用いた、自由にアレンジを加えた吹奏楽の交響曲。
ただし、編成はチェロまで入った大きなもの。ちなみにTolga Kashifはイギリスの作曲家です。
第1楽章、「Radio Gaga」「Show must go on」が、合唱も入りながら壮大に広がります。
かなり真面目なシンフォニック、でもどこか映画音楽的。
第2楽章、ピアノの印象的なバラード、というよりはウィンストン的ヒーリング空間。「Love of my Life」使用。
が、それはやがて原曲(Another one bites the dust&Killer Queen)の印象が強い、
シンフォニックロックとマーチを足したような空間に。最後はまた元に戻ります。
第3楽章はチェロのソロで開始のメランコリックな「Who wants to live forever」。ヴァイオリン・ソロが参加。おいおい、これは吹奏楽じゃあないのか。
コラール風な後半は特に綺麗。ここだけでも買った甲斐あった・・・かな。
第4楽章はピアノの軽快なソロで開始、ですがクラシカルに暗い感じの展開もあったり。
「Bicycle Race」を使った、平易な意味でドラマチックな音楽。やっぱりイージーリスニングだ。
第5楽章は壮大な「Mama,just killed a man」の頂点でいきなり軽快な曲調、そこからさらに乱暴に。一番有名な「We Will Rock You」が
トロールでも出てきそうな音楽になってます。後半は「We are the Champions」とかを使用した、しっとりした感動的な音楽。
第6楽章はそこからアッタッカ、「Who wants to live forever」を用いて大きく盛り上がり感動的なクライマックス
かと思いきや、最後は徐々に落ち着いて暖かく全曲を終わります。

音楽は映画音楽かイージーリスニングみたいな感じですが、原曲を見事にアレンジしていて面白い。
こういう編曲は趣向が凝らされていて、聞く側としても楽しいですね。演奏はアルティスティカなので完全に安心できます。
録音、結構残響がどぎつい。まあ気宇壮大な感じのこの曲にはこんな感じで良いとは思うけれど・・・好みじゃあないかな。
ただ、録音が悪かったらけっこうけなしそうな曲ではあるかな。これはこれで悪くないけれど演奏に助けられている感じ。
ジュエルな感じのちょっと形が凝った、解説の出しづらいジャケットですが、ジョイント部が壊れちゃってどうしよう。



Translations
Amand Blanquer; Gloses II
Mare van Delft; Movements(Opus 125)
Andres Valero-Castells; El monte de las animas
Josep M. Martinez; Vents del Garbi

Banda de la Federatio de Societats Musicals de la Comunitat Valenciana Henrie Adams,Cond.
2006 World Wind Music  WWM 500.142

このやたら長い名前の団体は、セビリア万博時の、バレンシア各地から演奏家を集めて結成されたウインドバンド。
最初の「Gloses II」は、冒頭妖しげで前衛的な序奏から始まりますが、その後のどかな田園風景を走るような光景が現れます。
かと思いきや、後半は金管が爆発したり、ひとつの雰囲気が長く続きません。
最後に向かうにつれ音楽はどんどん激しさを増していき、狂乱の中で爽快に幕を閉じる。
技巧的な、現代ウインド・バンド音楽祭のために書かれたのがよく分かる曲。
「Movements」はハープとファゴットのソロで妖しげに幕を開き、暫くはひそやかで何かを待つような緊張感ある展開が続く。
ここ、解説には「モートン・フェルドマンやウェーベルンの影響を・・・」って書いてあるけれど、フェルドマンは無いと思う。
やがて音楽は大きく膨らみ、全楽器を巻き込んだ壮大な音楽になっていく。ここから中間部。
ここは荒々しい、煽るような激しい曲。爽快で暴力的、カッコイイです。ピアノとハープのグリッサンドで終息。
末尾の部分はまた壮大な主題が帰ってきて、ジョン・アダムスみたいなかっこよさの中で大きく終了
・・・と思いきや、鍵盤打楽器の長い余韻でふっと引いて終わる。良い曲ですねこれ、吹いてみたい。死ぬだろうけど。
「El monte de las animas」は同名の物語を基にした交響詩の編曲(ヘンリー・アダムスとFrancisco Carrascosa編)。
強奏一打の後、暗いけれど意志をはっきり持ったようなメロディーが提示される。
そこからホルンのファンファーレに導かれ、民謡編曲のようなほのぼのした音楽。
が、それは徐々に壊され、打楽器の先導の下よりエネルギッシュな楽想に変わっていく。
これがひとしきり暴れた後、荒野を模した重々しくもの悲しいバラード。ピアノが活躍します。
風の吹きすさぶ経過句から、荒々しい、派手な結末へ向けて展開していく。
「Vents del Garbi」は気宇壮大なファンファーレで開始。勢いの良い冒頭から技巧的なトロンボーン・ソロへ。
そこからはいろいろな楽想が現れたり消えたり、聴いてて楽しい。中間部に鞭みたいな音をみんなで出す部分あり。

大編成で、かつ非常に鳴らしてくるのでダイナミクスがものすごい。鳴らすところはとんでもなく響いてきて圧倒されます。
ただ、ピアノの音が変だったり、どこか録音やコンディションがよくは無くて残念。
ただ、演奏・曲ともに素晴らしいものであることは間違いないです。



John Adams; Short Ride in a Fast Machine, Grand Pianola Music
David Lang; Are You Experienced?, Under Orpheus

Netherlands Wind Ensemble  Stephen Mosko,Cond.
1995 Chandos  CHAN 9363

ミニマリスト二人の吹奏楽曲を収録したもの。
ジョン・アダムスの「ショート・ライド・イン・ア・ファスト・マシーン」はお気に入り。派手な、題どおり爽快なファンファーレ。
演奏、音は軽いくせしてリズム感はやや重め。ただ、この曲の編曲演奏中ではかなり安定感はあって楽しめました(この曲のみ編曲)。
音も随分飛んでいて、この曲に必要不可欠な疾走感はきちんと出ている。
キーボードやらの随分原曲に無い音が目立ちますが、そこがアダムスのチープさに結びついていて逆に良い。
デイヴィッド・ラングの「Are You Experienced?」は同名のジミ・ヘンドリクスの曲からインスパイアされたもの。
最初のおずおずとした状態から次第にアダムズ的なミニマル音楽へ発展していきます。
電子チューバのソロが重要な役割を占める。クラシカルというか、ミニマル特有のトランス感は少なく、古典的に聴こえますね。
暗さが端々に引っかかる、どこか悲しげに強い意志を見せてくる曲。
ナレーター付きですが、この盤では作曲者自身が言ってます。頑張っているけれど上手くは・・・
「Under Orpheus」はピアノの静かな痙攣から始まり、それにドローンが被さって徐々に盛り上がっていく。
それが頂点に達し落ち着くと後半2曲目の開始。大して変わりません。ずっとドローン。最後に瓦解して終了。
ただ、この作風は普段の彼らしいもので、逆に安心しました。やっぱりラングはこうでないと。
最後はアダムスの「グランド・ピアノラ・ミュージック」。明るくてヒーリングな吹奏楽編成ミニマルの大作(30分)。
この淡い色彩みたいな脆さをずっと持っていてくれればアダムスも面白かったのになあ。
ピアノ2台とソプラノの母音唱法を使うあたりにも、ミニマリズム発足当時の編成の面影が感じられて古典さがにじみ出ます。
演奏はちょっと貧相ですがかなり良い。ただ打楽器が鈍いだけな音で残念。



Las Bolas Grandes ウインド・アート・ニュー・コレクション

千葉県立成田国際高等学校吹奏楽部、東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部、千葉県船橋市立船橋高等学校吹奏楽部
ウインドアート出版  WACD-001

ウインドアート出版が邦人作曲家に少人数編成のための吹奏楽曲を委嘱した作品をまとめたもの。

清水大輔の「決戦の運命」は彼らしい壮大さ。随分大河ドラマチックな印象。
細かな動きが多いのも彼の曲ならでは。でも確かにあまり難しくは無いです。

石毛里佳は個人的に注目している吹奏楽作曲家。初めて聴いた「おもいのことのは」ではシステマティックかつ
内面的で情緒的な曲想でしたが、この「Thick autograph 81」ではなかなか激しい、疾走感あふれる曲を披露しています。
中間部は少しワルツ調な面も少し。「おもいの〜」後半部とか、この人3拍子好きなのかな。
やっぱりこの人の曲は音の響きに重みがあって好きです。グレードはこのCDで一番高め(4)。

坂井貴祐の「ルミナンス」に現れる伴奏、ライヒ的なミニマルの響きは悪くないです。
というか、この人の曲まともに聴くのは初めてなんですが、これに関してはジョン・アダムスみたいな響きが微かに聴こえる・・・
吹奏楽的なメロディーや展開はごく素直なんですが、そこが聴いていて(良い意味で)引っかかりました。

福島弘和の「鹿踊りのはじまり」は以前から気になっていた曲。宮沢賢治は一時期はまっていたもので。
彼らしい簡素で日本的な響き、期待通り面白い曲でした。ただ、原作にあるような土俗的ながら幻想的な雰囲気はちょっと薄いかなー

八木澤教司、「聖徳太子の地球儀」は何時もどおりの、誇大妄想広がる異世界。あ、褒めてるつもり。
ただ、これちょっと部分的に「ペルセウス」と似すぎじゃないですか。まあこの人のは曲想似通ってるからねえ。

神長一康の「吹奏楽のための交響詩「山よ」」。冒頭からチューバソロ。他でも思うが何で山=チューバのイメージあるんだろう、不思議だ。
けっこうシンフォニックな構成ですね。あと不協和音を一番使っています。残念ながら自分の趣味には合わず、悪くないんだけれど。

高橋宏樹さんはお会いしたことがある数少ない作曲家。物静かな佇まいの好青年でした。
「空想動物組曲」初演に参加できたのは自分の数少ない自慢の一つです。あとはリードの直筆サインくらい。
この「組曲「流星の詩」」でも彼のわかりやすい、簡素平明な作風は健在。
ベタすぎて、素直で楽しい。こういうのが楽しめないとなんか心が汚れてる気がしてしまう、そう思う20代。

八木澤二発目、表題曲「ラス・ボラス・グランデス」の方が個人的には良いと思いました。一番彼らしい気宇壮大さが出ています。
そして神長二発目「勇者オリオンの三つの星」。
・・・なんで今の邦人吹奏楽作曲家はこうも妄想たくましい方向へ突っ走るのか。現実も良いもんだよ、きっと。・・・ごめん、うそ。
やはりシンフォニックな描写と場面ごとの表情付けがなかなか上手いですね。ただかなり題どおり八木澤寄りの曲調。

演奏は、ダイナミックな録音も相まって細かな動きから盛り上がりまでとても楽しめました。
ただ高校生バンドである分、特に神長氏のような交響的な響きが重要な作品・場面では苦戦しています。



2006 TMEA Clinic/Convention

Zimmerman/Briegel; Anchors Aweigh
Holst/Patterson; Jupiter
Hindemith; Symphony in B♭
Saucedo; Snow Caps
Newton/White/Pippin; Amazing Grace
Ducas/Hindsley; The Sorcerer's Apprentice
Sousa/Byrne; Comrades of the Legion
Grainger/Rogers; Tune in a Popular London Style
Chance; Blue Lake Overture
Knox; Sea Songs
Hughes; Transcontinental

Frienswood High School Wind Ensemble
2006 Mark  6234-MCD

TMEA=Texas Music Educators Association、テキサス州音楽教育家連合←直訳です。
高校生としてはまあまあの水準。至らない面も沢山ありますが、まだ落ち着いて聴けます。後半は慣れてきて良い感じ。
木星はちょっと管弦楽由来の細かなテキスチャに苦難している面も聴こえます。
ヒンデミットの交響曲はなかなか頑張っていて好感の持てる演奏。ただちょっと単調でしょうか。
サウゼードの曲はメランコリーな雰囲気を頑張って普通のアップテンポな吹奏楽曲で出そうとしてます。
演奏もあって悪くないですね、学生バンドに良く合う溌剌とした曲。変拍子多め。この曲はおすすめですね、誰かやってみない?
アメージング・グレース、この編曲は相当簡素にしてますね。お陰でこの曲が好きじゃない自分は逆に素直に聴けました。
デュカスの「魔法使いの弟子」、やっぱり冒頭などの弦楽器伴奏は難しすぎたようです。でもテンポの速いところはなかなか良い出来。
むしろ編曲が単純化されているところで気になる。どうにも音の厚みが全然無い。
グレインジャーは随分のどかで簡素な曲。聴いてると楽そうですが、意外と音楽の流れをつかむのは難しい曲かも。
チャンスの曲は彼にしてはかなり明るいほう。跳ねるような音形が印象的な曲。
ノックスは典型的なアメリカ風吹奏楽。楽しいし良い曲だけど自分の趣味じゃあないかな。ただし、演奏は一番ノッてます。



2003 Wasbe 11th Conference jonkoping,sweden
Donald Grantham; Come Memory
Frank Ticheli; Symphony No.2
Eric Ewazen; Concerto for Basson and Winds
T. Susato/P. Dunnigan; Selections from The Danserye
David del Tredici; In Wartime
Scott McAllister; Black Dog
Philip Wilby; Concerto Pastorale

Florida State University Wind Orchestra
James Croft,Cond.
2003 Mark  4737-MCD

2枚組みのWasbeのライヴ録音。
グランサムは以前作品集を安く買いましたが、どうも技術面に留まっている感じで面白くない。
特にこの曲のような遅い曲ではとくに顕著。確かに悪くはないけどもっと色彩がほしいですね。
ティケリの曲は普通の吹奏楽ではありますが、派手な曲が多いので楽しんで聴けることが多いです。
ジャズやロック的なイディオムを所々にちりばめながらも、決して曲の枠を壊さず緊張感に繋げているのが良いのかな。
エワーゼンは吹奏楽曲では随分かっちりした曲を書いています。
この協奏曲も落ち着いた、ファゴット主体ならではの味わいある曲でした。
スザートの編曲ものは、原曲を重視したアレンジメントで、吹奏楽の豊かな音で原曲を思いながら聴くことが出来ました。
もちろん?と思うところも無くはないですが、やはり余計なものが少ないこの編曲は評価されて良いでしょう。
つまり何が言いたいかというと、マーゴリス編曲のテレプシコーレは好きじゃないということです。
お次はこのCDを買ったきっかけ、デル・トレディチ。初演ではなさそうですがそれに近いかな?彼の最初の吹奏楽作品。
彼は代表作である「夏の日の思い出」を聴いて注目すべきだと感じましたね。
彼独特の幻想的で聴きやすい作風はここでも健在。続けて演奏される2楽章制。「Battlemarch」は葬送行進曲みたい(笑)
マクアリスターのクラリネット協奏曲はソロや鍵盤楽器の高音と低音ドローンの対比が印象的なジャズの影響が見られる曲。クールでカッコイイ。
ウィルビーのフルート協奏曲は牧歌風ですがなかなか激しい趣もある曲。
演奏はアメリカらしいパワフルで端正なものでした。



2003 Wasbe 11th Conference jonkoping,sweden
Christopher Marshall; L'homme arme
Robert Saxton;Ring,Time
Michael Finnissy; Giant Abstract Samba
Richard Rodney Bennett; Refrections on a 16th Century Tune
Michael Tippett; Triumph

Guildhall Symphonic Wind Ensemble
Peter Gane,Cond.

マーシャルの曲は民族調の変奏曲。世界初演になります。
なかなか激しい変奏が多く、聴いてて爽快。なかなか盛り上がれる変奏曲です。難しそうだけど。
「Ring,Time」は幾分前衛的。鐘を思わせる導入部から始まり、少しづつ興奮しながらも厳しく抑制された展開のもと曲は進みます。
ただ手法は前衛的ですが、主要な部分ごとには平易な音楽が見え隠れします。
このCDを買う決心をつかせたマイケル・フィニッシー。彼は「English Country Tunes」が難曲としてやたら有名ですよね。
このクラリネット独奏が主体の曲は、題の通りサンバのリズムが主体に曲が進行します。曲の土台はかなり聴きやすい。
その上で木管楽器がフリーなソロを吹き、伴奏がグロテスクに踊りだす。ああやっぱりフィニッシーだな。
最初の3秒だけ聴いて(けっ、普通の曲じゃんか)と思ってすいませんでした。彼にしては簡単そう、まあ彼の曲は傾向いくつかあるしね。
ベネットの曲だけティモシー・レイニシュ指揮。すげえ、良いな。
コラール風の冒頭に始まり、いかにもバロック的な旋律が穏やかに形をかえていく。綺麗な良い曲です。
後半になるとちょっと躍動感ある展開も少しだけ。
「Triumph」は結構ドラマティックで構成的。へえ、ティペットってこういう曲書くんだ。まあ今までまともに聴いたことあんまりないからなあ。
かなりレベル高いけれど、もっと一般に認知されて良い曲/作曲家でしょう。
演奏、金管が力強くて良いです。



California State University Northridge Wind Ensemble

Joe Curiale(Joseph Curiale); Awakening(Songs of the Earth)
Vittorio Giannini; Symphony No.3
Wiliam Toutant; I Tego Arcana Dei(Begone, I hide the secrets of God)
Elizabeth Sellers; Windsong
Robert Linn; Partita
Daniel Kessner; Symphonic Mobile II
Robert Jager; Symphonia Nobilissima

William Bing,Cond.
Curiale, Sellers, Kessnerの曲は作曲者指揮

Mark Custom  5382-MCD

クレジットにRobert Linnの名前を見た瞬間購入が決定。
「Awakening」は聴いていて楽しくなる、民族調の祝祭的な曲。これもっと演奏されないかな。
2楽章7分ですから長さも悪くないのでは。第2楽章は明るく穏やかな祈りの世界が広がります。
ジャンニーニは有名な曲ですね。あまりにも正統派吹奏楽な曲。
でも構成はきっちりとしているのできちんと聴けます。ただあんまり自分の趣味じゃないかな・・・
Toutantの曲はかなり前衛的。ティンパニ2セット使ってて爽快。
奇妙な牧歌的なメロディーや同音反復が印象的な激しい曲です。このアルバムの中では一番の難曲。
「Windsongs」は暗い、神秘的な雰囲気の漂うバラード曲。すごく映画音楽っぽい、いい曲だけど。
Linnの曲はやはり「Propagula」と作風が似ていて安心。独特の跳躍が主体の主題です。これはメロディアスな要素も強い。
やっぱり素晴らしい曲を書いてくれる人だと思います。最後があっさりしてる所だけ残念かなあ。
Kessnerは随分最近の前衛シーンに影響を受けているみたいですね。曲の作り方がよくある方法論です。
この曲は5つの部分からなりますが、そのうち中間の3つは演奏順序が決まっていません。
落ち着いた単純な主題が全曲を支配する、構成面主体の曲。
ジェイガーは特に言うことは無いでしょう。彼の代表作。
粗もちょくちょくありますが、ライヴだしむしろその熱気を賞賛すべき。ただ古典的な曲では傷の方がやや目立ってしまいます。
トロンボーンの音が程よく割れていて、聴いてて楽しい。



The Begian Years Vol.XI

Concert Music(Paul Hindemith/Gua Duker)
Propagula(Robert Linn)
Al Fresco(Karel Husa)
The Second Voyage(Paul Zonn)
Music for Prague,1968(Karel Husa)

Dr.Harry Begian,Cond. University of Illinois Symphonic Band
2000 Mark  MCD-3083

私は音楽に入るきっかけが吹奏楽だったこともあり、吹奏楽も結構聴いて集めてます。
このイリノイ大学のシリーズはピンからキリまでありますが、それでも全体的に高レベルの演奏内容。
そんな中で一番買ってよかったと思ったのがこれ。
フサの2タイトルにつられて買い、やっぱり高水準のライヴでテンション上がるなあとも思いました。
しかし、何と言っても白眉はRobert LinnのPropagula。これを初めて聴いたときの快感は忘れません。
冒頭フルートが吹く主題をもとにしてシステマティックに組み立てる作風。
ノリノリとかテンション上がるとかじゃあないんですが、そのじわじわ迫ってくる迫力が素晴らしい。
後半も過ぎた頃、トランペットの技巧的コラールから最後までの5分間は鳥肌物。
あと演奏が曲以上に素晴らしい。バリバリと容赦ない金管がソリスティックな木管と相まって心地良いです。
要所でキーとなる打楽器も迫力満点。こんな演奏を実際に聴いたらもうその日は何も聴けないですね。これは凄すぎる。
この人の曲、他に録音あるのかなあ・・・他の曲も聴いてみたい。個人的に吹奏楽曲でNo.1の作品。

ちなみにこのCDの「プラハ」、お気に入りですがまだあと少し。
最終楽章がそれまでに比べ失速気味で、最後のテンポが速すぎる・・・
まだこの曲の個人的に決定的な演奏は聴いたことないですねぇ。



Legendary V
ヤマハ吹奏楽団浜松

Brain Music  BOCD 7133

実は私は吹奏楽出身者のくせしてコンクール音源を自主的に聴くことは殆どありません。
聴いていてどうも技術にしか目が向いていない演奏が多く、面白みをあまり感じない演奏が多いからです。
その分、この団体の演奏は表現的技巧を上手く聴衆の情感に訴える術を心得ていていい感じ。
ネリベルとブリスを除いて邦人の曲が入っていますが、特記すべきは田村文生の2曲でしょう。
彼は吹奏楽で前衛的な曲を書くゆえ、吹奏楽ファンには倦厭され現代音楽ファンには馬鹿にされてる気がします。
まあ確かに日本を代表とする〜とまではいかないでしょうが、十分評価されて然るべき作曲家ではないでしょうか。
「アルプスの少女」などは彼の無節操なまでに楽想が渦巻いてゆく作風が上手く現れた面白い曲だと思います。
他にも田中賢の「メトセラII」、保科洋の「交響的断章」など曲も演奏も一押しのものばかり。
ところで、何で田村文生の曲は題名にだいたい女が絡んでるんだろう。
アルプスの少女とかかわいい女とか饗応夫人とか。



Japanese Band Repertoire,Vol.5
行列幻想

兼田敏;シンフォニックバンドのためのパッサカリア
真島俊夫;三日月に架かるヤコブの梯子
鈴木英史;ソング・アンド・ダンス
池上敏;瞑と舞
西村由記子;ブライト・ムーン
團伊玖磨/時松敏康;行列幻想
伊藤康英;管楽器のためのメロディ

東京佼成ウインドオーケストラ
金洪才、指揮
Kosei Publishing Company  KOCD-2905

東京佼成は技量が申し分ないので安心して聴ける分、物足りなさを感じる瞬間が多い。
もっと欲しいところもあっさりと過ぎてしまったりして、参考としてはよく聴きますが鑑賞目的ではあんまりないです。
じゃあなぜこのCDを選ぶか、それはもちろん曲目です。邦人作曲家の面白い曲が沢山あるから。
「パッサカリア」はこのくらいの落ち着いた演奏の方が兼田の渋い世界にマッチしていると思います。
「三日月〜」なんかはもっと華々しいほうが好きです。初演団体の関西学院の演奏とかがお奨め。
鈴木英史はメリー・ウィドウの編曲ものとかが一時期大流行しましたね。
華やかな第一楽章、ゆるやかなサックス主体のメロディーと舞曲が交互に現れる第二楽章。
掛け合う怪しげな旋律と第一楽章が重なり合っていく第三楽章。短く瀟洒な逸品でしょう。
華やかだけれど熱くはなく、どこか冷たさも感じる所が良い。これ演奏したいなあ。
「瞑と舞」はこの中で一押し。チャンスの「呪文と踊り」を想起させるドラマティックな展開です。
日本的な暗さの中でリズムが少しずつ熱されていく場所はかっこいい。
「ブライト・ムーン」はあんまり肌に合わなかったかなあ。ジャズ的な面白い曲。
どちらかというとバーンスタインの作るジャジーさに似ていると思います。演奏がもっと派手ならノリノリになるのに。
「行列幻想」は聴いた瞬間から(ああ、團伊玖磨だな)とわかる曲。
こういう日本的で、(軍国主義とか関係なく)日の丸がマッチしそうなメロディーを聴いて古典的に感じられるのは幸せなことだと思います。
「メロディー」は最初聴いてびっくりしました。なかなか技巧的でシステマティックな曲です。要はけっこう前衛的。
伊藤康英は「ぐるりよざ」みたいなのしか書いてないと思っていたので、こういうシリアスな曲書いててくれて嬉しい。
あ、いや、別に彼の「琉球幻想曲」とかも気に入ってますよ、私。



Southern Music Company
Music for Concert Band volume 3

F.MacBeth;Through the Countless Hall of Air, This Land of El Doredo
J.Barnes; Variation on a Moravian Hymn, Lonely Beach, Legend, Symphonic Overture
F.Tull;Saga of the Clouds

Southern Music Company  SMCD-1665

吹奏楽の大御所サザンミュージックのサンプル音源。なので基本的に演奏者は書いてありません。
全曲入っている上に音源も安心して聴けるものばかりなので素晴らしいですね。
マクベスは吹奏楽メインで活躍している作曲家の中ではおそらく一番の贔屓作曲家。
この「空の無限の殿堂から」は彼としては爽快な一曲。特に第一楽章はトランペットの華々しさがすがすがしい。
その分難しさも桁違いですが、それもそのはずアメリカ空軍バンドのために作られた曲でした。
「この地エルドラド」も随分華々しい。マクベス節は何時も通りですが、最後まで明るく終わる曲で一般受けも良いのでは。
こういう曲ももっと表に出てきてほしいものです。マクベス=マスク、じゃ頭が固すぎですよおじいちゃん。
タルはそれまで全く気にかけてなかったんですが、この「雲の伝説」はなかなか楽しめました。
全3曲通して静かめで怪しい雰囲気が漂う曲。特殊音響も使ったりしてふわふわした感じを作り出していますね。
バーンズはだいたいどの曲もバーンズしてますが、「ロンリービーチ」はちょっと異色かも。
いわゆる「D-デイ」(ノルマンディー上陸作戦)をモチーフにしたもので、具体的な描写音楽になっています。
「交響的序曲」はバーンズの曲中で一番よく聴きます。
音形が細かいので演奏するのは大変でしょうが、ドラマチックな要素がたっぷり入った彼らしい曲。

それにしても吹奏楽は具像的な音楽が多いです。
分かりやすくていいんだけれど、こういう音楽は一歩間違えるとチープになってしまうから危ない。
でも現代音楽みたいに抽象的になりすぎても理解が難しくなってしまうんですよね。
そんなだから前衛的な吹奏楽曲や調性的な現代楽曲は容易くけなされるんでしょうか。
曲の良し悪しは使われてる技法関係ないのに。



Velocity

P.Grainger; Molly on the Shore
M. Lauridsen; O Magnum Mysterium
M.Daugherty;Bells for Stokowski
R.Peck; Cave
E.Whitacre; October
A.Rindfleisch;The Light Fantastic
J.Press; Wedding Dance

Columbus State University Wind Ensemble
Robert W. Rumbelow,Cond.
Summit  DCD 397

Lauridsenの曲目当て。この曲はお気に入り。敬虔に祈るような雰囲気が思いきり教会音楽なんですよね、これ。
まあオリジナルが合唱曲であるし、妥当でもあります。メロディアスで切なげな逸品。この編曲ももっと演奏されて良いはず。
ドアティのこの曲はよく演奏される曲。華やかな鐘に始まり、バッハの引用もしながらドラマティックに曲が進みます。
全曲を通して打楽器が中核となる、管弦楽がオリジナルの曲。ドアティにしてはかなり真面目な曲じゃないかなあ。
ペックの曲はプラトンのあれではありません。単に音楽の自由さを洞窟の暗中に模しているだけです。
そんなコンセプトのとおり中盤の盛りあがりは無節操な勢い。クラシック以外のジャンル(特にロック)の影響がかなり濃いめ。
ウィッテカーの「オクトーバー」はあんまり好きじゃないんですよね。
終始落ち着いた感じのいい曲ではありますが、やっぱり自分はゴーストトレインの方が好きです。
Rindfleischの曲は軽い感じの三つの舞曲からなる長めの曲。聴こえる音は軽いですが構造はちょっと難しめ。終楽章はジャジー。
プレスの「婚礼の踊り」はフェネルのお陰でまあまあメジャーかも。オケの組曲からの抜粋編曲。
ユダヤ系のメロディーが荒々しく踊りまわる、確かにアンコールに相応しい曲。かなりパッセージが速いけれど。
グレインジャーはいつもどおりですね。普通の民謡チックなほのぼのした曲。やっぱり木管はきついけれど。
演奏は熱気のある、それでいてアンサンブルも程よく揃ったもの。金管が出すとこ出してて爽快。
欲しいところはしっかり聴かせる様にしているのが気持ち良いですね。
ただしっとり系はやや苦手の様子。Lauridsenは頑張ってるけれどWhitacreの方は流石にきついか。



La Artistica Live

A.Comitas; A Night on Culbin Sands
J.Rodrigo; Adagio
E.Varese; Ameriques
A.Khachaturian; The Valencian Widow
Rafael T.Pello; Obertura pala un Centenario
S.Brotons; Rebroll, moviment simfonic nr.1
K.Husa; Apotheosis of this Earth

Banda Sinfonica la Artistica, Bunol
Henrie Adams,Cond.
World Wind Music  WWM 500.075

2001年世界音楽コンクールで1位を勝ち取ったスペインの団体ブニョール・アルティスティカ。
彼らのそれを含むライヴ音源集です。これは吹奏楽ファンなら是非買うべし。
アレクサンドル・コミタスの「カルビン砂漠の夜」(追記参照)が非常にカッコイイ。これが課題曲だなんて凄い。
非常に暗い曲ですが、描写が素晴らしく、絵画を見ているよう。個人的にかなりのお気に入り曲。
バスクラの呟きで曲は始まり、暗い影がゆっくりとうねる大地は覚醒を始める。
金管が吼えて嵐と砂だけの恐ろしい饗宴の始まり、そこにあるものを脅かしながら進む。
やがてどの楽器も興奮のるつぼに巻き込まれていき、倒錯の度合いを強めていく。
が、やがて不意に風はおさまり、そこには荒漠とした夜の砂漠が眠って・・・
全曲通して現れる木管の速いパッセージが、風に弄ばれる砂のような素晴らしい演出をしていますね。

フサの「この地球を神と崇める」はこれが決定盤と言って差し支えないでしょう。
特に第2楽章、狂気のごとく破壊する暴力性はこれが一番迫力あり。爽快さすら覚えます。
どの楽器も音が重い、それが曲の重みに繋がっていてフサの世界観にがっちり食いついています。

このラインナップで一番注目したいのはヴァレーズの「アメリカ」。このとてつもない大曲を見事に演奏しています。
シャイー指揮のあれが名盤ですが、こちらも捨てがたい。この編曲は書いてないけれど誰だっけ、周文中?
特に熱気のこもった異常なまでの構築性がヤバイ。25分があっという間に感じるくらい作りこまれている。
最後の5分はもはや狂乱です。最後のffffが終わらないうちから満場一致の大喝采となるのも当然でしょう。
他にもヴァレンシアの娼婦の爽快なノリノリさとか、だらだら書いてたら文が冗長になりそうなくらい。
こんなのが生で聴けたら放心すること間違いないでしょう。

追記:               
前々から気になっていた"Culbin Sands"の意味、本気を出して調べてみたところ
どうやらスコットランド北東部にある地名のようです。
古くからカルビン(カルヴァン)男爵領だったことからそれがそのまま地名として残っている様子。
海岸沿いの地で元々から砂丘浸食があった土地ですが
1694年に一夜にして砂嵐で埋もれてしまい、その地にあった農場が甚大な被害を受けたそうです。
この曲はどうやら、その時の史実を基に制作された作品らしいですね。
そのことを踏まえて邦訳するとなると「カルビン砂丘の一夜」が妥当でしょう。
検索すれば鳥瞰写真も出てきますが、鳥取砂丘並みかそれ以上に小さいです。
あるいは「カルビンの砂の一夜」あたりが意訳するなら良いかもしれませんね。



Symphonic Windorchestra Conservatory Antwerp
Colors

Bert Appermont; Colors for trombone, Noah's Ark
Jan van der Roost; Credentium
Steve Willaert; Clarinet in motion
Edvard Grieg; Funeral March
Boudewijn Cox; Adagio for horn
Dirk de Caluwe,Cond.

World Wind Music  WWM 500.054

吹奏楽では人気の作曲家、アッペルモントの曲では「カラーズ」が一番好きです。
この曲は彼の出世作です。これでもかとキャッチーな普通の吹奏楽曲。クサいけどこういうのは聴いてしまう。
曲の展開的な面白さはありませんが、歌うメロディーが満載なので旋律を気に入るかが要。
協奏曲という形式でなければ、日本をはじめとするアマチュア業界でも演奏頻度が増していたことでしょう。
ソロはそこまで滅茶苦茶には難しくありません。でもトリルはきついかな・・・
演奏、大変良いです。いい意味で映画音楽みたい。柔らかな音のソロもマッチしてます。
「ノアの箱舟」も入ってますが、こんなので喜んでちゃだめですよ(笑)

ヴァン=デル=ローストの曲はちょっとびっくり。こういう技巧的な面が強い曲も書くんだこの人。
「プスタ」「リクディム」等の印象は演奏頻度と相まって非常に強いですね。
よく考えれば変態クラシックレーベルPhaedraのカタログなんかにも彼の名前が出てくるのだから、
吹奏楽に縛らなくても若手作曲家のくくりに入るのは当然のことでした。
Willaertの曲はジャジー。スイングしてて軽めなので自分の感覚にはあいませんでした。
Coxの方は旋律が思いっきり吹奏楽ならではの自由な歌いまわしで辟易。
キャッチーでないのにこういうのは簡便、この手の和音は好きだけれど。
グリーグは・・・飛ばして良いよね、有名だし。



カリフォルニア州立大学(ロサンゼルス校)
Wind Ensemble in Concert

W.H.Hill; St.Anthony Variants, Dances Sacred and Profane, Song and Dance for Bass Trombone
P.Creston; Celebration Overture
etc.
William H. Hill,Cond.

Sony  SRCR8911

日本では聖アンソニー変奏曲の改訂版ばかり有名なヒルの、自作自演がメインの盤。
この曲の改訂版楽譜はなぜかミュージック・エイトから出てることも良くあるネタ話ですね。
原曲のほうはそれ以上に変奏が長い。特に最初の変奏とかが倍近くの長さ。
この曲が本来持っている流れが聴けます。と同時に改訂版の流れの唐突さが目立つ。
まあ他人が勝手に主題を最後にとってつけてしまったものだからなあ・・・
確かに原曲には大団円がないけれど、あれじゃあ変奏した意味がないように聞こえてしまうんです。
「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」はおそらくヒルの作る曲の雰囲気が一番つかめる曲でしょう。
前半のがしゃがしゃしたグロテスクなメロディー、後半の嫌世感漂う神秘的な楽想。
名前からは2部構成を思わせますが、実際には3曲からなっています。
バストロンボーンの協奏曲はチューバでも可とのこと。
ヒルの曲はどれもリズム的技巧を中心に良く練られた曲が多いですが、この曲もなかなか。
舞曲は彼の曲にしてはずいぶん明るいほう。けっこうお気に入りの曲です。
あとは、クレストンの祝典序曲なんかがこのCDの聴き所でしょうか。
演奏は荒い点も目立ちますが、勢いのある楽しい演奏。
アンコールの星条旗はピッコロじゃなくてチューバが吹いてます。



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