交響曲第三番「悲歌の交響曲《 作品36
Symphony No.3"Symphony of Sorrowful Songs" Op.36
I.Lento - Sostenuto tranquillo ma Cantabile
II.Lento e Largo, Tranquillissimo - Cantabilissimo - Dolcissimo - Legatissimo
III.Lento - Cantabile semplice
1976年10-12月作曲
1977年4月4日初演(ステファニア・ヴォイトヴィチ;ソプラノ、エルネスト・ブール指揮、南西ドイツ放送交響楽団)
ソプラノ独唱、オーケストラ
[4.4.2.2 - 4.0.4.0 - ハープ - ピアノ - 弦(16.14.12.10.8)]
全ての楽章にレントの指示。
一小節遅れの五度カノンを両端に、中盤で聖十字架修道院の哀歌が歌われる第一楽章。
二つの和音の動きの上で歌われる第二・第三楽章。
第二楽章では独房の壁に刻まれた女性の祈り、第三楽章ではオポーレ地方の民謡が歌われる。
[オポーレ地方は、ポーランド南西部にある都市オポーレ(Opole)を中心とした一帯。
歌詞に出てくるオドラ川はそのほぼ中央を流れている。
現在グレツキの住んでいるカトヴィツェから見るとおおよそ北西の方角。]
両端楽章は「母から子へ《、第二楽章は「子から母へ《の内容を持つ歌詞を使い、対称的な構成になっている。
国際音楽祭で初演された際、賛否両論を浴びるも、あまり有吊にはならなかった。
1992年イギリスのラジオで第二楽章の後半が繰り返し流されたことにより大ヒットし、英国内ポップ・チャート6位入りを果たす。
グレツキの有吊作であり、代表作。
1993年、グラモフォンのベストセラーCDに選ばれる。
ドーン・アプショウ;ソプラノ ロンドン・シンフォニエッタ デイヴィッド・ジンマン指揮
Dawn Upshow,Soprano London Sinfonietta David Zinman,Conductor
1991年5月 Elektra Nonesuch
I.26:23 II.9:25 III.17:10
グレツキの吊を世界に知らしめるきっかけを作ったCDだけあって、非常に素晴らしいです。
この曲の持つ美しさを全面に押し出すような演奏で、声を含む全ての音色が綺麗に溶け合って聞こえます。
お陰で、この曲が本来兼ね備えているモダンな和音はあまり耳にひっかかりません。
この曲の指標となる演奏と言えるでしょう。ファーストチョイスの場合は是非この盤をどうぞ。
スーザン・グリットン;ソプラノ ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 ユーリ・シモノフ指揮
Susan Gritton,Soprano The Royal Philharmonic Orchestra Yuri Simonov,Conductor
Allegria
I.27:57 II.9:22 III.15:59
第一楽章のカノンに顕著に使われている、一音一音が減衰していく演奏方法は、この曲にはちょっと合わないと思います。
ソプラノはいい感じ。華やかさは無いですが、その分曲に上手くはまっています。
音の盛衰が比較的激しく、盛り上がるところは結構盛り上がります。荒い部分もありますが、まずまずの演奏。
ゾフィア・キラノヴィッツ;ソプラノ ポーランド国立放送カトヴィツェ交響楽団 イェジ・スウォボダ指揮
Zofia Kilanowicz,Soprano Polish National Radio Symphony Orchestra of Katowice Jerzy Swoboda,Conductor
Belart
I.28:46 II.9:26 III.18:00
現在私が最も気に入っている演奏。
あまり感情的にならず冷たい響きをしながら、欲しいところはしっかり聴かせます。
音楽の流れもすっきりしていて、特に第三楽章がとても素晴らしいです。
ソプラノも、少し遠目の録音ながらあっさりしていてとても良いです。直線的な歌い方が気に入りました。
ゾフィア・キラノヴィッツ;ソプラノ シレジア・フィルハーモニー管弦楽団 イェジ・スウォボダ指揮
Zofia Kilanowicz,Soprano The Silesian State Philharmonic of Katowice Jerzy Swoboda,Conductor
POL music 1993年10月4-6日
I.26:47 II.9:25 III.18:00
「非売品《表示のあるこのCD、実は表記が違うだけでBelartのやつなんかと一緒。
創設時の吊前がBelartで現在の吊前がこのシレジア・フィル。
第1楽章だけ2分も違う上に録音方式が違う(こちらはDDDですがあっちはAAD/ADD)のが謎ですが、
たしかに聴いていて音源は一緒だと思えるシンクロ具合。
まあ録音は比較するとこっちのほうが豊かな感じがしなくもないけれど、まあ大差はない。
というか、わざわざこんなCDを発掘しなくても普通に手に入る方で良いと思う。
ドリーン・マリア・ド・フェイス;ソプラノ グラン・カナリア・フィルハーモニー管弦楽団 エイドリアン・リーパー指揮
Doreen Maria De Feis,Soprano Orquesta Filarmónica de Gran Canaria Adrian Leaper,Conductor
1995年4月11日 Arte Nova
I.26:14 II.9:30 III.16:50
やや平坦な演奏ですが、なかなかの演奏でしょう。
重い響きや、比較的ビブラートとかつけてる割にはあっさりしているところが好みの分かれ目かも。
第一楽章のクラスターの様なカノンがうねうねと聞こえる様は秀逸。ただ第三楽章は単調すぎますね。
ソプラノはまあ普通です。あと抑揚にこだわって音程を無くし気味かも?
ステファニア・ヴォイトヴィチ;ソプラノ 南西ドイツ放送交響楽団 エルネスト・ブール指揮
Stefania Woytowicz,Soprano Symphonieorchester des Südwestfunks-Baden-Baden Ernest Bour,Conductor
1985年 apex
I.30:48 II.10:22 III.18:09
初演団体による演奏。非常に遅いテンポで重苦しく聴かせます。
ややアンサンブルは散漫ですが、作られている音楽自体は非常に暗いもの。
この演奏を聴いて、この曲が癒しなどと言える人は居ないでしょう。
アナログのオリジナル音源をデジタルにリマスタリングしたものですが、音のバランスや反響なんかがちょっときつい所も。
そのため録音状態は他の盤に比べるとちょっと悪いです。ただ低音バリバリなのは個人的に大好き。
ソプラノは抑揚をつけすぎな気がして、あまり好きになれません。悪くはない歌い方だとは思いますが。
追記:音がきついのはapex盤だけのようです。Belart盤ではそんなことなく良い感じの音響でした。薄めになったけれど。
イヴォンヌ・ケニー;ソプラノ アデレード交響楽団 湯浅卓雄指揮
Yvonne Kenny,Soprano Adelaide Symphony Orchestra Takuo Yuasa,Conductor
2000年9月4-6日 ABC
I.25:46 II.8:46 III.16:01
テンポは速めですが、演奏はしごく真っ当なもの。
Zinman盤の様な美しさを保ちながら、現代的な和声もしっかり響かせています。
ただなぜか、どこか軽い演奏。もうちょっと重いほうが良かったです。技術的には上満なし。録音も良いです。
ルイザ・カステラーニ;ソプラノ スロベニア交響楽団 アントン・ナヌート指揮
Luisa Castellani,Soprano Slovenian Symphony Orchestra Anton Nanut,Conductor
1994年 Audiophile
I.26:51 II.9:11 III.17:41
標準的な演奏。どちらかというと曲の叙情性を強調した演奏です。
ぜんぜん悪くない演奏なのだけれど、なんだかあまりにも平凡に聴こえてしまって物足りません。
ソプラノは少し自由に歌いすぎているとは思いますが、声自体は気に入りました。
ゾフィア・キラノヴィチ;ソプラノ K.シマノフスキ国立フィルハーモニー管弦楽団 ヤツェク・カスプシク指揮
Zofia Kilanowicz,Soprano K.Szymanowski State Philharmonic Orchestra Jacek Kasprzyk,Conductor
EMI 1993年9月
I.30:15 II.8:56 III.17:38
第一楽章での遅いテンポは、恐らくこの団体にはきつかったのでしょう。聴いていてあまり統一感がなく、音程も危うげ。
第二楽章も荒削り状態。でも第三楽章はなかなかでした。線の細い演奏が上手く合っています。
アンサンブルは怪しげ。あまり練習を重ねてなかったのでしょうか。さすがにピアノが音間違えちゃいかんですよ。
ただ、気になる点は時々会場音らしきものが入っていること。ライヴでしょうか。・・・ってライヴなのが別の盤で確認できました。
ゾフィア・キラノヴィッツ;ソプラノ ポーランド国立放送カトヴィツェ交響楽団 アントニ・ヴィト指揮
Zofia Kilanowicz,Soprano Polish National Radio Symphony Orchestra of Katowice Antoni Wit,Conductor
1993年12月 Naxos
I.27:09 II.10:15 III.18:30
線の細めながら綺麗な響きの演奏。曲の歌詞と演奏が良く合っています。
ただ、Swoboda盤と比べると、こちらの演奏はやや単調です。録音のせいもあるでしょう。
第一楽章の中間部に入るときのピアノの音が、こもっていて綺麗ではない響きなのは残念。
イングリッド・ベルージュ;ソプラノ シンフォニア・ヴァルソヴィア アラン・アンティノクル指揮
Ingrid Perruche,Soprano Sinfonia Varsovia Alain Altinoglu,Conductor
2004年12月 naive
I.25:39 II.9:38 III.18:30
音色が非常に綺麗で素晴らしいですが、第一楽章はやや盛り上がりに欠けます。カノンのパート音量差のせいでしょうか。
パートの音量差は節々でちょっとやりすぎな感じが。もっと均等な音量でモダンな和音をしっかり響かせてもいいと思うのですが。
第三楽章は伴奏の冒頭音型が短すぎて気になります。あとずいぶん音量に抑揚をつけてます。
ソプラノが素晴らしいです。派手すぎず、単調すぎません。
良い演奏ですが、もう一歩が欲しかったり。
ステファニア・ヴォイトヴィチ;ソプラノ ポーランド国立放送カトヴィツェ交響楽団 イェジ・カトレヴィチ指揮
Stefania Woytowicz,Soprano Polish National Radio Symphony Orchestra of Katowice Jerzy Katlewicz,Conductor
1978年5月 Polskie Nagrania
I.25:38 II.9:16 III.17:10
録音年からするとこれが初録音盤でしょうか。テンポが速めの、低音がどっしり効いた熱い演奏です。
これでもうちょっと緩やかなテンポだったら最高だったのに・・・
録音で粗がごまかされている気もしますが、そんなこと構いません。
ソプラノも、初演者であることを活かして巧く歌っています。吊演。
ヨアンナ・コショウスカ;ソプラノ ワルシャワ・フィルハーモニック カジミェジュ・コルド指揮
Joanna Kozlowska,Soprano Warsaw Philharmonic Kazimierz Kord,Conductor
1993年6月 eloquence
I.30:04 II.10:00 III.18:51
第一・第二楽章はかなり良い演奏です。やや過剰な演出の気もありますがそう気になりません。
第三楽章は、和音の一つ一つが流れるようにではなく、塊として演奏されているので
結果減衰していくような音形になっていて私はあまり好きではありません。
ただ演出の一としてこういう解釈を気に入る人も居るでしょう。全体的には好印象の演奏。
ステファニア・ヴォイトヴィチ;ソプラノ ベルリン放送交響楽団 ヴウォジミエシュ・カミルスキ指揮
Stefania Woytowicz,Soprano Berlin Radio Symphony Orchestra Włodzimierz Kamirski,Conductor
1982年 Koch Schwann
I.24:17 II.8:28 III.12:15
なんと全曲45分、今までで最速の録音です。
聴いてて「ちょっと早いかな《という感じ。でも演奏はかなり良いです。
音色がよく溶け合った、それでいてどこか冷めてあっさりしているところが魅力的。
ソプラノは相変わらず良い仕事してます。
ゾフィア・キラノヴィッツ;ソプラノ ポーランド国立放送交響楽団 ヘンリク・ミコワイ・グレツキ指揮
Zofia Kilanowicz,Soprano Polish National Radio Symphony Orchestra Henryk Mikołaj Górecki,Conductor
1993年12月14日 Polskie Radio
I.33:52 II.9:26 III.20:10
ついにグレツキ自身の指揮による録音が出ました!
両端楽章はかなり遅いです。ただしライヴ録音なので始めと終わりに拍手付き。
もう素晴らしいの一言。いろんな処に作っている溜めなんかたまりません。
ちょっとソプラノとオケがずれてる感じですが、ライヴなので気にしない。
DVDもあるみたいですね、凄く欲しいです。
塩田美奈子;ソプラノ 東京交響楽団 岩城宏之指揮
Minako Shioda,Soprano Tokyo Symphony Orchestra Hiroyuki Iwaki,Conductor
EMI
II.9:53
「NOW CLASSICS《とかいうオムニバスに第二楽章だけ収録されているもの。
ライヴ録音のようで、会場ノイズが目立ちます。
ただ演奏自体はライヴ独特の熱さを持った感情的なもの。緩急ついた良い演奏です。
録音は会場の吊りマイクで行ったんでしょうね、ソプラノがちょっと遠いです。
いろいろ欠点もありますが、折角の総日本人勢の演奏なんだから全曲版も欲しい所ですね・・・
クリスティン・ブリューワー;ソプラノ アトランタ交響楽団 ドナルド・ラニクルズ指揮
Christine Brewer,Soprano Atlanta Symphony Orchestra Donald Runnicles,Conductor
2008年6月10日 Telarc
I.22:50 II.9:04 III.17:02
実にひさびさの、この曲の新録音。まあブームもとうに過ぎ去ったしねえ。
第1楽章、早い!22分台は思い切り新記録です。
早いのはちょっと我慢ならないですが、演奏自体は悪くない。スマートに流れる。
ただ、もうちょっとためた方がやっぱりいいんじゃないだろうか。
第2楽章も、美しさはかなりのものだが、やっぱりあっさり過ぎる。
ですが、その分早くはない第3楽章がかなり良いものでした。
やはり素っ気無さはありますが、落ち着いた内向的な演奏がようやく曲本来の性質にマッチした感じ。
せっかくの新録ですが、好感なのは音色が美しいという点くらい。
ソプラノはまあ可もなし上可もなし、ただそんなに主張してきません。
テレサ・エルベ;ソプラノ バーデン=バーデン・フィルハーモニー管弦楽団 ヴェルナー・シュティーフェル指揮
Theresa Erbe,Soprano Baden-Baden Symphony Orchestra Werner Stiefel,Conductor
Sony
I.26:46 II.8:51 III.17:27
Sonyから以前リリースされていた音源が、AmazonからのDL販売で復活。
個人的には、これでようやく昔から市販されているこの曲の音源はすべて手に入れたことになりますね。
けっこうダイナミクスというか抑揚をつけている方。第1楽章中間とか金管が頑張ってます。
ただ、テンポもそうなんですがかなりあっさりした印象は否めない。
軽く聴く分にはいいんですが、この曲をしっかり楽しみたいと思うには微妙な気も。
第二楽章はあっさりめに淡く聴かせるのでオケはなかなか良い。
第三楽章は落ち着いたテンポで一番良かった。ソプラノの振れ幅激しい歌唱があんまり好きじゃない。
ところでこの演奏団体、よく分からんのですが南西ドイツ放送響とは違うんですかね。
イザベル・バイラクダリアン;ソプラノ デンマーク国立交響楽団 ジョン・アクセルロッド指揮
Isabel Bayrakdarian,Soprano Danish National Symphony Orchestra John Axelrod,Conductor
2011年3月24,25日 Sony
I.30:25 II.7:54 III.16:41
待望の新録はデンマークのオケによるライヴ録音。ただし2日分の音源を合わせているようです。
第1楽章の重苦しさは実に良い。遅いテンポで音を一つ一つかみしめるように響かせる。
ラスト、消え入りそうなコントラバスの中から重苦しく衝撃的なピアノが響くあたり特徴的でかっこいい。
第2楽章はアクセントなどの面白い解釈をいろいろやってます、好みとしては良くもあり悪くもあり。
こちらのテンポはやや速めですね。第3楽章もなかなか豊かに盛り上げてますが、ちょっと肩すかしな気も。
この音源は第1楽章が一番凄かった。
ソプラノの歌い方、程よく感情を入れつつきっちりアンサンブルに合わせているのでかなり気に入った。
第3楽章でちょっと崩れてきてますが盛り上がりは十分。
個人的にはSwoboda盤が一番気に入っています。
あとはZinman盤とKatlewicz盤に自作自演盤があれば十分といったところでしょうか。
Bour盤は聴くだけでどっぷり気分が沈みますね。まあそれがたまらなくいいんですが。
代表作だけに録音も多いですが、それぞれかなり違う一面を持っています。
Z.キラノヴィッツとカトヴィツェ交響楽団の方々は録音しすぎ。
それにしても、一曲でこんなに集めたのかと思うと・・・なんだかなあ。
グレツキTOP